特許拒絶査定不服審判
2020-008184
NFC対応無線プロセス通信ゲートウェイ
- 審判番号
- 2020-008184
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-551297
- 請求日
- 2020年06月12日
- 審決日
- 2021年03月11日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ローズマウント インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 津国
- 審判長/審判官
- 審判長 廣川 浩
- 審判官 本郷 彰
- 審判官 國分 直樹
- 分類
- P18 .575-Z (H04W) / P18 .121-Z (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-551297「NFC対応無線プロセス通信ゲートウェイ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日国際公開、WO2017/172403、令和 1年 6月20日国内公表、特表2019-517172〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)3月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年3月31日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年 9月20日付け:拒絶理由通知書
令和 元年12月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月 5日付け:拒絶査定
令和 2年 6月12日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和 3年 2月 4日 :上申書の提出
第2 令和2年6月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月12日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線は,補正箇所である。)
「 フィールドデバイスが無線プロセス通信ネットワークに接続される方法であって、
無線フィールドデバイスが無線ゲートウェイの近距離無線通信(NFC)の範囲内に近接されることと、
前記無線ゲートウェイのNFCトランシーバと前記無線フィールドデバイスのNFCタグとの間の通信接続が確立されることと、
自動的に前記無線フィールドデバイスを前記無線プロセス通信ネットワークにアクセスさせることができる接続キーを、自動的に前記無線フィールドデバイスにロードさせるために、前記無線ゲートウェイと前記無線フィールドデバイスとの間に近距離無線通信が生成されることと、
前記無線フィールドデバイスが、前記無線プロセス通信ネットワーク上で通信することを可能にするために、前記接続キーが使用されることと、
を含む方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和元年12月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 フィールドデバイスが無線プロセス通信ネットワークに接続される方法であって、
無線フィールドデバイスが無線ゲートウェイの近距離無線通信(NFC)の範囲内に近接されることと、
前記無線ゲートウェイのNFCトランシーバと前記無線フィールドデバイスのNFCタグとの間の通信接続が確立されることと、
前記無線フィールドデバイスを前記無線プロセス通信ネットワークにアクセスさせることができる接続キーを前記無線フィールドデバイスにロードさせるために、前記無線ゲートウェイと前記無線フィールドデバイスとの間に近距離無線通信が生成されることと、
前記無線フィールドデバイスが前記無線プロセス通信ネットワーク上で通信することを可能にするために前記接続キーが無線で使用されることと、
を含む方法。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記無線フィールドデバイスを前記無線プロセス通信ネットワークにアクセスさせること」との事項について、「自動的に」との限定を付加し、また、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記無線フィールドデバイスにロードさせるために、」との事項について,「自動的に」との限定を付加することを含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特表2011-504684号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付与した。)
「【0019】
図1は、ホストコンピュータ12、高速ネットワーク14、無線メッシュネットワーク16(ゲートウェイ18および無線フィールドデバイスまたはノード20a~20iを含む)、構成デバイス30、およびネットワークコンピュータ32を備える、プロセス制御/監視システム10を示している。ゲートウェイ18は、高速ネットワーク14を介してメッシュネットワーク16とホストコンピュータ12とのインターフェースとなる。メッセージは、ネットワーク14を介してホストコンピュータ12からゲートウェイ18に伝送することができ、次いで、複数の異なる経路のうちの1つの経路を経由してメッシュネットワーク16の選択されたノードに送信される。同様に、メッシュネットワーク16の個別のノードからのメッセージは、それらがゲートウェイ18に到達し、次いで、高速ネットワーク14を介してホスト12に送信されるまで、複数の経路のうちの1つの経路を介してノードツーノードからメッシュネットワーク16を通じてルーティングされる。
【0020】
加入プロセスを使用して、新しい無線フィールドデバイスをネットワーク16に追加することができる。一実施形態では、ネットワーク16内のセキュリティは、対称加入鍵機構に基礎を置いている。デバイスが他のフィールドデバイスによって、またゲートウェイによって受け入れられるように、正しい加入鍵をフィールドデバイス内にロードしなければならない。加入鍵は、安全にロードされなければならないので、範囲内にある他の無線デバイスは、加入鍵を受信して、場合によっては間違って使用することはできない。加入鍵は、手動でそれぞれの新しいフィールドデバイス内にロードできるが、手動ロードは、誤りを起こしがちであり、人間のオペレータに暗号材料を曝すおそれがある。
【0021】
目標は、鍵などの暗号材料を安全な方法で新しいフィールドデバイス内にロードすることである。これは、ゲートウェイ18と新しいフィールドデバイスと間の安全な無線通信経路(図2Aおよび2Bに関して後で説明されるような)または安全な有線通信経路(図3に関して説明されているような)を通じて実現されうる。両方の場合において、構成デバイス30は、例えば、ウェブブラウザを含むことができるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を備えるネットワークコンピュータ32とともに、ネットワーク14に接続される。構成デバイス30とコンピュータ32上のGUIとを使用することで、技術者は、ネットワークセキュリティマネージャ(例えば、ゲートウェイ18またはホストコンピュータ12上で実行されているアプリケーションプログラムであってもよい)に問い合わせを行い、新しいフィールドデバイスに対する正しい加入鍵(または他の暗号材料)を取得し、加入鍵を新しいフィールドデバイス内に安全にロードすることができる。加入鍵および他の必要な情報がロードされた後、新しいフィールドデバイスをフィールド内にインストールすることができ、そこで、格納されている加入鍵を加入プロセスの一部として使用して、無線ネットワーク16の一部になることができる。」
(イ)上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
a 上記段落【0019】には、「図1は、ホストコンピュータ12、高速ネットワーク14、無線メッシュネットワーク16(ゲートウェイ18および無線フィールドデバイスまたはノード20a~20iを含む)、・・・を備える、プロセス制御/監視システム10を示している。」との記載がある。
そうすると、引用文献2には「無線フィールドデバイスを含む無線メッシュネットワークを備える、プロセス制御/監視システム」が記載されているといえる。
b 上記段落【0020】には、「加入プロセスを使用して、新しい無線フィールドデバイスをネットワーク16に追加することができる。」、「デバイスが・・・ゲートウェイによって受け入れられるように、正しい加入鍵をフィールドデバイス内にロードしなければならない。」との記載、上記段落【0021】には、「加入鍵を新しいフィールドデバイス内に安全にロードすることができる。加入鍵および他の必要な情報がロードされた後、新しいフィールドデバイスをフィールド内にインストールすることができ、そこで、格納されている加入鍵を加入プロセスの一部として使用して、無線ネットワーク16の一部になることができる。」との記載がある。ここで,上記段落【0021】に記載された「新しいフィールドデバイス」が、段落【0020】に記載された「新しい無線フィールドデバイス」と同じものを表すことは明らかである。
そうすると、引用文献2には「加入鍵が新しい無線フィールドデバイスにロードされた後、格納されている加入鍵を加入プロセスの一部として使用し、無線フィールドデバイスをゲートウェイが受け入れられることによって、無線メッシュネットワークに追加する」ものが記載されているといえる。
c そして、上記「a」及び「b」に摘記した内容から、引用文献2には「加入鍵を加入プロセスの一部として使用し、新しい無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークに追加する」という方法が記載されているといえる。
そうすると、引用文献2には「無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークに追加する方法」が記載されているといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献2には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークに追加する方法であって、
無線フィールドデバイスを含む無線メッシュネットワークを備える、プロセス制御/監視システムにおいて、
加入鍵が新しい無線フィールドデバイスにロードされた後、格納されている加入鍵を加入プロセスの一部として使用し、無線フィールドデバイスをゲートウェイが受け入れられることによって、無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークに追加する、
方法。」
イ 引用文献1
(ア)同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、国際公開第2014/205243号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付与した。)
「[0002] Embodiments of the subject matter generally relate to the field of network devices, and, more particularly, to wireless setup between network devices.
[0003] Near field communication (hereinafter "NFC") technology is a set of standards for allowing communication between compatible devices initiated by bringing the compatible devices into close proximity of each other. NFC may be implemented using radio frequency (hereinafter RF) technology. NFC may be implemented actively or passively. Active NFC includes hardware that transmits an RF signal using a connected power source. Passive NFC, on the other hand, does not have a connected power source, instead relying on power generated from a received RF signal.
(中略)
[0042] FIG. 1 depicts an embodiment of a set of NFC-enabled wireless devices capable of utilizing NFC to securely facilitate network configuration. FIG. 1 depicts the set of NFC- enabled devices, including a device 102 with passive NFC capability (hereinafter "client") and an access point 104 with active NFC capability (hereinafter "AP"). The range within which a passive NFC capable client may trigger the NFC capabilities of the AP 104 is indicated by the dotted line 106. The client 102 and the AP 104 may each be associated with a public-private key pair (not depicted).
[0043] At stage A, the client 102 is moved into the range 106 within which the AP 104 NFC capabilities are triggered. The specific range 106 may vary between implementations. For example, in some implementations the range may be a few centimeters, while in some implementations the range 106 is small enough that the client 102 physically touches the AP 104. The range 106 may be defined by the particular NFC standard implemented or vary due to design considerations. For example, if reducing power consumption is a design goal, the amount of power available to transmit a signal may be limited, thus reducing the range 106. As a device with active NFC capabilities, the AP 104 generates an RF field that, once a passive NFC device is within range, provides power for the passive NFC device. Thus, when a passive NFC device, such as the client 102, enters the RF field generated by the AP 104, the passive NFC device may communicate with the AP 104.
[0044] At stage B, the AP 104 reads the public key associated with the client 102 from the client 102. To read data from a passive NFC device such as the client 102, the AP 104 encodes a command and transmits the command using an RF signal. The client 102 receives the RF signal, and utilizing the power generated by the RF signal, decodes the command. Further using the power generated by the RF signal, the client 102 transmits the public key.
[0045] At stage C, the AP 104 writes the public key associated with the AP 104 to the client 102. To write the AP 104 public key to the client 102, the AP 104 encodes a write command, as well as the data to write, and transmits the encoded command and data as an RF signal, or as a set of RF signals, to the client 102. The client 102 utilizes the power generated by the RF signal to decode the command and data, writing the AP 104 public key to memory accessible to the client 102.
[0046] At stage D, the client 102 and AP 104 perform a secure network configuration. The client 102 may be implemented such that the client 102 begins the secure network configuration in response to receiving the AP 104 public key. Thus, the receipt of the AP 104 public key may act as the indication that a secure network configuration setup can begin. In some implementations, another command transmitted by the AP 104 indicates that the secure network configuration can begin. In some implementations, the indication may come from another source, such as from a user interacting with a user interface associated with the client 102 or AP 104.」
([当審仮訳]:
[0002]本主題の実施形態は、一般にネットワークデバイスの分野に関し、より詳細には、ネットワークデバイス間のワイヤレスセットアップに関する。
[0003]ニアフィールド通信(以下「NFC」)技術は、互換デバイスを互いの極近傍にもってくることによって開始される互換デバイス間の通信を可能にするための規格のセットである。NFCは、無線周波数(以下RF)技術を使用して実装され得る。NFCはアクティブにまたはパッシブに実装され得る。アクティブNFCは、接続された電源を使用してRF信号を送信するハードウェアを含む。一方、パッシブNFCは、接続された電源を有さず、代わりに、受信されたRF信号から生成される電力に依拠する。
(中略)
[0042]図1に、ネットワーク構成をセキュアに可能にするためにNFCを利用することが可能なNFC対応ワイヤレスデバイスのセットの実施形態を示す。図1は、パッシブNFC能力をもつデバイス102(以下「クライアント」)と、アクティブNFC能力をもつアクセスポイント104(以下「AP」)とを含む、NFC対応デバイスのセットを示す。パッシブNFC対応クライアントがAP104のNFC能力をトリガし得る範囲は点線106によって示される。クライアント102およびAP104はそれぞれ公開秘密鍵ペア(図示せず)に関連し得る。
[0043]段階Aにおいて、クライアント102は、AP104のNFC能力がトリガされる範囲106に移動される。特定の範囲106は実装形態間で異なり得る。たとえば、いくつかの実装形態では、範囲は数センチメートルであり得るが、いくつかの実装形態では、範囲106は、クライアント102がAP104に物理的に接触するほど十分に小さい。範囲106は、実装される特定のNFC規格によって定義されるか、または設計要件により異なり得る。たとえば、電力消費を低減することが設計目的である場合、信号を送信するために利用可能な電力量は制限され、したがって範囲106は低減し得る。アクティブNFC能力をもつデバイスとして、AP104は、パッシブNFCデバイスが範囲内にあると、パッシブNFCデバイスのための電力を与える、RF電界を生成する。したがって、クライアント102など、パッシブNFCデバイスが、AP104によって生成されたRF電界に入ると、パッシブNFCデバイスはAP104と通信し得る。
[0044]段階Bにおいて、AP104は、クライアント102から、クライアント102に関連する公開鍵を読み取る。クライアント102などのパッシブNFCデバイスからデータを読み取るために、AP104は、コマンドを符号化し、RF信号を使用してコマンドを送信する。クライアント102は、RF信号を受信し、RF信号によって生成される電力を利用して、コマンドを復号する。さらに、RF信号によって生成される電力を使用して、クライアント102は公開鍵を送信する。
[0045]段階Cにおいて、AP104は、AP104に関連する公開鍵をクライアント102に書き込む。AP104の公開鍵をクライアント102に書き込むために、AP104は、書込みコマンド、ならびに書き込むべきデータを符号化し、符号化されたコマンドおよびデータを、RF信号として、またはRF信号のセットとして、クライアント102に送信する。クライアント102は、コマンドおよびデータを復号するためにRF信号によって生成される電力を利用し、AP104の公開鍵を、クライアント102にとってアクセス可能なメモリに書き込む。
[0046]段階Dにおいて、クライアント102およびAP104はセキュアネットワーク構成を実行する。クライアント102は、AP104の公開鍵を受信したことに応答してクライアント102がセキュアネットワーク構成を開始するように実装され得る。したがって、AP104の公開鍵の受信は、セキュアネットワーク構成セットアップが開始することができるという指示として働き得る。いくつかの実装形態では、AP104によって送信される別のコマンドは、セキュアネットワーク構成が開始することができることを示す。いくつかの実装形態では、指示は、クライアント102またはAP104に関連するユーザインターフェースと対話しているユーザからなど、別のソースから来ることがある。)
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
a 上記段落[0042]には、「図1は、パッシブNFC能力をもつデバイス102(以下「クライアント」)と、アクティブNFC能力をもつアクセスポイント104(以下「AP」)とを含む、NFC対応デバイスのセットを示す。」ことが、上記段落[0043]には、「クライアント102は、AP104のNFC能力がトリガされる範囲106に移動される。」と記載される一方で、「範囲は数センチメートルであり得るが、いくつかの実装形態では、範囲106は、クライアント102がAP104に物理的に接触するほど十分に小さい。」と記載されていることから、上記「クライアント102は、AP104のNFC能力がトリガされる範囲106に移動される。」との記載は,クライアント102は、AP104のNFC能力がトリガされる範囲内に近接されることを表しているといえる。また、上記段落[0043]には、「AP104は、パッシブNFCデバイスが範囲内にあると、パッシブNFCデバイスのための電力を与える、RF電界を生成する。・・・クライアント102など、パッシブNFCデバイスが、AP104によって生成されたRF電界に入ると、パッシブNFCデバイスはAP104と通信し得る。」ことが記載されており,通信する際に,クライアントなどのパッシブNFCデバイスはAPとの間で通信接続が確立されることは自明である。
そうすると、引用文献1には「パッシブNFC能力をもつクライアントがアクティブNFC能力をもつAPの範囲内に近接されるとパッシブNFC能力をもつクライアントはアクティブNFC能力をもつAPとの間で通信接続が確立される」ことが記載されている。
b また、上記段落[0045]には、「AP104の公開鍵をクライアント102に書き込むために、AP104は、書込みコマンド、ならびに書き込むべきデータを符号化し、符号化されたコマンドおよびデータを、RF信号として、またはRF信号のセットとして、クライアント102に送信する。」と記載され、上記段落[0046]には、「クライアント102およびAP104はセキュアネットワーク構成を実行する。クライアント102は、AP104の公開鍵を受信したことに応答してクライアント102がセキュアネットワーク構成を開始するように実装され得る。・・・AP104の公開鍵の受信は、セキュアネットワーク構成セットアップが開始することができるという指示として働き得る。」と記載されている。そして、上記段落[0002]には「本主題の実施形態は、一般にネットワークデバイスの分野に関し、より詳細には、ネットワークデバイス間のワイヤレスセットアップに関する。」とあるから、上記段落[0046]の「セキュアネットワーク構成セットアップ」とはネットワークデバイス間のワイヤレスセットアップ、すなわち、クライアント102とAP104とのワイヤレスセットアップであることは明らかであり、ワイヤレスセットアップの際は、クライアント102がAP104にアクセスすることは技術常識である。
そうすると、引用文献1には「AP104の公開鍵をRF信号としてクライアントに送信し、AP104の公開鍵の受信に応答してクライアントは、クライアント102とAP104とのワイヤレスセットアップを開始するために、AP104にアクセスする」ことが記載されている。
c ここで、パッシブNFCはNFCタグ、アクティブNFCはNFCリーダ/ライターとも呼ばれることは技術常識であり、NFCリーダ/ライターは、NFCタグとの間で能動的に送受信を行うものであるからNFCの送受信機、すなわちNFCトランシーバであるともいえ、APのNFCリーダ/ライターは、クライアントのNFCタグに対し公開鍵の送信を行うのであるから、NFCタグをもつクライアントはNFCトランシーバをもつAPの間で通信接続が確立されており、公開鍵はクライアントにロードされるといえる。
また、クライアントがAP104の公開鍵を受信することに応答してワイヤレスセットアップを開始するために、APにアクセスするのであるから、前記AP104の公開鍵は自動的にクライアントをAPにアクセスさせることができる接続キーであるといえる。
そして、APのNFCトランシーバとクライアントのNFCタグとの間は、接続キーの受け渡しをRF信号として行うのであるから、近距離無線通信が生成されることは自明であり、該近距離無線通信の生成は、クライアントのNFCタグとAPのトランシーバが近接することによって行われ、公開鍵はクライアントに送信(ロード)されるのであるから、APのNFCトランシーバとクライアントのNFCタグとの間の近距離無線通信の生成は、自動的にクライアントに公開鍵(接続キー)をロードさせるために生成されるものといえる。
そうすると、引用文献1には、「NFCタグをもつクライアントがNFCトランシーバをもつAPの範囲内に近接されるとNFCタグをもつクライアントはNFCトランシーバをもつAPとの間で通信接続が確立されることと、自動的にクライアントをAPにアクセスさせることができる接続キーを、自動的にクライアントにロードさせるために、APのNFCトランシーバとクライアントのNFCタグとの間に近距離無線通信が生成される」技術が記載されていると認められる。
(3)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比すると,以下のことがいえる。
(ア)引用発明の「無線フィールドデバイス」は、本件補正発明の「フィールドデバイス」に含まれ、本件補正発明の「無線フィールドデバイス」に相当する。また、引用発明の「無線メッシュネットワーク」は「プロセス制御/監視システム」が備えるものであるから、「無線メッシュネットワーク」は、プロセス制御/監視のための通信を行う無線ネットワーク、すなわち、本件補正発明の「無線プロセス通信ネットワーク」に相当する。そして、引用発明の「無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークに追加する」とは、無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークに接続することである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は「フィールドデバイスが無線プロセス通信ネットワークに接続される方法」という点で一致する。
(イ)引用発明の「加入鍵」は、「無線フィールドデバイス」を「無線メッシュネットワークに追加する」際に使用されるものである。そして、該加入鍵が使用されることによって、無線フィールドデバイスをゲートウェイが受け入れられるようにするものであるから、引用発明の「加入鍵」は、本件補正発明の「接続キー」に相当する。そして、引用発明の「無線フィールドデバイス」を「無線メッシュネットワークに追加する」ことは、無線フィールドデバイスが無線メッシュネットワーク上で通信することを可能にするために行われることであることは明らかである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は「前記無線フィールドデバイスが、前記無線プロセス通信ネットワーク上で通信することを可能にするために、接続キーが使用される」点で一致する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「 フィールドデバイスが無線プロセス通信ネットワークに接続される方法であって、
前記無線フィールドデバイスが、前記無線プロセス通信ネットワーク上で通信することを可能にするために、接続キーが使用されること、
を含む方法。」
(相違点)
本件補正発明は「無線フィールドデバイスが無線ゲートウェイの近距離無線通信(NFC)の範囲内に近接されることと、前記無線ゲートウェイのNFCトランシーバと前記無線フィールドデバイスのNFCタグとの間の通信接続が確立されることと、自動的に前記無線フィールドデバイスを前記無線プロセス通信ネットワークにアクセスさせることができる接続キーを、自動的に前記無線フィールドデバイスにロードさせるために、前記無線ゲートウェイと前記無線フィールドデバイスとの間に近距離無線通信が生成されることと、」との発明特定事項を有するのに対し、引用発明は、当該発明特定事項を有していない点。
以下,上記各相違点について検討する。
上記(2)で説示したとおり、「NFCタグをもつクライアントがNFCトランシーバをもつAPの範囲内に近接されるとNFCタグをもつクライアントはNFCトランシーバをもつAPとの間で通信接続が確立されることと、自動的にクライアントをAPにアクセスさせることができる接続キーを、自動的にクライアントにロードさせるために、APのNFCトランシーバとクライアントのNFCタグとの間に近距離無線通信が生成される」ことは公知技術である。
ここで、引用発明の無線フィールドデバイスが無線プロセス通信ネットワーク上で通信するための接続キーを使用するためには、そのための設定を行う必要があることは自明であり、設定作業の少なくとも一部を自動化することは、当業者が当然に追求すべき課題である。
また、引用発明は、加入鍵を使用し、無線フィールドデバイスをゲートウェイが受け入れられることによって、無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークに追加するものである、すなわち無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークにアクセスさせるものであるところ、引用文献1に記載される技術もクライアントをAPにアクセスさせること、すなわちクライアントというデバイスをAPを介してネットワークにアクセスさせるものであるから、自動的にデバイスをネットワークにアクセスさせる技術である点で共通する。
してみると、引用発明の「加入鍵が新しい無線フィールドデバイスにロードされ」る際、設定作業の少なくとも一部を自動化するために、公知技術である「NFCタグをもつクライアントがNFCトランシーバをもつAPの範囲内に近接されるとNFCタグをもつクライアントはNFCトランシーバをもつAPとの間で通信接続が確立されることと、自動的にクライアントをAPにアクセスさせることができる接続キーを、自動的にクライアントにロードさせるために、APのNFCトランシーバとクライアントのNFCタグとの間に近距離無線通信が生成される」という技術事項を適用して、自動的に無線フィールドデバイスを無線メッシュネットワークにアクセスさせることは、当業者であれば容易になし得ることである。
そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
3 結語
したがって、本件補正は、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年6月12日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は,令和元年12月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明は、上記「第2 令和2年6月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項の「1 本件補正について(補正内容)」の項の「(2)本件補正前の特許請求の範囲」のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:国際公開第2014/205243号
引用文献2:特表2011-504684号公報
3 引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2、並びにその記載事項は,上記「第2 令和2年6月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)引用文献の記載事項」の項に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は,本件補正発明から「無線フィールドデバイスの無線プロセス通信ネットワークへのアクセス」及び「接続キーの無線フィールドデバイスへのロード」に係る限定事項を省いたものである。そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 令和2年6月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の「(3)対比・判断」に記載したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 上申の内容について
審判請求人は、令和3年2月4日提出の上申書において、以下のとおりの補正案を作成するとともに、「審尋で引用される前置審査報告書のご指摘を解消するために補正を行う用意があります。これらの補正により独立特許要件を満足することができる請求項があるかどうかご審理いただきたく存じます。そのうえでさらなる補正の機会を賜ることができれば幸甚に存じます。」と述べている。
<補正案(下線は補正箇所を示す。)>
「 <補正後の請求項1>
フィールドデバイスが無線プロセス通信ネットワークに接続される方法であって、
無線フィールドデバイスが無線ゲートウェイの近距離無線通信(NFC)の範囲内に近接されることと、
前記無線ゲートウェイが利用されて、前記無線ゲートウェイのNFCトランシーバと前記無線フィールドデバイスのNFCタグとの間の通信接続が確立されることと、
前記無線ゲートウェイが利用されて、前記NFCタグから得られた前記無線フィールドデバイスの識別子が前記ネットワーク上に提供されることと、
前記無線ゲートウェイが利用されて、前記無線フィールドデバイスを前記無線プロセス通信ネットワークに自動的にアクセスさせることができる接続キーが検索されることと、
前記無線ゲートウェイが利用されて、前記接続キーを前記無線フィールドデバイスに自動的にロードさせるために、前記無線ゲートウェイと前記無線フィールドデバイスとの間に近距離無線通信が生成されることと、
前記無線フィールドデバイスが、前記無線プロセス通信ネットワーク上で通信することを可能にするために、前記接続キーが使用されることと、
を含む方法。
<補正後の請求項5>
無線プロセス通信ネットワーク上でフィールドデバイスと相互作用するように構成された無線ゲートウェイであって、
前記フィールドデバイスのNFCタグを検出して前記NFCタグへ接続し、前記NFCタグから得られた前記無線フィールドデバイスの識別子を前記ネットワーク上に提供するように構成されたNFCトランシーバと、
前記フィールドデバイスの前記NFCタグの検出に応じて、
自動的にプロセス環境ネットワークから、前記無線プロセス通信ネットワーク上のネットワーク接続キーを検索し、
自動的に前記NFCトランシーバを用いて、前記検索されたネットワーク接続キーを、前記フィールドデバイスへ提供する、
ように構成された制御装置と、
前記ネットワーク接続キーが利用されて、前記フィールドデバイスを前記無線プロセス通信ネットワーク上で通信させるための無線プロセス通信モジュールと、
を含むゲートウェイ。」
しかしながら、上記第2で説示したとおり本件補正は却下すべきものであり、かつ、上記第3の1ないし4で説示したとおり本願発明は原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2及び引用文献1に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正の機会を再度与える合理的な理由を見出すことはできない。
なお、仮に請求項1の「自動的に」の係り先が明確でないとした場合、特許請求の範囲の請求項1の記載は特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないから、請求項1に係る発明は、独立して特許を受けることができる発明とはならないため、補正却下されるものとなる。そうすると、上記第3の1ないし4で説示したとおり本願発明は原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2及び引用文献1に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同じく補正の機会を再度与える合理的な理由を見出すことはできない。
第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献1に記載された技術に基づいて,その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-008184