特許拒絶査定不服審判
2020-012307
電力ネゴシエーションプロトコルを用いて電力線を介して負荷デバイスを制御するための装置、方法及びシステム
- 審判番号
- 2020-012307
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-522628外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月02日
- 審決日
- 2021年07月09日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
- 【請求人代理人】柴田 沙希子
- 分類
- P18 .121-Z (H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-522628「電力ネゴシエーションプロトコルを用いて電力線を介して負荷デバイスを制御するための装置,方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 6日国際公開,WO2016/066371,平成29年11月 2日国内公表,特表2017-532746〕について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,2015年10月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年10月28日(以下,「優先日」という。) 欧州)を国際出願日とする出願であって,平成30年9月27日に審査請求されるとともに手続補正書が提出され,令和1年9月24日付けで拒絶理由通知がなされ,令和2年3月30日付けで手続補正書と意見書が提出されたが,令和2年5月13日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされた。これに対して令和2年9月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は,令和2年9月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「負荷デバイスを制御するための装置であって、前記装置が、
前記負荷デバイスの機能を制御するための制御情報を前記負荷デバイスに送信するために、及び/又は所定の状態を知らせるための状態情報を前記負荷デバイスから受信するために、電力ネゴシエーションプロトコルの信号方式を用いるよう適応される制御ユニットであって、前記制御情報を前記負荷デバイスに送信するために及び/又は前記状態情報を前記負荷デバイスから受信するために用いられる前記電力ネゴシエーションプロトコルが、USB Power Deliveryの電力ネゴシエーションプロトコルである制御ユニットと、
電力供給USBピンのみを介して、前記負荷デバイスに電力を供給するために用いられる電力線を通じて、前記制御情報を前記負荷デバイスに送信するための及び/又は前記状態情報を前記負荷デバイスから受信するための送受信機とを有する装置。」
なお,審判請求時の補正は,請求項3,4の「制御コマンド」を「制御情報」に,請求項3の「状態パケット」を「状態情報」に補正するものであり,この補正は,用語を統一することにより記載を明確にするものであるから,特許法17条の2第5項4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当すると判断した。
第3 原査定の理由
原査定の概要は次のとおりである。
(進歩性)本件出願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2014-138457号公報
第4 引用文献,引用発明
1 引用文献1について
(1) 本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2014-138457号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(下線部は当審において付加した。)
ア 「【背景技術】
【0002】
従来、電力供給を伴う通信規格に対応した端末装置と電力線搬送通信ネットワークとの間で相互通信可能な直流コンセントが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
データ線を用いた電力供給技術には、パワーオーバーイーサネット(PoE:Power Over Ethernet)技術やユニバーサルシリアルバス(USB:Universal Serial Bus)技術がある(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
USB技術には、供給電力レベルに応じて、最大2.5WのUSB2.0、最大4.5WのUSB3.0、最大7.5Wのバッテリー充電規格BCS1.2がある。
【0005】
また、USBパワーデリバリー仕様1.0は、従来のケーブルやコネクタとも互換性を備え、USB2.0やUSB3.0、USBバッテリー充電規格BCS1.2とも共存する独立した規格である。この規格では、電圧5V~12V~20V、電流1.5A~2A~3A~5Aの範囲内で、充電電流・電圧を選択可能であり、10W・18W・36W・65W・最大100WまでUSB充電・給電可能である。」
イ 「【0072】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態に係る電力供給装置4Aは、図10に示すように、入力・出力間に配置され、トランス15・ダイオードD1・キャパシタC1およびトランス15の1次側インダクタンスL1と接地電位との間に直列接続されるMOSトランジスタQ1および抵抗RSから構成されるDC/DCコンバータと、MOSトランジスタQ1を制御する1次側コントローラ30と、入力と1次側コントローラ30間に接続され、1次側コントローラ30に電源を供給する電源供給回路10と、DC/DCコンバータ13の出力に接続され、かつキャパシタC2を介して出力端子に接続された絶縁双方向回路28と、絶縁双方向回路28に接続され、出力側の電力情報を1次側コントローラ30にフィードバックするDC/AC成分分離回路26とを備える。
・・・中略・・・
【0075】
LPF29のDC出力は、直接的にDC情報として、1次側コントローラ30にフィードバックされる(FBD)。DC成分除去回路27においてDC/DCコンバータ出力のDC情報(DC成分)が除去されて、入力AC情報のみが1次側コントローラ30にフィードバックされる(FBA1)。この入力AC情報には、出力端子の外部より入力制御信号が、AC重畳されている。
【0076】
さらに、1次側コントローラ30からは、出力AC情報(FBA2)が、絶縁双方向回路28・キャパシタC2を介して出力端子にフィードバックされる。ここで、1次側コントローラ30から出力端子にフィードバックされる出力AC情報(FBA2)には、出力AC情報に出力制御信号が重畳されている。」
ウ 「【0136】
(電力供給システム)
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいては、ケーブルの方向を変えることなく、電力のソースを切り替えることができる。例えば、外部機器からラップトップPCのバッテリーの充電と、ラップトップPCのバッテリーから外部機器(ディスプレイなど)の給電をケーブルの差し替えなしで実現可能である。
【0137】
また、USBPDケーブルを介して、2つのユニット間で、AC重畳による半二重データ通信を実現可能である。
【0138】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいて、バッテリーチャージャーシステム(BCS)46とラップトップPC140との間では、図24(a)に示すように、DC電力供給(DC出力VBUS)とUSBデータ通信(D+、D-、IDなど)をUSBPDケーブル6を用いて伝送可能である。ここで、バッテリーチャージャーシステム(BCS)46・ラップトップPC140には、本実施の形態に係る電力供給装置が搭載されているが、図示は省略している。
【0139】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいて、スマートホン160とラップトップPC140との間においても、図24(a)と同様に、USBPDケーブル6を用いて、DC電力供給(DC出力VBUS)、USBデータ通信(D+、D-、IDなど)を伝送可能である。さらに、図24(b)に示すように、スマートホン160には、USBデータ通信用の送信器(TX)50Tと受信器(RX)50Rが搭載され、ラップトップPC140には、USBデータ通信用の送信器(TX)52Tと受信器(RX)52Rが搭載されている。ここで、スマートホン160・ラップトップPC140には、本実施の形態に係る電力供給装置が搭載されているが、図示は省略している。USBデータ通信用の送信器(TX)50T・52T・受信器(RX)50R・52Rは、それぞれの2次側コントローラ(PD CHIP)16に内蔵されている。
【0140】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいて、2つのパーソナルコンピュータPCA・PCB間のUSBデータ通信および電力供給を説明する模式的ブロック構成は、図25(a)に示すように表され、DC電力に片方向のAC情報AC1が重畳した波形は、図25(b)に示すように模式的に表され、DC電力に逆方向のAC情報AC2が重畳した波形は、図25(b)に示すように模式的に表される。ここで、パーソナルコンピュータPCA・PCB間は、USBPDケーブル6を介して接続される。また、パーソナルコンピュータPCA・PCBには、本実施の形態に係る電力供給装置が搭載されている。図25(a)において、DC/DCコンバータは図示を省略し、2次側コントローラ(PD CHIP)16A・16Bが示されている。図25(a)に示すように、パーソナルコンピュータPCAには、バッテリーEとバッテリーEに接続されるバッテリーチャージャーIC(CHG)53が搭載され、パーソナルコンピュータPCAには、パワーマネージメントIC(PMIC:Power Management IC)54が搭載されている。
【0141】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいては、例えば、パーソナルコンピュータPCBからパーソナルコンピュータPCAのバッテリーEの充電と、パーソナルコンピュータPCAのバッテリーEからパーソナルコンピュータPCBの給電をケーブルの差し替えなしで実現可能である。
【0142】
また、DC出力VBUSに対してキャパシタを介したAC結合により2次側コントローラ(PD CHIP)16A・16Bが接続されていて、パーソナルコンピュータPCA・PCB間において、AC重畳による半二重データ通信を実現している。ここで、キャリア周波数は、例えば、約23.2MHzであり、FSK変復調周波数は、例えば、約300kbpsである。ここで、符号誤り率(BER:Bit Error Rate)は、例えば、約1×10-6であり、ビスト(BIST:built-in self test)用のLSIを内蔵していても良い。
【0143】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいて、2つのユニット56・58間のUSBデータ通信および電力供給を説明する模式的ブロック構成は、図26(a)に示すように表され、DC電力に双方向に伝送可能な制御信号SG12・SG21が重畳した波形は、図26(b)に示すように模式的に表される。2つのユニット56・58は、USBPDケーブル6を介して接続される。2つのユニット56・58は、任意の電子機器であり、本実施の形態に係る電力供給装置が搭載されている。図26(a)において、DC/DCコンバータは図示を省略し、2次側コントローラ(PD CHIP)16A・16Bが示されている。
【0144】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいて、USBPDケーブル6を介してACアダプタ3とスマートホン160を接続した模式的ブロック構成は、図27に示すように表される。
【0145】
ACアダプタ3は、AC/DCコンバータ60・USBPD4Aを備える。スマートホン160は、USBPD5・2次側コントローラ(PD CHIP)16・組込み型コントローラ(EMBC)64・CPU68・PMIC54・バッテリー66・CHG62を備える。
【0146】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいては、例えば、ACアダプタ3からスマートホン160のバッテリー66の充電と、スマートホン160のバッテリー66から外部機器の給電をケーブルの差し替えなしで実現可能である。
【0147】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいて、USBPDケーブル6を介してユニット56とユニット58を接続した模式的ブロック構成は、図28に示すように表される。
【0148】
ユニット56は、AC/DCコンバータ60・USBPD4A・2次側コントローラ(PD CHIP)16Aを備え、ユニット58は、USBPD5・2次側コントローラ(PD CHIP)16B・負荷70を備える。ここで、負荷70は、CPU、バッテリーBAT、コントローラCTRなどで構成可能である。
【0149】
さらに、図28に示すように、2次側コントローラ(PD CHIP)16Aには、USBデータ通信用の送信器(TX)56Tと受信器(RX)560Rが搭載され、2次側コントローラ(PD CHIP)16Bには、USBデータ通信用の送信器(TX)56Tと受信器(RX)56Rが搭載されている。
【0150】
本実施の形態に係る電力供給装置を適用可能な電力供給システムにおいては、例えば、ユニット56からユニット58の給電と、ユニット58から外部機器の給電をケーブルの差し替えなしで実現可能である。
【0151】
また、ユニット56・58間においても、USBPDケーブル6を介して、AC重畳による半二重データ通信を実現している。」
エ 「図24
[図:0001380434000001.jpg]
」
オ 「図25
[図:0001380434000002.jpg]
」
カ 「図26
[図:0001380434000003.jpg]
」
キ 「図28
[図:0001380434000004.jpg]
」
ク 上記ウの段落【0136】,【0137】には,“電力供給システムは,USBPDケーブルを介して,2つのユニット間で,AC重畳による半二重データ通信を実現可能である”ことが記載され,さらに,上記ウの段落【0143】には,図26(上記カ)の実施形態として,“任意の電子機器である2つのユニット56・58間のUSBデータ通信および電力供給を行う電力供給システム”が記載されている。
してみると,引用文献1には,図26の実施形態として,“USBPDケーブル6を介して,任意の電子機器である2つのユニット56・58間で,AC重畳による半二重データ通信を実現可能である,USBデータ通信および電力供給を行う電力供給システムにおけるユニット56”が記載されているといえる。
ケ 図26(a)(上記カ)及び上記ウの段落【0143】によれば,“ユニット56は,2次側コントローラ(PD CHIP)16Aを備えている”といえる。
コ 上記ウの段落【0143】には,図26の実施形態の電力供給システムにおいては,“2つのユニット56・58は,USBPDケーブル6を介して接続される”ことが記載されている。また,USBPDケーブル6は,段落【0138】にも記載されるように,DC電力供給用の線(DC出力VBUS)とデータ通信用の線(D+,D-,ID)から構成されることは技術常識である。
してみると,引用文献1には,“2つのユニット56・58は,DC電力供給用の線(DC出力VBUS)とデータ通信用の線(D+,D-,ID)からなるUSBPDケーブル6を介して接続する”ことが記載されているといえる。
さらに,段落【0143】には,“DC電力に双方向に伝送可能な制御信号SG12・SG21が重畳する”ことが記載され,また,上記イの段落【0075】,【0076】,図26(b)(上記カ)には,“制御信号SG12・SG21の重畳はAC重畳で,制御信号SG12を送信し,SG21を受信する”ことが記載されている。
そして,上記ウの段落【0140】,【0142】には,図25(上記オ)の実施形態の電力供給システムとして,“AC重畳による半二重データ通信を行うために,DC出力VBUSに対してキャパシタを介したAC結合により2次側コントローラ(PD CHIP)16Aを接続し,DC電力にキャリア周波数を約23.2MHzのFSK変復調を行う”ことが記載されている。
してみると,引用文献1には,図26の実施形態の電力供給システムにおいて,“ユニット56においてはDC出力VBUSに対してキャパシタを介したAC結合により2次側コントローラ(PD CHIP)16Aが接続され,DC電力にキャリア周波数を約23.2MHzのFSK変復調によって伝送可能な制御信号SG12・SG21を重畳することで,制御信号SG12を送信し,SG21を受信する”ようにしたものも記載されているといえる。
(2)上記アないしコの記載内容(特に,下線部を参照)から,上記引用文献1には,特に,図26の実施形態に注目すると,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「USBPDケーブル6を介して,任意の電子機器である2つのユニット56・58間で,AC重畳による半二重データ通信を実現可能である,USBデータ通信および電力供給を行う電力供給システムにおけるユニット56において,
2次側コントローラ(PD CHIP)16Aを備え,
2つのユニット56・58は,DC電力供給用の線(DC出力VBUS)とデータ通信用の線(D+,D-,ID)からなるUSBPDケーブル6を介して接続され,ユニット56においてはDC出力VBUSに対してキャパシタを介したAC結合により2次側コントローラ(PD CHIP)16Aが接続され,DC電力にキャリア周波数を約23.2MHzのFSK変復調によって伝送可能な制御信号SG12・SG21を重畳することで,制御信号SG12を送信し,SG21を受信する,
ユニット56。」
第5 対 比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「ユニット56」は,「任意の電子機器である2つのユニット56・58間のUSBデータ通信および電力供給を行う電力供給システム」における一方側の「ユニット」であって,「ユニット58」に対して「制御信号SG12」を「DC電力に」「重畳」することで送信しており,「ユニット56」は「ユニット58」を制御するための装置といえる。また,「ユニット58」は,「任意の電子機器である」から,何らかの負荷を備えるものと認められる。
してみると,引用発明の「ユニット58」は,本願発明の「負荷デバイス」に相当し,引用発明の「ユニット56」は,本願発明の「負荷デバイスを制御するための装置」に相当する。
2 引用発明の「制御信号SG12」は,「ユニット58」に送信される制御信号であって,通常,制御信号は送られた装置の何らかの機能を制御するための信号であるから,「ユニット58」の何らかの機能が制御されるものと認められる。
一方,本願発明の「制御情報」は,「前記負荷デバイスの機能を制御するための」ものであって,「負荷デバイス」が備える何らかの「機能」を制御するための情報といえる。
してみると,引用発明の「制御信号SG12」は,本願発明の「前記負荷デバイスの機能を制御するための制御情報」に相当する。
そして,引用発明の「2次側コントローラ(PD CHIP)16A」は,「DC電力にキャリア周波数を約23.2MHzのFSK変復調によって伝送可能な制御信号SG12」「を重畳」して「送信」するものであり,「ユニット58」の機能を制御するために「制御信号SG12」を「ユニット58」との間で「送信」するものといえるから,引用発明の「2次側コントローラ(PD CHIP)16A」と,本願発明の「前記負荷デバイスの機能を制御するための制御情報を前記負荷デバイスに送信するために、及び/又は所定の状態を知らせるための状態情報を前記負荷デバイスから受信するために、電力ネゴシエーションプロトコルの信号方式を用いるよう適応される制御ユニットであって、前記制御情報を前記負荷デバイスに送信するために及び/又は前記状態情報を前記負荷デバイスから受信するために用いられる前記電力ネゴシエーションプロトコルが、USB Power Deliveryの電力ネゴシエーションプロトコルである制御ユニット」とは,後記の点で相違するものの,“前記負荷デバイスの機能を制御するための制御情報を前記負荷デバイスに送信する制御ユニット”の点では共通する。
なお,この点に関して,審判請求人は,
「引用文献1には、電力供給装置の出力に接続される負荷に応じて、電力供給装置の出力電圧と出力電流との関係を制御するための制御信号、即ち、例えばUSB Power Deliveryの仕様において規定されているような電力ネゴシエーションのための制御信号を、電力供給装置が、USBPDケーブル6に含まれる電力線及びデータ線のうちの電力線を通じて受信する構成しか記載されておらず、USB Power Deliveryの仕様において規定されているような電力ネゴシエーションとは関係のない、負荷の機能を制御するための制御情報、及び所定の状態を知らせるための状態情報については一切記載されておりません。」と審判請求書に記載しており,これは,本願発明の「負荷デバイスの機能を制御するための制御情報、及び/又は所定の状態を知らせるための状態情報」が,「USB Power Deliveryの仕様において規定されているような電力ネゴシエーションとは関係のない、負荷の機能を制御するための制御情報、及び所定の状態を知らせるための状態情報」(下線は,当審において付加した。)である旨を主張しているものと認められる。
しかしながら,請求項1には,「負荷デバイスの機能を制御するための制御情報、及び/又は所定の状態を知らせるための状態情報」とは記載されているが,「USB Power Deliveryの仕様において規定されているような電力ネゴシエーションとは関係のない」ことは記載されていない。また,請求項1には,「負荷デバイスの機能」と記載されており,「機能」には「電力ネゴシエーション」なども含まれる「デバイス」のあらゆる「機能」が含まれるものと認められる。してみると,本願発明の「制御情報」が,「電力ネゴシエーションとは関係のない、負荷の機能を制御するための」ものであるという上記主張を採用することはできない。
3 引用発明の「2次側コントローラ(PD CHIP)16A」は,「USBPDケーブル6」の「出力VBUSに対してキャパシタを介したAC結合」され,「DC電力にキャリア周波数を約23.2MHzのFSK変復調によって伝送可能な制御信号SG12・SG21を重畳することで,制御信号SG12を送信し,SG21を受信する」ものであるから,「USBPDケーブル6」の「出力VBUS」のピンのみを介して,「制御信号SG12・SG21」を「ユニット58」に送受信する送受信機といえる。
してみると,引用発明の「2次側コントローラ(PD CHIP)16A」と,本願発明の「電力供給USBピンのみを介して,前記負荷デバイスに電力を供給するために用いられる電力線を通じて,前記制御情報を前記負荷デバイスに送信するための及び/又は前記状態情報を前記負荷デバイスから受信するための送受信機」とは,後記の点で相違するものの,“電力供給USBピンのみを介して,前記負荷デバイスに電力を供給するために用いられる電力線を通じて,前記制御情報を前記負荷デバイスに送信するための送受信機”の点では共通する。
したがって,本願発明と引用発明とを対比すると,両者は,以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「負荷デバイスを制御するための装置であって,前記装置が,
前記負荷デバイスの機能を制御するための制御情報を前記負荷デバイスに送信するための制御ユニットと,
電力供給USBピンのみを介して,前記負荷デバイスに電力を供給するために用いられる電力線を通じて,前記制御情報を前記負荷デバイスに送信するための送受信機とを有する装置。」
(相違点1)
「制御ユニット」が,本願発明では「前記負荷デバイスの機能を制御するための制御情報を前記負荷デバイスに送信するために、及び/又は所定の状態を知らせるための状態情報を前記負荷デバイスから受信する」ものであり,「送受信機」が「前記制御情報を前記負荷デバイスに送信するための及び/又は前記状態情報を前記負荷デバイスから受信するための」ものであるのに対して,引用発明では「制御信号SG12・SG21」については送受信を行うが,そのような状態情報の受信に関して特定されていない点。
(相違点2)
「制御ユニット」が,本願発明では「電力ネゴシエーションプロトコルの信号方式を用いるよう適応される」ものであって,「前記電力ネゴシエーションプロトコルが、USB Power Deliveryの電力ネゴシエーションプロトコルである」のに対して,引用発明では,その旨の特定がされていない点。
第6 判断
そこで,上記相違点1及び相違点2について検討する。
引用文献1にはUSBPDに関する技術として,段落【0005】に「USBパワーデリバリー仕様」が記載され,この「USBパワーデリバリー仕様」においては,USB Power Deliveryの電力ネゴシエーションプロトコルによって,電力ネゴシエーションに関する制御信号をDC出力にAC重畳し半二重データ通信を行うことは技術常識である。
そして,引用発明は,USBPDケーブルを用いて,電力供給と,DC出力に「制御信号SG12」をAC重畳する半二重データ通信を行うものであり,また,引用発明の「制御信号SG12」をどのような機能の制御に用いるかは当業者が適宜選択なし得る事項であり,さらに,電力供給時に給電装置と受電装置の間で制御信号を送りネゴシエーションを行うことは普通に行われていることである。
してみると,引用発明におけるUSBPDケーブルを用いてDC出力にAC重畳される「制御信号SG12」を電力の制御に用いて,その際に,「USBパワーデリバリー仕様」のUSB Power Deliveryの電力ネゴシエーションプロトコルを採用することで,上記相違点2の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,USB Power Deliveryの電力ネゴシエーションにおいては,受電側(「負荷デバイス」)の受電能力などの状態情報が給電側(「装置」)に送信されるものであり,引用発明において,USB Power Deliveryの電力ネゴシエーションプロトコルを採用すると,「ユニット58」の受電能力などの状態情報が「ユニット56」に送信されるものとなることから,上記相違点1の構成とすることも,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
第7 むすび
以上のとおりであって,本願の請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する
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