特許拒絶査定不服審判
2020-006640
電子財布を経た支払いのためのシステム
- 審判番号
- 2020-006640
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-254784外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年05月15日
- 審決日
- 2022年04月14日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブラックホーク ネットワーク、インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人浅村特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (G06Q) / P18 .575-WZ (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-254784「電子財布を経た支払いのためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月19日出願公開、特開2018- 63729〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成23年5月31日 アメリカ合衆国、パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成23年6月13日 アメリカ合衆国)にした特願2014-513661号の一部を平成29年12月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 3月20日付け:拒絶理由通知
令和 元年 9月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 1月10日付け:拒絶査定
令和 2年 5月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 3月26日付け:拒絶理由通知
令和 3年 7月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 9月30日付け:拒絶理由通知(最後)
令和 4年 2月 1日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和4年 2月 1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年2月1日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正は、拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合における最後に受けた拒絶理由通知である令和3年9月30日付け拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)において指定した期間内になされたものであって、特許請求の範囲について、請求項1の記載を、次のとおりに補正しようとするものである(下線部は、補正箇所である。)。
「コンピュータ実装電子財布管理方法であって:
バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータにより、顧客であるユーザーの電子財布に対する前記ユーザーの支払取引を処理するための要求を受信すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータによって、前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる認証トークンを求めることであって、前記認証トークンは、特有なものであって、顧客の装置によって生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによるものである、前記求めること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記認証トークンを識別すること;
前記バリュートークン取引コンピュータにより、前記認証トークンを介して、複数の電子財布から、前記ユーザーの電子財布を識別すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記ユーザーの電子財布内のバリュートークンを識別すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求の少なくとも一部に、前記バリュートークンの少なくとも一部を充てること;を含み、前記ユーザーの電子財布は、一次財布と一次財布内のサブ財布を含み、前記要求の少なくとも一部は一次財布を介して処理される、
方法。」
(2)本件補正による補正前の請求項1(令和3年7月30日提出の手続補正書による補正後の請求項1)の記載は、次のとおりである。
「コンピュータ実装電子財布管理方法であって:
バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータにより、顧客であるユーザーの電子財布に対する前記ユーザーの支払取引を処理するための要求を受信すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータによって、前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる認証トークンを求めること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記認証トークンを識別すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記ユーザーの電子財布内のバリュートークンを識別すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求を承認すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求の少なくとも一部に、前記バリュートークンの少なくとも一部を充てること;を含み、前記ユーザーの電子財布は、一次財布と一次財布内のサブ財布を含み、前記要求の少なくとも一部は一次財布を介して処理される、
方法。」
2 補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲についての補正であって、当初明細書の段落【0034】、【0044】に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内において行う補正である。また、以下に検討するように、補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明が、補正前の発明と単一性を満たすことは明らかである。
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求を承認すること;」との事項を、同請求項の「前記要求の少なくとも一部に、前記バリュートークンの少なくとも一部を充てること;」との事項へまとめる補正事項を含むものであるが、当該補正は先の拒絶理由通知(令和3年9月30日付け)での指摘事項を受けて行ったものであり、明りようでない記載の釈明を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「認証トークンを求めること」について「前記認証トークンは、特有なものであって、顧客の装置によって生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによるものである、前記求めること」との限定を付加し、また、「認証トークン」に関して「前記バリュートークン取引コンピュータにより、前記認証トークンを介して、複数の電子財布から、前記ユーザーの電子財布を識別する」との限定を付加する補正事項を含むものであり、本件補正による補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 当審拒絶理由通知の拒絶の理由において引用した特開2002-24723号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次のとおりの記載がある。(下線は、注目箇所に当審が付した。)
(ア)「【0036】図1は、本発明に係るプリペイド型電子マネー変換システム10を示す図である。プリペイド型電子マネー変換システム10は、プリペイド型電子マネー(以下、「電子マネー」という)を発行する発行端末A~Dと、該発行端末A~Dを有する発行体と提携して該発行端末A~Dが発行した電子マネーを使用することができる店舗の店舗端末a~dと、ユーザUが電子マネーを使用するためのユーザ端末12と、電子マネーをユーザUに使用させるプリペイド型電子マネー変換サーバ(以下、「変換サーバ」という)20とがインターネット(ネットワーク)14に接続されて構成されている。」
「【図1】
[図:0001388597000001.jpg]
」
(イ)「【0040】次に、ユーザ別残高DB22は、図3に示すように、「会員番号」「ID」「PASSWORD」「円換算総額」及び各電子マネー毎の使用可能ポイント(残りポイント)の各項目を有している。「会員番号」は変換サーバ20に登録された会員(ユーザU)を整理するための番号、「ID」は各会員を変換サーバ20が識別するための識別番号、「PASSWORD」は各会員が変換サーバ20にアクセスするための暗号である。そして、「円換算総額」は、各電子マネーの残高を円換算して合計したものである。例えば、ユーザFFF(会員番号1)の電子マネーの残高は、円換算総額は80000円で、その内訳はA電子マネーが100pt、B電子マネーが300pt、C電子マネーが50pt、D電子マネーが50ptとなっている。」
「【図3】
[図:0001388597000002.jpg]
」
(ウ)「【0042】次に、本実施形態に係るプリペイド型電子マネー変換システム10の決済の流れについて説明し、併せて本発明のプリペイド型電子マネー変換方法の実施形態について説明する。図6は、プリペイド型電子マネー変換システム10の決済の流れを示すフローチャートである。
【0043】まず、変換サーバ20が各発行端末A~Dに対して各電子マネーの発行を依頼する(S10)。各発行端末A~Dは、変換サーバ20から電子マネーの依頼を受託する(S12)と、変換サーバ20に対して電子マネーを発行する(S14)。ここで発行される電子マネーはプリペイド型の電子マネーであり、各発行端末A~Dは変換サーバ20に対して電子マネー使用の際に必要なIDを付与する。変換サーバ20は付与されたIDを管理すると共に、各IDに対応する電子マネーの残高を図2に示す準備金DB21に格納する(S16)。
【0044】次に、複数種類の電子マネーを使用したいユーザUは、変換サーバ20に会員登録の依頼をする(S18)。ユーザUから会員登録の依頼を受けた変換サーバ20は該ユーザUを会員として登録する(S20)。すなわち、該ユーザUに会員番号を付与し、ID及びPASSWORDと共に該ユーザUを図3に示すユーザ別残高DB22に登録する(S20)。この際、各電子マネーの残高の内訳はユーザUの希望に応じて定める。
【0045】変換サーバ20に登録されたユーザUはインターネット14に接続された店舗端末a~dにアクセスして公開されている商品を閲覧し(S22,S24)、また商品の内容と共に商品の定価や支払いが可能な電子マネーの種類を確認する(S26,S28)。
【0046】ここで、電子マネーの種類の変換について、登録されたユーザUの一人であるユーザFFF(会員番号1,図3参照)を例にして説明する。ユーザFFFが店舗端末bで320ptの商品を買いたいとする。店舗端末bにおいて使用することができる電子マネーはB電子マネーであるが、ユーザFFFはB電子マネーを300ptしか有しておらず(図3参照)、現状では買うことができない。そこで、ユーザFFFは電子マネーの種類を変換することを変換サーバ20に要求する(S30)。ここでは、A電子マネーの40ptをB電子マネーへ変換することを変換サーバ20に要求するものとする。変換サーバ20は変換要求を受けて、電子マネーの種類を変換する(S32)。電子マネーの種類の変換は、マネー変換部23が変換レートDB24を参照してユーザ別残高DB22の内訳を変更することにより行われる。すなわち、A電子マネーの残高から40pt減算すると共に、図5に示す変換レートDB24を参照して40ptに0.5を乗じてB電子マネーの残高に加算する。これにより、図3に示すユーザ別残高DBは図7に示すように変更され、ユーザFFFのA電子マネーの残高は60pt、B電子マネーの残高は320ptとなる。
【0047】続いて、ユーザFFFは変換サーバ20に対して商品の代金の支払いを要求し(S34)、変換サーバ20はユーザFFFからの代金支払い要求を受信する(S36)と、店舗端末bに対してB電子マネーで320ptを支払う(S38)。支払いは、変換サーバ20が発行端末Bから付与されたIDを店舗端末bに提示して行われる。変換サーバ20は、代金を店舗端末bに支払った後に、ユーザ別残高DB22のユーザFFFのB電子マネー残高から320ptを引き落とす(S42)。一方、店舗端末bは代金を受領する(S40)と、ダウンロード又は発送するなどの方法により、商品をユーザFFFに引き渡す(S44,S46)。
【0048】上記のように変換サーバ20によって電子マネーの種類を変換することにより、ユーザUは異なる種類の電子マネーを必要とする店舗端末a~dで買い物をすることができる。その後、店舗端末a~dは商品の代金として取得した電子マネーの換金を発行端末A~Dに依頼する(S48)。発行端末A~Dでは、店舗端末a~dから電子マネーの換金依頼を受託する(S50)と、電子マネーを換金して(S52)店舗端末a~dに現金を支払い、店舗端末a~dがこれを受け取って(S54)、決済が完了する。」
「【図6】
[図:0001388597000003.jpg]
」
上記(ア)~(ウ)によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子マネーを発行し、電子マネーを換金して現金を支払う、電子マネーの発行体が有する発行端末(【0043】、【0048】、【0036】)と、ユーザ端末と(【0036】)、変換サーバと、がネットワークに接続されて構成されるプリペイド型電子マネー変換システム(【0036】)の決済における変換サーバの処理方法(【0042】-【0048】、【図6】)であって、
複数種類の電子マネーを使用したいユーザUは、変換サーバに会員登録の依頼をし、ユーザUから会員登録の依頼を受けた変換サーバは、該ユーザUに会員番号を付与し、ID及びPASSWORDと共に該ユーザUをユーザ別残高DBに登録し、この際、各電子マネーの残高の内訳はユーザUの希望に応じて定め(【0044】)、「会員番号」は変換サーバ20に登録された会員(ユーザU)を整理するための番号、「ID」は各会員を変換サーバ20が識別するための識別番号、「PASSWORD」は各会員が変換サーバ20にアクセスするための暗号であり(【0040】)、
電子マネーの残高が、円換算総額は80000円で、その内訳はA電子マネーが100pt、B電子マネーが300pt、C電子マネーが50pt、D電子マネーが50ptとなっている、ユーザUの一人であるユーザ(【0040】、【図3】)が、使用することができる電子マネーはB電子マネーである店舗端末bで320ptの商品を買いたいとき、ユーザFFFは、A電子マネーの40ptをB電子マネーへ変換することを変換サーバに要求し、変換サーバは変換要求を受けて、電子マネーの種類を変換し(【0046】)、
ユーザFFFは変換サーバに対して商品の代金の支払いを要求し、変換サーバはユーザFFFからの代金支払い要求を受信すると、店舗端末bに対してB電子マネーで320ptを支払い、変換サーバは、代金を店舗端末bに支払った後に、ユーザ別残高DBのユーザFFFのB電子マネー残高から320ptを引き落とす(【0047】)、
方法。」
イ 引用文献1に記載の他の技術事項について
引用文献1にはさらに、次の事項が記載されている。
「【0056】次に、本発明に係るプリペイド型電子マネー変換システムの第2実施形態について説明する。第2実施形態のプリペイド型電子マネー変換システムは、第1実施形態のプリペイド型電子マネー変換システムと基本的な構成は同一であるが、変換サーバ20が有するユーザ残高DB32の内容が異なる。この点について、第2実施形態の変換サーバ20に含まれるユーザ別残高DB32を示す図9を参照しながら説明する。ユーザ別残高DB32は各電子マネー別の残高は有しておらず、各電子マネーを統合した残高管理用の統合電子マネーとして残高が示されている。各電子マネーと統合電子マネーとの変換は、第1実施形態の場合と同じように変換レートDB24に格納された変換レートに従って変換される。
【0057】このように、統合電子マネーによってユーザ別残高DB32を構成することにより、ユーザU自身がそれぞれの電子マネー毎に残高を管理する必要がないので、変換サーバ20の利便性の向上を図ることができる。なお、本実施形態においては、統合電子マネーとして、各発行端末A~Dが発行する電子マネーとは異なる残高管理用の電子マネーを新たに創設したが、必ずしも統合電子マネーを創設する必要はない。すなわち、例えば、第1実施形態のA電子マネーを統合電子マネーとして、他の電子マネーをA電子マネーに変換することとしても良い。」
上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項も記載されているものと認められる。
「ユーザ別残高DB32の各電子マネー別の残高を、各電子マネーを統合したA電子マネーとして示す。」
ウ 当審拒絶理由通知の拒絶の理由において引用した特開2000-123099号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次のとおりの記載がある。(下線は、注目箇所に当審が付した。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電子的価値の象徴を相互に移転できる取引装置を用いて、異なる種類の電子的価値の象徴を匿名性を守ったまま交換する方法に関するものである。以下では、電子的価値の象徴の一つとして特に電子マネー(電子現金)を例にとり説明することとする。」
「【0012】
【発明の実施の形態】<第1の形態>円の電子マネーとドルの電子マネーの両替
図1は、利用者Aが両替ショップBとの取引により、円の電子マネーをドルの電子マネーに両替する場合の具体的な手順を示している。また、図2は送信される電文の流れを示している。
【0013】利用者Aはその第1の取引装置と両替ショップの第2の取引装置との間で第1の通信セッションを確立する(S1)。次に利用者Aはその所有するICカード(第1の取引装置)に保持されている円(第1の通貨種別)の電子マネーを10ドル(第2の通貨種別の金額W2)の電子マネーに両替するために、第1の通信セッションにおいて両替ショップBに10ドルという金額と、後の通信セッションで利用者Aであることを両替ショップサーバ(第2の取引装置)に証明するのに必要な利用者識別データとして、あるデータXX1を送信する(S2)。両替ショップBの第2の取引装置は、取引条件を設定し(例えば10ドル買いたいという要求に対し、1500円で売るという取引条件を設定する)、その取引条件と前記利用者識別データと取引ID、有効期限などの情報とをあわせて、これらの情報に対する両替ショップによる電子署名をした契約書を利用者Aの第1の取引装置に送信し(S3)、第1の通信セッションを完了する(S4)。
【0014】利用者Aの第1の取引装置は受信した契約書の署名を検証し(S5)、取引内容を承諾すれば(S6)、第2の取引装置との間に第2の通信セッションを確立(S7)、1500円の電子マネーと取引IDを両替ショップBの第2の取引装置に送信する(S8)。両替ショップBの第2の取引装置は受領明細書として取引IDなどに署名をして利用者Aの第1の取引装置に送信し(S9)、第2の通信セッションを完了する(S10)。
【0015】利用者Aの第1の取引装置は受信した受領明細書の署名を検証する(S11)。もし円の電子マネーとドルの電子マネーが同じICカードに入り得なければ、利用者Aは第2、第3の通信セッションの間でICカードを交換することができる(S12)。
【0016】利用者Aは第1の取引装置と第2の取引装置との間に第3の通信セッションを確立し(S13)、この第3の通信セッションにおいて利用者Aの第1の取引装置は、前記利用者識別データXX1の検証に必要な利用者証明情報ZZ1と取引IDを両替ショップBの第2の取引装置に送信し(S14)、両替ショップBの第2の取引装置は受信した利用者証明情報ZZ1と前記利用者識別データXX1を照合して利用者Aであることを確認し(S15)、取引IDの取引条件によって10ドルの電子マネーを利用者Aの第1の取引装置に送信する(S16)。利用者Aの第1の取引装置は両替ショップBの第2の取引装置に対し、10ドルの電子マネーを受け取ったことを証明する受領証明書を送信し(S17)、第3の通信セッションを完了する(S18)。
【0017】匿名による利用者識別の方法としては、例えば利用者識別データXX1として、乱数など何らかの文字列r1を、両替ショップの第2の取引装置と共有するハッシュ関数h(x)によって第1の取引装置で変換して得られるh(r1)を用い、利用者証明情報ZZ1としてXX1の生成に利用した文字列r1を用いる方法がある。」
以上、上記記載から以下のことがいえる。
(ア)【0013】~【0016】の記載によると、第3の通信セッションに先立つ第1の通信セッションのステップS3において、両替ショップの第2の取引装置が「取引ID」を取引条件等とともに利用者Aの第1の取引装置に送信していることから、「取引ID」は、電子マネーによる取引の開始時に第2の取引装置においてステップS3の送信に先立ち求められるものである。
(イ)【0013】、【0016】、【0017】の記載によると、第3の通信セッションに先立つ第2の通信セッションにおいて、取引IDとともに取引の対象となる1500円の電子マネーが第1の取引装置から第2の取引装置に送信され、その上で、第3の通信セッションにおいて、利用者証明情報ZZ1と取引IDが第1の取引装置から第2の取引装置に送信され、第2の取引装置は、利用者証明情報ZZ1と利用者Aの識別データ(利用者敷居別データXX1)を照合して利用者Aであることを確認し、取引IDの取引条件に基づいて1500円に対して10ドルの電子マネーを第1の取引装置に送信する。
このことから、「取引ID」は、1500円を10ドルに両替する両替ショップの第2の取引装置において生成されて、取引条件や取引対象を含む取引の識別に用いられており、「利用者証明情報ZZ1」は、利用者Aの第1の取引装置において生成されて、取引を行う利用者Aの識別に用いられているといえる。
(ウ)よって、引用文献2には、
取引IDを用いる技術である、「電子取引の開始時に取引IDを求め、電子取引の識別に用いること」(以下「引用文献2記載技術1」という。)が記載されており、
「更に、取引IDとともに利用者証明情報をも用いる技術である、「電子取引の開始時に、ショップ装置において取引IDを求め、利用者装置において利用者証明情報を求め、ショップ装置が利用者装置から送信された取引IDと利用者証明情報を用いて取引条件や取引対象を含む取引と取引の利用者の識別を行うこと」(以下「引用文献2記載技術2」という。)が記載されている。
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「電子マネーの残高」は、電子マネーに関連する残高、すなわちバリューの電子的表現であるから、本件補正発明の「バリュートークン」に相当する。
イ 引用発明の「発行端末」は、電子マネーの発行体、すなわちバリュートークンの発行者の端末であって、電子マネーを発行し、電子マネーを換金して現金を支払うという、取引の認証をするシステムであるから、本件補正発明の「バリュートークンの発行者の認証システム」に相当する。また、引用発明の「ユーザ端末」は、ユーザが使用する端末であるから、本件補正発明の「顧客の装置」に相当する。
ウ 引用発明の「変換サーバ」は、発行端末とは異なるコンピュータであり、電子マネーの残高による取引をするものであるから、本件補正発明の「バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータ」に相当する。
エ 引用発明の変換サーバに会員登録した「ユーザU」は、本件補正発明の「顧客であるユーザー」に相当し、引用発明の「ユーザUの電子マネーの残高」を示すユーザ別残高DBは、顧客であるユーザーのバリュートークンを有するものであり、代金支払い要求により処理される支払い取引の対象であるから、本件補正発明の「顧客であるユーザー」の「電子財布」に相当する。そして、引用発明のユーザUの電子マネーの残高に含まれる「円換算総額」は、本件補正発明の「一次財布」に相当し、引用発明の「A電子マネー」、「B電子マネー」、「C電子マネー」、「D電子マネー」は、円換算総額の内訳であるから、本件補正発明の「一次財布内のサブ財布」に相当する。
オ 引用発明である「変換サーバの処理方法」は、上記ウで検討したコンピュータに実装されて上記エで検討した「電子財布」を管理する方法であり、下記の相違点を除いて、本件補正発明と同様の「コンピュータ実装電子財布管理方法」であるといえる。
カ 引用発明の変換サーバが受信する「ユーザFFFからの代金支払い要求」は、上記エで検討した「電子財布」による支払い取引の処理を要求するものであるから、引用発明の「変換サーバ」、すなわち「バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータ」により上記「ユーザFFFからの代金支払い要求」を受信することは、本件補正発明の「バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータにより、電子財布に対する支払取引を処理するための要求を受信すること」に相当する。
キ 引用発明の変換サーバが、上記カで検討した要求に応じて、店舗端末bに対してB電子マネーで320ptを支払い、ユーザ別残高DBのユーザFFFのB電子マネー残高から320ptを引き落とすことは、本件補正発明の「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求の少なくとも一部に、前記バリュートークンの少なくとも一部を充てること」に相当する。
ク キで検討した引用発明の支払い及び引き落としの額であるB電子マネーによる「320pt」は、「認証トークン」でなく、「特有のものであって、顧客の装置によって生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによるもの」でもないものの、「前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる情報」である点で、本願発明の「前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる認証トークン」と共通する。
そして、本願発明と引用発明とは、いずれも、「前記電子バリュートークン取引コンピュータによって、前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる認証トークンを求める」ものであるといえる。
ケ 引用発明の引き落としは、その対象をユーザ別残高DBのユーザFFFのB電子マネー残高と識別して行うものであるから、引用発明においても上記引き落としに先立って、「前記バリュートークン取引コンピュータにより、複数の電子財布から、前記ユーザーの電子財布を識別」し、「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記電子財布内のバリュートークンを識別すること」は明らかである。
したがって、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
コンピュータ実装電子財布管理方法であって:
バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータにより、顧客であるユーザーの電子財布に対する前記ユーザーの支払取引を処理するための要求を受信すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータによって、前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる情報を求めること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記ユーザーの電子財布内のバリュートークンを識別すること;
前記バリュートークン取引コンピュータにより、複数の電子財布から、前記ユーザーの電子財布を識別すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求の少なくとも一部に、前記バリュートークンの少なくとも一部を充てること;を含み、前記ユーザーの電子財布は、一次財布と一次財布内のサブ財布を含む、
方法。
[相違点1]
電子バリュートークン取引コンピュータが求める「前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる情報」が、本件補正発明では「認証トークン」であって、「特有なものであって、顧客の装置によって生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによるものである」のに対し、引用発明では、支払い及び引き落としの額である「320pt」である点。
[相違点2]
本件補正発明は「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記認証トークンを識別すること」を含むのに対し、引用発明はかかる構成を含んでいない点。
[相違点3]
「前記バリュートークン取引コンピュータにより、複数の電子財布から、前記ユーザーの電子財布を識別する」にあたり、本件補正発明は「認証トークンを介して」行うのに対し、引用発明はかかる構成を含んでいない点。
[相違点4]
本件補正発明は「前記要求の少なくとも一部は一次財布を介して処理される」という事項を備えるのに対し、引用発明はかかる事項を備えていない点。
(4)判断
上記[相違点1]~[相違点4]について検討する。
ア[相違点1]~[相違点3]について
相違点1~3は関連する相違点であるから、まとめて検討を行う。
上記第2[理由]2(2)ウに提示したとおり、引用文献2には、「電子取引の開始時に、利用者装置で生成した利用者識別データを生成し、当該利用者識別データにより利用者の確認を行うこと」(引用文献2記載技術1)及び「電子取引の開始時に、ショップ装置において取引IDを求め、利用者装置において利用者証明情報を求め、ショップ装置が利用者装置から送信された取引IDと利用者証明情報を用いて取引条件や取引対象を含む取引と取引の利用者の識別を行うこと」(引用文献2記載技術2)が記載されている。このうち、引用文献2記載技術1は周知技術であり、引用文献2記載技術2は、周知技術(引用文献2記載技術1)を具体化したものであって、これらの技術における「利用者装置」と「ショップ装置」は、それぞれが本件補正発明における「顧客の装置」と「電子バリュートークン取引コンピュータ」に対応するものである。そして、「取引ID」は、バリュートークン取引コンピュータによって取引を処理するために取引の要求の開始において生成される情報であり、「利用者証明情報」は、顧客の装置によって生成された特有の情報であるといえることから、引用文献2記載技術2においては、バリュートークン取引コンピュータによって取引を処理するために取引の要求の開始において生成される情報である「取引ID」と顧客の装置によって生成される特有な情報である「利用者証明情報」とからなる情報が顧客の装置から電子バリュートークン取引コンピュータに送信され、電子バリュートークン取引コンピュータによって、この情報が取引条件や取引対象を含む取引と取引の利用者の識別を行うための「認証トークン」として用いられているものといえる。
そして、引用発明も、支払いの取引の要求の少なくとも一部にバリュートークンの少なくとも一部を充てるために複数の電子財布からユーザーの電子財布を識別するものであることから、取引の要求や要求を行ったユーザを識別するための情報が顧客の装置から電子バリュー取引コンピュータに送信されて電子バリュー取引コンピュータにおける取引の要求や要求を行ったユーザの識別を行って、取引の要求に充当すべきバリュートークンとなるユーザ別残高DBのユーザの電子マネー残高を識別していることは自明である。
してみると、引用発明における支払いの取引のためのユーザの識別のための構成として周知技術を具体化した技術である引用文献2記載技術2を採用し、つまり、引用発明における支払い及び引き落としの額である「320pt」に引用文献2記載技術2の「取引IDと利用者証明情報」と組み合わせたものを組み合わせて、引用発明の「電子バリュートークン取引コンピュータによって前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成されたまたはそれらの組み合わせによるもの」を、「特有なものであって、顧客装置によって生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによるもの」である「認証トークン」として、電子バリュートークン取引コンピュータがこのような「認証トークン」を「求め」、「識別」し、複数の電子財布からのユーザ-の電子財布の識別をこの「認証トークンを介して」行うようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ[相違点4]について
引用発明の「ユーザUの電子マネーの残高」に含まれる円換算総額は、ユーザUの電子マネーの各電子マネー別の残高を、各電子マネーを統合して示すものであるところ、上記第2[理由]2(2)イに記載したとおり、引用文献1には、ユーザ別残高DB32の各電子マネー別の残高を、各電子マネーを統合したA電子マネーとして示すことが記載されている。このことに照らせば、引用発明において、ユーザUの電子マネーの各電子マネー別の残高を統合して示す指標として円換算総額に代えて各電子マネーを統合したA電子マネーを用いることとして、各電子マネーを統合したA電子マネーを本件補正発明の「一次財布」とし、それによって、A電子マネーによる支払いの要求という「前記要求の少なくとも一部」について「一次財布」であるA電子マネー「を介して処理される」ように構成することは、当業者が容易に想到し得た事項である。
ウ 作用効果について
これらの相違点1~4を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1に記載された技術並びに引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 意見書の主張について
審判請求人は、令和4年2月1日提出の意見書において、本件補正発明の「認証トークン」が電子財布へのアクセスを検証および許可するためのものであって、引用文献2の「取引ID」のように電子取引の識別に用いるものではない旨を主張している。
しかしながら、上記イで検討したとおり、引用文献2には、本件拒絶理由通知で示した「取引ID」を用いた周知技術に加え、この周知技術を「取引IDと利用者証明情報」を用いるものとして具体化した内容として、上記した引用文献2記載技術2が示されており、つまり、特有のものとして顧客の装置で生成された情報を含む情報を認証トークンとして用いることが記載されており、引用発明におけるユーザ別残高へのアクセスの検証及び許可のためにこれを用いることは容易想到である。
オ むすび
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術並びに引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正の却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年 2月 1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年 7月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 当審拒絶理由通知
令和3年9月30日付けの当審拒絶理由通知における拒絶理由(理由2)は、次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2002-24723号公報
引用文献2.特開2000-123099号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
当審拒絶理由通知の拒絶の理由で引用した引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)ア~ウに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「認証トークンを求めること」について「前記認証トークンは、特有なものであって、顧客の装置によって生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによるものである、前記求めること」という限定事項、「認証トークン」に関して「前記バリュートークン取引コンピュータにより、前記認証トークンを介して、複数の電子財布から、前記ユーザーの電子財布を識別する」するという限定事項を削除し、「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求を承認すること;」との事項を追加したものである。
(1)対比
前記第2の[理由]2(3)と同様に、本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「電子マネーの残高」は、電子マネーに関連する残高、すなわちバリューの電子的表現であるから、本願発明の「バリュートークン」に相当する。
イ 引用発明の「発行端末」は、電子マネーの発行体、すなわちバリュートークンの発行者の端末であって、電子マネーを発行し、電子マネーを換金して現金を支払うという、取引の認証をするシステムであるから、本願発明の「バリュートークンの発行者の認証システム」に相当する。
ウ 引用発明の「変換サーバ」は、発行端末とは異なるコンピュータであり、電子マネーの残高による取引をするものであるから、本願発明の「バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータ」に相当する。
エ 引用発明の変換サーバに会員登録した「ユーザU」は、本願発明の「顧客であるユーザー」に相当し、引用発明の「ユーザUの電子マネーの残高」を示すユーザ別残高DBは、顧客であるユーザーのバリュートークンを有するものであり、代金支払い要求により処理される支払い取引の対象であるから、本願発明の「顧客であるユーザー」の「電子財布」に相当する。そして、引用発明のユーザUの電子マネーの残高に含まれる「円換算総額」は、本願発明の「一次財布」に相当し、引用発明の「A電子マネー」、「B電子マネー」、「C電子マネー」、「D電子マネー」は、円換算総額の内訳であるから、本願発明の「一次財布内のサブ財布」に相当する。
オ 引用発明である「変換サーバの処理方法」は、上記ウで検討したコンピュータに実装されて上記エで検討した「電子財布」を管理する方法であり、下記の相違点を除いて、本願発明と同様の「コンピュータ実装電子財布管理方法」であるといえる。
カ 引用発明の変換サーバが受信する「ユーザFFFからの代金支払い要求」は、上記エで検討した「電子財布」による支払い取引の処理を要求するものであるから、引用発明の「変換サーバ」、すなわち「バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータ」により上記「ユーザFFFからの代金支払い要求」を受信することは、本願発明の「バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータにより、電子財布に対する支払取引を処理するための要求を受信すること」に相当する。
キ 引用発明の変換サーバが、上記カで検討した要求に応じて、店舗端末bに対してB電子マネーで320ptを支払い、ユーザ別残高DBのユーザFFFのB電子マネー残高から320ptを引き落とすことは、本願発明の「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求の少なくとも一部に、前記バリュートークンの少なくとも一部を充てること」に相当する。
ク 上記キで検討した引用発明の支払い及び引き落としの額であるB電子マネーによる「320pt」は、「認証トークン」ではないものの、「前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる情報」である点で、本願発明の「前記電子バリュートークン取引コンピュータによって」「求める」「前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる認証トークン」と共通する。
ケ 上記キに検討した引用発明の引き落としは、その対象をユーザ別残高DBのユーザFFFのB電子マネー残高と識別して行うものであるから、引用発明においても上記引き落としに先立って、「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記電子財布内のバリュートークンを識別すること」は明らかである。
したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「 コンピュータ実装電子財布管理方法であって:
バリュートークンの発行者の認証システムとは異なる電子バリュートークン取引コンピュータにより、顧客であるユーザーの電子財布に対する前記ユーザーの支払取引を処理するための要求を受信すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータによって、前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる情報を求めること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記ユーザーの電子財布内のバリュートークンを識別すること;
前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求の少なくとも一部に、前記バリュートークンの少なくとも一部を充てること;を含み、前記ユーザーの電子財布は、一次財布と一次財布内のサブ財布を含む、
方法。」
[相違点1]
「前記電子バリュートークン取引コンピュータによって」「求める」「前記支払取引を処理するために、前記支払取引を処理するための前記要求の開始において生成され、作成され、または形成された、またはそれらの組み合わせによる」情報が、本願発明では「認証トークン」であるのに対し、引用発明では支払い及び引き落としの額である「320pt」である点。
[相違点2]
本願発明は「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記認証トークンを識別すること」を含むのに対し、引用発明はかかる構成を含んでいない点。
[相違点3]
本願発明は「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求を承認すること」を含むのに対し、引用発明はかかる構成を含んでいない点。
[相違点4]
本願発明は「前記要求の少なくとも一部は一次財布を介して処理される」という事項を備えるのに対し、引用発明はかかる事項を備えていない点。
(2)判断
上記[相違点1]~[相違点4]について検討する。
ア[相違点1]、[相違点2]について
相違点1、2は関連する相違点であるから、まとめて検討を行う。
上記第2[理由]2(2)ウ(ア)に提示したとおり、引用文献2には、電子取引の開始時に取引IDのような「認証トークン」を求め、電子取引の識別に用いることが記載されており、当該技術事項は周知である。
本願発明の「認証トークン」は、「一義的に電子取引を識別するように、電子取引の開始時に生成され」るものを含む(本願明細書段落【0034】)ところ、引用発明における電子取引についても、当該周知技術を適用し、その電子取引の開始時に取引IDのような「認証トークン」を求め、電子取引の識別に用いるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、上記第2[理由]2(4)に記載したように、引用発明において、変換サーバが、ユーザを識別するための情報を受信し、当該情報を識別し、その結果、ユーザ別残高DBのユーザの電子マネー残高を識別するにあたり、第2[理由]2(2)ウ(イ)において上記した周知技術を適用し、ユーザを識別するための情報として、取引の開始時に求めた、利用者の装置で生成した利用者識別データを用いるようにすることも、当業者が容易になし得たことである。
イ[相違点3]について
支払の処理を、支払額が残高内であるかなど、実行可能性や妥当性を確認したうえで承認することは、商取引一般においてなされていることであるから、引用発明における支払取引を処理するための要求に応じた支払の処理においても上記承認を行うことにより、「前記電子バリュートークン取引コンピュータにより、前記要求を承認すること」を含むようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
ウ[相違点4]について
引用発明の「ユーザUの電子マネーの残高」に含まれる円換算総額は、ユーザUの電子マネーの各電子マネー別の残高を、各電子マネーを統合して示すものであるところ、上記第2[理由]2(2)イに記載したとおり、引用文献1には、ユーザ別残高DB32の各電子マネー別の残高を、各電子マネーを統合したA電子マネーとして示すことが記載されている。
このことに照らせば、引用発明において、ユーザUの電子マネーの各電子マネー別の残高を統合して示す指標として円換算総額に代えて各電子マネーを統合したA電子マネーを用いることとして、各電子マネーを統合したA電子マネーを本願発明の「一次財布」とし、それによって、A電子マネーによる支払いの要求という「前記要求の少なくとも一部」について「一次財布」であるA電子マネー「を介して処理される」ように構成することは、当業者が容易に想到し得た事項である。
また、これらの相違点1~4を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1に記載された技術並びに周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び引用文献1に記載された技術並びに周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-006640