2020-010227
太陽電池および太陽電池の製造方法
- 審判番号
- 2020-010227
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-180720外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月21日
- 審決日
- 2021年02月19日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アートビーム株式会社
- 【請求人代理人】岡田 守弘
- 【請求人】農工大ティー・エル・オー株式会社
- 【請求人代理人】岡田 守弘
- 分類
- P18 .537-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続きの経緯
本願は、平成27年9月14日の出願であって、その後の主な手続きの経緯は、以下のとおりである。
同年 7月21日 :審判請求書・手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和2年7月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10の記載からして、「太陽電池」及び「太陽電池の製造方法」に関するものと認められるところ、本願の請求項1の記載は,次のとおりである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】基板上に光を照射したときに高電子濃度を生成する高電子濃度領域を作成すると共に該領域の上に光を透過する絶縁膜を形成し、該絶縁膜に形成した電子取出口から電子を取り出すバス電極を有する太陽電池において、前記バス電極を形成するために、導電性ペーストにガラスフリットとして導電性ガラスを重量比100%の全部、該導電性ガラスを入れた状態で焼成する工程の時間は長くても1分以内、1秒以上の焼成をしてバス電極を形成し、導電性ペーストとして導電性ガラスを使用したことを特徴とする太陽電池。」
第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である、令和元年9月30日付け拒絶理由通知の理由のうち、「【理由1】(明確性)」は、次のとおりのものである。
【理由1】(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1に係る発明は、「太陽電池」という物の発明であるが、当該請求項にはその物の製造方法が記載されている。
物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。
しかしながら、本願明細書等には上記事情について何ら記載がなく、当業者にとって上記事情が明らかであるとも言えない。
したがって、請求項1ないし8に係る発明は明確でない。
第4 当審の判断
1 本願の請求項1の記載
(1)本願発明は、「バス電極を形成するために、導電性ペーストにガラスフリットとして導電性ガラスを重量比100%の全部、該導電性ガラスを入れた状態で焼成する工程の時間は長くても1分以内、1秒以上の焼成をしてバス電極を形成し、」との発明特定事項により特定されるものである。
(2)そして、本願発明は、本願明細書及び図面の記載に加え、当該技術分野の技術常識を考慮しても、「太陽電池」という物の発明であって、上記発明特定事項の「バス電極を形成するために、導電性ペーストにガラスフリットとして……時間は長くても1分以内、1秒以上の焼成をしてバス電極を形成し、」は、本願発明の「太陽電池」の製造方法を特定するものと解されるから、請求項1には「物の製造方法の記載」があり、いわゆる、プロダクト・バイ・プロセスクレームに該当すると認められる。
2 判断
下記の理由により、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は明確ではない。
(1)物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,最高裁判決(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)が、当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という。)が存在するときに限られると判示した趣旨は、そのような特許請求の範囲の記載は,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが不明であり,権利範囲についての予測可能性を奪う結果となることから,これを無制約に許すのではなく,前記事情が存在するときに限って認めるとした点にある。
そこで、まず、出願時において、本願発明の「太陽電池」を、その構造又は特性により特定することについて、不可能・非実際的事情が存在するか否かについて、以下、検討する。
ア この点に関して、請求人は、審判請求書において、引用文献2として引用された特開2003-34548号公報の【0031】を指摘して、引用文献2に記載された発明と請求項1に係る発明との技術的な差異を明確にするために、「1分以内、1秒以上の焼成」と製造方法で特定をせざるを得なかった旨主張する(「[4]理由1(特許法第36条第6項第2号)について」を参照。)。
しかしながら、上記【0031】の記載は、バナジン酸塩ガラス自体を製造する際の、電気伝導度を所定値にするためのアニーリング処理に関するものであって、導電性ガラスを含む導電性ペーストを焼成して電極を形成するための条件ではない。そうすると、本願における製造方法による特定は、引用文献2に記載された発明と請求項1に係る発明との技術的な差異を明確にするものではないし、その点を措くとしても、請求人の上記主張は、そもそも不可能・非実際的事情があるとの主張になっていない。
イ また、請求人は、令和元年11月28日提出の意見書にいて、導電ペーストに本願発明の「導電性ガラス(例えばバナジン酸塩ガラス(請求項3))」を入れて、1分以内、1秒以上で焼成することが必須条件であり、焼成を太陽電池の電極形成部分でしないと太陽電池のバス電極として使える低抵抗(十数オームないし10のマイナス4乗オーム程度)にならない旨主張する(「[3]理由1(明確性)について」を参照。)。
しかしながら、上記主張は、太陽電池の製造方法そのものに関するものであって、「太陽電池」という物の発明である本願発明の、具体的には「バス電極」を特定するにあたり、不可能・非実際的事情があるとの主張になっていない。すなわち、「時間は長くても1分以内、1秒以上の焼成」と特定することでしか、「バス電極」自体の特徴が適切に表現できないといった主張は一切されていない。
ウ また、本願の明細書又は図面、並びに出願時の技術常識を参酌しても、「時間は長くても1分以内、1秒以上の焼成」と特定することでしか、「バス電極」自体の特徴が適切に表現できないといった事情が存在するとは認められない。
(2)そして、「バス電極」を「時間は長くても1分以内、1秒以上の焼成」と特定することによって、「バス電極」自体のどのような物性・特性等が表されているのかが不明である。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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