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特許拒絶査定不服審判

2020-002602

はんだバンプの形成方法

審判番号
2020-002602
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-037804外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年02月27日
審決日
2020年10月15日
公報発行日
2021年02月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016- 37804「はんだバンプの形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 7日出願公開,特開2017-157626〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
【理 由】

第1 手続の経緯

本願は,平成28年2月29日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 6月 5日付け:拒絶理由通知書
令和元年 7月24日  :意見書,手続補正書の提出
令和元年11月26日付け:拒絶査定
令和2年 2月27日  :審判請求書,手続補正書の提出

第2 令和2年2月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年2月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由](補正の適否の判断)

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)

「基板の表面に相互間隔をおいて並べられた複数の電極部の上にはんだバンプを形成する方法であって,前記基板の前記電極部の相互間隔に対応して複数の凹部を形成した位置決め板の各凹部内にはんだボールを配置するはんだボール配列工程と,外周面が粘着面に形成された転写ロールを前記位置決め板の表面で転動しながら前記凹部内のはんだボールを前記粘着面に接着させ,その後,前記基板の前記電極部表面に粘着材を層状に設けておき,前記転写ロールを前記基板の上で転動させることにより前記粘着面に接着させたはんだボールを前記基板の前記粘着材に接触させて前記電極部に接着するはんだボール移載工程と,前記基板の電極部上のはんだボールを加熱溶融させて,前記粘着材を分解消失させるとともに,はんだバンプを形成する熱処理工程とを有することを特徴とするはんだバンプの形成方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の,令和元年7月24日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「基板の表面に相互間隔をおいて並べられた複数の電極部の上にはんだバンプを形成する方法であって,前記基板の前記電極部の相互間隔に対応して複数の凹部を形成した位置決め板の各凹部内にはんだボールを配置するはんだボール配列工程と,外周面が粘着面に形成された転写ロールを前記位置決め板の表面で転動しながら前記凹部内のはんだボールを前記粘着面に接着させ,その後,前記基板の前記電極部表面に粘着材を設けておき,前記転写ロールを前記基板の上で転動させることにより前記粘着面に接着させたはんだボールを前記基板の前記粘着材に接触させて前記電極部に接着するはんだボール移載工程と,前記基板の電極部上のはんだボールを加熱溶融させて,前記粘着材を分解消失させるとともに,はんだバンプを形成する熱処理工程とを有することを特徴とするはんだバンプの形成方法。」

2 補正の適否

本件補正による請求項1の補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「粘着剤」について,「層状に」設けられる旨の限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献等の記載事項

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ア 引用文献1

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願出願前に,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平10-116833号公報(平成10年5月6日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は突起電極形成装置及び突起電極形成方法に係り,特に突起電極となるホールを基板に転写することにより突起電極を形成する突起電極形成装置及び突起電極形成方法に関する。
【0002】近年,コンピュータシステムの小型化・高速化・高密度実装化の要求に伴い,ファインピッチでかつ多ピンの半導体装置の製造技術の確立と,この要求を満たしつつ低コスト化を図った半導体装置が望まれている。このように,多ピン化された半導体装置を低コストで実現できるパッケージ構造として,BGA(Ball Grid Allay) が注目されている。このBGAタイプの半導体装置は,基板の背面に外部接続端子として多数の突起電極(バンプ)が形成された構成とされている。」
「【0004】
【従来の技術】従来,半導体チップ等の基板に突起電極を形成する方法としては,先ず基板に対してフラックスを塗布するフラックス塗布工程を実施し,続いてフラックスが塗布された基板に対しボールを搭載するボール搭載工程を実施する方法が一般に用いられている。
【0005】フラックス塗布工程の具体的方法としては,転写法とスクリーン印刷法が知られている。転写法では,フラックス転写板を用意し,先ずこのフラックス転写板の突起電極形成位置に対応する位置にフラックスを塗布する。続いて,この所定位置にフラックスが塗布されたフラックス転写板を基板と対向させ,フラックス転写板に塗布されていたフラックスを基板に転写する。
【0006】また,スクリーン印刷法では,予め突起電極形成位置に対応する位置に孔が形成されたマスクを用意し,このマスクを基板上に配設した上でスキージを用いてフラックスを基板上に厚膜印刷する。一方,ボール搭載工程の具体的方法としては,専用の吸引治具を用いた治具吸引法,及びマスクを用いたマスク吸引法が知られている。治具吸引法は,予め突起電極の形成位置に対応する位置に吸着ノズル部が配設された吸引治具を用意し,この吸引治具を多数のボールが装填されたボール装填ボックス内に挿入し,各吸着ノズル部にボールを吸着する。
【0007】そして,ボールが吸引された吸引治具をフラックスが塗布された基板上に移動させ,フラックス上にボールを搭載した上で吸引を停止する。これにより,ボールは吸引治具から基板に転写され,その後に熱処理等が実施されることにより突起電極が形成される。
【0008】また,マスク吸引法は,予め突起電極の形成位置に対応する位置に孔が形成されマスクを用意し,このマスクの表面側を多数のボールが装填されたボール装填ボックス内に挿入すると共に,マスクの背面側を吸引装置により吸引処理する。これにより,マスクに形成された各孔内にはボールが装填される。
【0009】そして,ボールが吸引されたマスクをフラックスが塗布された基板上に移動させ,フラックス上にボールを搭載した上で吸引を停止する。これにより,ボールはマスクから基板に転写され,その後に熱処理等が実施されることにより突起電極が形成される。」
「【0012】一方,ボール搭載工程では,治具吸引法及びマスク吸引法ともに吸引処理によりボールを吸着する方法であるため,突起電極形成位置の全てにおいてボールを確実に吸引することは困難であり,ボールが吸着されない箇所が発生する(いわゆる,ボール抜け)が発生するおそれがあるという問題点があった。また,ボール搭載工程においても基板の種類が異なった場合,これに対応させて吸引治具やマスクを交換する必要があり,その位置合わせに時間を要すると共にコストが上昇してしまう。
【0013】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり,生産性よくかつ低コストに突起電極を形成しうる突起電極形成装置及び突起電極形成方法を提供することを目的とする。」

「【0028】また,従来ではボールの移動を防止するためにフラックスを多めに塗布しており,このため過剰のフラックスを洗浄する洗浄工程が必要とされていた。しかるに,本請求項に係る発明によれば,適量のフラックスを塗布することが可能となり,よって従来必要とされた洗浄工程を不要とすることができる。」

「【0031】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明の一実施例である突起電極形成装置1を示している。突起電極形成装置1は,大略するとボールセットドラム2,転写ドラム3,搬送装置4,フラックス塗布装置5,及びボール転写装置6等により構成されている。この突起電極形成装置1は,例えば半導体チップ等の基板10に対し突起電極11を形成するものである。
【0032】ボールセットドラム2は円筒形状を有しており,図示しない駆動装置により図中時計方向(矢印B1方向)に回転する構成とされている。このボールセットドラム2の外周にはボールトラップシート7が配設されており,ボールトラップシート7はボールセットドラム2と一体的に回転する構成とされている。このボールトラップシート7は,ボールセットドラム2に対して着脱可能な構成とされている。具体的には,ボールトラップシート7はボールセットドラム2に対し,ボールセットドラム2の軸方向より着脱可能な構成となっている。
【0033】更に,ボールセットドラム2の図中左側上部にはボール装填部8が配設されている。このボール装填部8の内部には,後に突起電極11となる多数のボール9(例えば,半田ボール)が装填されており,その下部に形成された開口はボールセットドラム2と対向するよう形成されている。従って,ボール9はボールセットドラム2の外周部,即ちボールトラップシート7と接触した状態となっている。
【0034】ここで,ボール装填部8の配設位置近傍(図中,矢印Aで示す部分)を図2に拡大して示す。同図に示されるように,ボールセットドラム2に配設されたボールトラップシート7にはボール9が装填されるボールトラップ部12が形成されている。ボールトラップシート7は例えばステンレス(SUS)により形成されており,ボールトラップ部12はこれをエッチングすることにより形成されている。
【0035】また,ボールトラップ部12は基板10に形成される突起電極11の既定形成位置と対応した位置に形成されており,かつ,一つのボールトラップ部12には1個のボール9のみが装填される構成とされている。従って,ボールセットドラム2の回転により,ボール装填部8に装填されているボール9は各ボールトラップ部12に装填される(ボールセット工程)。」
「【0037】また,前記のようにボールトラップ部12は突起電極11の既定形成位置に対応した位置に形成されているため,ボール9がボールトラップ部12に装填された時点で,各ボール9は突起電極11の既定形成位置に位置決めされ状態となる。よって,各ボール9の位置決めを容易かつ確実に行なうことができる。また,従来のようにボール9の吸着を必要としないため,ボール9のトラップを確実に行なうことができる。
【0038】一方,ボールセットドラム2と対峙する位置には,ボールセットドラム2と同様に円筒形状を有した転写ドラム3が配設されている。ボールセットドラム2とと転写ドラム3とは,互いの回転中心を結ぶ線上で当接しており(当接位置を矢印Cで示す),この当接位置Cにおいて図示しないテープ供給装置から供給される転写テープ13を押圧する構成とされている。尚,本実施例においては,転写ドラム3は図示しない駆動装置により図中反時計方向(矢印B2方向)に回転する構成とされている。しかるに,転写ドラム3は必ずしも回転させなくてもよいものである。
【0039】ここで,転写テープ13の構成を図3を用いて説明する。同図に示されるように,転写テープ13は図中下層より基材フィルム14,接着層15,離型フィルム16が3層に積層された構造とされている。基材フィルム14は例えばポリオレフィン等の紫外線を透過しうる樹脂により形成されており,その厚さは例えば約100μmとされている。また,接着層15はアクリル系紫外線硬化型接着剤であり,基材フィルム14上に例えば5~10μmの厚さで塗布されている。
【0040】また,離型フィルム16は接着層15上に添接されているが,接着層15に対して離型可能な材料が選定されている。この離型フィルム16は,接着層15が大気に触れることにより乾燥しないよう配設されるものであり,図1に示されるように,転写テープ13を各ドラム2,3の当接位置Cに送り込む前において剥離されるものである。
【0041】上記構成とされた転写テープ13は,基材フィルム14が転写ドラム3側に,接着層15がボールセットドラム2側に位置決めされた状態で各ドラム2,3の当接位置Cに送り込まれる。前記したように,ボールトラップシート7のボールトラップ部12にはボール9が装填されており,ボールセットドラム2のB1方向への回転に伴いボール9は当接位置Cに搬送される(搬送経路はボールセットドラム2の上部の位置するため,ボール9がボールトラップ部12から離脱することはない)。
【0042】そして,ボール9が当接位置Cに搬送された時点で,ボール9は転写テープ13に押圧され,接着層15により転写テープ13に接着される。これにより,ボール9はボールセットドラム2から転写テープ13に転写される(第1のボール転写工程)。」
「【0044】ボール9が転写された転写テープ13は,その後は転写ドラム3に沿って走行するよう構成されている。この時,転写テープ13は転写ドラム3の下部位置に向け走行することとなるが,各ボール9は接着層15に接着されているため,転写テープ13から離脱するようなことはない。また,転写テープ13の走行に伴いボール9が移動し,突起電極11の既定形成位置からずれてしまうようなこともない。
【0045】一方,突起電極11が形成される前の状態の基板10は,搬送装置4により転写ドラム3の下部位置に向け搬送される。この搬送装置4は,例えばベルトコンベアーにより構成されている。また,この搬送装置4により基板10が転写ドラム3の下部位置まで搬送される搬送途中位置には,フラックス塗布装置5が配設されている。
【0046】フラックス塗布装置5は,大略するとメタルマスク17とフラックサー18とにより構成されている。メタルマスク17は,突起電極11の形成位置に対応した位置に孔を有しており,搬送装置4により搬送されてくる基板10と対向する位置に配設されている。また,フラックサー18はメタルマスク17の上部に配設されており,メタルマスク17の孔を通し一定量のフラックス19を基板10に塗布するものである。
【0047】このように,メタルマスク17とフラックサー18とにより構成されるフラックス塗布装置5を用いて基板10に対しフラックス19を塗布する構成とすることにより,基板10に対するフラックス19の塗布位置及び塗布量を安定化することができる。従って,後述するボール9をフラックス19に転写する工程において,ボール9が基板10上で移動してしまうことを防止することができる。」
「【0051】一方,ボール9が転写ドラム3の下部位置まで移動して時点で,各ボール9は基板10と対向した状態となる。詳細には,各ボール9は基板10に塗布されたフラックス19と対向した状態となる。前記したように,各ボール9の転写位置及びフラックス19の塗布位置は既定の突起電極11の形成位置に位置決めされている。従って,ボール9とフラックス19とが対向した状態において,各ボール9の位置とフラックス19の位置とは高精度に一致した状態となっている。
【0052】また,転写ドラム3と搬送装置4との離間寸法は,ボール9とフラックス19とが対向した状態において,ボール9とフラックス19との間に所定の押圧力が印加される離間寸法に設定されている。従って,ボール9は相対的に基板10に向け押圧される。また,フラックス19は所定の接着力を有しており,紫外線を照射されることにより硬化した接着層15の接着力はフラックス19の接着力よりも弱くなる。このため,ボール9が基板10に向け押圧されることにより,ボール9は転写テープ13から基板10に転写され突起電極11が形成される(第2のボール転写工程)。」

「【0054】更に,前記したように本実施例ではフラックス塗布装置5を用いることにより,基板10に塗布されたフラックス19の塗布位置及び塗布量は安定している。このため,先に説明した従来必要とされた過剰のフラックスを洗浄する洗浄工程を不要とすることができ,よって突起電極形の簡単化を図ることができる。」

「
」
「
」

(イ)引用文献1の上記の記載に照らして,及び上記図1,図2から,以下の事項をみてとることができる。

a 引用文献1の図1,図2,「ボールトラップ部12は基板10に形成される突起電極11の既定形成位置と対応した位置に形成されており」(【0035】)という記載から,一の半導体チップ等の基板10においては,突起電極11が形成される既定形成位置は,基板の表面に複数存在し,相互間隔をおいて並ぶものであること,及び,ボールトラップ部12は複数存在することがみてとれる。

b 引用文献1の図2から,ボールトラップ部12はボールトラップシート7に対して,下に凸,つまり凹部状で形成されていることがみてとれる。

(ウ)上記記載から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 引用文献1に記載された技術は,突起電極(バンプ)となるボールを基板に転写することにより突起電極を複数形成する突起電極形成方法に関するものであること(【0001】,【0002】,図1,図2)。

b 従来,半導体チップ等の基板に突起電極を形成する方法として,先ず基板に対してフラックスを塗布するフラックス塗布工程を実施し,続いてフラックスが塗布された基板に対しボールを搭載するボール搭載工程を実施する方法が一般に用いられているところ(【0004】),前記ボール搭載工程の具体的方法としては,予め突起電極の形成位置に対応する位置に孔が形成されたマスクを用意し,このマスクの表面側を多数のボールが装填されたボール装填ボックス内に挿入すると共に,マスクの背面側を吸引装置により吸引処理し,これにより,マスクに形成された各孔内にボールを装填し,ボールが吸引されたマスクをフラックスが塗布された基板上に移動させ,フラックス上にボールを搭載した上で吸引を停止し,これにより,ボールをマスクから基板に転写し,その後に熱処理等を実施することにより突起電極を形成するという,マスクを用いたマスク吸引法が知られていたこと(【0006】-【0009】)。

c しかるに,上記した従来の突起電極の形成方法では,ボール搭載工程が,吸引処理によりボールを吸着する方法であるため,突起電極形成位置の全てにおいてボールを確実に吸引することは困難であり,ボールが吸着されない箇所が発生する(いわゆる,ボール抜け)が発生するおそれがあるという課題があったこと(【0012】)。

d 引用文献1に記載された技術は,上記の点に鑑みてなされたものであり,生産性よくかつ低コストに突起電極を形成しうる突起電極形成方法を提供することを目的とするものであること(【0013】)。

e 従来ではボールの移動を防止するためにフラックスを多めに塗布しており,このため過剰のフラックスを洗浄する洗浄工程が必要とされていたところ,引用文献1に記載された技術によれば,適量のフラックスを塗布することが可能となり,よって従来必要とされた洗浄工程を不要とすることができたこと(【0028】,【0054】)。

f 半導体チップ等の基板10においては,突起電極11が形成される既定形成位置は,基板の表面に,複数存在し,相互間隔をおいて並ぶものであること(図1)。

g 引用文献1に発明の実施の形態として記載された突起電極形成方法は,

ボールセットドラム2の回転により,ボール装填部8に装填されているボール9を各ボールトラップ部12に装填するボールセット工程(【0035】)と,

ボール9が転写テープ13に押圧され,接着層15により転写テープ13に接着され,これにより,ボール9はボールセットドラム2から転写テープ13に転写される第1のボール転写工程(【0042】)と,

突起電極11の形成位置に対応した位置に孔を有するメタルマスク17の孔を通し,搬送装置4により搬送されてくる基板10に対し,メタルマスク17の上部に配設されたフラックサー18から,一定量のフラックス19を塗布する工程(【0046】)と,

ボール9は転写ドラム3の下部位置まで移動し,各ボール9は基板10と対向した状態となり,各ボール9が基板10に塗布された所定の接着力を有するフラックス19と対向した状態において,ボール9は相対的に基板10に向け押圧され,ボール9は転写テープ13から基板10に転写され突起電極11が形成される第2のボール転写工程(【0051】,【0052】)とを有すること。

h 突起電極11は,ボール9がメタルマスク17から基板10に転写された後に熱処理等が実施されることにより形成される(【0009】)こと。

i ボール9は,例えば,半田ボールである(【0033】)こと。

j 前記ボールトラップ部12は,ボールセットドラム2に配設された,例えばステンレス(SUS)により形成されたボールトラップシート7をエッチングすることにより凹部状で形成(【0034】,図2)されており,

当該ボールトラップ部12は基板10の表面に複数存在し,相互間隔をおいて並ぶ突起電極11の既定形成位置と対応した位置に形成(【0035】,図1,図2)されていること。

k ボールトラップ部12は突起電極11の既定形成位置に対応した位置に形成されているため,ボール9がボールトラップ部12に装填された時点で,各ボール9は突起電極11の既定形成位置に位置決めされた状態となることから,各ボール9の位置決めを容易かつ確実に行なうことができ,また,従来のようにボール9の吸着を必要としないため,ボール9のトラップを確実に行なうことができる(【0037】)こと。

l 前記転写テープ13は,基材フィルム14が転写ドラム3側に,接着層15がボールセットドラム2側に位置決めされた状態でボールセットドラム2と転写ドラム33の当接位置Cに送り込まれる(【0041】)こと。

m 転写ドラム3は駆動装置により回転する構成とされている(【0038】)こと。

n フラックス19を塗布する工程は,基板10に,フラックス19の塗布位置及び塗布量を安定して塗布するものであり,このため,従来必要とされた過剰のフラックスを洗浄する洗浄工程を不要とすることができ,よって突起電極形の簡単化を図ることができる(【0054】)こと。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「突起電極(バンプ)となるボールを半導体チップ等の基板に転写することにより複数の突起電極(バンプ)を形成する突起電極形成方法であって,
(a)ボールセットドラムの回転により,ボール装填部に装填されているボールを各ボールトラップ部に装填するボールセット工程であって,
前記ボールは,半田ボールであり,
前記ボールトラップ部は,ボールセットドラムに配設された,ステンレス(SUS)により形成されたボールトラップシートをエッチングすることにより凹部状で形成されており,当該ボールトラップ部は基板の表面に複数存在し,相互間隔をおいて並ぶ突起電極(バンプ)の既定形成位置と対応した位置に形成されているボールセット工程と,
続きを表示(全13行)
(b)ボールが転写テープに押圧され,接着層により転写テープに接着され,これにより,ボールはボールセットドラムから転写テープに転写される第1のボール転写工程であって,
前記転写テープは,基材フィルムが転写ドラム側に,接着層がボールセットドラム側に位置決めされた状態でボールセットドラムと転写ドラムの当接位置に送り込まれ,前記転写ドラムは駆動装置により回転する構成とされている第1のボール転写工程と,
(c)突起電極(バンプ)の形成位置に対応した位置に孔を有するメタルマスクの孔を通し,搬送装置により搬送されてくる基板に対し,メタルマスクの上部に配設されたフラックサーから,一定量のフラックスを塗布する工程と,
(d)ボールは転写ドラムの下部位置まで移動し,各ボールは基板と対向した状態となり,各ボールが基板に塗布された所定の接着力を有するフラックスと対向した状態において,ボールは相対的に基板に向け押圧され,ボールは転写テープから基板に転写する第2のボール転写工程と,
(e)その後に熱処理等が実施されることにより突起電極(バンプ)を形成する工程と,
を有する,
ボールのトラップを確実に行なうことができ,
従来必要とされた過剰のフラックスを洗浄する洗浄工程を不要とした,
突起電極(バンプ)となるボールを基板に転写することにより複数の突起電極(バンプ)を形成する突起電極形成方法。」

(3)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「ボール」は,「半田ボール」であり,半田ボールに熱処理等を実施して得られた突起電極(バンプ)が,はんだバンプであることは明らかである。

したがって,引用発明の「ボール」,「突起電極(バンプ)」は,それぞれ,本件補正発明の「はんだボール」,「はんだバンプ」に相当する。

(イ)引用発明の「ステンレス(SUS)により形成されたボールトラップシート」,「『ボールトラップシートをエッチングすることにより凹部状で形成され』た『ボールトラップ部』」は,それぞれ,本件補正発明の「位置決め板」,「凹部」に相当する。

(ウ)引用発明の「基板の表面に複数存在し,相互間隔をおいて並ぶ突起電極(バンプ)の既定形成位置」と,本件補正発明の「基板の表面に相互間隔をおいて並べられた複数の電極部」とは,「基板の表面に相互間隔をおいて並べられた複数のバンプの既定形成位置」である点で一致する。

そうすると,引用発明の「基板の表面に複数存在し,相互間隔をおいて並ぶ突起電極(バンプ)の既定形成位置と対応」と,本件補正発明の「基板の前記電極部の相互間隔に対応」とは,「基板のはんだバンプの既定形成位置の相互間隔に対応」である点で一致する。

(エ)したがって,引用発明の「ボールセット工程」と,本件補正発明の「はんだボール配列工程」とは,以下の相違点を除き「はんだボール配列工程」である点で一致する。

(オ)引用発明の「『基材フィルムが転写ドラム側に,接着層がボールセットドラム側に位置決めされた』『転写ドラム』」は,本件補正発明の「外周面が粘着面に形成された転写ロール」に相当する。

そして,引用発明は,当該「転写ドラム」が「駆動装置により回転する」ことにより,ボールトラップ部に装填されたボールを,前記接着層により転写テープに接着するのであるから,引用発明の「第1のボール転写工程」は,本件補正発明の「外周面が粘着面に形成された転写ロールを前記位置決め板の表面で転動しながら前記凹部内のはんだボールを前記粘着面に接着させ」る段階に相当する。

(カ)引用発明の「フラックス」は,「所定の接着力を有する」のであるから,「粘着材」の一種といえる。

そうすると,引用発明の「突起電極(バンプ)の形成位置に対応した位置に孔を有するメタルマスクの孔を通し,搬送装置により搬送されてくる基板に対し,メタルマスクの上部に配設されたフラックサーから,一定量のフラックスを塗布する工程」と,本件補正発明の「その後,前記基板の前記電極部表面に粘着材を層状に設けておき」とは,「その後,前記基板の表面に粘着材を設けてお」く段階である点で一致する。

(キ)したがって,引用発明の「第2のボール転写工程」と,本件補正発明の「はんだボール移載工程」は,以下の相違点を除き,「はんだボール移載工程」である点で一致する。

(ク)引用発明の「その後に熱処理等が実施されることにより突起電極(バンプ)を形成する工程」と,本件補正発明の「前記基板の電極部上のはんだボールを加熱溶融させて,前記粘着材を分解消失させるとともに,はんだバンプを形成する熱処理工程」とは,「基板のはんだバンプの既定形成位置上のはんだボールを加熱溶融させてはんだバンプを形成する熱処理工程」である点で一致する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>

「基板の表面に相互間隔をおいて並べられた複数のはんだバンプの既定形成位置の上にはんだバンプを形成する方法であって,
前記基板の前記はんだバンプの既定形成位置の相互間隔に対応して複数の凹部を形成した位置決め板の各凹部内にはんだボールを配置するはんだボール配列工程と,
外周面が粘着面に形成された転写ロールを前記位置決め板の表面で転動しながら前記凹部内のはんだボールを前記粘着面に接着させ,
その後,前記基板の前記はんだバンプの既定形成位置に粘着材を設けておき,
前記転写ロールを前記基板の上で転動させることにより前記粘着面に接着させたはんだボールを前記基板の前記粘着材に接触させて前記はんだバンプの既定形成位置に接着するはんだボール移載工程と,
前記基板のはんだバンプの既定形成位置上のはんだボールを加熱溶融させてはんだバンプを形成する熱処理工程と
を有するはんだバンプの形成方法。」

<相違点>

(相違点1)

本件補正発明は,はんだバンプを,基板の表面の「電極部」の上に形成するものであるのに対し,引用発明では,そのような特定がされていない点。

(相違点2)

本件補正発明は,粘着材が「層状」に設けられるのに対し,引用発明では,フラックスは,突起電極(バンプ)の形成位置に対応した位置に孔を有するメタルマスクの孔を通し,搬送装置により搬送されてくる基板に対し,メタルマスクの上部に配設されたフラックサーからの一定量の塗布によって設けられるものである点。

(相違点3)

本件補正発明は,はんだボールの加熱溶融の際に粘着材が「分解消失」するのに対して,引用発明では,そのような特定がされていない点。

(4)判断

以下,相違点について検討する。

ア 相違点1について

半導体チップ等の基板に,はんだボールを供給し,その後,熱処理等を実施することで突起電極(バンプ)を形成するにあたり,当該突起電極(バンプ)が,前記半導体チップ等に形成された回路に電気的に接続されたものであることは自明である。

すなわち,引用発明の突起電極(バンプ)の既定形成位置が,半導体チップ等の基板の表面に形成された電気回路の突起電極(バンプ)領域,すなわち,電極部であることは,技術常識に照らして当業者に明らかである。

したがって,相違点1は,実質的なものではない。

イ 相違点2について

フラックスを,メタルマスクの孔を通し,基板に対し,メタルマスクの上部に配設されたフラックサーからの一定量の塗布によって配置した場合,基板の表面には,表面視で,前記メタルマスクの孔の形状を有し,前記一定量によって特定される所定の厚さのフラックスが,層状に形成されることは,技術常識に照らして当業者に明らかである。

したがって,相違点2は,実質的なものではない。

なお,請求人は,審判請求書において,「これに対して,引用文献1では,基板にフラックスを塗布した後に,そのフラックスにはんだボールを載せています。しかも,図1に示されるように,フラックサー18によって基板10上に液状のフラックスをスプレー状に塗布しています。このため,基板に塗布されたフラックスの上にはんだボールを載置すると,液状のフラックスにはんだボールの下端部が沈み込み,はんだボールの球面の下部が広い範囲でフラックスに面状に接触します。この状態ではんだボールを溶融するため加熱すると,フラックスが熱により焼失するとしても,はんだボールと面状に接触していた部分では,その接触部分から外に逃げられないために,溶融したはんだ内にガス分等が閉じ込められてしまい,ボイドとして残存する現象が生じます。このように,本願発明は,引用文献1記載の発明とは技術構成が異なり,その作用効果も引用文献1記載の発明と比べて顕著なものであります。」と主張する。

しかしながら,本件補正発明は,「方法」の発明であって,当該発明は,「その後,前記基板の前記電極部表面に粘着材を層状に設けておき」という事項,すなわち,基板の電極部表面に粘着材を設けた時点における当該粘着材の形状・態様が「層状」であることを特定するだけであって,はんだボールを載せた時点における粘着材の形状・態様を特定するものではない。

そして,上記のとおり,引用発明においても,メタルマスクの上部に配設されたフラックサーからの一定量の塗布を行った時点においては,フラックスの形状・態様は「層状」であるといえる。

したがって,請求人の前記主張は,請求項で特定される発明の記載に基づかない主張であるから採用することはできない。

ウ 相違点3について

引用発明は,従来必要とされた過剰のフラックスを洗浄する洗浄工程を不要とすることで,突起電極形成の簡単化を図った発明である。

一方,フラックスの洗浄工程を不要とするために,はんだのリフロー等による熱処理技術により,分解消失するフラックスを使用することは,例えば,周知文献1-6にあるように,当該技術分野の周知技術である。

してみれば,洗浄工程を不要とすることが望まれている引用発明において,フラックスの洗浄工程を不要とする上記周知の熱処理技術により,分解消失するフラックスを使用することは当業者が容易に想到し得たことである。

したがって,引用発明において,周知技術に基づいて,本件補正発明の相違点3に係る構成を採用することは,当業者が容易になし得たことである。

・周知文献1

原査定に引用され,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「特開平7-58447号公報」(以下「周知文献1」という。)には,次の記載がある。

「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電子部品の実装方法は,上記目的を達成するために,回路基板上の全面に半田層を形成した後,回路パターン上の電子部品との接続領域の半田層を残し,それ以外の部分の半田層をエッチング処理により剥離し,次いで,その回路パターン上の接続領域に所定の電子部品を載置し,さらに,加熱処理してその電子部品をその回路パターンに溶着させることを特徴としている。また,前記回路パターン上の半田層部には,粘着性フラックスが塗布されていることを特徴としている。そして,その粘着性フラックスは,溶着後,洗浄を必要としない無洗浄型,又は昇華型であることを特徴としている。」

「【0026】粘着性フラックスが昇華型であれば,加熱処理時に消失できる。また,無洗浄型であれば,フラックス残渣が残存していても電子部品Eの電気的特性や信頼性に悪影響を与えない。いずれも,加熱処理後の洗浄工程を省略することができる。」

・周知文献2

同じく原査定に引用され,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「特開2002-222824号公報」(以下「周知文献2」という。)には,次の記載がある。

「【0013】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置を示す断面図である。半導体チップ21の表面に複数のパッド22が形成されており,このパッド22に接続する金線等のワイヤ23がチップ表面に対して垂直になるように立設されている。半導体チップ21の表面は薄い樹脂層24aにより被覆されていると共に,ワイヤ23の周囲も薄い樹脂層24bにより被覆されている。そして,ワイヤ23はこれを被覆する樹脂層24bと共に,ワイヤ23を中心とする同軸体を構成し,この同軸体の上端面は平坦になるように研削又は切断されていて,この同軸体の上端面でワイヤ23が露出している。この同軸体の上端面には,ワイヤ23の上端に接触するようにしてはんだボール26が固定されており,はんだボール26と前記同軸体との間の隙間は,樹脂25により埋められて,はんだボール26のワイヤ23に対する接合力が樹脂25により補強されている。樹脂25は樹脂入りフラックスに含有されていたものであり,この樹脂入りフラックスを塗布してはんだボール26をワイヤ23に接合したときに,フラックス成分がリフローにより消失し,樹脂のみがはんだボール26の周囲に残存して形成されたものである。」

・周知文献3

同じく原査定に引用され,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「特開平11-186454号公報」(以下「周知文献3」という。)には,次の記載がある。

「【0031】クリームはんだ84,86はリフローすることにより,これに含まれたフラックス成分が消失するからその容積が減少する。この減少量を考慮し,また端子接続用はんだバンプ68の先端が半球状であることを考慮すると,端子接続用はんだバンプ68とクリームはんだ84の容積により接続されるパッド58と80の理想的な間隔cは,ほぼc=a+(b×0.5)により求めることができる。」

・周知文献4

本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「国際公開2012-118076号公報」(以下「周知文献4」という。)には,次の記載がある。

「[0002]  一般的に,はんだ付けに用いられるフラックスは,はんだが溶解する温度にて,はんだ及びはんだ付け対象の金属表面に存在する金属酸化物を化学的に除去し,両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持ち,フラックスを使用することで,はんだとはんだ付け対象の金属表面との間に金属間化合物を形成させて,強固な接合が得られるようになる。」

「[0007]  その際,はんだ付け部にはんだ付け後のフラックス残渣があると,フラックス残渣と樹脂コート材との相性によっては,樹脂コート材とフラックス残渣が混ざって樹脂コート材の硬化阻害が起こり,樹脂コート材とフラックス残渣との境界で樹脂コート材の硬化が不十分になることがある。樹脂コート材の硬化が不十分なままで放置されると,電極間の絶縁抵抗が劣化する等の問題が露呈し,はんだ付け後の信頼性に悪影響を与える。
[0008]  この解決策として,従来は樹脂コート材とフラックス残渣の相性を確認して,最適な組み合わせを検討するか,もしくは樹脂の硬化を阻害するフラックス残渣を洗浄除去する方法が取られてきた。しかし,これらの解決策は,何れもコストと時間を要するものとなっている。
[0009]  そこで,はんだ付け後に実質的に無残渣となる成分のフラックスが混合されたソルダペーストが提案されている(例えば,特許文献1参照)。」
「発明が解決しようとする課題
[0011]  はんだ付け後の基板を洗浄せずに樹脂コートを行う場合,フラックス残渣との境界付近で樹脂材料の硬化阻害を起こさせないためには,はんだ付け後のフラックス残渣の残留量をゼロにする必要がある。しかし,ソルダペーストに使用される従来のフラックスの成分では,はんだ粉末とフラックスを混合した時に起こるはんだ粉末の沈降を抑制するチキソ剤が,加熱時に分解しないために,はんだ付け後の無残渣を実現することができなかった。」
「発明の効果
[0018]  本発明のフラックスでは,はんだ粉末と混合してソルダペーストを生成すると,はんだ粉末の沈降を防止することができる。また,はんだ付け時の加熱で分解してフラックス残渣が残留せず,無残渣を実現することができる。更に,はんだ付け性を阻害しない。」

「[0021]  ポリアルキルメタクリレートは,はんだ付け時の加熱温度で分解して蒸発する。これにより,ポリアルキルメタクリレートが添加されたフラックスと,はんだ粉末が混合されたソルダペーストでは,リフロー炉でのはんだ付け時の加熱過程で,ポリアルキルメタクリレートが分解することで,はんだ付け後にはフラックスが実質的に残らず無残渣となる。」

・周知文献5

本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「特開2009-248114号公報」(以下「周知文献5」という。)には,次の記載がある。

「【0001】
この発明ははんだ用フラックスに関する。特に部品の仮固定性能が高く,かつチップ接続後の残渣が少ないはんだ用フラックスに関する。」
「【0004】
このようなはんだ付け用フラックスは,チップが基板上に置かれる時に,チップを正しい位置に保持するための一時的な仮止めの接着剤としても機能する。このような基板上にチップが置かれたアセンブリーがリフロー工程で加熱されると,まずフラックスが活性化され,その後はんだが溶融し,チップが基板に接続される。チップ接続作業が完結すると,洗浄溶剤によりフラックス残渣は洗浄除去され,次にアセンブリーは電気試験に供される。」
「【0008】
特許文献3~4のフラックスでは,α-メチルスチレン共重合体を使用している。共重合体を使用した場合,リフロー工程で共重合体は十分には分解しないため,洗浄溶剤によるフラックス残渣の洗浄除去が必要であるという課題があった。
特許文献5のフラックスでは,α-メチルスチレン重合体の数平均分子量が1000未満であり,仮止め機能が十分でないという課題があった。」
「【0010】
上記課題を解決するため,本発明者等は種々の高分子材料を研究した。その結果,フラックス組成物の一成分として特定の成分を含有せしめたときに,仮止め機能が高く,高温下では分解揮発するという効果があることを見出し,本発明に至ったものである。」
「【発明の効果】
【0012】
本発明のはんだ用フラックスは,仮止め機能が高く,高温下では分解揮発するという効果を有する。」

「【0013】以下,本発明のはんだ用フラックスについて詳細に説明する。 本発明のフラックスはα-アルキル置換スチレン単独重合体を含有するものである。α-アルキル置換スチレン単独重合体に,更にロジン,溶剤,活性剤,増粘剤(チキソ剤)等を含有していてもよい。α-アルキル置換スチレン単独重合体を含有することにより,本発明のフラックスは仮止め機能が極めて高くなり,チップが基板上で位置ズレすることなく,リフロー工程に入ることができる。さらにリフロー工程における高温下ではα-アルキル置換スチレン単独重合体は単量体にまで分解し,これが揮発するので,本発明のフラックス残渣は極めて少量となり,洗浄溶剤等によってフラックス残渣を洗浄除去する必要がなくなる。」

「【0049】
本発明は,チップが基板上に置かれたときの一時的な仮止め機能が高く,チップを正しい位置に保持して,リフロー工程に基板が入る前にチップが位置ズレを起こすことがなく,かつリフロー工程ではフラックス残渣が分解揮発することで,洗浄溶剤によるフラックス残渣の洗浄除去の必要のないフラックスを提供することを目的とする。
【0050】
上記目的を達成するため,本発明者等はチップを正しい位置に保持する仮止め接着性を十分に発揮でき,かつリフロー工程では分解揮発して残渣にならないような添加物として種々の高分子材料を研究した結果,α-アルキル置換スチレン系単独重合体をフラックス組成物の一成分として含有せしめたときに,仮止め機能が極めて高いため,チップが位置ズレすることなくリフロー工程を完結させられるとともに,リフロー工程の高温下では分解揮発することでフラックス残渣が極めて少なくなり,結果,洗浄溶剤によってフラックス残渣を洗浄除去する必要がないことを見出した。
【0051】
本発明のはんだ用フラックスによれば,α-アルキル置換スチレン単独重合体を含有することにより,仮止め機能が極めて高いため,チップが位置ズレすることなくリフロー工程を完結させられるとともに,リフロー工程の高温下では分解揮発するため,フラックス残渣が極めて少なくなり,結果,洗浄溶剤によってフラックス残渣を洗浄除去する必要がない。」

・周知文献6

本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「特開平7-202401号公報」(以下「周知文献6」という。)には,次の記載がある。

「【0028】この状態においてレーザ付きツール22を下降させることにより,ボールはんだ26を基板ランド30に接触させた後,駆動装置21による制御に基づきスクリーン25の吸引孔27におけるボールはんだ26の吸着を解くようにする。このとき基板ランド30の表面に塗布されているフラツクス31が粘着性を有することから,ボールはんだ26を基板ランド30上に一時的に固定することができる。
【0029】その後,レーザの加熱制御手段(図示せず)によつてレーザ付きツール22のレーザ光を吸着治具24を介して放射してボールはんだ26を加熱溶融することにより,ボールはんだ26を基板ランド30に接合することができる(図4(B))。
【0030】その際,フラツクス31は熱分解されて気化し,プリント配線板29及び基板ランド30の表面上から蒸発する。その後,レーザ光の放射を停止することにより,ボールはんだ26を凝固させ,さらにレーザ付きツール22を上昇移動させることにより,基板ランド30へのはんだプリコートの形成を終了する(図4(C))。」

エ 本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

オ してみると,引用発明及び周知技術に基づいて,相違点1ないし相違点3に係る本件補正発明の構成に想到することは,当業者が容易になし得たことである。

カ したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正発明についてのむすび

よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和2年2月27日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和元年7月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし3に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし5に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1.特開平10-116833号公報

引用文献2.特開平7-249631号公報

引用文献3.特開平7-58447号公報

引用文献4.特開2002-222824号公報

引用文献5.特開平11-186454号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「粘着剤」について,「層状に」設けられる旨の限定を削除したものある。

そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

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2020-002602

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