特許異議申立
2019-700417
柄を有するアウター衣料用編地
- 審判番号
- 2019-700417
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-122986
- 登録番号
- 特許第6431637号(P6431637)
- 請求日
- 2019年05月23日
- 審決日
- 2019年09月09日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋紡STC株式会社
- 【権利者代理人】風早 信昭
- 【権利者代理人】浅野 典子
- 【異議申立人】特許業務法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 高山 芳之
- 審判官 白川 敬寛
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1651.121-Y (D04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6431637号発明「柄を有するアウター衣料用編地」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6431637号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6431637号の請求項1~6に係る特許についての出願は,平成30年6月28日に出願され,平成30年11月9日にその特許権の設定登録がされ,平成30年11月28日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,令和元年5月23日に特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第6431637号の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニットであって、編地の表面は柄糸と地糸から構成されており、柄糸及び地糸は、単糸繊度が1.5~4.5dtex、総繊度が50~350dtexであるポリエステル仮撚加工糸からなり、表面のコース密度が45~90個/2.54cm、ウエール密度が45~70個/2.54cmであり、JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性が3万回以上であること、表面を構成する柄糸と地糸の総繊度比が0.8~1.25であること、及び捲縮伸長率が30%以上のポリエステル仮撚加工糸が、表面を構成する糸の50重量%以上を構成することを特徴とするアウター衣料用編地。
【請求項2】
表面を構成する隣り合う1対の糸が基本組織における表面の針全てに一つ毎のニットループを形成する組織であることを特徴とする請求項1に記載のアウター衣料用編地。
【請求項3】
厚みが0.35~1.3mmであり、目付が150~300g/m2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアウター衣料用編地。
【請求項4】
少なくとも編地の表面側に撥水加工を施していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアウター衣料用編地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の編地を用いていることを特徴とするアウター衣料。
【請求項6】
アウター衣料がブレザー、ジャケット、詰襟服又はスラックスであることを特徴とする請求項5に記載のアウター衣料。」
第3 申立ての理由の概要
申立人は,以下の甲第1~5号証(以下「甲1」等といい,甲1等に記載された発明を「甲1発明」等という。)を提出し,次の取消理由を主張している。
甲1を主たる証拠とする場合,本件発明1~3,5,6は,甲1発明,甲2発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明4は,甲1発明,甲2発明,甲3発明並びに甲4及び甲5に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。また,甲2を主たる証拠とする場合,本件発明1~3,5,6は,甲2発明,甲1発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明4は,甲2発明,甲1発明,甲3発明並びに甲4及び甲5に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって,請求項1~6に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
甲第1号証:国際公開第2018/056303号
甲第2号証:特開2017-25435号公報
甲第3号証:特開2000-178854号公報
甲第4号証:特開2014-214408号公報
甲第5号証:特開2017-172054号公報
第4 甲1~3の記載
1 甲1の記載,甲1発明
甲1には以下の記載がある。
(1)[0007]
「 本発明は、上記のような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、編物でありながら生地の伸度が制限されており、ビジネスに用いられるジャケットやスラックスに必要な、適度な伸度と保形性を備えながら、家庭洗濯ができ、且つ柔らかさ、通気性を兼ね備えたビジネススーツ用編地を提供することにある。」
(2)[0022]
「 本発明では、編地の密度設計も重要である。適度なタテヨコのループ密度に調整することで、上記の編組織とあいまって編地でありながら、適度なハリ、コシを与えることが可能となる。本発明の編地は、ハイゲージのダブル編機で編成して高密度に仕上げられる。本発明の編地では、染色加工上がりのウエール密度は、30~70個/2.54cmである。より好ましくは35~60個/2.54cm、さらに好ましくは40~55個/2.54cmである。ウエール密度が上記範囲より低いと、柔軟性が高くなりすぎてハリ、コシが得られにくくなり、上記範囲より高いと、使っている糸が細いため生地が薄くなりすぎたり、ヨコ方向のストレッチが小さくなり過ぎて着用感が悪くなりうる。また、染色加工上がりの編地コース密度は30~90個/2.54cmである。より好ましくは35~65個/2.54cm、さらに好ましくは40~60個/2.54cmである。コース密度が上記範囲より低いと、柔軟性が高くなりすぎてハリ、コシが得られにくくなり、上記範囲より高いと、生地が硬くなり、また通気性が低くなり蒸れ感が高まりやすい。」
(3)[0036]
「(編地密度)
JIS-L1096 8.6.2 編物の密度に準拠して編地のコース密度(個/2.54cm)、ウェール密度(個/2.54cm)を測定した。目視で測定する際、ウエール方向(又はコース方向)に組織図上で最もニットループが多いところを選んで、そのニットループ数を測定して密度とした。」
(4)[0047]
「(実施例1)
33インチ,28ゲージのダブル丸編機(福原精機製作所製 V-4AL)を用いて、インターロックゲージングで図2に示す完全組織F1からF5からなるストライプ柄の生機を製編した。その際、給糸口F1、F5には高圧カチオン可染ポリエステルの丸断面糸である110dtex(T),フィラメント数36(f)の仮撚加工糸(単糸繊度3.1dtex)を用いた。そして、F2には、高圧カチオン可染ポリエステルの丸断面糸である33T24f仮撚糸とセミダル丸断面ポリエステルフィラメント84T48f仮撚糸を合撚した染色して杢糸になる糸117T72fを用いた。次にF3,4には酸化チタン微粒子を0.5重量%練りこんだ丸断面のポリエチレンテレフタレート繊維(SD)である84T36fの仮撚糸を用いた。各フィーダーの糸長は、F1,2は255mm/100W、F3,4,5の糸長は157mm/100Wとした。F1~5の平均糸長は197mm/100Wであった。編物全体におけるカチオン可染ポリエステル繊維の比率は52.3%であった。」
(5)[0049]
「(実施例2)
実施例1と同じ丸編機を用いて、インターロックゲージングにて図3に示す完全組織F1~F5からなるマイクロチェック柄の生機を製編した。その際、給糸口F1,5に高圧カチオン可染ポリエステルの丸断面糸である110T36fの仮撚加工糸(CD)を用いた。次にF2~4には酸化チタン微粒子を0.5重量%練りこんだ丸断面糸である110T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(SD)を用いた。F1~5の完全組織を構成する糸の平均糸長は198mm/100Wであった。」
(6)[0050]
「 出来上がった生機に対し、実施例1と同様に染色加工して仕上げた。仕上がった編地の密度はコース数55個/2.54cm、ウェール数43個/2.54cmであった。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。」
(7)[0051]
「(実施例3)
実施例1と同じ丸編機にて、リブゲージングで図4に示す完全組織F1~F12からなる千鳥格子柄の生機を製編した。その際、給糸口F1,4、7、10のフィーダーには酸化チタン微粒子を0.5重量%練りこんだ丸断面糸である84T36fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(SD)を用いた。F2,5,8、11には酸化チタン微粒子を0.5重量%練りこんだ丸断面セミダル糸(SD)である110T,36fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸を用いた。更に、F3、6,9、12には単糸繊度1.5dtex、38mmカットのカチオン可染ポリエステル単繊維100%の英式番手40/1のリング紡績糸を用いた。完全組織を構成する全糸の平均糸長は158mm/100Wであった。」
(8)[0052]
「 出来上がった生機に対し、実施例1と同様に染色加工して仕上げた。密度はコース数47個/2.54cm、ウェール数43個/2.54cmの仕上編地を得た。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。」
(9)[0058][表1]
「
」
(10)[図4]
「
」
上記(10)の組織図から,この組織図による編地は,ニットループとウエルトのみからなるものであることを理解できる。
上記(7)の記載,上記(9)の[表1]及び上記(10)の組織図から,実施例3は,編地の表面が,地糸である仮撚糸SD84T36fと,柄糸である紡績糸CD40/1とから構成されるものであることを理解できる。
以上を総合し,特に実施例3に着目すると,甲1には,次の甲1発明が記載されていると認められる。
「ダブル丸編機を用いてリブゲージングで製編された,ニットループとウエルトのみからなるビジネススーツ用編地であって,
編地の表面は柄糸と地糸から構成されており,
柄糸は,単糸繊度1.5dtex,38mmカットのカチオン可染ポリエステル単繊維100%の英式番手40/1のリング紡績糸からなり,
地糸は,酸化チタン微粒子を0.5重量%練りこんだ丸断面糸である84T36fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(SD)からなり,
コース密度は,47個/2.54cmであり,
ウエール密度は,43個/2.54cmである,
ビジネススーツ用編地。」
2 甲2の記載,甲2発明
甲2には以下の記載がある。
(1)【0007】
「 本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、機能性糸等の染まらない繊維を含んだ糸、特に機能性糸の毛羽を持つ糸を使用していても編地の表面が均一な染め面であり、深みのある高級な色調を表現することが可能な編物を提供することにある。更には、軽量で高い伸縮性を兼ね備え、快適なインナーやミドラーの衣料に最適な編物を提供することにある。」
(2)【0008】
「 本発明者らは、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、2本の糸で1×1リブ編が二重に重なった組織構造(両面編組織)が、この一対の糸で見掛け1コースを形成するため非常に緻密な構造をとることができることに着目し、この構造を利用して染色されない繊維を含む糸を裏側の特定の位置に配置して、その両側からこの緻密な両面編み組織で挟み込む構造をとることによって、染色されない繊維が表面からは殆ど見えず、また洗濯したときに染色されない繊維が動いて表面に毛羽が出てくることを防止できることを見出した。それに加えて、この編地の表面に嵩高な糸を用いて、編地全体をニットループのみで組織することで、インナーやミドラー衣料に必要な伸縮性や軽量性を兼ね備えた編地を提供できることも見出した。」
(3)【0010】
「 本発明の編物は、染色された一対の両面編み糸条に対して、裏面側に染色されない繊維をオールニット及び/又はニットウエルトで配置した組織からなるので、表面側が非常に緻密な構造を形成し、その結果、表面側から染色されない繊維がほとんど見えず、さらには洗濯を繰り返しても表面側に露出することがないため、均一で綺麗な表面品位を保つことができる。従って、本発明の編物は、非常に高機能であるが染まり難い繊維を用いても編地表面側に染まらない糸が響かないため、例えば熱伝導性が低い或いは高い繊維を肌側に用いて接触温感や冷感を高めたり、高吸放湿繊維を用いて衣服内湿度をコントロールして蒸れたり乾燥しすぎることを防ぐといった快適性や安全性について外観を損なわずに高めることができる。更には、本発明の編物は、軽量感があり、かつ伸縮性を持たせることができるので、インナー等の用途でも着用快適性に優れたものを提供することができる。」
(4)【0012】
「 本発明の編物は、一対の糸で1×1リブ編が二重に重なった組織(両面編組織)に、染色されない繊維を含む紡績糸を裏側の隣接した位置に配置する組織からなるものであり、最小基本構造として3コースで完全組織となるものである。この最小基本構造の組織は、図1または図2の組織で表わすことができる。図1は、一対の両面編み組織に隣接して裏面にオールニットで紡績糸を配置したものである。また、図2は、一対の両面編み組織に隣接して裏面にニットウエルトで紡績糸を配置したものである。図1、図2の組織は、一般的な組織名を持たないので、本発明者らは、図1の組織をダイヤロック、図2の組織をウエルトダイヤロックと呼ぶことにする。この二つの基本組織をそれぞれ単独で用いてもよいし、組み合わせて使用してもよい。しかし、インナーやミドラー等の肌に近い衣料では、肌の伸縮性に追随する伸度を持つと着心地よく着用することができるため、そのような用途に用いる場合は、編物全体がニットループで編み上げるダイヤロック組織が好適である。」
(5)【0023】
「 また、両面編みを構成する糸を長繊維とする場合は、捲縮加工糸であることが好ましい。捲縮加工糸とは、仮撚法、擦過法、加撚-熱固定-解撚法、押込法、賦型法、複合捲縮法、開繊混繊法等の加工糸を言うが、本発明では、仮撚法により製造した仮撚加工糸が特に好ましい。捲縮加工糸の捲縮伸長率は25~70%が好ましい。更に好ましくは、捲縮伸長率は40~60%である。高捲縮とすることで、表層の厚みが増して表層表面の毛羽の飛出しを効果的に防ぐことができる。捲縮伸張率が上記範囲未満では、表層表面への毛羽防止効果が低下しやすくなり、上記範囲を越える場合には、編地の風合いが粗硬になりやすい。上述の高捲縮仮撚加工糸は、従来公知の方法により製造することができ、例えばスピンドル仮撚、フリクションデイスク仮撚、ベルト仮撚等の仮撚加工法を採用することができる。」
(6)段落【0025】
「 本発明の編物は、染色されない繊維を含む紡績糸を、隣接する両側の両面編組織で挟み込んだ緻密な組織になっている。この両面編み組織は一対の2本の糸で1コースとなる。表面からみたときのコース密度は、両面編みを構成する糸の太さで変化するが、例えば英式番手30~45s(197~131dtex)の場合、20コース/インチ以上とするのが好ましい。より好ましくは25~40コース/インチである。コース密度が上記範囲を下回ると裏側の染色しない繊維の毛羽が面に現れやすくなる。また、表面から見たときのウエール密度は、20~50ウエール/インチが好適であり、さらには30~40ウエール/インチが好適である。ウエール密度が上記範囲を下回っても裏面の染色しない繊維が吹き出しやすくなる。また、英式番手46~70s(130~84dtex)の場合、30コース/インチ以上とするのが好ましい。より好ましくは35~60コース/インチである。コース密度が上記範囲を下回ると裏側の染色しない繊維の毛羽が面に現れやすくなる。また、ウエール密度は30~70ウエール/インチが好適であり、さらには35~60ウエール/インチが好適である。ウエール密度が上記範囲を下回っても裏面の染色しない繊維が吹き出しやすくなる。」
(7)【0029】
「 本発明の編物は、綺麗な染め面を要求される用途で使用されることが好ましく、衣料用途、主にインナー用途、シャツ等のミドラー用途等に好適に用いられる。そのため着用感を考慮して、目付は100~250g/m2の範囲が好ましく、特に150~220g/m2が好ましい。厚みは0.6~2.0mmが好ましく、特に1.0~1.5mmが好ましい。更に軽量感に関係する嵩高性は6.15~8.5cm3/gが好ましく、特に6.3~8.0cm3/gが好ましい。」
(8)【0033】
「<捲縮伸長率(%)>
適度なテンション調整装置を有するラップリール(周長1.125m)を用い、1/10(g/d)の荷重をかけて8巻きの綛を作る。これをフックにかけ、100℃の熱水中に無荷重の状態で5分間浸漬し、この試料を熱水中より取り出し湿潤状態のまま(2/10)×8×2×表示デニールのg数の荷重をかけ、1分後の長さaを測定する。次に、荷重を取り除き、無荷重の状態でフックにかけたまま60±2℃の乾燥機で30分間乾燥し、標準状態の試験室に1時間以上放置し、次に(2/1000)×8×2×表示デニールのg数の初荷重をかけ、1分後の長さbを測る。以下の式により、上記のa、bを用いて捲縮伸長率を算出する。試験回数は2回とし、その平均値で表わす(小数点以下1桁まで)。
捲縮伸長率(%)=[(a-b)/a]×100」
(9)【0048】
「実施例2
酸化チタンを0.5重量%練り込まれた、丸断面の84dtex、フィラメント数48のポリエステルフィラメントを三菱重工製スピンドル仮撚機LS-6を用いて、1ヒーターにて仮撚り加工して捲縮伸長率50%の仮撚加工糸1を作製した。」
(10)【0049】
「 染色しない繊維として、東洋紡製ポリフェニレンサルファイド繊維「プロコン」(単繊維繊度2.2dtex、繊維長51mm)30重量%と、超長綿「スーピマ」70重量%を用いて,混綿混紡した後、カードスライバーとし、練条機に2回通して250ゲレン/6ydのスライバーとした。更に、このスライバーから60ゲレン/15ydの粗糸を作成した。そして、精紡機を用いてドラフト40倍、トラベラ回転数9000rpmで紡出して英式番手60′sの紡績糸3を得た。そのときの撚係数(K)は3.8(撚数29.4T/inch)であった。」
(11)【0050】
「 この仮撚加工糸を両面編みに用い、上記紡績糸3を裏面に配してダイヤロック組織(図1)にて製編した。編機は30インチ-32ゲージ LIL-8(福原精機製)を使用した。紡績糸3の編地内混率は37重量%、プロコンの編地内混率は11重量%であった。この編地を開反して、プレセット・精練・漂白後、ポリエステルを分散染料(Dianix Black K-B)で、綿を反応染料(Drimarene Black P-BLN)で黒色に染色した後、柔軟剤を付与してファイナルセットして、プロコンを肌側に用いた接触温感の高い編地を仕上げた。」
(12)【0052】
「実施例4
実施例1の紡績糸2をオールニットにせず、図2に記載のように1ウエール毎にウエルトを配置したウエルト-ニット組織として裏面に配置した以外は、実施例1と同様に製編して染色加工を行って編地を仕上げた。」
(13)【0061】【表1】
「
」
以上を総合し,特に実施例2に着目すると,甲2には,次の甲2発明が記載されていると認められる。
「酸化チタンが0.5重量%練り込まれた,丸断面の84dtex,フィラメント数48のポリエステルフィラメントを仮撚り加工して作製した捲縮伸長率50%の仮撚加工糸1を両面編みに用い,英式番手60′sの紡績糸3を裏面に配して,一対の両面編み組織に隣接して裏面にオールニットで紡績糸3を配置したダイヤロック組織にて製編された衣料用編地であって,表面のコース密度が35.2個/インチであり,表面のウエール密度が39.3個/インチである,衣料用編地。」
3 甲3の記載
甲3には以下の記載がある。
(1)【0012】
「(実施例2)実施例1と同様の抗ピル性変性ポリエステル短繊維のみを用いた精紡工程上で、50d12fでSHW32%、単糸強度5.6g/d、単繊維デニール4.0d/f、中空率30からなる高収縮ポリエステルマルチフィラメントを電気開繊し、該短繊維と精紡工程中で混繊、混紡し、糸強力が429gの40単糸の精紡糸を得た(デニール換算時の強度は3. 2g/d )。該短繊維の混紡率は62%であった。該複合糸を生機目付210g/m2 のフライス編地とし、その後は実施例1と同様の精錬、染色工程を通過させ、その後ヒートセットを施し、目付277g/m2 の編地を得た。編地は実施例1に比べ濃色無地でシルキー外観を呈し、弾撥性、軽量感、保温性に優れるものであった。解編された染色糸は同様に表層部が染色され、芯部が不染の明確な2層構造糸を呈した。該複合糸の糸強力は361g(強力低下率15.9%)であり、処理糸の強度は未処理複合糸のデニール換算当たり2.7g/dであった。ピリング性能も同様4級を示し、磨耗強度はマーチンデール法で20,000回以上を示し、破裂強力も6.7kg(生機7.8kgに対し14.1%の低下率)で本発明の優位性を示した。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)甲1発明を主たる引用発明とする場合
ア 対比
甲1発明の「編地」は,「ダブル丸編機を用いてリブゲージングで製編された」ものであるから,本件発明1の「リブ組織のダブルニット」に相当する。
甲1発明の「84T36fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(SD)」は,単糸繊度が84dtex/36≒2.33dtexのものであるから,本件発明1の「単糸繊度が1.5~4.5dtex、総繊度が50~350dtexであるポリエステル仮撚加工糸」に相当する。
甲1発明の「コース密度」及び「ウエール密度」は,上記第4の1(3)に記載される測定方法及び上記第4の1(10)の組織図からみて,表面の「コース密度」及び「ウエール密度」であることは明らかである。
甲1発明の「英式番手40/1のリング紡績糸」の繊度をdtexに換算すると,5905.4/40≒147.6であるから,柄糸と地糸の総繊度比を計算すると,147.6dtex/84dtex≒1.76となる。
甲1発明の「ビジネススーツ」は,本件発明1の「アウター衣料」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点A]
「ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニットであって,編地の表面は柄糸と地糸から構成されており,地糸は,単糸繊度が約2.33dtex,総繊度が84dtexであるポリエステル仮撚加工糸からなり,表面のコース密度が47個/2.54cmである,アウター衣料用編地。」
[相違点A-1]
本件発明1は,柄糸が,単糸繊度が1.5~4.5dtex,総繊度が50~350dtexであるポリエステル仮撚加工糸からなるものであるのに対し,甲1発明は,柄糸が,単糸繊度1.5dtex,38mmカットのカチオン可染ポリエステル単繊維100%の英式番手40/1のリング紡績糸からなるものである点。
[相違点A-2]
本件発明1は,表面のウエール密度が45~70個/2.54cmであるのに対し,甲1発明は,表面のウエール密度が43個/2.54cmである点。
[相違点A-3]
本件発明1は,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性が3万回以上であるのに対し,甲1発明は,そのように特定されたものではない点
[相違点A-4]
本件発明1は,表面を構成する柄糸と地糸の総繊度比が0.8~1.25であるのに対し,甲1発明は,柄糸と地糸の総繊度比が約1.76である点。
[相違点A-5]
本件発明1は,捲縮伸長率が30%以上のポリエステル仮撚加工糸が,表面を構成する糸の50重量%以上を構成するのに対し,甲1発明は,そのように特定されたものではない点。
イ 相違点についての検討
(ア)相違点A-1及びA-5について
相違点A-1及びA-5は,表面を構成する糸の種類に関して密接に関連するものであるから,あわせて検討する。
甲2発明は,丸断面の84dtex,フィラメント数48のポリエステルフィラメントを仮撚り加工して作製した捲縮伸長率50%の仮撚加工糸1を両面編みに用いたものであるところ,上記第4の2(1)~(5)から,この捲縮伸長率50%の仮撚加工糸を用いた理由は,表層の厚みを増して,裏面の毛羽を持つ紡績糸からの表層表面への毛羽の飛出しを効果的に防ぐことにあると解される。
しかしながら,甲1には,裏面の毛羽を持つ紡績糸からの表層表面への毛羽の飛出しを防ぐという課題の記載や示唆はない。また,上記第4の1(7)及び(10)からみて,甲1発明は,ポリエチレンテレフタレート仮撚糸で裏面を形成したものであって,裏面に紡績糸を配置したものではないから,甲1発明において,裏面の毛羽を持つ紡績糸からの表層表面への毛羽の飛出しを防ぐという課題が自明であるともいえない。さらに,甲1発明は,染色された一対の両面編み糸条に対して裏面側に毛羽を持つ紡績糸を配置した組織からなる甲2発明と,編組織や柄の有無で異なるものである上,甲1発明は,その表面がポリエチレンテレフタレート仮撚糸とリング紡績糸という二種の糸からなるものであって,甲2発明のように,その表面が仮撚加工糸のみからなるものでもないから,甲1発明において,甲2発明の構成が直ちに参考になるものでもない。
そうすると,甲1発明において,表面を構成する柄糸及び地糸を,甲2発明の丸断面の84dtex,フィラメント数48のポリエステルフィラメントを仮撚り加工して作製した捲縮伸長率50%の仮撚加工糸に置き換える動機付けを見いだすことはできないというべきである。
そして,本件特許明細書の【0011】の記載によれば,本件発明1は,相違点A-5に係る構成を備えることにより,繊維同士の絡まりを強くして単糸が引き出されにくくし,耐摩耗性を低下しにくくするという有利な効果を奏するものであるといえる。
したがって,甲1発明において,相違点A-1及び相違点A-5に係る構成に当業者が容易に想到し得るとはいえない。
(イ)相違点A-2について
甲1には,上記第4の1(2)のとおり,ウエール密度を30~70個/2.54cmとすることも記載されている。また,一般に,特定の編地において,ウエール密度をある程度の範囲内で変更する程度のことは,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。そうすると,甲1発明において,ウエール密度を増やして,ウエール密度を,例えば45個/2.54cm程度の値とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
(ウ)相違点A-3について
甲3には,上記第4の3(1)のとおり,磨耗強度がマーチンデール法で20000回以上を示す編地が記載されており,この「20000回以上」という特定は,形式的には「3万回」という値を含み得るものではある。しかしながら,この「20000回」という値は,本件特許明細書に記載された比較例1及び2でも達成している程度の値であり(特に,本件特許明細書の【0046】の【表1】を参照のこと。),この特定をもって甲3に「3万回」という値が具体的に示唆されているということはできない。そして,甲1,甲2,甲4及び甲5のいずれにも,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性が3万回以上である衣料用編地の記載はなく,また,衣料用編地において,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性を3万回以上とすることが周知技術であるともいえない。
そうすると,ビジネススーツ用編地である甲1発明にある程度の摩耗耐久性が求められることは当然であるにしても,甲1発明において,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性を,具体的に3万回以上の値とすることが動機付けられるとまではいえない。
したがって,甲1発明において,相違点A-3に係る構成に当業者が容易に想到し得るとはいえない。
(エ)相違点A-4について
甲1には,上記第4の1(5),(6)及び(9)からみて,実施例2として,インターロックゲージングにて製編された編地であって,柄糸が,酸化チタン微粒子を0.5重量%練りこんだ丸断面糸である110T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(SD)からなり,地糸が,高圧カチオン可染ポリエステルの丸断面糸である110T36fの仮撚加工糸(CD)からなる編地も記載されているところ,この実施例2の編地の表面を構成する柄糸と地糸の総繊度比は,110dtex/110dtex=1.0と計算できる。
しかしながら,甲1発明はリブゲージングで製編されたものであって,インターロックゲージングにて製編された実施例2の編地とは編組織が異なるものであるから,甲1発明において,実施例2の編地の構成が直ちに参考になるものではない。また,甲1の記載からは,編地の表面を構成する柄糸と地糸の総繊度比の値そのものに何らかの技術上の意義を見いだすこともできない。そうすると,甲1の実施例2の柄糸と地糸の総繊度比の値だけに着目し,これを甲1発明に適用する動機付けがあるとはいえない。
そして,本件特許明細書の【0014】によれば,本件発明1は,相違点A-4に係る構成を備えることにより,編物表面の凹凸を小さくして,繊維が引っ掛かりにくくし,耐摩耗性を低下しにくくするという有利な効果を奏するものであるといえる。
したがって,甲1発明において,相違点A-4に係る構成に当業者が容易に想到し得るとはいえない。
ウ 特許異議申立書における申立人の主張について
(ア)相違点A-1について
相違点A-1に関連して,申立人は,特許異議申立書の21ページ8~18行(空白行は数えない。以下同じ。)において,概略,甲1には,実施例1~3として,表糸として単糸繊度が1.5~4.5dtex,総繊度が84~117dtexのポリエステル仮撚加工糸を用いた例が開示されており,甲1発明は,構成要件1B(当審注:本件発明1の「編地の表面は柄糸と地糸から構成されており、柄糸及び地糸は、単糸繊度が1.5~4.5dtex、総繊度が50~350dtexであるポリエステル仮撚加工糸からなり」に対応する。)を具備している旨主張している。
確かに,甲1の実施例1及び2は,表面が柄糸と地糸とから構成され,柄糸及び地糸が,単糸繊度が1.5~4.5dtex,総繊度が50~350dtexであるポリエステル仮撚加工糸からなる編地であるとはいえる。しかしながら,上記第4の1(4)及び(5)のとおり,甲1の実施例1及び2は,いずれもインターロックゲージングにて製編されたものであるから,「ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニット」であるとはいえない。そうすると,申立人が申立書20ページ下から1行~21ページ7行で主張するように,甲1発明が「ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニット」であることを前提とすると,甲1の実施例1及び2は,その甲1発明が構成要件1Bを具備することを開示するものとはいえない。
また,甲1の実施例3は,「ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニット」であるといえるものの,上記第4の1で示したとおり,編地の表面の柄糸が紡績糸CD40/1から構成されるものであるから,構成要件1Bを開示するものとはいえない。
よって,申立人の上記主張は採用できない。
(イ)相違点A-3について
相違点A-3に関連して,申立人は,特許異議申立書の24ページ2行~25ページ7行において,概略,甲1発明は,構成要件1A,1B,1C,1E及び1Gを具備し,構成要件1F(当審注:本件発明1の「捲縮伸長率が30%以上のポリエステル仮撚加工糸が、表面を構成する糸の50重量%以上を構成することを特徴とする」に対応する。)を容易に具備させ得るから,構成要件1D(当審注:本件発明1の「JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性が3万回以上であること」に対応する。)を具備する蓋然性が極めて高く,甲1発明が構成要件1Dを具備していない場合であっても,数値範囲の最適化は当業者の設計的事項である旨主張している。
しかしながら,甲1発明は,本件発明1と相違点A-3(構成要件1Dに対応)及び相違点A-5(構成要件1Fに対応)のほかに,相違点A-1,A-2及びA-4でも相違するものであるから,甲1発明について,構成要件1Dを具備する蓋然性が極めて高いとは到底認められない。また,衣料用編地において,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性を3万回以上の値とすることが公知ないし周知であることが立証されているのであればともかく,甲1発明において,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性を,具体的に3万回以上の値とすることが設計的事項であるともいえない。
よって,申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)相違点A-4について
相違点A-4に関連して,申立人は,特許異議申立書の22ページ1~9行において,概略,甲1には,実施例2として,地糸の総繊度が110dtexであり,柄糸の総繊度が110dtexであることから,総繊度比が1.0であるものが開示されており,甲1発明は,構成要件1E(当審注:本件発明1の「表面を構成する柄糸と地糸の総繊度比が0.8~1.25であること」に対応する。)を具備している旨主張している。
確かに,上記イ(エ)でも示したように,甲1の実施例2は,編地の表面を構成する柄糸と地糸の総繊度比が1.0であるものである。しかしながら,上記第4の1(5)のとおり,甲1の実施例2は,インターロックゲージングにて製編されたものであるから,「ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニット」であるとはいえない。そうすると,申立人が申立書20ページ下から1行~21ページ7行で主張するように,甲1発明が「ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニット」であることを前提とすると,甲1の実施例2は,その甲1発明が構成要件1Eを具備することを開示するものとはいえない。
なお,当審は,「ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニット」であるものといえる甲1の実施例3に着目して甲1発明を認定したものであり,当審の認定する甲1発明が構成要件1Eを具備せず,相違点A-4で本件発明1と相違することは上記アのとおりである。
よって,申立人の上記主張は採用できない。
(エ)相違点A-5について
相違点A-5に関連して,申立人は,特許異議申立書の22ページ下から1行~24ページ1行において,概略,構成要件1F(当審注:本件発明1の「捲縮伸長率が30%以上のポリエステル仮撚加工糸が、表面を構成する糸の50重量%以上を構成することを特徴とする」に対応する。)を具備することによる本件発明1の作用効果は,甲2発明においても認識されているので,甲1発明において,毛羽立ち等の課題を解決するために,甲2発明を適宜参照し,構成要件1Fを具備させることは容易に想到し得る旨主張している。
しかしながら,上記イ(ア)で示したとおり,本件発明1における構成要件1Fは,繊維同士の絡まりを強くして単糸が引き出されにくくし,耐摩耗性を低下しにくくするという有利な効果を奏するものである一方,甲2発明における捲縮伸長率50%の仮撚加工糸は,裏面の毛羽を持つ紡績糸からの表層表面への毛羽の飛出しを効果的に防ぐという効果を奏するものであり,両者は効果において異なるものであるから,構成要件1Fを具備することによる作用効果が甲2発明において認識されているとはいえない。
よって,申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1発明を主たる引用発明として,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲2発明を主たる引用発明とする場合
ア 対比
甲2発明の「丸断面の84dtex,フィラメント数48のポリエステルフィラメントを仮撚り加工して作製した捲縮伸長率50%の仮撚加工糸1」は,本件発明1の「捲縮伸長率が30%以上のポリエステル仮撚加工糸」に相当する。また,甲2発明は,「丸断面の84dtex,フィラメント数48のポリエステルフィラメントを仮撚り加工して作製した捲縮伸長率50%の仮撚加工糸1を両面編みに用い」たものであるから,この「仮撚加工糸1」が表面を構成する糸の100重量%を構成するものであるといえる。
そうすると,本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点B]
「捲縮伸長率が50%のポリエステル仮撚加工糸が,表面を構成する糸の100重量%を構成する衣料用編地。」
[相違点B-1]
本件発明1は,ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニットであって,編地の表面は柄糸と地糸から構成されており,柄糸及び地糸は,単糸繊度が1.5~4.5dtex,総繊度が50~350dtexであるポリエステル仮撚加工糸からなり,表面を構成する柄糸と地糸の総繊度比が0.8~1.25であるのに対し,甲2発明は,一対の両面編み組織に隣接して裏面にオールニットで紡績糸3を配置したダイヤロック組織にて製編された編地であって,柄糸及び地糸を有するものでもない点。
[相違点B-2]
本件発明1は,表面のコース密度が45~90個/2.54cm,ウエール密度が45~70個/2.54cmであるのに対し,甲2発明は,表面のコース密度が35.2個/インチ,ウエール密度が39.3個/インチである点。
[相違点B-3]
本件発明1は,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性が3万回以上であるのに対し,甲2発明は,そのように特定されたものではない点
[相違点B-4]
本件発明1は,アウター衣料用編地であるのに対し,甲2発明は,衣料用編地であって,アウター衣料用と限定されたものではない点。
イ 相違点についての検討
(ア)相違点B-1について
相違点B-1が示すとおり,甲2発明は,本件発明1と編地の構造が全く異なるものであって,甲2発明を,ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニットであって,編地の表面が柄糸と地糸から構成されるものに変更する動機付けは全く存在しない。
したがって,甲1発明において,相違点B-1に係る構成に当業者が容易に想到し得るとはいえない。
(イ)相違点B-2について
甲2には,上記第4の2(6)のとおり,両面編みを構成する糸が英式番手46~70s(130~84dtex)の場合,コース密度は35~60コース/インチ,ウエール密度は30~70ウエール/インチが好適であることも記載されている。また,一般に,特定の編地において,コース密度及びウエール密度をある程度の範囲内で変更する程度のことは,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。そうすると,甲2発明において,コース密度及びウエール密度を増やして,コース密度及びウエール密度を,例えば45個/インチ(=2.54cm)程度の値とすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
(ウ)相違点B-3について
甲3には,上記第4の3(1)のとおり,磨耗強度がマーチンデール法で20000回以上を示す編地が記載されており,この「20000回以上」という特定は,形式的には「3万回」という値を含み得るものではある。しかしながら,この「20000回」という値は,本件特許明細書に記載された比較例1及び2でも達成している程度の値であり(特に,本件特許明細書の【0046】の【表1】を参照のこと。),この特定をもって甲3に「3万回」という値が具体的に示唆されているということはできない。そして,甲1,甲2,甲4及び甲5のいずれにも,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性が3万回以上である衣料用編地の記載はなく,また,衣料用編地において,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性を3万回以上とすることが周知技術であるともいえない。
そうすると,甲2発明において,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性を,具体的に3万回以上の値とすることが動機付けられるとはいえない。
したがって,甲2発明において,相違点B-3に係る構成に当業者が容易に想到し得るとはいえない。
(エ)相違点B-4について
甲2発明は,上記第4の2(7)のとおり,主にインナー用途,ミドラー用途に好適に使用されるものであるけれども,甲2においてアウター用途のものが排除されていると解する理由はなく,また,編地をアウター衣料に用いることは文献を示すまでもなく周知であるから,甲2発明において,衣料用編地を,アウター衣料用のものとすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
ウ 特許異議申立書における申立人の主張について
(ア)相違点B-1について
相違点B-1に関連して,申立人は,特許異議申立書の25ページ11行~26ページ4行において,概略,甲2の実施例4のニット,ウェルトで編成されたダブルニットは,本件特許発明1の「ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニット」に相当し,甲2の実施例2のポリエステル仮撚加工糸は,本件発明1の「単糸繊度が1.5~4.5dtex,総繊度が50~350dtexであるポリエステル仮撚加工糸」からなる「柄糸及び地糸」に相当する旨主張している。
しかしながら,甲2の実施例2と実施例4のいずれにしても,リブゲーティングで編まれたものとは認められないから,ニットループとウエルトのみからなるリブ組織のダブルニットであるとはいえない。また,甲2の実施例2と実施例4のいずれも,そもそも柄糸及び地糸を有するものではない。
よって,申立人の上記主張は採用できない。
(イ)相違点B-3について
相違点B-3に関連して,申立人は,特許異議申立書の28ページ9行~29ページ16行において,概略,甲2発明は,構成要件1A,1B,1C,1F及び1Gを具備しているから,構成要件1D(当審注:本件発明1の「JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性が3万回以上であること」に対応する。)を具備する蓋然性が極めて高く,甲2発明が構成要件1Dを具備していない場合であっても,数値範囲の最適化は当業者の設計的事項である旨主張している。
しかしながら,甲2発明は,本件発明1と相違点B-1(構成要件1A,1B,1Eに対応),相違点B-2(構成要件1Cに対応)及び相違点B-4(構成要件1Gに対応)で相違するものであるから,甲2発明について,構成要件1Dを具備する蓋然性が極めて高いとは到底認められない。また,衣料用編地において,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性を3万回以上の値とすることが公知ないし周知であることが立証されているのであればともかく,甲2発明において,JIS-L1096のマーチンデール法における摩耗耐久性を,具体的に3万回以上の値とすることが設計的事項であるともいえない。
よって,申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲2発明を主たる引用発明として,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~6について
本件発明1を引用する本件発明2~6は,甲1発明と少なくとも相違点A-1,A-3,A-4及びA-5で相違するものであるから,本件発明1と同じ理由により,甲1発明を主たる引用発明として,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また,本件発明1を引用する本件発明2~6は,甲2発明と少なくとも相違点B-1及びB-3で相違するものであるから,本件発明1と同じ理由により,甲2発明を主たる引用発明として,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700417