特許拒絶査定不服審判
2020-012888
空気調和機の室外機および空気調和機
- 審判番号
- 2020-012888
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-542592
- 請求日
- 2020年09月15日
- 審決日
- 2021年05月13日
- 公報発行日
- 2021年08月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱電機株式会社
- 【請求人代理人】木村 満
- 【請求人代理人】八島 耕司
- 【請求人代理人】美恵 英樹
- 【請求人代理人】渡邉 幸男
- 【請求人代理人】宮脇 良平
- 【請求人代理人】龍竹 史朗
- 審判長/審判官
- 審判長 松下 聡
- 審判官 平城 俊雅
- 審判官 後藤 健志
- 分類
- P18 .121-Z (F24F) / P18 .571-Z (F24F) / P18 .572-Z (F24F) / P18 .573-Z (F24F) / P18 .574-Z (F24F) / P18 .575-Z (F24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-542592「空気調和機の室外機および空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日国際公開、WO2018/062170〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2017年9月26日(優先権主張2016年9月27日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和1年9月5日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年11月11日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年2月28日付けで最後の拒絶の理由が通知され、令和2年4月30日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年6月5日付け(発送日:令和2年6月16日)で補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和2年9月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和2年9月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年9月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和1年11月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
室外の空気と冷媒との間で熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器に対向して配置された送風ファンと、
発熱素子が実装された電子基板と、
内部を前記熱交換器および前記送風ファンが配置される熱交換器室と前記電子基板が配置される機械室とに仕切るとともに、一部に開口部が形成された仕切板を有する筐体と、
前記仕切板の前記熱交換器室側から前記開口部を覆うように設けられた主片と、前記主片から前記送風ファン側に突出する複数の放熱フィンと、を有し、前記主片が前記開口部を通じて前記発熱素子と熱的に結合するヒートシンクと、を備え、
前記複数の放熱フィンのうち、前記主片における、前記主片の前記発熱素子側の一面における前記発熱素子と接触する領域の前記主片の厚さ方向への投影領域に含まれる接触部位に基端部が接続されている放熱フィンは、前記接触部位以外の部位に基端部が接続されている前記放熱フィンのうち、前記接触部位に基端部が接続されている放熱フィンと隣接する放熱フィンよりも大きい、
空気調和機の室外機。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】
室外の空気と冷媒との間で熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器に対向して配置された送風ファンと、
発熱素子が実装された電子基板と、
内部を前記熱交換器および前記送風ファンが配置される熱交換器室と前記電子基板が配置される機械室とに仕切るとともに、一部に開口部が形成された仕切板を有する筐体と、
前記仕切板の前記熱交換器室側から前記開口部を覆うように設けられた主片と、前記主片から前記送風ファン側に突出する複数の放熱フィンと、を有し、前記主片が前記開口部を通じて前記発熱素子と熱的に結合するヒートシンクと、を備え、
前記複数の放熱フィンのうち、前記主片における、前記主片の前記発熱素子側の一面における前記発熱素子と接触する領域の前記主片の厚さ方向への投影領域に含まれる接触部位に基端部が接続されている複数の第1放熱フィンの少なくとも1つは、前記複数の放熱フィンの中の前記接触部位以外の部位に基端部が接続されている第2放熱フィンよりも大きく、
前記複数の第1放熱フィンの中で前記主片からの高さが最高である第1放熱フィンの高さは、前記接触部位に接触する前記発熱素子の発熱量が大きいほど高くなるように設定されている、
空気調和機の室外機。」
(なお、令和2年4月30日の手続補正は、令和2年6月5日付けの補正の却下の決定により却下された。)
2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「放熱フィン」に関して、補正前の「接触部位に基端部が接続されている放熱フィン」を「接触部位に基端部が接続されている複数の第1放熱フィンの少なくとも1つ」とするとともに、補正前の「前記接触部位以外の部位に基端部が接続されている前記放熱フィンのうち、前記接触部位に基端部が接続されている放熱フィンと隣接する放熱フィンよりも大きい」との記載から「放熱フィンと隣接する」を削除して、「前記複数の放熱フィンの中の前記接触部位以外の部位に基端部が接続されている第2放熱フィンよりも大きく」とし、さらに、「前記複数の第1放熱フィンの中で前記主片からの高さが最高である第1放熱フィンの高さは、前記接触部位に接触する前記発熱素子の発熱量が大きいほど高くなるように設定されている」との記載を追加するものである。
上記のとおり、補正前の請求項1は、「接触部位に基端部が接続されている放熱フィン」と大きさを比較する放熱フィンとして「接触部位以外の部位に基端部が接続されている前記放熱フィンのうち、前記接触部位に基端部が接続されている放熱フィンと隣接する放熱フィン」と特定されているのに対し、補正後の請求項1は、「接触部位以外の部位に基端部が接続されている第2放熱フィン」と特定されているため、補正後の請求項1は「接触部位に基端部が接続されている放熱フィンと隣接する放熱フィン」以外の放熱フィンを含むことになる。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の一部を拡張するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また、本件補正が、誤記の訂正や明瞭でない記載の釈明を目的とするものではなく、請求項の削除を目的とするものではないことは明らかである。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するから、同法159条第1項の規定において準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
3 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正は却下すべきものであるが、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第17条の2第5項の規定に適合するものとして、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2015-48990号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。)。
(1-a)「【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の空気調和機の室外機は、外胴で囲まれた室外機本体内を仕切板により送風機室と機械室に区画し、送風機室内には背面側に熱交換器を配置し、外胴の前面に吹出口を設け、熱交換器と吹出口とをつなぐ送風路を形成し、送風路内に送風ファンを配置し、機械室には上部に電装品箱を配置し電装品箱と接する仕切板の送風機室側面で送風路外に電装品箱内の電装部品を冷却するヒートシンクを配置し、外胴の前面にヒートシンクに外気を導入する導入部を設けたものにおいて、導入部とヒートシンクを繋ぐダクトを形成する導風カバーを設けたことを特徴とする。」
(1-b)「【0010】
本発明による空気調和機の室外機は、例えば、商業施設などに設置され、大型の室外機や2~3台の室内機を冷媒配管を介して接続する大型の空気調和機に用いられるものである。
【0011】
室外機1は、図1に示すように、外郭を構成する外胴10は略直方体形状であり、ベース11と、ベース11に立設された前面パネル2と、設置時やメンテナンス時には取り外すことができるメンテナンスパネル12と、前面パネル2とメンテナンスパネル12との天井を覆う天板13とからなる。これらは鋼板材をプレス加工して形成される。
前面パネル2には後述する送風ファン51から吹き出される空気を吹き出す吹出口14が開口し、この吹出口14はファンガード15で覆われている。
メンテナンスパネル12は、図2に示すように、背面側まで回り込み、後述する機械室4に外気を取り込む吸気孔16が設けられている。
・・・
【0013】
外胴10の内部は、図1に示すベース11に図7に示す仕切板3を立設し、図3に示す図示しない圧縮機およびアキュムレータが設けられた機械室4と、図3、図5に示す熱交換器50および送風ファン51が設けられた送風機室5とに区画されている。図7に示すように、仕切板3の高さは室外機1の中ほどまであり、この仕切板3の上部には電装品箱仕切板30が載置され、仕切板3と電装品箱仕切板30で外胴10の内部を天板13の高さまで仕切っている。
・・・
【0017】
以上の構成により、送風ファン51の回転により吸込口18から吸い込まれた空気は、熱交換器50で冷媒と熱交換した後に、送風路52を通りベルマウス21に導かれ吹出口14から外部へ吹き出される。」
(1-c)「【0018】
機械室4内には、図3と図4に示すように、図示しない圧縮機の上部で電装品箱仕切板30の対面に電装部品を備える電装品箱6が配置される。この電装部品には、圧縮機や図示しない室内機を制御するためにメンテナンスパネル12側に配置されたメイン制御基板61と、電装品箱仕切板30の機械室側に配置されコンデンサ62を備えたインバーター基板63と、インバーター基板63の上でヒートシンク取付板64によって電装品箱仕切板30に取付けられるパワーモジュール65とリアクター66等がある。
【0019】
また、図4に示すヒートシンク取付板64のパワーモジュール65とリアクター66の上方に、電装品箱6内の熱を送風機室5側へ排出するため、上方と電装品箱仕切板30側が開口した箱状の排気口31が2カ所設けられている。排気口31の送風機室5側には排気口31から電装品箱6内に雨水やドレン水の侵入を防ぐ箱状の遮水蓋60が設けられており、電装部品から発熱された熱は、送風ファン51に引かれてメンテナンスパネル12の吸気孔16から取り込まれた外気により排気口31から遮水蓋60を通り送風機室5へ排気される。
【0020】
図3および図5に示すように、電装品箱仕切板30の送風機室5側の面であって、発熱部品であるパワーモジュール65やインバーター基板63の対面には、それぞれを冷却するための複数のフィン70が上下方向に平行に配置されたヒートシンク7を備える。パワーモジュール用の第1ヒートシンク71は遮水蓋60の下部でヒートシンク取付板64と電装品箱仕切板30に設けた図4に示す開口部67から送風機室5側へ臨ませて配置され、インバーター基板用の第2ヒートシンク72は電装品箱仕切板30の中央に設けた図示しない開口部から送風機室5側へ臨ませて配置される。
【0021】
第2ヒートシンク72は、送風ファン51近くで送風路52内に配置されているため、送風ファン51に導かれ熱交換器50を通って導入された外気の一部が第2ヒートシンク72に当たったのち、吹出口14から外部に吐き出されることで放熱される。
一方、第1ヒートシンク71は、第2ヒートシンク72よりも上方で、送風路52外の位置、つまり、送風ファン51に導かれ熱交換器50を通って導入された外気の流れに晒されない位置に配置されている。」
(1-d)「図5
」
「 図6
」
(1-e)図5には、熱交換器50に対向して配置された送風ファン51が示されている。
また、図6の「第1ヒートシンク71」及び「第2ヒートシンク72」は、複数のフィン70の間を指しており、複数のフィン70の間にヒートシンクを構成する部材があることが把握できる。
(1-f)段落【0013】には、「外胴10の内部は、・・・仕切板3を立設し、図3に示す図示しない圧縮機およびアキュムレータが設けられた機械室4と、図3、図5に示す熱交換器50および送風ファン51が設けられた送風機室5とに区画されている。・・・仕切板3と電装品箱仕切板30で外胴10の内部を天板13の高さまで仕切っている。」と記載され、段落【0018】には、「機械室4内には、・・・電装部品を備える電装品箱6が配置される。この電装部品には、・・・インバーター基板63と、・・・パワーモジュール65とリアクター66等がある。」と記載され、段落【0020】には、「電装品箱仕切板30に設けた図4に示す開口部67」と記載されている。
よって、引用例1には、内部を熱交換器50および送風ファン51が配置される送風機室5と前記インバーター基板63とパワーモジュール65が配置される機械室4とに仕切る仕切り板3と、開口部が形成された電装品箱仕切板30とを有する外胴10が記載されているといえる。
上記(1-a)~(1-f)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「吸込口18から吸い込まれた空気と冷媒とを熱交換する熱交換器50と、
熱交換器50に対向して配置された送風ファン51と、
電装品箱仕切板30の機械室側に配置されるインバーター基板63と、インバーター基板63の上で電装品箱仕切板30に取り付けられるパワーモジュール65と、
内部を熱交換器50および送風ファン51が配置される送風機室5と前記インバーター基板63とパワーモジュール65が配置される機械室4とに仕切る仕切り板3と、開口部が形成された電装品箱仕切板30とを有する外胴10と、
電装品箱仕切板30の送風機室5側の面であって、発熱部品であるパワーモジュール65やインバーター基板63の対面には、それぞれを冷却するための複数のフィン70が上下方向に平行に配置されたヒートシンク7と、を備え、
パワーモジュール65用の第1ヒートシンク71は電装品箱仕切板30に設けた開口部67から送風機室5側へ臨ませて配置され、インバーター基板63用の第2ヒートシンク72は電装品箱仕切板30の中央に設けた開口部から送風機室5側へ臨ませて配置される、
空気調和機の室外機。」
(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された特開2000-22363号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている
(2-a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気回路素子から発生する熱を放散させる放熱フィンに関し、特に当該放熱フィンを、暖房又は冷房により快適な室内環境を提供する空気調和機に適用したものに関するものである。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記室外ユニットには、当該室外ユニットに関する動作制御等を行うコントロールボックスが備えられている。このコントロールボックスは、各種電気回路素子で構成されているが、その中で中心的な役割を担うものの一つが、パワートランジスタである。
【0006】このパワートランジスタは運転時に多量の熱を発生する。この熱を放置しておくとパワートランジスタ自身の動作不良を招くばかりでなく、周囲の電気回路素子にも悪影響を与える。したがって、熱を放散させるような手段が必要となる。パワートランジスタには、この熱の放散を目的として、放熱フィンが備えられている。放熱フィンとは、図4に示すように、パワートランジスタP面に密着する基礎板1と、この基礎板1上に立設された複数の主放熱板2とを備えた構成となっている。放熱フィンはパワートランジスタPから発せられた熱を吸収するとともに、各主放熱板2間を抜ける空気により冷やされる。これによりパワートランジスタPの放熱を行うものである。」
(2-b)「図4
」
上記(2-a)、(2-b)の事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項1」という。)。
「基礎板1に立設された複数の主放熱板2を備えた放熱フィンにおいて、パワートランジスタPと接触する領域の主放熱板2の少なくとも1つは、上記接触する領域以外の主放熱板2よりも大きく構成された空気調和機の放熱フィン。」
また、引用例2には、次の事項も記載されていると認められる(以下「引用例2記載の事項2」という。)。
「基礎板1に立設された複数の主放熱板2を備えた放熱フィンにおいて、パワートランジスタPと接触する領域の主放熱板2は、上記接触する領域以外の主放熱板2のうち、接触する領域に隣接する主放熱板2よりも大きく構成された空気調和機の放熱フィン。」
(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明は「空気調和機の室外機」に関するものであるから、引用発明の「吸込口18から吸い込まれた空気」は、本願補正発明の「室外の空気」に相当する。
よって、引用発明の「吸込口18から吸い込まれた空気と冷媒とを熱交換する熱交換器50」は、本願補正発明の「室外の空気と冷媒との間で熱交換する熱交換器」に相当する。
イ 引用発明の「熱交換器50に対向して配置された送風ファン51」は、本願補正発明の「熱交換器に対向して配置された送風ファン」に相当する。
ウ 引用発明において「パワーモジュール65」や「インバーター基板63」は発熱部品であるから、引用発明の「電装品箱仕切板30の機械室側に配置されるインバーター基板63と、インバーター基板63の上で電装品箱仕切板30に取り付けられるパワーモジュール65」は、本願補正発明の「発熱素子が実装された電子基板」に相当する。
エ 引用発明の「送風機室5」、「機械室4」、「外胴10」は、それぞれ、本願補正発明の「熱交換器室」、「機械室」、「筐体」に相当する。また、引用発明の「仕切り板3」及び「電装品箱仕切板30」は、本願補正発明の「仕切板」に相当する。
よって、引用発明の「内部を熱交換器50および送風ファン51が配置される送風機室5と前記インバーター基板63とパワーモジュール65が配置される機械室4とに仕切る仕切り板3と、開口部が形成された電装品箱仕切板30とを有する外胴10」は、本願補正発明の「内部を前記熱交換器および前記送風ファンが配置される熱交換器室と前記電子基板が配置される機械室とに仕切るとともに、一部に開口部が形成された仕切板を有する筐体」に相当する。
オ 引用発明の「複数のフィン70が上下方向に平行に配置されたヒートシンク7」について、フィン70を平行に配置するためには、ヒートシンク7の複数のフィン70の間に設けられた部材(すなわち、本願補正発明の「主片」に相当する部材)を有していることは明らかである(図6参照)。
また、引用発明において「第1ヒートシンク71は電装品箱仕切板30に設けた開口部67から送風機室5側へ臨ませて配置され」、「第2ヒートシンク72は電装品箱仕切板30の中央に設けた開口部から送風機室5側へ臨ませて配置され」るから、「第1ヒートシンク71」及び「第2ヒートシンク72」(の主片)は、電装品箱仕切板30の送風機室5側から開口部を覆うように設けられているといえる。
さらに、引用発明においては、「パワーモジュール65」及び「インバーター基板63」の対面には「ヒートシンク7」である「第1ヒートシンク71」及び「第2ヒートシンク72」が開口部を覆うように設けられているから、「第1ヒートシンク71」及び「第2ヒートシンク72」(の主片)は、開口部を通じて発熱部品である「パワーモジュール65」や「インバーター基板63」と熱的に結合するといえる。
よって、引用発明の「電装品箱仕切板30の送風機室5側の面であって、発熱部品であるパワーモジュール65やインバーター基板63の対面には、それぞれを冷却するための複数のフィン70が上下方向に平行に配置されたヒートシンク7と、を備え、パワーモジュール65用の第1ヒートシンク71は電装品箱仕切板30に設けた開口部67から送風機室5側へ臨ませて配置され、インバーター基板63用の第2ヒートシンク72は電装品箱仕切板30の中央に設けた開口部から送風機室5側へ臨ませて配置される」点は、
本願補正発明の「仕切板の熱交換器室側から開口部を覆うように設けられた主片と、前記主片から前記送風ファン側に突出する複数の放熱フィンと、を有し、前記主片が前記開口部を通じて前記発熱素子と熱的に結合するヒートシンクと、を備え」る点に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「室外の空気と冷媒との間で熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器に対向して配置された送風ファンと、
発熱素子が実装された電子基板と、
内部を前記熱交換器および前記送風ファンが配置される熱交換器室と前記電子基板が配置される機械室とに仕切るとともに、一部に開口部が形成された仕切板を有する筐体と、
前記仕切板の前記熱交換器室側から前記開口部を覆うように設けられた主片と、前記主片から前記送風ファン側に突出する複数の放熱フィンと、を有し、前記主片が前記開口部を通じて前記発熱素子と熱的に結合するヒートシンクと、を備えた空気調和機の室外機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本願補正発明は、「複数の放熱フィンのうち、主片における、前記主片の発熱素子側の一面における前記発熱素子と接触する領域の前記主片の厚さ方向への投影領域に含まれる接触部位に基端部が接続されている複数の第1放熱フィンの少なくとも1つは、前記複数の放熱フィンの中の前記接触部位以外の部位に基端部が接続されている第2放熱フィンよりも大き」いのに対し、引用発明は、そのように構成されていない点。
[相違点2]
本願補正発明は、「複数の第1放熱フィンの中で主片からの高さが最高である第1放熱フィンの高さは、接触部位に接触する前記発熱素子の発熱量が大きいほど高くなるように設定されている」のに対し、引用発明は、そのように構成されていない点。
(4)判断
ア 上記[相違点1]について検討する。
引用例2記載の事項1の「基礎板1」、「パワートランジスタPと接触する領域の主放熱板2」、「接触する領域以外の主放熱板2」は、本願補正発明の「主片」、「第1放熱フィン」、「第2放熱フィン」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用例2記載の事項1は、本願補正発明の「複数の放熱フィンのうち、主片における、前記主片の発熱素子側の一面における前記発熱素子と接触する領域の前記主片の厚さ方向への投影領域に含まれる接触部位に基端部が接続されている複数の第1放熱フィンの少なくとも1つは、前記複数の放熱フィンの中の前記接触部位以外の部位に基端部が接続されている第2放熱フィンよりも大き」い点に対応する構成を備えるものといえる。
そして、引用発明と引用例2記載の事項1とは、共に、空気調和機に設けられた電気回路素子の熱を放散するヒートシンクの放熱フィンに関する技術である点で共通する。
よって、引用発明のフィン70に引用例2記載の事項1を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
イ 上記[相違点2]について検討する。
ヒートシンクを構成する放熱フィンの高さを、発熱量が大きい発熱素子が設けられた領域ほど高くすることは、周知の技術である。
(例えば、令和1年9月5日付けの拒絶理由通知において引用文献2として引用した特開2016-66639号公報の段落【0011】~【0015】、図1Aに記載された、第2発熱部品4の発熱量が第1発熱部品3の発熱量よりも大きい場合に、第2フィン22を第1フィン21より長くした点、特開2004-47998号公報の段落【0018】、図2に記載された第1の電子部品21は低温で作動し、部品22はより高温で作動するものにおいて、第1のフィン構造12よりも第2のフィン構造13を高くした点を参照のこと。)
そして、引用発明は、パワーモジュール65やインバーター基板63といった発熱素子を有するものであるから、引用発明に周知の技術を適用し、ヒートシンクにおける発熱素子が設けられた領域において、発熱量が大きい発熱素子が設けられた領域ほどヒートシンクの放熱フィンの高さを高くなるように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「従って、当業者であれば、引用文献1に記載された発明に引用文献3、4に記載された技術を適用したところで、通常、第1ヒートシンク71または第2ヒートシンク72におけるインバーター基板63またはパワーモジュール65が固定された部分に対応するフィンの高さは、インバーター基板63およびパワーモジュール65の発熱量とは無関係に設定された構成にしか想到し得ないものと思料する。
つまり、文献1では、例えば第1ヒートシンク71に固定されるパワーモジュール65の発熱量が、第2ヒートシンク72に固定されるインバーター基板63の発熱量よりも大きくても、第1ヒートシンク71の配置スペースが第1ヒートシンク71の前面に設けられた導風カバー8で制約されるため、第1ヒートシンク71のフィンの高さは、第2ヒートシンク72のフィンの高さよりも低く設定されるものと思料する。そして、第2ヒートシンク72のフィンの高さは、第2ヒートシンク72の前面側のスペースに余裕が有る限り、放熱性を優先して高く設定されるものと思料する。
そして、たとえ当業者であっても、引用文献1、3、4を参照した限りでは、請求項1の発明のような、『前記複数の第1放熱フィンの中で前記主片からの高さが最高である第1放熱フィンの高さは、前記接触部位に接触する前記発熱素子の発熱量が大きいほど高くなるように設定されている』構成には容易に想到し得ないものと思料する。」と主張する(「(3-3-1)請求項1について」)。
しかしながら、上記(4)イで検討したとおり、ヒートシンクを構成する放熱フィンの高さを、発熱量が大きい発熱素子が設けられた領域ほど高くすることは、周知の技術である。
そして、インバーター基板63またはパワーモジュール65が固定された部分にスペースの制約があったとしても、許容される範囲の中で放熱フィンの高さを変更することは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
なお、請求人は、令和2年12月15日提出の上申書において補正案を示しているが、1つの発熱素子の接触部位に基端部が接続されている複数の第1放熱フィンのうちの1つの第1放熱フィンの高さを他の少なくとも1つの第1放熱フィンの高さと異なるように構成した点に格別な技術的意義を見いだすことはできず、当該補正案に基づいて補正をしたとしても進歩性を有するとは認められない。
よって、審判請求書における請求人の主張及び令和2年12月15日提出の上申書における請求人の主張及び補正案は採用できない。
(5)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載の事項1及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するから、同法159条第1項の規定において準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮にそうでなくても、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和1年11月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2015-48990号公報(引用例1)
引用文献4:特開2000-22363号公報(引用例2)
3 引用例
引用例1、2及びその記載事項は、前記「第2[理由]3(1)(2)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
上記「第2[理由]3(3)」における検討を踏まえると、本願発明と引用発明とは、
「室外の空気と冷媒との間で熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器に対向して配置された送風ファンと、
発熱素子が実装された電子基板と、
内部を前記熱交換器および前記送風ファンが配置される熱交換器室と前記電子基板が配置される機械室とに仕切るとともに、一部に開口部が形成された仕切板を有する筐体と、
前記仕切板の前記熱交換器室側から前記開口部を覆うように設けられた主片と、前記主片から前記送風ファン側に突出する複数の放熱フィンと、を有し、前記主片が前記開口部を通じて前記発熱素子と熱的に結合するヒートシンクと、を備えた空気調和機の室外機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点3]
本願発明は、「前記複数の放熱フィンのうち、前記主片における、前記主片の発熱素子側の一面における前記発熱素子と接触する領域の前記主片の厚さ方向への投影領域に含まれる接触部位に基端部が接続されている放熱フィンは、前記接触部位以外の部位に基端部が接続されている前記放熱フィンのうち、前記接触部位に基端部が接続されている放熱フィンと隣接する放熱フィンよりも大きい」のに対し、引用発明は、そのように構成されていない点。
上記相違点3について検討する。
引用例2記載の事項2の「基礎板1」、「パワートランジスタPと接触する領域の主放熱板2」、「接触する領域以外の主放熱板2」は、本願発明の「主片」、「第1放熱フィン」、「第2放熱フィン」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用例2記載の事項2は、本願発明の「複数の放熱フィンのうち、主片における、前記主片の発熱素子側の一面における前記発熱素子と接触する領域の前記主片の厚さ方向への投影領域に含まれる接触部位に基端部が接続されている放熱フィンは、前記接触部位以外の部位に基端部が接続されている前記放熱フィンのうち、前記接触部位に基端部が接続されている放熱フィンと隣接する放熱フィンよりも大きい」に対応する構成を備えるものといえる。
したがって、引用発明のフィン70に引用例2記載の事項2を適用し、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
よって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-012888