特許拒絶査定不服審判
2020-017845
作業機の通信処理システム及び作業機の通信処理方法
- 審判番号
- 2020-017845
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-112791
- 請求日
- 2020年12月25日
- 審決日
- 2021年10月20日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社クボタ
- 【請求人代理人】特許業務法人安田岡本特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 中木 努
- 審判官 廣川 浩
- 審判官 本郷 彰
- 分類
- P18 .121-Z (H04W) / P18 .56 -Z (H04W) / P18 .575-Z (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-112791「作業機の通信処理システム及び作業機の通信処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018-207367〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,平成29年6月7日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 1月31日付け 拒絶理由通知書
令和2年 4月 6日 意見書及び手続補正書の提出
令和2年 9月24日付け 拒絶査定
令和2年12月25日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和3年 4月21日 上申書の提出
第2 令和2年12月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年12月25日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された(下線部は,補正箇所である。)。
「 【請求項1】
一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である第1ビーコンを送信する第1通信部を有し且つ作業機に設けられ通信装置と、
前記第1ビーコンを取得した場合に当該第1ビーコンを送信した前記通信装置に接続を行う第2通信部を有する携帯端末と、
を備えた作業機の通信処理システムであって、
前記第1通信部は、前記第1ビーコンにより前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1ビーコンとは異なる第2ビーコンであって、一方的に前記携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号であり且つ、前記携帯端末に処理を実行させる第2ビーコンを送信する作業機の通信処理システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の,令和2年4月6日にされた手続補正より補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。
「 【請求項1】
第1ビーコンを送信する第1通信部を有し且つ作業機に設けられ通信装置と、
前記第1ビーコンを取得した場合に当該第1ビーコンを送信した前記通信装置に接続を行う第2通信部を有する携帯端末と、
を備えた作業機の通信処理システムであって、
前記第1通信部は、前記第1ビーコンにより前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1ビーコンとは異なる第2ビーコンであって前記携帯端末に処理を実行させる第2ビーコンを送信する作業機の通信処理システム。」
2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1ビーコン」について「一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である」との限定,及び「第2ビーコン」について「一方的に前記携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号であり且つ、」との限定を付加するものであって,本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は,上記「1」の「(1)」に記載したとおりである。
当該記載のうち,「作業機に設けられ通信装置と、」との記載は,請求項1の「作業機の通信処理システム。」に対応する「作業機の通信処理方法」である請求項6の「作業機に設けられた通信装置が一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である第1ビーコンを当該携帯端末に送信する第1送信ステップと、」との記載や,明細書の段落[0028]の「携帯端末50は、作業機1に設けられた通信装置40に接続可能であって、様々なデータ(情報)を通信装置40との間で送受信可能である。」との記載を鑑みれば,「設けられた通信装置」の誤記であることは明らかである(下線は,当審で付与した。)。したがって,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)は,次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である第1ビーコンを送信する第1通信部を有し且つ作業機に設けられた通信装置と、
前記第1ビーコンを取得した場合に当該第1ビーコンを送信した前記通信装置に接続を行う第2通信部を有する携帯端末と、
を備えた作業機の通信処理システムであって、
前記第1通信部は、前記第1ビーコンにより前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1ビーコンとは異なる第2ビーコンであって、一方的に前記携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号であり且つ、前記携帯端末に処理を実行させる第2ビーコンを送信する作業機の通信処理システム。」
(2)引用文献に記載された事項,及び引用発明等
ア 引用文献1について
原査定(令和2年9月24日付け拒絶査定)における拒絶の理由で引用された国際公開第2015/147034号(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
(ア)「[0024] 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、作業機の通信システムの全体図を示したものである。
図1に示すように、作業機の通信システム1は、農業機械や建設機械等の作業機2に搭載された作業機用アクセスポイント装置4と、この作業機用アクセスポイント装置4と無線通信を行う携帯端末3とを備えたシステムである。この作業機の通信システム1では、作業機用アクセスポイント装置4に携帯端末3を接続することにより、例えば、携帯端末3は、作業機2に関する情報を作業機用アクセスポイント装置4を介して取得することができる。一方、作業機2は、作業機用アクセスポイント装置4を介して携帯端末3から様々な信号を取得することができる。
[0025] 以下、作業機を農業機械の1つであるトラクタとし、作業機の通信システム及び作業機用アクセスポイント装置について詳しく説明する。説明の便宜上、「作業機用アクセスポイント装置」を「アクセスポイント装置」といい説明を進める。」
(イ)「[0030] 図1に示すように、アクセスポイント装置4は、トラクタ2の車載ネットワークN1と、トラクタ2の外部のネットワーク(外部ネットワーク)とを接続する装置である。このアクセスポイント装置4は、携帯端末3との無線通信を行う第1通信部(通信モジュール)30と、第1通信部30の制御を行う制御部31と、第1記憶部32と、計時部36とを備えている。」
(ウ)「[0034] また、第1記憶部32は、検出信号、スイッチ信号、指令信号等の稼働情報を記憶する。第1記憶部32は、図2に示すように、例えば、検出信号から得られたエンジン回転数、水温、油温等の稼働情報を、計時部36で計時した累積稼働時間と対応付けて記憶する。
携帯端末3は、例えば、比較的演算能力の高いスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレットPC等で構成されている。図1に示すように、携帯端末3は、第2通信部(通信手段)40と、第2記憶部41とを備えている。
[0035] 第2通信部40は、少なくともアクセスポイント装置4と無線通信を行う通信装置で構成されている。第2通信部40は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)などによって、アクセスポイント装置4と近距離の無線通信を行う。」
(エ)「[0037] 稼働情報を取得するためには、まず、図3に示すS1~S7までの処理を行って、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。
詳しくは、図3に示すように、アクセスポイント装置4が起動している状態では、第1通信部30は第1記憶部32の通信設定情報を参照し、サービスセット識別子(SSID)を外部に出力する(S1)。携帯端末3は、第1通信部30から外部に送信されたSSIDを受信すると(S2)、SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する(S3)と共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する(S4)。この入力画面にネットワークキーが入力されると、当該携帯端末3はネットワークキーをアクセスポイント装置4に送信する(S5)。携帯端末3から送信されたネットワークキーがアクセスポイント装置4に入力されると、制御部31は、携帯端末3から送信されたネットワークキーと、第1記憶部32に記憶されたネットワークキーとの照合(認証)を行う(S6)。ここで、ネットワークの照合(認証)が成立すると、制御部31は、相互間でのデータ通信を許可する(S7)。このように、稼働情報(データ)を取得するためには、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。」
(オ)「[0043] そこで、作業機の通信システム1では、アクセスポイント装置4から送信される稼働情報が出来る限り重複しない対策をとっている。
以下、稼働情報の送信について、さらに、詳しく説明する。
図1に示すように、アクセスポイント装置4の制御部31は、識別子設定部34を備えている。
[0044] 識別子設定部34は、第1記憶部32に記憶された稼働情報の取得要求を、携帯端末3が取得可能な通信識別子として設定する。即ち、アクセスポイント装置4が携帯端末3に対して取得要求を行いたいとき、識別子設定部34は、この取得要求をサービスセット識別子(SSID)として設定する。例えば、識別子設定部34は、第1記憶部32の稼働情報を監視しておき、当該稼働情報が更新された際に、稼働情報を取得してほしいという取得要求を英数字、例えば、「TRACTOR-DATAUP」で示し、当該「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子である通信識別子として設定する。詳しくは、識別子設定部34は、通信識別子を設定するに際し、当該通信識別子の前部(ハイフンの前)の文字(TRACTOR)を、アクセスポイント装置4やトラクタ2を特定することができる識別情報として設定し、この識別情報(TRACTOR)に続く後部に、取得要求を示す「DATAUP」を加えている。これにより、通信識別子の前部に示された文字によって、通信識別子が、どのアクセスポイント装置4、或いは、トラクタ2から送信されているかを把握することが可能である。なお、取得要求を示す通信識別子の設定は、上述したものに限定されない。
[0045] そして、通信識別子の設定後、第1通信部30は、通信識別子を送信する。また、通信識別子の送信後に当該通信識別子に示された要求に応じて、携帯端末3が稼働情報を取得した際には、第1通信部30は、「TRACTOR-DATAUP」で示された通信識別子の送信を停止する。
上述した取得要求について、図4を用いて、さらに詳しく説明する。
[0046] 図4に示すように、時点P1~時点P2の区間では、携帯端末3とアクセスポイント装置4との無線通信を確立し、アクセスポイント装置4から携帯端末3に向けて稼働情報を送信したとする。稼働情報の送信完了後は、図2に示すように、第1記憶部32には、稼働情報と、送信完了済みを示すフラグFとが関連付けられて記憶される。
詳しくは、時点P2において、携帯端末3における稼働情報の受信が完了した場合、携帯端末3は、稼働情報の受信完了をアクセスポイント装置4に返答する。アクセスポイント装置4の制御部31は、携帯端末3からの返答を受けて、携帯端末3に送信した稼働情報に対して、図2に示すように、送信済みのフラグFを関連付け、当該関連付けたフラグFを第1記憶部32に記憶する。
[0047] 図5は、稼働情報送信後に更新された稼働情報を示している。図5に示すように、稼働情報送信後、所定時間が経過すると、第1記憶部32には、新に取得した稼働情報が累積稼働時間と共に記憶される。例えば、図4に示す時点P3で、稼働情報が更新されたとすると、識別子設定部34は、取得要求を示す通信識別子(TRACTOR-DATAUP)を設定する。そして、第1通信部30は、「TRACTOR-DATAUP」で示される通信識別子を出力する。
[0048] ここで、「TRACTOR-DATAUP」で示される通信識別子を時点P4において、携帯端末3が受信後し、当該携帯端末3がアクセスポイント装置4に接続し、送信要求を行ったとする。そうすると、アクセスポイント装置4の制御部31は、図5に示すように、送信済みではない稼働情報及び累積稼働時間(未送信の稼働情報及び稼働累積時間)Q1を第1記憶部32から読み出し、読み出した稼働情報及び累積稼働時間Q1を第1通信部30から携帯端末3に送信する。」
(カ)「[0050] 以上、アクセスポイント装置4は、第1記憶部32と、識別子設定部34と、第1通信部30を備えているため、第1記憶部32の稼働情報が更新された際に、稼働情報の取得要求を通信識別子として携帯端末に送信することができる。言い換えれば、稼働情報の取得要求をブロードキャスト信号として送信することができる。それゆえ、携帯端末3側では、通信識別子を受信するだけで、稼働情報が更新されたことを把握し、更新された稼働情報を更新後に取得することができる。つまり、携帯端末3が、更新前の同一の稼働情報を重複して取得することを防止することができる。」
(キ)図4として以下の図が記載されている。
「
[図:0001380660000001.jpg]
」
上記引用文献1に記載された事項,及び通信分野における技術常識を考慮すると,次のことがいえる。
a 上記「(ア)」の段落[0024]には「作業機の通信システム1は、・・・(中略)・・・作業機2に搭載された作業機用アクセスポイント装置4と、この作業機用アクセスポイント装置4と無線通信を行う携帯端末3とを備えたシステムである。この作業機の通信システム1では、作業機用アクセスポイント装置4に携帯端末3を接続する」との記載,及び段落[0025]には「「作業機用アクセスポイント装置」を「アクセスポイント装置」といい説明を進める。」との記載がある。これらの記載を考慮すれば,作業機2に搭載されたアクセスポイント装置4と,アクセスポイント装置4と無線通信を行う携帯端末3と,を備えた作業機の通信システム1が記載されている。
b 上記「(イ)」には「アクセスポイント装置4は、携帯端末3との無線通信を行う第1通信部(通信モジュール)30・・・(中略)・・・を備えている。」との記載があることを考慮すれば,アクセスポイント装置4は,携帯端末3と無線通信を行う第1通信部30を備えている。
c 上記「(エ)」には「第1通信部30は第1記憶部32の通信設定情報を参照し、サービスセット識別子(SSID)を外部に出力する(S1)。携帯端末3は、第1通信部30から外部に送信されたSSIDを受信する」との記載,上記「(オ)」の段落[0043]には「アクセスポイント装置4の制御部31は、識別子設定部34を備えている。」との記載,段落[0044]には「サービスセット識別子である通信識別子として設定」との記載,及び段落[0045]には「通信識別子の設定後、第1通信部30は、通信識別子を送信する。」との記載がある。これらの記載,及び上記「b」で説示した事項を考慮すれば,アクセスポイント装置4は,識別子設定部34を備え,第1通信部30はサービスセット識別子(SSID)である通信識別子の設定後、通信識別子を送信する。
d 上記「(オ)」の段落[0046]には「図4に示すように、時点P1~時点P2の区間では、携帯端末3とアクセスポイント装置4との無線通信を確立し、アクセスポイント装置4から携帯端末3に向けて稼働情報を送信したとする。」との記載がある。また,上記「(キ)」の図4には,P1ないしP2の期間に無線確立がONとなっており,そのときの通信識別子として「TRACTOR-DATAUP」は示されていない。一方で,上記「(エ)」の段落[0037]には「稼働情報を取得するためには、まず、図3に示すS1~S7までの処理を行って、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。・・・(中略)・・・第1通信部30は第1記憶部32の通信設定情報を参照し、サービスセット識別子(SSID)を外部に出力する(S1)。携帯端末3は、第1通信部30から外部に送信されたSSIDを受信する・・・(中略)・・・このように、稼働情報(データ)を取得するためには、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。」との記載によれば,稼働情報を取得するために無線通信を確立する際には,アクセスポイント装置4の第1通信部30は,通信識別子を送信する。してみれば,時点P1ないし時点P2の区間で無線通信を確立する際に,アクセスポイント装置4の第1通信部30は「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信することは明らかである。
e 上記「a」ないし「d」を総合すると,携帯端末3と無線通信を行う第1通信部30と,識別子設定部34を備え,第1通信部30はサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子の設定後,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信する,作業機2に搭載されたアクセスポイント装置4が記載されている。
f 上記「(ウ)」の段落[0034]には「携帯端末3は、第2通信部(通信手段)40・・・(中略)・・・を備えている。」との記載,及び段落[0035]には「第2通信部40は、少なくともアクセスポイント装置4と無線通信を行う通信装置で構成されている。第2通信部40は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)などによって、アクセスポイント装置4と近距離の無線通信を行う。」との記載がある。これらの記載を考慮すれば,携帯端末3はアクセスポイント装置4と無線通信を行う第2通信部40を備え,無線通信は,通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fiによって行うものである。
g 上記「(エ)」には「第1通信部30は第1記憶部32の通信設定情報を参照し、サービスセット識別子(SSID)を外部に出力する(S1)。携帯端末3は、第1通信部30から外部に送信されたSSIDを受信すると(S2)、SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する(S3)と共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する(S4)。この入力画面にネットワークキーが入力されると、当該携帯端末3はネットワークキーをアクセスポイント装置4に送信する(S5)。・・・(中略)・・・携帯端末3から送信されたネットワークキーと、第1記憶部32に記憶されたネットワークキーとの照合(認証)を行う(S6)。ここで、ネットワークの照合(認証)が成立すると、制御部31は、相互間でのデータ通信を許可する(S7)。このように、稼働情報(データ)を取得するためには、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。」との記載によれば,携帯端末3は,第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)を受信すると,SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示し,ネットワークキーが入力されると、ネットワークキーをアクセスポイント装置4に送信することで,アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。
h 上記「(オ)」の段落[0046]には「図4に示すように、時点P1~時点P2の区間では、携帯端末3とアクセスポイント装置4との無線通信を確立し、アクセスポイント装置4から携帯端末3に向けて稼働情報を送信したとする。」との記載がある。また,上記「キ」の図4には,P1からP2の期間に無線確立がなされ,そのときの通信識別子として「TRACTOR-DATAUP」は示されていない。一方で,上記「(エ)」の段落[0037]には「稼働情報を取得するためには、まず、図3に示すS1~S7までの処理を行って、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。・・・(中略)・・・第1通信部30は第1記憶部32の通信設定情報を参照し、サービスセット識別子(SSID)を外部に出力する(S1)。携帯端末3は、第1通信部30から外部に送信されたSSIDを受信する・・・(中略)・・・このように、稼働情報(データ)を取得するためには、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。」との記載によれば,稼働情報を取得するために無線通信を確立する際には,アクセスポイント装置4の第1通信部30は,通信識別子を送信する。してみれば,時点P1ないし時点P2の区間で無線通信を確立する際に,アクセスポイント装置4の第1通信部30は,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子が送信することは明らかである。これらの記載,及び上記「g」で説示したことを考慮すれば,携帯端末3は,第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信すると,SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示し,ネットワークキーが入力されると、ネットワークキーをアクセスポイント装置4に送信することで,アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。
i 上記「f」ないし「h」を総合すると,アクセスポイント装置4と無線通信を行う第2通信部40を備え,無線通信は,通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fiによって行うものであって,第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信すると,SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示し,ネットワークキーが入力されると、ネットワークキーをアクセスポイント装置4に送信することで,アクセスポイント装置4との無線通信を確立する携帯端末3が記載されている。
j 上記「(オ)」の段落[0046]には「図4に示すように、時点P1~時点P2の区間では、携帯端末3とアクセスポイント装置4との無線通信を確立し、アクセスポイント装置4から携帯端末3に向けて稼働情報を送信したとする。」との記載がある。また,上記「(キ)」の図4には,P1からP2の期間に無線確立がなされ,そのときの通信識別子として「TRACTOR-DATAUP」は示されていない。そして,時点P2において無線確立をOFFしている。一方で,上記「(エ)」には「稼働情報を取得するためには、まず、図3に示すS1~S7までの処理を行って、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。・・・(中略)・・・第1通信部30は第1記憶部32の通信設定情報を参照し、サービスセット識別子(SSID)を外部に出力する(S1)。携帯端末3は、第1通信部30から外部に送信されたSSIDを受信する・・・(中略)・・・このように、稼働情報(データ)を取得するためには、アクセスポイント装置4と携帯端末3との無線通信を確立する。」との記載
によれば,稼働情報を取得するために無線通信を確立する際には,アクセスポイント装置4の第1通信部30は,通信識別子を送信する。してみれば,時点P1ないし時点P2の区間で無線通信を確立する際に,アクセスポイント装置4の第1通信部30は,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子が送信することは明らかである。
これらの記載によれば,アクセスポイント装置4の第1通信部30は,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して携帯端末3との無線確立を時点P1において行い,時点P2において当該無線確立をOFFする。
k 上記「(オ)」の段落[0044]には「アクセスポイント装置4が携帯端末3に対して取得要求を行いたいとき、識別子設定部34は、この取得要求をサービスセット識別子(SSID)として設定する。例えば、識別子設定部34は、第1記憶部32の稼働情報を監視しておき、当該稼働情報が更新された際に、稼働情報を取得してほしいという取得要求を英数字、例えば、「TRACTOR-DATAUP」で示し、当該「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子である通信識別子として設定する。」との記載,段落[0045]には「通信識別子の設定後、第1通信部30は、通信識別子を送信する。」との記載,段落[0047]には「図4に示す時点P3で、稼働情報が更新されたとすると、識別子設定部34は、取得要求を示す通信識別子(TRACTOR-DATAUP)を設定する。そして、第1通信部30は、「TRACTOR-DATAUP」で示される通信識別子を出力する。」との記載,段落[0048]には「「TRACTOR-DATAUP」で示される通信識別子を時点P4において、携帯端末3が受信後し、当該携帯端末3がアクセスポイント装置4に接続し、送信要求を行ったとする。」との記載,上記「(エ)」には「携帯端末3は、第1通信部30から外部に送信されたSSIDを受信すると(S2)、SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する(S3)と共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する(S4)。」との記載,及び上記「(カ)」の段落[0050]には「稼働情報の取得要求をブロードキャスト信号として送信することができる。」との記載がある。これらの記載を考慮すれば,アクセスポイント装置4が,携帯端末3に対して取得要求を行いたいとき、識別子設定部34は,「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定し,第1通信部30は、通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の設定後,通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信し,通信識別子「TRACTOR-DATAUP」を時点P4において、携帯端末3が受信すると、SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する。
l 上記「(キ)」の図4には,時点P2において無線確立をOFFした後,時点P4から時点P5の期間に無線確立がなされ,そのときの通信識別子として「TRACTOR-DATAUP」が示されている。してみれば,上記「j」の処理の後,上記「k」の処理が行われていることは明らかである
m 上記「j」ないし「l」を総合すると,アクセスポイント装置4の第1通信部30は,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して携帯端末3との無線確立を時点P1において行い,時点P2において無線確立をOFFした後,アクセスポイント装置4が,携帯端末3に対して取得要求を行いたいとき、識別子設定部34は,「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子である通信識別子として設定し,第1通信部30は、通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の設定後,通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信し,通信識別子「TRACTOR-DATAUP」を時点P4において、携帯端末3が受信すると、SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、表示部43にネットワークキーの入力画面を表示することが記載されている。
したがって,上記「a」ないし「m」を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 携帯端末3と無線通信を行う第1通信部30と,識別子設定部34を備え,前記第1通信部30は前記サービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子の設定後,前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信する,作業機2に搭載されたアクセスポイント装置4と,
前記アクセスポイント装置4と無線通信を行う第2通信部40を備え,前記無線通信は,通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fiによって行うものであって,前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信すると,前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、前記表示部43にネットワークキーの入力画面を表示し,ネットワークキーが入力されると、前記ネットワークキーを前記アクセスポイント装置4に送信することで,前記アクセスポイント装置4との無線通信を確立する携帯端末3と,
を備えた作業機の通信システム1であって,
前記第1通信部30は,前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を時点P1において行い,時点P2において当該無線確立をOFFした後,前記アクセスポイント装置4が,前記携帯端末3に対して取得要求を行いたいとき、前記識別子設定部34は,「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定し,第1通信部30は、通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の設定後,前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信し,前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」を時点P4において、前記携帯端末3が受信すると、前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、前記表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する作業機の通信システム1。」
イ 引用文献2について
同じく原査定における拒絶の理由で引用された特開2009-159325号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)
「【0009】
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信システム100を示すブロック図である。通信システム100は、基地局装置10および端末装置20を含む。基地局装置10は、無線LANを構成するアクセスポイントであり、端末装置20が受信および再生可能なコンテンツの配信を行う。この配信はマルチキャスト配信でもユニキャスト配信でもよい。コンテンツには、テキスト、静止画、動画像、音声およびメタデータなどのうち、少なくとも一つを含めることができる。以下の説明では、基地局装置10は、コンビニエンスストアなどの商業店舗内に設置され、コンテンツを店内およびその近隣にマルチキャスト配信を行う例を想定する。たとえば、コンテンツとして広告映像やクーポンを配信する。
【0010】
基地局装置10は、コンテンツの配信を行っているが、配信するコンテンツが変更されることがある。基地局装置10は、接続用識別子および通知用識別子を設定し、それらをビーコンとして送信する。これらの識別子としてSSID(Service Set Identifier)を用いることができる。接続用識別子は、基地局装置10と端末装置20とを接続するための識別子である。通知用識別子は、配信するコンテンツの更新状況に関する情報(以下、更新情報という)を含む、基地局装置10から端末装置20への通知用の識別子である。なお、更新情報の詳細については後述する。」
上記引用文献2に記載された事項を考慮すると,次のことがいえる。
(ア)上記段落【0010】の「基地局装置10は、接続用識別子および通知用識別子を設定し、それらをビーコンとして送信する。これらの識別子としてSSID(Service Set Identifier)を用いることができる。」との記載によれば,基地局装置10は,識別子としてSSIDを設定し,SSIDをビーコンとして送信する。そして,上記段落【0009】の「基地局装置10は、無線LANを構成するアクセスポイントであり、」との記載を考慮すれば,無線LANを構成するアクセスポイントは、SSIDをビーコンとして送信するといえる。
したがって,以上のことから,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
「無線LANを構成するアクセスポイントは、SSIDをビーコンとして送信する。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「携帯端末3」は,本件補正発明における「携帯端末」に相当する。
イ 引用発明における「携帯端末3」が「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信する」ことを考慮すれば,引用発明における「サービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子」は「携帯端末3」に向けて送信されるものといえる。
また,引用発明における「前記識別子設定部34は,「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定し,第1通信部30は、通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の設定後,前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信」するものであることを考慮すれば,同じ通信識別子である「「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子」も,ブロードキャスト信号として送信するものといえる。そして,ブロードキャスト信号は,受信側装置を特定せずに一方的に送信されることが通信分野における技術常識である。
以上のことを考慮すれば,本件補正発明の「一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である第1ビーコン」と引用発明の「携帯端末3」が「受信」する「サービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子」は,「一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である信号」である点で共通する。また,以下,当該「信号」を便宜上「第1の信号」という。
ウ 引用発明における「第1通信部30」は,「「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信する」ものであり,上記「イ」で説示したことを考慮すると,本件補正発明の「第1通信部」と引用発明における「第1通信部30」は「第1の信号を送信する第1通信部」である点で共通する。
エ 引用発明における「作業機2」は,本件補正発明における「作業機」に相当する。
オ 引用発明における「作業機2に搭載された」ことは,本件補正発明の「作業機に設けられる」ことに相当する。
カ 引用発明における「アクセスポイント装置4」は,「第1通信部30」「を備え」,「作業機2に搭載された」ものであることを考慮すると,本件補正発明の「第1通信部を有し且つ作業機に設けられた通信装置」に相当する。
キ 上記「ア」ないし「カ」で説示したことを踏まえると,本件補正発明の「一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である第1ビーコンを送信する第1通信部を有し且つ作業機に設けられる通信装置」と,引用発明の「携帯端末3と無線通信を行う第1通信部30」「を備え」,「前記第1通信部30は前記サービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子の設定後,前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信する」「作業機2に搭載されたアクセスポイント装置4」及び「携帯端末3」が「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信する」ことは,「一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である第1の信号を送信する第1通信部を有し且つ作業機に設けられる通信装置」である点で共通する。
ク 引用発明は,「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信すると,前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、前記表示部43にネットワークキーの入力画面を表示」するものであるから,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信した場合にSSIDやネットワークキーの入力画面を表示することは明らかである。また,引用発明における「受信」は,本件補正発明の「取得」に含まれる。そして,上記「イ」を考慮すれば,本件補正発明の「前記第1ビーコンを取得した場合」と,引用発明における「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信すると」は,「前記第1の信号を取得した場合」である点で共通する。
ケ 引用発明は,「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信」した後,「前記アクセスポイント装置4との無線通信を確立する」ものであり,ここで無線通信を確立する「前記アクセスポイント装置4」が,前記「サービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子」を送信した「アクセスポイント装置4」であることは明らかである。
また,引用発明における「無線通信を確立する」ことは,本件補正発明における「接続を行う」ことに含まれる。
以上のこと,及び上記「イ」を考慮すれば,本件補正発明の「当該第1ビーコンを送信した前記通信装置に接続を行う」ことと,引用発明における「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信する」と,「前記アクセスポイント装置4との無線通信を確立する」ことは,「当該第1の信号を送信した前記通信装置に接続を行う」点で共通する。
コ 引用発明における「携帯端末3」は「第2通信部40を備え」るものであり,「第2通信部40」は「前記アクセスポイント装置4と無線通信を行う」ものである。そうすると,「携帯端末3」に備えられた「第2通信部40」が,アクセスポイント装置4との無線通信,すなわち「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信する」処理や,入力された「ネットワークキーを前記アクセスポイント装置4に送信することで,前記アクセスポイント装置4との無線通信を確立する」処理は「第2通信部40」が行っていることは明らかである。
そして,上記「イ」,「ク」及び「ケ」を考慮すれば,本件補正発明の「前記第1ビーコンを取得した場合に当該第1ビーコンを送信した前記通信装置に接続を行う第2通信部」と,引用発明の「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信する」処理や,入力された「ネットワークキーを前記アクセスポイント装置4に送信することで,前記アクセスポイント装置4との無線通信を確立する」処理を行う「第2通信部40」は,「前記第1の信号を取得した場合に当該第1の信号を送信した前記通信装置に接続を行う第2通信部」である点で共通する。
サ 上記「イ」,「ク」ないし「コ」で説示したことを踏まえると,本件補正発明の「前記第1ビーコンを取得した場合に当該第1ビーコンを送信した前記通信装置に接続を行う第2通信部を有する携帯端末」と,引用発明において,「前記アクセスポイント装置4と無線通信を行う第2通信部を備え」,「前記第1通信部30から外部に送信されたサービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を受信すると」,「前記表示部43にネットワークキーの入力画面を表示し,ネットワークキーが入力されると、前記ネットワークキーを前記アクセスポイント装置4に送信することで,前記アクセスポイント装置4との無線通信を確立する携帯端末3」は,「第1の信号を取得した場合に当該第1の信号を送信した通信装置に接続を行う第2通信部を有する携帯端末」である点で共通する。
シ 引用発明における「作業機2」は,本件補正発明における「作業機」に相当する。また,引用発明における「通信システム1」は,通信のための処理を行っていることは明らかであるから,本件補正発明における「通信処理システム」に相当する。そして,引用発明の「作業機の通信システム1」は,「アクセスポイント装置4」と「携帯端末3」とを備えたものであるから,引用発明の「アクセスポイント装置4」と「携帯端末3」とを備えた「作業機の通信システム1」は,本件補正発明の「通信装置」と「携帯端末」とを備えた「作業機の通信処理システム」に相当する。
ス 引用発明における「前記第1通信部30は,前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を時点P1において行い,時点P2において当該無線確立をOFFした後」,「前記識別子設定部34は,「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定し,第1通信部30は、通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の設定後,前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信」するものであることを考慮すれば,「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」は「「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を行」った際の「通信識別子」と異なることは明らかである。してみれば,本件補正発明の「第1のビーコンとは異なる第2ビーコン」と,引用発明の「「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を行」った際の「通信識別子」と異なる,「サービスセット識別子(SSID)」である「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」は,「第1の信号と異なる信号」である点で共通する。また,以下,当該第1の信号とは異なる「信号」を便宜上「第2の信号」という。
セ 引用発明における「前記第1通信部30は,前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を時点P1において行い,時点P2において当該無線確立をOFFした後」,「前記識別子設定部34は,「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定し,第1通信部30は、通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の設定後,前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信」するものであって,「前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」を時点P4において、前記携帯端末3が受信する」ことから,「第1通信部30」が「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」を送信する先は,「「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して」「無線確立を行」った「携帯端末3」であるといえる。
また,引用発明における「第1通信部30」が「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」を送信するのは,「前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を時点1において行い,時点P2において無線確立をOFFした後」である。
そして,上記「イ」及び「ス」を考慮すれば,本件補正発明における「前記第1通信部は、前記第1ビーコンにより前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1ビーコンとは異なる第2ビーコンであって,」「第2ビーコンを送信する」ことと,引用発明における「前記第1通信部30は,前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を時点1において行い,時点P2において無線確立をOFFした後」,「前記識別子設定部34は,「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定し,第1通信部30は、通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の設定後,前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信」することは,「前記第1通信部は、前記第1の信号により前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1の信号とは異なる第2の信号を送信する」点で共通する。
ソ 引用発明における「第1通信部30」は「前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信」するものであって「前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」を時点P4において、前記携帯端末3が受信する」ものであるから,「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」は「携帯端末3」に向けて送信されるものといえる。また,ブロードキャスト信号は,受信側装置を特定せずに一方的に送信されることが通信分野における技術常識である。してみれば,本件補正発明の「第2のビーコン」と引用発明の「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」は,「一方的に前記携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号であ」る点で共通する。
タ 引用発明は,「前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」を時点P4において、前記携帯端末3が受信すると、前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、前記表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する」ものである。すなわち,「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」を「携帯端末3が受信する」と,「携帯端末3」において「前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する」処理や,「表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する」処理を実行するものである。言い換えれば,「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」が,「携帯端末3」に「前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する」処理や,「表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する」処理を実行させるものといえる。そして,上記「ス」で説示したことを考慮すると,本件特許発明の「第2ビーコン」が「前記携帯端末に処理を実行させる」ものであることと,引用発明の「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」を「携帯端末3が受信すると,前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、前記表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する」ものであることは,「第2の信号」が「前記携帯端末に処理を実行させる」点で共通する。
チ 上記「イ」,「ス」ないし「タ」で説示したことを踏まえると,本件補正発明の「前記第1通信部は、前記第1ビーコンにより前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1ビーコンとは異なる第2ビーコンであって、一方的に前記携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号であり且つ、前記携帯端末に処理を実行させる第2ビーコンを送信する」ことと,引用発明における「前記第1通信部30は,前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を時点1において行い,時点P2において当該無線確立をOFFした後,前記アクセスポイント装置4が,前記携帯端末3に対して取得要求を行いたいとき、前記識別子設定部34は,「TRACTOR-DATAUP」をサービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定し,第1通信部30は、通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の設定後,前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信し,前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」を時点P4において、前記携帯端末3が受信すると、前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示すると共に、前記表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する」ことは,「前記第1通信部は、前記第1の信号により前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1の信号とは異なる第2の信号であって、一方的に前記携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号であり且つ、前記携帯端末に処理を実行させる第2の信号を送信する」点で共通する。
したがって,上記「ア」ないし「チ」を総合すれば,本件補正発明と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。
<一致点>
「一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である第1の信号を送信する第1通信部を有し且つ作業機に設けられた通信装置と、
前記第1の信号を取得した場合に当該第1の信号を送信した前記通信装置に接続を行う第2通信部を有する携帯端末と、
を備えた作業機の通信処理システムであって、
前記第1通信部は、前記第1の信号により前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1の信号とは異なる第2の信号であって、一方的に前記携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号であり且つ、前記携帯端末に処理を実行させる第2の信号を送信する作業機の通信処理システム。」
<相違点>
a ブロードキャスト信号である「第1の信号」が,本件補正発明は「第1ビーコン」であるのに対し,引用発明は「前記サービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子」であって,当該発明特定事項が特定されていない点。
b ブロードキャスト信号である「第2の信号」が,本件補正発明は「第2ビーコン」であるのに対し,引用発明は「サービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定」された「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」であって,当該発明特定事項が特定されていない点。
(4)判断
ア 相違点a及びbについて
引用文献2には,上記「(2)」の「イ」に説示したように,無線LANを構成するアクセスポイントは、SSIDをビーコンとして送信することが記載されており,当該事項は無線LANにおける周知技術である。
そして,引用発明は,「アクセスポイント装置4と無線端末が無線通信を行うものであって,前記無線通信は,通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fiによって行う」ものである。ここで,IEEE802.11又はWi-Fiが無線LANの通信規格であることは,無線LANにおける技術常識である。してみれば,引用発明に引用文献2に記載された周知技術を適用し,IEEE802.11シリーズのWi-Fiによって無線通信を行うアクセスポイント装置4が,ブロードキャストされる「前記サービスセット識別子(SSID)である,「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子」,及び「サービスセット識別子(SSID)である通信識別子として設定」された「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」をビーコンとして送信することは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,本件補正発明は引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 審判請求人の主張について
審判請求人は,令和2年12月25日に提出された審判請求書の【請求の理由】の「2.」の「(4)」の「4-1」において「引用文献1に示されたSSID、即ち、「TRACTOR-DATAUP」は、ブロードキャスト信号ではあるものの、本願発明1のように、「携帯端末に処理を実行させる第2ビーコン」でないのは明らかであります。」と主張している。また,令和3年4月21日に提出された上申書の【上申の内容】の「<2>において「アクセスポイント装置4を識別するための識別子に、「稼働情報を取得してほしいという取得要求」があることを単に付け加えることが記載されているだけであり、当該識別子をもって、携帯端末3に処理を実行させるという技術思想及び構成については記載されていません。」と主張している。
しかしながら,上記「(3)」の「シ」で検討したとおり,引用発明は,「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」を「携帯端末3が受信する」と,「携帯端末3」において「前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する」処理や,「表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する」処理を実行するものであり,言い換えれば,「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」が,「携帯端末3」に「前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する」処理や,「表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する」処理を実行させるものといえる。つまり,引用発明の「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」は,携帯端末に処理を実行させるものといえる。そして,上記「(4)」の「ア」で説示したとおり,引用発明に引用文献2に記載された周知技術を適用することにより,携帯端末に処理を実行させる「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」を「ビーコンとして送信する」ことは当業者が容易に想到し得たことであり、「携帯端末3」が「通信識別子「TRACTOR-DATAUP」」ビーコンとして受信した際であっても、引用発明では「前記SSIDを液晶パネル等で構成された表示部43に表示する」処理や,「表示部43にネットワークキーの入力画面を表示する」処理を実行させることは明らかである。よって,審判請求人の「「TRACTOR-DATAUP」は、ブロードキャスト信号ではあるものの、本願発明1のように、「携帯端末に処理を実行させる第2ビーコン」でない」との主張を採用することはできない。
また,令和2年12月25日に提出された審判請求書の【請求の理由】の「2.」の「(4)」の「4-1」において,「引用文献1において、1つのビーコン(TRACTOR-DATAUP)などを携帯端末に送信したときの携帯端末と作業機との接続について開示されているものの、1つのビーコン(TRACTOR-DATAUP)を送信した後、一方的に送信される別のビーコンで携帯端末に対して処理を実行させるという構成及び技術思想について全く開示乃至示唆されていないことは明らかであります。」と主張している。
しかしながら,引用発明の「第1通信部30」は,「前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子を送信して前記携帯端末3との無線確立を行い」,「時点P2において無線確立をOFFした後」,「前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」をブロードキャスト信号として送信」するものであるから,それぞれの通信識別子を,引用文献2に記載されたように,ビーコンとして送信することを採用すれば,「「前記「TRACTOR-DATAUP」とは異なる通信識別子」と,「前記通信識別子「TRACTOR-DATAUP」の,異なる2つのビーコンを送信するものとなる。してみれば,審判請求人の「引用文献1において、1つのビーコン(TRACTOR-DATAUP)などを携帯端末に送信したときの携帯端末と作業機との接続について開示されているものの、1つのビーコン(TRACTOR-DATAUP)を送信した後、一方的に送信される別のビーコンで携帯端末に対して処理を実行させるという構成及び技術思想について全く開示乃至示唆されていない」との主張を採用することはできない。
したがって,審判請求人の上記いずれの主張も採用することはできない。
(5)本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年12月25日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年4月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものである。そして,その請求項1の記載は,上記「第2」の「[理由]」の「1」の「(2)」に記載したとおりである。ここで,当該記載のうち,「作業機に設けられ通信装置と、」との記載は,上記「第2」の[理由]の「2」の「(1)」で説示したことと同様,「設けられた通信装置」の誤記であることは明らかである(下線は,当審で付与した。)。したがって,令和2年4月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
第1ビーコンを送信する第1通信部を有し且つ作業機に設けられた通信装置と、
前記第1ビーコンを取得した場合に当該第1ビーコンを送信した前記通信装置に接続を行う第2通信部を有する携帯端末と、
を備えた作業機の通信処理システムであって、
前記第1通信部は、前記第1ビーコンにより前記通信装置に接続を行った前記携帯端末に対して、接続終了後に前記第1ビーコンとは異なる第2ビーコンであって前記携帯端末に処理を実行させる第2ビーコンを送信する作業機の通信処理システム。」
2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1 国際公開第2015/147034号
引用文献2 特開2009-159325号公報
3 引用文献に記載された事項,及び引用発明等
原査定における拒絶の理由で引用された引用文献1及び2,並びにその記載された事項は,上記「第2」の「[理由]」の「2」の「(2)」に記載したとおりである。
4 対比,及び判断
本願発明は,上記「第2」の「[理由]」の「2」で検討した本件補正発明から,「第1ビーコン」について「一方的に携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号である」との限定事項,及び「第2ビーコン」について「一方的に前記携帯端末に向けて送信されるブロードキャスト信号であり且つ、」との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2」の「[理由]」の「2」の「(3)」及び「(4)」に記載したとおり,引用発明及び引用文献2に記載された周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用文献1に記載された発明,及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-017845