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特許拒絶査定不服審判

2020-001564

バリア性フィルムおよびそれを用いた積層体

審判番号
2020-001564
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-082515外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年02月05日
審決日
2021年09月28日
公報発行日
2022年01月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-82515「バリア性フィルムおよびそれを用いた積層体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月2日出願公開、特開2018-118520〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成22年11月2日に出願された特願2010-246725号の一部を平成27年6月3日に新たな特許出願(特願2015-113478号)とし、その一部を平成29年2月7日に新たな特許出願(特願2017-20509号)とし、その一部を平成30年4月23日に新たな特許出願(特願2018-82515号)としたものであって、手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年1月29日付け:拒絶理由通知書
平成31年3月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和元年5月21日付け :拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
令和元年7月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和元年10月2日付け :令和元年7月18日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
令和2年2月5日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出
令和2年8月21日付け :拒絶理由通知書
令和2年10月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年1月12日付け :拒絶理由通知書
令和3年3月16日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

令和3年3月16日提出の手続補正書による補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「10~300μmの厚みの積層フィルムに用いられるバリア性フィルムであって、
基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層と、前記蒸着層の上に設けられたガスバリア性塗布膜と、を有し、
前記基材層が、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、さとうきび由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、50~95質量%のバイオマスポリエチレンテレフタレートと、化石燃料由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、化石燃料由来の原料からなるポリエチレンテレフタレートと、を含んでなり、
前記蒸着層が、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム、またはこれらの酸化物の蒸着膜からなることを特徴とする、バリア性フィルム。」

第3 拒絶の理由

平成3年1月12日付け拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

本願の請求項1~13に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、及び周知の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2007-210208号公報
引用文献2:特開2009-91694号公報
引用文献3:国際公開2010/101698号

第4 引用文献の記載、引用発明、及び記載事項

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1 引用文献1の記載及び引用発明

(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている。

「【発明の分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する積層フィルムおよびその製造方法に関し、より詳細には、優れたガスバリア性を有しつつ透明性を備え、耐衝撃性にも優れる、ガスバリア性積層フィルムおよびその製造方法に関する。」
「【0017】
まず、本発明のガスバリア性積層フィルムは、図1に示すように、基材フィルム1の一方の面に、基材の表面処理を行い、表面処理1a上に無機酸化物の蒸着膜2を設け、さらに、その無機酸化物の蒸着膜2の上に、ガスバリア性塗布膜3を設けた構成を基本構造とするものである。」
「【図1】
[図:0001380255000001.jpg]
」
「【0139】
ガスバリア性塗布膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイッピング、刷毛、バーコード、アプリケータなどの塗装手段により、1回あるいは複数回の塗装で、乾焼膜厚が0.01~30μm、好ましくは、0.1~10μmの本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。」
「【0174】
実施例1
(1)厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に、厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
続きを表示(全19行)
蒸着面;コロナ処理面
導入ガス;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム1.0:3.0:3.0
(単位:slm)
真空チャンバー内の真空度;2~6×10-6mBar
蒸着チャンバー内の真空度;2~5×10-3mBar
冷却・電極ドラム供給電力;10kW
ライン速度;100m/min
【0175】
次に、上記で膜厚200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス:アルゴンガス=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torrで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
【0176】
(2)他方、下記表1に示す組成に従って、組成(a)のEVOH、イソプロピルアルコール、およびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に、予め調製した組成(b)のエチルシリケート40、イソプロピルアルコー、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌し、さらに予め調製した組成(c)のポリビニルアルコール水溶液、酢酸、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液を加えて攪拌し、無色透明のバリア性塗布膜形成用組成物を得た。
【表1】
[図:0001380255000002.jpg]
【0177】
次に、上記の(1)で形成したプラズマ処理面に、上記で調製したガスバリア性塗布膜用組成物をグラビアロールコート法によりコーティングして、コーティング後、200℃の乾燥炉中を300m/分の速度で通過することにより、加熱処理を行い、厚さ0.4g/m2(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成して、ガスバリア性積層フィルムを製造した。」

(2)引用発明

上記(1)からみて、実施例1に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「ガスバリア性積層フィルムであって、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成し、酸化珪素の蒸着膜のプラズマ処理面に厚さ0.4g/m2(乾燥状態)のガスバリア性塗布膜を形成した、ガスバリア性積層フィルム。」

2 引用文献2の記載

(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
バイオマス由来成分を共重合してなるポリエステルであって、放射性炭素(炭素14)測定によるところのバイオマス由来炭素の含有割合が、ポリマー中の全炭素に対して10%以上であり、極限粘度が0.5以上であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート。」
「【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある。)は、機械的強度、化学的安定性、透明性等に優れ、かつ、安価であり、各種の繊維、シート、フィルム、容器等として世界中で最も多く使用されている合成樹脂素材のひとつである。
【0003】
ところで、PETは従来、石油から得られるナフサを接触改質、熱分解して得られるキシレン、エチレンを粗原料とし、キシレン→パラキシレン→テレフタル酸、およびエチレン→エチレンオキシド→エチレングリコールといった経路で得られたテレフタル酸(以下、TPAと略記することがある。)とエチレングリコール(以下、EGと略記することがある。)をエステル化反応後、重縮合反応させて製造されている。このように、従来のPETは、限りある貴重な化石資源である石油を原材料としたものである。さらに、従来のPETは、焼却廃棄された場合、本来化石資源中に封じ込められていた炭素が二酸化炭素となって空気中に放出されるため、新たに発生する二酸化炭素により温室効果が増長されることとなり、地球温暖化の一因となっている。
【0004】
これに対し、バイオマスの起源である植物は、太陽エネルギーと二酸化炭素および水から光合成により澱粉やセルロースなどの植物バイオマスを作ることができる。こういったバイオマスを出発原料として活用すれば石油資源の使用量を抑制することができ、例えばバイオマス由来の炭素をPETの原料として利用すれば、これが使用後焼却処理して炭酸ガスと水に分解されたとしても、それらは再び光合成によって植物に取り込まれることになり、究極のリサイクルシステムが構築できることになる。すなわち、バイオマス原料を用いた分、温室効果ガスである二酸化炭素の新たな増加を抑制できることになる。このことは最近「カーボンニュートラル」と称されているものであり、将来の望ましい姿であるとされている。
【0005】
現在、バイオマス由来の化学物質としては、トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモなどから得られる澱粉や糖分を微生物で発酵させて得られたバイオマスエタノールが知られている。ポリエステル原料として使用可能なバイオマス由来物質としては、バイオマスエタノールを原料としたエチレングリコールやバイオマス由来の1,3-プロパンジオール(例えば、特許文献1参照)などがある。」
「【0007】
本発明は、石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制する手段として、従来のような石油系由来の原料のみからなるPETに替えて、生物産生のバイオマス素材を原料としたPETを提供しようとするものである。」
「【0011】
本発明のPETは、ポリマー物性としては従来の化石資源由来のPETに比べて何ら遜色を有するものではないため、繊維、不織布、シート、フィルムや成型物などの用途に使用することができ、自動車内装材用途においても好適に使用することができる。」
「【0014】
本発明のPETとしては、既述のとおり、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするものであるが、例えば、エチレンテレフタレートのみからなる場合、ポリマーを構成する炭素は、テレフタル酸モノマーで8原子、エチレングリコールモノマーで2原子存在し、テレフタル酸とエチレングリコールが1:1のモル比で反応したものとなる。ここで、テレフタル酸をバイオマス原料から誘導することは、現状では技術的な確立はなされていない。したがって、バイオマス由来のPETとしては、石油由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコールの組み合わせとなり、バイオマス由来のエチレングリコールのみを使用したPETでは、計算上バイオマス由来の炭素の含有割合は20.0%となる。また、上記エチレングリコールのうち、50モル%をバイオマス由来、残り50モル%を石油由来のエチレングリコールとした場合、得られるPET中のバイオマス由来炭素の含有割合は10%となる。或は、100%バイオマス由来のエチレングリコールからなるPETと100%化石資源由来からなるPETとのブレンド又は共重合体についても、バイオマス由来炭素の含有割合は10.0%となる。」
「【0016】
したがって、本発明のPETとしては、該バイオマス由来炭素の含有割合が10%未満である場合、得られるポリエステルとしては、石油資源の使用量削減や温室効果ガスの排出抑制の面では効果が乏しいものとなる。・・・」
「【0019】
また、放射性炭素(炭素14)の測定では、リサイクルポリエステルに対してもバイオマス由来の成分の含有割合を分析することができるため、バイオマス由来成分のリサイクル用途への循環利用の促進を図る上でも効果的な手法である。したがって、本発明のPETとしては、バイオマス由来成分を共重合して新たに得られたPETのみならず、バイオマス由来のPETが含有されてなるリサイクルPETも包含するものである。本発明のPETとしては、極限粘度が0.50以上であることが必要であり、0.60以上であることが好ましい。本発明のPETにおける極限粘度が0.5未満である場合、繊維、シート、フィルム、容器等として使用する際、強度や強靭さに欠ける結果となる。極限粘度の上限としては、特に規定しないが工業的に実施する際には設備能力、経済性を考慮して、1.2程度を上限とするのが好ましい。」
「【0024】
次に、本発明のPETの加工法について説明する。本発明のPETを用いて繊維を製造する場合、300℃近い高温で溶融したPETをノズル孔から押し出し、冷却した糸条を延伸し、必要に応じて切断し、あるいはそのまま巻き取って製品とする。シート、フィルムの場合も繊維製造に準じて、細長いノズル孔から溶融PETを押し出し、必要に応じて延伸して製品とする。」

(2)上記(1)の記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア PETが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とする原料からなることは技術常識であることを踏まえると、上記(1)の【0003】の記載から、「化石燃料由来のPET」は、石油由来のエチレングリコールをジオール単位とし、石油由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする原料からなるものである。

イ PETが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とする原料からなることは技術常識であることを踏まえると、上記(1)の【0014】の記載から、「100%バイオマス由来のエチレングリコールからなるPET」は、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、石油由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする原料からなるものである。

ウ 上記(1)の「100%バイオマス由来のエチレングリコールからなるPETと100%化石資源由来からなるPETとのブレンド・・・についても、バイオマス由来炭素の含有割合は10.0%となる」(【0014】)の記載について、上記(1)の「バイオマス由来のエチレングリコールのみを使用したPETでは、計算上バイオマス由来の炭素の含有割合は20.0%となる。」(【0014】)の記載を参照すると、「100%バイオマス由来のエチレングリコールからなるPET50%と化石資源由来のPETとのブレンド」は、100%バイオマス由来のエチレングリコールからなるPET50%と化石燃料由来のPET50%とをブレンドしたPET樹脂であることが理解できる。

(3)引用文献2の記載事項

上記(1)、(2)の記載から、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

「シート、フィルムに用いられるPET樹脂であって、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、石油由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするPET50%と、石油由来のエチレングリコールをジオール単位とし、石油由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、化石燃料由来のPET50%とをブレンドしたPET樹脂。」

3 技術課題について

引用文献2の背景技術(【0002】~【0005】)に加え、同文献の【0007】に記載された課題から、次の事項は、周知の技術課題であると認められる。

「石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制する手段として、従来のような石油系由来の原料のみからなるPETに替えて、生物産生のバイオマス素材を原料としたPETを提供すること。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「ガスバリア性積層フィルム」は、その構成(積層)及び性状(ガスバリア性)からみて、本願発明の「積層フィルム」及び「バリア性フィルム」に相当し、以下同様に、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからな」る「基材層」に、「蒸着膜」は「蒸着層」に、「ガスバリア性塗布膜」は「ガスバリア性塗布膜」に、それぞれ相当する。

引用発明において、「厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成し、酸化珪素の蒸着膜のプラズマ処理面に0.4g/m2(乾燥状態)のガスバリア性塗布膜を形成した」ことは、本願発明において、「基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層と、前記蒸着層の上に設けられたガスバリア性塗布膜と、を有」することに相当する。

引用発明の「酸化珪素の蒸着膜」は、本願発明の「前記蒸着層が、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム、またはこれらの酸化物の蒸着膜からなること」に相当する。

ポリエチレンテレフタレートが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とする原料からなることは技術常識であるから、引用発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」と、本願発明の「前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、さとうきび由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、50~95質量%のバイオマスポリエチレンテレフタレートと、化石燃料由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、化石燃料由来の原料からなるポリエチレンテレフタレートと、を含んでな」ることとは、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とする原料からなるポリエチレンテレフタレートと、を含んでな」る限りで一致する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。

[一致点]

「積層フィルムに用いられるバリア性フィルムであって、
基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層と、前記蒸着層の上に設けられたガスバリア性塗布膜と、を有し、
前記基材層が、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とする原料からなるポリエチレンテレフタレートと、を含んでなり、
前記蒸着層が、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム、またはこれらの酸化物の蒸着膜からなる、バリア性フィルム。」

[相違点1]

本願発明では、「積層フィルム」は「10~300μmの厚み」であるのに対して、引用発明では、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」が「厚さ12μm」で、「酸化珪素の蒸着膜」が「厚さ200Å」で、「ガスバリア性塗布膜」が「厚さ0.4g/m2(乾燥状態)」である点。

[相違点2]

2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とする原料からなるポリエチレンテレフタレートと、を含んでなることに関して、本願発明は、「前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、さとうきび由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、50~95質量%のバイオマスポリエチレンテレフタレートと、化石燃料由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、化石燃料由来の原料からなるポリエチレンテレフタレートと、を含んで」なるのに対して、引用発明は、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」である点。

第6 判断

上記相違点について検討する。

1 相違点1について

引用発明の「厚さ0.4g/m2(乾燥状態)のガスバリア性塗布膜」の厚みは明記されていないが、引用文献1の「ガスバリア性塗布膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイッピング、刷毛、バーコード、アプリケータなどの塗装手段により、1回あるいは複数回の塗装で、乾焼膜厚が0.01~30μm、好ましくは、0.1~10μmの本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。」(【0139】)の記載から、引用文献1に記載された実施例1である引用発明の「厚さ0.4g/m2(乾燥状態)のガスバリア性塗布膜」の厚みは、0.01~30μmの範囲内である蓋然性が高い。

また、200Åは0.02μmであるから、引用発明の「酸化珪素の蒸着膜」の厚みは0.02μmである。

そうすると、「厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成し、酸化珪素の蒸着膜のプラズマ処理面に厚さ0.4g/m2(乾燥状態)のガスバリア性塗布膜を形成した、ガスバリア性積層フィルム」の厚みは、12.03(=12+0.02+0.01)~42.02(=12+0.02+30)μmとなり、10~300μmの範囲内である蓋然性が高い。

したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

また、引用発明の「厚さ0.4g/m2(乾燥状態)のガスバリア性塗布膜」の厚みを、引用文献1の【0139】の記載を参考にして、0.01~30μmとすることに困難性はない。

したがって、相違点1は、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について

PETはポリエチレンテレフタレートであり、石油由来は化石燃料由来といえるから、引用文献2記載事項は、シート、フィルムに用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、50質量%のバイオマスポリエチレンテレフタレートと、化石燃料由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、化石燃料由来の原料からなるポリエチレンテレフタレートと、を含んでなるポリエチレンテレフタレート樹脂といえる。

そして、上記周知の技術課題、すなわち、石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制する手段として、石油系由来の原料のみからなるPETに替えて、生物産生のバイオマス素材を原料としたPETを用いることは、当業者がPET樹脂を取り扱う際に、普通に採用し検討し得る技術課題であるから、引用発明のポリエチレンテレフタレートにおいて、バイオマス由来の原料を用いる動機付けはあるといえる。

また、バイオマス由来としてさとうきび由来は例示するまでもなく周知である(特に、引用文献2には、バイオマス由来のものとして「サトウキビ」が挙げられている。)。

以上から、引用発明及び引用文献2記載事項に基づき、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

3 小括

よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 令和3年3月16日提出の意見書における出願人の主張について

出願人は、令和3年3月16日提出の意見書において、次のように主張をしている。

(主張1)「引用文献2の実施例1,2及び比較例1は、・・・短繊維に関する例です。また、引用文献2の実施例3は、・・・ボトルに関する例です。このように、引用文献2の実施例1~3及び比較例1において検証されたのは、短繊維及びボトルの形態であり、フィルムの形態ではありません。従って、引用文献2の段落【0011】の「本発明のPETは、ポリマー物性としては従来の化石資源由来のPETに比べて何ら遜色を有するものではないため、繊維、不織布、シート、フィルムや成型物などの用途に使用することができ、」という記載のうち、不織布、シート、フィルムに関する記載は、実施例1~3及び比較例1に基づくものではありません。すなわち、引用文献2において、フィルムの樹脂を従来の化石資源由来のPETからバイオマス由来の炭素を含有したPETに置き換えた場合に、従来の化石資源由来のPETに比べて遜色のない特性がフィルムとして得られるか否かは、引用文献2においては何ら検証されておりません。フィルムの形態は、短繊維及びボトルの形態とは大きく異なります。・・・従って、バイオマス由来の炭素を含有したPETに置き換えた場合に、短繊維及びボトルで良好な結果が得られたからといって、フィルムでも良好な結果が得られるとは限りません。

また、引用文献2の段落【0035】の表1には、実施例1~3及び比較例1の評価項目として「重合性」及び「加工性」が挙げられております。このことは、従来の化石資源由来のPETをバイオマス由来の炭素を含有したPETに置き換えると、PETの加工方法及び加工形態に応じて「重合性」及び「加工性」に差が生じる可能性があることを示唆しております。

・・・

一方、引用文献2の実施例1~3及び比較例1では、フィルムの形態については何ら検証されておりません。従って、引用文献2に記載の、バイオマス由来の炭素を含有したPETを、引用発明1で用いられるような薄いフィルムに加工できることを認めるに足りる証拠は、引用文献2にはありません。・・・

引用文献1には、カーボンニュートラルやバイオマス原料に関する記載も示唆もありません。このため、仮に引用発明1に「カーボンニュートラル」という周知の課題が内在していたとしても、引用文献1に明記されているガスバリア性、透明性及び耐衝撃性という課題にどのように影響を及ぼすか不明であり、且つ、そもそもフィルムに適切に加工できるかどうかも不明である、引用文献2のバイオマス由来の炭素を含有したPETを、当業者が引用発明1の基材の樹脂として適用する動機は存在しないと考えます。従って、本願発明は、引用文献1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たものではないと考えます。」

(主張2)「上述のように、引用発明1のガスバリア性積層フィルムは、基材と、基材上に設けられた無機酸化物の蒸着膜と、蒸着膜上に設けられたガスバリア性塗布膜と、を備えております。蒸着膜は、蒸着用混合ガス組成物が導入された真空チャンバーにおいて、冷却・電極ドラム周面上に搬送された基材の上に形成されます。引用発明1は、優れたガスバリア性、透明性及び耐衝撃性を課題として挙げております。引用文献1には、課題が解決されたガスバリア性積層フィルムを製造するための手段として、基材を構成するフィルムの表面に、コロナ処理層、プラズマ処理層、プライマーコート剤層などを設けて、無機酸化物の蒸着膜に対する基材の表面の密着性を高めることが提案されております。

一方、引用文献2の実施例1~3及び比較例1では、フィルムの形態については何ら検証されておりません。従って、引用文献2に記載の、バイオマス由来の炭素を含有したPETを、引用発明1で用いられるような薄いフィルムに加工できることを認めるに足りる証拠は、引用文献2にはありません。当然に、引用文献2のバイオマス由来の炭素を含有したPETから構成されたフィルムの表面に、コロナ処理層、プラズマ処理層、プライマーコート剤層などを設けることにより、無機酸化物の蒸着膜に対する基材の表面の密着性を高められることを認めるに足りる証拠は、引用文献2にはありません。」

主張1について

引用文献2の「シート、フィルムの場合も繊維製造に準じて、細長いノズル孔から溶融PETを押し出し、必要に応じて延伸して製品とする。」(【0024】)の記載から、引用文献2には、「繊維製造に準じて」「シート、フィルム」を加工して「製品」とすることが記載されおり、また、引用文献2には、「バイオマス由来物質を原料としてなるポリエステルは、化学構造的には従来の石油材料起源のポリエステルとなんら変わらないため、ポリエステルとしての優れた物性はそのまま維持されている。」(【0006】)と記載されていることから、引用文献2記載事項のPET樹脂を、引用発明で用いられるような薄いフィルムに加工できることは、当業者であれば理解できる。また、「重合性」に関して、引用文献2の【0020】、【0021】には、「常法により製造することができる」と記載した上で、PETの製造方法が記載されており、短繊維、ボトルと同様、シート、フィルムや成型物などの用途であっても、材料としてのPETの重合性が良好となることが予想される。

したがって、引用発明の基材の樹脂として、引用文献2記載事項を適用することについて、上述したとおり動機付けがある。

主張2について

「バイオマス由来の炭素を含有したPETを、引用発明1で用いられるような薄いフィルムに加工できること」については、上記主張1で記載したとおりである。

「バイオマス由来の炭素を含有したPETから構成されたフィルムの表面に、コロナ処理層、プラズマ処理層、プライマーコート剤層などを設けることにより、無機酸化物の蒸着膜に対する基材の表面の密着性を高められること」について、フィルムの表面へのコロナ処理は、表面を粗面化することによって表面張力を向上させ、密着性を高めるために行われるものであることは技術常識であるから、引用発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面」について、当該表面が粗面化されることで、無機酸化物の蒸着膜に対する基材の表面の密着性が高まるものである。また、引用文献2には、「バイオマス由来物質を原料としてなるポリエステルは、化学構造的には従来の石油材料起源のポリエステルとなんら変わらないため、ポリエステルとしての優れた物性はそのまま維持されている。」(【0006】)と記載されている。

そうすると、引用発明に引用文献2記載事項を適用したものについても、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面」について、当該表面が粗面化されることで、無機酸化物の蒸着膜に対する基材の表面の密着性が高まるものであることは、当業者であれば予測可能なことである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-001564

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