2020-004562
感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置
- 審判番号
- 2020-004562
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-520007外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年04月03日
- 審決日
- 2020年11月04日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2016年(平成28年)6月6日(パリ条約による優先権主張 2015年7月8日 中国)を国際出願日とする出願であって、平成31年2月8日付けで拒絶理由が通知され、令和元年6月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月29日付けで拒絶査定されたところ、令和2年4月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和元年11月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
請求項 1,5-6
引用文献等 1
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項 1-10
引用文献等 1-5
4.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項7-10について、「付着させ」ることが、どのような工程であるのか、及び「付着モジュール」がどのようなモジュールであるのかが、発明の詳細な説明に記載されていない。
5.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項7-10について、「付着させ」ることが、どのような工程であるのか、及び「付着モジュール」がどのようなモジュールであるのかが、発明の詳細な説明に記載されていないので、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項7-10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
<引用文献等一覧>
1.特開2008-241447号公報
2.特開2007-285749号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2008-309612号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-271078号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2008-096407号公報
第3 本願発明
本願請求項1ないし10に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、令和元年6月17日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】イムノブロッティングの実験で得たサンプル膜であって、化学発光溶液処理を経て化学発光信号を発する対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させ、対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを暗室に放置し、前記暗室が外光からの影響を受けず、前記暗室内において感光性チップで画像全体が同時に収集されるように化学発光信号を収集し、収集された化学発光信号に対し信号処理を行い出力することを特徴とする感光性チップによる信号収集の方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の優先日前である2008年(平成20年)10月9日に頒布された刊行物である特開2008-241447号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
(1)「【0001】本発明は、生体由来物質を含む被写体を撮影して前記生体由来物質の反応状況に応じた画像を取得する画像読取装置、及びその画像読取方法に関する。【背景技術】【0002】筐体内に被写体を配置し、筐体内に備えられた光源で被写体を照射して被写体を撮影する装置が、従来より様々な分野で利用されている。生化学の分野においては、化学発光物質や蛍光物質を標識物質として使用し、これらの発光や蛍光を読み取ることによって、遺伝子配列、遺伝子の発現レベル、蛋白質の分離、同定、あるいは分子量、特性の評価などを行う撮影装置が、例えば、特許文献1などによって知られている。【0003】具体的には、例えば、電気泳動させるべき複数のDNA断片を含む溶液の中に蛍光色素を加えた後、複数のDNA断片をゲル支持体上で電気泳動させる。あるいは、蛍光色素を含有させたゲル支持体上で複数のDNA断片を電気泳動させる。この後、蛍光色素を含んだ溶液にゲル支持体を浸すなどして、電気泳動されたDNA断片を標識する。そして、ゲル支持体に励起光を照射して蛍光色素を励起させ、生じた蛍光を検出することによって画像を生成する。このように生成した画像により、ゲル支持体上のDNA分布を検出することができる。【0004】あるいは、複数のDNA断片を、ゲル支持体上で電気泳動させた後に、DNAを変性し、次いで、サザン・ブロッティング法により、ニトロセルロースなどの転写支持体上に、変性DNA断片の少なくとも一部を転写し、目的とするDNAと相補的なDNAもしくはRNAを蛍光色素で標識して調製したプローブと変性DNA断片とをハイブリダイズさせ、プローブDNAもしくはプローブRNAと相補的なDNA断片のみを選択的に標識し、励起光によって蛍光色素を励起して、生じた蛍光を検出して画像を生成することにより、転写支持体上の目的とするDNA分布を検出することができる。」
(2)「【0025】図1に示すように、画像読取装置2は、被写体を支持する支持台10と、この支持台10に支持された被写体を覆うカバー12とで構成されている。支持台10は、略長方形の板状に形成されている。カバー12は、略直方体の開口箱状に形成されている。支持台10には、有機CMOSイメージセンサ14が設けられている。有機CMOSイメージセンサ14は、支持台10の上面(支持面)10aに受光面14aを露呈させている。受光面14aは、縦10cm×横15cmの略長方形状に形成されている。なお、受光面14aの面積、及び形状は、当然、これに限定されるものではない。【0026】この画像読取装置2は、例えば、化学発光基質と接触して発光している被写体や蛍光色素で標識された被写体などを受光面14a上に直接乗せる。そして、有機CMOSイメージセンサ14を駆動して受光面14a全体を読み取ることにより、被写体の化学発光又は蛍光状態に応じた画像データを取得する。なお、被写体とは、例えば、タンパク質、酵素、核酸、DNA、RNAなどといった生体由来物質を含む溶液やゲル支持体、及びこれらの生体由来物質が転写されたメンブレンフイルムなどである。さらに、被写体は、例えば、発光試薬や蛍光試薬などが投与されたマウスやラットなどの動物(いわゆる、インビボイメージングを行うもの)であってもよい。【0027】カバー12は、開口側が上面10aと向き合うように、ヒンジ部15を介して支持台10に回動自在に取り付けられている。これにより、カバー12は、受光面14aを露呈させた開き位置(図1参照)と、受光面14aを覆う閉じ位置(図2参照)との間で移動する。閉じ位置に移動したカバー12は、受光面14aを覆って遮光することにより、画像読み取りの際に、被写体が発する化学発光や蛍光以外の光が有機CMOSイメージセンサ14に入射することを防ぐ。【0028】カバー12の内底面12aには、紫外線を照射する複数本の紫外線蛍光管(光源)16が設けられている。各紫外線蛍光管16は、カバー12が閉じ位置に移動した際に、受光面14aと対面し、受光面14aに向けて400nm以下の波長の紫外線を照射する。また、各紫外線蛍光管16は、受光面14aの全域に亘って均一な光量の紫外線が照射されるように、等間隔に並べて配置されている。これらの各紫外線蛍光管16は、蛍光標識された被写体を励起させるための励起光源である。画像読取装置2は、蛍光標識された被写体が受光面14a上に乗せられた際に、各紫外線蛍光管16を点灯させて被写体に紫外線を照射し、蛍光標識された被写体を励起させる。なお、励起光の波長は、上記に限ることなく、被写体の励起が可能な任意の波長でよい。【0029】支持台10の上面10aには、受光面14aを囲むように枠状に形成されたシール部材17が設けられている。一方、閉じ位置に移動した際に支持台10の上面10aと接触するカバー12の開口端面12bには、シール部材17に対応して枠状に形成された溝18が形成されている。シール部材17は、シリンドリカル状に突出して形成されている。そして、シール部材17は、カバー12が閉じ位置に移動した際に、溝18内に入り込み、溝18の底面と接触して押し潰されるように弾性変形する。シール部材17は、このように弾性変形することにより、カバー12による遮光性を高める。」
(3)「【0034】図3は、画像読取装置2の電気的構成を概略的に示すブロック図である。支持台10には、有機CMOSイメージセンサ14、ペルチエ素子22、温度センサ24の他に、支持台10の各部を統括的に制御するコントローラ30と、有機CMOSイメージセンサ14が取得したアナログの画像データをデジタルの画像データに変換するA/Dコンバータ32と、外部機器36とのデータの送受信を行うデータ転送部34とが設けられている。」
(4)「【0039】図4は、有機CMOSイメージセンサ14の1画素を拡大して示す部分断面図である。有機CMOSイメージセンサ14は、CMOS構造が形成されたシリコン基板40と、このシリコン基板40の上に積層された光電変換部42と、この光電変換部42の上に積層されたフィルタ44と、このフィルタ44の上に積層されたセルフォックレンズアレイ(登録商標)46とを備えている。なお、有機CMOSイメージセンサ14の1画素のサイズは、例えば、2~50μmであり、より好ましくは2~20μmである。」
(5)「【0054】次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、蛍光標識された被写体を撮影する場合を例に、上記構成による画像読取装置2の作用について説明する。画像読取装置2で被写体の画像を取得する際には、例えば、電源スイッチ(図示は省略)をONするなどして、画像読取装置2の電源を入れる。画像読取装置2のコントローラ30は、電源が入れられたことに応じて各ペルチエ素子22と各温度センサ24とによる有機CMOSイメージセンサ14の温度調節を開始する。【0055】このように有機CMOSイメージセンサ14の温度を調節することで、温度ムラによるシェーディングの発生を抑えることができる。また、これに接触する被写体の温度をも調節し、被写体に含まれる生体由来物質を活性化させることなどもできる。さらに、電源のONなどと同時に予め有機CMOSイメージセンサ14の温度を調節しておくことで、例えば、被写体となる動物を眠らせた状態で受光面14aの上に乗せる際などに、睡眠により低下しがちな動物の体温を保持することができる。続きを表示(全17行)【0056】画像読取装置2の電源を入れたら、カバー12を開き位置(図1参照)に移動させて、有機CMOSイメージセンサ14の受光面14aを露呈させる。受光面14aを露呈させたら、予め容易された被写体を受光面14aの上に乗せ、被写体を受光面14aに直接接触させる。被写体を受光面14a上に乗せたら、ヒンジ部15を軸にカバー12を回動させ、開き位置にあるカバー12を閉じ位置(図2参照)に移動させる。閉じ位置に移動したカバー12は、受光面14a、及びその上に乗せられた被写体を覆って遮光する。また、この際、支持台10の上面10aに設けられたシール部材17が溝18の底面と接触して弾性変形し、カバー12によって形成される内部空間の遮光性と気密性とを高める。【0057】カバー12を閉じ位置に移動させたら、例えば、データ転送部34を介して接続される外部機器36などから画像読取装置2に画像読み取りの開始指示を送信する。画像読取装置2に送信された開始指示は、データ転送部34を介してコントローラ30に入力される。なお、画像読み取りの開始指示は、これに限ることなく、例えば、支持台10に開始ボタンを設け、開始ボタンの押圧操作などに応じて開始指示が入力されるようにしてもよい。【0058】開始指示を受け取ったコントローラ30は、各紫外線蛍光管16を点灯させ、被写体に紫外線を照射する。蛍光標識された被写体は、励起光である紫外線を受けることによって励起し、生体由来物質などの反応状況に応じた光量の蛍光を放出する。各紫外線蛍光管16を点灯させたコントローラ30は、例えば、点灯から所定の時間が経過したか否かを判定し、所定時間の経過とともに各紫外線蛍光管16を消灯させる。【0059】各紫外線蛍光管16を消灯させたコントローラ30は、有機CMOSイメージセンサ14に駆動信号を送信する。駆動信号を受信した有機CMOSイメージセンサ14は、その駆動信号に応じて撮影を行い、アナログの画像データを取得する。この際、有機CMOSイメージセンサ14は、NIR光電変換膜50、R光電変換膜51、G光電変換膜52、B光電変換膜53の4層の光電変換膜を有しているので、被写体の蛍光色に応じたカラーの画像データ、及び近赤外の画像データを取得することができる。【0060】取得されたアナログの画像データは、A/Dコンバータ32に送られ、デジタルの画像データに変換される。変換された画像データは、データ転送部34に送られ、データ転送部34を介して外部機器36に転送される。以上により、被写体の蛍光に応じた画像が取得され、この画像を基に被写体に含まれる生体由来物質の分析などが行われる。【0061】このように、本実施形態の画像読取装置2によれば、被写体を有機CMOSイメージセンサ14の受光面14aに直接接触させて撮影を行うようにしたので、光学系による光の減衰などがない高感度な撮影を行うことができる。また、化学発光や蛍光の検出感度が向上したことにより、有機CMOSイメージセンサ14の露出を短時間で行うことができる。さらに、被写体を受光面14aに直接接触させるようにしたことにより、光学系の結像などにともなう鉛直方向の余分なスペースが必要なくなるので、画像読取装置2の薄型化を実現することができる。」
(6)「【0071】また、画像読取装置80は、白色蛍光管82を点灯させずに撮影を行うことで、化学発光する被写体の画像も取得することができる。さらには、白色蛍光管82を点灯させた状態と消灯させた状態とで撮影を行うことにより、有色の部分と化学発光する部分とが混在した被写体の画像も取得することができる。なお、この場合には、1つの被写体に対して有色の部分の画像と化学発光する部分の画像とが取得されるので、これらの各画像を合成して1つの画像にまとめるようにしてもよい。」
(7)「【0084】なお、上記各実施形態では、保護膜としてセルフォックレンズアレイ46を示したが、保護膜は、これに限ることなく、例えば、マイクロキャピラリプレート、ダイヤモンド薄膜、金属酸化膜、金属窒化膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、光硬化性樹脂などを用いることができる。」
(8)「【図1】」
(9)「【図5】」
上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「生体由来物質を含む被写体を撮影して前記生体由来物質の反応状況に応じた画像を取得する画像読取方法において、画像読取装置2は、被写体を支持する支持台10と、この支持台10に支持された被写体を覆うカバー12とで構成されており、カバー12は、受光面14aを露呈させた開き位置と、受光面14aを覆う閉じ位置との間で移動し、閉じ位置に移動したカバー12は、受光面14aを覆って遮光することにより、画像読み取りの際に、被写体が発する化学発光以外の光が有機CMOSイメージセンサ14に入射することを防ぎ、支持台10には、支持台10の上面(支持面)10aに受光面14aを露呈させている有機CMOSイメージセンサ14と、支持台10の各部を統括的に制御するコントローラ30と、有機CMOSイメージセンサ14が取得したアナログの画像データをデジタルの画像データに変換するA/Dコンバータ32と、外部機器36とのデータの送受信を行うデータ転送部34とが設けられており、有機CMOSイメージセンサ14は、CMOS構造が形成されたシリコン基板40と、このシリコン基板40の上に積層された光電変換部42と、この光電変換部42の上に積層されたフィルタ44と、このフィルタ44の上に保護膜として積層されたセルフォックレンズアレイ46とを備えており、化学発光基質と接触して発光している被写体は、生体由来物質が転写されたメンブレンフイルムであり、撮影は、画像読取装置2の電源を入れたら、カバー12を開き位置に移動させて、有機CMOSイメージセンサ14の受光面14aを露呈させ、予め用意された被写体を受光面14aの上に乗せ、被写体を受光面14aに直接接触させ、ヒンジ部15を軸にカバー12を回動させ、開き位置にあるカバー12を閉じ位置に移動させ、閉じ位置に移動したカバー12は、受光面14a、及びその上に乗せられた被写体を覆って遮光し、データ転送部34を介して接続される外部機器36などから画像読取装置2に画像読み取りの開始指示を送信し、画像読取装置2に送信された開始指示は、データ転送部34を介してコントローラ30に入力され、有機CMOSイメージセンサ14に駆動信号を送信し、駆動信号を受信した有機CMOSイメージセンサ14は、その駆動信号に応じて受光面14a全体を読み取ることにより、被写体の化学発光に応じたアナログの画像データを取得し、取得されたアナログの画像データは、A/Dコンバータ32に送られ、デジタルの画像データに変換され、変換された画像データは、データ転送部34に送られ、データ転送部34を介して外部機器36に転送される、という手順で行われ、被写体を有機CMOSイメージセンサ14の受光面14aに直接接触させて撮影を行うようにしたので、光学系による光の減衰などがない高感度な撮影を行うことができる、方法。」
2.特開2007-285749号公報について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用文献2として引用された、本願の優先日前である2007年(平成19年)11月1日に頒布された刊行物である特開2007-285749号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
「【0045】4)タンパク質発現の確認AcAI NP Hisを単層培養したSf9細胞(1.5×106Cells)に感染の多重性(Multiplicity of infection:以下MOIと略称する。)を約5 Plaque Forming Unites(以下PFUと略称する。)/cellで接種し、ESF921培地を用いて28℃で培養し、接種1、2、3、4、5日後に細胞および上清を回収した。また、AcNPVあるいはネガティブコントロールとして培養液(以下Mockと略称する。)を同様に接種し、5日後に細胞と上清を回収した。細胞については、昆虫細胞用リン酸緩衝生理食塩水(0.14M NaCl,26.82mM KCl,8mM Na2HPO4,1.47mM KH2PO4,pH7.4:以下PBS-Acと略記する。)で洗浄後、Laemmli(Laemmli, U. K. Nature. 277:680-685.1970.)の4×サンプルバッファー(62.5mM Tris-HCl pH6.8, 2%SDS,10%Glycerol, 0.02% Bromophenol blue, 5% 2-メルカプトエタノール;以下、2Me+Bufferと略記する。)に再浮遊させた。また、培養上清については2Me+Bufferと3:1の割合で混合した。各試料を100℃で5分間煮沸し、SDSを含む12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により展開した。泳動後、クマシーブリリアントブルー染色液(45%Methanol,10%Acetic acid,0.025%Coomassie brilliant blue)で染色(以下CBB染色と略記する。)、もしくはウエスタンブロッディングにより解析した。【0046】5)ウェスタンブロッティング解析SDS-PAGE終了後、ゲルを転写緩衝液(0.02M Tris, 0.15M Glycine, 0.01%SDS,5% Methanol)で洗浄し、ウェスタンブロッティング装置ホライズブロット(アトー株式会社、東京都)を用いて、ニトロセルロース膜Hybond C Extra(Amersham, Amersham, UK)に100mAで1.5時間転写した。転写後、ニトロセルロース膜未結合部分をブロック液(1%Skim Milk Powder, 0.1% Tween-20をPBSで溶解)でブロッキングした。ついで一次抗体として抗ポリヒスチジンマウス血清(SIGMA, St.Lois, MO, USA:以下αpolyHisと略称する。)を用い、室温で3時間反応させた。反応後、ブロック液で3回洗浄し、二次抗体を37℃で2時間反応させた。二次抗体は、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgGウサギ血清(Transduction Laboratories, Lexington, KY, USA)を希釈して用いた。反応後、PBSで3回洗浄し、BM blue POD substrate(Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)用いて発色させた。」
3.特開2008-309612号公報について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用文献3として引用された、本願の優先日前である2008年(平成20年)12月25日に頒布された刊行物である特開2008-309612号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
「【0033】(3)二次元電気泳動及びウエスタンブロット二次元電気泳動は複雑な混合物中の蛋白質を分離するために使用する、当業者にはよく知られた方法である。第一段階の電気泳動は一般に電荷に基づいて蛋白質を分離するものであり、第二段階の電気泳動は分子量に基づいて蛋白質を分離する。【0034】上記(2)において精製した、RMG-1及びES-2の細胞抽出液各50μgずつ、計100μgに、Destreak Rehydration 緩衝液(GE)、IPG緩衝液 (pH3-11 NL) (GE)及びDTTを加えた後、両性担体のチューブゲル(pH3-11 NL)(GE)上に添加した。一晩、当該ゲルを膨潤させた後、3500Vで5時間、第一次元の等電点電気泳動を行った。第一次元のチューブゲルをSDS平衡化緩衝液(50mM Tris-Hcl(pH8.8)、6M Urea、30% Glycerol、2%SDS、ブロモフェノールブルー)で平衡化、かつ、アルキル化した後、二次元ゲルを含有するカセットに添加した。SDS-PAGEを使用した二次元電気泳動は、5-20%アクリルアミドゲルを使用し、SDS平衡化緩衝液に含まれるトラッキング色素がゲルの反対側に到達するまで行った。【0035】二次元電気泳動後、分離した蛋白質をPVDF膜(ミリポア)に転写し、この膜をブロッキングバッファー(5%スキムミルク、PBS-T(0.1% Tween20))に浸して2時間インキュベートを行った。次いで、PBS-Tで膜の洗浄を行い、この後、ブロッキングバッファーで1:500に希釈した患者血清、又は、対照血清に浸し、室温で3時間インキュベートを行った。この後、PBS-Tで洗浄し、膜をホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗-ヒト抗体(コスモバイオより入手可能)と共に一時間インキュベートした後、反応性の蛋白質を化学発光法により明らかにした。」
4.特開2010-271078号公報について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用文献4として引用された、本願の優先日前である2010年(平成22年)12月2日に頒布された刊行物である特開2010-271078号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
「【0048】1.イムノ・ブロット法最も単純な方法である。数段階に希釈した被験血清を用意し、その一定量(1マイクロリットル前後)をニトロセルローズ・メンブレンなどの適当なメンブレンに滴下し、風乾する。BSAなどのタンパク質を含むブロッキング溶液で処理した後、洗浄し、1次抗体を反応させ、洗浄後1次抗体を検出するための標識された2次抗体を反応させる。メンブレンを洗浄後、標識を可視化して濃度を測定する。【0049】2.ウエスタン・ブロット法等電点ないしSDS-PAGEを含む一次元ないし2次元ゲル電気泳動を行った後で、分離されたタンパク質を一旦、PVDFメンブレンなどの適当なメンブレンに転写し、1次抗体と標識された2次抗体を用いて上述のイムノ・ブロット法と同様に操作して、目的のタンパク質の存在量を測定する。」
第5 対比・判断
1.対比
本願発明1を、引用発明1と比較する。
(1)引用発明1の「生体由来物質が転写されたメンブレンフイルム」は、本願発明1における「サンプル膜」に相当する。
(2)引用発明1の「化学発光基質と接触して発光している被写体」は、本願発明1における「化学発光溶液処理を経て化学発光信号を発する対象光信号保有膜」に相当する。
(3)引用発明1の「有機CMOSイメージセンサ14」は、本願発明1における「感光性チップ」に相当する。
(4)引用発明1の「有機CMOSイメージセンサ14の受光面14aを露呈させ、予め用意された被写体を受光面14aの上に乗せ」ることは、本願発明1における「化学発光溶液処理を経て化学発光信号を発する対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させ」ることに相当する。
(5)引用発明1の「画像読取装置2は、」「被写体を支持する支持台10と、この支持台10に支持された被写体を覆うカバー12とで構成されており、カバー12は、受光面14aを露呈させた開き位置と、受光面14aを覆う閉じ位置との間で移動し、閉じ位置に移動したカバー12は、受光面14aを覆って遮光することにより、画像読み取りの際に、被写体が発する化学発光以外の光が有機CMOSイメージセンサ14に入射することを防」ぐことから、引用発明1の「画像読取装置2の電源を入れたら、カバー12を開き位置に移動させて、有機CMOSイメージセンサ14の受光面14aを露呈させ、予め用意された被写体を受光面14aの上に乗せ、被写体を受光面14aに直接接触させ、ヒンジ部15を軸にカバー12を回動させ、開き位置にあるカバー12を閉じ位置に移動させ、閉じ位置に移動したカバー12は、受光面14a、及びその上に乗せられた被写体を覆って遮光」することは、本願発明1における「対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを暗室に放置し、前記暗室が外光からの影響を受けず」の工程に相当する。
(6)引用発明1の「有機CMOSイメージセンサ14」で得られる「被写体の化学発光に応じたアナログの画像データ」は、本願発明1における「化学発光信号」に相当する。
(7)引用発明1の「画像読取装置2の電源を入れたら、カバー12を開き位置に移動させて、有機CMOSイメージセンサ14の受光面14aを露呈させ、予め用意された被写体を受光面14aの上に乗せ、被写体を受光面14aに直接接触させ、ヒンジ部15を軸にカバー12を回動させ、開き位置にあるカバー12を閉じ位置に移動させ、閉じ位置に移動したカバー12は、受光面14a、及びその上に乗せられた被写体を覆って遮光」した後の「駆動信号を受信した有機CMOSイメージセンサ14は、その駆動信号に応じて受光面14a全体を読み取ることにより、被写体の化学発光に応じたアナログの画像データを取得」する工程は、本願発明1における「前記暗室内において感光性チップで画像全体が同時に収集されるように化学発光信号を収集」する工程に相当する。
(8)引用発明1の「取得されたアナログの画像データは、A/Dコンバータ32に送られ、デジタルの画像データに変換され、変換された画像データは、データ転送部34に送られ、データ転送部34を介して外部機器36に転送される」ことは、本願発明1における「収集された化学発光信号に対し信号処理を行い出力すること」に相当する。
(9)引用発明1の「画像読取装置2」の「有機CMOSイメージセンサ14」を用いて「生体由来物質を含む被写体を撮影して前記生体由来物質の反応状況に応じた画像を取得する画像読取方法」は、本願発明1における「感光性チップによる信号収集の方法」に相当する。
すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「サンプル膜であって、化学発光溶液処理を経て化学発光信号を発する対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させ、対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを暗室に放置し、前記暗室が外光からの影響を受けず、前記暗室内において感光性チップで画像全体が同時に収集されるように化学発光信号を収集し、収集された化学発光信号に対し信号処理を行い出力する感光性チップによる信号収集の方法。」
一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点>
サンプル膜について、本願発明1では「イムノブロッティングの実験で得た」サンプル膜であるのに対し、引用発明1では「生体由来物質が転写されたメンブレンフイルム」であるが、生体由来物質がどのように転写されたのか不明であるのでイムノブロッティングの実験で得たかどうか不明な点。
2.判断
前記「1.」で記載した相違点について判断する。
(1)イムノブロッディングの実験の方法(本願の発明の詳細な説明の段落【0034】【0035】を参照のこと。)を用いて化学発光信号を有するサンプル膜を作成する手法は、引用文献1(上記「第4 1.(1)」参照。)、引用文献2(上記「第4 2.」参照。)、引用文献3(上記「第4 3.」参照。)及び引用文献4(上記「第4 4.」参照。)にサザン・ブロッティング法やイムノ・ブロット法やウェスタン・ブロット法などの手法が開示されているように、本願の優先日前において周知の作成手法である。
(2)また、引用発明1の生体由来物質を含む被写体を撮影して前記生体由来物質の反応状況に応じた画像を取得する画像読取方法において、有機CMOSイメージセンサ14の受光面14aに乗せる被写体である、化学発光基質と接触して発光している生体由来物質が転写されたメンブレンフイルムは、化学発光信号を発する膜であればその測定手法及び測定性能に影響を与えないのであるから、その生体由来物質が転写されたメンブレンフイルムをどのような手法で作成するかは、当業者が適宜選択しうる設計的事項にすぎない。
(3)よって、引用発明1における生体由来物質が転写されたメンブレンフイルムの作成手法として、上記周知のサザン・ブロッティング法やイムノ・ブロット法やウェスタン・ブロット法などの手法を採用して、上記相違点に係る構成とすることは、当業者ならば容易になしえたことである。
(4)そして、本願発明1の効果は、引用発明1及び上記周知の手法から、当業者が予測しうる程度のものである。
3.小括
したがって、本願発明1は、引用発明1及び周知の手法に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
第6 請求人から提示された補正案について
本件は、請求人より、上申書は提出しないが、原査定維持の場合には、補正する用意があることが当審に伝えられたものである(令和2年8月21日初回対応の「応対記録」参照。)。本来、正式な手続でないことから、検討の必要のないものであるが、請求人は、FAXにより補正案を提示したので、一応検討する。
その補正案は、感光性チップの上面の透明保護層に関する構成を付加して請求項1に係る発明を減縮するものであるが、引用発明1においても、有機CMOSイメージセンサ14は保護膜として積層されたセルフォックレンズアレイ46を備えていることから、上記補正案における請求項1に係る発明も引用発明1及び周知の手法に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ゆえに、上記補正案における請求項1に係る発明は、特許を受けることができる発明とは認められない。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、原査定におけるその余の拒絶の理由、及びその余の請求項に係る発明に対する拒絶の理由について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-004562