特許異議申立
2019-700874
物品搬送システム、搬送装置及び物品搬送方法
- 審判番号
- 2019-700874
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-024780
- 登録番号
- 特許第6510436号(P6510436)
- 請求日
- 2019年11月07日
- 審決日
- 2020年08月26日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
- 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 【権利者代理人】戸田 裕二
- 【異議申立人】楠 文経
- 審判長/審判官
- 審判長 平田 信勝
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 井上 信
- 分類
- P1652.851-YAA(B65G) / P1652.853-YAA(B65G) / P1652.857-YAA(B65G) / P1652.121-YAA(B65G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6510436号発明「物品搬送システム、搬送装置及び物品搬送方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6510436号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、3~5〕、2、〔6及び7〕、〔8~10〕、〔11及び12〕、13、14及び15について訂正することを認める。
特許第6510436号の請求項1、13、15に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6510436号の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成28年2月12日に出願され、平成31年4月12日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月8日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1、13及び15に係る特許について、令和1年11月7日に特許異議申立人楠文経(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和1年12月26日付け取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年3月9日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、令和2年6月18日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年3月9日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の(1)~(9)のとおりである(下線は訂正箇所であり、当審で付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記複数の収納部を取得する取得部」を、「前記複数の収納部の其々を移動した経路に従った順で取得する取得部」に、また、「前記取得した複数の収納部を積載する積載部」を、「前記取得した複数の収納部を前記移動した経路に従った順で積重して積載する積載部」に訂正する(請求項1を引用する請求項3~5も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の「前記搬送装置は、ピッキング作業を行う場所である作業ステーションに到着すると、前記積載部が作業者の方向へ向くよう、回転させる回転部を有することを特徴とする請求項1に記載の物品搬送システム。」を「棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納している記憶部、前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索する収納部検索部、前記収納部検索部が検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成する経路生成部、及び、生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信する送信部を備えるコントローラと、前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部を取得する取得部、及び、前記取得した複数の収納部を積載する積載部を備える搬送装置と、を有し、前記搬送装置は、ピッキング作業を行う場所である作業ステーションに到着すると、前記積載部が作業者の方向へ向くよう、回転させる回転部を有することを特徴とする物品搬送システム。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の「前記コントローラは、前記搬送装置が、次の前記収納部を取得するまでの時間が所定の時間以上となる場合、前記搬送装置の経路を変更する経路変更部を有することを特徴とする請求項1に記載の物品搬送システム。」を「棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納している記憶部、前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索する収納部検索部、前記収納部検索部が検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成する経路生成部、及び、生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信する送信部を備えるコントローラと、前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部を取得する取得部、及び、前記取得した複数の収納部を積載する積載部を備える搬送装置と、を有し、前記コントローラは、前記搬送装置が、次の前記収納部を取得するまでの時間が所定の時間以上となる場合、前記搬送装置の経路を変更する経路変更部を有することを特徴とする物品搬送システム。」に訂正する(請求項6を引用する請求項7も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8の「移動可能に設置されている棚である移動棚を搬送する棚搬送装置を有することを特徴とする請求項1に記載の物品搬送システム。」を「棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納している記憶部、前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索する収納部検索部、前記収納部検索部が検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成する経路生成部、及び、生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信する送信部を備えるコントローラと、前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部を取得する取得部、及び、前記取得した複数の収納部を積載する積載部を備える搬送装置と、移動可能に設置されている棚である移動棚を搬送する棚搬送装置と、を有することを特徴とする物品搬送システム。」に訂正する(請求項8を引用する請求項9及び10も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11の「前記コントローラは、人が操縦している非自律移動装置の位置を取得し、前記非自律移動装置の位置から所定範囲を走行禁止領域とする禁止領域設定部を有することを特徴とする請求項1記載の物品搬送システム。」を「棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納している記憶部、前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索する収納部検索部、前記収納部検索部が検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成する経路生成部、及び、生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信する送信部を備えるコントローラと、前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部を取得する取得部、及び、前記取得した複数の収納部を積載する積載部を備える搬送装置と、を有し、前記コントローラは、人が操縦している非自律移動装置の位置を取得し、前記非自律移動装置の位置から所定範囲を走行禁止領域とする禁止領域設定部を有することを特徴とする物品搬送システム。」に訂正する(請求項11を引用する請求項12も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13の「前記複数の収納部を取得する取得部」を、「前記複数の収納部の其々を移動した経路に従った順で取得する取得部」に、また、「前記取得した複数の収納部を積載する積載部」を、「前記取得した複数の収納部を前記移動した経路に従った順で積重して積載する積載部」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項14の「ピッキング作業を行う場所である作業ステーションに到着すると、前記積載部が作業者の方向へ向くよう、回転させる回転部を有することを特徴とする請求項13に記載の搬送装置。」を「棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納しており、前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索し、検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成し、生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信するコントローラから前記経路の情報を受信する受信部と、前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部を取得する取得部と、前記取得した複数の収納部を積載する積載部と、ピッキング作業を行う場所である作業ステーションに到着すると、前記積載部が作業者の方向へ向くよう、回転させる回転部と、を有することを特徴とする搬送装置。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項15の「前記複数の収納部を取得し、」を、「前記複数の収納部の其々を移動した経路に従った順で取得し、」に、また、「前記取得した複数の収納部を積載する」を、「前記取得した複数の収納部を前記移動した経路に従った順で積重して積載する」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0009】の「前記した課題を解決するため、本発明は棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納している記憶部、前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索する収納部検索部、前記収納部検索部が検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成する経路生成部、及び、生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信する送信部を備えるコントローラと、前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部を取得する取得部、及び、前記取得した複数の収納部を積載する積載部を備える搬送装置と、を有することを特徴とする。」を、「前記した課題を解決するため、本発明は棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納している記憶部、前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索する収納部検索部、前記収納部検索部が検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成する経路生成部、及び、生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信する送信部を備えるコントローラと、前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部の其々を移動した経路に従った順で取得する取得部、及び、前記取得した複数の収納部を前記移動した経路に従った順で積重して積載する積載部を備える搬送装置と、を有することを特徴とする。」に訂正する。
(10)一群の請求項について
訂正前の請求項1~12について、請求項2~12は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正前の請求項13及び14について、請求項14は請求項13を引用するものである。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~12〕、〔13及び14〕、15に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~12〕について請求されたものである。
なお、訂正後の請求項2、6及び7、8~10、11及び12並びに14については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めるものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「取得部」及び「積載部」に関し、それぞれ技術的に限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。
また、訂正事項1による技術的限定は、明細書の段落【0074】~【0083】及び【図17】~【図19】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であるといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないと認められる。
イ 訂正事項1によって請求項1の記載が訂正されることにともなって、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する、請求項3~5も訂正されることとなる。そして、請求項3~5については、特許異議の申立てがされていない。
したがって、訂正後の請求項3~5に係る発明については、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないこととなるので、以下、この点について検討する。
訂正後の請求項3~5に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明をさらに限定した発明である。
ここで、訂正後の請求項1に係る発明は、後記「第4 3(1)」に説示のとおり、後記「第4 1」の甲第1~3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないし、また、甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、その他の特許要件について特許を見直すべき新たな事情は存在しない。
したがって、訂正後の請求項1に係る発明をさらに限定した訂正後の請求項3~5に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(2)訂正事項2~5について
訂正事項2~5は、訂正前の請求項2、6、8及び11が、訂正前の請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用形式を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、他の請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であるといえ、これら訂正事項2~5が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であるといえること、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(3)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項13の「取得部」及び「積載部」に関し、それぞれ技術的に限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。
また、訂正事項6による技術的限定は、明細書の段落【0074】~【0083】及び【図17】~【図19】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であるといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないと認められる。
(4)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項14が、訂正前の請求項13の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用形式を解消し、請求項13の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、他の請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であるといえ、訂正事項7が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であるといえること、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(5)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項15の「収納部」の取得、及び、積載に関し、それぞれ技術的に限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。
また、訂正事項8による技術的限定は、明細書の段落【0074】~【0083】及び【図17】~【図19】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であるといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないと認められる。
(6)訂正事項9について
訂正事項9は、上記(1)の請求項1の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項9は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~5〕、2、〔6及び7〕、〔8~10〕、〔11及び12〕、13、14及び15について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~15に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、特許異議申立てに係る請求項1、13及び15に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明13」及び「本件発明15」という。)は次のとおりのものである。
[本件発明1]
「棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納している記憶部、
前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索する収納部検索部、
前記収納部検索部が検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成する経路生成部、
及び、生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信する送信部
を備えるコントローラと、
前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部の其々を移動した経路に従った順で取得する取得部、
及び、前記取得した複数の収納部を前記移動した経路に従った順で積重して積載する積載部
を備える搬送装置と、
を有することを特徴とする物品搬送システム。」
[本件発明13]
「棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納しており、
前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索し、
検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成し、
生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信するコントローラから前記経路の情報を受信する受信部と、
前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部の其々を移動した経路に従った順で取得する取得部と、
前記取得した複数の収納部を前記移動した経路に従った順で積重して積載する積載部と、
を有することを特徴とする搬送装置。」
[本件発明15]
「コントローラが、
棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納し、
前記収納部の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の収納部の前記棚における収納位置を検索し、
検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成し、
生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信し、
搬送装置が、
前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部の其々を移動した経路に従った順で取得し、
前記取得した複数の収納部を前記移動した経路に従った順で積重して積載する
ことを特徴とする物品搬送方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、13及び15に係る特許に対して、当審が令和1年12月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
・本件特許の請求項1、13及び15に係る発明は、甲第1~3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。よって、請求項1、13及び15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開平11-322027号公報
甲第2号証:特公平7-47403号公報
甲第3号証:特開2004-277062号公報
甲第1号証~甲第3号証は、それぞれ、特許異議申立人の提出した甲第1号証~甲第3号証である。
2 甲第1号証の記載事項及び発明
(1)甲第1号証の記載事項
上記甲第1号証には【図1】~【図8】と共に、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
「【請求項1】 仕向先店舗ごとの商品収集用の搬送車を商品収集経路に沿って移動させながら、該収集経路に沿って設けられた商品保管部から商品を品目ごとに指定された個数ずつピッキングして搬送車に集品する商品仕分けシステムであって、仕向先店舗からの受注商品の品目ごとの受注個数を記憶する受注データ記憶手段と、商品保管部の品目ごとのロケーションデータを記憶する商品ロケーションデータ記憶手段と、上記搬送車に装備されて該搬送車を走行させる駆動手段と、上記受注データ記憶手段に記憶された受注データと上記商品ロケーションデータ記憶手段に記憶されたロケーションデータとに基づいて、当該搬送車が上記収集経路に設定された所定の停止地点に移動するように搬送車に装備された駆動手段を制御する運行制御手段と、上記受注データ記憶手段に記憶された受注データに基づいて商品保管部からの商品の品目ごとのピッキング個数を表示する表示手段とが設けられていることを特徴とする商品仕分けシステム。」
「【請求項2】 受注データ記憶手段に記憶された受注データと上記商品ロケーションデータ記憶手段に記憶されたロケーションデータとに基づいて、搬送車を商品収集経路に設定された所定の停止地点に移動させる運行パターンを生成する運行パターン生成手段が設けられていると共に、運行制御手段は、該生成手段で生成された運行パターンに従って搬送車に装備された駆動手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の商品仕分けシステム。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、商品の流通過程で用いられるピッキングシステムやソーティングシステムなどの商品仕分けシステムに関する。」
「【0002】
【従来の技術】スーパーマーケットやコンビニエンスストア向け商品の配送センターなどにおいては、各店舗からの要求に応じて各種の商品を要求個数だけ取り揃えるという集品作業が行なわれるが、この集品方法として、例えば仕向先別の商品収集容器を搬送しながら、その搬送経路に沿って設けられた商品保管部から注文商品を要求個数ずつ取り出して上記収集容器内に集品するピッキング方式と、各商品を品目ごとに搬送しながら、その搬送経路に沿って設けられた仕向先別の商品収納部に仕向先ごとに商品を要求個数ずつ投入していくソーティング方式とがある。」
「【0028】まず、ピッキングシステムに適用した実施の形態について説明すると、この実施の形態に係るピッキングシステムにおいては、図1に示すように、商品収集経路において自走式の搬送車1…1を誘導するための主誘導帯2aが実線の矢印で示すように蛇行状に敷設されており、この主誘導帯2aに沿って設けられた複数の作業ブロックB…Bには、主誘導帯2aの両側に位置して複数の商品棚3…3が各一列に対向配置されている。これらの商品棚3…3は、片側2個ずつ、計4個で1組の作業ブロックBが構成されている。各々の商品棚3…3には、図2に示すように、ピッキング用の商品b…bを品目ごとに貯留保管する多数のポケット4…4が設けられている。
【0029】上記主誘導帯2a上には、各作業ブロックB…Bに対応して上記搬送車1の停止ポイントP…Pが設定されている。そして、この実施の形態においては、商品棚3…3の配列方向に対して直交する方向に敷設された副誘導帯2b…2bで主誘導帯2aの中間部分が連結されており、これらの副誘導帯2b…2bと主誘導帯2aとで格子状の商品収集経路が形成されている。この収集経路の入口部5aの近傍には、集品作業を統合管理する作業管理装置が6が設置されていると共に、該収集経路の出口部5bから出てきた主誘導帯2aは、側方からの副誘導帯2bと合流した後、商品出荷エリア7を通って上記入口部5aへと循環するようになっている。そして、この収集経路の適宜の位置に作業者a…aが配置されている。図例の場合、収集経路の入口部に近い場所には密に、遠くにはまばらに作業者a…aが配置されている。」
「【0031】一方、上記搬送車1には、図4、図5に示すように、図面上の右方に位置する車体10の前部に制御ボックス11が搭載されていると共に、該制御ボックス11の上部に車載コンピュータ12が設置されている。上記車体10の後部には、前後一対の支持フレーム13,14が立設されており、両フレーム13,14間に掛け渡された上部架台15と、車体上面を利用した下部架台16とに複数個の配送コンテナC…Cが積載できるようになっている。また、車体10の下側には走行用の前輪17,17及び後輪18,18が設けられており、本実施の形態においては前輪17,17が車体10に内蔵された駆動装置19で駆動されるようになっている。なお、車体10には駆動装置19を制御する走行用コントローラ20が内蔵されている。」
「【0036】次に、このピッキングシステムの運用例を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0037】すなわち、商品収集経路の入口部5aに配置された作業者aが作業管理装置6に今回の仕向先の店番号を入力すると、作業管理装置6は該当番号に対応する店舗の受注データを呼び出し、該受注データと予め登録された商品の保管場所を示すロケーションデータとに基づいて、当該店舗向けの作業データと、搬送車1が最短距離を移動させるための運行パターンとを生成して、これらのデータを入口部5aに停車している搬送車1の車載コンピュータ12に一括して送信する(ステップS1~S4)。
【0038】ここで、例えば図8に示すように、(ア)~(オ)の商品棚3…3に商品が保管されているものとすると、図の矢印に沿って搬送車1が移動するように運行パターンが生成される。なお、上記作業データには、例えば店舗コード、店舗名、配送先などの配送ルートに関する項目と共に、当該店舗向けの品目ごとの商品コード、商品名、受注個数、商品棚3…3の各ポケット4…4のアドレスを示すロケーション番号などのピッキングに関する項目とが含まれる。
【0039】車載コンピュータ12のコンピュータ本体30は、作業管理装置6から送信されてきた作業データをメモリ36に格納すると共に、運行パターンを走行用コントローラ20のメモリ25に転送記憶させる。これにより、走行用コントローラ20が作動して、運行パターンに従って移動を開始し、最初の停止ポイントを検知したときに当該搬送車1を停車させた後、表示部31に図5に示すように作業データを表示させる(ステップS5~S7)。このとき、商品が存在する方の方向指示ランプ35a,35bが点灯する。
【0040】搬送車1が停車すると、付近に配置された作業者aが搬送車1のところに行き、ピッキング作業を開始する。すなわち、作業者aは、表示部31の画面表示を見て、商品棚3のポケット4から該当商品を表示個数だけピッキングした後、バーコードスキャナ21を用いて商品コードを読み取る(ステップS8,S9)。その後、商品を配送コンテナCに投入した後、完了ボタン32をON操作する(ステップS10,S11)。このON信号を受信したコンピュータ本体30は、作業データを消し込む。作業者aは、次いで配送コンテナCが満杯か否かを判定して、満杯であると判定したときには満杯ボタン34をON操作する(ステップS12,S13)。これにより、ラベルプリンタ22から配送ラベルが発行される(ステップS14)。発行された配送ラベルは作業者aによって配送コンテナCに貼付される。」
(2)甲第1号証に記載の発明
上記(1)によれば、甲第1号証は、以下の発明(以下「甲1発明」という。)を開示していると認められる。
[甲1発明]
「受注データ記憶手段と、商品棚3の品目ごとのロケーションデータを記憶する商品ロケーションデータ記憶手段とを備え、
受注データと商品ロケーションデータとに基づいて、搬送車1の運行パターンと店舗向け作業データとを作成し、作成した運行パターンと、店舗向け作業データとを搬送車1に送信する、作業管理装置6と、
運行パターンに従って移動し、ピッキング作業位置で停車し、作業者aによって商品がピッキングされ、当該商品を投入される配送コンテナCを積載した搬送車1と、
を備える商品仕分けシステム。」
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「商品棚3」は、本件発明1の「棚」に相当する。そして、甲1発明の「ロケーションデータ」は、商品棚3に格納されている商品(物品)の位置に関する情報といえるから、本件発明1の「棚に格納されている収納部の位置に関する情報」との対比において、「棚に格納されている物品の位置に関する情報」の限度で共通する。
また、甲1発明の「商品ロケーションデータ記憶手段」は、本件発明1の「記憶部」に相当する。
したがって、甲1発明の「商品棚3の品目ごとのロケーションデータを記憶する商品ロケーションデータ記憶手段」は、本件発明1の「棚に格納されている収納部の位置に関する情報を格納している記憶部」との対比において、「棚に格納されている物品の位置に関する情報を格納している記憶部」との限度で共通する。
(イ)甲1発明は、「受注データと商品ロケーションデータとに基づいて」対象店舗向けのピッキング対象となっている複数の商品の商品棚3における収納位置を検索し、当該検索の結果に従い、「搬送車1の運行パターン」「を作成」するものといえる(甲第1号証の段落【0037】、【0038】を参照。)。ここで、甲1発明の「搬送車1」は、本件発明1の「搬送装置」に相当し、「搬送車1の運行パターン」は、物品の位置を巡回する経路であるといえるから、本件発明1の「経路」ないし「経路の情報」に相当する。
したがって、当業者における技術的常識を勘案すれば、甲1発明の「受注データと商品ロケーションデータとに基づいて、搬送車1の運行パターンと店舗向け作業データとを作成」することの前提として、本件発明1の「複数の収納部の前記棚における収納位置を検索する収納部検索部」及び「前記収納部検索部が検索した各収納部の位置を巡回する経路を生成する経路生成部」に相当する構成を甲1発明は備えているといえる(なお、検索部及び経路生成部における客体は、甲1発明では商品であり、本件発明1では、収納部となる。)。
(ウ)甲1発明の「作業管理装置6」は、「作成した運行パターンと、店舗向け作業データとを搬送車1に送信する」機能を備えるものであるところ、「店舗向け作業データ」には、商品(物品)の収納位置が含まれていることは明らかである。
したがって、甲1発明の「作成した運行パターンと、店舗向け作業データとを搬送車1に送信する」ことは、本件発明1の「生成した前記経路の情報と、前記収納部の収納位置と、を搬送装置に送信する」こととの対比において、「生成した前記経路の情報と、前記物品の収納位置と、を搬送装置に送信する」ことの限度で共通する。
そして、甲1発明が本件発明1の「送信部」に相当する構成を備えることは明らかである。
(エ)上記(ア)~(ウ)を踏まえると、甲1発明の「作業管理装置6」は、本件発明1の「コントローラ」に相当する。
(オ)甲1発明の搬送車1は、運行パターンに従って移動するものであり、経路の情報に従って自律移動しているといえる。また、「運行パターンに従って移動し、ピッキング作業位置で停車し、作業者aによって商品がピッキングされ、当該商品を投入される配送コンテナCを積載した」ものとされているから、商品の収納位置に基づいて複数の商品の其々を、搬送車1が移動した経路に従った順で取得するものであるといえる。
さらに、甲1発明の搬送車1は、作業車aによってピッキングされた商品が投入される配送コンテナCを積載しているから、取得した複数の物品を積載する積載部を備えているといえる。
したがって、甲1発明の「運行パターンに従って移動し、ピッキング作業位置で停車し、作業者aによって商品がピッキングされ、当該商品を投入される配送コンテナCを積載した搬送車1」は、本件発明1の「前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記収納部の収納位置に基づいて、前記複数の収納部の其々を移動した経路に従った順で取得する取得部、及び、前記取得した複数の収納部を前記移動した経路に従った順で積重して積載する積載部を備える搬送装置」との対比において、「前記経路の情報に従って自律移動しつつ前記物品の収納位置に基づいて、前記複数の物品の其々を移動した経路に従った順で取得し、前記取得した複数の物品を積載する積載部を備える搬送装置」との限度で共通する。
(カ)甲1発明の「商品仕分けシステム」は、本件発明1の「物品搬送システム」に相当する。
(キ)以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点]
「棚に格納されている物品の位置に関する情報を格納している記憶部、
前記物品の位置に関する情報を基に、ピッキング対象となっている、複数の物品の前記棚における収納位置を検索する物品検索部、
前記物品検索部が検索した各物品の位置を巡回する経路を生成する経路生成部、
及び、生成した前記経路の情報と、前記物品の収納位置と、を搬送装置に送信する送信部
を備えるコントローラと、
前記経路の情報に従って自律移動しつつ、前記物品の収納位置に基づいて、前記複数の物品の其々を移動した経路に従った順で取得し、前記取得した複数の物品を積載する積載部
を備える搬送装置と、
を有する物品搬送システム。」
[相違点1]
棚に収納されており、ピッキングの対象となっている物品が、本件発明1は「収納部」であるのに対し、甲1発明は「商品」である点。
[相違点2]
搬送装置に関し、本件発明1は、複数の収納部を取得する「取得部」を備え、また、取得した複数の収納部を「前記移動した経路に従った順で積重して積載する積載部」を備えるものであるのに対し、甲1発明は、商品の取得については、「作業者aによって商品がピッキングされ」るものであり、商品の積載については、「当該商品を」「配送コンテナC」に投入するものであり、商品を移動した経路に従った順に積重するものとはされていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(ア)甲第2号証に記載のものは、無人搬送ロボット車6(本件発明1の「搬送装置」に相当する。)が、マニピュレータ手段23(本件発明1の「取得部」に相当する。)を備えているものの、当該マニピュレータ手段23によって取得された物品を無人搬送ロボット車6に積重するものではない。また、甲第3号証に記載の無人搬送車1においても同様に、無人搬送車1に備えられた移載ロボット6によって無人搬送車1に移載された物品5を無人搬送車1に積重するものではない。
したがって、甲1発明において、甲第2号証及び甲第3号証に記載の技術的事項を適用しても相違点2に係る本件発明1の構成には至らない。
また、仮に、搬送装置において、取得部が複数の物品の其々を移動した経路に従った順で取得し、積載部が、当該取得した複数の物品を移動した経路に従った順で積重して積載するという技術的事項が、当業者において本件特許出願前において周知・慣用であったとしても(特許異議申立人が令和2年6月18日付けの意見書に添付した甲第4号証(特開平7-237710号公報)、甲第5号証(特開2004-352481号公報)、甲第6号証(国際公開第2014/011459号)、甲第7号証(特開平3-243526号公報)、及び、甲第8号証(特開昭62-255320号公報)を参照。)、甲1発明において、甲第2号証に記載のマニピュレータ手段23、あるいは、甲第3号証に記載の移載ロボット6を適用し、物品を取得手段により取得するように構成し、さらに、上記周知・慣用の技術的事項を適用し、取得した物品を積重するよう構成することは、いわゆる容易の容易というべきであって、当業者であっても容易にはなし得ない(なお、この点については、下記(イ)も参照。)。
(イ)甲1発明は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向け(仕分先店舗ごと)の各種の商品を、各店舗からの要求に応じて要求個数だけ取り揃えるための商品仕分けシステムであるところ(甲第1号証の段落【0002】及び【0053】を参照。)、各種の商品には、様々な形状があるため(甲第1号証の【図2】を参照。)、必ずしも全ての商品が「積重」に適している形状ではない。このような事情に鑑みて、甲1発明においては、作業者aによってピッキングされた商品は、配送コンテナCに投入されるものとされていると解される。
そうしてみると、仮に、搬送装置において、取得部が複数の物品の其々を移動した経路に従った順で取得し、積載部が、当該取得した複数の物品を移動した経路に従った順で積重して積載するという技術的事項が、当業者において本件特許出願前において周知・慣用であったとしても、全てのピッキング対象商品が必ずしも積重に適する形状とはされていない甲1発明の搬送車1において、ピッキングされた商品を配送コンテナCに投入することに代えて、(移動した経路に従った順に)積重するものとすることは、当業者であっても容易になし得たものとはいえない。
(ウ)したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1~3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないし、また、甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)本件発明13について
本件発明13は、本件発明1の「コントローラ」と「物品搬送装置」を「備える」「物品搬送システム」を「搬送装置」の観点から構成(表現)したものであり、実質的には、本件発明1の「物品搬送システム」と同じである。
したがって、上記(1)イと同様の理由により、本件発明13は、甲第1~3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないし、また、甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明15について
本件発明15は、本件発明1の「物品搬送システム」を方法として表現したものであり、実質的には、本件発明1の「物品搬送システム」と同じである。
したがって、上記(1)イと同様の理由により、本件発明15は、甲第1~3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないし、また、甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1、13及び15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、13及び15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700874