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特許拒絶査定不服審判

2017-015186

測定器

審判番号
2017-015186
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-114775
請求日
2017年10月11日
審決日
2018年10月09日
公報発行日
2019年01月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社ミツトヨ
  • 【請求人代理人】折坂 茂樹
審判長/審判官
  • 審判長 中塚 直樹
  • 審判官 中村 説志
  • 審判官 須原 宏光
分類
P18 .113-WZ (G01B) / P18 .121-WZ (G01B) / P18 .561-WZ (G01B) / P18 .575-WZ (G01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-114775「測定器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月15日出願公開、特開2014-235008〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許出願: 平成25年5月31日 拒絶理由通知: 平成29年2月14日(発送日:同年同月21日) 手続補正: 平成29年3月1日(以下、「補正1」という。) 拒絶査定: 平成29年7月28日(送達日:同年8月1日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成29年10月11日 手続補正: 平成29年10月11日(以下、「補正2」という。) 拒絶理由通知(最後): 平成29年11月2日 (発送日:同年同月7日) 手続補正: 平成29年12月20日(以下、「補正3」という。) 補正3についての補正の却下の決定: 平成30年6月20日 (送達日:同年7月3日) 拒絶理由通知: 平成30年6月20日(以下、「当審拒絶理由」と いう。発送日:同年同月26日) 手続補正: 平成30年8月22日(以下、「本件補正」という。) 意見書:  平成30年8月22日(以下、「本件意見書」という。) 第2 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「情報を表示する複数の表示部を備える測定器であって、 前記複数の表示部は、1つのフレキシブルディスプレイを共用することによって情報を表示し、 前記複数の表示部のそれぞれは、窓を介して外部に露出し、 前記フレキシブルディスプレイは、前記複数の表示部のそれぞれに同じ情報を表示することを特徴とする測定器。」 第3 当審拒絶理由 これに対し、当審拒絶理由における理由1の概要は、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である下記の引用文献1ないし2に記載された発明に基づいて、また本願の請求項2ないし3に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、また本願の請求項4ないし5に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である下記の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 1.特開2013-68608号公報(以下、「引用例」という。) 2.国際公開第2008/047465号(周知技術を示す文献)(以下、「周知例1」という。) 3.特開2013-24751号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2008-3702号公報(周知技術を示す文献) 第4 引用例の記載及び引用発明 1 引用例の記載 (1)上記引用例(平成25年4月18日出願公開)には、以下の事項が図面とともに記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。 「【0018】 [第1実施形態] <測定器の構成> 図1は、第1実施形態の測定器を示している。 同測定器は、変位検出センサ10と、変位演算部20と、記憶部30と、表示制御部40と、表示部50とを備えている。 ここで、測定器とは、本体に対して可動部材が移動し、この可動部材の移動量から被測定物の寸法を測定する測定器、例えば、ノギス、マイクロメータ、インジケータ(ダイヤルゲージ)などをいう。」 「【0039】 また、図12~図14に示すマイクロメータ、つまり、本体3と、この本体3に移動可能に設けられたスピンドル4と、このスピンドル4の変位を表示部50に表示する表示制御部(図1,図4に示す表示制御部40)とを有するマイクロメータにおいて、表示部50を、プラスチックなどの柔軟性を有する基板を有し、本体3内に巻取可能に収納されかつ本体3から引出可能な有機EL表示シート55によって構成するようにしてもよい。 有機EL表示シート55は、本体3の正面側から引き出され、かつ、本体3の裏面側に固定可能に構成されるとともに、本体3の正面側の有機EL表示シート55と本体3の裏面側の有機EL表示シート55には同じ測定結果が表示される。 このようにすると、表示部50を、本体3内に巻取可能に収納されかつ本体3から引出可能な有機EL表示シート55によって構成したので、必要に応じて、有機EL表示シート55を、本体3の正面側から引き出したのち(図13参照)、本体3の裏面側に固定すれば(図14参照)、本体3の正面側および本体3の裏面側において測定結果を読み取ることができる。従って、測定姿勢によって本体3の裏面側から、測定結果を読み取らなければならない測定条件下であっても、読み取りやすい。 なお、有機EL表示シート55を巻取式にしないで、本体3の正面から裏面に回して固定しただけの構成であってもよい。 【0040】 なお、有機EL表示シート55を本体3から引き出した状態において、引き出し部分を3つの領域に区画し、それぞれに同じ測定結果を表示するとともに(図13において実線で表示された「123400」と一点鎖線で表示された「123400」参照)、本体3の裏面側に固定したとき、3つの領域が、本体3の正面側、上面側および裏面側に位置するように構成すれば、測定結果を、本体3の正面側、上面側および裏面側から読み取ることができる利点がある。 【0041】 また、上述した構成(柔軟性を有する有機EL表示シート55を本体から引き出し可能に収納した構成)を、ノギスに適用すれば、左利き用のノギスとしても兼用できる。通常、ノギスを右手で持って操作すると、ノギスの正面が操作者に正対する姿勢になるが、左手で持って操作すると、ノギスの裏面が操作者に正対する姿勢になる。このとき、本体の裏面側からも測定結果を読み取ることができるから、左利き用のノギスとしても兼用できる。従って、左利き専用のノギスを別途作らなくても済むので、経済的に構成できる利点がある。」 【図12】 【図13】 【図14】 (2)上記(1)から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ノギス、マイクロメータ、インジケータ(ダイヤルゲージ)などの測定器であって(【0018】より)、 表示部50を、プラスチックなどの柔軟性を有する基板を有する有機EL表示シート55によって構成し、 有機EL表示シート55は、本体3の正面から裏面に回して固定されるとともに、本体3の正面側の有機EL表示シート55と本体3の裏面側の有機EL表示シート55には同じ測定結果が表示され、 本体3の正面側および本体3の裏面側において測定結果を読み取ることができ、測定姿勢によって本体3の裏面側から、測定結果を読み取らなければならない測定条件下であっても、読み取りやすい(以上、【0039】より)、 測定器(【0018】より)。」 2 周知例1の記載 (1)上記周知例1(平成20年4月24日国際公開)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 「技術分野 [0001] 本発明は、複数の表示部を備えた電子機器に関するものである。 背景技術 [0002] 電子機器には、複数の表示部を備えたものがある。例えば、特許文献1の発明では、複数の表示部のそれぞれに表示装置を備え、独立に表示を行っている。 特許文献1:特開2006-18057号公報 発明の開示 発明が解決しようとする課題 [0003] しかし、複数の表示部のそれぞれに表示装置を備えると、部品点数が多く、組立工数も増えるという問題がある。 [0004] 本発明は、複数の表示部を備えた電子機器において、部品点数を削減し、製造コストを抑えることを目的とする。 課題を解決するための手段 [0005] 本発明の電子機器は、分離して配置される複数の表示部と、前記複数の表示部に対する表示を行う単一の表示部材とを備える。 [0006] なお、好ましくは、前記複数の表示部は、表示方向が異なる少なくとも2つの表示部を含んでも良い。 [0007] また、好ましくは、前記複数の表示部は、表示方向が同一で、かつ、単一面に存在しない少なくとも2つの表示部を含んでも良い。 [0008] また、好ましくは、前記表示部材は、前記複数の表示部の配置に応じて屈曲されても良い。」 「[0015] <第1実施形態> 以下、図面を用いて本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の電子機器の一例として、電子カメラを例に挙げて説明する。 [0016] 電子カメラ1は、図1の外観図に示すように、背面に画像表示部2、ズームボタン3Lおよび3R、ズームボタン機能表示部4Lおよび4R、発光モード表示部5、十字キー6、十字キー機能表示部6A~6Dを備える。また、上面に電源ボタン7、電源状態表示部7A、レリーズボタン8、撮影情報表示部9を備える。 [0017] 上述の各表示部は、カメラのカバー部材18に形成される開口部を有する。カバー部材18は、後述する電子ペーパー10、電装基板13、FPC(Flexible printed circuits)コネクタ14、接続FPC15および検知部16等を収納する。ユーザは、これらの開口部を介して電子ペーパー10の表示を目視することが可能である。 [0018] 図2は、電子カメラ1を図1の破線aで切断した断面図であり、図3は、電子カメラ1を図1の破線bで切断した断面図である。電子カメラ1は、図2および図3に示すように、内部に表示情報を無電源状態で表示保持する電子ペーパー10を有する。電子ペーパー10は、画像表示部2、ズームボタン機能表示部4Lおよび4R、発光モード表示部5、十字キー機能表示部6A~6D、電源状態表示部7A、撮影情報表示部9の全ての表示を行う表示部材である。 [0019] 背面に配置された画像表示部2、ズームボタン機能表示部4Lおよび4R、発光モード表示部5、十字キー機能表示部6A~6Dの各表示部と、上面に配置された電源状態表示部7A、撮影情報表示部9とは、表示方向が異なるので、電子ペーパー10は、図2および図3に示すように、屈曲した形状を有する。 [0020] 電子ペーパー10は、保持部材19に保持されている。保持部材19は略L字形状の剛性の部材であり、上面部19aと背面部19bとを含む。電子ペーパー10は、保持部材19の上面部19aと背面部19bとに接着剤等にて取り付けられている。よって、電子ペーパー10は、保持部材19に沿って、1つの屈曲部により1回だけ屈曲した形状で保持部材19に保持されることになる。保持部材19はカバー部材18にねじ止めされている。 [0021] また、図2に示すように、画像表示部2に対応する開口部には、保護窓11が設けられ、撮影情報表示部9に対応する開口部には、保護窓12が設けられる。また、電子カメラ1は、電子ペーパー10の内側に電装基板13を備え、電装基板13は、FPCコネクタ14および接続FPC15を介して、電子ペーパー10と接続される。そして、電装基板13は、電子ペーパー10に対する各表示情報の表示を行う。 [0022] また、図3に示すように、電源ボタン7の内側には、検知部16が設けられ、検知部16の出力は、コネクタ17を介して電装基板13に出力される。電装基板13は、検知部16およびコネクタ17を介して、電源ボタン7の状態を検知することができる。なお、電装基板13は、ズームボタン3Lおよび3R、十字キー6、レリーズボタン8の状態についても、同様に検知する。 [0023] 図4は、電子ペーパー10の展開図である。電子ペーパー10は、図4に示すように、領域cにおいて屈曲され、電子カメラ1の上面および背面に沿って配置される。また、電子ペーパー10は、画像表示部2に対応する表示領域2’、ズームボタン機能表示部4Lおよび4Rに対応する表示領域4L’および4R’、発光モード表示部5に対応する表示領域5’、十字キー機能表示部6A~6Dに対応する表示領域6A’~6D’、電源状態表示部7Aに対応する表示領域7A’、撮影情報表示部9に対応する表示領域9’を有する。」 「[0062] また、上記各実施形態では、本発明の電子機器の一例として、電子カメラを例に挙げて説明したが、電子カメラ以外の複数の表示部を備えた電子機器にも、本発明を同様に適用することができる。例えば、一眼レフタイプの電子カメラ、銀塩カメラ、携帯電話機、ゲーム機、PDA等の他、複数の表示部を備えた各種電子機器・家電にも本発明を同様に適用することができる。」 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 (2)上記(1)から、周知例1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 「単一の表示部材で、分離して配置される複数の表示部に対する表示を行う電子機器([0005]より)であって、 電子ペーパー10は、画像表示部2に対応する表示領域2’、ズームボタン機能表示部4Lおよび4Rに対応する表示領域4L’および4R’、発光モード表示部5に対応する表示領域5’、十字キー機能表示部6A~6Dに対応する表示領域6A’~6D’、電源状態表示部7Aに対応する表示領域7A’、撮影情報表示部9に対応する表示領域9’を有し([0023]より)、 各表示部は、カメラのカバー部材18に形成される開口部を有し、ユーザは、これらの開口部を介して電子ペーパー10の表示を目視することが可能である([0017]より)、電子機器([0005]より)。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明における、「同じ測定結果が表示され」る、「本体3の正面側の有機EL表示シート55」及び「本体3の裏面側の有機EL表示シート55」は、本願発明における「情報を表示する複数の表示部」に相当する。 したがって、引用発明における、「同じ測定結果が表示され」る、「本体3の正面側の有機EL表示シート55」及び「本体3の裏面側の有機EL表示シート55」を備えた「測定器」は、本願発明における「情報を表示する複数の表示部を備える測定器」に相当する。 (2)引用発明の「本体3の正面から裏面に回して固定」した「有機EL表示シート55」は、本願発明の「1つのフレキシブルディスプレイ」に相当する。 (3)引用発明における、「有機EL表示シート55は、本体3の正面から裏面に回して固定されるとともに、本体3の正面側の有機EL表示シート55と本体3の裏面側の有機EL表示シート55には同じ測定結果が表示され」ることは、上記(1)、(2)をふまえると、本願発明における、「前記複数の表示部は、1つのフレキシブルディスプレイを共用することによって情報を表示」することに相当する。 (4)引用発明における「本体3の正面側の有機EL表示シート55と本体3の裏面側の有機EL表示シート55には同じ測定結果が表示され」ることは、上記(1)ないし(3)をふまえると、本願発明における「前記フレキシブルディスプレイは、前記複数の表示部のそれぞれに同じ情報を表示する」ことに相当する。 2 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「情報を表示する複数の表示部を備える測定器であって、 前記複数の表示部は、1つのフレキシブルディスプレイを共用することによって情報を表示し、 前記フレキシブルディスプレイは、前記複数の表示部のそれぞれに同じ情報を表示する測定器。」 【相違点】 本願発明では、「前記複数の表示部のそれぞれは、窓を介して外部に露出し」と特定されているのに対し、引用発明では、「本体3の正面側の有機EL表示シート55」及び「本体3の裏面側の有機EL表示シート55」のそれぞれが「窓を介して外部に露出」するとは特定されていない点。 第6 判断 1 相違点について (1)表示部が窓を介して外部に露出する点について 例えば、本願出願前に頒布された刊行物である周知例AないしFには、以下のように記載されている。 ア 実願昭52-29807号(実開昭53-124451号)のマイクロフィルム(周知例A) 「・・・筐体2の前壁に穿たれた開口17と対向状態に筐体2内に固定された表示器16にディジタル表示される。」(明細書第5頁第15~17行) 【第1図】 イ 実願昭56-10379号(実開昭57-124712号)のマイクロフィルム(周知例B) 「・・・表示器22を透視する窓231を設けキーマトリックス29を装着したカバー23・・・」(明細書第7頁第9~11行) 【第2図】 ウ 特開平7-27501号公報(周知例C) 「【0008】・・・この取っ手カバー3は例えばプラスチック製であって、LCD表示器5の表示面を露出させるように窓17があけられてスライダ部11を覆っている。・・・」 【図2】 エ 特開2005-241630号公報(周知例D) 「【0031】 開口部101は、カバー本体100をスライダ本体510に被嵌させた状態において、デジタル表示部511およびソーラセル512を、保護カバー513を介して露出させるためのものである。・・・」 【図1】 【図4】 オ 特開2008-111706号公報(周知例E) 「【0019】 表面側ケース115は、その表面に略長方形の開口部115Aを有し、この開口部115Aに前述の表示部13が設けられている。・・・」 【図3】 カ 特開2012-185093号公報(周知例F) 「【0020】・・・回路カバー4には、表示器6の表示面を露出するための窓9が設けられている。」 【図2】 上記周知例AないしFの記載からも明らかなように、表示部が窓を介して外部に露出すること自体は、表示部を設計する際の通常の設計であるし、また、表示部が複数ある場合でも、例えば周知例1に記載された技術的事項(上記「第4」の「2」の「(2)」)によれば、共有する1つのディスプレイにより複数の表示部を形成するにあたり、複数の表示部のそれぞれを、窓を介して外部に露出させることは、周知技術(以下、「周知技術」という。)であるといえる。 (2)「有機EL表示シート55は、本体3の正面から裏面に回して固定されるとともに、本体3の正面側の有機EL表示シート55と本体3の裏面側の有機EL表示シート55には同じ測定結果が表示され」る引用発明は、共有する1つのフレキシブルディスプレイにより複数の表示部を形成するものであるから、「有機EL表示シート55」の保護等を考えれば、上記周知技術を採用することで、「本体3の正面側の有機EL表示シート55」の「測定結果が表示され」る箇所と、「本体3の裏面側の有機EL表示シート55」の「測定結果が表示され」る箇所との、それぞれを、窓を介して外部に露出させる構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 2 そして、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術のそれぞれが奏する効果から当業者が十分に予測できたものであって格別のものとはいえない。 3 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 請求人の主張について 1 「同じ情報」を表示するか否かと、表示部を窓を介して外部に露出させることとの関係について (1)請求人は、本件意見書において、 「確かに、引用文献1の段落0040および図13には、有機EL表示シート55の3つの領域に「同じ情報」である測定結果が表示されています。ここで、3つの領域(複数の表示部)に表示する「同じ情報」とは、複数の表示部において同じ目的に応じて表示される情報のことをいい、複数の表示部の表示から得られる情報が同一のものであることをいいます。具体的には、例えば全ての表示部に同じ測定結果を表示する状態のことをいいます。 そして、引用文献2の段落0024~0041および図4には、複数の表示部に対応する各領域のそれぞれに、目的に応じた情報を表示する、と記載されています。「目的に応じた情報」とは、例えば撮影時の構図を確認するための構図確認用のスルー画像の情報や、露出やシャッタースピードなどの電子カメラ1による撮影に関する情報などであり、複数の表示部において、それぞれ異なる目的に応じて表示される「異なる情報」のことをいいます。このため、引用文献2の電子カメラ1は、1つのフレキシブルディスプレイにおいて分割され区切られたそれぞれの表示領域の位置に応じて、画面表示部2に対応する表示領域2’に構図確認用のスルー画像を表示し、撮影情報表示部9に対応する表示領域9’に電子カメラ1による撮影に関する情報を表示しています。 引用文献2では、窓を有するカバー部材18を用いて表示領域2’や表示領域9’を区切ることで、表示領域2’や表示領域9’がそれぞれ異なる目的や用途で用いられる表示領域(表示部)であることを、使用者に意識づけしています。すなわち、窓を用いて1つのフレキシブルディスプレイを区切ることで、使用者は、どこにどのような情報が表示されるかを容易に判別し、認識することができます。 これに対して、本願発明の測定器における複数の表示部のそれぞれは、「窓を介して外部に露出し、(構成(C))」「フレキシブルディスプレイは、複数の表示部のそれぞれに同じ情報を表示すること(構成(D))」、すなわち、窓を介して分割して区切ることで、1つのフレキシブルディスプレイをマルチディスプレイ化し、かつ、マルチディスプレイのそれぞれに同じ情報を表示している点で引用文献1,2との差異を有しています。 本発明では、1つのフレキシブルディスプレイであっても窓を介して露出し分割して区切ることで、区切られた複数の表示部を、それぞれ「個別の表示部」として使用者に認識させることができます。 単に「同じ情報」を1つのフレキシブルディスプレイの複数箇所に表示するのであれば、窓を形成するためのフレームが必要となり、コストや設計の手間がかかるため、1つのフレキシブルディスプレイを引用文献2のように窓を介して区切る必要はありません。」 「引用文献1は、有機EL表示シート55の3つの領域に「同じ情報」を表示しているため、それぞれ異なる目的に応じて「異なる情報」を表示させる必要がなく、コストもかかることから、引用文献2のカバー部材18を用いて3つの領域を区切る必要はありません。 引用文献2は、それぞれの位置においてそれぞれ異なる目的に応じて「異なる情報」を表示させるためにカバー部材18を用いて1つのディスプレイを複数の表示部としているため、「同じ情報」を表示させることが想定されません。 したがって、「同じ情報」を表示し1つのディスプレイを区切る必要のない引用文献1に、複数の表示部に「異なる情報」を表示させるための引用文献2のカバー部材18を組み合わせることは困難であり、本発明の測定器における「複数の表示部のそれぞれが窓を介して外部に露出し、(構成(C))」「フレキシブルディスプレイが複数の表示部のそれぞれに同じ情報を表示すること(構成(D))」についての有用性は、引用文献1および引用文献2から得ることができず、当業者といえども容易に想到できるものではありません。」 と主張している。 (2)しかしながら、本願明細書には、表示部が窓を介して外部に露出することに関して、以下の記載があるのみである。 ア「【0025】・・・このプラスチック液晶ディスプレイ13は、図2(B)に示すように、折り曲げることによってスライダ12の内部に収納されるとともに、スライダ12に形成された長方形状の窓を介してスライダ12の外部に露出する。したがって、正面表示部13Aおよび背面表示部13Bは、1つのプラスチック液晶ディスプレイ13を共用することによって情報を表示する。」 イ「【0032】・・・このプラスチック液晶ディスプレイ14は、図4(B)に示すように、折り曲げることによってスライダ12の内部に収納されるとともに、スライダ12に形成された長方形状の窓を介してスライダ12の外部に露出する。したがって、正面表示部14Aおよび上面表示部14Bは、1つのプラスチック液晶ディスプレイ14を共用することによって情報を表示する。」 ウ「【0036】・・・このプラスチック液晶ディスプレイ23は、本体部21に形成された長方形状の窓を介して本体部21の外部に露出する。したがって、主表示部23Aおよび副表示部23Bは、1つのプラスチック液晶ディスプレイ23を共用することによって情報を表示する。」 (3)本願明細書では、表示部が窓を介して外部に露出することについて、「同じ情報」を表示する第1、第2実施形態(上記(2)ア、イ)と、異なる情報を表示する第3実施形態(上記(2)ウ)とで、何の区別もしていない。 (4)また、周知例1(引用文献2)においても、必ずしも、異なる情報を表示する表示領域であるから、開口部を用いて表示領域を区切っている、と記載されているわけではない。 一方で、周知例1(引用文献2)に明記はなくとも、複数の表示領域のみ開口部を介して露出させることで、電子ペーパーを保護できる、複数の表示領域以外の領域を覆い隠せる、複数の表示領域のみを強調できる、等々、種々の利点が当業者であれば容易に想像できる。これは、複数の表示領域が、同じ情報を表示するものなのか、異なる情報を表示するものなのか、にはかかわらないものである。 実際、上記「第6」の「1」の「(1)」で例示した周知例AないしFでは、1つの表示領域でも(すなわち、同じ情報を表示する、異なる情報を表示する、という概念が存在しない場合でも)、表示領域を窓を介して外部に露出させる設計を採っており、表示領域を窓を介して外部に露出させるか否かは、表示領域に何を表示するかとは関係がないものであるといえる。 (5)そうしてみると、異なる目的や用途で用いられる表示領域(表示部)であるから窓を用いて区切る必要がある、「同じ情報」を複数箇所に表示するのであれば窓を介して区切る必要はない、とする根拠は、本願明細書、周知例1(引用文献2)の記載からは把握できない。 また、その点が技術常識であるともいえない。 (6)したがって、請求人の上記(1)の主張は採用することができない。 2 本願発明における効果について また、請求人は、本件意見書において、 「本発明では、1つのフレキシブルディスプレイであっても窓を介して露出し分割して区切ることで、区切られた複数の表示部を、それぞれ「個別の表示部」として使用者に認識させることができます。 単に「同じ情報」を1つのフレキシブルディスプレイの複数箇所に表示するのであれば、窓を形成するためのフレームが必要となり、コストや設計の手間がかかるため、1つのフレキシブルディスプレイを引用文献2のように窓を介して区切る必要はありません。 しかしながら、窓を介して区切られた複数の表示部のそれぞれに「同じ情報」を表示することで、本発明の測定器において、次のような効果が得られます。 例えば本発明の第1実施形態のように、ノギス1(測定器)は、被測定物を測定して得られた測定値などの情報(同じ情報)を正面表示部13Aおよび背面表示部13B(複数の表示部)のそれぞれに表示することができます。これにより、使用者は、右利きであっても左利きであっても、ノギス1から「同じ情報」を読み取ることができるため、右利きの使用者も左利きの使用者も同じノギス1を使用することができます。 また、例えば本発明の第2実施形態のように、ノギス1A(測定器)は、被測定物を測定して得られた測定値などの情報(同じ情報)を、長方形状の正面表示部14Aと、正面表示部14Aよりも面積の小さい長方形状の上面表示部14Bとに表示することができます。これにより、使用者は、低い位置に存在する被測定物を測定する場合や、正面表示部14Aを視認することができない姿勢であっても、苦しい姿勢をとることなく上面に設けられた上面表示部14Bから正面表示部14Aに表示された情報と「同じ情報」を容易に視認し、読み取ることができます。」 とも主張している。 しかしながら、ここで主張している効果は、窓を介すか否かとは関係の無い効果であって、引用例1(【0039】~【0041】)に記載されるように、引用発明でも同様に得られているものである。 3 「異なる情報」を表示するように切り替える点について (1)また、請求人は、本件意見書において、 「さらに、例えば第1実施形態および第2実施形態のように複数の表示部に「同じ情報」を表示させている状態から、第3実施形態のように、被測定物を測定して得られた測定値などの主な情報を主表示部23Aに表示し、電池の残量や測定値の単位などの副次的な情報を副表示部23に表示するなど、それぞれ「異なる情報」を表示するように切り替えて使うこともできます。 このように、例えば複数の表示部に表示される「同じ情報」を「異なる情報」に切替えて使うことができるのは、1つのフレキシブルディスプレイについて窓を介して区切り、複数の表示部とすることで、表示部ごとに別の機能を有していることを使用者に認識させることができるためです。」 とも主張している。 しかしながら、ここで主張している事項は、請求項の記載にも、発明の詳細な説明の記載にも基づいていないから、当該主張は採用することができない。 (2)なお、補正2により【0008】が補正され、本件補正により【0006】が補正された結果、本願明細書の【0006】~【0008】は次のような記載になっている。 「【0006】 本発明の測定器は、情報を表示する複数の表示部を備える測定器であって、複数の表示部は、1つのフレキシブルディスプレイを共用することによって情報を表示し、複数の表示部のそれぞれは、窓を介して外部に露出し、フレキシブルディスプレイは、前記複数の表示部のそれぞれに同じ情報を表示することを特徴とする。 【0007】 フレキシブルディスプレイとは、ガラス基板に代えてプラスチック基板を用いたディスプレイであり、液晶ディスプレイの他、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイや、電気泳動方式の電子ペーパなどを含む。このフレキシブルディスプレイは、プラスチック基板にて構成されているので、ガラス基板にて構成されたディスプレイと比較して、形状の加工がし易く、軽量であり、衝撃に強いという特徴を有している。 【0008】 したがって、本発明によれば、測定器は、表示部を備え、この表示部は、形状の加工がし易いフレキシブルディスプレイを用いることによって情報を表示するので、表示部の形状の設計自由度を飛躍的に向上させることができる。 なお、プラスチック基板は、ガラス基板と比較して低いコストで板厚を薄く製造することができるので、表示部の視認性を容易に向上させることができる。 また、このような構成によれば、測定器は、複数の表示部を備えているので、例えば、測定値などの主な情報をメインディスプレイに表示し、電池の残量や測定値の単位などの副次的な情報をサブディスプレイに表示することによって、測定器の利便性を向上させることができる。また、複数の表示部は、1つのフレキシブルディスプレイを共用することによって情報を表示するので、複数のディスプレイを用いることによって情報を表示する場合と比較して測定器の製造コストを低減させることができる。」 しかしながら、補正2は、「同じ情報」を表示することが請求項の記載で特定されていない時点でなされたものであり、補正2で【0008】を補正したのは、単に、「複数の表示部」を備えることが請求項1の記載で特定される(補正1)に伴い、「複数の表示部」を備えることに関する出願当初の【0012】の記載を、【0012】から【0008】に移したものに過ぎない。 そして、本件意見書で主張する「例えば第1実施形態および第2実施形態のように複数の表示部に「同じ情報」を表示させている状態から、第3実施形態のように、被測定物を測定して得られた測定値などの主な情報を主表示部23Aに表示し、電池の残量や測定値の単位などの副次的な情報を副表示部23に表示するなど、それぞれ「異なる情報」を表示するように切り替えて使う」というような技術思想が、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に開示されていないことは明らかである。 したがって、本願明細書の【0006】~【0008】を一連の文脈として、複数の表示部に「同じ情報」を表示させたり「異なる情報」を表示させたりする、と捉えることはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は当審拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-015186

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