特許拒絶査定不服審判
2020-007865
シートおよび複合シート
- 審判番号
- 2020-007865
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-193244外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月08日
- 審決日
- 2022年08月23日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日東電工株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (B22F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2015-193244「シートおよび複合シート」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 66485〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1.手続の経緯
本願は、平成27年9月30日の出願であって、令和1年8月30日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年10月25日に手続補正がなされたが、令和2年3月25日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされ、当審による令和3年10月19日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月14日に手続補正がなされ、当審による令和4年3月18日付け最後の拒絶理由通知に対する応答時、同年5月13日に意見書が提出されたものである。
2.本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和3年12月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
焼結前層を含み、
前記焼結前層はポリカーボネートを含み、
前記焼結前層が金属粒子を含み、前記金属粒子が、80℃から300℃まで1.5℃/秒で昇温し、300℃を2.5分間 維持することにより焼結体になる、という性質を有し、
前記焼結前層は、下記の手順で測定される、接合が残っている部分の面積の割合が50%以上となる性質を有し、
前記手順は、厚み350μm、縦5mm、横5mmのシリコンチップと、前記シリコンチップの裏面に設けられた厚み50nmのTi膜と、前記Ti膜上に設けられた厚み100nmのAg膜とを有するチップの前記Ag膜に、前記焼結前層を、70℃、0.3MPa、10mm/secの条件で貼り付けることによって焼結前シート付きチップを作製し、前記焼結前シート付きチップの前記チップと、AgめっきCu基板とを焼結接合し、これによって得られた試料に冷熱衝撃試験機で100サイクルの温度変化を与えた後、前記試料を超音波映像装置で観察することを含み、
前記AgめっきCu基板は、厚み3mmのCu基板と、前記Cu基板全体を覆う厚み5μmのAg膜とを有し、
前記焼結接合は、平板プレスで10MPaの圧力を加えながら80℃から300℃まで昇温速度1.5℃/秒で昇温し、10MPaの圧力を加えながら300℃を2.5分間 保持する、という条件でおこなわれ、
前記100サイクルを構成するそれぞれのサイクルは、-40℃を15分保持する第1の時間と、200℃を15分保持する第2の時間とからなり、
前記割合は、前記試料を前記超音波映像装置で観察することによって得られた像に基づいて算出される、
シート(ただし、前記焼結前層が、金属粉体および有機バインダーを含有するグリーン繊維を含む場合を除く。)。」
3.拒絶の理由の概要
本願の請求項1に対して令和4年3月18日付けで当審が通知した最後の拒絶理由のうちの理由2(進歩性)の概要は次のとおりである。
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特表2005-506901号公報
4.引用文献の記載及び引用発明
(1)当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特表2005-506901号公報)には、「電子部品堆積用テープ組成物」について、以下の各記載がある。
ア.「【0027】
本発明は、転写機構によって基板上に堆積できるテープ組成物に関する。例えば前記組成物は、支持キャリアから基板に転写することができる。転写組成物は好ましくは低分解温度を有することで、有機基板などの各種基板上に電子部品を形成することができる。テープ組成物は、分子前駆体、溶媒、ミクロンサイズの粒子、ナノ粒子、結合剤、媒体、還元剤および他の添加剤の各種組み合わせを含むことができる。その組成物は、基板上に転写することができ、反応させて導電体、抵抗体および誘電体などの電子材料を形成することができる。
・・・・(中 略)・・・・
【0032】
定義
本明細書で使用される場合、テープまたはテープ組成物という用語は、基板に転写されるよう製造され、裏材またはキャリアによって支持することができる連続または個別の材料層を指す。本明細書で使用される場合、リボンとは、テープおよびそれの支持キャリアの組み合わせである。テープが自己支持のものであるか、あるいは、リボン全体を基板に転写する場合、テープおよびリボンという用語は、互換的に用いることができる。」
イ.「【0037】
テープ組成物には結合剤を含有させて、テープまたはリボンに対して機械的強度を与えたり、転写時における密着を促進したり、転写された材料の展着を制限することもできる。下記の説明から明らかになるように、溶媒と結合剤の両方として機能する化学物質のように、同一の化学物質が複数の機能を有することができる。」
ウ.「【0040】
テープ組成物
上記で説明したように、本発明によるテープ組成物には、ミクロンサイズ粒子および/またはナノ粒子の形態での粒子が含まれていても良い。
【0041】
ナノ粒子は、約100ナノメートル以下、例えば約10~80ナノメートルの平均粒子サイズを有する。テープ組成物に特に好ましいものは、平均粒子サイズが約75ナノメートル以下、例えば約25~75ナノメートルの範囲のナノ粒子である。
【0042】
本発明のテープ組成物での使用に特に好ましいナノ粒子は、実質的に凝集していない。好ましいナノ粒子組成物には、Al2O3、CuOx、SiO2、ZnOおよびTiO2、In2O3、インジウム-酸化スズ(ITO)およびアンチモン-酸化スズ(ATO)などの導電性金属酸化物、銀、パラジウム、銅、金、白金、ニッケル、それらの合金ならびにそれらの複合体ならびにそれらの核-シェル構造(コート粒子)などがある。・・・・(以下、略)」
エ.「【0183】
好ましい結合剤には、ロウ類、スチレンアリルアルコール類、ポリアルキレンカーボネート類、ポリビニルアセタール類、セルロース系材料、テトラデカノール、トリメチロールプロパンおよびテトラメチルベンゼンなどがある。好ましい結合剤は、テープの製造に使用される溶媒に良好な溶解度を有し、溶融形態で加工可能でなければならない。例えば、スチレンアリルアルコールは、ジメチルアセトアミドに可溶で、室温で固体であり、80℃まで加熱すると流体状となる。好ましい結合剤の例を表6に挙げてある。
【0184】
表6:テープ組成物に有用な結合剤
【0185】
【表6】
[図:0001390001000001.jpg]
場合により結合剤は、最終的な電子機器に残留させることができる。結合剤の一部または全量を除去する必要が常にあるとは限らない。この実施形態では、結合剤は最終的な機器に機械的堅牢性を与えることができる。多くの場合に結合剤は、転写された層から出ていくか、あるいはテープ転写後にクリーンに分解して、転写された材料の処理後にほとんど残留しないものでなければならない。その消失または分解には、蒸発、昇華、分解、部分的ポリマー鎖切断、燃焼、あるいは基板材料上に存在するもしくはテープ転写後に材料の上面に堆積した反応物によって誘発される他の化学反応などがあり得る。
【0186】
場合によっては、結合剤を低温で部分的または完全に除去できることが好ましい。ある好ましい実施形態によれば、結合剤は約200℃以下、例えば約150℃以下、さらには約125℃以下、例えば約100℃以下の温度で除去することができる。」
オ.「【0234】
テープ組成物はまた、導電性ナノ粒子および媒体および/または結合剤を含むこともできる。テープ組成物は、導電性ナノ粒子、媒体または結合剤およびポリマー前駆体を含むことができる。」
カ,「【0281】
工程
各種工程を用いて、本発明を用いた製品を形成することができる。
レーザを用いて、テープの領域を局所加熱しながら、テープを標的基板と接触させることで、その標的表面に層を転写することができる。転写後、標的表面を加熱して、存在するのであれば前駆体を変換し、結合剤を除去し、あるいは粒子を焼結することができる。」
キ.「【0383】
前記組成物は、ハンダ代替物としても用いることができる。そのような組成物は、銀、鉛またはスズを含むことができる。
前記組成物および方法を用いて、スマートカードおよびRFタグにおけるチップと他の部品間の接続を行うことができる。」
(2)上記「ア.」ないし「キ.」から以下のことがいえる。
・引用文献1に記載の「電子部品堆積用テープ組成物」は、上記「ア.」の記載によれば、キャリア(または裏材)から基板に転写することができるテープ組成物である。
・上記「ウ.」、「オ.」の記載によれば、テープ組成物は、約10~80ナノメートルの平均粒子サイズを有するナノ粒子、例えば導電性ナノ粒子を含む。
そして、上記「キ.」の記載によれば、テープ組成部は、ハンダ代替物として用い、チップと他の部品間の接続を行うこともできるものであり、そのような組成物は、銀を含むことができる。つまりこの場合、上記「ウ.」の段落【0042】の記載も踏まえると、テープ組成物は導電性ナノ粒子として銀粒子を含むものである。
・上記「イ.」、「エ.」、「オ.」の記載によれば、テープ組成物は、例えば低温で部分的または完全に除去できる(ほとんど残留しない)結合剤を含む。
・上記「カ.」の記載によれば、テープ組成物を加熱することによって、結合剤を除去し、ナノ粒子を焼結することができるものである。
(3)以上のことから、テープ組成物がハンダ代替物として用いられる場合に着目し、そのような場合にもテープ組成物を加熱することによって結合剤を除去し、導電性ナノ粒子の焼結が行われることは当業者にとって自明といえる技術事項であることを踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「キャリア(または裏材)から基板に転写することができるテープ組成物であって、
約10~80ナノメートルの平均粒子サイズを有する導電性ナノ粒子と結合剤を含み、
前記導電性ナノ粒子は、銀粒子であり、
加熱することによって、前記結合剤を除去し、前記導電性ナノ粒子を焼結することができ、
ハンダ代替物として用い、チップと他の部品間の接続を行うこともできるテープ組成物。」
5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「テープ組成物」は、加熱することによって結合剤を除去し、導電性ナノ粒子を焼結することができるものであることから、本願発明でいう「焼結前層」に相当するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「焼結前層を含」むものである点で共通する。
ただし、焼結前層について、本願発明では「下記の手順で測定される、接合が残っている部分の面積の割合が50%以上となる性質」を有すると特定するのに対し、引用発明ではそのような性質を有することの明確な特定がない点で相違する。
[手順]「厚み350μm、縦5mm、横5mmのシリコンチップと、前記シリコンチップの裏面に設けられた厚み50nmのTi膜と、前記Ti膜上に設けられた厚み100nmのAg膜とを有するチップの前記Ag膜に、前記焼結前層を、70℃、0.3MPa、10mm/secの条件で貼り付けることによって焼結前シート付きチップを作製し、前記焼結前シート付きチップの前記チップと、AgめっきCu基板とを焼結接合し、これによって得られた試料に冷熱衝撃試験機で100サイクルの温度変化を与えた後、前記試料を超音波映像装置で観察することを含み、前記AgめっきCu基板は、厚み3mmのCu基板と、前記Cu基板全体を覆う厚み5μmのAg膜とを有し、前記焼結接合は、平板プレスで10MPaの圧力を加えながら80℃から300℃まで昇温速度1.5℃/秒で昇温し、10MPaの圧力を加えながら300℃を2.5分間保持する、という条件でおこなわれ、前記100サイクルを構成するそれぞれのサイクルは、-40℃を15分保持する第1の時間と、200℃を15分保持する第2の時間とからなり、前記割合は、前記試料を前記超音波映像装置で観察することによって得られた像に基づいて算出される」
(2)引用発明におけるテープ組成物は、「結合剤」を含むものであるところ、本願発明でいう焼結前層が含む「ポリカーボネート」にあっても、本願明細書の段落【0018】に記載のようにバインダー、すなわち結合剤に位置付けられるものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記焼結前層は結合剤を含」むものである点で共通するといえる。
ただし、焼結前層が含む結合剤について、本願発明では「ポリカーボネート」と特定するのに対し、引用発明では加熱によって除去されるものであるものの、ポリカーボネートであるとまでは特定されていない点で相違する。
(3)引用発明における導電性ナノ粒子である「銀粒子」は、本願発明でいう「金属粒子」に相当し、本願発明と引用発明とは、「前記焼結前層は金属粒子を含」むものである点で共通する。
ただし、金属粒子について、本願発明では「80℃から300℃まで1.5℃/秒で昇温し、300℃を2.5分間維持することにより焼結体になる、という性質」を有すると特定するのに対し、引用発明ではそのような性質を有することの明確な特定がない点で相違する。
(4)そして、引用発明における「テープ組成物」は、キャリア(または裏材)から基板に転写することができるものであるから、本願発明と同様、「シート」であるということができ、また、グリーン繊維を含むものではない。
したがって、引用発明における「テープ組成物」は、上記(1)で述べたように本願発明でいう「焼結前層」に相当するとともに、本願発明でいう「シート(ただし、前記焼結前層が、金属粉体および有機バインダーを含有するグリーン繊維を含む場合を除く。)」に相当するということもできる。
よって上記(1)ないし(4)によれば、本願発明と引用発明とは、
「焼結前層を含み、
前記焼結前層は結合剤を含み、
前記焼結前層が金属粒子を含む、
シート(ただし、前記焼結前層が、金属粉体および有機バインダーを含有するグリーン繊維を含む場合を除く。)。」」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
金属粒子について、本願発明では「80℃から300℃まで1.5℃/秒で昇温し、300℃を2.5分間維持することにより焼結体になる、という性質」を有すると特定するのに対し、引用発明ではそのような性質を有することの明確な特定がない点。
[相違点2]
焼結前層が含む結合剤について、本願発明では「ポリカーボネート」と特定するのに対し、引用発明では加熱によって除去されるものであるものの、ポリカーボネートであるとまでは特定されていない点。
[相違点3]
焼結前層について、本願発明では「下記の手順で測定される、接合が残っている部分の面積の割合が50%以上となる性質」を有すると特定するのに対し、引用発明ではそのような性質を有することの明確な特定がない点。
[手順]「厚み350μm、縦5mm、横5mmのシリコンチップと、前記シリコンチップの裏面に設けられた厚み50nmのTi膜と、前記Ti膜上に設けられた厚み100nmのAg膜とを有するチップの前記Ag膜に、前記焼結前層を、70℃、0.3MPa、10mm/secの条件で貼り付けることによって焼結前シート付きチップを作製し、前記焼結前シート付きチップの前記チップと、AgめっきCu基板とを焼結接合し、これによって得られた試料に冷熱衝撃試験機で100サイクルの温度変化を与えた後、前記試料を超音波映像装置で観察することを含み、前記AgめっきCu基板は、厚み3mmのCu基板と、前記Cu基板全体を覆う厚み5μmのAg膜とを有し、前記焼結接合は、平板プレスで10MPaの圧力を加えながら80℃から300℃まで昇温速度1.5℃/秒で昇温し、10MPaの圧力を加えながら300℃を2.5分間保持する、という条件でおこなわれ、前記100サイクルを構成するそれぞれのサイクルは、-40℃を15分保持する第1の時間と、200℃を15分保持する第2の時間とからなり、前記割合は、前記試料を前記超音波映像装置で観察することによって得られた像に基づいて算出される」(以下、「手順A」という。)
6.判断
上記相違点について検討する。
(1)[相違点1]について
引用発明における導電性ナノ粒子である「銀粒子」は、約10~80ナノメートルの平均粒子サイズを有し、加熱することによって焼結することができる、いわゆる焼結性金属粒子であり、加えて本願明細書の段落【0024】~【0025】の記載からみて、本願発明の「金属粒子」に用いられる金属元素、平均粒子径の範囲において共通することから、引用発明における約10~80ナノメートルの平均粒子サイズを有する「銀粒子」にあっても、本願発明の「金属粒子」と同様に「80℃から300℃まで1.5℃/秒で昇温し、300℃を2.5分間維持することにより焼結体になる、という性質」を有するものと解される。
したがって、相違点1は実質的な相違ではない。
(2)[相違点2]及び[相違点3]について
引用文献1の段落【0183】~【0186】(上記「4.エ.」を参照)には、好ましい(有用な)結合剤について、「多くの場合に結合剤は、転写される層から出ていくか、あるいはテープ転写後にクリーンに分解して、転写された材料の処理後にほとんど残留しないものでなければならない。・・・場合によっては、結合剤を低温で部分的又は完全に除去できることが好ましい。」と記載され、その具体例の1つとしてポリプロピレンカーボネートが挙げられている。なお、例えば国際公開第2012/128028号の段落[0042]に「脂肪族ポリカーボネートは熱分解性がよく、焼成の際に低温で分解することが可能である。」と記載されているように、脂肪族ポリカーボネートであるポリプロピレンカーボネートは低温でも分解し、完全に除去することができるものであることは当業者にとって自明なことである。したがって、引用発明において、加熱によって除去される結合剤として、好ましい(有用な)結合剤として挙げられているポリプロピレンカーボネートを選択し、相違点2に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願明細書の段落【0050】~【0056】の実施例・比較列についての記載によれば、実施例・比較例ともに金属粒子が「ナノサイズの銀微粒子」であり、結合剤が実施例(実施例1、実施例2)では「ポリカーボネート(ポリプロピレンカーボネート)」を用い、信頼性の評価が「〇」(残面積の割合が50%以上)であるのに対し、比較例(比較例1)では「アクリルポリマー」が用いられ、信頼性の評価が「×」(残面積の割合が50%未満)となっており、少なくとも金属粒子が「ナノサイズの銀微粒子」であり、結合剤が「ポリプロピレンカーボネート」である場合、相違点3に係る構成(手順Aで測定される、接合が残っている部分の面積の割合が50%以上となる性質)が得られるものと解される。このことを踏まえると、導電性ナノ粒子が「銀粒子」である引用発明においても(当然、銀粒子の含有量はテープ組成物をハンダ代替物として用いるために通常設定される範囲とされることになる)、結合剤として上述のように「ポリプロピレンカーボネート」を選択した際には、本願明細書の実施例で用いられた金属粒子の具体的種類・サイズ、及び結合剤の具体的種類において共通することから、本願発明の「焼結前層」と同様に「手順Aで測定される、接合が残っている部分の面積の割合が50%以上となる性質」、すなわち相違点3に係る構成を有しているといえる。
ここで、審判請求人は令和4年5月13日に提出した意見書において、約200℃以下で焼結される引用発明において、200℃を大きく超える300℃10MPaで焼結接合したうえで100サイクルの温度変化を与えたときの接合残面積を当業者が確認、あるいは設定するはずがないから、引用発明において、本願発明の300℃10MPaでの焼結接合後に100サイクルの温度変化を与えたときの接合残面積が50%以上であるという構成を有するとは認定できない旨、あるいは当該構成を採用することは当業者が容易になし得たことではない旨を主張している。
しかしながら、そもそも本願発明に係る「シート」は、あくまでも焼結される前の「焼結前層」を含むシートであり、300℃10MPaで焼結した焼結層を含むシートではない(ましてやシートの測定方法に係る発明でもない)。さらに言えば、本願明細書の段落【0037】には、焼結温度の下限は200℃であることも記載されており、本願発明は必ずしも300℃で焼結されることを前提としたものというわけでもない。そして同様に、引用発明に係る「テープ組成物」にあっても、焼結される前のものであり、約200℃以下で焼結されたものではなく、したがって、実際の使用に際して約200℃以下で焼結されることが予定されているとしても、仮に300℃10MPaでの焼結接合を行って100サイクルの温度変化を与えた場合には、本願発明の「焼結前層」と同様に「手順Aで測定される、接合が残っている部分の面積の割合が50%以上となる性質」を有すると解されるものであることは上述したとおりであるから、審判請求人の上記主張は採用できない。
7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-007865