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特許拒絶査定不服審判

2020-006389

遊技機

審判番号
2020-006389
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-117600外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年05月12日
審決日
2021年03月24日
公報発行日
2021年07月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A63F) / P18 .572-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2019-117600号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月14日出願公開、特開2021-  3217号〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和1年6月25日の出願であって、同年10月16日付けで拒絶理由が通知され、同年12月3日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、令和2年1月31日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年2月14日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して同年5月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年5月12日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

(1)本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の令和2年1月31日に提出された手続補正書において、

「【請求項1】
コネクタが配置された第1基板と、前記コネクタに接続された配線手段と、音量調整スイッチが配置された第2基板と、を備えた遊技機であって、
前記第1基板は、前記配線手段と対向する領域を備え、前記領域は電子部品が実装されていない領域となっており、
前記音量調整スイッチは、つまみと前記つまみを回転可能に支持するハウジングとを備え、
前記つまみは鍔部を備え、前記鍔部には切り欠き部が形成されており、
前記ハウジングには、複数の表示が設けられており、
隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離を第1距離とすると、前記切り欠き部の幅が前記第1距離よりも小さくなっていることを特徴とする遊技機。」

とあったものを、

「【請求項1】
A コネクタが配置された第1基板と、前記コネクタに接続された配線手段と、音量調整スイッチが配置された第2基板と、を備えた遊技機であって、
B 前記第1基板は、前記配線手段と対向する領域を備え、前記領域は電子部品が実装されていない領域となっており、
C 前記音量調整スイッチは、つまみと前記つまみを回転可能に支持するハウジングとを備え、
D 前記つまみは鍔部を備え、前記鍔部には切り欠き部が形成されており、
E 前記ハウジングには、複数の表示が設けられており、
F 隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離を第1距離とすると、前記切り欠き部の幅が前記第1距離よりも小さくなっており、
G 前記切り欠き部の幅の中心が前記第1距離の中心に位置している状態では、前記一方の表示の中心と前記他方の表示の中心とが、前記切り欠き部を介して露出していない
A ことを特徴とする遊技機。」

と補正するものである(下線部は補正箇所を示す。記号A~Gは、分説するため当審で付した。)。

(2)本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「切り欠き部の幅」と、「隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離」である「第1距離」との関係について、「前記切り欠き部の幅の中心が前記第1距離の中心に位置している状態では、前記一方の表示の中心と前記他方の表示の中心とが、前記切り欠き部を介して露出していない」(以下、「本件補正事項」という。)との構成を追加する補正である。

2 合議体の判断

(1)本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離を第1距離とすると、前記切り欠き部の幅が前記第1距離よりも小さくなっている」との構成は、「切り欠き部の幅が」「隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離」「よりも小さ」いことを特定しているものであるが、そのように構成すれば、必然的に、「切り欠き部の幅」の中心が「隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離」の中心に位置していれば、「隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心」が「切り欠き部」から露出しないことは明らかである。

そうすると、本件補正事項は、本件補正前の請求項1に係る発明が必然的に備える構成を特定するものであって、その構成が特定されることによって、本件補正後の請求項1に係る発明が、本件補正前の請求項1に係る発明に対して減縮されるものではないから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでないことは明らかである。

また、本件補正が、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことも明らかである。

(2)以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれを目的とするものではない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件について

本件補正が、仮に特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、上記1(1)に記載した、次のとおりのものである。なお、記号AないしGは、分説するため合議体が付した。

(本願補正発明)

「【請求項1】
A コネクタが配置された第1基板と、前記コネクタに接続された配線手段と、音量調整スイッチが配置された第2基板と、を備えた遊技機であって、
B 前記第1基板は、前記配線手段と対向する領域を備え、前記領域は電子部品が実装されていない領域となっており、
C 前記音量調整スイッチは、つまみと前記つまみを回転可能に支持するハウジングとを備え、
D 前記つまみは鍔部を備え、前記鍔部には切り欠き部が形成されており、
E 前記ハウジングには、複数の表示が設けられており、
F 隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離を第1距離とすると、前記切り欠き部の幅が前記第1距離よりも小さくなっており、
G 前記切り欠き部の幅の中心が前記第1距離の中心に位置している状態では、前記一方の表示の中心と前記他方の表示の中心とが、前記切り欠き部を介して露出していない
A ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に公開された特開2017-18307号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同様。)。

ア 「【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の手段1の遊技機は、
遊技が可能な遊技機(例えば、スロットマシン1)であって、
続きを表示(全14行)
配線(例えば、配線C1~C6/配線C10/配線C20/配線C30/配線C40,41,45,46)の少なくとも一部が基板(例えば、中継基板603/中継基板651,652/中継基板661~663/中継基板670/中継基板680)における電子部品(例えば、電子部品610A,610B,610C、610D)が実装される電子部品実装面(例えば、実装面603a/実装面651a/実装面661a~663a/実装面670a/実装面680a)に沿うように該配線を保持する保持手段(例えば、配線保持部605A,605B,605C、基板側コネクタKCN2~KCN5/基板側コネクタKCN11,12、配線保持部657/基板側コネクタKCN21,22/基板側コネクタKCN30/基板側コネクタKCN41,42)を備え、
前記基板は、前記電子部品実装面において、前記電子部品が実装される領域(例えば、実装面603aにおいて電子部品610A,610B,610Cが実装されている領域/実装面651aにおいて電子部品610Dが実装されている領域/実装面663aにおいて電子部品が実装されている領域/実装面670aにおいて電子部品が実装されている領域/実装面680aにおいて電子部品が実装されている領域)と前記配線が沿う領域(例えば、配線対応領域E1~E4/配線対応領域E10/配線対応領域E20/配線対応領域E30/配線対応領域E40)とが重複しないように構成されている(図15参照)
ことを特徴としている。
この特徴によれば、配線から発せられるノイズなどによって基板に実装された電子部品に悪影響が及び誤作動が発生することを回避できる。
・・・・・
【0049】
図4は、スロットマシン1の構成を示すブロック図である。スロットマシン1には、図4に示すように、遊技制御基板40、演出制御基板90、電源基板101が設けられており、遊技制御基板40によって遊技状態が制御され、演出制御基板90によって遊技状態に応じた演出が制御され、電源基板101によってスロットマシン1を構成する電気部品の駆動電源が生成され、各部に供給される。
・・・・・
【0068】
演出制御基板90は、サブCPU91a、ROM91b、RAM91c、I/Oポート91dを備えたマイクロコンピュータにより構成されて演出の制御を行うサブ制御部91と、演出制御基板90に接続された液晶表示器51の表示制御を行う表示制御回路92と、演出効果LED52と、リールLED55の駆動制御を行うLED駆動回路93と、スピーカ53、54からの音声出力制御を行う音声出力回路94と、電源投入時またはサブCPU91aからの初期化命令が一定時間入力されないときにサブCPU91aにリセット信号を与えるリセット回路95と、演出制御基板90に接続されたスイッチ類から入力された検出信号を検出するスイッチ検出回路96と、日付情報及び時刻情報を含む時間情報を出力する時計装置97と、スロットマシン1に供給される電源電圧を監視し、電圧低下を検出したときに、その旨を示す電圧低下信号をサブCPU91aに対して出力する電断検出回路98と、役物302を動作させるための演出用モータ304L、304Rに対してサブ制御部91から出力されたモータ駆動信号(ステッピングモータの位相信号)を伝送するモータ駆動回路99と、その他の回路等、が搭載されている。」
イ 「【0231】
ここで、このように演出制御基板90と各種基板または電気部品とを中継する中継基板603を設計する場合、実装面603aに実装する電子部品や基板側コネクタの種別や数量を決定するだけでなく、これら電子部品や基板側コネクタ及び電子部品と基板側コネクタとを接続するプリント配線を、実装面603aのどの位置に配置するかなどを決定する必要がある。このとき、例えば、中継基板603の実装面603aの面積や形状だけでなく、中継基板603がスロットマシン1のどのような位置に配置され、また、基板側コネクタKCN1~KCN6に接続される配線C1~C6がいずれの電気部品に接続されるか、つまり、配線C1~C6の配線経路等を考慮して、基板側コネクタKCN1~KCN6、電子部品、プリント配線等の配置位置を決定する。
・・・・・
【0261】
また、図19(b)に示す中継基板670のように、実装面670aに設けられた基板側コネクタKCN30から下方に向けて配線C30が実装面670aに沿うように配置される場合、実装面670aにおいて配線C30が配置される配線対応領域E31は、少なくとも電子部品610Eが設けられない領域とされていれば、プリント配線CP30が設けられていてもよい。」

上記ア、イの記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a1、b1は、本願補正発明の構成A、Bに対応させて付した。また、丸括弧内に引用文献1における引用箇所を示した。)。

(引用発明)

「a1 実装面670aに基板側コネクタKCN30が設けられた中継基板670と(【0261】)、基板側コネクタKCN30から下方に向けて実装面670aに沿うように配置される配線C30と(【0261】)、スピーカ53、54からの音声出力制御を行う音声出力回路94が搭載された演出制御基板90と(【0049】、【0068】)、を備えたスロットマシン1(【0008】)であって、
b1 中継基板670は、実装面670aにおいて配線C30が配置される配線対応領域E31が、少なくとも電子部品610Eが設けられない領域とされている(【0261】)
a1 スロットマシン1(【0008】)。」

(3)引用文献2に記載された技術事項

原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に公開された特開2011-254939号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0010】
<全体構成>
まず、図1を用いて、本発明に係るスロットマシン100の全体構成について説明する。なお、同図はスロットマシン100の外観斜視図を示したものである。」
イ 「【0024】
本体101は、上面板261、左側の側面板260、右側の側面板260、下面板264および背面板242で囲われ、前面に開口する箱体である。本体101の内部には、背面板242の上部に設けた通風口249と重ならない位置に、内部に主制御基板を収納した主制御基板収納ケース210が配置され、この主制御基板収納ケース210の下方に、3つのリール110乃至112が配置されている。主制御基板収納ケース210及びリール110乃至112の側方、即ち向って左側の側面板260には、内部に副制御基板を収納した副制御基板収納ケース220が配設してある。また、向かって右側の側面板260には、主制御基板に接続されて、スロットマシン100の情報を外部装置に出力する外部集中端子板248が取り付けられている。
・・・・・
【0029】
続きを表示(全16行)
本実施の形態の音量調整部600は、台座部603上につまみ部601を設けて構成される。つまみ部601は、図3(a)に示す矢印のように、台座部603上で回動可能にしてあり、操作者はつまみ部601を回動させ、スロットマシン100はつまみ部601の回動後の停止位置に応じて後述のように音量調整を行う。
【0030】
台座部603上であってつまみ部601の外周位置には目盛りが印字してあり、この印字された目盛りのうちの1つが、つまみ部601の回動と連動する鍔部602の切り欠いた窓部602aから視認可能にしてある。
【0031】
本実施の形態では、16段階に音量調整可能にしており、この16段階のそれぞれに対応した0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、0、A、B、C、D、EおよびFの16種類の目盛りを台座部603上に印字し、この16種類の印字のうち窓部602aから視認される目盛りに対応した音量に調整する。
・・・・・
【0033】
スロットマシン100の制御部は、大別すると、遊技の進行を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて、主な演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、によって構成されている。
・・・・・
【0046】
<副制御部>
次に、スロットマシン100の第1副制御部400について説明する。第1副制御部400は、主制御部300が送信した制御コマンドを、入力インタフェースを介して受信し、この制御コマンドに基づいて第1副制御部400の全体を制御する基本回路402を備えており、この基本回路402は、CPU404と、一時的にデータを記憶するためのRAM408と、各種デバイスの入出力を制御するためのI/O410と、時間や回数等を計測するためのカウンタタイマ412を搭載している。基本回路402のCPU404は、水晶発振器414が出力する所定周期のクロック信号をシステムクロックとして入力して動作する。ROM406は、第1副制御部400の全体を制御するための制御プログラム及びデータ、バックライトの点灯パターンや各種表示器を制御するためのデータ等を記憶する。」
ウ 「【0049】
また、第1副制御部400には、センサ回路604を備えており、CPU404は、音量調整部600のつまみ部601の位置すなわち音量調整値を、センサ回路604を介して入力する。」
エ 「図3
図4
」

オ 上記記載事項ア及び記載事項イの【0024】により、「スロットマシン100」は、「副制御基板」を備えるものである。

また、上記記載事項イの【0033】には、「スロットマシン100の制御部は、・・・主な演出の制御を行う第1副制御部400と、・・・によって構成されている。」と記載されているところ、遊技機の技術分野において、演出の制御を行う副制御部が副制御基板から構成されることは、技術常識である。

そうすると、引用文献2には、「第1副制御部400」の構成として、「第1副制御部400を構成する副制御基板」(認定事項オ)が記載されていると認められる。

カ 以上ア~エの記載事項及び認定事項オを総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる(なお、記号a2ないしe2は、本願補正発明の構成AないしEに対応させて合議体が付した。)。

(引用文献2に記載の技術事項)

「a2 主制御基板と、第1副制御部400を構成する副制御基板と、音量調整を行う音量調整部600と、を備えたスロットマシン100であって(【0010】、【0029】、認定事項オ)、
第1副制御部400は、センサ回路604と、遊技の進行を制御する主制御部300が送信した制御コマンドを、入力インタフェースを介して受信し、この制御コマンドに基づいて第1副制御部400の全体を制御する基本回路402とを備え、基本回路402は、CPU404を搭載しており(【0033】、【0046】、【0049】)、
第1副制御部400のCPU404は、音量調整部600のつまみ部601の位置すなわち音量調整値を、第1副制御部400のセンサ回路604を介して入力し(【0049】)、
c2 音量調整部600は、台座部603上につまみ部601を設けて構成され、つまみ部601は、台座部603上で回動可能にしてあり、操作者はつまみ部601を回動させ、スロットマシン100はつまみ部601の回動後の停止位置に応じて音量調整を行うものであり(【0029】)、
d2、e2 台座部603上であってつまみ部601の外周位置には16種類の目盛りが印字してあり、この印字された目盛りのうちの1つが、つまみ部601の回動と連動する鍔部602の切り欠いた窓部602aから視認可能にしてある(【0030】、【0031】)
a2 スロットマシン100(【0010】)。」

(4)対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の構成a1の「基板側コネクタKCN30が設けられた中継基板670」は、本願補正発明の構成Aの「コネクタが配置された第1基板」に相当する。また、引用発明の構成a1において、「配線C30」は、「基板側コネクタKCN30」に接続されることは明らかであるから、引用発明の構成a1の「基板側コネクタKCN30」に接続される「配線C30」は、本願補正発明の構成Aの「前記コネクタに接続された配線手段」に相当する。

また、引用発明の構成a1の「演出制御基板90」は、「基板」である点で、本願補正発明の構成Aの「第2基板」と共通する。

さらに、引用発明の構成a1の「スロットマシン1」は、本願補正発明の構成Aの「遊技機」に相当する。

よって、引用発明の構成a1は、本願補正発明の構成Aと、「コネクタが配置された第1基板と、前記コネクタに接続された配線手段と、第2基板と、を備えた遊技機」の点で共通する。

イ 引用発明の構成b1の「実装面670aにおいて配線C30が配置される配線対応領域E31」、「配線対応領域E31が、少なくとも電子部品610Eが設けられない領域とされ」は、それぞれ本願補正発明の構成Bの「前記配線手段と対向する領域」、「前記領域は電子部品が実装されていない領域となっており」に相当する。

よって、引用発明の構成b1の「中継基板670は、実装面670aにおいて配線C30が配置される配線対応領域E31が、少なくとも電子部品610Eが設けられない領域とされ」は、本願補正発明の構成Bの「前記第1基板は、前記配線手段と対向する領域を備え、前記領域は電子部品が実装されていない領域となっており」に相当する。

上記ア、イにより、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)

「【請求項1】
A’ コネクタが配置された第1基板と、前記コネクタに接続された配線手段と、第2基板と、を備えた遊技機であって、
B 前記第1基板は、前記配線手段と対向する領域を備え、前記領域は電子部品が実装されていない領域となっている
A’ 遊技機。」

である点で一致し、構成A、C~Gに関する以下の点で相違している。

(相違点)

基板に関して、

本願補正発明では、「第2基板」に「音量調整スイッチが配置され」、「前記音量調整スイッチは、つまみと前記つまみを回転可能に支持するハウジングとを備え、

前記つまみは鍔部を備え、前記鍔部には切り欠き部が形成されており、

前記ハウジングには、複数の表示が設けられており、

隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離を第1距離とすると、前記切り欠き部の幅が前記第1距離よりも小さくなっており、

前記切り欠き部の幅の中心が前記第1距離の中心に位置している状態では、前記一方の表示の中心と前記他方の表示の中心とが、前記切り欠き部を介して露出していない」のに対し、

引用発明では、「演出制御基板90」に、音量を調整するための操作部が備えられておらず、当然に、その構成も不明である点。

(5)相違点についての当審の判断

ア 遊技機の分野において、音量調整手段を基板に設けることは技術常識(例えば、特開2016-131668号公報の【0037】には、「演出制御基板303には、音量設定器・・・が設けられる。」と記載され、特開2018-198973号公報の【1203】には、「周辺制御基板1510は、・・・音制御部1540及び音量調整ボリューム1510aを備えている。」と記載されている。)であり、遊技機が種々の制御基板を備えることも技術常識であることに鑑みると、引用文献2に記載の技術事項の構成a2の「音量調整部600」は、「第1副制御部400を構成する副制御基板」等の「スロットマシン100」に備えられた「制御基板」のうち、いずれかの「制御基板」に設けられていると認められる。

そうすると、引用文献2に記載の技術事項の構成a2において、「第1副制御部400を構成する副制御基板」等の「スロットマシン100」に備えられた「制御基板」のうち、「音量調整部600」が設けられた、いずれかの「制御基板」は、本願補正発明の構成Aの「音量調整スイッチが配置された第2基板」に相当する。

また、引用文献2に記載の技術事項の構成a2の「スロットマシン100」は、本願補正発明の構成Aの「遊技機」に相当する。

イ 引用文献2に記載の技術事項の構成c2の「つまみ部601」は、本願補正発明の構成Cの「つまみ」に相当する。

また、引用文献2に記載の技術事項の構成c2において、「つまみ部601は、台座部603上で回動可能にしてあ」るものであるから、「台座部603」は、「つまみ部601」を「回動可能に」支持するものであるといえる。

そうすると、引用文献2に記載の技術事項の構成c2の「つまみ部601」を「回動可能に」する「台座部603」は、本願補正発明の構成Cの「前記つまみを回転可能に支持するハウジング」に相当する。

よって、引用文献2に記載の技術事項の構成c2の「音量調整部600は、」「つまみ部601」と「つまみ部601」を「回動可能に」する「台座部603」を「設けて」いることは、本願補正発明の構成Cの「前記音量調整スイッチは、つまみと前記つまみを回転可能に支持するハウジングとを備え」ることに相当する。

ウ 引用文献2に記載の技術事項のd2、e2の「つまみ部601の回動と連動する鍔部602」は、本願補正発明の構成Dの「鍔部」に相当する。また、「鍔部602」は、「つまみ部601の回動と連動する」ものであるから、「つまみ部601」が「鍔部602」を備えると認められる。

さらに、引用文献2に記載の技術事項のd2、e2における「鍔部602の切り欠いた窓部602a」との構成から、「鍔部602」に「切り欠いた窓部602a」が形成されていることは明らかであるから、引用文献2に記載の技術事項のd2、e2において、「鍔部602」に「切り欠いた窓部602a」が形成されていることは、本願補正発明の構成Dの「前記鍔部には切り欠き部が形成されており」に相当する。

よって、引用文献2に記載の技術事項の構成d2、e2の「つまみ部601」が「鍔部602」を備え、「鍔部602」に「切り欠いた窓部602a」が形成されていることは、本願補正発明の構成の構成Dの「前記つまみは鍔部を備え、前記鍔部には切り欠き部が形成されており」に相当する。

エ 引用文献2に記載の技術事項のd2、e2の「16種類の目盛り」は、本願補正発明の構成Eの「複数の表示」に相当するから、引用文献2に記載の技術事項のd2、e2の「台座部603上であってつまみ部601の外周位置には16種類の目盛りが印字してあり」は、本願補正発明の構成Eの「前記ハウジングには、複数の表示が設けられており」に相当する。

オ 引用発明と引用文献2に記載の技術事項とは、ともに音の制御を行う制御基板を備える遊技機である点で共通する。

そして、引用発明において、音の制御を行う制御基板である「演出制御基板90」の構成として、上記引用文献2に記載の技術事項を適用し、「演出制御基板90」に、切り欠いた窓部が形成された鍔部を備えるつまみ部と、つまみ部を回動可能にする台座部を備える音量調整部を設け、台座部上であってつまみ部の外周位置に16種類の目盛りを印字し、印字された目盛りのうちの1つが、つまみ部の回動と連動する鍔部の切り欠いた窓部から視認可能になるように構成して、本願補正発明の構成A、C~Eに係る上記相違点の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、上記アで、引用文献2に記載の技術事項の構成a2の「音量調整部600」がいずれかの「制御基板」に設けられていると認定したところ、該「音量調整部600」がいずれかの「制御基板」に設けられているとは認定できないとしても、上記アで摘示した技術常識を考慮すれば、該「音量調整部600」をいずれかの「制御基板」に設けることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

カ そして、切り欠いた窓部の幅は、表示する目盛りの個数や大きさ、形状等を勘案して、当業者が適宜設計し得る事項にすぎず、切り欠いた窓部の幅を、台座部に印字された隣り合う目盛りの各中心間の距離よりも小さくすることも、ごく普通に設計されるものである(例えば、電子的技術情報(DIPロータリースイッチ 0~9,カタログ[online] ,2013年 2月16日発売,[2020年 6月23日検索],主に、DRS4010C、DRS4110C、DRR4010C、DRR4110Cを参照,URL,http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-06500/)を参照されたい。)。

また、そのように構成すれば、必然的に、切り欠いた窓部の幅の中心が、台座部に印字された隣り合う目盛りの各中心間の距離の中心に位置している状態では、隣り合う目盛りの一方の表示の中心と他方の表示の中心とが、切り欠いた窓部を介して露出していないことは自明である。

したがって、本願補正発明の構成F、Gは、当業者が適宜設計し得たものである。

キ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 本願補正発明の作用効果について

本願補正発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

ケ 請求人の主張について

請求人は、審判請求書の「5.対比説明1」において、

「(5-1)本願請求項1に係る発明は、「前記音量調整スイッチは、つまみと前記つまみを回転可能に支持するハウジングとを備え、前記つまみは鍔部を備え、前記鍔部には切り欠き部が形成されており、前記ハウジングには、複数の表示が設けられており、」という構成Aと、
「隣り合う前記表示における一方の表示の中心と他方の表示の中心との間の距離を第1距離とすると、前記切り欠き部の幅が前記第1距離よりも小さくなっており、前記切り欠き部の幅の中心が前記第1距離の中心に位置している状態では、前記一方の表示の中心と前記他方の表示の中心とが、前記切り欠き部を介して露出していない」という構成Bと、
を有しています。
(5-2)引用文献1には音量調整スイッチに関する記載はなく、構成Aは記載されていません。この点について、引用文献2の例えば[0030]には「台座部603上であってつまみ部601の外周位置には目盛りが印字してあり、この印字された目盛りのうちの1つが、つまみ部601の回動と連動する鍔部602の切り欠いた窓部602aから視認可能にしてある。」という記載はありますが、引用文献2にたとえ構成Aの記載があったとしても構成Bは一切開示も示唆もされていません。」

と主張している。

しかしながら、請求人の主張する構成Bとなすことは、上記カにて説示したとおりであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

(6)まとめ

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

また、本件補正が、仮に特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

よって、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年1月31日提出の手続補正書でした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記1、2の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

記

1.特開2017-18307号公報

2.特開2011-254939号公報

3 引用文献1に記載された事項、引用文献2に記載された技術事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定、引用文献2の記載事項及び引用文献2に記載の技術事項の認定については、上記「第2[理由]3(2)引用文献1に記載された事項」、「第2[理由]3(3)引用文献2に記載された技術事項」に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、構成要件である「前記切り欠き部の幅の中心が前記第1距離の中心に位置している状態では、前記一方の表示の中心と前記他方の表示の中心とが、前記切り欠き部を介して露出していない」との構成を省くものである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、上記「第2[理由]3(4)」に記載した相違点の一部において相違し、その余の点で一致している。そして、当該相違点は、上記「第2[理由]3(5)」にて説示したとおり、当業者が容易に想到することができたものであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-006389

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