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特許拒絶査定不服審判

2020-002261

R-T-B系希土類磁石粉末の製造方法、R-T-B系希土類磁石粉末、及びボンド磁石

審判番号
2020-002261
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-014044外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年02月19日
審決日
2021年02月10日
公報発行日
2021年05月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H01F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

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特願2016- 14044「R-T-B系希土類磁石粉末の製造方法、R-T-B系希土類磁石粉末、及びボンド磁石」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日出願公開、特開2017- 41624〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 7項目
【理 由】

1.手続の経緯

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本願は、平成28年1月28日(優先権主張 平成27年1月29日 平成27年8月24日)の出願であって、令和1年7月11日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年8月29日に手続補正がなされたが、同年11月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和2年2月19日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされ、当審の同年9月15日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年11月27日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和2年11月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
HDDR処理によってR-T-B系希土類磁石粉末を得る製造方法において、その原料合金が、R(R:Yを含む一種以上の希土類元素)、T(T:Fe、またはFe及びCo)、B(B:ホウ素)を含み、該原料合金の組成はR量が12.0at.%以上17.0at.%以下であり、B量が4.5at.%以上7.5at.%以下であり、しかも、Rとして少なくともNdとPrとを含み、PrをRのうち10.0at.%以上85.0at.%以下含み、HDDR処理のDR工程が予備排気工程と完全排気工程とを有し、予備排気工程での排気による減圧速度が1kPa/min以上6.5kPa/min以下であることを特徴とするR-T-B系希土類磁石粉末の製造方法。 」

3.拒絶の理由の概要

本願の請求項1に対して令和2年9月15日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。

本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2010-255098号公報

4.引用文献の記載および引用発明

引用文献1には、「希土類合金粉末及びその製造方法」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。

(1)「【0018】
本実施形態の希土類合金粉末の製造方法は、いわゆる水素化分解・脱水素再結合法(HDDR法)による希土類合金粉末の製造方法である。この製造方法は、希土類元素の含有量がρ(質量%)である原料合金を準備し、当該合金を、水素雰囲気中、温度T0で所定時間保持する水素吸蔵工程と、温度T0よりも高い温度T1で水素化分解させて水素濃度η1(質量%)の分解生成物を得る水素化分解工程と、温度T1から温度T1よりも高い温度T2に昇温する昇温工程と、温度T2で、分解生成物から水素を所定の速度で放出させて、分解生成物の水素濃度をη1(質量%)から上記式(1)を満足するη2(質量%)まで低減する第1の脱水素再結合工程と、第1の脱水素再結合工程よりも分解生成物からの水素の放出速度を小さくして、分解生成物の水素濃度ηをさらに低減し、水素を実質的に含まない希土類合金粉末を得る第2の脱水素再結合工程と、希土類合金粉末を室温にまで冷却する冷却工程とを有する。 」
(2)「【0051】
本実施形態の希土類合金粉末は、上述した特定の製造方法によって得ることができる。本実施形態の希土類合金粉末は、希土類合金(R-Fe-B系合金)を主成分(例えば、全体の99質量%以上)とする一次粒子を含んでいる。この希土類合金粉末は、従来の希土類合金粉末に比べて、一次粒子の内部に存在する主成分とは異なる物質である偏析物の数が十分に低減されている。具体的には、一次粒子10の断面における単位面積当たりの偏析物の個数が平均で4個/μm2以下である。このように偏析物の数及び量が十分に低減されているため、逆磁区の発生を抑制することが可能となり、優れた保磁力を有する。
【0052】
一層優れた磁気特性を有する希土類合金粉末とする観点から、希土類合金粉末の主成分であるR-Fe-B系合金の組成は、R:25~35質量%、B:1~1.4質量%、Fe:65.6~72質量%であることが好ましい。Rとしては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Luから選ばれる1種または2種以上とすることができる。このうち、製造コスト及び磁気特性の観点から、RはNdを含むことが好ましい。 」
(3)「【0063】
(実施例1)
ストリップキャスト法によって、以下の組成を有するNd2Fe14B原料合金を調製した。
【0064】
続きを表示(全25行)
Nd:28.00質量%
Fe:70.01質量%
B:1.08質量%
Ga:0.36質量%
Nb:0.30質量%
【0065】
この原料合金は、上述の元素の他に、微量の不可避不純物(原料合金全体の0.2~0.3質量%)を含んでいた。この原料合金を、真空中、1000~1200℃の温度範囲で24時間保持した(均質化熱処理工程)。均質化熱処理後のNd2Fe14B原料合金を、スタンプミルを用いて粉砕し、篩分けを行って、粉末状(粒径1~2mm)の原料合金を得た。
【0066】
この原料合金を、モリブテン製の容器に充填し、赤外線加熱方式を有する管状熱処理炉に装填し、以下の条件で水素化分解・脱水素再結合法による処理(HDDR処理)を施した。なお、当該処理のタイムチャートは図1に示すとおりであった。
【0067】
まず、管状熱処理炉内に水素ガスを導入し、水素ガス雰囲気下、水素分圧100kPa、温度(T0)100℃の条件で原料合金粉末を2時間保持する水素吸蔵工程(図1中のI)を行った。これによって、原料合金に水素を吸蔵させて、水素吸蔵合金を得た。
【0068】
続いて、炉内の水素分圧を下げるとともに炉内温度を10℃/分で昇温し、水素吸蔵合金を、水素分圧40kPa、温度T1(=800℃)の条件で1.5時間保持する水素化分解工程を行った(図1中のII)。これによって、水素吸蔵合金を水素化分解させて分解生成物を得た。
【0069】
その後、炉内温度を10℃/分で温度T2(=850℃)まで昇温した(昇温工程、図1中のIII)。炉内温度をT2まで昇温した後、真空ポンプを用いて水素ガスを排気し、炉内の圧力(水素分圧)を4kPa/分の速度で下げることによって、分解生成物に含まれる水素の放出を開始した(第1の脱水素再結合工程、図1中のIV)。
【0070】
第1の脱水素再結合工程では、分解生成物から、水素を放出させる前の分解生成物全体の質量を基準として、1.33質量%/分の水素放出速度aで水素を放出させて、分解生成物中の水素濃度を、表1の水素濃度η2にまで低減した。
【0071】
分解生成物中の水素濃度が表1の水素濃度η2にまで下がったら、炉内からの水素ガスの排気速度を変更して、炉内圧力(水素分圧)の降下速度を0.1kPa/分とした。これによって、分解生成物からの水素放出速度bを、水素を放出させる前の分解生成物全体の質量を基準として0.35質量%/分に調整した。その後、炉内の圧力(=水素分圧)が1Pa未満になるまで、水素の放出を継続して行うことにより、分解生成物から水素をほぼ完全に除去した(第2の脱水素再結合工程、図1中のV)。なお、第1の脱水素再結合工程に所要した時間は約10分間であり、第2の脱水素再結合工程に所要した時間は40~50分間であった。
【0072】
炉内の圧力(水素分圧)が1Pa未満となった時点で、水素の放出を停止した。その後、炉内を室温(約20℃)まで冷却し、HDDR処理された異方性のNd2Fe14B粉末を得た。 」

上記(1)ないし(3)から以下のことがいえる。

・引用文献1に記載の「希土類合金粉末及びその製造方法」のうちの「希土類合金粉末の製造方法」は、上記(1)、(2)の記載事項によれば、水素化分解・脱水素再結合法による処理(HDDR処理)による希土類合金粉末の製造方法に関するものであり、水素化分解工程と、第1の脱水素再結合工程及び第2の脱水素再結合工程とを有する。

・上記(1)、(3)の記載事項によれば、第1の脱水素再結合工程は水素化分解工程で得た分解生成物から水素を所定の放出速度で放出させる工程であり、実施例1では、当該第1の脱水素再結合工程において、炉内の圧力(水素分圧)を「4kPa/分」の速度で下げてなるものである。そして、第2の脱水素再結合工程は水素の排気速度を第1の脱水素再結合工程よりも小さい「0.1kPa/分」とし、炉内の圧力(水素分圧)が1Pa未満になるまで水素の放出を継続して行う工程である。

・上記(2)、(3)の記載事項によれば、上記希土類合金はR-Fe-B系希土類合金であり、実施例1では、Nd2Fe14B原料合金が用いられ、その組成は、Nd:28.00質量%、Fe:70.01質量%、B:1.08質量%、Ga:0.36質量%、Nb:0.30質量%、他は不可避不純物である。

以上のことから、実施例1に係る製造方法に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「水素化分解・脱水素再結合法による処理(HDDR処理)によるR-Fe-B系希土類合金粉末の製造方法であって、
Nd2Fe14B原料合金が用いられ、その組成は、Nd:28.00質量%、Fe:70.01質量%、B:1.08質量%、Ga:0.36質量%、Nb:0.30質量%、他は不可避不純物であり、
前記水素化分解・脱水素再結合法による処理(HDDR処理)は、水素化分解工程と、第1の脱水素再結合工程及び第2の脱水素再結合工程とを有し、前記第1の脱水素再結合工程は、前記水素化分解工程で得た分解生成物から水素を所定の放出速度で放出させる工程であって、炉内の圧力(水素分圧)を4kPa/分の速度で下げてなるものであり、前記第2の脱水素再結合工程は、水素の排気速度を前記第1の脱水素再結合工程よりも小さい0.1kPa/分とし、炉内の圧力(水素分圧)が1Pa未満になるまで水素の放出を継続して行う工程である、R-Fe-B系希土類合金粉末の製造方法。」

5.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明における「水素化分解・脱水素再結合法による処理(HDDR処理)」は、本願発明でいう「HDDR処理」に相当する。

そして、引用発明における「第2の脱水素再結合工程」は、炉内の圧力(水素分圧)が1Pa未満になるまで水素の放出を継続して行う工程であり、本願発明でいう「完全排気工程」に相当するといえ、引用発明における「第1の脱水素再結合工程」は、第2の脱水素再結合工程の前に行われる水素の放出工程であることから、本願発明でいう「予備排出工程」に相当するといえるものである。よって、引用発明の水素化分解・脱水素再結合法による処理(HDDR処理)が有する「第1の脱水素再結合工程及び第2の脱水素再結合工程」が、本願発明でいう「DR工程」に相当する。

ここで、引用発明における「第1の脱水素再結合工程」では、炉内の圧力(水素分圧)を「4kPa/分」の速度で下げてなるものであり、本願発明で特定する予備排気工程での排気による減圧速度が「1kPa/min以上6.5kPa/min以下」の条件(範囲)を満たす。

(2)引用発明における「Nd2Fe14B原料合金」の組成のうちの「Nd」、「Fe」、「B」は、それぞれ本願発明でいう「R(R:Yを含む一種以上の希土類元素)」であって「Rとして少なくともNd」を含むもの、「T(T:Fe、またはFe及びCo)」、「B(B:ホウ素)」に相当する。

そして、引用発明では「Nd:28.00質量%」、「B:1.08質量%」であり、これをat%に換算すると、それぞれおよそ「Nd:12.5at%」、「B:6.4at%」となり、それぞれ本願発明で特定する「R量が12.0at%以上17.0at%以下」、「B量が4.5at%以上7.5at%以下」の条件(範囲)を満たす。

ただし、原料合金の組成のうちのRについて、本願発明では、Ndに加えて「Pr」も含み、「PrをRのうち10.0at.%以上85.0at.%以下」含む旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違する。

(3)そして、引用発明における「R-Fe-B系希土類合金粉末の製造方法」は、本願発明でいう「R-T-B系希土類磁石粉末の製造方法」に相当するものである。

よって、上記(1)ないし(3)により本願発明と引用発明とは、

「HDDR処理によってR-T-B系希土類磁石粉末を得る製造方法において、その原料合金が、R(R:Yを含む一種以上の希土類元素)、T(T:Fe、またはFe及びCo)、B(B:ホウ素)を含み、該原料合金の組成はR量が12.0at.%以上17.0at.%以下であり、B量が4.5at.%以上7.5at.%以下であり、しかも、Rとして少なくともNdを含み、HDDR処理のDR工程が予備排気工程と完全排気工程とを有し、予備排気工程での排気による減圧速度が1kPa/min以上6.5kPa/min以下であることを特徴とするR-T-B系希土類磁石粉末の製造方法。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]

原料合金の組成のうちのRについて、本願発明では、Ndに加えて「Pr」を含み、「PrをRのうち10.0at.%以上85.0at.%以下」含む旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

6.判断

上記相違点について検討する。

引用文献1の段落【0052】には、「R」としてNdだけでなく、Prを選択できることも記載されているところ、当審の拒絶の理由に引用された特開2001-76917号公報(段落【0035】、段落【0069】の表1中の組成c、f、h、iを参照)、さらには特開平5-47533号公報(特に【請求項1】、段落【0004】~【0005】、【0016】~【0018】、【0023】を参照)、特開2013-157505号公報(【請求項5】、段落【0019】を参照)、特開2014-132599号公報(特に段落【0022】を参照)に記載のように、RFeB系合金における「R」として、磁気特性を維持あるいは保持力を向上させつつコストを低減するためにNdに加えてPrも含むものとする(Ndの一部をPrに置換する)ことは周知の技術事項である。そしてその際のRのうちの「Pr」の量についても、上記特開平5-47533号公報では、15~30原子%とされ、また、上記特開2013-157505号公報では、5at%~50at%が好ましく、10at%~35at%がより好ましいとされているように、本願発明で特定する「Rのうち10.0at.%以上85.0at.%以下」の範囲を満たすPrの量を選択することも周知といえる技術事項であり、引用発明においても、コスト低減等は当然に望まれることであるから、かかる周知の技術事項を採用し、RとしてNdに加えてPrを含み、そのPrの量として本願発明で特定する「Rのうち10.0at.%以上85.0at.%以下」の範囲を満たす値を選択することは当業者であれば容易になし得ることである。

7.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-002261

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