特許拒絶査定不服審判
2020-012739
多層基板
- 審判番号
- 2020-012739
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-134811外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月11日
- 審決日
- 2021年08月30日
- 公報発行日
- 2021年12月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社村田製作所
- 【請求人代理人】特許業務法人 楓国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-134811「多層基板」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月31日出願公開、特開2019- 16743〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成29年7月10日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年11月11日付け:拒絶理由通知
令和 2年 1月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月11日付け:拒絶査定
令和 2年 9月11日 :審判請求書の提出
令和 3年 4月16日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 3年 6月21日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は、令和3年6月21日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「樹脂を主材料とする複数の絶縁基材層が積層されて形成され、第1領域、および前記第1領域よりも前記絶縁基材層の積層数が少ない第2領域を有する積層体と、
前記複数の絶縁基材層の積層数の相違により前記第1領域と前記第2領域との境界に形成される段差部と、
前記第1領域に形成されるコイルと、
を備え、
前記コイルは、前記複数の絶縁基材層のうち2以上の絶縁基材層に形成される複数のコイル導体パターンと、前記絶縁基材層に形成され、前記複数のコイル導体パターン同士を接続する第1層間接続導体と、を含んで構成され、
前記複数のコイル導体パターンは、前記複数の絶縁基材層の積層方向から視て、少なくとも一部が互いに重なるように配置され、
前記複数の絶縁基材層に形成され、前記積層方向から視て、前記複数のコイル導体パターンよりも前記段差部に近接する位置に配置された複数のダミー導体パターンと、
前記複数のダミー導体パターン同士を接続する複数の第2層間接続導体と、を備え、
前記複数の第2層間接続導体は、前記第1領域に形成されており、
前記積層体は、前記積層方向の一方側に位置する主面であって、前記積層方向に前記段差部を有している主面を備えており、
前記主面は、前記第1領域に位置する第1主面と、前記第2領域に位置する第2主面であって、前記第1主面よりも前記積層方向の他方側に位置している第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぐ段差面とを含んでおり、
前記段差面と前記第2主面とが接している部分である線を定義し、
前記複数の第2層間接続導体は、前記積層方向から見て、前記線に沿って並んでいる、
多層基板。」
第3 拒絶の理由
令和3年4月16日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1
・引用文献等 1-2
・請求項 2-3
・引用文献等 1-3
・請求項 4-5
・引用文献等 1-4
<引 用 文 献 等 一 覧>
1.国際公開第2015/079773号
2.特開2003-209356号公報
3.国際公開第2015/083525号
4.国際公開第2017/051649号
第4 引用文献の記載事項、引用発明等
1 引用文献1
令和3年4月16日付けの当審の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2015/079773号)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
「[0107] (実施形態3)
図12は、実施形態3に係る電磁石の正面断面図である。この例では、電磁石3は積層体70を備えている。この積層体70は、複数の絶縁性の基材層が積層一体化されている。基材層は、LCP樹脂等の可撓性熱可塑性樹脂であり、積層体70は、これら基材層が加熱プレスされることで形成されている。
[0108] 積層体70は、Z方向における同一端部側に、Z方向における高さが異なる第1主面70Aと第2主面70Bとを備えている。すなわち、積層体70は段差を有している。第1主面70A側には、コイル60が形成されている。コイル60は、実施形態1,2と同様、積層体70の各基材層の一方主面に面内コイル導体が形成されていて、これら面内コイル導体が層間接続導体により接続されて形成している。
[0109] 積層体70の第2主面70Bには、外部素子80を実装するための端子80Aが設けられている。コイル60は、一端が接続導体60Aを介して外部素子80に接続されている。
[0110] また、コイル60の外側には、ダミーパターン61A,61Bが形成されている。ダミーパターン61Bは、積層体70の段差部分であって、第2主面70B側に形成されている。仮に、ダミーパターン61Bが形成されていない場合、第1主面70Aと第2主面70Bとの境部分は樹脂のみで形成される。このため、一体形成時に破損するおそれがある。そこで、内部にダミーパターン61Bを設けることで、電磁石3の磁界強度を強めるだけでなく、段差部分の形状保持が可能となる。
[0111] また、第1主面70Aが他の素子を実装する実装面となる場合であっても、段差部分の形状が保持されることで、第1主面70Aを平坦にでき、他の素子が実装できない、又は、他の素子が第1主面70Aから浮いた状態で実装されるといった不具合を防止できる。」
・段落[0107]の記載によれば、「電磁石3は積層体70を備え」、「積層体70は、複数の絶縁性の基材層が積層一体化され」、「基材層が加熱プレスされることで形成され」たものである。
・段落[0107]によれば、「基材層は、LCP樹脂等の可撓性熱可塑性樹脂」である。
・段落[0108]の記載によれば、「積層体70は、」「高さが異なる第1主面70Aと第2主面70Bとを備え」、「段差を有している」。図12によれば、第1主面70Aは高さが高く、第2主面70Bは高さが低いことがみてとれる。
してみると、積層体70は、高さが高い第1主面70Aと高さが低い第2主面70Bとを備え、段差を有しているといえる。
・段落[0108]の記載によれば、「第1主面70A側には、コイル60が形成」されており、「コイル60は、」「各基材層の一方主面に面内コイル導体が形成されていて、これら面内コイル導体が層間接続導体により接続されて形成」されている。
・図12によれば、コイル60は、積層体70中に3層に渡って積層方向から視て互いに重なるように形成されていることがみてとれる。
・段落[0110]の記載によれば、「コイル60の外側には、ダミーパターン61A,61Bが形成」されている。
・段落[0110]の記載によれば、「ダミーパターン61Bは、積層体70の段差部分であって、第2主面70B側に形成」されている。ここで、図12によれば、ダミーパターン61Bはコイル60より第2主面70B側寄りの第1主面70A側に段差に平行に形成されていることがみてとれる。
してみると、段落[0110]の「ダミーパターン61Bは、積層体70の段差部分であって、第2主面70B側に形成」されているとの記載は、「ダミーパターン61Bは、コイル60より第2主面70B側寄りの第1主面70A側に段差に平行に形成」されていることを表しているものと認められる。
・図12によれば、ダミーパターン61Bは2層形成されていることがみてとれる。
・段落[0110]の記載によれば、「ダミーパターン61Bを設けることで、」「段差部分の形状保持が可能となる」ものである。
以上のことより、引用文献1には、実施例3に係る積層体として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「積層体70を備える電磁石3において、
積層体70は、複数の絶縁性の基材層が積層一体化され、基材層が加熱プレスされることで形成され、
基材層は、LCP樹脂等の可撓性熱可塑性樹脂であり、
積層体70は、高さが高い第1主面70Aと高さが低い第2主面70Bとを備え、段差を有しており、
第1主面70A側にはコイル60が形成されており、コイル60は各基材層の一方主面に面内コイル導体が形成されていて、これら面内コイル導体が層間接続導体により接続されて、積層体70中に3層に渡って積層方向から視て互いに重なるように形成されており、
コイル60の外側には、ダミーパターン61A,61Bが形成され、
ダミーパターン61Bは、コイル60より第2主面70B側寄りの第1主面70A側に段差に平行に2層形成され、段差部分の形状保持が可能となる
電磁石3。」
2 引用文献2
令和3年4月16日付けの当審の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2003-209356号公報)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
「【0027】図1(a)において、21は、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム23の片面に貼着された導体箔(本例では厚さ18μmの銅箔)をエッチングによりパターニングした導体パターン22を有する多層基板形成用フィルムである。本例では、樹脂フィルム23としてポリエーテルエーテルケトン樹脂65~35重量%とポリエーテルイミド樹脂35~65重量%とからなる厚さ40~75μmの樹脂フィルムを用いている。」
「【0040】図2は、積層する多層基板形成用フィルム21の上面図である。図2に示されるように、多層基板形成用フィルム21には、多層基板として利用される領域(多層基板形成領域)26が複数箇所(図示の例では25箇所)設けられている。これら複数の多層基板形成領域26の周囲を取り囲むように、周辺部30に四角枠状の導体パターン25及び複数の貫通孔27が設けられる。貫通孔27内には、低温固化材料として、上述した導電ペースト50が、ビアホール24内への充填工程を行う際に同様に充填される。なお、四角枠状の導体パターン25は、多層基板形成用フィルム21に設けられた複数の貫通孔27の一方の開口を塞ぐように、樹脂フィルム23上に配置されている。」
「【0042】また、図5は、図2における多層基板形成領域26を拡大して示した拡大図である。図5に示すように、多層基板形成領域26の表面には電子素子を実装し、電気的接続を取るための電極32が複数形成されている。これらの電極32に対する配線は、下層の導体パターン22及び導電ペースト50による層間接続を用いて行われる。さらに、多層基板形成領域26の外周部には四角枠状の導体パターン34が形成されており、この四角枠状の導体パターン34が一方の開口部を塞ぐ位置に複数の貫通孔35が形成されている。これらの貫通孔35内にも、導電ペースト50が充填されている。
【0043】図6は、多層基板形成用フィルム21が積層された状態における多層基板形成領域26の断面図を示す。図6に示すように、複数の多層基板形成領域26の周囲に形成される貫通孔27と同様に、積層される多層基板形成用フィルム21全層おいて、同じ位置に貫通孔35が設けられる。それら各貫通孔35内には導電ペースト50が充填される。そして、各多層基板形成用フィルム21には、図5に示した四角枠状の導体パターン34がそれぞれ形成されている。
【0044】なお、複数の多層基板形成領域26の周囲に形成される貫通孔27は、例えば、その径が1.5mmで15mm間隔で設けられるのに対し、各多層基板形成領域26の周囲に形成される貫通孔35は、その径が0.1mmで1mm間隔で設けられる。すなわち、各多層基板形成領域26の周囲に設けられる貫通孔35の径及びその間隔は、複数の多層基板形成領域26の周囲に形成される貫通孔27の径及び間隔よりも小さく設定されている。
【0045】積層した多層基板形成用フィルム21を加熱及び加圧する際、多層基板形成領域26のみでなく、上記のように構成された周辺部30に対しても同様に、加熱及び加圧が行われる。この加熱及び加圧により、図4及び図7に示すように、複数の多層基板形成領域26の周囲の貫通孔27及び各多層基板形成領域の周囲の貫通孔35に配設された導電ペースト50が焼結して固化される。この結果、複数の多層基板形成領域26の周辺部30においては、焼結された導電ペースト50と四角枠状の導体パターン25とによって支持部60が形成され、各多層基板形成領域の周囲においては、導電ペースト50と四角枠状の導体パターン34とによって支持部70が形成される。」
「【0057】これら支持部60,70の形成の完了後も、加熱・加圧工程において、熱プレス板80a,80bは、さらにその加熱温度を上昇させつつ、多層基板形成用フィルム21の積層体90を圧縮する方向に圧力を印加し続ける。」
「【0059】しかしながら、本実施形態においては、上述したように、複数箇所の多層基板形成領域26全体を取り囲むように支持部60を形成し、さらに各多層基板形成領域26の周囲を取り囲むように支持部70を形成しているため、熱プレス板80a,80bからの圧力が、それらの支持部60,70によって支持される。従って、特に樹脂フィルム23の軟化状態が顕著となる温度領域において、熱プレス板80a,80bからの圧力が、直接、多層基板形成領域26における樹脂フィルム23に印加することを防止することができる。このため、熱可塑性樹脂の流動量が過大となることを防止し、曳いては、樹脂フィルム23上に形成した導体パターン22の過剰な位置ずれを防止することが可能になる。」
「【0104】(他の実施形態)上述の各実施形態では、複数箇所の多層基板形成領域26を取り囲む周辺部30及び各多層基板形成領域26の周囲に熱プレス板80a,80bからの圧力を支持する支持部60,70を形成したが、どちらか一方をのみを形成するようにしても良い。
【0105】また、各多層基板形成領域26の周囲に形成される支持部70は、多層基板として製品となるべき領域の外側に形成しておき、多層基板の形成工程後に、製品部から切り離しても良い。」
・段落【0027】の記載によれば、「多層基板形成用フィルム」「21は、熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム23の片面に」「導体パターン22を有する」ものである。
そして、段落【0040】の記載によれば、「積層する多層基板形成用フィルム21」「には、多層基板として利用される領域(多層基板形成領域)26が」「設けられ」、段落【0042】の記載によれば、「多層基板形成領域26の外周部には四角枠状の導体パターン34が形成され」、「この四角枠状の導体パターン34が一方の開口部を塞ぐ位置に複数の貫通孔35が形成され」、「これらの貫通孔35内に」「導電ペースト50が充填」されている。
また、段落【0043】の記載によれば、「積層される多層基板形成用フィルム21全層おいて」「貫通孔35が設けられ」、「各貫通孔35内には導電ペースト50が充填され」、「四角枠状の導体パターン34がそれぞれ形成」されている。
以上のことより、「熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルム23の片面に導体パターン22を有し積層される多層基板形成用フィルム21全層において、多層基板として利用される領域(多層基板形成領域)26の外周部に四角枠状の導体パターン34が形成され、この四角枠状の導体パターン34が一方の開口部を塞ぐ位置に複数の貫通孔35が形成され、これらの貫通孔35内に導電ペースト50が充填」されている。
・段落【0045】の記載によれば、「貫通孔35に配置された」「導電ペースト50と四角枠状の導体パターン34とによって支持部70が形成」される。
・段落【0059】の記載によれば、「熱ブレス板80a、80bからの圧力が」「支持部」「70によって支持され」るため、「熱可塑性樹脂の流動量が過大となることを防止し、」「樹脂フィルム23上に形成した導体パターン22の過剰な位置ずれを防止」する。ここで、「位置ずれ」が防止される「導体パターン22」は、「多層基板として利用される領域(多層基板形成領域)26」の導体パターンであることは明らかである。
以上のことより、引用文献2には、以下の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。
「熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムの片面に導体パターンを有し積層される多層基板形成用フィルム全層において、多層基板として利用される領域(多層基板形成領域)の外周部に四角枠状の導体パターンが形成され、この四角枠状の導体パターンが一方の開口部を塞ぐ位置に複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔内に導電ペーストが充填され、貫通孔に配置された導電ペーストと四角枠状の導体パターンとによって支持部が形成され、熱プレス板からの圧力が支持部によって支持されるため、熱可塑性樹脂の流動量が過大となることを防止し、樹脂フィルム上に形成した多層基板として利用される領域(多層基板形成領域)の導体パターンの過剰な位置ずれを防止する」技術。
第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「複数の絶縁性の基材層」は「LCP樹脂等の可撓性熱可塑性樹脂」であるから、本願発明の「樹脂を主材料とする複数の絶縁基材層」に相当する。
引用発明の「積層体70」は「複数の絶縁性の基材層が積層一体化され」「高さが高い第1主面70Aと高さが低い第2主面70Bとを備え」ている。ここで、積層体70は、基材層を積層一体化したものであるから、高さが高い第1主面70A側の領域と、当該領域よりも基材層の積層数が少ない高さが低い第2主面70B側の領域を有することは明らかである。
そして、引用発明の「積層体70」の上記「高さが高い第1主面70A側の領域」、「高さが低い第2主面70B側の領域」はそれぞれ、本願発明の「第1領域」、「前記第1領域よりも前記絶縁基材層の積層数が少ない第2領域」に相当する。
してみると、引用発明の「積層体70」は、本願発明の「樹脂を主材料とする複数の絶縁基材層が積層されて形成され、第1領域、および前記第1領域よりも前記絶縁基材層の積層数が少ない第2領域を有する積層体」に相当する。
(2)引用発明の「積層体70」が有する「段差」は、「高さが高い第1主面70A側の領域」と「高さが低い第2主面70B側の領域」との境界に形成されることは明らかである。また、引用発明の「高さが高い第1主面70A側の領域」と「高さが低い第2主面70B側の領域」で基材層の積層数が異なることも明らかである。
してみると、引用発明の「積層体70」が有する「段差」は、本願発明の「前記複数の絶縁基材層の積層数の相違により前記第1領域と前記第2領域との境界に形成される段差部」に相当する。
(3)引用発明の「第1主面70A側」に形成された「コイル60」は、本願発明の「前記第1領域に形成されるコイル」に相当する。
(4)引用発明の「コイル60」を形成する「面内コイル導体」、「面内コイル導体」を接続する「層間接続導体」はそれぞれ、本願発明の「コイル導体パターン」、「第1層間接続導体」に相当する。
そして、引用発明の「コイル60は、各基材層の一方主面に面内コイル導体が形成されていて、これら面内コイル導体が層間接続導体により接続され」たものであるから、「層間接続導体」により接続される「面内コイル導体」が複数あることは明らかであり、本願発明の「前記コイルは、前記複数の絶縁基材層のうち2以上の絶縁基材層に形成される複数のコイル導体パターンと、前記絶縁基材層に形成され、前記複数のコイル導体パターン同士を接続する第1層間接続導体と、を含んで構成され」ることに相当する。
(5) 引用発明の「コイル60」が「積層体70中に3層に渡って積層方向から視て互いに重なるように形成され」たものであることは、本願発明の「前記複数のコイル導体パターンは、前記複数の絶縁基材層の積層方向から視て、少なくとも一部が互いに重なるように配置され」ることに相当する。
(6)引用発明の「ダミーパターン61Bは、コイル60より第2主面70B側寄りの第1主面70A側に段差に平行に2層形成され」る。
ここで、「ダミーパターン61B」は「積層体70」に2層形成されるから、複数の「基材層」に形成されることは明らかである。また、「ダミーパターン61B」は「コイル60より第2主面70B側寄りの第1主面70A側に」形成されるから、積層方向から視てコイル60より段差に近接する位置に配置されることも明らかである。
してみると、引用発明の「ダミーパターン61B」は、本願発明の「前記複数の絶縁基材層に形成され、前記積層方向から視て、前記複数のコイル導体パターンよりも前記段差部に近接する位置に配置された複数のダミー導体パターン」に相当する。
(7)本願発明は「前記複数のダミー導体パターン同士を接続する複数の第2層間接続導体と、を備え、前記複数の第2層間接続導体は、前記第1領域に形成されて」いるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
(8)引用発明の「積層体70は、高さが高い第1主面70Aと高さが低い第2主面70Bとを備え、段差を有して」いるから、「積層体70」の「高さが高い第1主面70Aと高さが低い第2主面70B」を含む面が積層方向の段差を有した面であることは明らかである。
してみると、引用発明の「積層体70」が当該面を備えることは、本願発明の「前記積層体は、前記積層方向の一方側に位置する主面であって、前記積層方向に前記段差部を有している主面を備え」ることに相当する。
(9)引用発明の「高さが高い第1主面70Aと高さが低い第2主面70B」を含む面が、「第1主面70A」と「第2主面70B」とを繋ぐ段差面を有することは明らかである。
してみると、引用発明の「高さが高い第1主面70Aと高さが低い第2主面70B」を含む面は、本願発明の「前記主面は、前記第1領域に位置する第1主面と、前記第2領域に位置する第2主面であって、前記第1主面よりも前記積層方向の他方側に位置している第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぐ段差面とを含」むことに相当する構成を有する。
また、引用発明の「第2主面70B」が段差面と接していることは明らかであり、引用発明は本願発明の「前記段差面と前記第2主面とが接している」ことに相当する構成を有する。
(10)本願発明は「前記段差面と前記第2主面とが接している部分である線を定義し、前記複数の第2層間接続導体は、前記積層方向から見て、前記線に沿って並んでいる」のに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
(11)引用発明の「電磁石3」は、「面内コイル導体」が形成された「基材層」が積層一体化された「積層体70」を備えるものであるから、多層基板といえる。
2 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「樹脂を主材料とする複数の絶縁基材層が積層されて形成され、第1領域、および前記第1領域よりも前記絶縁基材層の積層数が少ない第2領域を有する積層体と、
前記複数の絶縁基材層の積層数の相違により前記第1領域と前記第2領域との境界に形成される段差部と、
前記第1領域に形成されるコイルと、
を備え、
前記コイルは、前記複数の絶縁基材層のうち2以上の絶縁基材層に形成される複数のコイル導体パターンと、前記絶縁基材層に形成され、前記複数のコイル導体パターン同士を接続する第1層間接続導体と、を含んで構成され、
前記複数のコイル導体パターンは、前記複数の絶縁基材層の積層方向から視て、少なくとも一部が互いに重なるように配置され、
前記複数の絶縁基材層に形成され、前記積層方向から視て、前記複数のコイル導体パターンよりも前記段差部に近接する位置に配置された複数のダミー導体パターンと、を備え、
前記積層体は、前記積層方向の一方側に位置する主面であって、前記積層方向に前記段差部を有している主面を備えており、
前記主面は、前記第1領域に位置する第1主面と、前記第2領域に位置する第2主面であって、前記第1主面よりも前記積層方向の他方側に位置している第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぐ段差面とを含んでおり、
前記段差面と前記第2主面とが接している
多層基板。」
〈相違点1〉
本願発明は「前記複数のダミー導体パターン同士を接続する複数の第2層間接続導体と、を備え、前記複数の第2層間接続導体は、前記第1領域に形成されて」いるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点
〈相違点2〉
本願発明は「前記段差面と前記第2主面とが接している部分である線を定義し、前記複数の第2層間接続導体は、前記積層方向から見て、前記線に沿って並んでいる」のに対して、引用発明はその旨特定されていない点
第6 判断
1 相違点1及び2について
まず、引用文献2記載の技術について整理する。
引用文献2記載の技術(上記「第4」の「2」参照)において、「積層される多層基板形成用フィルム全層」に形成される「四角枠状の導体パターン」は、「多層基板として利用される領域(多層基板形成領域)」の外周部に形成され回路を構成しないものであるから、「ダミーパターン」といえる。
また、引用文献2記載の技術の「複数の貫通孔」は四角枠状の導体パターンが一方の開口部を塞ぐ位置に形成されるから、「複数の貫通孔」内に充填された「導電ペースト」は、各多層基板形成用フィルムに形成された「四角枠状の導体パターン」同士を接続する複数の「層間接続導体」といえる。
してみると、引用文献2記載の技術は、ダミーパターンと、ダミーパターン同士を接続する複数の層間接続導体とによって支持部が形成され、熱プレス板からの圧力が支持部によって支持され、熱可塑性樹脂の流動量が過大となることを防止し、導体パターンの過剰な位置ずれを防止するものである。
次に、引用発明への引用発明2記載の技術の適用について検討する。
引用発明は、積層体70を加熱プレスにより形成するものにおいて、ダミーパターン61Bを設けることで段差部分の形状保持を可能とするものであり、引用発明と引用文献2記載の技術は共に、ダミーパターンを設けることにより加熱プレス時に多層基板を形状保持するものである。
してみると、引用発明に引用文献2記載の技術を適用して、第1主面70A側に段差に平行に2層形成されたダミーパターン61B同士を複数の層間接続導体により接続し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
またこの場合、引用発明の「ダミーパターン61B」は第1主面70A側に段差に平行に2層形成されたものであるから、「ダミーパターン61B」同士を接続する複数の層間接続導体は、第1主面70A側に形成され、段差面と第2主面70Bとが接している部分である線を定義した場合、積層方向から見て、当該線に沿って並んだ構成となる。よって、相違点2に係る構成も、引用発明に引用文献2記載の技術を適用して、当業者が容易になし得たものである。
したがって、引用発明に引用文献2記載の技術を適用して、上記相違点1および2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明に引用文献2記載の技術を適用したことにより得られる効果に対して、当業者が想起し得ないものとも認められない。
2 令和3年6月21日の意見書での請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は令和3年6月21日の意見書において、概略次のように主張している。
ア 「本願請求項1に係る発明は、「段差面と第2主面とが接している部分である線を定義し、複数の第2層間接続導体は、積層方向から見て、線(以下、定義した線と称します)に沿って並んでいる。」という特徴的構成を備えております。具体的には、図4及び図5示す例では、線の伸びる方向と一致するY軸方向に沿って複数の第2層間接続導体V21,V22が、並んでいます。
・・・中略・・・
引用発明1は、ダミー導体パターン同士を接続する第2層間接続導体を開示しておりません。
一方、引用発明2には、層間接続導体に関する記載が存在します。出願人は、「審判官殿は、引用発明2において『複数の第2層間接続導体に相当する導電ペースト50が、多層基板形成用フィルム21の積層される方向に沿って配置されている』と認定している」と思料致しました。」(第4頁第21-35行)
イ 「しかし、前述したように、本願発明の特徴的構成は、本願明細書の図4及び図5に示すように、複数の第2層間接続導体V21,V22が、定義した線に沿って並んでいることです。引用発明2は、段差部を備えておりません。そのため、引用発明2は、第1領域に位置する第1主面と、第2領域に位置する第2主面であって、第1主面よりも積層方向の他方側に位置している第2主面と、第1主面と第2主面とを繋ぐ段差面とを含んでおりません。従いまして、段差面と第2主面とが接している部分である線を定義できません。結果、複数の第2層間接続導体は、積層方向から見て、線に沿って並びません。以上より、引用発明1と引用発明2とを組み合わせたとしても、補正後の請求項1に係る発明になりません。従いまして、本願補正後の請求項1に係る発明は、進歩性を有します。」(第4頁第35-44行)
(2)請求人の主張についての検討
ア 上記主張アについて検討する。
上記「第4」の「2」で述べたように、引用文献2には、多層基板形として利用される領域(多層基板形成成領域)の外周部に四角枠状の導体パターンが形成され、この四角枠状の導体パターンが一方の開口部を塞ぐ位置に複数の貫通孔が形成され、これら貫通孔内に導電ペーストが充填されることが記載されている。
つまり、引用文献2に記載されたものは、四角枠状の導体パターン上の位置に導電ペーストが充填された複数の貫通孔が形成されているものであって、「複数の第2層間接続導体に相当する導電ペースト50が、多層基板形成用フィルム21の積層される方向に沿って配置されている」ものではない。
なお、引用文献2に上記事項が記載されていることは、令和3年4月16日付け拒絶理由通知でも指摘している。
よって、請求人の主張は採用できない。
イ 上記主張イについて検討する。
上記「1 相違点1および2について」において述べたように、引用発明の「ダミーパターン61B」は第1主面70A側に段差に平行に2層形成されたものであるから、引用発明に引用文献2記載の技術を適用したものは、「ダミーパターン61B」同士を接続する複数の層間接続導体は、第1主面70A側に形成され、段差面と第2主面70Bとが接している部分である線を定義した場合、積層方向から見て、当該線に沿って並んだ構成となる。
よって、請求人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-012739