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特許拒絶査定不服審判

2020-009290

自動車両のためのステアリング制御デバイス

審判番号
2020-009290
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-531117外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年07月02日
審決日
2020年12月22日
公報発行日
2021年07月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (B62D) / P18 .121-Z (B62D) / P18 .575-Z (B62D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2018-531117号「自動車両のためのステアリング制御デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月22日国際公開,WO2017/103407,平成31年 1月31日国内公表,特表2019-502589号〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,2016年(平成28年)12月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年12月17日,フランス国(FR))を国際出願日とする特許出願であって,平成31年4月16日付けで拒絶理由が通知され,令和1年10月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和2年2月21日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,同年7月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和2年7月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年7月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された(下線部は,補正箇所であり,当審で付した。)。 「自動車両のためのステアリング制御デバイスであって,前記ステアリング制御デバイスは,方向の変化を前記車両のステアードホイール(R)に伝送するように設計されており,前記ステアードホイール(R)は,長手方向前方に配置されており,前記方向の変化は,前記車両のドライバー(12)によってステアリングホイール(14)を用いて命令され,前記制御デバイスは,少なくとも1つのステアリングコラム(16)を有しており,前記少なくとも1つのステアリングコラム(16)は,前記ステアリングホイール(14)およびステアリングメカニズム(10)にリンクされており,前記ステアリングメカニズム(10)は,少なくとも1つのトランスミッションピニオン(18)を有しており,前記少なくとも1つのトランスミッションピニオン(18)は,ステアリングロッド(22)に強固に接続されているラック(20)と噛み合っており,前記方向の変化に応じて,左側または右側への前記ロッド(22)の横断方向の移動を引き起こす,ステアリング制御デバイスにおいて, 前記ピニオン(18)および前記ラック(20)が,前記ステアリングロッド(22)の長手方向後側に配置され, 前記制御デバイスは,前記ステアリングホイール(14)の回転の方向に対して,前記ステアリングコラム(16)の回転の方向を反転させるための反転手段(30)を含み, 前記反転手段(30)は,少なくとも1つの第1のギヤホイール(32)および1つの第2のギヤホイール(34)を含む機械的なギヤ手段であり, 前記反転手段(30)及び前記ステアリングコラム(16)は,前記車両に衝撃が加わった場合に前記ステアリングコラム(16)が変形可能になるように配置されていて, 前記ステアリングコラム(16)は,上側シャフト(24),中間シャフト(40),ステアリングポスト(28),及び下側シャフト(26)を含み, 前記第1のギヤホイール(32)は,前記上側シャフト(24)によって前記ステアリングホイール(14)に回転式にリンクされており,前記第2のギヤホイール(34)は,前記中間シャフト(40)に回転式にリンクされており,前記中間シャフト(40)は,前記ステアリングコラム(16)によって前記ステアリングメカニズム(10)にリンクされており, 前記第1のギヤホイール(32)は,第1の外部歯部(36)を有しており,前記第2のギヤホイール(34)は,第2の外部歯部(38)を有しており,前記第1の外部歯部(36)は,前記第2の外部歯部(38)と噛み合い, 前記ピニオン(18)は,前記下側シャフト(26)にリンクされている, ことを特徴とする,ステアリング制御デバイス。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前の令和1年10月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「自動車両のためのステアリング制御デバイスであって,前記ステアリング制御デバイスは,方向の変化を前記車両のステアードホイール(R)に伝送するように設計されており,前記ステアードホイール(R)は,長手方向前方に配置されており,前記方向の変化は,前記車両のドライバー(12)によってステアリングホイール(14)を用いて命令され,前記制御デバイスは,少なくとも1つのステアリングコラム(16)を有しており,前記少なくとも1つのステアリングコラム(16)は,前記ステアリングホイール(14)およびステアリングメカニズム(10)にリンクされており,前記ステアリングメカニズム(10)は,少なくとも1つのトランスミッションピニオン(18)を有しており,前記少なくとも1つのトランスミッションピニオン(18)は,ステアリングロッド(22)に強固に接続されているラック(20)と噛み合っており,前記方向の変化に応じて,左側または右側への前記ロッド(22)の横断方向の移動を引き起こす,ステアリング制御デバイスにおいて, 前記ピニオン(18)および前記ラック(20)が,前記ステアリングロッド(22)の長手方向後側に配置され, 前記制御デバイスは,前記ステアリングホイール(14)の回転の方向に対して,前記ステアリングコラム(16)の回転の方向を反転させるための反転手段(30)を含み, 前記反転手段(30)は,機械的なギヤ手段であり, 前記反転手段(30)及び前記ステアリングコラム(16)は,前記車両に衝撃が加わった場合に前記ステアリングコラム(16)が変形可能になるように配置されていることを特徴とする,ステアリング制御デバイス。」 2.補正の適否 本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「機械的なギヤ手段」を「少なくとも1つの第1のギヤホイール(32)および1つの第2のギヤホイール(34)を含む機械的なギヤ手段」とし,「ステアリングコラム(16)」を「前記ステアリングコラム(16)は,上側シャフト(24),中間シャフト(40),ステアリングポスト(28),及び下側シャフト(26)を含み,」とし,「機械的なギヤ手段」に関して,「前記第1のギヤホイール(32)は,前記上側シャフト(24)によって前記ステアリングホイール(14)に回転式にリンクされており,前記第2のギヤホイール(34)は,前記中間シャフト(40)に回転式にリンクされており,前記中間シャフト(40)は,前記ステアリングコラム(16)によって前記ステアリングメカニズム(10)にリンクされており,」とし,「ピニオン(18)」に関して,「前記ピニオン(18)は,前記下側シャフト(26)にリンクされている」との限定を付すものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア.引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-217983号公報(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,ラックアンドピニオン式のステアリング装置に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来から,剛性が高いわりに小型軽量でコストも安い等の理由から,ラックアンドピニオン式のステアリング装置が多用されている。この種のラックアンドピニオン式のステアリング装置では,ステアリングホイールの回転方向とタイヤの回転方向とを一致させるために,通常はピニオンをラックバーに対して車両前方側に配置させている。 【0003】ところで,例えば,所謂FF車では,ドライブシャフトを避けたレイアウトを採る必要があるため,ラックバーの両端部にボールジョイントを介して取り付けられるラックエンドをステアリングナックルの後端側に取り付けざるを得ない。この場合,例えば悪路走行時等にタイヤからラックエンドに荷重Fが入力されると,ラックエンドがラックバーに対して傾斜して配置されているため,ラックバーにはFcosθなる分力が車両後方側へ向けて作用し,当該分力によってラックバーはピニオンから離間する方向へ押圧されることになる。従来では,このような場合にラックバーがピニオンから離間するのを防止するため,ラックバーの車両後方側にラックガイドを配置し,更にこのラックガイドを圧縮コイルスプリングでラックバー側へ押圧付勢することにより,ラックバーとピニオンとの噛み合い状態の適正化を図っていた。 【0004】しかしながら,上述した構成を用いれば,ラックバーとピニオンとの噛み合い状態の維持を保証することができるものの,ラックバーとピニオンとの歯打ち音が発生するという問題がある。すなわち,前記分力が入力された際のラックバーの挙動に着目すると,ラックバーは当該分力によって圧縮コイルスプリングの付勢力に抗してラックガイドを押圧(ピニオンとの噛み合い状態が維持される範囲で僅かに車両後方側へ変位)した後,当該分力が解除された時点で圧縮コイルスプリングの付勢力によって再びピニオンに押し付けられる。そして,このときに,ラックバーとピニオンとの歯打ち音が発生する。 【0005】この歯打ち音の発生を防止するための現実的な一手法としては,圧縮コイルスプリングのセット荷重を大きく設定(Fcosθ以上となるように設定)することが挙げられる。ところが,この手法を用いると,ラックバーとピニオンとの噛み合いが強化されるため,両者の摺動抵抗が増加し,ハンドル戻りも含めた操舵フィーリングが悪化傾向となる(重たい感じになる)。 【0006】本発明は上記事実を考慮し,ラックバーとピニオンとの歯打ち音の発生防止並びに良好な操舵フィーリングの維持を両立させることができるラックアンドピニオン式のステアリング装置を得ることが目的である。 【0007】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は,ステアリングホイールと共に回転するステアリングシャフトと,このステアリングシャフトの先端部に設けられ,ステアリングシャフトと共に回転するピニオンと,このピニオンと噛み合うように車両幅方向を長手方向として配置されると共に,長手方向の端部が車輪支持体であるステアリングナックルの後端部よりも車両幅方向内側でかつ車両後方側に配置され,ステアリングシャフトの回転運動を車両幅方向への直線運動に変換するラックバーと,このラックバーの長手方向の端部とステアリングナックルの後端部とを相対回転可能に連結するラックエンドと,を含んで構成されるラックアンドピニオン式のステアリング装置であって,ピニオンをラックバーに対して車両後方側に配置した,ことを特徴としている。 【0008】請求項2記載の本発明に係るラックアンドピニオン式のステアリング装置は,請求項1に記載の発明において,ステアリングシャフトを分割すると共に,ステアリングホイールの回転力が入力される側の入力側シャフトの回転方向に対して,ステアリングホイールの回転力をピニオンに伝達する出力側シャフトの回転方向を反転させる反転機構を分割部位付近に設けた,ことを特徴としている。 【0009】請求項3記載の本発明に係るラックアンドピニオン式のステアリング装置は,請求項2に記載の発明において,入力側シャフトの所定部位に入力側シャフトと一体に回転する入力側ギヤを設けると共に,出力側シャフトの所定部位に入力側ギヤと噛み合いかつ出力側シャフトと一体に回転する出力側ギヤを設けることで,反転機構を構成した,ことを特徴としている。 【0010】請求項4記載の本発明に係るラックアンドピニオン式のステアリング装置は,請求項3に記載の発明において,出力側シャフトに車両後方側への所定値以上の荷重が作用した場合にのみ,出力側ギヤと入力側ギヤとの噛み合い状態を解除する解除手段を設けた,ことを特徴としている。 【0011】請求項1記載の本発明では,ステアリングホイールが回転すると,これに伴ってステアリングシャフトが回転し,更にステアリングシャフトの先端部に設けられたピニオンが回転する。このため,ピニオンと噛み合い状態にあるラックバーが車両幅方向へ直線運動し,これによりステアリングホイールの回転運動がラックバーの直線運動に変換される。そして,このラックバーの移動量に応じた回転角だけラックエンドが相対回転し,これにより車輪支持体であるステアリングナックル(即ち,車輪)の舵角が変更される。 【0012】ここで,本発明では,ラックバーの長手方向の端部がステアリングナックルの後端部よりも車両幅方向内側でかつ車両後方側に配置されると共に,このラックバーの長手方向の端部とステアリングナックルの後端部とを相対回転可能に連結するラックエンドが結果的には斜め前方外側へ向かう方向を長手方向として傾斜配置されるレイアウトを前提要件としている。 【0013】そして,この前提要件の下,本発明ではピニオンをラックバーに対して車両後方側に配置したので,以下の作用が得られる。すなわち,例えば悪路走行時等に車輪からラックエンドに所定の荷重Fが入力されると,ラックエンドがラックバーに対して前記の如く傾斜して配置されているため,ラックバーにはFcosθなる分力が車両後方側へ向けて作用する。このため,従来構造(ピニオンがラックバーに対して車両前方側に配置される構造)であれば,当該分力によってラックバーはピニオンから離間する方向へ押圧されることになるが,本発明ではピニオンがラックバーに対して車両後方側に配置されているため,逆にラックバーはピニオンに押し付けられる方向へ押圧されることになる。従って,ラックバーとピニオンとの歯打ち音は発生しない。 【0014】しかも,本発明では,ラックバーへの荷重入力によりラックバーがピニオンに押圧される構成であるため,従来構造において歯打ち音の発生防止のための一手法とされていたラックバーをピニオン側へ押圧付勢する付勢手段のセット荷重を予め大きく設定する構成を採る必要性が無い。このため,ラックバーとピニオンとの摺動抵抗が大きくなることもなく,程よい摺動抵抗に設定することができる。従って,操舵フィーリングも良好に維持される。 【0015】請求項2記載の本発明によれば,ステアリングシャフトを分割すると共に,ステアリングホイールの回転力が入力される側の入力側シャフトの回転方向に対して,ステアリングホイールの回転力をピニオンに伝達する出力側シャフトの回転方向を反転させる反転機構を設けたので,ステアリングギヤボックスの大型化を招くことなく,ステアリングホイールの回転方向と車輪の旋回方向とを一致させることができる。 【0016】つまり,請求項1に記載の本発明の構成においてステアリングホイールの回転方向と車輪の旋回方向とを一致させるための手法自体は種々考えられる。例えば,ピニオンとラックバーとの間にギヤを介在させる等の構成を採ることも可能であるが,この場合にはステアリングギヤボックスが大型化するという不利を招く。しかし,本発明のように,ステアリングシャフトを分割した上で,入力側シャフトの回転方向に対して出力側シャフトの回転方向を反転させる反転機構を分割部位付近に設ければ,ステアリングギヤボックスの大型化を招くことなく,ステアリングホイールの回転方向と車輪の旋回方向とを一致させることができる。 【0017】請求項3記載の本発明によれば,入力側シャフトの所定部位に入力側シャフトと一体に回転する入力側ギヤを設けると共に,出力側シャフトの所定部位に入力側ギヤと噛み合いかつ出力側シャフトと一体に回転する出力側ギヤを設けることで,前述した反転機構を構成したので,車両前部に車両後方側への荷重が入力されて出力側シャフトが車両後方側へ変位すれば,出力側ギヤと入力側ギヤとの噛み合い状態が解除される。このため,入力側シャフトひいてはステアリングホイールは車両後方側へ変位しない。 【0018】請求項4記載の本発明によれば,出力側シャフトに車両後方側への所定値以上の荷重が作用した場合にのみ出力側ギヤと入力側ギヤとの噛み合い状態を解除する解除手段を設けたので,所定値未満の荷重が作用しても入力側ギヤと出力側ギヤとの噛み合い状態は維持される。そして,所定値以上の荷重が作用した場合にのみ,入力側ギヤと出力側ギヤとの噛み合い状態が解除されることになる。つまり,本発明によれば,車両前部に車両後方側へのどの程度の大きさの荷重が入力されたかによって,入力側ギヤと出力側ギヤとの噛み合い状態の解除の可否を決定することができる。 【0019】 【発明の実施の形態】以下,図1~図4を用いて,本発明の実施形態について説明する。 【0020】図1には本実施形態に係るラックアンドピニオン式のステアリング装置10の平面視での概略構成が示されており,又図2にはラックアンドピニオン式のステアリング装置10の側面視での概略構成が示されている。 【0021】これらの図に示されるように,ラックアンドピニオン式のステアリング装置10のステアリングギヤボックス12のギヤボックスハウジング14内には,車両幅方向を長手方向として配置されるラックバー16が配設されている。このラックバー16の長手方向の端部16Aは,前輪18を回転自在に支持するステアリングナックル20の後端部20Aよりも車両幅方向内側でかつ車両後方側に配置されている。このラックバー16の長手方向の端部16Aとステアリングナックル20の後端部20Aとは,ボールジョイント22,24を介して棒状のラックエンド26によって相対回転可能に連結されている。従って,ラックエンド26は,結果的には斜め前方外側へ向かう方向を長手方向として傾斜して配置されている。なお,このようなレイアウトを採るのは,一般に所謂FF車では,前輪18を駆動回転させるドライブシャフト28が車両幅方向を長手方向として配置されることから,これとの干渉を避ける必要があるからである。 【0022】上述したギヤボックスハウジング14内には,ラックバー16と噛み合うピニオン30が収容されている。本実施形態ではこのピニオン30がラックバー16に対して車両後方側に配置されており,この点に本実施形態の基本的な特徴がある。また,ピニオン30をラックバー16に対して後方配置したことに伴って,ラックバー16に対して車両前方側に略円柱形状のラックガイド32が配設されている。さらに,ラックガイド32の後方側には,ギヤボックスハウジング14の開放側端部に螺合されて当該開放側端部を閉止するキャップ34が配置されている。このキャップ34の後端面とラックガイド32の前端面との間には,圧縮コイルスプリング36が介在されている。このため,ラックガイド32は,圧縮コイルスプリング36の付勢力によってラックバー16を押圧する方向(即ち,ラックバー16とピニオン30とを噛み合わせる方向)へ付勢されている。 【0023】また,上述したピニオン30を駆動回転させるステアリングシャフト38は,ステアリングメインシャフト40及びインタミディエイトシャフト42によって構成されている。さらに,本実施形態では,ステアリングメインシャフト40が第1シャフト44と第2シャフト46とに分割されている。なお,第2シャフト46は第1シャフト44に対してオフセットして配置されており,又第1シャフト44及び第2シャフト46はステアリングコラムチューブ48(図2に部分的に図示)に配設された各々一対のベアリング50,52によってそれぞれ軸支されている。 【0024】また,第1シャフト44の後端部は,ステアリングホイール54の図示しないハブの中央部にロックナットで固定されている。従って,ステアリングホイール54が回転すると,第1シャフト44も同一方向へ同一回転量だけ回転する。また,第1シャフト44の前端部には,平歯車である第1ギヤ56が同軸上に固定されている。一方,第2シャフト46の後端部には,同じ平歯車とされ第1ギヤ56と噛み合う第2ギヤ58が同軸上に固定されている。なお,第1ギヤ56並びに第2ギヤ58のピッチ円直径及びピッチは,共に同一に設定されている。従って,第1シャフト44が回転すると,第2シャフト46は第1シャフト44に対して反対方向へ同一回転量だけ回転する。また,第2シャフト46の前端部は,インタミディエイトシャフト42の後端部とフレキシブルジョイント60を介して連結されている。さらに,インタミディエイトシャフト42の前端部は,ピニオン30の上端部と連結されている。 【0025】さらに,図2及び図3(A)に示されるように,上述したステアリングコラムチューブ48の下面側には,バネ鋼又は鋼板等の金属材料によって構成されたフランジ62が取り付けられている。このフランジ62は,ステアリングコラムチューブ48の下面側に固定される固定部62Aと,この固定部62Aから曲面的に屈曲された屈曲部62Bと,この屈曲部62Bから上方へ延出されて第2シャフト46の後端部に当接される当接部62Cと,によって構成されている。このフランジ62は,第2シャフト46を介して車両後方側へ向けて作用する荷重が所定値未満である場合には塑性変形せず,当該荷重が所定値以上である場合には屈曲部62Bを起点として当接部62Cが車両後方側へ塑性変形するようになっている。 【0026】なお,上述したフランジ62に代えて,固定部64A及びこの固定部64Aから上方へ屈曲されてそのまま延出される当接部64Bから成り,側面視でL字形に形成されたフランジ64(図3(B)参照)を用いてもよい。いずれのフランジ62,64を用いるかは,塑性変形荷重の設定をどの程度にするかに応じて適宜選択すればよい。 【0027】次に,本実施形態の作用並びに効果について説明する。ステアリングホイール54が回転すると,これに伴ってステアリングメインシャフト40の第1シャフト44が同一方向へ同一回転量だけ回転する。このため,第1シャフト44の第1ギヤ56と噛み合っている第2ギヤ58を介して,ステアリングメインシャフト40の第2シャフト46も同一回転量だけ回転する。但し,第2シャフト46は第1シャフト44に対して反対方向へ回転する。第2シャフト46が回転すると,フレキシブルジョイント60を介してインタミディエイトシャフト42が第2シャフト46と同一方向へ同一回転量だけ回転される。これにより,インタミディエイトシャフト42と連結されたピニオン30が,インタミディエイトシャフト42と同一方向へ同一回転量だけ回転される。 【0028】ピニオン30が回転すると,このピニオン30と噛み合っているラックバー16が車両幅方向へ直線運動し,これによりステアリングホイール54の回転運動がラックバー16の直線運動に変換される。そして,このラックバー16の移動量に応じた回転角だけラックエンド26が相対回転し,これにより車輪支持体であるステアリングナックル20(即ち,前輪18)の舵角が変更される。なお,このとき,本実施形態では,ピニオン30がラックバー16の車両後方側に配置されていることから,ステアリングホイール54の回転方向と前輪18の旋回方向とが一致する。 【0029】換言すれば,本実施形態では,ピニオン30をラックバー16の車両後方側に配置しているので,反転機構を設けない場合には,ステアリングホイール54の回転方向と前輪18の旋回方向とが逆になるが,ステアリングメインシャフト40を第1シャフト44と第2シャフト46とに分割して第1ギヤ56及び第2ギヤ58を介在させることにより,逆になったステアリングホイール54の回転方向と前輪18の旋回方向とを元に戻している。 【0030】ここで,本実施形態では,ドライブシャフト28を避けるレイアウトを採った関係で,ラックバー16の長手方向の端部16Aがステアリングナックル20の後端部20Aよりも車両幅方向内側でかつ車両後方側に配置されている。そして,このラックバー16の長手方向の端部16Aとステアリングナックル20の後端部20Aとを相対回転可能に連結するラックエンド26が,結果的には斜め前方外側へ向かう方向を長手方向として傾斜して配置されている。このようなレイアウトを採った場合において,例えば悪路走行時等に前輪18からラックエンド26に所定の荷重F(図1参照)が入力されると,ラックエンド26がラックバー16に対して前記の如く傾斜して配置されているため,ラックバー16にはFcosθなる分力が車両後方側へ向けて作用することになる。 【0031】この場合,従来構造(ピニオンがラックバーに対して車両前方側に配置される構造)であれば,当該分力Fcosθによってラックバーはピニオンから離間する方向へ押圧されることになるが,本実施形態によれば,ピニオン30がラックバー16に対して車両後方側に配置されているため,逆にラックバー16はピニオン30に押し付けられる方向へ押圧されることになる。従って,本実施形態によれば,ラックバー16とピニオン30との歯打ち音の発生を防止することができる。 【0032】しかも,本実施形態によれば,ラックバー16への荷重入力によりラックバー16がピニオン30に押圧されて歯打ち音の発生を防止することができる構成であるため,ラックバー16を押圧付勢する圧縮コイルスプリング36のセット荷重を予め大きくする必要がなくなる。従って,圧縮コイルスプリング36のセット荷重を摺動抵抗が程よくなる最適な値に設定することができる。従って,ステアリングホイール54の操舵フィーリングも良好に維持することができる。ひいては,ラックガイド32,圧縮コイルスプリング36,及びキャップ34といった調整機構を廃止することも可能になる。 【0033】総じて言えば,本実施形態によれば,ラックバー16とピニオン30との歯打ち音の発生防止並びに良好な操舵フィーリングの維持を両立させることができる。 【0034】また,本実施形態によれば,ステアリングメインシャフト40を第1シャフト44と第2シャフト46とに分割すると共に,ステアリングホイール54の回転力が入力される側の第1シャフト44の回転方向に対して,ステアリングホイール54の回転力を最終的にはピニオン30に伝達する第2シャフト46の回転方向を反転させる反転機構(即ち,第1ギヤ56及び第2ギヤ58)を設けたので,ステアリングギヤボックス12の大型化を招くことなく,ステアリングホイール54の回転方向と前輪18の旋回方向とを一致させることができる。 【0035】つまり,ステアリングホイール54の回転方向と前輪18の旋回方向とを一致させるための手法自体は種々考えられる。例えば,ピニオン30とラックバー16との間にギヤを介在させる等の構成を採ることも可能であるが,この場合にはステアリングギヤボックス12が大型化するという不利を招く。しかし,本実施形態のように,ステアリングメインシャフト40を第1シャフト44と第2シャフト46とに分割した上で,第1シャフト44の回転方向に対して第2シャフト46の回転方向を反転させる反転機構(第1ギヤ56及び第2ギヤ58)をステアリングメインシャフト40の分割部位付近に設ければ,ステアリングギヤボックス12の大型化を招くことなく,ステアリングホイール54の回転方向と前輪18の旋回方向とを一致させることができる。 【0036】さらに,本実施形態によれば,上述した如く,第1シャフト44の前端部に平歯車である第1ギヤ56を設けると共に第2シャフト46の後端部に第1ギヤ56と同一構成の平歯車とされかつこれと噛み合う第2ギヤ58を設けることで反転機構を構成したので,車両前部に車両後方側への荷重が入力されて第2シャフト46が車両後方側へ変位すれば,第2ギヤ58が第1ギヤ56に対してスライドして両者の噛み合い状態が解除される。従って,本実施形態によれば,第1シャフト44ひいてはステアリングホイール54が車両後方側へ変位するのを防止することができる。その結果,本実施形態によれば,乗員保護性能を向上させることができる。 【0037】この効果について補足すると,従来構造のようにピニオンがラックバーに対して車両前方側に配置されている場合には,ラックバーに荷重が入力されても当該ラックバーがピニオンから離間する方向へ押圧されるだけで,ピニオン自体には当該荷重は入力されない。従って,従来構造の場合には上述した構成を付加するメリットは少ないが,本実施形態のようにピニオン30がラックバー16に対して車両後方側に配置される場合には,ラックバー16に入力された荷重はピニオン30にそのまま伝達されることから,特に有意義な構成といえる。 【0038】さらに,本実施形態によれば,第2シャフト46を介して車両後方側へ向けて作用する荷重が所定値未満である場合には塑性変形せず,当該荷重が所定値以上である場合には塑性変形する当接部62C,64Bを備えたフランジ62,64を配設したので,第2シャフト46を介して車両後方側へ比較的小さな荷重が作用した場合には第1ギヤ56と第2ギヤ58との噛み合い状態を維持し,第2シャフト46を介して車両後方側へ比較的大きな荷重が作用した場合には当該噛み合い状態を解除することができる。従って,本実施形態によれば,車両前部に車両後方側へのどの程度の大きさの荷重が入力されたかによって,第1ギヤ56と第2ギヤ58との噛み合い状態の解除の可否を決定することができる。その結果,本実施形態によれば,噛み合い状態の解除荷重のチューニングの自由度を向上させることができる。付言すれば,上述した噛み合い状態の解除荷重の調整は,図3(A),(B)に示されるフランジ62,64のように,形状を変更することで行ってもよいし,フランジ62,64の板厚等の寸法や材質等によって行ってもよい。 【0039】なお,本実施形態では,ステアリングメインシャフト40を第1シャフト44と第2シャフト46とに分割すると共に,第1シャフト44の前端部に第1ギヤ56を又第2シャフト46の後端部に第1ギヤ56と噛み合う第2ギヤ58を固定することで反転機構を構成すると共に,第1ギヤ56と第2ギヤ58との噛み合い状態を解除する解除手段としてフランジ62,64を配設したが,これに限らず,種々の構成が適用可能である。」 ・「【0043】なお,上述した実施形態では,反転機構をステアリングメインシャフト40の分割部位付近に設けたが,請求項1記載の発明との関係においては,他の部位に反転機構を設けるようにしてもよい。 【0044】また,上述した実施形態では,FF車を例にして説明したが,これに限らず,上述したレイアウトを採った上で,ラックアンドピニオン式のステアリング装置を採用する車両であれば本発明はすべて適用可能である。 【0045】 【発明の効果】請求項1記載の本発明に係るラックアンドピニオン式のステアリング装置は,ラックバーの長手方向の端部がステアリングナックルの後端部よりも車両幅方向内側でかつ車両後方側に配置されると共に,このラックバーの長手方向の端部とステアリングナックルの後端部とを相対回転可能に連結するラックエンドが結果的には斜め前方外側へ向かう方向を長手方向として傾斜配置されるレイアウトを前提要件とした上で,ピニオンをラックバーに対して車両後方側に配置したので,ラックバーとピニオンとの歯打ち音の発生防止並びに良好な操舵フィーリングの維持を両立させることができるという優れた効果を有する。 【0046】請求項2記載の本発明に係るラックアンドピニオン式のステアリング装置は,請求項1に記載の発明において,ステアリングシャフトを分割すると共に,ステアリングホイールの回転力が入力される側の入力側シャフトの回転方向に対して,ステアリングホイールの回転力をピニオンに伝達する出力側シャフトの回転方向を反転させる反転機構を分割部位付近に設けたので,ステアリングギヤボックスの大型化を招くことなく,ステアリングホイールの回転方向と車輪の旋回方向とを一致させることができるという優れた効果を有する。 【0047】請求項3記載の本発明に係るラックアンドピニオン式のステアリング装置は,請求項2に記載の発明において,入力側シャフトの所定部位に入力側シャフトと一体に回転する入力側ギヤを設けると共に,出力側シャフトの所定部位に入力側ギヤと噛み合いかつ出力側シャフトと一体に回転する出力側ギヤを設けることで,反転機構を構成したので,出力側シャフトが車両後方側へ変位するような荷重が車両前部に入力された場合に,入力側シャフトひいてはステアリングホイールが車両後方側へ変位するのを防止することができ,その結果,乗員保護性能を向上させることができるという優れた効果を有する。 【0048】請求項4記載の本発明に係るラックアンドピニオン式のステアリング装置は,請求項3に記載の発明において,出力側シャフトに車両後方側への所定値以上の荷重が作用した場合にのみ,出力側ギヤと入力側ギヤとの噛み合い状態を解除する解除手段を設けたので,車両前部に車両後方側へのどの程度の大きさの荷重が入力されたかによって,入力側ギヤと出力側ギヤとの噛み合い状態の解除の可否を決定することができ,その結果,噛み合い状態の解除荷重のチューニングの自由度を向上させることができるという優れた効果を有する。」 ・図1,図2には,以下の内容が示されている。 ・図1からみて,前輪18は長手方向前方に配置されていることは明らかである。 ・段落【0028】の記載事項と図1からみて,ピニオン30はラックバー16に設けたラックと噛み合っていることは明らかであり,さらに,段落【0028】の「ピニオン30がラックバー16の車両後方側に配置されている」という記載と,図1及び図2からみて,ピニオン30およびラックがラックバー16の車両後方側に配置されていることは明らかである。 これらの記載事項及び図示内容からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「FF車に適用可能なラックアンドピニオン式のステアリング装置10であって,前記ラックアンドピニオン式のステアリング装置10は,ステアリングホイール54が回転すると,これに伴ってステアリングシャフト38が回転し,更にステアリングシャフト38の先端部に設けられたピニオン30が回転し,ピニオン30と噛み合い状態にあるラックバー16が車両幅方向へ直線運動し,ステアリングホイール54の回転運動がラックバー16の直線運動に変換され,このラックバー16の移動量に応じた回転角だけラックエンド26が相対回転し,これにより車輪支持体であるステアリングナックル20(即ち,前輪18)の舵角が変更されるものであり,前輪18は長手方向前方に配置されており,ピニオン30はラックバー16に設けたラックと噛み合っており,ピニオン30およびラックがラックバー16の車両後方側に配置され, ピニオン30を駆動回転させるステアリングシャフト38は,ステアリングメインシャフト40及びインタミディエイトシャフト42によって構成され,ステアリングメインシャフト40が第1シャフト44と第2シャフト46とに分割され,第1シャフト44の後端部は,ステアリングホイール54のハブの中央部にロックナットで固定され,第2シャフト46の前端部は,インタミディエイトシャフト42の後端部とフレキシブルジョイント60を介して連結され,さらに,インタミディエイトシャフト42の前端部は,ピニオン30の上端部と連結されており, ステアリングホイール54の回転力が入力される側の第1シャフト44の回転方向に対して,ステアリングホイール54の回転力を最終的にはピニオン30に伝達する第2シャフト46の回転方向を反転させる反転機構(即ち,第1ギヤ56及び第2ギヤ58)を設け, 第1シャフト44の前端部に平歯車である第1ギヤ56を設けると共に第2シャフト46の後端部に第1ギヤ56と同一構成の平歯車とされかつこれと噛み合う第2ギヤ58を設けることで反転機構を構成し,車両前部に車両後方側への荷重が入力されて第2シャフト46が車両後方側へ変位すれば,第2ギヤ58が第1ギヤ56に対してスライドして両者の噛み合い状態が解除され,第1シャフト44ひいてはステアリングホイール54が車両後方側へ変位するのを防止することができ,乗員保護性能を向上させることができる, ラックアンドピニオン式のステアリング装置10。」 (3)対比 ア.本件補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「FF車」は前者の「自動車両」に相当し,以下同様に,「ラックアンドピニオン式のステアリング装置10」は「ステアリング制御デバイス」又は「制御デバイス」に,「ステアリングホイール54」の「回転」は「方向の変化」に,「前輪18」は「車両のステアードホイール」又は「ステアードホイール」に,「ステアリングホイール54」は「ステアリングホイール」に,「ステアリングシャフト38」は「ステアリングコラム」に,「ピニオン30」は「トランスミッションピニオン」又は「ピニオン」に,「ピニオン30」及び「ラック」は「ステアリングメカニズム」に,「ラックバー16」は「ステアリングロッド」に,「ラック」は「ラック」に,「反転機構」は「反転手段」に,「第1ギヤ56」は「第1のギヤホイール」に,「第2ギヤ58」は「第2のギヤホイール」に,「第1ギヤ56」及び「第2ギヤ58」は「機械的なギヤ手段」に,「第1ギヤ56」の「平歯車」は「第1の外部歯部」に,「第2ギヤ58」の「平歯車」は「第2の外部歯部」に,「第1シャフト44」は「上側シャフト」に,「第2シャフト46」は「中間シャフト」に,「インタミディエイトシャフト42」は「下側シャフト」に,それぞれ相当する。 イ.後者の「FF車に適用可能なラックアンドピニオン式のステアリング装置10」は前者の「自動車両のためのステアリング制御デバイス」に相当する。 ウ.後者は「前記ラックアンドピニオン式のステアリング装置10は,ステアリングホイール54が回転すると,これに伴ってステアリングシャフト38が回転し,更にステアリングシャフト38の先端部に設けられたピニオン30が回転し,ピニオン30と噛み合い状態にあるラックバー16が車両幅方向へ直線運動し,ステアリングホイール54の回転運動がラックバー16の直線運動に変換され,このラックバー16の移動量に応じた回転角だけラックエンド26が相対回転し,これにより車輪支持体であるステアリングナックル20(即ち,前輪18)の舵角が変更されるものであ」るから,「方向の変化」としての「ステアリングホイール54」の「回転」は,通常,車両のドライバーによってステアリングホイールを用いて操作(命令)されるものであり,後者の「ステアリングホイール54」の「回転」は「前輪18」の舵角を変更するから,前者の「前記ステアリング制御デバイスは,方向の変化を前記車両のステアードホイールに伝送するように設計されており,」,「前記方向の変化は,前記車両のドライバーによってステアリングホイールを用いて命令され」ることに相当し,後者の「ステアリングホイール54」の「回転」により「ラックバー16が車両幅方向へ直線運動」するから,前者の「前記方向の変化に応じて,左側または右側への前記ロッドの横断方向の移動を引き起こす」ことに相当する。 エ.後者の「ラックアンドピニオン式のステアリング装置10」は,少なくとも1つの「ステアリングシャフト38」を有しており,前記少なくとも1つの「ステアリングシャフト38」の「第1シャフト44の後端部は,ステアリングホイール54のハブの中央部にロックナットで固定され」ており,「ステアリングシャフト38」の「インタミディエイトシャフト42の前端部は,ピニオン30の上端部と連結されて」いるから,上記ア.の相当関係を踏まえると,前者の「前記制御デバイスは,少なくとも1つのステアリングコラムを有しており,前記少なくとも1つのステアリングコラムは,前記ステアリングホイールおよびステアリングメカニズムにリンクされており,前記ステアリングメカニズムは,少なくとも1つのトランスミッションピニオンを有して」いることに相当する。 オ.後者の「前輪18は長手方向前方に配置されて」いることは,前者の「前記ステアードホイールは,長手方向前方に配置されて」いることに相当する。 カ.後者の「ピニオン30はラックバー16に設けたラックと噛み合って」いることと,前者の「少なくとも1つのトランスミッションピニオンは,ステアリングロッドに強固に接続されているラックと噛み合って」いることとは,「少なくとも1つのトランスミッションピニオンは,ステアリングロッドと一体となったラックと噛み合って」いることにおいて共通する。 キ.後者の「ピニオン30およびラックがラックバー16の車両後方側に配置され」ていることは,前者の「前記ピニオンおよび前記ラックが前記ステアリングロッドの長手方向後側に配置され」ていることに相当する。 ク.そうすると,上記イ.~キ.からみて,後者の「FF車に適用可能なラックアンドピニオン式のステアリング装置10であって,前記ラックアンドピニオン式のステアリング装置10は,ステアリングホイール54が回転すると,これに伴ってステアリングシャフト38が回転し,更にステアリングシャフト38の先端部に設けられたピニオン30が回転し,ピニオン30と噛み合い状態にあるラックバー16が車両幅方向へ直線運動し,ステアリングホイール54の回転運動がラックバー16の直線運動に変換され,このラックバー16の移動量に応じた回転角だけラックエンド26が相対回転し,これにより車輪支持体であるステアリングナックル20(即ち,前輪18)の舵角が変更されるものであり,前輪18は長手方向前方に配置されており,ピニオン30はラックバー16に設けたラックと噛み合っており,ピニオン30およびラックがラックバー16の車両後方側に配置され,ピニオン30を駆動回転させるステアリングシャフト38は,ステアリングメインシャフト40及びインタミディエイトシャフト42によって構成され,ステアリングメインシャフト40が第1シャフト44と第2シャフト46とに分割され,第1シャフト44の後端部は,ステアリングホイール54のハブの中央部にロックナットで固定され,第2シャフト46の前端部は,インタミディエイトシャフト42の後端部とフレキシブルジョイント60を介して連結され,さらに,インタミディエイトシャフト42の前端部は,ピニオン30の上端部と連結されて」いることと,前者の「自動車両のためのステアリング制御デバイスであって,前記ステアリング制御デバイスは,方向の変化を前記車両のステアードホイールに伝送するように設計されており,前記ステアードホイールは,長手方向前方に配置されており,前記方向の変化は,前記車両のドライバーによってステアリングホイールを用いて命令され,前記制御デバイスは,少なくとも1つのステアリングコラムを有しており,前記少なくとも1つのステアリングコラムは,前記ステアリングホイールおよびステアリングメカニズムにリンクされており,前記ステアリングメカニズムは,少なくとも1つのトランスミッションピニオンを有しており,前記少なくとも1つのトランスミッションピニオンは,ステアリングロッドに強固に接続されているラックと噛み合っており,前記方向の変化に応じて,左側または右側への前記ロッドの横断方向の移動を引き起こす,ステアリング制御デバイスにおいて,前記ピニオンおよび前記ラックが,前記ステアリングロッドの長手方向後側に配置され」ていることとは,「自動車両のためのステアリング制御デバイスであって,前記ステアリング制御デバイスは,方向の変化を前記車両のステアードホイールに伝送するように設計されており,前記ステアードホイールは,長手方向前方に配置されており,前記方向の変化は,前記車両のドライバーによってステアリングホイールを用いて命令され,前記制御デバイスは,少なくとも1つのステアリングコラムを有しており,前記少なくとも1つのステアリングコラムは,前記ステアリングホイールおよびステアリングメカニズムにリンクされており,前記ステアリングメカニズムは,少なくとも1つのトランスミッションピニオンを有しており,前記少なくとも1つのトランスミッションピニオンは,ステアリングロッドと一体となったラックと噛み合っており,前記方向の変化に応じて,左側または右側への前記ロッドの横断方向の移動を引き起こす,ステアリング制御デバイスにおいて,前記ピニオンおよび前記ラックが,前記ステアリングロッドの長手方向後側に配置され」ていることにおいて共通する。 ケ.後者の「前記ラックアンドピニオン式のステアリング装置10は,」「ステアリングホイール54の回転力が入力される側の第1シャフト44の回転方向に対して,ステアリングホイール54の回転力を最終的にはピニオン30に伝達する第2シャフト46の回転方向を反転させる反転機構(即ち,第1ギヤ56及び第2ギヤ58)を設け」ていることは,前者の「前記制御デバイスは,前記ステアリングホイールの回転の方向に対して,前記ステアリングコラムの回転の方向を反転させるための反転手段を含」むことに相当する。 コ.後者の「第1シャフト44の前端部に平歯車である第1ギヤ56を設けると共に第2シャフト46の後端部に第1ギヤ56と同一構成の平歯車とされかつこれと噛み合う第2ギヤ58を設けることで反転機構を構成し」ていることは,前者の「前記反転手段は,少なくとも1つの第1のギヤホイールおよび1つの第2のギヤホイールを含む機械的なギヤ手段であ」ること及び「前記第1のギヤホイールは,第1の外部歯部を有しており,前記第2のギヤホイールは,第2の外部歯部を有しており,前記第1の外部歯部は,前記第2の外部歯部と噛み合」うことに相当する。 サ.後者の「車両前部に車両後方側への荷重が入力されて第2シャフト46が車両後方側へ変位すれば,第2ギヤ58が第1ギヤ56に対してスライドして両者の噛み合い状態が解除され,第1シャフト44ひいてはステアリングホイール54が車両後方側へ変位するのを防止することができ,乗員保護性能を向上させることができる」ことにより,第1ギヤ56と第2ギヤ58との噛み合い状態が解除されれば,第2シャフト46が車両後方側に変位しても,第1シャフト44は車両後方側に変位しないことになり,前者の「ステアリングコラム」に相当するステアリングシャフト38の一部を構成する第1シャフト44と第2シャフト46の配置が相対的に変化することになって,ステアリングシャフト38が「変形」していると解せるから,上記ア.の相当関係を踏まえると,後者の「車両前部に車両後方側への荷重が入力されて第2シャフト46が車両後方側へ変位すれば,第2ギヤ58が第1ギヤ56に対してスライドして両者の噛み合い状態が解除され,第1シャフト44ひいてはステアリングホイール54が車両後方側へ変位するのを防止することができ,乗員保護性能を向上させることができる」ことは,前者の「前記反転手段及び前記ステアリングコラムは,前記車両に衝撃が加わった場合に前記ステアリングコラムが変形可能になるように配置されてい」ることに相当する。 シ.後者の「ピニオン30を駆動回転させるステアリングシャフト38は,ステアリングメインシャフト40及びインタミディエイトシャフト42によって構成され,ステアリングメインシャフト40が第1シャフト44と第2シャフト46とに分割され,第1シャフト44の後端部は,ステアリングホイール54のハブの中央部にロックナットで固定され,第2シャフト46の前端部は,インタミディエイトシャフト42の後端部とフレキシブルジョイント60を介して連結され,さらに,インタミディエイトシャフト42の前端部は,ピニオン30の上端部と連結されて」いること,及び,「ステアリングホイール54の回転力が入力される側の第1シャフト44の回転方向に対して,ステアリングホイール54の回転力を最終的にはピニオン30に伝達する第2シャフト46の回転方向を反転させる反転機構(即ち,第1ギヤ56及び第2ギヤ58)を設け」ていることと,前者の「前記ステアリングコラムは,上側シャフト,中間シャフト,ステアリングポスト,及び下側シャフトを含み,前記第1のギヤホイールは,前記上側シャフトによって前記ステアリングホイールに回転式にリンクされており,前記第2のギヤホイールは,前記中間シャフトに回転式にリンクされており,前記中間シャフトは,前記ステアリングコラムによって前記ステアリングメカニズムにリンクされて」いることとは,上記ア.の相当関係を踏まえると,「前記ステアリングコラムは,上側シャフト,中間シャフト,及び下側シャフトを含み,前記第1のギヤホイールは,前記上側シャフトによって前記ステアリングホイールに回転式にリンクされており,前記第2のギヤホイールは,前記中間シャフトに回転式にリンクされており,前記中間シャフトは,前記ステアリングコラムによって前記ステアリングメカニズムにリンクされて」いることにおいて共通する。 ス.後者の「インタミディエイトシャフト42の前端部は,ピニオン30の上端部と連結されて」いることは,前者の「前記ピニオンは,前記下側シャフトにリンクされている」ことに相当する。 セ.そうすると,両者は, 「自動車両のためのステアリング制御デバイスであって,前記ステアリング制御デバイスは,方向の変化を前記車両のステアードホイールに伝送するように設計されており,前記ステアードホイールは,長手方向前方に配置されており,前記方向の変化は,前記車両のドライバーによってステアリングホイールを用いて命令され,前記制御デバイスは,少なくとも1つのステアリングコラムを有しており,前記少なくとも1つのステアリングコラムは,前記ステアリングホイールおよびステアリングメカニズムにリンクされており,前記ステアリングメカニズムは,少なくとも1つのトランスミッションピニオンを有しており,前記少なくとも1つのトランスミッションピニオンは,ステアリングロッドと一体となったラックと噛み合っており,前記方向の変化に応じて,左側または右側への前記ロッドの横断方向の移動を引き起こす,ステアリング制御デバイスにおいて, 前記ピニオンおよび前記ラックが,前記ステアリングロッドの長手方向後側に配置され, 前記制御デバイスは,前記ステアリングホイールの回転の方向に対して,前記ステアリングコラムの回転の方向を反転させるための反転手段を含み, 前記反転手段は,少なくとも1つの第1のギヤホイールおよび1つの第2のギヤホイールを含む機械的なギヤ手段であり, 前記反転手段及び前記ステアリングコラムは,前記車両に衝撃が加わった場合に前記ステアリングコラムが変形可能になるように配置されていて, 前記ステアリングコラムは,上側シャフト,中間シャフト,及び下側シャフトを含み, 前記第1のギヤホイールは,前記上側シャフトによって前記ステアリングホイールに回転式にリンクされており,前記第2のギヤホイールは,前記中間シャフトに回転式にリンクされており,前記中間シャフトは,前記ステアリングコラムによって前記ステアリングメカニズムにリンクされており, 前記第1のギヤホイールは,第1の外部歯部を有しており,前記第2のギヤホイールは,第2の外部歯部を有しており,前記第1の外部歯部は,前記第2の外部歯部と噛み合い, 前記ピニオンは,前記下側シャフトにリンクされている, ステアリング制御デバイス。」 の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。 <相違点1> 前記少なくとも1つのトランスミッションピニオンは,ステアリングロッドと一体となったラックと噛み合っていることに関して,本件補正発明では,ステアリングロッド「に強固に接続されている」ラックであるに対して,引用発明では,ラックバー16「に設けた」ラックである点。 <相違点2> 前記ステアリングコラムが,本件補正発明では,上側シャフト,中間シャフト,「ステアリングポスト」,及び下側シャフトを含むのに対して,引用発明では,「ステアリングメインシャフト40及びインタミディエイトシャフト42によって構成され,ステアリングメインシャフト40が第1シャフト44と第2シャフト46とに分割され」ている点(上側シャフト,中間シャフト,下側シャフトからなる点)。 (4)相違点の判断 <相違点1について> 引用発明では,ラックバー16(ステアリングロッド)自体にラックが設けられているから,ステアリングロッドにラックが強固に接続されているといえる。 そうすると,上記相違点1は,実質的な相違点ではないといえる。 仮に,本件補正発明は,「接続されている」という用語により,ステアリングロッドとラックが元々は「別々の物体であったものを接続した」と解す場合でも,引用発明において,ラックを設けたラックバー16自体は,元々一体で強固なものではあるが,製造等の簡素化を考慮して,それらを別体のものとして形成し強固に接続することは,当業者が適宜採用可能な設計的事項にすぎないものである。 したがって,相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は,引用発明に記載されているか,又は,引用発明に基いて,当業者が適宜なし得たものである。 <相違点2について> ラックアンドピニオン式のステアリング装置において,ステアリングホイールを後端に備える上側シャフト(特開平8-72729号公報の段落【0012】の「ステアリングシャフト4」が相当(図1参照),特開平8-119121号公報の段落【0011】の「ステアリングシャフト4」(図1参照)が相当,及び,特開2002-154447号公報の段落【0014】の「ステアリングシャフト22」(図1参照)が相当。)と下側シャフト(特開平8-72729号公報の段落【0012】の「ピニオンシャフト2」が相当(図1参照),特開平8-119121号公報の段落【0011】の「ピニオンシャフト2」(図1参照)が相当,及び,特開2002-154447号公報の段落【0014】の「ピニオン軸24」(図1参照)が相当。)の間の中間シャフト(特開平8-72729号公報の段落【0012】の「中間シャフト6」が相当(図1参照),特開平8-119121号公報の段落【0011】の「中間シャフト6」(図1参照)が相当,及び,特開2002-154447号公報の段落【0014】の「自在軸継手機構23のシャフト部分」(図1,図3参照)が相当。)を2部材(特開平8-72729号公報の段落【0012】の「アウタシャフト7」,「インナシャフト8」が相当(図1参照),特開平8-119121号公報の段落【0011】の「アウタシャフト7」,「インナシャフト8」 (図1参照)が相当,及び,特開2002-154447号公報の段落【0027】の「雌カップリング84と雌カップリング84に接続された上方のシャフト部分」,「雄カップリング85及び雄カップリング85と一体の下方のシャフト部分」(図3参照)が相当。)で構成することは,本願の優先日前において周知の技術である。 そうすると,ステアリングシャフト(ステアリングポストでもある)である引用発明の「中間シャフト」を2部材から構成して,相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本件補正発明の効果について検討しても,引用発明,上記周知の技術に基いて予期される以上の格別のものがあるとはいえない。 したがって,本件補正発明は,引用発明,及び上記周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)請求人の主張の検討 請求人は,審判請求書(4ページ12行~5ページ9行)において, 「(2)新規性及び進歩性について(理由1,2) 引用文献1には,補正後の請求項1に記載の構成のうち,「前記ステアリングコラム(16)は,上側シャフト(24),中間シャフト(40),ステアリングポスト(28),及び下側シャフト(26)を含み,前記第1のギヤホイール(32)は,前記上側シャフト(24)によって前記ステアリングホイール(14)に回転式にリンクされており,前記第2のギヤホイール(34)は,前記中間シャフト(40)に回転式にリンクされており,前記中間シャフト(40)は,前記ステアリングコラム(16)によって前記ステアリングメカニズム(10)にリンクされており,前記第1のギヤホイール(32)は,第1の外部歯部(36)を有しており,前記第2のギヤホイール(34)は,第2の外部歯部(38)を有しており,前記第1の外部歯部(36)は,前記第2の外部歯部(38)と噛み合い,前記ピニオン(18)は,前記下側シャフト(26)にリンクされている」ことについて開示も示唆もなされていないと審判請求人は思料致します。 審査官殿は,引用文献1には,「反転手段56,58及びステアリングコラムは,車両に衝撃が加わった場合にステアリングコラムが変形可能になるように配置されている(段落[0036])ステアリング制御デバイスが記載されている。」と述べられました。引用文献1の段落[0036]には,「車両前部に車両後方側への荷重が入力されて第2シャフト46が車両後方側へ変位すれば,第2ギヤ58が第1ギヤ56に対してスライドして両者の噛み合い状態が解除される。従って,本実施形態によれば,第1シャフト44ひいてはステアリングホイール54が車両後方側へ変位するのを防止することができる。その結果,本実施形態によれば,乗員保護性能を向上させることができる。」と記載されておりますように,補正後の請求項1に記載の発明とは,その構造が異なります。」旨主張する。 しかしながら,上記(3)サ.に示したように,引用発明の「車両前部に車両後方側への荷重が入力されて第2シャフト46が車両後方側へ変位すれば,第2ギヤ58が第1ギヤ56に対してスライドして両者の噛み合い状態が解除され,第1シャフト44ひいてはステアリングホイール54が車両後方側へ変位するのを防止することができ,乗員保護性能を向上させることができる」ことにより,第1ギヤ56と第2ギヤ58との噛み合い状態が解除されれば,第2シャフト46が車両後方側に変位しても,第1シャフト44は車両後方側に変位しないことになり,前者の「ステアリングコラム」に相当するステアリングシャフト38の一部を構成する第1シャフト44と第2シャフト46の配置が相対的に変化することになって,ステアリングシャフト38が「変形」していると解せるから,本件補正発明の「前記反転手段及び前記ステアリングコラムは,前記車両に衝撃が加わった場合に前記ステアリングコラムが変形可能になるように配置されてい」ることに相当する。 そして,本件補正発明と引用発明との構造上の相違については,上記(4)の<相違点2について>にて示したように,引用発明及び上記周知の技術に適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。 したがって,請求人の上記主張は採用できない。 (6)まとめ したがって,本願補正発明は,引用発明及び上記周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本件補正前の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,「第2 1.(2)」に示したとおりのものと認められる。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。 「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <理由1> ・請求項 1~8 ・引用文献等 1 <理由2> ・請求項 1~8 ・引用文献等 1 ・請求項 1~8 ・引用文献等 1,2 ・請求項 6,8 ・引用文献等 1~3 <引用文献等一覧> 1.特開平10-217983号公報(上記第2 2.(2)ア.の引用文献1と同じ) 2.特開2002-193116号公報 3.米国特許第5070741号明細書」 3.引用文献とその記載事項等 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献,その記載事項及び引用発明は,上記「第2 2.(2)ア.」に記載したとおりである。 4.対比・判断 「第2 2.(3)対比」を参照して,本願発明と引用発明とを対比すると,両者は, 「自動車両のためのステアリング制御デバイスであって,前記ステアリング制御デバイスは,方向の変化を前記車両のステアードホイールに伝送するように設計されており,前記ステアードホイールは,長手方向前方に配置されており,前記方向の変化は,前記車両のドライバーによってステアリングホイールを用いて命令され,前記制御デバイスは,少なくとも1つのステアリングコラムを有しており,前記少なくとも1つのステアリングコラムは,前記ステアリングホイールおよびステアリングメカニズムにリンクされており,前記ステアリングメカニズムは,少なくとも1つのトランスミッションピニオンを有しており,前記少なくとも1つのトランスミッションピニオンは,ステアリングロッドと一体となったラックと噛み合っており,前記方向の変化に応じて,左側または右側への前記ロッドの横断方向の移動を引き起こす,ステアリング制御デバイスにおいて, 前記ピニオンおよび前記ラックが,前記ステアリングロッドの長手方向後側に配置され, 前記制御デバイスは,前記ステアリングホイールの回転の方向に対して,前記ステアリングコラムの回転の方向を反転させるための反転手段を含み, 前記反転手段は,機械的なギヤ手段であり, 前記反転手段及び前記ステアリングコラムは,前記車両に衝撃が加わった場合に前記ステアリングコラムが変形可能になるように配置されている,ステアリング制御デバイス。」 の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。 <相違点1’> 前記少なくとも1つのトランスミッションピニオンは,ステアリングロッドと一体となったラックと噛み合っていることに関して,本願発明では,ステアリングロッド「に強固に接続されている」ラックであるに対して,引用発明では,ラックバー16「に設けた」ラックである点。 <相違点1’について> 相違点1’は,第2 2.(3)の<相違点1>と同様であるから,第2 2.(4)の<相違点1について>と同様に,上記相違点1’は実質的な相違点ではないか,又は,上記相違点1’に係る本願発明の発明特定事項は,引用発明に基いて当業者が適宜なし得たものである。 そうすると,本願発明は,引用文献1に記載された発明(引用発明)であるか,又は,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明(引用発明)であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない,又は,本願発明は,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2020-009290

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