2020-003780
無線充電器用磁場遮蔽シート及びその製造方法と、それを用いた無線充電器用受信装置
- 審判番号
- 2020-003780
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-231517外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月19日
- 審決日
- 2020年11月06日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アモセンス・カンパニー・リミテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人スズエ国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第50条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成24年(2012年)12月21日(パリ条約による優先権主張 2011年12月21日 韓国)を国際出願日とする特願2014-548673号の一部を、平成29年12月1日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。
「多数の細片に分離された非晶質リボンからなる少なくとも1層の薄板磁性シートと、前記薄板磁性シートの一面に、第1接着層を介して接着される保護フィルムと、前記薄板磁性シートの他面に、一側面に備えられた第2接着層を介して接着される両面テープとを含み、前記多数の細片間の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の一部が充填されて、前記多数の細片を絶縁(isolation)させることを特徴とする、無線充電器用磁場遮蔽シート。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1
・引用文献等 1-2
・請求項 2
・引用文献等 1-3
・請求項 3-4
・引用文献等 1-3
・請求項 5
・引用文献等 1-3
・請求項 6
・引用文献等 1-3
・請求項 7、9、12
・引用文献等 1-3
・請求項 8
・引用文献等 1-3
・請求項 10-11
・引用文献等 1-3
<引用文献等一覧>
1.特開2008-112830号公報
2.特開2007-123575号公報
3.特開2005-228939号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
原査定で引用された引用文献1には、図面ともに以下の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。
「【0002】携帯電話に代表される携帯型電子機器の小型軽薄化等に伴って、携帯型電子機器等に対する充填方式として非接触型充電方式が注目されている。非接触型充電方式は、受電装置と給電装置の両方にコイルを設け、これらコイル間での電磁誘導を利用して充電する方式である。非接触型充電方式は電極同士を接触させないため、電極が剥き出しにならず錆びないという利点を有する。また、接触型充電方式では機器毎に異なる形状の接続プラグと充電器が使用されるが、電極を必要としない非接触型充電方式は充電器を共用化することができるという利点を有する。(省略)【0010】続きを表示(全23行)以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1および図2は本発明の一実施形態による磁性シートの製造工程を示す図である。まず、図1(a)および図2(a)に示すように、接着層2を有するシート基材1を用意し、このシート基材1上に接着層2を介して薄板状磁性体3を接着して磁性シート4を形成する。シート基材1は薄板状磁性体3の分割を阻害しない程度の可撓性と厚さを有しているものであればよく、各種の絶縁樹脂材料からなる樹脂フィルムを使用することができる。(省略)【0012】樹脂材質にもよるが、樹脂フィルムの厚さが100μmを超えるとシート基材1として用いた際に薄板状磁性体3の分割を阻害するおそれがある。一方、シート基材1の厚さが1μm未満であると、分割後の薄板状磁性体3の支持体としての機能が低下するおそれがある。接着層2にはアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエン樹脂等からなる接着剤やホットメルト等を適用することができる。【0013】上述したような樹脂フィルムの表面に接着剤を塗布したり、あるいは予め接着剤付きの樹脂フィルムを用いることによって、接着層2を有するシート基材1とする。このようなシート基材1上に接着層2を介して薄板状磁性体3を接着する。薄板状磁性体3としては各種の磁性体シート(フィルム)を用いることが可能であるが、アモルファス合金、微結晶合金、パーマロイ等の磁性合金を使用することが好ましい。これらの磁性合金は、いずれもロール急冷法や圧延法等で薄板化(薄帯化)することが可能であることから、シート基材1上に接着した状態で外力を加えて分割することができる。(省略)【0023】薄板状磁性体3として用いるアモルファス合金薄帯は、例えばロール急冷法(溶湯急冷法)により作製することができる。具体的には、所定の組成比に調整した合金素材を溶融状態から急冷することにより作製される。微結晶合金薄帯は、例えば液体急冷法によりアモルファス合金薄帯を作製した後、その結晶化温度に対して-50~+120℃の範囲の温度で1分~5時間の熱処埋を行い、微結晶粒を析出させる方法により得ることができる。あるいは、液体急冷法の急冷速度を制御して微結晶粒を直接析出させる方法によっても、微結晶合金薄帯を得ることができる。なお、パーマロイは溶解インゴットや焼結インゴットを用いて鍛造、圧延等により薄帯化することができる。(省略)【0026】次に、シート基材1に接着された薄板状磁性体3に外力を加えて、薄板状磁性体3をシート基材1に接着された状態を維持しつつ複数に分割する。具体的には、図1(b)および図2(b)に示すように、薄板状磁性体3に外力を加えて複数の磁性体片5に分割する。このように、薄板状磁性体3を複数の磁性体片5に分割することによって、磁性シート4を例えばインダクタ用磁性体として用いる場合にQ値の向上を図ることができる。また、磁性シート4を例えば磁気シールド用磁性体として用いる場合には、薄板状磁性体3の 電流路を分断して渦電流損を低減することが可能となる。【0027】薄板状磁性体3の分割工程は、例えば磁性シート4を直接折り曲げて薄板状磁性体3を割ることにより実施される。このような方法以外にも、例えば磁性シート4を圧延ロールに通して折り曲げたり、また金型で押し割る等の方法を適用することができる。さらに、金型やロールに予め決められた凹凸パターンを設けておくことによって、薄板状磁性体3を所定形状に割る方法等も適用可能である。シート基材1や薄板状磁性体3の材質条件等によっては、一対の金型やロールの一方にゴム等の変形しやすい材料を用いてもよい。圧延ロールを用いる場合には一対のロールの周速に差を設け、単なる圧力だけではなく、せん断力を加えることも有効である。【0028】なお、薄板状磁性体3の分割工程における磁性体片5の飛び散りを防止するために、薄板状磁性体3上には接着剤付き保護フィルム等をカバー層として貼り付けることができる。また、接着剤付き保護フィルムは後工程時や使用時における磁性体片5の脱落等を防止するために、分割工程後に薄板状磁性体3上に貼り付けてもよい。実際の使用に際しては、シート基材1や保護フィルム等を剥がして接着層を露出させ、この接着層を利用してコイル、各種部品、機器筐体等に貼り付けることも可能である。(省略)【0032】薄板状磁性体3の分割数は特に限定されるものではなく、磁性シート4の用途や要求特性に応じて適宜に設定される。例えば、30×40mmの薄板状磁性体3を64分割した場合、磁性体片5の平均形状は3.7×5mm程度となり、256分割した場合には1.8×2.5mm程度、1024分割した場合には0.9×1.2mm程度となる。各磁性体片5の面積は0.01mm2以上25mm2以下の範囲とすることが好ましい。また、磁性体片の形状を長方形として配向させることで、特定方向に対する透磁率等の磁気特性を向上させることができる。この場合、磁性体片のアスペクト比(長辺(長さ)/短辺(幅))を2以上とすることが有効である。」
(省略)
【0037】
上述した実施形態の製造方法により得られる磁性シート4、すなわち複数に分割された薄板状磁性体3を有する磁性シート4は、例えばインダクタ用磁性体や磁気シールド用磁性体(ノイズ対策シートを含む)として用いられる。特に、100kHz以上の周波数帯で使用されるシート状磁性体(薄型磁性体)に好適である。すなわち、複数に分割された薄板状磁性体3に基づくQ値の向上効果や渦電流損の低減効果等は100kHz以上の周波数帯域でより良好に発揮される。従って、磁性シート4は100kHz以上の周波数帯で使用されるインダクタ用磁性体や磁気シールド用磁性体として好適である。
(省略)
【0039】
また、磁性シート4は非接触型充電方式の受電装置側(例えば充填される電子機器側)に設けられる磁気シールドとしても有効である。このような磁気シールド(磁性シート4)は、例えば2次電池とスパイラルコイル(二次コイル)との間、整流器とスパイラルコイルとの間、電子デバイスとスパイラルコイルとの間、スパイラルコイルと回路基板との間から選ばれる少なくとも1箇所に配置される。」
図1(a)
[図:0001382616000001.jpg]
図2(a)
[図:0001382616000002.jpg]
引用文献1の上記記載及び図面から、次のことがいえる。
ア 段落【0010】、【0012】、【0013】及び図1(a)、図2(a)によれば、シート基材1上に接着層2を介して薄板状磁性体3を接着して磁性シート4を形成する。
イ 段落【0013】、【0023】、【0026】によれば、引用文献1に記載された薄板状磁性体3は、アモルファス合金薄帯からなり、複数の磁性体片5に分割される。また、段落【0032】によれば、薄板状磁性体3を1024分割した場合、磁性体片5の平均形状は0.9×1.2mm程度である。
ウ 段落【0028】によれば、薄板状磁性体3を分割する際、磁性体片5の飛び散りを防止するために、薄板状磁性体3上に接着剤付き保護フィルム等をカバー層として貼り付ける。
エ 段落【0002】、【0037】、【0039】によれば、複数に分割された薄板状磁性体3を有する磁性シート4は、電磁誘導を利用する非接触型充電方式の受電装置側に設けられる磁気シールドとして用いる。
したがって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「シート基材上に接着層を介して薄板状磁性体シートを接着して形成され、前記薄板状磁性体シートは、アモルファス合金薄帯からなり、平均形状が0.9×1.2mm程度の複数の磁性体片に分割され、前記薄板状磁性体シート上に接着剤付き保護フィルムを貼り付け、電磁誘導を利用する非接触型充電方式の受電装置側に設けられ磁気シールドとして用いられる磁性シート。」
2 引用文献2の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。
「【0001】本発明は、RF-ID、即ちICカードやICタグなどの無線通信媒体との通信を行う無線通信媒体処理装置に用いるアンテナ、あるいは無線通信媒体そのものに搭載されるアンテナなどにおいて、電磁誘導方式、マイクロ波方式での通信性を向上させると共に、破損に強い磁性シートおよびこれを用いたアンテナ装置に関するものである。(省略)【0036】続きを表示(全12行)(実施の形態1)まず、本発明の磁性シート1の形状、構造について説明する。図1(a)は、本発明の実施の形態1において、両面テープを固定層として用いた場合の磁性シートの斜視図、(b)は、図1(a)の分解図、図2は、図1(a)のA-A断面図、図3は、本発明における実施の形態1の磁性シート1で、粘着層7を固定層として用いた場合の断面図、図4は、本発明における実施の形態1の磁性シート1で、樹脂層9を固定層として用いた場合の断面図である。(省略)【0052】次に、両面テープ3について説明する。両面テープ3は固定層の一例であって、磁性部材2の下面に設けられて製造時に磁性部材2を固定する役割を果たすと同時に、両面テープ3のフィルムを剥がしてループアンテナや整合回路等を接着したり、RF-IDの装置に貼り付けたりすることができる。今回、両面テープ3を用いたが、両面テープ3だけではなく微粘着テープ、粘着層7等であっても製造上問題はない。(省略)【0108】本発明は、商品棚などに収納される非接触ICカードやICタグなどの無線通信媒体に電力と送信データを供給し、無線通信媒体から受信データを負荷変動により取得する無線通信媒体処理装置であって、特に自動で商品管理、書籍管理等が可能となる収納棚、展示棚以外の医薬品管理、危険物管理、貴重品管理システム等々などの、通信範囲を拡大させることが必要な用途にも適用できる。」
図1(a)、(b)
「[図:0001382616000003.jpg]」
引用文献2の上記記載及び図面から、次のことがいえる。
ア 段落【0001】、【0052】によれば、引用文献2には、RF-ID装置に用いられる磁性シートが記載されており、段落【0108】から、RF-ID装置は非接触で電力が供給されるといえる。
イ 段落【0036】、【0052】によれば、両面テープは、磁性部材の下面に設けられて製造時に磁性部材を固定する役割を果たすと同時に、フィルムを剥がしてループアンテナや整合回路等を接着、又は、RF-ID装置に貼り付けるものである。
よって、引用文献2には、以下の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項1」という。)が記載されている。
「非接触で電力が供給される装置に用いられる磁性シートにおいて、磁性部材の下面に両面テープを設け、製造時に磁性部材を固定する役割を果たすと同時に、そのフィルムを剥がしてループアンテナや整合回路等を接着、又は、装置に貼り付ける。」
(2)また、引用文献2には、図面とともに以下の事項も記載されている。下線は、当審で付与した。
「【0057】工程3で、磁性部材2を両面テープ3に貼り付ける。なお、固定層としては、特に両面テープ3ではなく、微粘着テープを貼り付けても、あるいは粘着材を塗布してもよい。【0058】工程4で、両面テープ3ごとローラ12を通過させて磁性部材2を、複数の磁性体固片11に粉砕する。磁性部材2を粉砕することで磁性部材2に柔軟性を持たせると同時に磁性部材2が柔らかくなるので加工性がよくなり、加工時の負荷も少なくなる。しかも磁性部材2に空隙ができることから樹脂が磁性部材2に浸透しやすくなり、磁性部材2の柔軟性をさらに向上させることができるようになる。このローラ粉砕工程は、磁性部材2に樹脂を印刷した後でも可能である。(省略)【0061】工程6で、3.5Pa・sの低粘度のシリコーン系熱硬化性樹脂を、磁性部材2の全面にスクリーン印刷機によりスクリーン印刷を行う。樹脂層5は、低粘度なので、磁性部材2の全面に拡散すると共に、磁性部材2の側面まで覆い、5~50μmの膜厚の熱硬化性樹脂を、磁性部材2に形成する。低粘度の熱硬化性樹脂5を磁性部材2の上に形成することで、低粘度の樹脂層5が磁性部材2の切断面をコーティングする(側面を覆う)ことから、磁性シート1の金属系磁性粉末の欠落を防止する。また、磁性部材2は予めローラで、複数の磁性体固片11に粉砕されているので、低粘度の樹脂5がバインダーの役割を果たし磁性部材2及び磁性シート1に更に柔軟性をもたせることが可能となる。低粘度のシリコーン系熱硬化性樹脂をスクリーン印刷にて磁性部材2の上に印刷をおこなった後、恒温槽にて150℃で5分間で仮乾燥を行う。(省略)【0067】なお、ブレイク(粉砕、工程4)、打抜き(工程5)、塗装(工程6)の工程の順番は、図6ないし図9に示すように、適宜変更することが出来る。図6ないし図9は、単層の場合における磁性シート及びアンテナ装置の工程図である。また、図10ないし図13に 示すように、複数の磁性部材2を積層してもよい。図10ないし図13は、磁性部材2を積層した場合における磁性シート及びアンテナ装置の工程図である。」
図8
「[図:0001382616000004.jpg]」
引用文献2の上記記載から、次のことがいえる。
ウ 段落【0057】、【0058】、【0061】及び図8から、引用文献2には、シート状の磁性部材2を両面テープ3に貼り付け、磁性部材2の表面に樹脂を形成後、ローラ12を通過させて磁性部材2を複数の磁性体固片11に粉砕することが記載されている。
エ 引用文献2には、両面テープ3の構造について明記されていないものの、両面テープ3に樹脂からなる接着剤が形成されていることは当然のことである。
オ 段落【0058】の「両面テープ3ごとローラ12を通過させて磁性部材2を、複数の磁性体固片11に粉砕する。磁性部材2を粉砕することで・・・。しかも磁性部材2に空隙ができることから樹脂が磁性部材2に浸透しやすくなり」との記載、及び、上記ウ、エの点を踏まえれば、一方の面に両面テープを貼り付け、他方の面に樹脂を形成したシート状の磁性部材をローラにより粉砕し、粉砕により空隙が生じることにより磁性部材の一方の面に形成された樹脂及び磁性部材の他方の面に接着された両面テープの樹脂からなる接着剤が浸透しやすくなるといえる。
よって、引用文献2には、以下の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項2」という。)が記載されている。
「一方の面に両面テープを貼り付け、他方の面に樹脂を形成したシート状の磁性部材をローラにより粉砕し、粉砕により空隙が生じることにより磁性部材の一方の面に形成された樹脂及び磁性部材の他方の面に接着された両面テープの樹脂からなる接着剤が浸透しやすくなる。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)本願発明の「細片」に関し、本願特許請求の範囲の【請求項8】、本願明細書段落【0060】、【0096】を参照すると、「細片」は「数十um~3mm」の大きさのものを含むことからすれば、引用発明の「平均形状が0.9×1.2mm程度の複数の磁性体片」は、本願発明の「複数の細片」に含まれる。
そして、引用発明の「アモルファス合金薄帯」、「薄板状磁性体シート」は、本願発明の「非晶質リボン」、「薄板磁性シート」に相当する。
よって、引用発明の「前記薄板状磁性体シートは、アモルファス合金薄帯からなり、平均形状が0.9×1.2mm程度の複数の磁性体片に分割され」ることは、本願発明の「多数の細片に分離された非晶質リボンからなる少なくとも1層の薄板磁性シート」に相当する。
(2)引用発明では、薄板状磁性体シート上に接着剤付き保護フィルムが貼り付けられることから、薄板状磁性体シートの上面に接着剤を介して保護フィルムが貼り付けられるといえ、薄板状磁性体シートの上面は、薄板状磁性体シートの「一面」といえる。
そして、引用発明の「接着剤」、「保護フィルム」は、本願発明の「第1接着層」、「保護フィルム」に相当する。
よって、引用発明の「前記薄板状磁性体シート上に接着剤付き保護フィルムを貼り付け」ることは、本願発明の「前記薄板磁性シートの一面に、第1接着層を介して接着される保護フィルム」に相当する構成を備えている。
(3)本願発明の「前記薄板磁性シートの他面に、一側面に備えられた第2接着層を介して接着される両面テープ」に関し、本願明細書の段落【0052】の「また、両面テープ3は、図5に示すように、例えば、・・・フッ素樹脂系フィルムを基材32として使用し、両側面に第2及び第3接着層31,33が形成されたものを用い」、段落【0053】の「図3に示された多数の非晶質リボンシート21~26を互いに接合させるために、非晶質リボンシート21~26間に挿入される両面テープ3a~3fは、両側面のリリースフィルム4,4bを全て除去した上で用いる。」、との各記載、図3及び図5を参照すると、本願発明の「一側面」は、両面テープの薄板磁性シートの他面に接着される側の面を含むといえる。
そして、引用発明では、薄板状磁性体シートはシート基材上に接着層を介して接着されるから、引用発明の接着層は、シート基材の薄板状磁性体シートの下面に接着される側の面に備えられていることは当然のことであって、引用発明の薄板状磁性体シートの下面は、薄板状磁性シートの「他面」といえる。
さらに、引用発明の「接着層」は、本願発明の「第2接着層」に相当し、引用発明の「シート基材」と本願発明の「両面テープ」とは、シート状の部材である点で一致する。
したがって、引用発明の「シート基材上に接着層を介して薄板状磁性体シートを接着」することは、本願発明の「前記薄板磁性シートの他面に、一側面に備えられた第2接着層を介して接着される」シート状の部材に相当する構成を備えている。
(4)本願明細書の段落【0001】の「本発明は、無線充電器用磁場遮蔽シート及びその製造方法と、それを用いた無線充電器用受信装置に関し、特に、携帯端末機器などに充電器機能を非接触(無線)方式で実現するときに発生する交流磁場が携帯端末機器などの本体に及ぼす影響を遮断する、電力伝送効率に優れた無線充電器用磁場遮蔽シート及びその製造方法と、それを用いた無線充電器用受信装置に関する。」、同段落【0004】の「非接触型充電方式は、受電装置と給電装置の両方にコイルを設置することによって、電磁誘導を用いた充電方式である。」、及び、本願特許請求の範囲請求項5の「前記遮蔽シートは、無線充電器の受信装置に適用され」の各記載を参照すると、本願発明の「無線充電器」は、電磁誘導を用いた非接触型充電方式で実現される無線充電器用受信装置が含まれる。
よって、引用発明の「電磁誘導を利用する非接触型充電方式の受電装置」は、本願発明の「無線充電器」に含まれ、引用発明における「磁気シールド」とは、磁場を遮蔽することに他ならないから、本願発明と引用発明とは、「無線充電器用磁場遮蔽シート」である点で一致する。
(5)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「多数の細片に分離された非晶質リボンからなる少なくとも1層の薄板磁性シートと、前記薄板磁性シートの一面に、第1接着層を介して接着される保護フィルムと、前記薄板磁性シートの他面に、一側面に備えられた第2接着層を介して接着されるシート状の部材とを含む、無線充電器用磁場遮蔽シート。」
(相違点1)
「シート状の部材」に関し、本願発明は「両面テープ」であるのに対し、引用発明は「シート基材」である点。
(相違点2)
本願発明は、「多数の細片間の隙間は、前記第1接着層及び第2接着層の一部が充填されて、前記多数の細片を絶縁(isolation)させる」に対し、引用発明はその旨の特定がされていない点。
2 上記相違点について判断する。
(1)相違点1について
上記「第4」「1」の段落【0012】、【0028】の記載によれば、引用発明のシート基材は、分割後の薄板状磁性体の支持体としての機能を有し、コイル、各種部品、機器筐体等に磁性シートを貼り付ける際剥がされるものを含む。
ここで、上記「第4」「2」でも述べたとおり、引用文献2には、「非接触で電力が供給される装置に用いられる磁性シートにおいて、磁性部材の下面に両面テープを設け、製造時に磁性部材を固定する役割を果たすと同時に、そのフィルムを剥がしてループアンテナや整合回路等を接着、又は、装置に貼り付ける。」の技術事項1が記載されている。
そして、引用発明の「磁性シート」と、引用文献2記載の技術事項1の「磁性シート」とは、非接触により電力を受電する装置に用いられる点で共通し、さらに引用発明の「シート基材」と引用文献2に記載された「両面テープ」とは、磁性体の支持及び他の部材へ貼り付け等の同様な機能を有していることから、引用発明の「シート基材」に代えて引用文献2記載の技術事項1の「両面テープ」を採用し、相違点1の構成にすることは当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
両面上に樹脂が積層された磁性シートをローラーにより粉砕し、粉砕により生じた隙間に樹脂が入り込むことは、引用文献2(上記「第4」「2」の技術事項2を参照)にも記載されているように普通の事項である。
なお、他の文献にも、例えば、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2008-205557号公報(段落【0029】ないし【0037】、及び図13を参照)にも、同様な記載が認められる。
ここで、引用発明の薄板状磁性体シートは、平均形状が0.9×1.2mm程度の複数の磁性体片に分割されるのであるから、分割された磁性体片間に隙間が生じることは自明である。また、接着剤が樹脂からなることは技術常識であるから、引用発明の「接着剤」及び引用文献2に記載された「両面テープ」に使用される接着剤は樹脂からなるといえる。
そして、引用発明における薄板状磁性体シートの分割は、上記「第4」「1」の段落【0026】~【0028】から、シート基材に薄状板磁性体を接着し、薄板状磁性体上に接着剤付き保護フィルムを貼り付けた後、圧延ロールに通して折り曲げたり、また金型で押し割る等の方法や、金型やロールに予め決められた凹凸パターンを設けておくことによって、薄板状磁性体3を所定形状に割る方法により行われるのであるから、上記技術事項2からすれば、引用発明の「シート基材」に代えて引用文献2記載の技術事項1の「両面テープ」を採用したものにおいても、分割された磁性体片間の隙間に接着剤の一部が入り込むといえ、入り込んだ接着剤が分割された磁性体片を絶縁することは当然のことである。
してみると、相違点2に係る構成も、引用発明に引用文献2記載の技術事項1を採用することにより当業者が容易になし得たことである。
3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-003780