2020-009160
ガス系消火設備およびその施工方法
- 審判番号
- 2020-009160
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-072232外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月01日
- 審決日
- 2021年04月26日
- 公報発行日
- 2021年08月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エア・ウォーター防災株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (A62C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成26年12月4日に出願された特願2014-245874号の一部を平成31年4月4日に新たな特許出願としたものであって、令和元年12月20日付け(発送日:令和2年1月7日)で拒絶理由が通知され、令和2年2月21日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年3月30日付け(発送日:同年4月7日)で拒絶査定がされ、これに対して令和2年7月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和2年12月15日付け(発送日:令和2年12月22日)で当審において拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和3年1月7日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、令和3年1月7日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】施工コストを低減し、かつ、設計の自由度を高めることが可能なガス系消火設備であって、防護区画外に配置されているガス貯蔵容器から前記防護区画へ消火剤ガスを加熱せずに送るための配管と、消火剤ガスが導入される前記防護区画から消火剤ガスを排出するために前記防護区画の側面に接続される単一のダクトを備え、前記防護区画に接続される前記ダクトの本数は合計一本のみであり、前記ダクトは前記防護区画が設けられる建物を縦方向に貫通する孔であって建築躯体のシャフトに接続されることで前記ダクトの全長を短縮しており、前記防護区画は、電子機器が設けられている部屋であり、消火のために水を用いることができず、消火剤ガスを用いて消火を行い、前記建築躯体は前記防護区画を有する、ガス系消火設備。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開2012-115477号公報
2.特開昭61-159040号公報(周知技術を示す文献)
3.特公昭49-40975号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2004-180840号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2002-165896号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2001-149497号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献、引用発明
当審拒絶理由において引用された特開2012-115477号公報(以下「引用文献1」という。)には、「ガス系消火設備の避圧ダンパ駆動装置」に関して、図面と共に次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。
(1)「【0014】図1は本発明の一実施形態の避圧ダンパ駆動装置1が設置されるガス系消火設備2の簡略化した鉛直断面図である。本実施形態のガス系消火設備2は、窒素ガスやアルゴンガスなどの人体に対して安全性の高い不活性ガスを消火剤ガスとして使用する、いわゆるイナート系消火設備とも呼ばれるガス系消火設備であり、避圧ダンパ駆動装置1を具備する。【0015】避圧ダンパ駆動装置1は、ガス系消火設備2に実施される。ガス系消火設備2は、防護区画の対象として規定された空間(以下、防護区画対象空間と記す)3内に設置される複数の噴射ノズル4と、噴射ノズル4にガス系消火剤を導く配管5と、防護区画対象空間3と屋外空間6とを連通する排気ダクト7と、排気ダクト7に設置される避圧ダンパ8と、火災発生時に検知信号を出力する火災感知器9と、火災発生時に押圧操作することよって起動信号を出力する起動釦10と、火災感知器9からの検知信号または起動釦10からの起動信号に応答しガス系消火剤を配管5に供給する消火装置11とを備える。【0016】建物13内の防護区画対象空間3は、コンクリート構造の建物13内のたとえば屋内駐車場であって、建物13を構成するスラブや内壁などによって仕切られ、放出された消火剤ガスが防護区画対象空間3外に流出しないように、建物13のたとえば部屋、通路、倉庫などの密閉構造の空間によって実現される。【0017】排気ダクト7は、金属板などの耐火材料から成り、防護区画対象空間3から屋外空間6へのガスの流れ方向Aに垂直な断面形状が長方形または円形である複数の直管および曲管などを接続して構成される。排気ダクト7の各直管部の寸法は、一例として述べると、縦幅1000mm、横幅1000mm、長さ20~40mである。」
(2)「【0021】前記消火装置11は、窒素ガスやアルゴンガスなどの人体に対して安全性の高い液化された不活性ガスが充填される圧力容器本体17と、圧力容器本体17に装着される容器弁18と、容器弁18を火災感知器9からの起動信号または起動釦10からの起動信号に応答して開放させる作動制御部19とを含む。」
(3)「【0025】ダンパ制御部14は、作動制御部19から入力した起動信号に応答して、避圧ダンパ8を開放させ、放出された消火剤ガスの量に見合った防護区画対象空間3内の空気が順次排気ダクト7を通って屋外空間6へ排出され、放出された消火剤ガスにより防護区画対象空間3内の圧力が上昇することを防止することができる。」
(4)「【0034】本実施形態では、配管5を積極的に加熱することによって、消火剤ガスの放出完了から温度上昇までの時間を短縮し、かつ温度の立上がりを急峻にし、消火剤ガスの放出が完了したことを環境温度や前記従来技術のようなタイマーの設定時間などに拘束されず、早期にかつ高精度で的確に検出しようとするものであるが、本発明の他の実施形態では、前記加熱ヒータ15を用いずに、配管5の外周面の温度を温度センサ12によって検出してもよい。この場合においても、液化消火剤ガスの放出完了を配管5の温度変化が低下から上昇への変曲点によって検出することができるので、従来技術に比べて、消火剤ガスの放出完了を的確に検出することができる。」
(5)図1及び2の図示内容から、圧力容器本体17は防護区画対象空間3外に配置されていることがわかる。
(6)図1から、防護区画対象空間3の側面に接続される単一の排気ダクト7が合計一本のみ接続されていることが看取できる。
上記記載事項及び図面(特に、図1及び2を参照。)の図示内容からみて、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「ガス系消化設備2であって、防護区画対象空間3外に配置されている圧力容器本体17から前記防護区画対象空間3へ消火剤ガスを加熱せずに導くための配管5と、消火剤ガスが導入される前記防護区画対象空間3から空気を排出するために前記防護区画対象空間3の側面に接続される単一の排気ダクト7を備え、前記防護区画対象空間3に接続される前記排気ダクト7の本数は合計一本のみであり、前記防護区画対象空間3は、建物13内の空間である、ガス系消化設備2。」
第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ガス系消化設備2」は、その機能、構成又は技術的意義からみて本願発明における「ガス系消火設備」に相当し、以下同様に、「防護区画対象空間3」は「防護区画」に、「圧力容器本体17」は「ガス貯蔵容器」に、「導く」は「送る」に、「配管5」は「配管」に、「排気ダクト7」は「ダクト」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「空気を排出するために前記防護区画対象空間3の側面に接続される単一の排気ダクト7」と、本願発明における「消火剤ガスを排出するために前記防護区画の側面に接続される単一のダクト」とは、「気体を排出するために前記防護区画の側面に接続される単一のダクト」という限りにおいて一致している。
よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
「ガス系消火設備であって、防護区画外に配置されているガス貯蔵容器から前記防護区画へ消火剤ガスを加熱せずに送るための配管と、消火剤ガスが導入される前記防護区画から気体を排出するために前記防護区画の側面に接続される単一のダクトを備え、前記防護区画に接続される前記ダクトの本数は合計一本のみである、ガス系消火設備。」
〔相違点1〕
本願発明においては「施工コストを低減し、かつ、設計の自由度を高めることが可能な」ガス系消火設備であって、「ダクトは前記防護区画が設けられる建物を縦方向に貫通する孔であって建築躯体のシャフトに接続されることで前記ダクトの全長を短縮している」ガス系消化設備であるのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。
〔相違点2〕
「気体を排出するために前記防護区画の側面に接続される単一のダクト」に関して、本願発明においては「消火剤ガス」を排出するために前記防護区画の側面に接続される単一のダクトであるのに対して、引用発明においては「空気」を排出するために前記防護区画対象空間3の側面に接続される単一の排気ダクト7である点。
〔相違点3〕
本願発明においては、防護区画は、「電子機器が設けられている部屋であり、消火のために水を用いることができず、消火剤ガスを用いて消火を行い、前記建築躯体は前記防護区画を有する」のに対して、引用発明においては、防護区画対象空間3は、「建物13内の空間である」点。
上記相違点1について検討する。
建物の室内空間内の気体を排出するダクトを、建物を縦方向に貫通する孔であって建築躯体のシャフトに接続することは、本願の原出願前に周知の技術である(以下「周知技術1」という。例えば、当審拒絶理由において示した引用文献2(特開昭61-159040号公報)の1ページ右下欄14ないし19行、当審拒絶理由において示した引用文献3(特公昭49-40975号公報)の2欄35行ないし3欄2行及び第1A図、当審拒絶理由において示した引用文献4(特開2004-180840号公報)の段落【0036】並びに図5及び6を参照。)。
引用発明において周知技術1を適用して、ダクトを防護区画が設けられる建物を縦方向に貫通する孔であって建築躯体のシャフトに接続することは、当業者が容易に想到できたことである。
その結果、施工コストを低減し、かつ、設計の自由度を高めることが可能となることや、ダクトの全長が短縮されることは、当業者であれば、容易に理解できることである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において周知技術1を適用することにより、当業者が容易に想到できたことである。
上記相違点2について検討する。
ダクトから消火ガスを排出することは、本願の原出願前に周知の技術である(以下「周知技術2」という。例えば、当審拒絶理由において示した引用文献5(特開2002-165896号公報)の段落【0002】、【0012】及び【0019】、当審拒絶理由において示した引用文献6(特開2001-149497号公報)の段落【0003】、【0023】及び【0032】を参照。)。
引用発明において周知技術2を参酌し、排気ダクト7を、消火剤ガスを排出するために接続されるダクトとすることにより、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
上記相違点3について検討する。
引用発明は、消火剤ガスとして窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを用いるものであるところ(上記第4 (1)及び(2)を参照。)、電子機器のように消火のために水を用いることができないものに対して、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスの消火剤ガスを用いて消火を行うことは、本願の原出願前に周知の技術である(以下「周知技術3」という。必要であれば、特開2014-33903号公報(公開日:平成26年2月24日)の段落【0002】、特開平11-235395号公報の段落【0010】及び【0011】を参照。)。
周知技術3を踏まえれば、引用発明において「防護区画対象空間3」を電子機器が設けられている部屋とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
また、引用発明における「建物13」は、段落【0016】(上記第4 (1))の記載を参酌すれば、建築躯体を備えており、その内部に「防護区画対象空間3」を有しているといえる。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明において周知技術3を参酌することにより、当業者が容易に想到できたことである。
そして、全体としてみても、本願発明が奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1ないし3から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 請求人の主張について
請求人は令和3年1月7日の意見書の(4)において次のように主張している。
〔主張1〕
「(引用文献1について)この発明においては配管5を加熱することが必須の構成要件となっており、配管5を加熱しないことは、引用文献1の発明の本来の目的に反する変更であるから、引用文献1において配管5を加熱しないように変更することは、阻害要因があり当業者にとって自明なものではありません。」
〔主張2〕
「引用文献2から6は、いずれも本願請求項1のような消火剤ガスを用いて消火を行う防護区画を有する建築躯体に関するものではありません。本願の建築躯体(建物)は一般の建物ではなく、消火剤ガスを用いて消火を行う防護区画を有するものであり、特別な構造を有しています。従いまして、引用文献2から6の建物とは技術分野が異なるものであり、引用文献2から6は、ガス消火を行う建物の周知技術ではありません。」
主張1について検討すると、引用文献1の段落【0034】(上記第4 (4))には、配管5に加熱ヒータ15を用いなくてもよい旨が記載されているから、請求人の主張は当を得ない。
主張2について検討すると、引用文献5及び6には、区画を設けた建物において消火ガスを用いて消火を行うことが記載されており、また、仮に、引用文献2ないし6に記載された事項が、消火剤ガスを用いて消火を行う防護区画を有するものではないとしても、ある区画や室内の気体をその外へ排出するという点で引用発明と機能を同じくするものであるから、引用発明と引用文献2ないし6に記載された事項とは、相互に参照することがあり得ないという程の技術分野の相違があるとは認められない。
よって、請求人の上記主張はいずれも採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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