特許拒絶査定不服審判
2020-004048
車両のブレーキシステムの線形に移動可能なピストンの位置および/または変位距離を検出するための装置およびこのような装置の製造方法
- 審判番号
- 2020-004048
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-200039外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月26日
- 審決日
- 2020年11月09日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】中西 基晴
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 分類
- P18 .113-Z (G01B) / P18 .575-Z (G01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-200039「車両のブレーキシステムの線形に移動可能なピストンの位置および/または変位距離を検出するための装置およびこのような装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開、特開2016- 75686〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月8日(パリ条約による優先権主張2014年10月8日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月25日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月28日付け:拒絶査定(令和元年12月2日送達、以下「原査定」という。)
令和 2年 3月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和2年3月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月26日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和2年3月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1が、下記の補正前請求項1から補正後請求項1に補正された。
<補正前請求項1>
「【請求項1】
車両のブレーキシステムの線形に変位可能なピストン(54)の位置および/または変位距離を検出するための装置において:
磁気感応素子(50)であって、線形に変位される前記ピストン(54)に配置された第1センサ磁石(52)が前記磁気感応素子(50)に対して共に変位されることにより、または前記磁気感応素子(50)に対して固定して配置された第2センサ磁石の磁界と前記磁気感応素子(50)に対して変位される前記ピストン(54)との相互作用により、線形に変位される前記ピストン(54)が変位された場合に、前記磁気感応素子(50)に生じる磁界強さの変化が、電気的な大きさの変化を誘起する前記磁気感応素子(50)と;
評価電子機器(56)であって、準備または捕捉された電気的な大きさの変化を考慮して、線形に変位可能な前記ピストン(54)の位置および/または変位距離に関する少なくとも1つの出力値を決定および出力するよう構成されており、ケーシング(58)内に配置されている評価電子機器(56)と
を備える装置において、
前記磁気感応素子(50)が前記評価電子機器(56)と共に前記ケーシング(58)内に配置されていることを特徴とする装置。」
<補正後請求項1>
「【請求項1】
車両のブレーキシステムの線形に変位可能なピストン(54)の位置および/または変位距離を検出するための装置であって、
磁気感応素子(50)であって、線形に変位される前記ピストン(54)に配置された第1センサ磁石(52)が前記磁気感応素子(50)に対して共に変位されることにより、または前記磁気感応素子(50)に対して固定して配置された第2センサ磁石の磁界と前記磁気感応素子(50)に対して変位される前記ピストン(54)との相互作用により、線形に変位される前記ピストン(54)が変位された場合に、前記磁気感応素子(50)に生じる磁界強さの変化が、電気的な大きさの変化を誘起する前記磁気感応素子(50)と、
評価電子機器(56)であって、準備または捕捉された電気的な大きさの変化を考慮して、線形に変位可能な前記ピストン(54)の位置および/または変位距離に関する少なくとも1つの出力値を決定および出力するよう構成されており、ケーシング(58)内に配置されている評価電子機器(56)と、
を備える装置において、
前記磁気感応素子(50)が前記評価電子機器(56)と共に前記ケーシング(58)内に配置され、前記磁気感応素子(50)は前記ケーシング(58)の内壁(62)に少なくとも部分的に組み込まれていることを特徴とする装置。」(下線は、補正箇所を示す。)
本件補正は、本件補正前の「前記磁気感応素子(50)が前記評価電子機器(56)と共に前記ケーシング(58)内に配置されている」との構成に続いて、「前記磁気感応素子(50)は前記ケーシング(58)の内壁(62)に少なくとも部分的に組み込まれている」という構成を付加する補正を含むものであり、「磁気感応素子(50)」の「配置」に係る事項を限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。
2 本件補正後の本願発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
3 引用刊行物に記載された発明
(1)引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成15年8月19日に頒布された刊行物である特表2003-524778号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「線形変位センサおよび自動車用操作装置としてその使用」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
<記載事項1>
「【0010】
本発明は、例えばブレーキ装置の機械式操作装置のための磁気的に作用する構成要素を一体化した線形変位センサに関する。本発明は特に、操作装置の機構を同時に非接触式線形変位センサの機構として利用するという思想に基づいている。この線形変位センサは運転者の要求を、変位に比例してまたは変位に依存して表す。
【0011】
エンコーダの磁界は1個または複数の磁界センサによって測定または検出される。磁界はその全体または一部だけが磁界センサによって検出される。この場合、本発明において、磁界の部分的な検出とは、磁界の強さ、磁界ベクトルの方向のような、磁界によって完全に表される測定量が、センサモジュールによってすべての量を検出されるのではなく、例えば磁界の強さと、適当に選定された座標系のx-y平面内の磁界ベクトルの2つの方向座標だけが検出されることであると理解される。
【0012】
本発明によるセンサモジュールは磁界に敏感な少なくとも1個のセンサと、場合によってはセンサ信号を更に処理するための電子回路を含んでいる。
【0013】
本発明における磁界に敏感なセンサはXMR原理、特にAMR原理、GMR原理またはホール原理で動作する。」
<記載事項2>
「【0022】
本発明による線形変位センサにおいて上記の両センサ変形が実現されていると特に有利である。この機能原理の場合、磁気エンコーダトラックの異なる磁界成分が利用され、エンコーダトラックの磁場の強さのパターンは異なる信号に変換される。
【0023】
運動に関する情報を含む磁気センサの出力信号は好ましくは電気的な形で出力部に供される。この信号は1個または複数のセンサ回路によって処理可能であり、例えばデジタル化された形でセンサ回路の出力部に供される。
【0024】
永久磁力線コース33を発生するための手段は、文献においてエンコーダとも呼ばれる。この手段は例えば縦軸線に沿って交互に磁化された永久磁石材料あるいは列をなして配置された少なくとも2個の磁化された永久磁石材料を含んでいる。この永久磁石材料は磁性材料の異なる配向または磁化強さによって磁力線コースを変更する。例えば二極または多極の永久磁石を使用することができる。好ましくは、所望な磁力線コースに対応して磁化された均質な磁性材料を含むエンコーダが使用される。」
<記載事項3>
「【0035】
外力を操作手段に伝達するための力伝達手段は例えばブレーキペダルの力をブレーキシリンダに伝達する働きをする。操作手段は好ましくはブレーキシリンダの操作棒との直接的な連結部であるかあるいは特にこの操作棒自体である。力伝達手段は実質的にブレーキングの方向、すなわち操作棒の方向に力を伝達するように設計しなればならないがしかし、引張り応力時にも力を伝達するように設計すると特に有利である。力伝達手段はブレーキペダルに対する固定連結部であってもよいし、可動連結部であってもよい。この場合特に可動連結部が有利である。力伝達手段は例えば玉継手、ニードルベアリングまたは円錐ころ軸受である。」
<記載事項4>
「【0041】
本発明は更に、自動車のブレーキの操作装置におけるペダル位置またはレバー位置を測定するための前述の線形変位センサの使用に関する。
【0042】
本発明による線形変位センサは自動車のピストンスカート、操作棒、スロットル弁および油圧ピストンのためにも有利に使用可能である。
【0043】
本発明の他の実施の形態は、図に基づく次の説明から明らかになる。
【0044】
図1は重要な機械要素を備えたアクチュエータ、例えばブレーキ用操作装置の一部を示している。この機械要素には、磁気的に作用する上記の構成要素が統合され、機械要素と共に本発明による構造体または装置を形成している。この構成要素はステータ1,2,3と、例えば棒である操作要素4である。この構成要素は操作過程またはリセット過程において、距離xだけ互いに前進および後退する。この例では、操作要素4は、それに作用する外力によって操作される。この外力は例えば他の棒5を介して作用する。両棒は玉継手6介して機械的に連結されている。棒4はシャフト7に機械的に連結されている。この場合、棒4とシャフト7は共通の一つの部材から製作可能である。例えばシャフトは管として形成される。この場合、一つの部材から製作することと、管として部分的に形成することが好ましい。この場合、管状に形成された部材だけがシャフトと呼ばれる。本発明に従って、エンコーダを収容する連続的な棒4を使用することができる。棒4とシャフト7の横断面と、棒を含むステータ1,2,3の開口横断面は好ましくは円形に形成されている。しかし、これは必須ではない。例えば正方形、三角形、台形または燕尾形に形成された横断面を使用することができる。ステータは好ましくは複数のケーシング部分からなる複合体であるがしかし、一体に形成してもよい。センサ支持体2には、センサSが好ましくは信号処理のための一体化された所属の回路と共に、定置埋め込み、スナップ止め、ねじ止めされているかまたは形状拘束的に挟持されている。このセンサ支持体2は定置されてケーシング部分1に連結されている。センサ支持体は好ましくは同時に、プラグ8のための保持部材またはその代わりに変位xを示すセンサ信号S(x)を、信号を処理する電子機器に伝送するケーブルのための保持部材である。ケーシング部分1とセンサ支持体2は好ましくは回転しないように互いに嵌め込まれている。本例では、センサ支持体2は弾性的なキャップ3によってケーシング部分1に押し付けられている。しかし、センサ支持体2をケーシング部分1にねじ込み、接着してもよいし、他の弾性的な保持機構によって押し付けてもよい。ケーシング部分と相対的にセンサ支持体を回転しないように保持する手段が設けられていると特に有利である。」
<記載事項5>
「【0047】
図2には、図1と充分に一致する線形の変位センサが示してある。図1と異なり、配置構造が簡単に冗長形成されている。センサ支持体2には2個のセンサS,S′が設けられ、このセンサはそれぞれ付設されたセンサ回路SC,SC′を備えている。シャフトには2個のエンコーダ9,9′が埋め込まれている。エンコーダ、センサおよびセンサ回路の協働作用により、位置同期信号S1(x)とS2(x)が発生させられる。」
【図1】
【図2】
【0047】、【図1】、【図2】から、図1のS、SCで示される部材は、図2のS、SCで示される部材と同じくセンサS、センサ回路SCであること、図1に示されるセンサ回路SCから位置同期信号S(x)が出力されていることが読み取れる。
【0044】の「この構成要素はステータ1,2,3と、例えば棒である操作要素4である。」、「ステータは好ましくは複数のケーシング部分からなる複合体であるがしかし、一体に形成してもよい。センサ支持体2には、センサSが好ましくは信号処理のための一体化された所属の回路と共に、定置埋め込み、スナップ止め、ねじ止めされているかまたは形状拘束的に挟持されている。」、「本例では、センサ支持体2は弾性的なキャップ3によってケーシング部分1に押し付けられている。」という記載、及び【図1】から、ステータ1、2、3は、ケーシング部分1、センサ支持体2及びキャップ3からなる複合体であるとともに、センサS及びセンサ回路SCは、センサ支持体2に固定された上で、ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持されていることが読み取れる。
また、【0044】の「この構成要素はステータ1,2,3と、例えば棒である操作要素4である。この構成要素は操作過程またはリセット過程において、距離xだけ互いに前進および後退する。」という記載、及び【図1】からみて、棒である操作要素4が、ステータ1、2、3に対して前進及び後退するものであるといえる。
以上のことから、棒である操作要素4は、ステータ1、2、3内、すなわちケーシング部分1及びキャップ3内に設けられたセンサSに対して前進及び後退するものであるといえる。
以上を総合すると、上記記載事項1-5及び上記図1の記載からみて、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「自動車のブレーキの操作装置のための、距離xだけ前進および後退する棒である操作要素4の変位xを示すセンサ信号S(x)を出力する線形変位センサであって(【0010】、【0041】、【0044】、【0047】、【図1】、【図2】)、
磁界センサSであって、距離xだけ前進および後退する棒である操作要素4及び前記操作要素4に収容された縦軸線に沿って交互に磁化された永久磁石材料を含むエンコーダ(【0012】、【0024】、【0044】)が、ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持された磁界センサSに対して前進及び後退することにより(【0044】、【図1】)、前記エンコーダのトラックの磁場の強さのパターンを検出して電気的な形で出力信号を供する前記磁界センサS(【0022】、【0023】)と、
センサ回路SCであって、磁界センサSから電気的な形で供された出力信号を処理して、棒である操作要素4の変位xを示すセンサ信号S(x)を出力する前記ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持されたセンサ回路SCと(【0023】、【0044】、【図1】)、
を備える線形変位センサにおいて、
前記磁界センサS及び前記センサ回路SCが前記ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持されている線形変位センサ(【0044】、【図1】)。」
(2)引用刊行物2
本願の優先日前の平成7年12月5日に頒布された刊行物である特開平7-317571号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
<記載事項6>
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来のピストンバルブ式気化器の開度検出装置では、ピストンバルブの移動量を回転角度に変換するための回転機構を別途設ける必要があることから、構造が複雑となり大型化するとともに、部品点数の増大によりコストが上昇するという問題があり、またピストンバルブの直線移動量を回転角に変換するという構造上、検出精度が低下し易いという問題点がある。
【0005】
本発明は上記従来の状況に鑑みてなされたもので、簡単な構造で小型化に対応できるとともにコストを低減でき、かつ検出精度を向上できる気化器の開度検出装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本件発明者は、上述の目的を達成するために直動式の面積可変バルブの軸方向位置を直接検出できる検出機構について検討し、面積可変バルブに磁石を配設し、該バルブの軸方向移動に伴う磁石の磁界強度の変化を取り出す磁気センサを、キャブボディの隔壁の上記磁石と対向する位置に取付けることにより構造の簡略化,小型化を実現できる開度検出装置を開発した。」
<記載事項7>
「【0025】
上記シリンダ部2bの隔壁2dの外面には側方に開口するセンサ室30が一体形成されており、このセンサ室30内に上記センサユニット26が収容配置されている。このセンサユニット26は基板27の隔壁2d側内面に3つの磁気センサ28a,28b,28cを上記ピストンバルブ9の軸方向に所定間隔を開けて半田付け固定し、該基板27の外面に5本のリード線29を半田付け接続するとともに、基板27にパターン形成された配線を介して各磁気センサ28a~28cとこれに対応するリード線29とを接続して構成されている。上記各磁気センサ28a~28cにはホール素子,MR素子,あるいはICが採用されている。」
<記載事項8>
「【0040】
図6は、樹脂封脂を行わずにキャップを装着した例である。即ち、シリンダ部2bの隔壁2dの外面にセンサ室40を形成し、該センサ室40の開口にガスケット42を介してキャップ41を装着し、該キャップ41をセンサ室40のボス部40bにボルト44で締め付け固定した例である。またセンサユニット26の基板27部分には樹脂膜がコーティングされており、かつ各リード線29は上記センサ室40の下縁の切り欠き部40aからシール部材43を介在させて下向きに導出されている。なお、上記センサ室40の底部にはエアベント通路15(図1参照)に連通する図示しない連通孔が形成されており、該連通孔はセンサ室40の内圧を大気圧に調整するブリーザとして機能し、温度変化によりセンサ室40内が負圧になるのを防止し、負圧による水の浸入を防止している。
【0041】
上記変形例においても構造の簡略化,小型化,及び低コスト化に対応できるとともに、磁気センサ取付位置の調整が可能なことから検出精度を向上でき、上記実施例と同様の効果が得られる。また上記センサ室40の開口をキャップ41で閉塞したので、外力による損傷を回避でき、防水,防塵化を図ることができる。さらに上記キャップ41を装着するだけの構造であるから、上述の樹脂をポッティングする場合の硬化時間を不要にでき、それだけ作業性,生産性を向上できる。」
<記載事項9>
「【0042】
図7及び図8はさらに他の変形例であり、センサケース全体を揺動可能として磁気センサの取付位置を調整可能とした例である。センサケース24の底壁24aにセンサユニット26をこれの磁気センサ28a~28cが当接するように固定し、樹脂封止層35により樹脂封止している。なお、上記センサケース24の開口を上述と同様にキャップで閉塞してもよい。またシリンダ部2bの隔壁2d外面には上記センサケース24を揺動可能に収容する取付け凹部30が形成されており、該取付け凹部30に上記センサケース24が位置調整後ボルト44で締め付けて固定されている。
【0043】
上記センサケース24はこれの底壁24aを隔壁2dにノックピン31で軸支し、該センサケース24を偏心カム32で揺動させることにより磁気センサ28a~28cのピストンバルブ移動方向の配置位置が調整されている。この場合、上記センサケース24をキャブボディ2に予め固定し、該センサケース24の底壁24aに基板27をノックピンで軸支し、該基板27を偏心カムで揺動させて配置位置を設定してもよい。
【0044】
本変形例では上記実施例と略同様の効果が得られ、さらにセンサユニット26をセンサケース24内に収納したので、キャブボディ2に取付けることなく単品で製品検査が可能となり、かつ機種の異なる気化器に共通化でき、さらには運搬時,取り扱い時の損傷を防止できる。」
【図3】
【図6】
【図8】
4 対比
(1)本願補正発明と引用発明の対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「棒」は、【0044】の「この構成要素はステータ1,2,3と、例えば棒である操作要素4である。この構成要素は操作過程またはリセット過程において、距離xだけ互いに前進および後退する。」及び図1から、ステータ1、2、3に対して、前進及び後退を行っているもの、すなわちピストン動作を行っているものといえるから、本願補正発明の「ピストン」に相当する。
引用発明の「自動車のブレーキ用操作装置」、「距離xだけ前進および後退する棒である操作要素4の変位xを示すセンサ信号S(x)を出力する」、「線形変位センサ」は、それぞれ本願補正発明の「車両のブレーキシステム」、「線形に変位可能なピストン(54)の変位距離を検出する」、「装置」に相当する。
よって、引用発明の「自動車のブレーキ用操作装置に統合され、距離xだけ前進および後退する棒である操作要素4の変位xを示すセンサ信号S(x)を出力する線形変位センサ」は、本願補正発明の「車両のブレーキシステムの線形に変位可能なピストン(54)の変位距離を検出するための装置」に相当する。
イ 引用発明の「磁界センサS」、「距離xだけ前進および後退する棒である操作要素4」、「収容された」、「縦軸線に沿って交互に磁化された永久磁石材料を含むエンコーダ」、「前進及び後退する」は、それぞれ本願補正発明の「磁気感応素子(50)」、「線形に変位される前記ピストン(54)」、「配置された」、「第1センサ磁石(52)」、「変位される」に相当する。
引用発明の「棒である操作要素4及び前記操作要素4に収容された縦軸線に沿って交互に磁化された永久磁石材料を含むエンコーダ」が「センサSに対して前進及び後退する」は、「永久磁石材料を含むエンコーダ」が、「棒である操作要素4」と一緒に(共に)前進及び後退することを意味するから、本願補正発明の「ピストン(54)に配置された第1センサ磁石(52)」が「磁気感応素子(50)に対して共に変位される」に相当する。
また、引用発明の「前記エンコーダのトラックの磁場の強さのパターンを検出して電気的な形で出力信号を供する前記磁界センサS」は、本願補正発明の「前記磁気感応素子(50)に生じる磁界強さの変化が、電気的な大きさの変化を誘起する前記磁気感応素子(50)」に相当する。
よって、引用発明の「磁界センサSであって、距離xだけ前進および後退する棒である操作要素4及び前記操作要素4に収容された縦軸線に沿って交互に磁化された永久磁石材料を含むエンコーダが、ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持された磁界センサSに対して前進及び後退することにより、前記エンコーダのトラックの磁場の強さのパターンを検出して電気的な形で出力信号を供する前記磁界センサS」は、本願補正発明の「磁気感応素子(50)であって、線形に変位される前記ピストン(54)に配置された第1センサ磁石(52)が前記磁気感応素子(50)に対して共に変位されることにより、線形に変位される前記ピストン(54)が変位された場合に、前記磁気感応素子(50)に生じる磁界強さの変化が、電気的な大きさの変化を誘起する前記磁気感応素子(50)」に相当する。
ウ 引用発明の「センサ回路SC」は、本願補正発明の「評価電子機器(56)」に相当する。
引用発明の「磁界センサSから電気的な形で供された出力信号」は、磁界センサSが検知した磁界の変化量に基づいて出力した電気信号、すなわち磁界センサSが捕捉した磁界の変化量に基づいた大きさの電気信号といえるから、本願補正発明の「捕捉された電気的な大きさの変化」に相当する。
また、引用発明では、センサ回路SCの処理により磁界センサSから出力された電気信号を、棒である操作要素4の変位xを示す信号として出力しているから、引用発明の「変位xを示すセンサ信号S(x)を出力する」は、本願補正発明の「変位距離に関する少なくとも1つの出力値を決定および出力する」に相当する。
引用発明の「ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持された」は、本願補正発明の「ケーシング(58)内に配置されている」に相当する。
よって、引用発明の「センサ回路SCであって、磁界センサSから電気的な形で供された出力信号を処理して、棒である操作要素4の変位xを示すセンサ信号S(x)を出力する前記ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持されたセンサ回路SC」は、本願補正発明の「評価電子機器(56)であって、捕捉された電気的な大きさの変化を考慮して、線形に変位可能な前記ピストン(54)の変位距離に関する少なくとも1つの出力値を決定および出力するよう構成されており、ケーシング(58)内に配置されている評価電子機器(56)」に相当する。
エ 引用発明の「前記磁界センサS及び前記センサ回路SCが前記ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持されている」は、本願補正発明の「前記磁気感応素子(50)が前記評価電子機器(56)と共に前記ケーシング(58)内に配置され」に相当する。
(2)一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本願補正発明と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
車両のブレーキシステムの線形に変位可能なピストンの変位距離を検出するための装置であって、
磁気感応素子であって、線形に変位される前記ピストンに配置された第1センサ磁石が前記磁気感応素子に対して共に変位されることにより、線形に変位される前記ピストンが変位された場合に、前記磁気感応素子に生じる磁界強さの変化が、電気的な大きさの変化を誘起する前記磁気感応素子と、
評価電子機器であって、捕捉された電気的な大きさの変化を考慮して、線形に変位可能な前記ピストンの変位距離に関する少なくとも1つの出力値を決定および出力するよう構成されており、ケーシング内に配置されている評価電子機器と、
を備える装置において、
前記磁気感応素子が前記評価電子機器と共に前記ケーシング内に配置されている装置、である点。
<相違点>
本願補正発明では「磁気感応素子(50)は前記ケーシング(58)の内壁(62)に少なくとも部分的に組み込まれている」のに対して、引用発明では、ステータが内壁を有するものではなく、センサSが内壁に少なくとも部分的に組み込まれたものでない点。
5 当審の判断
上記相違点について、検討する。
ピストン等の直動式のバルブの軸方向位置を磁界センサで測定する装置において、シリンダ部の隔壁2dの外面に凹部であるセンサ室30を設け、その凹部の内側に磁界センサを固定するものは、例えば、引用刊行物2の【0004】~【0006】、【0025】、【0040】~【0044】、図3、6、8にみられるように、周知技術である。
そうすると、引用発明において、磁界センサSをステータ1、2、3内に設ける構成として、ケーシング部分1及びキャップ3内に格納保持するものに代えて、前記周知技術を適用し、前記ステータ1、2、3の外面に凹部であるセンサ室を設けて、当該凹部の内側(内壁)に磁界センサSを固定するものとすること、すなわちステータ1、2、3の内壁に磁界センサSを部分的に組み込むものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ここで、審判請求人は、審判請求の理由において、「審査官が引用する引用文献1(特開2003-524778号公報)に記載された発明において、請求項1,10,11に係る発明の「ケーシング(58)の内壁(62)」「磁気感応素子(50)」に相当するのは、「エンコーダ9の外壁」「センサセンサS」であるものと思料するが、引用文献1に記載された発明では「センサセンサS」は「エンコーダ9の外壁」に少なくとも部分的に組み込まれたものとはいえないものと思料する。」と主張している(当審注:「センサセンサS」は「センサS」の誤記。)。
しかしながら、引用発明が、ステータの内壁にセンサSを部分的に組み込む構成ではないことは、上記相違点において示したとおりであり、当該構成については、上述のとおり周知技術と認められるから、本願補正発明は、引用発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、当該主張は認められない。
したがって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願補正発明によって奏される効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
6 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】
車両のブレーキシステムの線形に変位可能なピストン(54)の位置および/または変位距離を検出するための装置において:
磁気感応素子(50)であって、線形に変位される前記ピストン(54)に配置された第1センサ磁石(52)が前記磁気感応素子(50)に対して共に変位されることにより、または前記磁気感応素子(50)に対して固定して配置された第2センサ磁石の磁界と前記磁気感応素子(50)に対して変位される前記ピストン(54)との相互作用により、線形に変位される前記ピストン(54)が変位された場合に、前記磁気感応素子(50)に生じる磁界強さの変化が、電気的な大きさの変化を誘起する前記磁気感応素子(50)と;
評価電子機器(56)であって、準備または捕捉された電気的な大きさの変化を考慮して、線形に変位可能な前記ピストン(54)の位置および/または変位距離に関する少なくとも1つの出力値を決定および出力するよう構成されており、ケーシング(58)内に配置されている評価電子機器(56)と
を備える装置において、
前記磁気感応素子(50)が前記評価電子機器(56)と共に前記ケーシング(58)内に配置されていることを特徴とする装置。」
第4 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由1は、この出願の請求項1-6、10-11に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特表2003-524778号公報(上記引用刊行物1と同じ。)
第5 引用文献に記載された発明
引用文献1に記載された発明は、前記「第2」の「3 引用刊行物に記載された発明」において、引用発明として示したとおりである。
第6 対比・判断
上記「第2」の「4 対比」において記載したとおり、本願補正発明と引用発明1の相違点に係る構成は、本件補正により付加された「前記磁気感応素子(50)は前記ケーシング(58)の内壁(62)に少なくとも部分的に組み込まれている」という構成のみである。
そうすると、本願補正発明から上記相違点に係る構成を省いたものに相当する本願発明は、引用発明と構成上全ての点において一致することになるから、本願発明は引用文献1に記載された発明に該当する。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-004048