特許異議申立
2019-700784
電力増幅器出力と負荷電圧クランプ回路の絶縁を組み合わせるための変圧器を組み込んだ電源回路
- 審判番号
- 2019-700784
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-574954外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年10月02日
- 審決日
- 2021年04月20日
- 公報発行日
- 2021年08月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.121-YAA(H02M) / P1651.113-YAA(H02M) / P1651.537-YAA(H02M) / P1651.54 -YAA(H02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第1項、特許法第36条、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第184条の4第1項、特許法第49条第6号、特許法第113条第5号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6496329号発明「電力増幅器出力と負荷電圧クランプ回路の絶縁を組み合わせるための変圧器を組み込んだ電源回路」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6496329号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、〔10-18〕、〔19-24〕について訂正することを認める。
特許第6496329号の請求項1ないし24に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6496329号の請求項1ないし24に係る特許についての出願は、2015年6月29日(パリ条約による優先権主張 2014年6月30日 米国、2015年6月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年3月15日にその特許権の設定登録がされ、同年4月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 1年10月 2日 :特許異議申立人岡田誠により特許異議の申立て
令和 1年12月 5日付け:取消理由通知
令和 2年 3月 9日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 2年 5月19日付け:訂正拒絶理由通知
令和 2年 7月14日 :特許権者による意見書の提出
令和 2年10月 2日 :特許異議申立人岡田誠による意見書の提出
令和 2年10月27日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 3年 2月 2日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 3年 3月19日 :特許異議申立人岡田誠による意見書の提出
令和2年3月9日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げたものとみなす。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和3年2月2日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「負荷に電流を供給する変圧器」と記載されているのを、「AC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」に訂正する(請求項1を引用する請求項2から6、9も同様に訂正する)。
さらに、特許請求の範囲の請求項1に「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し」と記載されているのを、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し」に訂正する(請求項1を引用する請求項2から6、9も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の記載が請求項5を引用しているのを、請求項1を引用するように訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7の記載が請求項1を引用しているのを、従属関係を解消するように訂正する(請求項7を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「負荷に電流を供給する変圧器」と記載されているのを、「プラズマチャンバにAC出力を供給する変圧器」に訂正する(請求項10を引用する請求項11から15も同様に訂正する)。
さらに、特許請求の範囲の請求項10に「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと」と記載されているのを、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限することと」に訂正する(請求項10を引用する請求項11から15も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項15の記載が請求項14を引用しているのを、請求項10を引用するように訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項16の記載が請求項10を引用しているのを、従属関係を解消するように訂正する(請求項16を引用する請求項17、18も同様に訂正する)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項19に「負荷に電流を供給する変圧器」と記載されているのを、「AC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20、21も同様に訂正する)。
さらに、特許請求の範囲の請求項19に「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと」と記載されているのを、「受け取って変換するための前記手段とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20、21も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項22の記載が請求項19を引用しているのを、従属関係を解消するように訂正する(請求項22を引用する請求項23、24も同様に訂正する)。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0016】の【図42】に続く記載中に「絶縁された組ダイオードの整流」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオードの整流」に訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の段落【0016】の【図43】に続く記載中に「絶縁された組ダイオードの整流」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオードの整流」に訂正する。
(13)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし9は、請求項2ないし9が、訂正の対象である請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし9に対応する訂正後の請求項1ないし9も一群の請求項である。
訂正前の請求項10ないし18は、請求項11ないし18が、訂正の対象である請求項10を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項10ないし18に対応する訂正後の請求項10ないし18も一群の請求項である。
訂正前の請求項19ないし24は、請求項20ないし24が、訂正の対象である請求項19を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項19ないし24に対応する訂正後の請求項19ないし24も一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-9〕、請求項〔10-18〕及び請求項〔19-24〕について請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-9〕、請求項〔10-18〕及び請求項〔19-24〕について請求されたものである。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許に係る出願(特願2016-574954号)は、特許法第184条の4第1項の「外国語特許出願」である国際出願PCT/US2015/038338(以下、「本件国際出願」という。)が、同法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされたものである。
したがって、本件訂正請求に係る訂正事項のうち、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものについて、同条第5項を適用する際の「外国語書面出願」及び「外国語書面」は、同法第184条の19の規定により、それぞれ「第184条の4第1項の外国語特許出願」及び「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」となるので、同法第126条第5項で規定する「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」は、「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」となる。
すなわち、本件訂正請求に係る訂正事項のうち、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものについて、同条第5項を適用する際の「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」は、国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面となる(以下、「国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」を「基準明細書等」という。)。
そして、「国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面の中の説明」の「翻訳文」及び「図面」を「明細書等」という。また、当該「明細書の翻訳文」、「請求の範囲の翻訳文」、「図面」及び「図面の翻訳文」を、それぞれ、「明細書」、「特許請求の範囲」、「図面」という。
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、請求項1に記載されている「負荷」、「電流を供給する変圧器」を、それぞれ「AC信号によって駆動される負荷」、「AC出力を供給する変圧器」に限定するものである。
さらに、訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に記載されている「整流器およびクランプ回路」が「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し」とあるのを、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し」に限定するものである。
したがって、許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)明細書の段落【0019】には「電圧インバータ回路は全体的に10で示されており、11における直流(DC)電圧源入力および12における交流(AC)出力を有する。」、同段落【0105】には「図37は、負荷90にAC信号を供給するように並列に結合された回路の半分AとBを有する回路を表すものである。」と記載されている。
また、同段落【0128】には「電力増幅器に含まれる2つの出力は、交流(AC)出力信号を出力する。」と記載されており、図42から電力増幅器の2つの出力が変圧器T1に入力され、変圧器T1の出力端子が負荷に接続されていることが見て取れるので、変圧器T1は交流(AC)出力信号が入力され、負荷へ交流(AC)出力信号を供給することが読み取れる。
これらの記載を総合すると、「AC信号によって駆動される負荷」、「AC出力を供給する変圧器」は、明細書及び図面の記載から自明な事項であるといえる。
(イ)明細書の段落【0003】には「電力増幅器から引き出され負荷に供給される電流が特定のしきい値を超過するなど、不整合状態(たとえば負荷インピーダンスの増加)および/または他の状態が発生すると、ある期間にわたって電力増幅器に被害が生じることがある。」と、電力増幅器と負荷との間にインピーダンスの増加など不整合状態が発生すると、電力増幅器に被害が生じることがあるという課題が示されている。
そして、同段落【0154】には「前述の例は、不整合負荷状態の間、電力増幅器を保護するものである。不整合負荷状態は、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していないときを指す。電源回路に含まれる整流器およびクランプ回路は、たとえば変圧器の巻線比を調整することにより、適切な(または所定の)保護電圧に整合され得る。電圧クランプ保護は、DC電流経路に設けられるのではなく、絶縁されたやり方でAC電流経路に設けられる。たとえば図42~図44および図48、図49の整流器およびクランプ回路は、供給された電力のDC-AC変換の後に、変圧器の下流に設けられる。これは、クランプ電圧制御の順応性を向上させ、回路構成要素を最小限にする(たとえば電圧クランプのために使用されるダイオードの数を最小限に抑える)。クランプ電圧は、0~V+の間の電圧範囲ばかりではなく、V-~0の間の電圧範囲も制御される。これによって、AC電圧の振幅およびクランプを調整することが可能になる。」と、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していない不整合負荷状態の間、クランプ回路がAC電流経路の電圧を保護電圧にクランプすることが記載されている。
さらに、同段落【0141】に「図46のシミュレーションプロットのシミュレーションに関して、100μsにおいて負荷のインピーダンスが増加し始め、それによって電力増幅器の出力電流が増加する。」と、負荷のインピーダンスが増加することにより、電力増幅器との間でのインピーダンス不整合状態が生じて、出力電流が増加することが記載されている。
そうすると、段落【0154】記載の電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していない不整合負荷状態とは、電力増幅器と負荷との間のインピーダンス不整合状態と理解できる。
よって、「電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプ」することは、明細書及び図面の記載から自明な事項であるといえる。
(ウ)したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項1は上述のとおり、訂正前の請求項1に係る発明について特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
基準明細書等の特許請求の範囲の請求項4には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されている。
そうすると、訂正前の請求項4に記載されている「絶縁された組ダイオード整流器」は、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」の誤訳である。
したがって、特許請求の範囲の請求項4に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
基準明細書等の特許請求の範囲の請求項4には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されているので訂正事項2は、基準明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項2は誤訳の訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
請求項5において「全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオード」と記載しているにもかかわらず、請求項5を引用する訂正前の請求項6において「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」と記載されており請求項6の記載が明確でなかったものを、請求項6の引用先を請求項1にすることよって明確にするものであり、許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
明細書の段落【0016】には「【図44】電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する別の電源回路を説明する図である。」及び【0137】には「図44の整流器およびクランプ回路は、ダイオードCR1、CR2を含む。図44の整流器およびクランプ回路は、図42、図43の整流器およびクランプ回路とは異なり、ダイオードCR3およびCR4を含まない。」と記載されいることから、明確になった「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」は、明細書等に記載した事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項3は請求項6の「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」の記載を変更しておらず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項7について、請求項1との引用関係を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、請求項10に記載されている「負荷」、「電流を供給する変圧器」を、それぞれ「プラズマチャンバ」、「AC出力を供給する変圧器」に限定するものである。
さらに、訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項10に記載されている「整流器およびクランプ回路」が「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限する」とあるのを、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限する」に限定するものである。
したがって、許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)明細書の段落【0096】に「図30は、本明細書で説明された選択される電源が、システムにおいてプラズマチャンバを制御するために使用され得る制御システムを表すものである。・・・プラズマコントローラ60は、電圧発生器68によってプラズマチャンバに印加されるべき所望の入力電力を割り出す。・・・電源72からの電圧出力は、電源72とプラズマチャンバ52の間のインピーダンスを整合させる整合回路74に入力される。」との記載されているので、「負荷」が、具体的には「プラズマチャンバ」であることは明らかである。
また、同段落【0128】には「電力増幅器に含まれる2つの出力は、交流(AC)出力信号を出力する。」と記載されており、図42から電力増幅器の2つの出力が変圧器T1に入力され、変圧器T1の出力端子が負荷に接続されていることが見て取れるので、変圧器T1は交流(AC)出力信号が入力され、負荷へ交流(AC)出力信号を供給することが読み取れる。そうすると、「AC出力を供給する変圧器」は上記記載から自明な事項である。
(イ)上記(ア)で検討したように、「負荷」が、具体的には「プラズマチャンバ」であることは明らかである。
そして、明細書の段落【0003】には「電力増幅器から引き出され負荷に供給される電流が特定のしきい値を超過するなど、不整合状態(たとえば負荷インピーダンスの増加)および/または他の状態が発生すると、ある期間にわたって電力増幅器に被害が生じることがある。」と、電力増幅器と負荷との間にインピーダンスの増加など不整合状態が発生すると、電力増幅器に被害が生じることがあるという課題が示されている。
また、同段落【0154】には「前述の例は、不整合負荷状態の間、電力増幅器を保護するものである。不整合負荷状態は、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していないときを指す。電源回路に含まれる整流器およびクランプ回路は、たとえば変圧器の巻線比を調整することにより、適切な(または所定の)保護電圧に整合され得る。電圧クランプ保護は、DC電流経路に設けられるのではなく、絶縁されたやり方でAC電流経路に設けられる。たとえば図42~図44および図48、図49の整流器およびクランプ回路は、供給された電力のDC-AC変換の後に、変圧器の下流に設けられる。これは、クランプ電圧制御の順応性を向上させ、回路構成要素を最小限にする(たとえば電圧クランプのために使用されるダイオードの数を最小限に抑える)。クランプ電圧は、0~V+の間の電圧範囲ばかりではなく、V-~0の間の電圧範囲も制御される。これによって、AC電圧の振幅およびクランプを調整することが可能になる。」と、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していない不整合負荷状態の間、クランプ回路がAC電流経路の電圧を保護電圧にクランプすることが記載されている。
さらに、同段落【0141】に「図46のシミュレーションプロットのシミュレーションに関して、100μsにおいて負荷のインピーダンスが増加し始め、それによって電力増幅器の出力電流が増加する。」と、負荷のインピーダンスが増加することにより、電力増幅器との間でのインピーダンス不整合状態が生じて、出力電流が増加することが記載されている。
そうすると、段落【0154】記載の電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していない不整合負荷状態とは、電力増幅器と負荷との間のインピーダンス不整合状態と理解できる。
よって、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限する」ことは、明細書及び図面の記載から自明な事項であるといえる。
(ウ)したがって、訂正事項5は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項5は上述のとおり、訂正前の請求項10に係る発明について特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
基準明細書等の特許請求の範囲の請求項13には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されている。
そうすると、訂正前の請求項13に記載されている「絶縁された組ダイオード整流器」は、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」の誤訳である。
したがって、特許請求の範囲の請求項13に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
基準明細書等の特許請求の範囲の請求項13には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されているので訂正事項6は、基準明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項6は誤訳の訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
請求項14において「全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオード」と記載しているにもかかわらず、請求項14を引用する訂正前の請求項15において「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」と記載されおり請求項15の記載が明確でなかったものを、請求項15の引用先を請求項10にすることよって明確にするものであり、許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
明細書の段落【0016】には「【図44】電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する別の電源回路を説明する図である。」及び【0137】には「図44の整流器およびクランプ回路は、ダイオードCR1、CR2を含む。図44の整流器およびクランプ回路は、図42、図43の整流器およびクランプ回路とは異なり、ダイオードCR3およびCR4を含まない。」と記載されいることから、明確になった「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」は、明細書等に記載した事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項7は請求項15の「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」の記載を変更しておらず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項8について
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項10を引用する請求項16について、請求項10との引用関係を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項19に記載されている「負荷」、「電流を供給する変圧器」を、それぞれ「AC信号によって駆動される負荷」、「AC出力を供給する変圧器」に限定するものである。
さらに、訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項19に記載されている「整流器およびクランプ手段」が「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限すること」とあるのを、「受け取って変換するための前記手段とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限すること」に限定するものである。
ここで、「受け取って変換するための前記手段」は、「第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するための手段」のことであり、即ち、DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器といえるものである。
そうすると、訂正事項1で検討したのと同様な理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(10)訂正事項10について
訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項19を引用する請求項22について、請求項19との引用関係を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(11)訂正事項11について
ア 訂正の目的
基準明細書等の段落[0049]には「FIG. 42 illustrates a power supply circuit incorporating a power amplifier and an isolated quad-diode rectification and clamping circuit in accordance with the present disclosure;」と記載されている。
そうすると、訂正前の明細書の段落【0016】の【図42】に続く記載中の「絶縁された組ダイオード整流器」は、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」の誤訳である。
したがって、明細書の段落【0016】の【図42】に続く記載中に「絶縁された組ダイオードの整流」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオードの整流」にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
基準明細書等の段落[0049]には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されているので訂正事項11は、基準明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項11は誤訳の訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(12)訂正事項12について
ア 訂正の目的
基準明細書等の段落[0050]には「FIG. 43 illustrates a power supply circuit incorporating a power amplifier and an isolated quad-diode rectification and clamping circuit in accordance with the present disclosure;」と記載されている。
そうすると、訂正前の明細書の段落【0016】の【図43】に続く記載中の「絶縁された組ダイオード整流器」は、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」の誤訳である。
したがって、明細書の段落【0016】の【図43】に続く記載中に「絶縁された組ダイオードの整流」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオードの整流」にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
基準明細書等の段落[0050]には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されているので訂正事項12は、基準明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項12は誤訳の訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3.訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、請求項〔10-18〕、請求項〔19-24〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし24に係る発明(以下「本件発明1」-「本件発明24」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。
【請求項2】
前記第1の巻線が1次巻線であり、前記第2の巻線が2次巻線であり、前記第3の巻線が3次巻線である請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記4つのダイオードが、絶縁された4つ組みダイオード整流器の構成で配置されている請求項3に記載の電源回路。
【請求項5】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項1に記載の電源回路。
【請求項6】
前記複数のダイオードが、絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求1に記載の電源回路。
【請求項7】
電源回路であって、
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路と、
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)第2の制御信号を受け取り、
前記第2の制御信号に基づいて、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、
前記変圧器が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項8】
前記制御信号および前記第2の制御信号が、それぞれ、第1の電力増幅器を、前記第2の電力増幅器に対して同相または逆相で動作させる請求項7に記載の電源回路。
【請求項9】
前記電力増幅器が、フルブリッジ構成に配置された複数のスイッチを含む請求項1に記載の電源回路。
【請求項10】
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してプラズマチャンバにAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。
【請求項11】
前記第1の巻線が1次巻線であり、前記第2の巻線が2次巻線であり、前記第3の巻線が3次巻線である請求項10に記載の電源回路。
【請求項12】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項13】
前記4つのダイオードが、絶縁された4つ組みダイオード整流器の構成で配置されている請求項12に記載の電源回路。
【請求項14】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項15】
前記複数のダイオードが、絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項16】
電源回路であって、
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように構成されている整流器およびクランプ回路と、
第2の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、
前記変圧器が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項17】
前記電力増幅器が、前記第2の電力増幅器に対して同相または逆相で動作する請求項16に記載の電源回路。
【請求項18】
前記電力増幅器と前記第2の電力増幅器が同一のユニットまたは別個のユニットである請求項16に記載の電源回路。
【請求項19】
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するための手段と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む、変圧のための手段であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取り、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取り、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧のための手段と、
受け取って変換するための前記手段とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように配置された複数のダイオードを含んでいる整流器およびクランプ手段とを備える電源回路。
【請求項20】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項19に記載の電源回路。
【請求項21】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項19に記載の電源回路。
【請求項22】
電源回路であって、
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するための手段と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む、変圧のための手段であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取り、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取り、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧のための手段と、
前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように配置された複数のダイオードを含んでいる整流器およびクランプ手段と、
第2の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するための第2の手段とを備え、
前記変圧のための手段が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項23】
前記変換するための手段が、前記変換するための第2の手段に対して同相または逆相で動作する請求項22に記載の電源回路。
【請求項24】
前記変換するための手段と前記変換するための第2の手段が同一のユニットまたは別個のユニットである請求項22に記載の電源回路。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和2年10月27日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)(新規性)請求項1ないし6、9、19ないし21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし6、9、19ないし21に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、請求項1ないし6、10ないし15、19ないし21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし6、10ないし15、19ないし21に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)(進歩性)請求項1ないし6、9、19ないし21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし6、9、19ないし21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献1:特開2004-40962号公報(甲第2号証)
引用文献2:特開昭58-26498号公報(令和2年10月2日提出の特許異議申立人による意見書の参考資料1)
2 引用文献の記載事項、引用発明
(1)引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様)。
「【0036】
図1は、本実施の形態のDC電源1の回路構成を示す図である。
同図によれば、DC電源1には、商用電源2から供給される3相交流電力が入力される。そして、DC電源1は、入力される交流電力を直流電力に変換し、プラズマ発生装置4へ出力する。即ち、DC電源1は、AC-DCコンバータとして機能する。
【0037】
また、DC電源1は、ブレーカ3、整流器11、直流フィルタ12、インバータ13、変圧器14、整流回路15、平滑コンデンサCF2、逆電圧発生回路20、着火電源回路30及び電力回生回路40を備えている。
【0038】
整流器11は、整流素子であるダイオード等を用いた3相全波整流回路であり、ブレーカ3を介して入力される3相交流電力を整流し、直流電力に変換する。整流器11の出力正端子は、直流フィルタ12の後述する直流リアクトルLF1の一端に、出力負端子は、直流フィルタ12の後述する平滑コンデンサCF1の他端に、それぞれ接続されている。
【0039】
直流フィルタ12は、直流リアクトルLF1と平滑コンデンサCF1とからなるLCフィルタであり、整流器11にて整流された直流電力を平滑する。
直流リアクトルLF1は、その一端が整流器11の出力正端子に、他端が平滑コンデンサCF1の一端に、それぞれ接続されている。」
「【0041】
インバータ13は、ブリッジ接続された4つの半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4及び共振リアクトルLRと共振コンデンサCFとが直列接続された直列共振タンクからなる直列共振型インバータである。
【0042】
半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4は、例えばIGBT等であり、そのゲートに入力される電圧信号(以下、「ゲート信号」という。)により、コレクタ-エミッタ間の導通/遮断状態(即ち、半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4のON/OFF)が制御される。」
「【0047】
そして、インバータ13は、相対向する2対の半導体スイッチ、即ち半導体スイッチQ1、Q4の対及び半導体スイッチQ2、Q3の対が交互にON/OFFを繰り返して、直流フィルタ12から入力される直流電力を、略正弦波交流に変換する。」
「【0049】
変圧器14は、相互に電磁結合された一次巻線14a及び二次巻線14bからなる変圧器であり、一次巻線14aに印加される交流電圧を、一次巻線14aと二次巻線14bとの巻線比に従って変圧し、二次巻線14bに発生する。
【0050】
一次巻線14aは、巻始めが共振リアクトルLRの他端に、巻終りが共振コンデンサCRの他端に、それぞれ接続されている。
二次巻線14bは、巻始めが整流回路15の後述するダイオードD1、D2の接続点に、巻終りが整流回路15の後述するダイオードD3、D4の接続点に、それぞれ接続されている。更に、二次巻線14bの巻始めには、着火電源回路30の後述する三次巻線31aの巻終わりが、巻終りには、着火電源回路30の後述する三次巻線31bの巻始めが、それぞれ接続されている。
【0051】
整流回路15は、ブリッジ接続されたダイオードD1、D2、D3、D4からなり、変圧器14の二次巻線14bに発生される交流電力を整流する。
即ち、ダイオードD1のカソードとダイオードD2のアノードとが接続され、ダイオードD3のカソードとダイオードD4のアノードとが接続されている。また、ダイオードD1、D3の各アノードが互いに接続され、ダイオードD2、D4の各カソードが互いに接続されている。」
「【0122】
次に、電力回生回路40について説明する。
図1によれば、電力回生回路40は、変圧器14の一次巻線14aと電磁結合された三次巻線41、4つのダイオードがブリッジ接続されてなる整流器42、直流リアクトルLF4及び平滑コンデンサCF4からなる直流フィルタ43、ダイオードD7及び半導体スイッチQ7より構成される。」
「【0129】
三次巻線41に発生する交流電力は、整流器42及び直流フィルタ43により整流・平滑される。半導体スイッチQ7がONすると、直流リアクトルLF4を介して短絡電流が流れ、直流リアクトルLF4内にエネルギーが蓄積される。
【0130】
一方、半導体スイッチQ7がOFFとなると、直流リアクトルLF4内に蓄積されていたエネルギーが開放され、電位的には整流器42の出力電圧に重畳した形で、平滑コンデンサCF1に向かって放出される。この様に、本回路はいわゆる昇圧型チョッパ回路であるが、この動作により、平滑コンデンサCF1から送出された電力を、再び平滑コンデンサCF1に回生できることになる。」
「【0132】
ところが、出力設定を更に軽くしていくと、インバータ13による供給電力が出力設定値を上回るようになる。即ち、負荷に必要でない電力まで送出されることになり、DC電源1は制御不能となる。このため、軽負荷時には、インバータ13の発生電力と、負荷での消費電力との差分に相当する電力を、電源側へ回生させる必要がある。そこで、軽負荷時には、電力回生回路30を機能させることで、設定出力以上の電力を電源側に回生させ、安定した制御を実現できる。」
上記記載及び図1より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「入力される交流電力を直流電力に変換し、プラズマ発生装置4へ出力するDC電源1であって(【0036】)、
DC電源1は、整流器11、直流フィルタ12、インバータ13、変圧器14、整流回路15、平滑コンデンサCF2、逆電圧発生回路20及び電力回生回路40を備えており(【0037】)、
整流器11は、交流電力を整流し直流電力に変換するものであり、整流器11の出力端子は、直流フィルタ12に接続されており(【0038】)、
直流フィルタ12は、直流リアクトルLF1と平滑コンデンサCF1とからなり、整流器11にて整流された直流電力を平滑するものであり、出力がインバータ13に接続され(【0039】、図1)、
インバータ13は、ブリッジ接続された4つの半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4及び共振リアクトルLRと共振コンデンサCFとが直列接続された直列共振タンクからなる直列共振型インバータであり(【0041】)、半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4は、そのゲートに入力される電圧信号により、コレクタ-エミッタ間の導通/遮断状態が制御され(【0042】)、直流フィルタ12から入力される直流電力を、略正弦波交流に変換し(【0047】)、
変圧器14は、一次巻線14a、二次巻線14b及び三次巻線41からなる変圧器であり、一次巻線14aに印加される交流電圧を変圧し、二次巻線14bに発生するものであり(【0049】、【0122】)、
一次巻線14aは、巻始めが共振リアクトルLRの他端に、巻終りが共振コンデンサCRの他端に、それぞれ接続され(【0050】)、
二次巻線14bは、整流回路15、平滑コンデンサCF2及び逆電圧発生回路20をとおして、プラズマ発生装置4へ電力を出力し(図1)、
整流回路15は、二次巻線14bに発生される交流電力を整流し(【0051】)、
電力回生回路40は、変圧器14の一次巻線14aと電磁結合された三次巻線41、4つのダイオードがブリッジ接続されてなる整流器42、直流リアクトルLF4及び平滑コンデンサCF4からなる直流フィルタ43、ダイオードD7及び半導体スイッチQ7より構成され(【0122】)、
三次巻線41に発生する交流電力は、整流器42により整流され、半導体スイッチQ7がONすると、直流リアクトルLF4を介して短絡電流が流れ、直流リアクトルLF4内にエネルギーが蓄積され(【0129】)、半導体スイッチQ7がOFFとなると、直流リアクトルLF4内に蓄積されていたエネルギーが開放され、平滑コンデンサCF1に向かって放出されることにより(【0130】)、軽負荷時に、インバータ13の発生電力と、負荷での消費電力との差分に相当する電力を、電源側へ回生する(【0132】)、
DC電源1。」
(2)引用文献2には、次の事項が記載されている。
a 「第1図は、この様子を示す図であり、交流電源を全波整流した脈流の直流電圧(イ)がインバータによって(ロ)の様な交流電圧に変換され、放電灯には(ハ)の様に休止期間を有する電流が流れる。」(第3欄第6-9行)
b 「第2図において、(1)は交流電源、(2)は整流回路、(3)はインバータであり、ここでは、共振回路を備えた、プッシュプル形トランジスタインバータで構成され、(6a),(6b)はトランジスタ、(7a),(7b)は抵抗、(8)は出力トランスであり、リーケージトランスで構成され、(8c)はコレクタ巻線、(8B)はベース巻線、(8F)はフィラメント巻線、(8S)は出力巻線であり、(9)は共振用コンデンサ、(10)は高調波チョークコイルである。(4)は放電灯、(5)は補助直流電源であり、出力トランス(8)の1次側に巻かれた補助巻線(8K)、整流回路(11)、コンデンサ(12)、ダイオード(13)から構成されている。」(第3欄第19行-第4欄第11行)
c 「以上の様に構成された装置に於て、交流電源(1)が投入されると、インバータ(3)は、ベース帰還巻線(8B)等の作用により、周知の如く自励発振を行ない、出力トランス(8)の各巻線に高周波電圧を発生し、放電灯を点灯する。」(第4欄第12-16行)
d 「ここで、補助巻線(8K)に発生した電圧からコンンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の端子電圧のピーク値がVcpてあるとすれば、インバータ(3)の入力電圧は、第1図(二)の様になる。ここでVpは、整流回路(2)の出力直流電圧のピーク値である。
コンデンサ(12)の充電々荷がTなる期間中はインバータ(3)に供給されるので、インバータ(3)のコレクタ巻線(8c)の電圧は、第1図(へ)の様になり、従って、放電灯(4)に流れる電流は(ホ)の様に連続的な、休止期間の無い電流が流れる。」(第4欄第20行-第5欄第10行)
e 「第3図は本発明による装置の実施例を示し、図に於て、(1)は交流電源、(2)は整流回路、(3)は第2図の装置と同様に構成されたインバータであり、(8)は出力トランスであり、この出力トランスはリーケージトランスで構成され、(8S)は出力巻線、(4)は放電灯、(5)は補助直流電源で、(8K)はリーケージトランス(8)の出力巻線(8S)側に巻かれた補助巻線、(11)は整流回路、(12)はコンデンサ、(13)はダイオードである。
以上の様に構成された装置に於て、交流電源(1)が投入されると第2図の装置と同様の動作により、インバータ(3)は動作し、出力トランス(8)の各巻線には高周波電圧が発生する。」(第6欄第20行-第7欄第12行)
f 「補助直流電源(5)の整流回路(11)の構成(例えば、チョークコイルを付加してチョークインプット形の全波整流回路にするなど)」(第9欄第3-6行)
g 上記記載及び図面より、引用文献2には第3図の装置に関して(上記e)、次の技術的事項が記載されている。
・上記eに、第3図の装置のインバータ(3)は第2図の装置と同様に構成されインバータであり、同様に動作することが記載されているので、上記c及び第3図の記載より、交流電源(1)を整流回路(2)で整流した直流電圧を受け取り、ベース帰還巻線(8B)等の作用により自励発振を行ない、出力トランス(8)の各巻線に高周波電圧を発生し、放電灯を点灯するインバータ(3)が読み取れる。
・交流電源(1)を整流回路(2)で整流した直流電圧は、脈流である(上記a、第1図(イ))。
・出力トランス(8)は、コレクタ巻線(8c)、ベース巻線(8B)、出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)を備え、出力トランス(8)の1次側にコレクタ巻線(8c)及びベース巻線(8B)が巻かれ、2次側に出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)が巻かれ、出力巻線(8S)が放電灯(4)に接続されている(上記b、上記e、第3図)。
・インバータ(3)は、エミッタが整流回路(2)に接続され、コレクタがコレクタ巻線(8c)に接続され、ベースがベース帰還巻線(8B)に接続されたトランジスタ(6a)(6b)を備えている(上記c、第3図)。
・補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続される補助直流電源(5)を備える(上記e、第3図)。
・補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給される(上記d)。
h 第3図の装置に着目すると、上記技術的事項より引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「交流電源(1)を整流回路(2)で整流した脈流の直流電圧を受け取り、ベース巻線(8B)等の作用により自励発振を行ない、出力トランス(8)の各巻線に高周波電圧を発生し、放電灯を点灯するインバータ(3)であって、
出力トランス(8)は、コレクタ巻線(8c)、ベース巻線(8B)、出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)を備え、
出力トランス(8)の1次側にコレクタ巻線(8c)及びベース巻線(8B)が巻かれ、2次側に出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)が巻かれ、出力巻線(8S)が放電灯(4)に接続されており、
インバータ(3)は、エミッタが整流回路(2)に接続され、コレクタがコレクタ巻線(8c)に接続され、ベースがベース巻線(8B)に接続されたトランジスタ(6a)(6b)を備え、
補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続される補助直流電源(5)を備え、
補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給される、
装置。」
i 上記c及び第3図より、次の技術が見て取れる。
「出力トランス(8)の出力巻線(8S)に、高周波電圧によって駆動される放電灯(4)を接続する」こと。
3 引用発明1を主たる発明とする場合の当審の判断
(1)本件発明1との対比、判断
ア 対比
本件発明1と引用発明1を対比する。
(ア)引用発明1の「交流電力」、当該交流電力を整流し直流電力に変換する「整流器11」、及び整流器11にて整流された直流電力を平滑する「直流フィルタ12」は、本件発明1の「第1の電源」に相当する。
(イ)引用発明1の「一次巻線14a」、「二次巻線14b」、「三次巻線41」、「変圧器14」、「整流器42」は、本件発明1の「第1の巻線」、「第2の巻線」、「第3の巻線」、「変圧器」、「整流器」に相当する。
(ウ)引用発明1の「インバータ13」は、本件発明1の「DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」に相当する。
そして、引用発明1は「整流器11にて整流された直流電力を平滑する」「直流フィルタ12」の「出力がインバータ13に接続され」ているので、引用発明1の「インバータ13」が「直流電力」を受けとっていることは、本件発明1の「電力増幅器」が「第1の電源からの直流(DC)電圧」を受け取ることに相当する。
また、引用発明1の「インバータ13」は、「半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4」が「そのゲートに入力される電圧信号により、コレクタ-エミッタ間の導通/遮断状態が制御され」るものなので、(本件発明1の「制御信号」に相当する)電圧信号を制御装置から受け取っていることが明らかである。
したがって、引用発明1の「半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4は、そのゲートに入力される電圧信号により、コレクタ-エミッタ間の導通/遮断状態が制御され、直流フィルタ12から入力される直流電力を、略正弦波交流に変換」する「インバータ13」は、本件発明1の「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」に相当する。
(エ)
a 引用発明1の「一次巻線14a、二次巻線14b及び三次巻線41からなる変圧器」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器」に相当する。
b 引用発明1の「インバータ13」は「直流電力を、略正弦波交流に変換し」、「インバータ13」に「共振リアクトルLRと共振コンデンサCFとが直列接続され、」「一次巻線14aは、巻始めが共振リアクトルLRの他端に、巻終りが共振コンデンサCRの他端に、それぞれ接続され」ているので、引用発明1の「一次巻線14a」が「略正弦波交流」を受け取っていることは、本件発明1の「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されて」いることに相当する。
c 引用発明1の「変圧器14」が「一次巻線14aに印加される交流電圧を変圧し、二次巻線14bに発生する」ことは、本件発明1の「前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されて」いることに相当する。
d 引用発明1は「二次巻線14bは、整流回路15、平滑コンデンサCF2及び逆電圧発生回路20をとおして、プラズマ発生装置4へ電力を出力し」ており、「整流回路15は、二次巻線14bに発生される交流電力を整流し」ているので、「整流回路15」、「平滑コンデンサCF2」、「逆電圧発生回路20」及び「プラズマ発生装置4」は、「交流電力」によって駆動される負荷であるといえる。そうすると、引用発明1の「二次巻線14bは、整流回路15、平滑コンデンサCF2及び逆電圧発生回路20をとおして、プラズマ発生装置4へ電力を出力」することは、本件発明1の「前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する」ことに相当する。
上記a~dを総合すると、引用発明1の「一次巻線14a、二次巻線14b及び三次巻線41からなる変圧器」であって、「一次巻線14aに印加される交流電圧を変圧し、二次巻線14bに発生するものであり、一次巻線14aは、巻始めが共振リアクトルLRの他端に、巻終りが共振コンデンサCRの他端に、それぞれ接続され、二次巻線14bは、整流回路15、平滑コンデンサCF2及び逆電圧発生回路20をとおして、プラズマ発生装置4へ電力を出力」する「変圧器」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」に相当する。
(オ)引用発明1の「電力回生回路40」が「三次巻線41に発生する交流電力」を「整流器42により整流」することは、本件発明1の「前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流」することに相当する。
また、引用発明1の「電力回生回路40」が「三次巻線41に発生する交流電力」を「平滑コンデンサCF1に向かって放出されることにより、」「電源側へ回生する」ことは、本件発明1の「(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源」「に電力を戻す」ことに相当するから、引用発明1と本件発明1とは、「(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻す」ことで一致しているといえる。
そして、引用発明1の「電力回生回路40」が「インバータ13の発生電力と、負荷での消費電力との差分に相当する電力を、電源側へ回生する」ことは、「負荷」に供給される「インバータ13の発生電力」のうち「二次巻線14b」に出力される電力を「電源側へ回生する」ことにより制限しているので、「二次巻線14b」の出力電圧をクランプしているといえ、本件発明1の「(ii)」「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限」することに相当する。
そうすると、引用発明1の「変圧器14の一次巻線14aと電磁結合された三次巻線41、4つのダイオードがブリッジ接続されてなる整流器42、直流リアクトルLF4及び平滑コンデンサCF4からなる直流フィルタ43、ダイオードD7及び半導体スイッチQ7より構成され」る「電力回生回路40」は、本件発明1の「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)」「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路」に相当する。
但し、出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、引用発明1は「軽負荷時」に行う点で相違する。
(カ)引用発明1の「インバータ13」と、「変圧器14」と、「電力回生回路40」とを備える「DC電源1」は、本件発明1の「電力増幅器」と、「変圧器」と、「整流器およびクランプ回路」とを備える「電源回路」に相当する。
すると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。」
(相違点1)
出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、引用発明1は「軽負荷時」に行う点。
イ 判断
(ア)特許法第29条第1項(新規性)について
本件発明1と引用発明1とは上記相違点1を有するので、本件発明1は引用文献1に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
(イ)特許法第29条第2項(進歩性)について
上記相違点1について検討する。
引用発明1の「電力回生回路40」は、「半導体スイッチQ7」を「ON」「OFF」することにより、「軽負荷時に、インバータ13の発生電力と、負荷での消費電力との差分に相当する電力を、電源側へ回生」している。
そうすると、引用発明1は、軽負荷時に半導体スイッチQ7の制御を行って電力を電源側へ回生しているといえるが、半導体スイッチQ7の制御は、インバータ13と二次巻線14bにおける整流回路15のインピーダンス不整合状態に応答して行っていない。
そして、引用文献1には半導体スイッチQ7の制御を、インバータ13と二次巻線14bにおける整流回路15のインピーダンス不整合状態に応答して行うことの記載も示唆もない。
したがって、引用発明1に基づいて、上記相違点1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととではない。
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
(2)本件発明2ないし6、9との対比、判断
本件発明2ないし6、9も、本件発明1の上記相違点1に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2ないし6、9は引用文献1に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明2ないし6、9は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
また、本件発明1と同じ理由により、本件発明2ないし6、9は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明2ないし6、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
(3)本件発明19ないし21との対比、判断
本件発明19ないし21も、本件発明1の上記相違点1に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明19ないし21は引用文献1に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明19ないし21は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
また、本件発明1と同じ理由により、本件発明19ないし21は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明19ないし21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
4 引用発明2を主たる発明とする場合の当審の判断
(1)本件発明1との対比、判断
ア 対比
本件発明1と引用発明2を対比する。
(ア)引用発明2の「コレクタ巻線(8c)」、「出力巻線(8S)」、「補助巻線(8K)」、「出力トランス(8)」、「整流回路(11)」は、本件発明1の「第1の巻線」、「第2の巻線」、「第3の巻線」、「変圧器」、「整流器」に相当する。
(イ)引用発明2の「交流電源(1)」及び当該交流電源(1)を整流した直流電圧を出力する「整流回路(2)」は、本件発明1の「第1の電源」に相当する。
(ウ)引用発明2の「インバータ(3)」が「整流回路(2)で整流した脈流の直流電圧を受け取」ることは、本件発明1の「電力増幅器」が「第1の電源からの直流(DC)電圧」を受け取ることに相当する。
また、引用発明2は「ベース巻線(8B)」が「トランジスタ(6a)(6b)」の「ベース」に接続されて、「ベース巻線(8B)等の作用により自励発振を行な」うのであるから、「ベース巻線(8B)」の信号に基づいて「トランジスタ(6a)(6b)」を制御して自励発振を行なっている。そうすると、引用発明の「ベース巻線(8B)等」が、本件発明1の「制御モジュール」に相当し、「ベース巻線(8B)」の信号が、「制御信号」に相当するといえる。
したがって、引用発明2の「整流回路(2)で整流した脈流の直流電圧を受け取り、ベース巻線(8B)等の作用により」「高周波電圧を発生」する「インバータ(3)」は、本件発明1の「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」に相当する。
(エ)
a 引用発明2の「コレクタ巻線(8c)、」「出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)」を備える「出力トランス(8)」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器」に相当する。
b 引用発明2は「トランジスタ(6a)(6b)」の「コレクタ」が「高周波電圧」を出力することは明らかであるので、「コレクタ巻線(8c)」が「トランジスタ(6a)(6b)」の「コレクタ」「に接続され」ていることは、本件発明1の「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されて」いることに相当する。
c 上記bを踏まえると、引用発明2の「出力トランス(8)の1次側にコレクタ巻線(8c)」「が巻かれ、2次側に出力巻線(8S)」「が巻かれ」ていることは、本件発明1の「前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されて」いることに相当する。
d 引用発明2は「出力トランス(8)の各巻線に高周波電圧を発生し、放電灯を点灯する」のであるから、「出力巻線(8S)が放電灯(4)に接続されて」いることは、本件発明1の「前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する」ことに相当する。
上記a~dを総合すると、引用発明2の「コレクタ巻線(8c)、」「出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)」を備え」る「出力トランス(8)」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」に相当する。
(オ)
a 引用発明2は「補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され」ているので、「補助巻線(8K)に発生した電圧」を整流している、このことは、本件発明1の「前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流」することに相当する。
b 引用発明2は「整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続され」ているので、「補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給」されることにより、「補助巻線(8K)に発生した電圧」を「ダイオード(13)」を通して、「インバータ(3)」と接続される「整流回路(2)の出力」に戻しているといえる。
そうすると、引用発明2の「補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給」することは、本件発明1の「(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻す」ことに相当する。
c 引用発明2の「整流回路(2)」の出力電圧は、「脈流の直流電圧」である。
ここで、引用発明2は「補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続される補助直流電源(5)を備え、補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給され」ているので、「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である「脈流の直流電圧」以上になったとき、「インバータ(3)」から「放電灯(4)」へ供給されるべき電流の一部を「補助巻線(8K)」及び「ダイオード(13)」を通して「整流回路(2)の出力」に戻している。
そして、本件明細書の段落【0131】に「動作中、整流器およびクランプ回路によって供給される整流された電圧が、端子V+における電位よりも大きければダイオードの対CR1/CR4またはCR2/CR3のうちの1つが導通して、第1の電源に電流を戻す。これは、電圧クランプをもたらして第1の電源に電流を戻し、このことが出力端子における電圧を制限する。これが、結果として、出力フィルタに設けられた増幅器の出力電力および出力電流を制限し、したがって負荷に供給される出力電力を制限する。」と記載されていることに鑑みると、上述した引用発明2の「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である脈流の直流電圧以上になったとき、電流の一部を「補助巻線(8K)」及び「ダイオード(13)」を通して「整流回路(2)の出力」に戻すことは、本件発明1の「(ii)」「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限」することに相当する。
上記a~cを総合すると、引用発明2の「補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続される補助直流電源(5)」は、本件発明1の「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)」「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路」に相当する。
但し、出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、引用発明2は「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である脈流の直流電圧以上になったときに行う点で相違する。
(カ)引用発明2の「インバータ(3)」と、「出力トランス(8)」と、「補助直流電源(5)」とを備える「装置」は、本件発明1の「電力増幅器」と、「変圧器」と、「整流器およびクランプ回路」とを備える「電源回路」に相当する。
すると、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。」
(相違点2)
出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、引用発明2は「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である脈流の直流電圧以上になったときに行う点。
イ 特許法第29条第1項(新規性)についての判断
本件発明1と引用発明2とは上記相違点2を有するので、本件発明1は引用文献2に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
ウ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和3年3月19日の意見書において、「特許権者のいう『安定したインピーダンス』とは、平均インピーダンスを指しており、インバータ周波数単位で考えれば、放電灯は安定した負荷を提供していないといえます。つまり、固定周波数で発振するインバータですが、引用文献2に記載の回路はインピーダンス不整合状態に常時応答する回路であることは、当業者にとって自明であるといえます。」(第2頁)と主張している。
しかしながら、上記「ア (オ)c」で検討したように、引用発明2において、「インバータ(3)」から「放電灯(4)」へ供給されるべき電流の一部を「整流回路(2)の出力」に戻すことは、「補助巻線(8K)」及び「整流回路(11)」を通して「コンデンサ(12)」に電荷が蓄積されて、「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である脈流の直流電圧以上になったとき行われるのであって、インバータ(3)と放電灯(4)との間のインピーダンス不整合状態に応答して行うものではない。
そして、このことは、引用発明2が「補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続され」ているので、仮に、インピーダンス不整合状態に応答して補助巻線(8K)に、整流回路(2)の出力を超える電圧が発生したとしても、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)に接続されていることから、直ちに整流回路(11)が導通するものでないことからも明らかである。
よって、特許異議申立人の上記主張を採用するこことができない。
(2)本件発明2ないし6との対比、判断
本件発明2ないし6も、本件発明1の上記相違点2に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2ないし6は引用文献2に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明2ないし6、9は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
(3)本件発明10ないし15との対比、判断
本件発明10ないし15も、本件発明1の上記相違点2に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明10ないし15は引用文献2に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明10ないし15は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
(4)本件発明19ないし21との対比、判断
本件発明19ないし21も、本件発明1の上記相違点2に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明19ないし21は引用文献2に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明19ないし21は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
5 まとめ
以上のことより、当該取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由により、本件発明1ないし6、9ないし15、19ないし21に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第1項(新規性)、特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関して、
ア 請求項1、2、10、11及び19に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、
イ 請求項1ないし6、9、10ないし15、19ないし21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、請求項7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している。
甲第1号証:特開2003-219644号公報
甲第2号証:特開2004-40962号公報(本決定における引用文献1)
甲第3号証:特開2018-29455号公報
(2)各号証の記載
ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている。
「【0003】 このような問題点を解決する回路として、特開平9-149649号公報などに開示された技術がある。この技術は、一般的なダイオードのキャリアライフタイムに比べてキャリアライフタイムの大幅に長い電荷蓄積ダイオードと電圧クランプ手段、代表的なものとしてはコンデンサとを直列接続した回路を、保護すべきスイッチング半導体素子と並列に接続したことが特徴である。その回路を用いたDC-DCコンバータの回路構成を図3に示す。
【0004】 このコンバータ回路は、商用交流電源と整流回路などからなる直流入力電源1、この直流入力電源1と直列に接続されたトランス2の1次巻線2aとMOSFETなどのようなスイッチング半導体素子3、スイッチング半導体素子3と並列に接続された電荷蓄積ダイオード4とコンデンサのような電圧クランプ手段5との直列接続体、直流入力電源1の正極と、電荷蓄積ダイオード4と電圧クランプ用コンデンサ5との接続点間に接続された放電用抵抗6、スイッチング半導体素子3に並列に接続された共振用コンデンサ7と逆並列のダイオード8、トランス2の2次巻線2bと直列に接続された整流用ダイオード9、フライホイーリング用ダイオード10、フィルタ回路を構成するインダクタ11とコンデンサ12、出力電圧が一定になるようにスイッチング半導体素子3を制御するパルス幅制御回路13からなり、テレビ受像回路のような家電製品などからなる負荷14が接続される。」
「【0006】 ここで、電圧クランプ用コンデンサ5は比較的キャパシタンスの大きなものであり、負荷変動の比較的小さな領域ではスイッチング半導体素子3の両端の電圧をほぼ一定の電圧に維持する。電圧クランプ用コンデンサ5の電圧は、トランス2の励磁エネルギーと漏れインダクタンスと配線のインダクタンスに蓄えられたエネルギーによる充電と、電荷蓄積ダイオード4の逆方向導通時の放電、抵抗値の大きい抵抗6を通しての放電とが釣り合う電圧で安定し、前記インダクタンスとコンデンサ7との共振により直流入力電源1の電圧よりも高い電圧に維持される。また、電荷蓄積ダイオード4はスイッチング半導体素子3のスイッチング周期以上の長いキャリアライフタイムを有する。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】 以上述べたように、特開平9-149649号公報などに開示された従来のフォワードコンバ-タ回路では、電荷蓄積ダイオード4と電圧クランプ用コンデンサ5とからなるスナバ回路の働きによりスイッチング半導体素子3のターンオフ時に不要な過電圧が印加されるのを防ぐと共に、トランス2の漏れインダクタンスや配線のインダクタンスに蓄えられたエネルギーの大部分を直流入力電源1へ戻しているので、スナバ損失を小さくできるというメリットを有する優れた技術である。」
「【0020】 図1により本発明にかかる第1の実施例を説明する。この実施例は図1に示す回路構成になっており、各回路部品間の接続は図示のとおりである。図1において、図3で参照した記号と同一の記号は相当する回路部品を示すものとする。電荷蓄積ダイオ-ド4は、スイッチング半導体素子3のスイッチング周期以上の長いキャリアライフタイムを有する。キャリアライフタイムの長いダイオ-ドは、通常の短いものに比べて本質的に逆方向導通を長時間保持する特性を有するが、蓄積電荷と等しい電荷が逆方向から注入された時点で、ダイオ-ドの逆方向阻止能力が回復する。」
「【0022】 この発明の重要な構成は、電圧クランプ用コンデンサ5に充電手段を設けたところにあり、この実施例ではトランス2に第3の巻線2cと、第3の巻線2cに誘起される交流電圧を整流する整流器15とからなる充電回路を電圧クランプ用コンデンサ5に跨がって接続している。この充電回路の第3の巻線2cは、電圧クランプ用コンデンサ5がほぼ一定電圧にあるときには、その一定電圧よりも小さな電圧を誘起する巻数となっている。このコンバータ回路の動作については、前記充電手段に関連する動作を除いて、特開平9-149649号公報に記載のコンバータ回路の場合とほぼ同様であるのでコンバータ回路全体の動作については説明を省略する」
ここで、段落【0020】に「図1において、図3で参照した記号と同一の記号は相当する回路部品を示すものとする。」と記載されているので、図3の回路を参照しながら、第1の実施例に着目すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた甲第1号証の記載箇所を示す。)。
「商用交流電源と整流回路からなる直流入力電源1と、
直流入力電源1と直列に接続されたトランス2の1次巻線2aとスイッチング半導体素子3と(【0004】)、
スイッチング半導体素子3と並列に接続された電荷蓄積ダイオード4と電圧クランプ用コンデンサ5からなるスナバ回路と(【0004】、【0009】)、
電圧クランプ用コンデンサ5に跨がって接続される、トランス2の第3の巻線2cと、第3の巻線2cに誘起される交流電圧を整流する整流器15とからなる充電回路と(【0022】)、
トランス2の2次巻線2bと、
トランス2の2次巻線2bに接続された整流用ダイオード9、フライホイーリング用ダイオード10、フィルタ回路、負荷14と、
スイッチング半導体素子3を制御するパルス幅制御回路13からなる(【0004】)、
DC-DCコンバータ(【0003】)。」
イ 甲第3号証には、次の事項が記載されている。
「【0016】
以下、本発明のスイッチング電源装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態のスイッチング電源装置10は、入力電源12から入力された入力電圧Viを所定の電圧Vo1,Vo3に変換し、第一及び第二の外部負荷14,16に供給する装置であり、図1に示すように、3つのスイッチングコンバータ18,36,54により構成されている。
【0017】
第一のコンバータ18は、第一トランス20を介して互いに絶縁された第一入力側回路22及び第一出力側回路24を有し、第一入力側回路22に入力された入力電圧Viを第一出力電圧Vo1に変換し、第一出力側回路24に接続された第一の外部負荷14に向けて出力する。第一のコンバータ18の出力は、例えば大電力のメイン出力となる。
【0018】
図2に示すように、第一のコンバータ18は、主スイッチング素子26、第一トランス20、出力整流回路28及び出力平滑回路30で構成されたシングルエンディッドフォワード方式の電力変換部と、第一出力側回路24に設けられた出力制御信号生成部32及び第一入力側回路22に設けられたPWM変調回路34で構成された出力制御部を有している。
【0019】
電力変換部の主スイッチング素子26は、後述するPWM変調回路34に駆動されてオンオフし、入力電源12から供給された入力電圧Viを一定の周期で断続する。第一トランス20は、入力巻線20a及び出力巻線20bを有し、主スイッチング素子26のスイッチング動作によって発生した断続電圧が入力巻線20aに印加され、ほぼ相似形の電圧を出力巻線20bから出力する。」
(3)本件発明1と甲1発明との対比、判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「1次巻線2a」、「2次巻線2b」、「第3の巻線2c」、「トランス2」は、それぞれ、本件発明1の「第1の巻線」、「第2の巻線」、「第3の巻線」、「変圧器」に相当する。
(イ)甲1発明の「直流入力電源1」は、商用交流電源を整流回路で整流し直流を出力しているので、本件発明1の「(i)第1の電源」に相当する。
(ウ)甲1発明の「パルス幅制御回路13」は、直流入力電源1と直列に接続されたスイッチング半導体素子3を制御するのであるから、本件発明1の「(ii)制御モジュール」に相当するといえる。
(エ)甲1発明の「直流入力電源1と直列に接続され」「パルス幅制御回路13」によって制御される「スイッチング半導体素子3」と本件発明1とは、「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて」動作する装置である点で共通する。
但し、動作する装置が、本件発明1は「前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」であるのに対して、甲1発明は「直流入力電源1と直列に接続された」「スイッチング半導体素子3」である点で相違する。
(オ)甲1発明の「トランス2」は、「1次巻線2a」、「2次巻線2b」及び「第3の巻線2c」を含んでいる。
そうすると、甲1発明の「トランス2」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器」に相当する。
但し、本件発明1は「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」であるに対して、甲1発明はそのような特定がない点で相違する。
(カ)甲1発明に「整流器15」及び「電圧クランプ用コンデンサ5」とあるが、これらは、「電荷蓄積ダイオード4」及び「トランス2の第3の巻線2c」と共に「スナバ回路」として動作するものであるから、本件発明1の「整流器およびクランプ回路」に相当するものではない。
そうすると、本件発明1は「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点で相違する。
(キ)甲1発明の「DC-DCコンバータ」と本件発明1とは、「電源回路」である点で共通する。
すると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて動作する装置と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器とを備える電源回路。」
(相違点3)
動作する装置が、本件発明1は「前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」であるのに対して、甲1発明は「直流入力電源1と直列に接続された」「スイッチング半導体素子3」である点。
(相違点4)
本件発明1は「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」であるに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
(相違点5)
本件発明1は「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
イ 判断
(ア)特許法第29条第1項(新規性)について
本件発明1と甲1発明とは上記相違点3ないし5を有するので、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
(イ)特許法第29条第2項(進歩性)について
まず、上記相違点5について検討する。
甲第2号証に記載された技術的事項は、上記「第4 2 (1)」に引用発明1として記載したとおりである。
そして、上記「第4 3 (1)」「ア 対比」に示したとおり、本件発明1と甲第2号証に記載された技術とは、出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、甲第2号証に記載された技術は「軽負荷時」に行う点で相違する。
そうすると、たとえ、甲1発明に甲第2号証に記載された技術を適用しても、相違点5に係る構成を得ることはできない。
したがって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
(4)本件発明2、10、11及び19と甲1発明との対比、判断
本件発明2、10、11及び19は、上記相違点3ないし5に係る構成、又は対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2、10、11及び19は甲第1号証に記載された発明ではない。
したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明2、10、11及び19は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
また、本件発明1と同じ理由により、本件発明2、10、11及び19は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明2、10、11及び19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
(5)本件発明3ないし6、9、12ないし15、20、21と甲1発明との対比、判断
本件発明3ないし6、9、12ないし15、20、21は、上記相違点3ないし5に係る構成、又は対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明3ないし6、9、12ないし15、20、21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
(6)本件発明7と甲1発明との対比、判断
ア 対比
本件発明7は、訂正前の請求項1を引用する請求項7に係る発明である。
したがって、本件発明1と甲1発明との対比を踏まえると(上記「(3) ア」)、本件発明7と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「電源回路であって、
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて動作する装置と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器とを備える電源回路。」
(相違点6)
動作する装置が、本件発明7は「前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」であるのに対して、甲1発明は「直流入力電源1と直列に接続された」「スイッチング半導体素子3」である点。
(相違点7)
本件発明7は「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧器」であるに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
(相違点8)
本件発明7は「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
(相違点9)
本件発明7は「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)第2の制御信号を受け取り、前記第2の制御信号に基づいて、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、前記変圧器が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
イ 判断
まず、上記相違点9について検討する。
甲第3号証には、3つのスイッチングコンバータ18,36,54により構成され、入力電源12から入力された入力電圧Viを所定の電圧Vo1,Vo3に変換し、第一及び第二の外部負荷14,16に供給するスイッチング電源装置10が記載されている(上記「(2) イ」)。
しかし、甲第3号証には、電力増幅器に加えて、DC電圧を第2の交流出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、変圧器が第4の巻線をさらに備え、第4の巻線が第2の交流出力信号を受け取るように構成する技術は記載されていない。
また、甲第2号証に記載された技術(引用発明1)にも、電力増幅器に加えて、DC電圧を第2の交流出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、変圧器が第4の巻線をさらに備え、第4の巻線が第2の交流出力信号を受け取るように構成する技術は記載されていない。
そうすると、甲1発明、又は甲1発明に甲第2号証に記載された技術を適用したものに、甲第3号証に記載された技術を適用しても、相違点9に係る構成を得ることはできない。
したがって、本件発明7は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
(7)本件発明8と甲1発明との対比、判断
本件発明8は、上記相違点6ないし9に係る構成を備えるものであるから、本件発明8と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
(8)特許法第29条第1項、特許法第29条第2項についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。
2 特許法第36条6項第1号(サポート要件)、特許法第36条6項第2号(明確性)について
(1)請求項6について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項6に関して、
「本件特許の請求項6に記載された発明は、絶縁された2つのダイオード整流器を有するが、本件明細書に『ダイオード整流器』は説明されていない。
従って、本件特許の請求項6に記載された発明は本件明細書の説明に記載されておらず、明確でもないから、本件特許の請求項6は特許法第36条第6項第1号、第2号の規定に該当し、特許を受けることができない。」と主張している。(特許異議申立書第24頁)
しかしながら、明細書の段落【0016】には「【図44】電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する別の電源回路を説明する図である。」と記載されており、図44には、絶縁された2つのダイオード整流器が記載さている。また、「絶縁された2つのダイオード整流器」は、明確な記載である。
したがって、請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されており、かつ、明確である。
(2)請求項15について
請求項15に記載された「絶縁された2つのダイオード整流器」についても、請求項6の記載と同様であるから、請求項15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されており、かつ、明確である。
(3)請求項16ないし18について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項16に関して、
(ア)「本願特許明細書には、整流器およびクランプ回路の電流供給先として第2の電源が記載されているが(本件明細書段落0132)、直流電圧を出力することは記載されていない。」
(イ)「また、本件特許の請求項16が引用する請求項10には『第2の電源』が記載されているものの、本件特許の請求項16には、『第2の電源』と記載され、『前記第2の電源』とは記載されていないから、別々の電源を意味していると考えられる。」
(ウ)「また、本件特許の請求項16に記載された発明は、電力増幅器と第2の電力増幅器の二個の増幅器を有している。そのように二個の増幅器を有する発明は、本件明細書添付の図48、図49に記載されているが、二個の電力増幅器は第1の電源から直流電圧を受け取っており、本件明細書と図48、49とには、第1の電源から直流電圧を受け取る電力増幅器しか記載されていない。」
「従って、本件特許の請求項16に記載された発明は、本件明細書、図面には記載されておらず、また、特許を受けようとする発明が不明確であるから特許法第36条第6項第1号、第2号の規定によって特許を受けることができない。」(特許異議申立書第34頁)
イ 当審の判断
(ア)の主張について
明細書の段落【0132】には「図42に示された構成の代替として、整流器およびクランプ回路の出力が、第1の電源の端子V+、V-ではなく第2の電源に接続されてよい。これによって、整流器およびクランプ回路のクランプ電圧を、電位V+およびV-以外のレベルに設定することが可能になる。」と、「整流器およびクランプ回路」の接続先として、「第2の電源」が記載されているので、第2の電源が直流電圧を出力することは自明な事項である。
(イ)の主張について
訂正前の請求項10に記載された「第2の電源」と、訂正前の請求項16に記載された「第2の電源」は、同じ用語を使用しているので、特段のことわりが無い限り、同じ電源と解釈でき明確である。
なお、訂正前の請求項10を引用する請求項16は、本件訂正請求により独立請求項になったが、明確であることにかわりはない。
(ウ)の主張について
明細書の段落【0132】に「図49~図49の構成も、第2の電源および/または放散回路を含むように変更されてよい。」と記載されているので、請求項16に記載された第2の電源から直流(DC)電圧を受け取るように構成された第2の電力増幅器は、明細書に記載されていないとまではいえない。
よって、請求項16に係る発明及び請求項16を引用する請求項17、18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されており、かつ、明確である。
(4)請求項22ないし24について
請求項22に記載された「第2の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するための第2の手段」についても、請求項16の記載と同様であるから、上記請求項16についての検討を踏まえると、請求項22に係る発明及び請求項22を引用する請求項23、24に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されており、かつ、明確である。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。
3 特許法第49条第6号(原文新規事項)について(当審注:特許異議申立の理由においては、特許法第113条第5号である。)
(1)請求項4について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(第21-23頁)において、訂正前の請求項4に関して、概略、次の主張をしている。
訂正前の請求項4に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されてるが、国際出願日における国際出願の請求の範囲には「4. The power supply circuit of claim 3 wherein the four diodes are arranged in an isolated quad-diode rectifier configuration.」と記載されており、「絶縁された組ダイオード整流器」は記載されていない。
よって、請求項4に係る発明は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されていない。
イ 当審の判断
本件訂正請求により、請求項4は「絶縁された4つ組みダイオード整流器」と訂正されたので、請求項4に係る発明は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されたものとなった。
(2)請求項13について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(第32頁)において、訂正前の請求項13に関して、概略、次の主張をしている。
訂正前の請求項13には、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されていない「組ダイオード整流器」が記載されている。
イ 当審の判断
本件訂正請求により、請求項13は「絶縁された4つ組みダイオード整流器」と訂正されたので、請求項13に係る発明は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されたものとなった。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1ないし24に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1ないし24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700784