2020-001374
眼内レンズ(IOL)を生産するための組成物及びレンズ製造方法
- 審判番号
- 2020-001374
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-566732外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年01月31日
- 審決日
- 2021年07月21日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】チュビタック (ターキー ビリムセル ヴィ テクノロジク アラスティルマ クルム)
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】塚中 哲雄
- 分類
- P18 .121-Z (C08F) / P18 .537-Z (C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続の経緯
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この出願(以下、「本願」という。)は、平成27年5月7日(優先権主張 平成26年5月7日 (TR)トルコ)を国際出願日とする出願(特願2016-566732号)であって、平成29年10月30日付けで拒絶理由が通知され、平成30年4月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月28日付けで拒絶理由が通知され、平成31年4月2日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年9月25日付けで拒絶査定がされ、令和2年1月31日に拒絶査定不服審判が請求され、同年2月13日に審判請求書に対する手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は、平成31年4月2日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載されたとおりのものであるところ、請求項1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】眼内使用に適する、可撓性、低価格性、疎水性、高屈折率値を、UV遮断特性及び滑らかな表面とともに備えたレンズを光重合によって製造する方法に使用される、組成物であって、結合剤としての、アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー20~80重量パーセントと、反応性希釈剤としての、アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー5~40重量パーセントと、光吸収用の、アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤1~5重量パーセントと、反応を開始させる、光開始剤0.1~5重量パーセントと、を含むことを特徴とする、組成物。」
(以下、請求項1により特定される発明を、「本願発明」という。また、この出願の明細書を「本願明細書」という。)
第3 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、平成30年9月28日付け拒絶理由通知における理由1、2を含むものであり、当該理由1、2により、この出願は拒絶すべきものであるとするものである。
理由1の概要は、本願の請求項1、4、7、8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1(国際公開第2005/029161号)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
理由2の概要は、本願は、特許請求の範囲の請求項1~11の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合していない、というものである。
第4 当審の判断
当審は、上記の理由1又は理由2と同一の理由により、本願は、拒絶すべきものと判断する。
その理由は以下のとおりである。
1.理由1について
(1)引用文献1(国際公開第2005/029161号)の記載事項
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及び引用発明の認定
ア.引用文献1の記載事項
(ア)眼用レンズ材料について
「[0001] 本発明はコンタクトレンズ、眼内レンズなどの眼用レンズ材料に関し、とりわけシリコーン系の非含水眼用レンズ材料に関する。…[0003] …屈折率が高く、柔軟性および形状回復性にすぐれ、粘着性が低い軟質眼内レンズ材料として…フェノキシエチルアクリレートなどの芳香族環含有 (メタ)アクリレート、親水性モノマーなどからなる共重合体を眼内レンズ用材料として使用すること (たとえば、特開平 11-56998号公報)が開示されている。…[0006] 本発明では、透明であることはもとより、粘着性が低く、装用時に角膜への吸着がなく安全であり、かつ操作容易性(指にくっつかない)にすぐれ、さらに強度と柔軟性または弾性の適度なバランスにより、形状安定性に優れる眼用レンズ材料を提供することを目的とする。」
「[0098] 本発明の眼用レンズ材料は、粘着性が低く、装用時に角膜への吸着がなく安全であり、また、操作容易性に優れている。また、前述のように強度、柔軟性または弾性の適度なバランスを有することにより、強度を保ちつつ、形状安定性があるうえ、適度に柔軟であるため、装用時の安定性がよいという効果をバランスよくもたらすことができる。」
(イ)重合性紫外線吸収剤について
「[0080] また、前記共重合成分には、レンズに紫外線の吸収性を付与する目的や、レンズを着色したり、可視光線の一部の波長領域の光線をカットしたりする目的で、重合性紫外線吸収剤、重合性色素や重合性紫外線吸収性色素を配合することができる。[0081] 前記重合性紫外線吸収剤の具体例としては、たとえば、2-ヒドロキシ-4- (メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-5-tert-ブチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシ一2’,4’-ジクロロベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2’-ヒドロキシ-3’-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノンなどのべンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェ二ル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェ二ル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニルなどのサリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤;2-シアノ-3-フェニル-3-(3’-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステルなどの重合性紫外線吸収剤などがあげられる。これらの重合性紫外線吸収剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。…[0084] 前記重合性紫外線吸収剤、重合性色素および重合性紫外線吸収性色素の配合量は、レンズの厚さによって異なるので一概には決定することができないが、全共重合成分中に 3重量%以下、なかんずく0.1~2重量%であることが好ましい。かかる配合量が3重量%よりも多いと、レンズの物性、たとえば強度などが低下する傾向があり、また紫外線吸収剤や色素の毒性を考慮すれば、生体組織に直接接触するコンタクトレンズや生体中に埋め込まれる眼内レンズなどのような眼用レンズ材料としては適さなくなる傾向がある。…」
(ウ)重合開始剤について
「[0086] 本発明の眼用レンズ材料の製造方法としては、たとえば化合物(A)、アルコキシ基含有アクリレート(B)、フェニルアクリレートもしくはフェノキシアルキルアクリレート(C)、および、所望により添加される両親媒性成分や、その他の成分を配合し、これにラジカル重合開始剤を添加し、通常の方法によって重合する方法などがあげられる。[0087] 前記通常の方法とは、たとえばラジカル重合開始剤を配合したのち、室温~約130℃の温度範囲で徐々に加熱する方法、マイクロ波、紫外線、放射線(γ線)などの電磁波を照射する方法である。加熱重合させる場合には、段階的に昇温させてもよい。重合は、塊状重合法によってなされてもよいし、溶媒などを用いた溶媒重合法によってなされてもよく、またその他の方法によってなされてもよい。[0088] 前記ラジカル重合開始剤の具体例としては、たとえばアゾビスイソプチロニトリル、アゾビスジメチルバレロ二トリル、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどがあげられ、これらのラジカル重合開始 剤は、単独でまたは2種以上を併用して用いられる。なお、光線などを利用して重合させる場合には、2-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロパン-1-オンなどの光重合開始剤や増感剤をさらに添加することが好ましい。前記重合開始剤や増感剤の配合量は、全共重合成分100重量部に対して約0.001~2重量部、好ましくは0.01~1重量部であることが適切である。」
(エ)アクリレートの含有量について
「[0062] 全共重合体成分中のアルコキシ基含有アクリレート(Β)の含有量は、好ましくは2~70重量%、より好ましくは10~60重量%である。アルコキシ基含有アクリレート(Β)の含有量が2重量%未満では眼用レンズの粘着性を充分に低減できない傾向があり、70重量%をこえると得られる材料の強度が低下し、眼用レンズが破損しやすくなる頃向がある。…[0068] 全共重合体成分中のフェニルアルキルアクリレートまたはフェノキシアルキルアクリレート(C)の含有量は、好ましくは3~30重量%、より好ましくは5~20重量%である。フェニルアルキルアクリレートまたはフェノキシアルキルアクリレート(C)の割合が3重量%未満では得られる材料の強度を補強する効果が得られにくい傾向があり、30重量%をこえると柔軟性が低下する傾向がある。」
(オ)実施例、比較例について
[0099] 実施例1~8および比較例1~6
表1に示す共重合性成分を配合100重量部に対し、重合性開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを0.2重量部混合した眼用レンズ成分を、コンタクトレンズ形状を有する鋳型(ポリプロピレン製、直径約14mmおよび中心厚み0.1mmのコンタクトレンズに対応)内に注入した。次いで、この鋳型にUV光を10分照射して光重合を行い、コンタクトレンズ形状の重合体を得た。これらすベて含水率が10%未満であった。実施例1~4では、配合成分の相溶性を向上させるため、両親媒性成分を配合した。得られた重合体について、以下の評価を行なった。結果を表1に示す。
[0100] なお、表1中の略語は、以下の化合物を示す。
MAUS:
[0101][化14]
[図:0001380252000001.jpg]
[0102] MTGA:メトキシトリエチレングリコールアクリレート
[0106][表1]
[図:0001380252000002.jpg]
イ.引用発明の認定
引用文献1の摘記(オ)の[0099]~[0106]には、実施例8として、[化14]として示されるMAUSを50重量部、2-ETA(2-エトキシエチルアクリレート)を40重量部、POEA(2-フェノキシエチルアクリレート)を10重量部の合計100重量部に対し、重合性開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを0.2重量部混合した眼用レンズ成分を、コンタクトレンズ形状を有する鋳型内に注入し、次いで、この鋳型にUV光を10分照射して光重合を行い、コンタクトレンズ形状の重合体を得たことが記載されている。
そうすると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)
「コンタクトレンズ形状の重合体を光重合によって製造する方法に使用される、眼用レンズ成分であって、下記式で表される「MAUS」を50重量部、2-エトキシエチルアクリレートを40重量部、2-フェノキシエチルアクリレートを10重量部、重合性開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを0.2重量部含む眼用レンズ成分。[図:0001380252000003.jpg]」
(2)対比・判断
ア.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「MAUS」は、2つのイソホロンジイソシアネートの1位のイソシアネート基が、ウレタン結合を介して、分子末端に配置されるヒドロキシエチルアクリレートと結合し、3位のイソシアネートメチル基が、ウレタン結合を介して、分子中央に配置される、両末端にヒドロキシエトキシプロピル基を有するジメチルポリシロキサンと結合したアクリレート系化合物である。
当該「MAUS」は、アクリレートと、シロキサン単位(-O-Si(CH3)2)-)が39個結合したオリゴマーであるジメチルポリシロキサンとを有するものであるから、本願発明の「アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー」に相当し、本願発明の「結合剤」としての作用機能を有するものと認められる。
当該「MAUS」の含有量「50重量部」を重量%に換算した「49.9%」(=50÷(50+40+10+0.2)×100)は、本願発明の「20~80重量パーセント」と一致する。
引用発明の「2-エトキシエチルアクリレート」、「2-フェノキシエチルアクリレート」は、いずれも「アクリレート系モノマー」に含まれるものであり、本願の特許請求の範囲の請求項6、【0022】において、「メタクリル酸エトキシエチル」(2-エトキシエチルメタクリレートと読み替えられる。)、「メタクリル酸フェノキシエチル」(2-フェノキシエチルメタクリレートと読み替えられる。)が例示されていることに照らすと、引用発明の上記アクリレートは、本願発明の「アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー」に相当し、本願発明の「反応性希釈剤」としての作用機能を有するものと認められる。
引用発明の「重合性開始剤」である「2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン」は、引用文献1の摘記(ウ)の[0088]に、「光線などを利用して重合させる場合には、2-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロパン-1-オンなどの光重合開始剤」と記載されることから、本願発明の「反応を開始させる、光開始剤」に相当し、引用発明の「2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン」の含有量「0.2重量部」を重量%に換算した「0.2%」(=0.2÷(50+40+10+0.2)×100)は、本願発明の「0.1~5重量パーセント」と一致する。
引用発明の「眼用レンズ成分」は、複数の成分を含有する組成物であるから、本願発明の「組成物」に相当する。
本願発明の「レンズ」は、光重合によって製造される重合体であるので、引用発明の「コンタクトレンズ形状の重合体」とは、「重合体」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者は、
「重合体を光重合によって製造する方法に使用される、組成物であって、結合剤としての、アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー20~80重量パーセントと、反応性希釈剤としての、アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマーと、反応を開始させる、光開始剤0.1~5重量パーセントと、を含む、組成物。」で一致し、
本願発明では、「光吸収用の、アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤1~5重量パーセント」を含み、「レンズ」が「UV遮断特性」を備えているのに対し、引用発明では、「アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤」を含んでおらず、「コンタクトレンズ形状の重合体」が「UV遮断特性」を備えていない点(相違点1)、
本願発明では、反応性希釈剤としての、「アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー」を「5~40重量パーセント」で含むのに対して、引用発明では、「2-エトキシエチルアクリレートを40重量部、2-フェノキシエチルアクリレートを10重量部」で含む点(相違点2)、
本願発明では、光重合によって製造される重合体を、「眼内使用に適する、可撓性、低価格性、疎水性、高屈折率値を、滑らかな表面とともに備えたレンズ」と規定しているのに対して、引用発明では、「コンタクトレンズ形状の重合体」と規定している点(相違点3)で相違している。
イ.判断
(ア)相違点1
引用文献1の摘記(イ)の[0080]には、「前記共重合成分には、レンズに紫外線の吸収性を付与する目的…で、重合性紫外線吸収剤…を配合することができる。」とされ、同[0081]には、前記重合性紫外線吸収剤の具体例としては、たとえば、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン…などのべンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェ二ル)-2H-ベンゾトリアゾール…などのベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニルなどのサリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤;2-シアノ-3-フェニル-3-(3’-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステルなどの重合性紫外線吸収剤などがあげられ」ること、同[0084]には、「前記重合性紫外線吸収剤…の配合量は、レンズの厚さによって異なるので一概には決定することができないが、全共重合成分中に3重量%以下、なかんずく0.1~2重量%であることが好ましい」ことが記載されている。
そうすると、重合体に紫外線の吸収性を付与する目的で、引用発明の「眼用レンズ成分」において、3重量%以下の含有量で、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェ二ル)-2H-ベンゾトリアゾールなどの重合性紫外線吸収剤をさらに含有させること、すなわち、相違点1として挙げた「光吸収用の、アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤」を「1~5重量パーセント」で含ませて、「UV遮断特性」を備えるものとすることは当業者が容易に想到し得たものである。
(イ)相違点2
引用文献1の摘記(エ)の[0062]には、引用発明の「2-エトキシエチルアクリレート」の含有量について、「全共重合体成分中のアルコキシ基含有アクリレート(Β)の含有量は、好ましくは2~70重量%、より好ましくは10~60重量%である。」と記載され、同[0068]には、引用発明の「2-フェノキシエチルアクリレート」の含有量について、「好ましくは3~30重量%、より好ましくは5~20重量%である。」と記載されており、レンズ材料の粘着性、強度、柔軟性の観点で、上記アクリレートの含有量を設定することが記載されている。
してみると、上記各記載に基づき、引用発明において、レンズ材料の粘着性、強度、柔軟性が最適となるように、「2-エトキシエチルアクリレート」、「2-フェノキシエチルアクリレート」の含有量を再調整して、その合計量として、例えば、「5~40重量パーセント」となる範囲に至ることは当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願明細書を参照しても、「反応性希釈剤としての、アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー」の含有量を「5~40重量パーセント」の範囲に設定する技術的意義を示す記載は見当たらないので、当該数値範囲を採用することにより格別顕著な効果を奏するとは認められない。
(ウ)相違点3
引用文献1の摘記(ア)の[0098]における「本発明の眼用レンズ材料は…強度、柔軟性または弾性の適度なバランスを有する」との記載によると、引用発明の「重合体」は、適度な強度、柔軟性または弾性を有するものであるから、「可撓性」を備えたものといえる。
また、引用発明の「重合体」は、ジメチルポリシロキサンを含むので、ある程度の「疎水性」を備えるものであり、この「重合体」は、摘記(ア)の[0001]及び摘記(イ)の[0084]にも記載されているとおり、眼内レンズとして使用することが予定されているので、生体に適合できるような「滑らかな表面」や眼内レンズで通常求められる「高屈折率」を備えているといえる。
なお、「低価格性」は、眼用レンズ材料に限らず、消費者に提供される製品全般で求められる特性である。
以上からすると、引用発明の「眼用レンズ成分」を「光重合」した「重合体」を、相違点3に挙げた、「眼内使用に適する、可撓性、低価格性、疎水性、高屈折率値を、滑らかな表面とともに備えたレンズ」に使用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
(エ)本願発明の効果
本願明細書には、実施例の記載はなく、本願発明を具体化した組成物は、一切開示されておらず、本願発明の発明特定事項を採用することにより、可撓性、低価格性、疎水性、高屈折率値を、UV遮断特性及び滑らかな表面とともに備えるレンズが製造できることを裏付ける具体的記載も存在しないので、本願発明が、当業者の予測を超える効果を奏するものとは認められない。
(オ)審判請求人の主張
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a.
審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1の発明は、UV遮断剤(すなわちUV吸収剤)を用いて特定の波長の光を遮断して眼を保護することを目的とするものではありません。引用文献1において、UV遮断剤又は吸収剤は光開始剤を活性化する吸収剤として使用されるものであり、この使用は、本願において、光を吸収して眼を保護するものとしてUV遮断剤又は吸収剤を使用しているのと同じではありません。」と主張する。
しかし、引用文献1の摘記(イ)の[0080]には、「レンズに紫外線の吸収性を付与する目的」で、「重合性紫外線吸収剤」を共重合成分に配合することが記載されている。また、本願の優先日(平成26年(2014年)5月7日)前に頒布された特開2003-84242号公報の【0004】によると、技術常識として、「近年では、眼用レンズ、特に眼内レンズに関しては、有害な紫外線から眼を守るために、400nm以下の光を遮断する紫外線吸収剤をレンズ素材に混入または化学結合し、眼内に入射する紫外線の量を軽減し、眼を有害な紫外光から守る機能を持たせたものが市販されている」ことが記載されている。
そうすると、引用発明における「重合性紫外線吸収剤」は、レンズに紫外線吸収性を付与し、もって眼に入射する有害な紫外線を遮断することを目的としているものと理解するのが自然である。
また、引用文献1の摘記(ウ)の[0086]に、「本発明の眼用レンズ材料の製造方法としては…ラジカル重合開始剤を添加し、通常の方法によって重合する方法などがあげられる。」、同[0087]に、「前記通常の方法とは、たとえばラジカル重合開始剤を配合したのち、室温~約130℃の温度範囲で徐々に加熱する方法、マイクロ波、紫外線、放射線(γ線)などの電磁波を照射する方法である。」と記載され、引用文献1の眼用レンズ材料の製造では、光開始剤を使用しない方法も含まれているから、引用文献1において、「重合性紫外線吸収剤」が、専ら「光開始剤を活性化する吸収剤」として使用されているとは解されない。
したがって、上記の審判請求人の主張は、理由がない。
b.
審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1においては、紫外線吸収剤及び光重合開始剤を同時に使用可能とする方法について、教示も示唆もありません。」、「UV硬化性組成物の重合が非常に困難になるため、光開始剤とUV吸収剤とを組み合わせることは通常行いません。」、「本発明による組成物は、その特定の組成のため、UV遮断剤及び光開始剤を同時に使用することができ、UV遮断剤が光を遮断しているのと同じ領域において、光開始剤が活性化されます。…特定の化学物質を選択し、選択した光開始剤とUV吸収剤とを特定の組み合わせとした特定の組成物でなければ、UV遮断剤が光を遮断しているのと同じ領域で光開始剤を活性化することはできません。」と主張する。
しかし、引用文献1には、摘記(イ)の[0080]、[0084]に記載される「重合性紫外線吸収剤」と摘記(ウ)の[0088]に記載される「2-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロパン-1-オンなどの光重合開始剤」の併用を禁忌とする記載は見当たらないし、審判請求人が指摘する「光開始剤とUV吸収剤とを組み合わせることは通常行いません。」とする技術常識も、この出願の優先日(平成26年(2014年)5月7日)当時に存在したとは認められない。
また、この出願の優先日前に頒布された特表2007-504854号公報の例5によると、ベンゾトリアゾールメタクリレート(【0019】によると紫外光吸収剤の一つである。)とIrgacure-784(【0020】によると光開始剤の一つである。)を含む配合物を光硬化させ、IOL用途に有用なUV吸収剤を含有する高屈折率ハイドロゲルが調製され、上記公報の【0019】、【0020】で、各種の紫外光吸収剤、光開始剤が使用可能なものとして例示されていることに照らすと、UV遮断剤及び光開始剤の併用が、この出願の優先日当時、格別の創意工夫を要するものとして当業者に認識されていたものとは認められない。
したがって、上記の審判請求人の主張は、理由がない。
(3)小括
以上からすると、本願発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.理由2について
(1)特許法第36条第6項第1号の考え方(前提)
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号大合議判決)から、当該手法に基づき、以下で検討する。
(2)本願明細書の記載事項
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ア.【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、眼科、白内障、及び白内障手術の分野における、主に可撓性、生体適合性があり、また長期保存性を有する眼内レンズ(IOL)を生産するための、組成物及びレンズ製造方法に関する。
イ.【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[発明の簡単な説明]本発明は、医療、眼科、白内障、及び白内障手術の分野における、主に、可撓性、生体適合性があり、かつ長期保存性を有する眼内レンズ(IOL)を生産するための、組成物及びレンズ製造方法に関する。
【0013】
本発明の別の目的は、300~475nmのUV光領域で反応できる反応性官能基を含有する組成物を使用して、UV遮断特性を持つ眼内レンズを提供する、組成物及び眼内レンズ製造方法を実現することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、熱重合及び/又は光重合(UV/紫外線LED/発光装置若しくはUV/LED)を使用して、及び/又は両方の方法を組み合わせて使用することによって、レンズを生産することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、高屈折率を有する眼内レンズを得るための、眼内レンズ組成物及び眼内レンズ生産方法を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、1ピース疎水性眼内レンズを生産する、眼内レンズ組成物及び眼内レンズ生産方法を提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、光重合プロセスを使用することによる、眼内レンズ組成物及び眼内レンズ生産方法を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、白色及び黄色の2つの異なるタイプのレンズを得るための、配合材料及びそれらの配合比に基づく、眼内レンズ組成物及び生産方法を提供することにある。
ウ.【課題を解決するための手段】
【0019】
[発明の詳細な説明]
本発明は、光重合を使用した組成物及びレンズ製造方法に関し、UV遮断特性及び滑らかな表面、可撓性、高屈折率値、低価格性、疎水性を有し、切削加工の結果として生ずるグリスニング問題を伴わない、レンズを提供する。…
【0020】
本発明の組成物は、該組成物において結合剤として使用される、アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー成分20~80重量パーセントと、反応性希釈剤として使用される、アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー成分5~40重量パーセントと、UV遮断剤として使用される、アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断成分1~5重量パーセントと、光重合プロセスを開始するために使用される、光開始剤0.1~5重量パーセントと、を含む。
【0021】
本発明の組成物で使用されるオリゴマーは、20~80%であり、ウレタンアクリレート及び/又はウレタンメタクリレート系の構造のものである。【0022】
本発明の組成物に含まれる単官能性のアクリレート及び/又はメタクリレート系反応性モノマーは、5~40重量%の範囲内であり、メタクリル酸、メタクリル酸メチルカルビトール、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、ジメタクリル酸エチレングリコール、N-ビニルピロリドン、メタクリル酸アリル、N,N-ジメタクリルアミン、メタクリル酸グリセリル、及びジメタクリル酸テトラエチレングルコール等の様々な構造のものを使用することができる。
【0023】
本発明の組成物に含まれるUV遮断成分は、該組成物において1~5重量%とする。本発明の好適な実施形態におけるUV遮断剤としては、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)アクリル酸エチル、4-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、クマリン、又はポリアリーレンエーテル構造の物質を使用する。
【0024】
本発明の組成物は、光重合を開始する光開始剤を含む。本発明の組成物における光開始剤の割合は、0.1重量%~5重量%とし、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、(2-ベンジル-2-N-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノプロパン-1)、(ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン、2-ベンジル-2-N-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、ベンゼン、ジメチルケタール、イソプロピルベンゾインケタール、2-n-プロポキシ-9H-9-チオキサンテン及び4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル等の様々な構造のものを使用することができる。
【0025】
本発明の組成物を使用して得られる眼内レンズは、ポリマー構造を有する可撓性及び疎水性のレンズを提供する。前記レンズの屈折率は、1.5以上である。1ピース(一体式)レンズは、拡散の問題を伴わず、光重合法を用いて経済的に生産される。
【0026】
本発明は、光重合プロセスを使用した組成物及びレンズ製造方法に関し、滑らかな表面及びUV遮断特性、可撓性、高屈折率値、低価格性、並びに疎水性を有するレンズを提供する。上述した全てのレンズは、熱的に成形し、レーザーと組み合わされた切削で整形することによって得られた。この方法は、以下の工程を含む:前記組成物を調製する工程と、該組成物を成形型に入れる工程と、光重合法によって該組成物を硬化させる工程と、該成形型から硬化した組成物を取り出す工程と、該成形型から取り出した組成物をイソプロピルアルコールで抽出して、殺菌を施す工程。
【0027】
本発明の製造方法において、組成物は、結合剤としての(1種又は2種以上の)アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー20~80重量パーセントと、反応性希釈剤としてのアクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー5~40重量パーセントと、反応を開始する光開始剤0.1~5重量パーセントと、UV吸収成分としてのアクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤1~5重量パーセントと、を含む。この組成物を、好適には、石英(クオーツ)製の成形型に移し入れる。前記成形型内に入れた組成物を、光重合法によって硬化させる。
本発明の好ましい実施形態において、光重合プロセスのための光源として、紫外線、LED、又は紫外線及びLED双方を使用する。前記組成物(レンズ)を、硬化操作後に成形型から取り出し、イソプロピルアルコール中で抽出する。最終的に、この製品を、殺菌処理を施すことによって消毒する。
【0028】
本発明において得られる眼内レンズは、可撓性及び疎水性の特性を備えたポリマー構造を有する。このレンズの屈折率は、1.5以上である。レンズは、1ピース(一体式)であり、拡散の問題を伴わず、光重合法を用いて経済的に生産される。
(3)判断
ア.本願発明の課題
本願明細書の発明の詳細な説明には、【0012】に、「主に、可撓性、生体適合性があり、かつ長期保存性を有する眼内レンズ(IOL)を生産するための、組成物…に関する。」、【0013】に、「本発明の別の目的は…UV遮断特性を持つ眼内レンズを提供する、組成物…を実現することにある。」、【0015】に、「本発明の別の目的は、高屈折率を有する眼内レンズを得るための、眼内レンズ組成物…を提供することにある。」、【0016】に、「本発明の別の目的は、1ピース疎水性眼内レンズを生産する、眼内レンズ組成物…を提供することにある。」、【0017】に、「本発明の別の目的は、光重合プロセスを使用することによる、眼内レンズ組成物…を提供することにある。」と記載されていることから、本願発明は、可撓性、生体適合性、長期保存性を有し、更に、UV遮断特性、高屈折率、疎水性を有する眼内レンズ(IOL)を、光重合プロセスを使用して、生産するための組成物を提供することを課題にしたものと認められる。
イ.検討
(ア)発明の詳細な説明の記載より当業者が本願発明の課題を解決できると
認識できるか
本願明細書の発明の詳細な説明の【0021】には、「本発明の組成物で使用されるオリゴマーは、20~80%であり、ウレタンアクリレート及び/又はウレタンメタクリレート系の構造のものである。」との記載があり、同【0022】~【0024】には、本願発明で使用できる「アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー」、「アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤」、「光開始剤」が化合物名で例示されているものの、「アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー」については、具体的に如何なる化学構造を有する化合物を使用できるかについて、何ら記載されていない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の発明特定事項である「アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー」、「アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー」、「アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤」、「光開始剤」が、「可撓性」、「生体適合性」、「長期保存性」、「高屈折率」、「疎水性」という本願発明の課題の解決に寄与する効果のいずれに寄与するのか、また、その作用機序について、具体的に記載されていない。
さらに、本願明細書の発明の詳細な説明には、実施例の記載はなく、本願発明を具体化した組成物が何ら記載されていない。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明が、上記の「可撓性、生体適合性、長期保存性を有し、更に、UV遮断特性、高屈折率、疎水性を有する眼内レンズ(IOL)を、光重合プロセスを使用して、生産するための組成物を提供する」という課題を解決できることを、当業者が確認できる記載が存するとは認められない。
(イ)当業者が出願時の技術常識に照らし本願発明の課題を解決できると認
識できるか
本願の出願日(平成27年5月7日)当時の技術常識を参酌しても、本願明細書の発明の詳細な説明の【0021】に記載されている「アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー」の説明や同【0022】~【0024】に記載されている例示化合物から、本願発明の発明特定事項である「アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー」、「アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー」、「アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤」、「光開始剤」のいずれかが、「可撓性」、「生体適合性」、「長期保存性」、「高屈折率」、「疎水性」という本願発明の課題の解決に寄与する効果を奏し得ることを当業者が認識し得たとは認められない。
なお、本願発明は、「アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー」が、20重量%である組成物を含むものであるが、「アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー」、「アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤」、「光開始剤」の上限が、それぞれ、40重量パーセント、5重量パーセント、5重量パーセントであり、全ての薬剤を合計しても70重量%にしかならない点を見ても、本願発明には、上記の課題が解決できない範囲を含む可能性があることを、否定できない。
そうすると、本願発明は、本願の出願日当時の技術常識を参酌しても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により、当業者が、上記の課題を解決できると認識できる範囲のものとは認められない。
(ウ)小括
以上からすると、本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
(4)審判請求人の主張
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審判請求人は、審判請求書において、「ウレタンアクリレートの化学構造及び/又はウレタンメタアクリレートの化学構造は、文献周知であり、その化学名を挙げれば、当業者にはその化学構造が理解されることになります。したがって、明細書においてそれらの構造を開示することは必須ではないと思料いたします。多くの研究において、ウレタンアクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマーが使用されており、そのほとんどが化学構造については開示されておらず、又は、その化学特性についての情報は提供されておりません。」、「組成物及び当該組成物の製造方法は、当業者が実施可能な程度に明白であるので、所望の効果を示す根拠となる特定の実施例は必要ではありません。加えて、出願人は、先の拒絶理由通知書に対する応答時に、本願の組成物及び製造方法により製造されたレンズと市販製品とを比較した結果を試験結果として提出済みです。」と主張する。
しかし、本願明細書の発明の詳細な説明には、「ウレタンアクリレート及び/又はウレタンメタアクリレート」の化学構造はもとより、その具体的な化合物名も記載されていないし、審判請求書で、審判請求人が認めているように、「アクリレート系オリゴマー(類)…の化学構造、機能、及び分子量、組成、及び紫外線ランプ波長域その他の重要なパラメータが、最終製品の製品特性に影響」することからすると、本願発明が、上記の課題を解決できることを当業者が認識するには、少なくとも、本願発明で使用可能な「アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー」につき、本願明細書の発明の詳細な説明において、その作用機序を含め、具体的に開示することを要したものといえるが、そのような記載又は示唆が、本願明細書の発明の詳細な説明にないことは、上記(3)イ(ア)で説示したとおりである。
また、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記の課題に係る効果を、定量的・客観的・具体的に認識できるような実施例が一切記載されていないのみならず、本願発明の発明特定事項の記載や本願明細書の【0021】~【0024】等の記載から、「アクリレート及び/又はメタクリレート系オリゴマー」、「アクリレート及び/又はメタクリレート系モノマー」、「アクリレート及び/又はメタクリレート系UV遮断剤」、「光開始剤」のいずれかが、「可撓性」、「生体適合性」、「長期保存性」、「高屈折率」、「疎水性」という本願発明の課題の解決に寄与する効果を奏し得ることを当業者が認識できたとは認められない。
また、平成30年4月5日付け意見書に記載された試験結果は、試験に供した組成物の配合成分、配合量が不明なものであり、当該組成物が本願発明の発明特定事項を具備するか否かも明らかでないので、当該試験結果が本願明細書の記載に基づいたものであることを確認できない。
したがって、審判請求人の主張は、いずれも理由がない。
(5)小括
以上のとおり、特許請求の範囲の請求項1の記載は、記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許を受けることができないものであり、また、本願の請求項1に係る記載は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、その他の請求項について検討するまでもなく、この出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-001374