特許拒絶査定不服審判
2020-008365
基板処理装置、気化システム及びミストフィルタ並びに半導体装置の製造方法
- 審判番号
- 2020-008365
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-061400
- 請求日
- 2020年06月17日
- 審決日
- 2021年01月20日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
- 審判長/審判官
- 審判長 辻本 泰隆
- 審判官 加藤 浩一
- 審判官 ▲吉▼澤 雅博
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017- 61400「基板処理装置,気化システム及びミストフィルタ並びに半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月18日出願公開,特開2018-164035,請求項の数(14)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成29年3月27日の特許出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
令和 元年12月13日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月 6日 :意見書
令和 2年 2月 6日 :手続補正書
令和 2年 3月12日付け:拒絶査定(以下,「原査定」という。)
令和 2年 6月17日 :審判請求書
令和 2年 6月17日 :手続補正書
第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月12日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし16に係る発明は,以下の引用文献1ないし3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2013-232624号公報
2.特開平08-270430号公報
3.米国特許出願公開第2014/0157737号明細書
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1ないし14に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1ないし14に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は,令和2年6月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
基板を収容する処理室と,
前記処理室に原料ガスを供給する処理ガス供給系と,
前記処理室を排気する排気系と,
を備え,
前記処理ガス供給系は,
液体原料等の原料が供給される気化器と,
前記気化器の下流に配置されたミストフィルタと,を有し,
前記ミストフィルタは,互いに異なる位置に,前記原料ガスの流路として複数の孔により形成される流路が各々配置される部分と,前記流路を通過した前記原料ガスの流れ方向に面する位置に設けられる複数の溝が配置される部分と,をそれぞれ有する少なくとも2種のプレートを組み合わせて構成される際,
中心付近に前記溝が複数設けられ,外周側に前記孔が複数設けられる第1プレートと,外周側に前記溝が複数設けられ,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレートと,が交互に配置され,
前記第1プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第2プレートに設けられる前記溝に衝突させ,前記第2プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第1プレートに設けられる前記溝に衝突させるように構成される基板処理装置。
【請求項2】
前記溝は,凹凸形状,V字形状,ノコギリ刃形状よりなる群から選択される請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記溝の深さと前記溝の幅の比は,0.5乃至2の範囲である請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記溝の開き角度は,60°乃至120°の範囲である請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1プレートに設けられる前記溝は,前記第1プレートの中心から同心円状に等間隔で形成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1プレートと前記第2プレートは,前記孔及び前記溝が形成されるプレート部と,前記プレート部の外周に設けられ前記孔及び前記溝が形成されない外周部とをそれぞれ有し,前記外周部の厚さは前記プレート部の厚さよりも大きく設定され,前記第1プレートと前記第2プレートの前記外周部同士が接することによって前記第1プレートと前記第2プレートの部間に空間が形成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理ガス供給系は,更に,前記ミストフィルタの下流に配置されたガスフィルタを有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記気化器,前記ミストフィルタ,前記ガスフィルタは,夫々分離して構成される請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記ミストフィルタは,前記第1プレートと前記第2プレートを加熱するヒータを備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1プレートと前記第2プレートは金属から構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第1プレートと前記第2プレートは,前記流路を構成する孔及び前記溝を除いて同一あるいは実質的に同一形状に構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
液体原料が供給される気化器と,
前記気化器の下流に配置されたミストフィルタと,を有し,
前記ミストフィルタは,互いに異なる位置に原料ガスの流路として複数の孔により形成される流路が各々配置される部分と,前記流路を通過した前記原料ガスの流れ方向に面する位置に設けられる複数の溝が配置される部分と,をそれぞれ有する少なくとも2種のプレートを組み合わせて構成される際,
中心付近に前記溝が複数設けられ,外周側に前記孔が複数設けられる第1プレートと,外周側に前記溝が複数設けられ,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレートと,が交互に配置され,
前記第1プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第2プレートに設けられる前記溝に衝突させ,前記第2プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第1プレートに設けられる前記溝に衝突させるように構成される気化システム。
【請求項13】
互いに異なる位置に原料ガスの流路として複数の孔により形成される流路が各々配置される部分と,前記流路を通過した前記原料ガスの流れ方向に面する位置に設けられる複数の溝が配置される部分と,をそれぞれ有する少なくとも2種のプレートを組み合わせて構成されるミストフィルタであって,
中心付近に複数の前記溝が設けられ,外周側に複数の前記孔が設けられる第1プレートと,外周側に複数の前記溝が設けられ,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレートが交互に配置され,前記第1プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第2プレートに設けられる前記溝に衝突させ,前記第2プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第1プレートに設けられる前記溝に衝突させるよう構成されるミストフィルタ。
【請求項14】
処理室に基板を搬入する工程と,
互いに異なる位置に原料ガスの流路として複数の孔により形成される流路が各々配置される部分と,前記流路を通過した前記原料ガスの流れ方向に面する位置に設けられる複数の溝が配置される部分と,をそれぞれ有する少なくとも2種のプレートを組み合わせて構成されるミストフィルタであって,中心付近に複数の前記溝が設けられ,外周側に複数の前記孔が設けられる第1プレートと,外周側に複数の前記溝が設けられ,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレートが交互に配置され,前記第1プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第2プレートに設けられる前記溝に衝突させ,前記第2プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第1プレートに設けられる前記溝に衝突させるよう構成されるミストフィルタを介して前記原料ガスを前記処理室に供給して前記基板を処理する工程と,
前記処理室から基板を搬出する工程と,
を有する半導体装置の製造方法。」
第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項3】
基板を収容する処理室と,
前記処理室に処理ガスを供給する処理ガス供給系と,
前記処理室を排気する排気系と,
を備え,
前記処理ガス供給系は,
液体原料が供給される気化器と,
前記気化器の下流に配置されたミストフィルタと,
を有し,
前記ミストフィルタは,異なる位置に穴を有する少なくとも2種のプレートを複数枚組み合わせて構成される基板処理装置。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体装置の製造方法,基板処理方法,基板処理装置,気化システムおよびミストフィルタに関し,特に液体原料を使用して半導体ウエハを処理する工程を有する半導体装置の製造方法,基板処理方法ならびにこれらに好適に使用される気化システムおよびミストフィルタに関する。」
「【0021】
図4,図5を参照すれば,ミストフィルタ300のミストフィルタ本体350は,両端の端部プレート310,340と,端部プレート310,340間に配置された2種類のプレート320,330とを備えている。上流側の端部プレート310には継手312が取り付けられている。下流側の端部プレート340には継手342が取り付けられている。端部プレート310および継手312内にはガス経路311が形成されている。端部プレート340および継手342内にはガス経路341が形成されている。継手312と継手342(ガス経路311とガス経路341)は,それぞれガス供給配管232aに接続される。
【0022】
2種類のプレート320,330はそれぞれ複数個設けられ,端部プレート310,340間に交互に配置されている。プレート320は平板状のプレート(プレート部)328と,プレート328の外周に設けられた外周部329とを備えている。プレート328には,その外周付近のみに穴322が複数設けられている。プレート330は平板状のプレート(プレート部)338と,プレート338の外周に設けられた外周部339とを備えている。プレート338には,その中心付近のみ(プレート328において穴322が形成される位置とは異なる位置)に穴332が複数設けられている。ミストフィルタ300は,プレート320とプレート330を複数枚組み合せることによって構成される。
【0023】
プレート320とプレート330は,穴322,332の形成位置を除き,同一あるいは略同一形状とされる。平板状のプレート328とプレート338は,平面視円形を呈し,穴322,332の形成位置を除き,同形状あるいは略同形状とされる。複数の穴322は,プレート328の外周側に,同心円を描くように形成される。複数の穴332は,プレート338の中心側に,同心円を描くように形成される。ここで,複数の穴322によって描かれる円と複数の穴332によって描かれる円の半径は相違させられる。具体的には,複数の穴322によって描かれる円の半径の方が,複数の穴332によって描かれる円の半径よりも大きい。換言すれば,プレート328において穴322が形成される領域と,プレート338において穴332が形成される領域は,異なる。それぞれの領域は,プレート320とプレート330を交互に配置(積層,重ね合わせ)したときに,その積層方向において,互い違いとなる位置に設定される。これにより,プレート320,330を交互に配置することによって,ミストフィルタ300の上流側から下流側に向け,穴322と穴332が互い違いに配置される。すなわち,穴322と穴332は,ミストフィルタ300の上流側から下流側に向け,互いに重ならないように配置される。
【0024】
プレート320,330の外周部329,339の厚さは,プレート328,338の厚さよりも大きく設定される。外周部329,339のそれぞれが,隣接するプレートの外周部329,339と接することにより,各プレート328,338の間には空間(後述)が形成される。また,外周部329,339は,プレート328,338に対してオフセットされた位置に形成される。より具体的には,外周部329,339は,その一方の面(プレート320とプレート330の積層方向における一方の面)がプレート328,338の平面から突出するように形成され,他方の面がプレート328,338の縁部上に位置するように形成される。これにより,プレート320とプレート330を積層したときに,プレート320の外周部329がプレート330のプレート338の縁部に嵌め合わされると共に,プレート330の外周部339がプレート320のプレート328の縁部に嵌め合わされ,プレート320,330が互いに位置合わせされる。
【0025】
このようなプレート320,330を交互に配置することによって,入り組んだ複雑なガス経路370となり,気化不良や再液化で発生した液滴が,加熱された壁面(プレート328,338)に衝突する確率を高めることができる。なお,穴322,332の大きさはミストフィルタ本体350内の圧力に依存し,好ましくは,直径1~3mmである。下限値の根拠は,穴の大きさがあまりに小さいと詰まりが発生するためである。また,プレート330に設けられた穴332においては,中心に設けられた穴をその周辺より小さくしてもよい。
【0026】
液体原料が気化器271a(図2参照)で気化して気体状態となった原料ガスおよび気化不良や再液化で生じた液滴は,端部プレート310および継手312内のガス経路311からミストフィルタ本体350内に導入され,1枚目のプレート320の平板状のプレート328の中央部421(穴322が形成されていない部位)に衝突し,その後,プレート328の外周付近に設けられた穴322を通過して,2枚目のプレート330の平板状のプレート338の外周部432(穴332が形成されていない部位)に衝突し,その後,プレート338の中心付近に設けられた穴332を通過して,3枚目のプレート320の平板状のプレート328の中央部422(穴322が形成されていない部位)に衝突し,その後,同様にしてプレート330,320を順次通過して端部プレート340および継手342内のガス経路341を通ってミストフィルタ本体350から導出され,下流のガスフィルタ272a(図2参照)に送られる。
【0027】
ミストフィルタ本体350は,ヒータ360(図3参照)によって外側から加熱される。ミストフィルタ本体350は,複数のプレート320とプレート330を備え,プレート320は,平板状のプレート328とプレート328の外周に設けられた外周部329とを備え,プレート330は,平板状のプレート338とプレート338の外周に設けられた外周部339とを備えている。プレート328と外周部329は一体的に構成され,プレート338と外周部339は一体的に構成されているので,ヒータ360によってミストフィルタ本体が外側から加熱されると,熱は効率よく平板状のプレート328,338に伝えられる。なお,プレート328と外周部329は一体的に構成されていなくても,完全に接触している状態であれば,また,プレート338と外周部339は一体的に構成されていなくても,完全に接触している状態であれば,ヒータ360からの熱を同様に十分効率よく,プレート328,338に伝えられる。
【0028】
ミストフィルタ本体350では,上述のように,複数のプレート320とプレート330により入り組んだ複雑なガス経路370を構成しているので,ミストフィルタ本体350内での圧力損失を上げすぎずに,気化して気体状態となった原料ガスおよび気化不良や再液化で生じた液滴の,加熱された平板状のプレート328,338への衝突確率を高めることができる。そして,気化不良や再液化で生じた液滴は,十分な熱量をもったミストフィルタ本体350内で,加熱された平板状のプレート328,338に衝突しながら再加熱され,気化される。」
「
」
「
」
「
」
「
」
(2)上記記載から,引用文献1には,引用文献1の請求項3に記載された発明の一態様として,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板を収容する処理室と,
前記処理室に処理ガスを供給する処理ガス供給系と,
前記処理室を排気する排気系と,
を備える基板処理装置であって,
前記処理ガス供給系は,
液体原料が供給される気化器と,
前記気化器の下流に配置されたミストフィルタ300と,を有し,
前記ミストフィルタ300のミストフィルタ本体350は,両端の端部プレート310,340と,端部プレート310,340間に配置された2種類のプレート320,330とを備えており,
前記2種類のプレート320,330はそれぞれ複数個設けられ,端部プレート310,340間に交互に配置されており,
前記プレート320は平板状のプレート(プレート部)328と,プレート328の外周に設けられた外周部329とを備えており,プレート328には,その外周付近のみに穴322が複数設けられており,
前記プレート330は平板状のプレート(プレート部)338と,プレート338の外周に設けられた外周部339とを備えており,プレート338には,その中心付近のみ(プレート328において穴322が形成される位置とは異なる位置)に穴332が複数設けられており,
液体原料が気化器で気化して気体状態となった原料ガスおよび気化不良や再液化で生じた液滴は,端部プレート310および継手内のガス経路からミストフィルタ本体350内に導入され,1枚目のプレート320の平板状のプレート328の中央部421(穴322が形成されていない部位)に衝突し,その後,プレート328の外周付近に設けられた穴322を通過して,2枚目のプレート330の平板状のプレート338の外周部432(穴332が形成されていない部位)に衝突し,その後,プレート338の中心付近に設けられた穴332を通過して,3枚目のプレート320の平板状のプレート328の中央部422(穴322が形成されていない部位)に衝突し,その後,同様にしてプレート330,320を順次通過して端部プレート340および継手内のガス経路を通ってミストフィルタ本体350から導出される基板処理装置。」
2 引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
クランク室からのブローバイガスを吸気通路に導き,ブローバイガスに含まれるオイルミストを分離するオイルセパレータ室を備える内燃機関のオイルセパレータ構造において,
オイルセパレータ室を通過するブローバイガスを蛇行させるじゃま板と,
じゃま板の表面に刻まれるオイル捕集溝と,
オイル捕集溝を画成し,ブローバイガスの流れに対向するオイル衝突面と,
オイル捕集溝を画成し,ブローバイガスの流れに沿って傾斜するオイル戻し面と,
を備えたことを特徴とする内燃機関のオイルセパレータ構造。」
「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,内燃機関のオイルセパレータ構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃焼室からクランク室またはシリンダヘッド上の動弁室に吹き抜けたブローバイガスを吸気系に還流する内燃機関にあっては,ブローバイガスと共にオイルミストが持ち去られることを防止する必要がある。
【0003】
従来のオイルセパレータ構造として,例えば図9に示すようなものがある(実開平2-35912号公報,実開昭62-20112号公報,参照)。
【0004】
エンジンのクランク室から排出されるブローバイガスを吸気系に導くオイルセパレータ室91の内部に,複数のじゃま板92が通路方向に直交して設けられる。ブローバイガスは,じゃま板92に案内されて蛇行しながら流れる。
【0005】
じゃま板92の表面には多数の窪み93か形成される。各窪み93はブローバイガスに乱れを付与して,ブローバイガス中に含まれるオイルミストを分離させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,このような従来装置にあっては,各窪み93に溜まったオイル分が再びブローバイガス中に飛散するため,オイルの戻りが遅れ,オイル消費を増大させる可能性があった。
【0007】
本発明は上記の問題点を解消し,オイルセパレータ室からオイルを速やかに戻す構造を提供することを目的とする。」
「【0033】
図2に示すように,オイルセパレータ室2は,ロッカーカバー5とバッフルプレート17の間に画成される。
【0034】
バッフルプレート17の前端にはブローバイガス取入口21が開口し,ロッカーカバー5の後端にはブローバイガス排出口22が開口する。
【0035】
オイルセパレータ室2を通過するブローバイガスを蛇行させる複数のじゃま板23,24を備える。なお,オイルセパレータ室1を通過するブローバイガスを蛇行させる複数のじゃま板(図示せず)を備える。
【0036】
3枚のじゃま板23がバッフルプレート17の底面17aからオイルセパレータ室2に突出する一方,3枚のじゃま板24がロッカーカバー5の天井面5aからオイルセパレータ室2に突出し,ブローバイガスを図中矢印で示すように蛇行させるようになっている。
【0037】
図1にも示すように,じゃま板23の表面には多数のオイル捕集溝25が刻まれる。
【0038】
オイル捕集溝25の断面はノコ歯状に形成される。すなわち,オイル捕集溝25は,図1,図2に矢印で示すブローバイガスの流れに対向するオイル衝突面26と,ブローバイガスの流れに沿って傾斜するオイル戻し面27とによって画成される。
【0039】
オイル捕集溝25はじゃま板23の先端部23aと平行方向に延びる直線状に形成される。すなわち,じゃま板23は垂直方向に配置されるのに対して,オイル衝突面26は水平方向に配置され,オイル戻し面27は水平線に対して所定角度で傾斜して形成される。
【0040】
この実施例では,各オイル捕集溝25は,水平方向に直線状に延びている。
【0041】
バッフルプレート17にはオイルセパレータ室2でブローバイガスから分離されたオイル分を動弁室16を経てオイルパン19へと戻す複数のオイル戻し穴28が開口する。オイル戻し穴28はバッフルプレート17に接続される筒状をしたガイドパイプ29によって画成される。
【0042】
各オイル戻し穴28は,じゃま板23の基端部23bに近接してバッフルプレート17に開口される。これにより,各オイル戻し穴28は,オイルセパレータ室2においてブローバイガスの流速が最も低い領域に開口する。この実施例では,各オイル戻し穴28は,じゃま板24に背後に対峙するじゃま板23の直上流側に位置して開口する。
【0043】
なお,ロッカーカバー5の天井面5aからオイルセパレータ室2に突出した各じゃま板24にも,図2に矢印で示すブローバイガスの流れに対向するオイル衝突面と,ブローバイガスの流れに沿って傾斜するオイル戻し面とによって画成されるオイル捕集溝25が形成される。
【0044】
以上のように構成され,次に作用について説明する。
【0045】
オイルセパレータ室2を流れるブローバイガスは,図2に矢印で示すように,各じゃま板23,24に案内されて蛇行する。
【0046】
ブローバイガスがオイルセパレータ室2を蛇行しながら通過する過程で,ブローバイガス中に含まれるオイルミストがじゃま板23に付着し,じゃま板23からバッフルプレート17上を経てオイル戻し穴28へと流下する。オイル戻し穴28から動弁室16に流下したオイルは,オイル落とし穴18を通ってオイルパン19へと戻される。
【0047】
図1に矢印で示すように,ブローバイガスがじゃま板23に沿って流れる過程で,ブローバイガス中で比重が大きいオイルミストは,これに働く慣性力によりその多くがじゃま板23に衝突する。
【0048】
じゃま板23に刻まれた各オイル捕集溝25は,そのオイル衝突面26がブローバイガスと共にじゃま板23に衝突するオイルミストに対向する構造のため,オイルミストがブローバイガスと分離してじゃま板23に付着する捕集効率を高められる。
【0049】
オイルセパレータ室2に突出するじゃま板23の端部23aと平行方向に延びるオイル捕集溝25は,そのオイル衝突面27がじゃま板23に沿って流れるブローバイガスに正面図上直交して対向する構造のため,オイルミストがブローバイガスと分離してじゃま板23に付着する捕集効率を高められる。
【0050】
各オイル捕集溝25のオイル衝突面26に付着したオイルは,じゃま板23に沿って流下する。オイル戻し面27は,ブローバイガスの流れ方向に沿って傾斜しているため,一旦じゃま板23に付着したオイル分が再びブローバイガス中に飛散することを抑制し,じゃま板23からバッフルプレート17上へと速やかに流下する。
【0051】
一方,ロッカーカバー5の天井面5aからオイルセパレータ室2に突出した各じゃま板24についても,オイル捕集溝25のオイル衝突面を介して,オイルミストの捕集効率が高められる。オイル衝突面上に付着したオイルミストは,大きな液滴に成長し,再びブローバイガス中に飛散することなく,じゃま板24からバッフルプレート17上へと速やかに流下する。
【0052】
各オイル戻し穴28は,オイルセパレータ室2においてブローバイガスの流速が最も低い領域に開口しているため,じゃま板23またはバッフルプレート17からオイル戻し穴28に流入するオイルが,再びブローバイガス中に飛散することを抑制する。
【0053】
この結果,オイル分が十分に分離されたブローバイガスが吸気通路7に還流され,オイルの消費量を低減することができる。」
「
」
「
」
3 引用文献3について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「[0018]FIG. 1 shows a section of an oil mist separator of a device for crankcase venting of an internal combustion engine of a motor vehicle, comprising a deflector wall with pyramid-shaped structural bodies according to a first embodiment.」(当審で作成した日本語訳:図1は,第1実施形態によるピラミッド状の構造体を有する偏向壁からなる自動車の内燃機関のクランクケースベント用装置のオイルミスト分離の一例を示す断面図である。)
「
」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明における「『平板状のプレート(プレート部)328と,プレート328の外周に設けられた外周部329とを備えており,プレート328には,その外周付近のみに穴322が複数設けられて』いる『前記プレート320』」と,本願発明1における「中心付近に前記溝が複数設けられ,外周側に前記孔が複数設けられる第1プレート」は,いずれも,「外周側に前記孔が複数設けられる第1プレート」である点で一致する。
イ 引用発明における「『平板状のプレート(プレート部)338と,プレート338の外周に設けられた外周部339とを備えており,プレート338には,その中心付近のみ(プレート328において穴322が形成される位置とは異なる位置)に穴332が複数設けられて』いる『前記プレート330』」と,本願発明1における「外周側に前記溝が複数設けられ,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレート」は,いずれも,「中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレート」である点で一致する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「基板を収容する処理室と,
前記処理室に原料ガスを供給する処理ガス供給系と,
前記処理室を排気する排気系と,
を備え,
前記処理ガス供給系は,
液体原料等の原料が供給される気化器と,
前記気化器の下流に配置されたミストフィルタと,を有し,
前記ミストフィルタは,互いに異なる位置に,前記原料ガスの流路として複数の孔により形成される流路が各々配置される部分,をそれぞれ有する少なくとも2種のプレートを組み合わせて構成される際,
外周側に前記孔が複数設けられる第1プレートと,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレートと,が交互に配置され,
前記第1プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第2プレートに衝突させ,前記第2プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第1プレートに衝突させるように構成される基板処理装置。」
(相違点)
(相違点1)本願発明1では,第1プレートの「中心付近に前記溝が複数設けられ」,また,第2プレートの「外周側に前記溝が複数設けられ」ており,その結果として,ミストフィルタは,互いに異なる位置に「前記流路を通過した前記原料ガスの流れ方向に面する位置に設けられる複数の溝が配置される部分」をそれぞれ有する少なくとも2種のプレートを組み合わせて構成されるものとなり,さらに,「前記第1プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第2プレートに設けられる前記溝に衝突させ,前記第2プレートの前記孔を通過した前記原料ガスを前記第1プレートに設けられる前記溝に衝突させる」ように構成されているのに対し,引用発明では,プレート320におけるプレート328の内周部,及び,プレート330におけるプレート338の外周部は,いずれも「平板状」であること。
(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると,引用文献2には,内燃機関のオイルセパレータ構造の改良に関する以下のア,イのとおりの技術的事項が記載されている。
ア 燃焼室からクランク室またはシリンダヘッド上の動弁室に吹き抜けたブローバイガスを吸気系に還流する内燃機関にあっては,ブローバイガスと共にオイルミストが持ち去られることを防止する必要があるところ,従来のオイルセパレータ構造として知られている,じゃま板92の表面に多数の窪み93を形成する構造では,各窪み93に溜まったオイル分が再びブローバイガス中に飛散するため,オイルの戻りが遅れ,オイル消費を増大させる可能性があったこと。
イ クランク室からのブローバイガスを吸気通路に導き,ブローバイガスに含まれるオイルミストを分離するオイルセパレータ室を備える内燃機関のオイルセパレータ構造において,じゃま板の表面に刻まれるオイル捕集溝を,ブローバイガスの流れに対向するオイル衝突面と,ブローバイガスの流れに沿って傾斜するオイル戻し面によって画成されるものとすることによって,ブローバイガスと共にオイルミストが持ち去られることを防止し,オイルセパレータ室からオイルを速やかに戻す構造が提供されること。
また,引用文献3には,ピラミッド状の構造体を有する偏向壁からなる自動車の内燃機関のクランクケースベント用装置のオイルミスト分離の一例を示す断面図が記載されている。
そうすると,「基板を収容する処理室と,前記処理室に処理ガスを供給する処理ガス供給系と,前記処理室を排気する排気系と,を備える基板処理装置」に適用される引用発明と,「内燃機関」に適用される引用文献2,3に記載された技術とは,その技術が適用される製品の観点において,技術分野が異なる。
さらに,引用発明は,「気化不良や再液化で生じた液滴は,十分な熱量をもったミストフィルタ本体350内で,加熱された平板状のプレート328,338に衝突しながら再加熱され,気化される」(【0028】)という作用,機能を奏させることを課題とした発明であるのに対して,引用文献2,3に記載された技術は,オイルを分離し,回収することを目的とするものであるから,引用発明と,引用文献2,3に記載された技術とは,課題や作用,機能といった観点においても相違する。
してみれば,引用発明と,引用文献2,3に記載された技術とは,関連する技術分野が異なるから,引用発明に,引用文献2,3に記載された技術を適用する動機付けを見いだすことはできない。したがって,本願発明1の上記相違点1に係る構成は,当業者であっても引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし13について
本願発明2ないし13も,本願発明1の「中心付近に前記溝が複数設けられ」,外周側に前記孔が複数設けられる第1プレートと,「外周側に前記溝が複数設けられ」,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレートという構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,拒絶査定において引用された引用文献2,3に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明14について
本願発明14は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の「中心付近に前記溝が複数設けられ」,外周側に前記孔が複数設けられる第1プレートと,「外周側に前記溝が複数設けられ」,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレートに対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,拒絶査定において引用された引用文献2,3に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により,本願発明1ないし14は,「中心付近に前記溝が複数設けられ」,外周側に前記孔が複数設けられる第1プレートと,「外周側に前記溝が複数設けられ」,中央付近に複数の前記孔が設けられる第2プレートという事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-008365