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特許異議申立

2019-700219

消去部材を備えた筆記具

審判番号
2019-700219
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-233325
登録番号
特許第6392298号(P6392298)
請求日
2019年03月19日
審決日
2019年10月29日
公報発行日
2020年01月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱鉛筆株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】伊藤 公一
  • 【権利者代理人】伊藤 健太郎
  • 【権利者代理人】島田 哲郎
  • 【権利者代理人】大橋 康史
  • 【権利者代理人】前島 一夫
  • 【異議申立人】森田 弘潤
審判長/審判官
  • 審判長 吉村 尚
  • 審判官 尾崎 淳史
  • 審判官 塚本 丈二
分類
P1651.112-YAA(B43K) / P1651.113-YAA(B43K) / P1651.121-YAA(B43K) / P1651.537-YAA(B43K) / P1651.852-YAA(B43K) / P1651.854-YAA(B43K) / P1651.855-YAA(B43K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項第2号、特許法第44条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6392298号発明「消去部材を備えた筆記具」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6392298号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,2について訂正することを認める。 特許第6392298号の請求項1及び2に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6392298号に係る特許についての出願は,平成24年5月30日に出願された特願2012-123324号(優先権主張 平成23年12月9日)の一部を平成28年11月30日に新たな特許出願したものであって,平成30年8月31日にその特許権の設定登録がされ,同年9月19日に特許掲載公報が発行された。その後,平成31年3月19日に,特許異議申立人 森田弘潤(以下,単に「異議申立人」という。)より,特許第6392298号の請求項1及び2について,特許異議の申立てがされ,令和1年6月21日付けで取消理由通知がされ,これに対して,同年8月16日付けで特許権者より訂正請求書及び意見書が提出されたものである。 なお,同月22日付けで異議申立人に対して,期間を指定して,特許法第120条の5第5項の規定に基づく通知をするとともに訂正請求書等を送付したが,異議申立人からは,指定期間内に意見書の提出はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和1年8月16日付け訂正請求書による訂正の請求(以下,「本件訂正請求」という。)は,その請求の趣旨を「特許第6392298号の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1及び2について訂正することを求める。」とするものであり,その訂正事項はつぎのとおりのものである。 (1)訂正事項1(下線は,訂正箇所を示すために当審において付加した。以下,この項において同じ。) 訂正前の特許請求の範囲の請求項1の 「 消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し, 前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ, 前記クリップ部が軸線方向に延びる略長方形の板状部材であり, 消去動作時に紙面と当該筆記具の中心軸線とが成す角度Aが40~80度の範囲となるように,前記クリップ部の前端面にガイド面が形成されていることを特徴とする筆記具。」を 「 消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し, 前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ, 前記クリップ部が軸線方向に延びる略長方形の板状部材であり, 前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びており, 消去動作時に紙面と当該筆記具の中心軸線とが成す角度Aが40~80度の範囲となるように,前記クリップ部の前端面に平坦なガイド面が形成され, 前記接続部がT字型の横断面形状を有していることを特徴とする筆記具。」と訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項2の 「 消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し, 前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ, 前記クリップ部が軸線方向に伸びる略長方形の板状部材であり, 前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びていることを特徴とする筆記具。」を 「 消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し, 前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ, 前記クリップ部が軸線方向に伸びる略長方形の板状部材であり, 前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びており, 前記接続部がT字型の横断面形状を有していることを特徴とする筆記具。」と訂正する。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1は,訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「クリップ部」について,「クリップ部の幅」と「キャップの径」とが「略同一」であり「筆記具の重心位置まで伸びて」いるものに限定し,「クリップ部の前端面」に「形成された」「ガイド面」が,「平坦」であるものに限定し,「キャップの側面」と「クリップ部」の「接続部」の「横断面形状」を「T字型」であるものに限定するものであるから,当該訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,実質的に特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 イ そして,本件特許の願書に添付した明細書の段落【0010】に「接続部がT字型の横断面形状を有している」と記載され,同段落【0072】に「キャップ本体104aとクリップ部104bとを接続する接続部104cは,図37に示されるように,T字型の横断面形状を有している。」と記載されていることから,訂正事項1における「キャップの側面」と「クリップ部」の「接続部」の「横断面形状」を「T字型」であるものに限定する訂正は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,それぞれを,「本件特許明細書」,「本件特許請求の範囲」,「本件特許図面」といい,これらを総称して「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でするものである。 また,本件特許明細書の段落【0013】に「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びている」と記載され,同段落【0071】に「クリップ部104bの幅Wは,図34の平面図からも明らかなように,筒状のキャップ本体104aの径と略同一である。」と記載され,同段落【0076】において「クリップ部104bを筆記具の重心位置まで伸ばし,キャップ104が,上述した構造のクリップ部104bを有することによって,例えば,クリップ部104bの幅広の平面を下にして筆記具100を机上等に置いた場合,筆記具100の後端部が机上に接地せず,浮いた状態で安定させることができる。」と記載されているように,訂正事項1における「クリップ部」について,「クリップ部の幅」と「キャップの径」とが「略同一」であり,「筆記具の重心位置まで伸びて」いるものに限定する訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。 さらに,本件特許明細書の段落【0073】には,「図38に示されるように,消去時に,クリップ部104bの平坦なガイド面104dを,紙面に押しつけながらガイド面104dに沿ってキャップ104をスライドさせることで,一定幅での筆跡の消去が可能となる。」と記載されているように,訂正事項1における「クリップ部の前端面」に「形成された」「ガイド面」が,「平坦」であるものに限定する訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。 ウ 小括 以上のとおりであるから,訂正事項1は,特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。 なお,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については,訂正事項1に係る本件特許の請求項1に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項1に係る発明については課されない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は,訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「キャップの側面」と「クリップ部」の「接続部」の「横断面形状」を「T字型」であるものに限定するものであるところ,これらの訂正事項は,訂正事項1の一部の訂正事項と実質的に同じ内容のものである。 そして,当該訂正事項2は,上記(1)アで検討したとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,実質的に特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 また,当該訂正事項2が,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものであることも,上記(1)イで検討したとおりである。 以上のとおりであるから,訂正事項2は,特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。 なお,特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については,訂正事項2に係る本件特許の請求項2に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正請求による訂正後の請求項2に係る発明については課されない。 3 小括 上記2で検討したとおり,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項第2号に該当するものであって,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定する要件に適合し,同条第7項に規定する要件に違反するものではないから,特許第6392298号の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,2について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 上記第2の3のとおり,本件訂正請求による訂正は認めることができるから,本件特許異議の申立てに係る特許第6392298号の請求項1及び2の特許に係る発明は,本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。(以下,それぞれの特許発明を「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」という。) 「【請求項1】 消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し, 前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ, 前記クリップ部が軸線方向に延びる略長方形の板状部材であり, 前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びており, 消去動作時に紙面と当該筆記具の中心軸線とが成す角度Aが40~80度の範囲となるように,前記クリップ部の前端面に平坦なガイド面が形成され, 前記接続部がT字型の横断面形状を有していることを特徴とする筆記具。 【請求項2】 消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し, 前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ, 前記クリップ部が軸線方向に伸びる略長方形の板状部材であり, 前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びており, 前記接続部がT字型の横断面形状を有していることを特徴とする筆記具。」 2 取消理由の概要 令和1年6月20日付けで通知した取消理由はつぎのとおりのものである。 (1)取消理由1(特許法第36条第6項第2号違反について) ア 請求項1について 本件特許請求の範囲の請求項1には,「前記クリップ部が軸線方向に延びる略長方形の板状部材であ」ることが特定されているところ,ここでの「略長方形」とは,どのような形状を含むものであるかが明らかでないから,本件特許発明1は明確でない。 段落【0070】には,「キャップ104の特徴は,クリップ部104bが,クリップ本体104aの略全長に亘って軸線方向に延びる略長方形の板状部材である」と記載されているものの,段落【0070】の記載や,その他の明細書の記載をみても,本件特許発明1の「クリップ部」を「略長方形」とすることの技術定義については何らの記載もないから,発明の詳細な説明を参酌したとしても,本件特許発明1にいう「略長方形」がどのような技術的意義をもつ形状を意味するものかについて解釈することもできない。 イ 請求項2について 本件特許請求の範囲の請求項2にも,「前記クリップ部が軸線方向に延びる略長方形の板状部材であ」ることが特定されているところ,上記アで検討したとおり,「略長方形」とは,どのような形状を含むものであるかが明らかでないから,本件特許発明2は明確でない。 ウ 上記のとおり,本件特許発明1及び2は,いずれも明確でないから,本件特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない。 したがって,本件特許請求の範囲の請求項1及び2に係る特許は,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって,同法第113条第4号に該当するから,取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(特許法第36条第6項第1号違反について) ア 請求項1について (ア)本件特許請求の範囲の請求項1には,「消去動作時に紙面と当該筆記具の中心軸線とが成す角度Aが40~80度の範囲となるように,前記クリップ部の前端面にガイド面が形成されている」ことが特定されている。 (イ)これに対して,発明の詳細な説明の「【0073】 図38は,図32に示された筆記具100の消去部材2が取り付けられたキャップ104の消去時の使用状態を示す図である。図38に示されるように,消去時に,クリップ部104bの平坦なガイド面104dを,紙面に押し付けながらガイド面104dに沿ってキャップ104をスライドさせることで,一定幅での筆跡の消去が可能となる。このときに,クリップ部104bのガイド面104dを,定規J等のガイド部材に押し付けながらキャップ104をスライドさせると,より安定した消去動作が可能となり,また,一定幅で長い範囲の消去を容易に行うことが可能となる。さらに,クリップ部104bのガイド面104dを紙面に押し付け且つ104bの幅広の表面を定規Jに設けられた斜面Jaに対して当接させながら,キャップ104をスライドさせることによって,さらに安定した消去動作が可能となる。 【0074】また,消去部材2の形状や,キャップ本体104aに対するクリップ部104bの軸線方向位置,ガイド面104dの形状等を調整することによって,消去動作時に紙面と筆記具100の中心軸線とが成す角Aを調整することができる。この角度Aは,40~80度の範囲であることが望ましい。」との記載に照らせば,本件特許発明1の課題は,「消去時に,クリップ部104bの平坦なガイド面104dを,紙面に押し付けながらガイド面104dに沿ってキャップ104をスライドさせることで,一定幅での筆跡の消去が可能」とし,「安定した消去動作と一定幅で長い範囲の消去を容易に行うことが可能とする」ことにあるものと解されるところ,本件特許発明1において「角度A」を,「40~80度」の範囲とすることと,本件特許発明1の課題との関係については,「望ましい」との記載はあるものの,「角度A」と「安定した消去動作が可能となり,また,一定幅で長い範囲の消去を容易に行うこと」との因果関係については,本件明細書の記載からは明らかでない。 (ウ)かえって,異議申立人の提出した甲15号証(日本筆記具工業界がホームページで開示しているボールペンユーザーマニュアル)において「適正な筆記角度」が「60°~90°」であることが示されていることや,消しゴムなどの使用時における筆記面に対する角度についても60°~90°の範囲で用いることが経験則からも知られていることに照らせば,技術常識からも,本件特許発明1の課題が「40~80度」の範囲で達成することができるものと当業者が認識できるものとはいえないものと解される。 (エ)以上のとおりであるから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載からは,本件特許発明1の「角度Aが40~80度」の範囲において,本件特許発明1の課題を解決し得るものと当業者が認識し得ることができないから,本件特許発明1は,発明の詳細な説明の記載からサポートされる範囲を超えるものというほかない。 イ 小括 本件特許請求の範囲の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないから,本件特許請求の範囲の請求項1に係る特許は,同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって,同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (3)取消理由3(特許法第29条第2項違反について) ア 取消理由3-1(甲2号証を主引用例とする進歩性欠如について) 本件特許発明1は,甲2号証に記載された発明に周知技術1又は周知技術2を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 イ 取消理由3-2(甲12号証を主引用例とする進歩性欠如について) 本件特許発明2は,甲12号証に記載された発明に周知技術3及び4を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 ウ 取消理由3-3(甲13号証を主引用例とする進歩性欠如について) 本件特許発明1は,甲13発明に上記周知技術1又は周知技術2を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 3 特許異議の申立て理由について 特許異議申立人が主張する理由は,申立理由1(明確性違反)及び申立理由2(サポート要件違反)及び,新規性違反,進歩性違反に関する次の理由であるところ,申立理由1及び申立理由2は,上記取消理由通知において通知した理由と同じ理由に係るものである。 (1)本件特許発明1及び2に対する甲第1号証を主引用例とする新規性違反について(申立理由3) (2)本件特許発明1及び2に対する甲第2号証を主引用例とする新規性違反(申立理由4-1)及び進歩性違反(申立理由4-2) (3)本件特許発明1及び2に対する甲第3号証を主引用例とする新規性違反(申立理由5-1)及び進歩性違反(申立理由5-2) (4)本件特許発明1及び2に対する甲第13号証を主引用例とする新規性(申立理由6-1)及び進歩性違反(申立理由6-2) 第4 当審の判断 1 本件特許に係る出願の出願日(優先日)について (1)異議申立人は,本件特許出願は,分割出願であるところ,本件特許出願は分割要件を満たさないことから,その出願日は,本件特許出願の実際の出願日である平成28年11月30日として判断されるべきである旨主張しているから,まず,その点について検討する。 (2)異議申立人は,本件特許出願の分割時の原出願の明細書(甲14号証)において,発明が解決しようとする課題として「【0007】 本発明は,容易に取り付けることができる消去部材を備えた筆記具を提供することを目的とする。また,本発明は,強固に取り付けられた消去部材を備えた筆記具を提供することを目的とする。」旨記載され,当該課題を解決する手段として,「筆記具本体の後方の端部又はキャップの前方の端部に取付けられた消去部材を備えた筆記具であって,前記端部が中心軸線上に配置された嵌合部と,該端部及び前記嵌合部とを接続する接続部とを有し,前記消去部材が,前記嵌合部及び前記接続部を受容する嵌合穴を有し,前記消去部材が取り付けられた状態で,前記接続部の周囲に隙間空間が形成され,前記消去部材の一部を包囲する支持壁をさらに有し,前記消去部材の前記一部の側面に係合突部が設けられ,前記係合突部と前記支持壁の内周面とが当接していることを特徴とする筆記具」が提示されているのに対して,本件訂正発明1及び2は,いずれも「消去部材付き筆記具の外形的な特徴を規定するのみであって,「容易に取り付けることができる消去部材を備えた筆記具を提供すること,強固に取り付けられた消去部材を備えた筆記具を提供することといった技術的課題の解決手段が全く規定されていないところ,このような課題解決のための技術的手段が反映されていない発明を分割時明細書から読み取ることは出来ないことを理由に分割要件違反である旨主張している。 (3)本件訂正発明1及び2は,上記第3の1で説示したとおりのものであるところ,本件訂正発明1及び2が,原出願の明細書に記載されているといえるか否かについて,以下検討する。 ア 甲14号証にはつぎの記載が存在する。 「【0067】 図32は,本発明の一態様による消去部材2を備えた第2実施形態による筆記具100の縦断面図である。筆記具100は,ボールペンタイプの筆記具であり,リフィル5及び筒状に延びる軸筒6を備えた筆記具本体3と,キャップ104とを有する。軸筒6は,筒状の先軸7と,先軸7の後端部にその前端部が螺合する後軸8とを有する。本実施形態による筆記具100は,上述した第1実施形態による筆記具1と,キャップの外形形状,特に,クリップ部の形状においてのみ異なる。従って,以下の説明は,特にクリップ部について説明を行い,その他の部分については説明を省略する。なお,キャップ104は,例えば図4に示されたキャップ4に取り付けられる消去部材を取り付け可能に構成することも可能であり,例えば図15に示されたキャップ24に取り付けられる消去部材を取り付け可能に構成することも可能である。 【0068】 図33は,図32に示された筆記具100のキャップ104の斜視図であり,図34は,図33に示されたキャップ104の平面図であり,図35は,図33に示されたキャップ104の側面図であり,図36は,図33に示されたキャップ104の縦断面図であり,図37は,図33に示されたキャップ104の図35の線S-Sにおける断面図である。 【0069】 キャップ104は,キャップ本体104aと,クリップ部104bと,本実施形態においては,消去部材2とを有する。キャップ本体104aは,筒状の部材であり,その側面にクリップ部104bが接続部104cを介して一体的に設けられている。クリップ部104bは,キャップ本体104aとの間に書類や衣類等の物品を,挟持することができるような弾性を有するように構成されている。従って,キャップ本体104a及びクリップ部104bを形成する材料として,ポリカーボネート,アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン等の合成樹脂が挙げられる。上述のように,先軸7より硬質な材料で形成されることが望ましい。 【0070】 キャップ104の特徴は,クリップ部104bが,クリップ本体104aの略全長に亘って軸線方向に延びる略長方形の板状部材であることである。クリップ部104bの後端面は,図34に示されるように,手触りが良くなるように曲面状に形成されている。また,クリップ部104bの前端面中央部分には,中心軸線に対して垂直な平面であるガイド面104dが形成され,その両側の前端面は,後端面と同様に曲面状に形成されている。 クリップ部104bの各縁部は面取りが施されている。なお,ガイド面104dは,中心軸線に対して垂直でなくてもよい。例えば,図38を参照しながら後述するように,消去時に対向する紙面に合わせた斜面であってもよい。 【0071】 クリップ部104bの幅Wは,図34の平面図からも明らかなように,筒状のキャップ本体104aの径と略同一である。従って,ユーザーのこの視点からは,キャップ本体104aがクリップ部104bにほとんど隠れてしまい,クリップ部104bと消去部材2しか視認できない。すなわち,従来のクリップ部,例えば図2に示されたキャップ4のクリップ部4bに比べ,キャップ104のクリップ部104bは,幅広で広範且つ平滑な表面を有している。従って,当該表面に対して,転写印刷等の装飾を施すことによって,意匠性を高めることができ,ユーザーへの訴求力を高めることができる。また,上記表面にゴム,エラストマー等のゴム弾性材料を付着させることで,消去部材2より広い消去面が形成されるので,消去したい面積を使い分けることが可能となる。 【0072】 キャップ本体104aとクリップ部104bとを接続する接続部104cは,図37に示されるように,T字型の横断面形状を有している。このため,クリップ部104bの周方向の力(図37における上下方向)に対する強度が増している。従って,ユーザーの使用時等に,クリップ部104bに対して周方向の力が加わった場合であっても,接続部104cの破損が防止される。 【0073】 図38は,図32に示された筆記具100の消去部材2が取り付けられたキャップ104の消去時の使用状態を示す図である。図38に示されるように,消去時に,クリップ部104bの平坦なガイド面104dを,紙面に押し付けながらガイド面104dに沿ってキャップ104をスライドさせることで,一定幅での筆跡の消去が可能となる。このときに,クリップ部104bのガイド面104dを,定規J等のガイド部材に押し付けながらキャップ104をスライドさせると,より安定した消去動作が可能となり,また,一定幅で長い範囲の消去を容易に行うことが可能となる。さらに,クリップ部104bのガイド面104dを紙面に押し付け且つ104bの幅広の表面を定規Jに設けられた斜面Jaに対して当接させながら,キャップ104をスライドさせることによって,さらに安定した消去動作が可能となる。 【0074】 また,消去部材2の形状や,キャップ本体104aに対するクリップ部104bの軸線方向位置,ガイド面104dの形状等を調整することによって,消去動作時に紙面と筆記具100の中心軸線とが成す角Aを調整することができる。この角度Aは,40~80度の範囲であることが望ましい。 【0075】 上述した効果の他に,クリップ部104bの幅Wとキャップ本体104aの径が略同一であることにより,例えばクリップ部104bの幅広の平面を上にして筆記具100を机上等に置いた場合,筆記具100が回転してクリップ部104bの側面が机上等に接触して,筆記具100を真横の状態で維持することができる。従って,筆記具100の拾い上げ時に軸筒6を把持し易いという効果を奏する。また,筆記具100の転がりも常に防止することができる。 【0076】 さらに,クリップ部104bを筆記具の重心位置まで伸ばし,キャップ104が,上述した構造のクリップ部104bを有することによって,例えば,クリップ部104bの幅広の平面を下にして筆記具100を机上等に置いた場合,筆記具100の後端部が机上に接地せず,浮いた状態で安定させることができる。従って,筆記具100の拾い上げ時に軸筒6を把持し易いという効果を奏する。」 イ 上記の記載によれば,本件特許出願の分割時の原出願の明細書には,本件訂正発明1及び本件訂正発明2に係る実施形態の発明が記載されているものと認められ,また,その技術的意義として,本件訂正発明1及び2が備える構成である「キャップ」と「クリップ部」とを「接続する接続部」が「T字型の横断面形状を有している」ことにより,「クリップ部」の「周方向の力に対する強度が増し」,「ユーザーの使用時等に,クリップ部に対して周方向の力が加わった場合であっても,接続部の破損が防止される」こと,同じく本件訂正発明1及び2が備える構成である「クリップ部が軸線方向に延びる略長方形の板状形状であり,前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで延びている」ことにより,「クリップ部の幅広の平面を上にして筆記具を机上等に置いた場合,筆記具が回転してクリップ部の側面が机上等に接触して,筆記具を真横の状態で維持することができ」,「筆記具の拾い上げ時に軸筒を把持し易く」,「筆記具転がりも常に防止することができる」こと,「クリップ部の幅広の平面を下にして筆記具を机上等に置いた場合,筆記具の後端部が机上に接地せず,浮いた状態で安定させることができ」,「筆記具の拾い上げ時に軸筒を把持し易い」こと,本件訂正発明1が備える構成である「クリップ部の前端面に平坦なガイド面を形成する」ことにより,「消去時に,クリップ部」の「平坦なガイド面を,紙面に押し付けながらガイド面に沿ってキャップをスライドさせることで,一定幅での筆跡の消去が可能となる」ことなどを読み取ることができる。 なお,異議申立人は,分割出願時点の明細書の記載を問題としているが,本件特許出願の分割時点において,原出願は,審査係属中であったから,分割要件を満たすか否かの判断において,問題となるのは,本件特許明細書に記載された事項が,原出願の出願当初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,「原出願当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものであるか否かである。 そこで,本件特許出願の原出願の出願公開公報である甲1号証においても,上記アと同じ記載が存在しているものと認められ(段落【0067】ないし【0076】),これらの記載が,原出願の当初明細書等においても存在するものと認められる。 ウ 以上のことからすれば,本件訂正発明1及び本件訂正発明2は,原出願の当初明細書等に記載されているものと認めることができる。 そして,本件特許明細書においては,上記アと同じ記載が段落【0067】ないし【0076】に存在していること,さらに,特許請求の範囲の記載以外の本件特許明細書等に記載された事項が,原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲を超えるものは見受けられない。 (4)小括 以上のとおりであるから,本件特許出願は,原出願の当初明細書に記載された二以上の発明の一部を新たな特許出願としたものであって,その明細書の記載には,原出願の当初明細書に記載した範囲の事項以外の事項が存在するとは認められないから,分割要件を満たすものであり,その出願日は,特許法第44条第2項の規定により原出願の出願日である平成24年5月30日とみなされることとなり,その結果,優先日も平成23年12月9日(以下,「本件優先日」という。)であると認める。 2 取消理由1(特許法第36条第6項第2号違反)について (1)請求項1について 訂正前の「クリップ部」の形状が,「軸線方向に延びる略長方形の板状部材」とのみ特定されていたことから,「略長方形」により,板状部材の形状がどのように特定されるのか,特に,各辺の長さ関係を含めて明確に理解することができなかった。 本件訂正請求により,本件訂正発明1の「クリップ部」は,「軸線方向に伸びる略長方形の板状部材」であると共に,「クリップ部の幅」が「キャップの径」と「略同一」であり,「クリップ部」が「筆記具の重心位置まで伸びている」形状であることが特定されることとなった。 そして,当該特定によって,「略長方形」の各辺の長さが「クリップ部」の幅と「筆記具の重心位置までの長さ」で特定される形状として特定するものであることを当業者が容易に理解できるところとなったものといえるから,本件訂正発明1において,「略長方形の板状部材」がそのような幅と長さで定義される「長方形の板状部材」であることが明確に特定されるものとなったというべきである。 また,本件特許明細書の段落【0075】には,「クリップ部104bの幅Wとキャップ本体104aの径が略同一であることにより,例えばクリップ部104bの幅広の平面を上にして筆記具100を机上等に置いた場合,筆記具100が回転してクリップ部104bの側面が机上等に接触して,筆記具100を真横の状態で維持することができる。従って,筆記具1000の拾い上げ時に軸筒6を把持しやすいという効果を奏する。また,筆記具100の転がりも常に防止することができる。」ことが,同段落【0076】には,「クリップ部104bを筆記具の重心位置まで伸ば」すことにより,「例えば,クリップ部104bの幅広の平面を下にして筆記具100を机上等に置いた場合,筆記具100の後端部が机上に接地せず,浮いた状態で安定させることができる。したがって,筆記具100の拾い上げ時に軸筒6を把持しやすいという効果を奏する。」ことが,それぞれ記載されていることに照らせば,クリップ部の「幅」をキャップの径と略同一とし,クリップ部を筆記具の重心位置まで伸ばした「略長方形」とする技術的意義についても示されている。 以上のとおり,本件訂正発明1について特定されている「略長方形の板状部材」により特定しようとする内容は,当業者が理解できるものであるから,本件訂正発明1を不明確とすることはできない。 (2)請求項2について 本件特許請求の範囲の請求項2にも,「前記クリップ部が軸線方向に延びる略長方形の板状部材であ」ることが特定されており,「クリップ部の幅」が「キャップの径」と「略同一」であり,「クリップ部」が「筆記具の重心位置まで伸びている」形状であることが特定されているところ,上記(1)のとおり,本件訂正請求により請求項1において特定されている「略長方形」と請求項2において特定されている「略長方形」とが,同じ形状として統一されることとなった。 そして,上記(1)で検討したとおり,「略長方形の板状部材」により特定しようとする内容は,当業者が理解できるものであるから,本件訂正発明2を不明確とすることはできない。 (3)小括 上記(1)及び(2)で検討したとおり,本件訂正発明1及び2は,いずれも不明確とすることはできないから,本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものである。 以上のとおりであるから,本件特許の請求項1及び2に係る特許は,取消理由1,すなわち,異議申立人の主張する申立理由1によっては,取り消すことができない。 3 取消理由2(特許法第36条第6項第1号違反について) (1)請求項1について ア 本件訂正請求による訂正後の本件訂正発明1において,「クリップ部」の「前端面に平坦なガイド面が形成されている」こと,すなわち,本件訂正発明1の「クリップ部」が,「前端面に平坦なガイド面」を有するものであることが特定されることとなった。 イ これに対して,発明の詳細な説明の「【0073】 図38は,図32に示された筆記具100の消去部材2が取り付けられたキャップ104の消去時の使用状態を示す図である。図38に示されるように,消去時に,クリップ部104bの平坦なガイド面104dを,紙面に押し付けながらガイド面104dに沿ってキャップ104をスライドさせることで,一定幅での筆跡の消去が可能となる。このときに,クリップ部104bのガイド面104dを,定規J等のガイド部材に押し付けながらキャップ104をスライドさせると,より安定した消去動作が可能となり,また,一定幅で長い範囲の消去を容易に行うことが可能となる。さらに,クリップ部104bのガイド面104dを紙面に押し付け且つ104bの幅広の表面を定規Jに設けられた斜面Jaに対して当接させながら,キャップ104をスライドさせることによって,さらに安定した消去動作が可能となる。 【0074】また,消去部材2の形状や,キャップ本体104aに対するクリップ部104bの軸線方向位置,ガイド面104dの形状等を調整することによって,消去動作時に紙面と筆記具100の中心軸線とが成す角Aを調整することができる。この角度Aは,40~80度の範囲であることが望ましい。」との記載に照らせば,本件訂正発明1の課題は,「消去時に,クリップ部104bの平坦なガイド面104dを,紙面に押し付けながらガイド面104dに沿ってキャップ104をスライドさせることで,一定幅での筆跡の消去が可能」とし,「安定した消去動作と一定幅で長い範囲の消去を容易に行うことが可能とする」ことにあるものと解される。 してみると,本件訂正請求による訂正後の本件訂正発明1において,「クリップ部」が「前端面に平坦なガイド面」を有するものであることが特定されたことにより,本件訂正発明1が,所定の課題を解決し得るものと当業者が認識し得るものとなったといえる。 ウ 「角度A」を,「40~80度」の範囲とすることについては,本件訂正発明1の課題との関係において,「望ましい」とする範囲であるから,異議申立人の提出した甲15号証(日本筆記具工業界がホームページで開示しているボールペンユーザーマニュアル)において「適正な筆記角度」が「60°~90°」であることが示されていることや,消しゴムなどの使用時における筆記面に対する角度についても60°~90°の範囲で用いることが経験則からも知られているとしても,当該範囲を特定したことにより,上記課題の解決が妨げるものではなく,「角度A」が「40~80度」であっても,安定した消去動作が可能となり,また,一定幅で長い範囲の消去を容易に行うことが可能となるものであると把握できる。 エ 以上のとおりであるから,本件訂正発明1が,本件訂正発明1の課題を解決し得るものと当業者が認識し得る範囲を超えるものということはできず,本件訂正発明1は,発明の詳細な説明に記載されたものというべきものであるから,本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものである。 (2)請求項2について 異議申立人は,請求項2についても,上記取消理由と同じ理由により,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張している。 しかしながら,本件訂正発明2において,「角度A」は特定されていないから,そもそも,「角度A」を理由にサポート要件を満たさないとする申立て理由が本件訂正発明2において妥当しないことは明らかである。 したがって,本件特許の請求項2に係る特許は,異議申立人の主張する申立理由2によっては,取り消すことができない。 (3)小括 以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものとはいえず,本件特許の請求項1及び2に係る特許は,取消理由2,すなわち,異議申立人の主張する申立理由2によっては,取り消すことができない。 4 取消理由3(特許法第29条第2項違反について) (1)取消理由3-1(甲2号証を主引用例とする進歩性欠如について) ア 各証拠の記載について (ア)甲2号証について 本件特許に係る出願の優先日(平成23年12月9日,以下,「本件優先日」という。)前に発行された意匠公報である甲2号証(意匠登録第1203976号公報)にはつぎの記載がある。 a 「【意匠に係る物品の説明】消しゴムを装着した筆記具用キャップである。」 b 「【意匠の説明】円筒状のキャップ本体に,両端が円弧状で,やや幅広の板状のクリップが形成されており,当該クリップは,キャップ本体の開口部よりクリップ全長の約1/4の長さが突きでている。また,キャップ本体頭部には,円形の消しゴム装着用の穴が設けられ,当該穴に円柱状の消しゴムが装着される。」 c 甲2号証に記載の【図面】の【正面図】及び【背面図】から,キャップ本体とクリップを接続する接続部が看て取れる。 d 以上のことから,甲2号証には, 「円筒状のキャップ本体に,両端が円弧状で,やや幅広の板状のクリップが接続部を介して形成されており,当該クリップは,キャップ本体の開口部よりクリップ全長の約1/4の長さが突き出ており,キャップ本体頭部には,円形の消しゴム装着用の穴が設けられており,当該穴に円柱状の消しゴムが装着された筆記具用キャップ」が記載されているものと認められる。 (イ)甲4号証について 甲4号証は,異議申立人が作成した測定結果報告書であって,その1頁「2 測定結果」の(1)には,「甲2号証の【正面図】において,キャップ中心軸を通る直線とクリップのキャップ本体頭部側端面とキャップ本体頭部に装着された消しゴムのクリップ側角部とを結んだ直線との交差角度を測定した結果,当該交差角度が52°」であることが記載されている。 (ウ)上記(イ)における測定結果報告書における測定結果に基づけば,甲2号証に記載の「キャップ」の「キャップ中心軸を通る直線とクリップのキャップ本体頭部側端面とキャップ本体頭部に装着された消しゴムのクリップ側角部とを結んだ直線との交差角度」が「52°」であると認めることができるから,結局甲2号証には,「円筒状のキャップ本体に,両端が円弧状で,やや幅広の板状のクリップが形成されており,当該クリップは,キャップ本体の開口部よりクリップ全長の約1/4の長さが突き出ており,キャップ本体頭部には,円形の消しゴム装着用の穴が設けられており,当該穴に円柱状の消しゴムが装着され,キャップ中心軸を通る直線とクリップのキャップ本体頭部側端面とキャップ本体頭部に装着された消しゴムのクリップ側角部とを結んだ直線との交差角度が52°である筆記具用キャップ」の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 イ 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲2発明との対比 本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると,両者は,「消去部材を備えたキャップと,前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して設けられ,前記クリップ部が軸線方向に延びる板状部材である筆記具キャップ」である限りにおいて一致し,つぎの相違点で相違する。 <相違点1-1> 本件訂正発明1が「キャップ」と,「該キャップが嵌合する軸筒を具備す」る「筆記具」であるのに対して,甲2発明は筆記具用の「キャップ」であって,キャップが嵌合する軸筒を具備する筆記具であることは特定されない点。 <相違点1-2> 「キャップの側面」に「接続部」を介して設けられた「クリップ部」に関して,本件訂正発明1は,「一体的に設けられ」ているのに対して,甲2発明が一体的に設けられたものか否かが不明である点 <相違点1-3> 本件訂正発明1の「クリップ部」は,「軸線方向に伸びる略長方形の板状部材」であって,「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びて」いるのに対して,甲2発明の「クリップ」は,「軸線方向に伸びる板状部材」であるものの,「略長方形」であると特定されず,「クリップ」の幅はキャップの径より小さく,クリップが当該キャップに嵌合される筆記具の重心位置まで伸びているか否かが不明である点 <相違点1-4> 本件訂正発明1は「消去動作時に紙面と当該筆記具の中心軸線とが成す角度Aが40~80度の範囲となるように,前記クリップ部の前端面に平坦なガイド面が形成されている」のに対して,甲2発明は「キャップ中心軸を通る直線とクリップのキャップ本体頭部側端面とキャップ本体頭部に装着された消しゴムのクリップ側角部とを結んだ直線との交差角度が52°」であることが特定される点 <相違点1-5> 本件訂正発明1は,「接続部がT字型の横断面形状を有」するのに対して,甲2発明は,そのように特定されない点 (イ)判断 a 相違点1-1について 甲2発明は「筆記具用キャップ」であって,その形状及び技術常識に照らせば,「キャップ本体の開口部」に軸筒を有する筆記具が嵌合するものであることは明らかであるから,甲2号証に接した当業者にとって,甲2発明の「筆記具キャップ」の本体開口部に軸筒を有する筆記具が嵌合されたもの,すなわち,甲2発明の「筆記具キャップ」と「該キャップに嵌合する軸筒を具備」する筆記具は,記載されているに等しい事項であるといえる。 また,そうでないとしても,甲2発明が「筆記具用キャップ」であることからすれば,甲2発明の「筆記具用キャップ」の「キャップ本体の開口部」に「軸筒を具備する筆記具」を嵌合するようにして,「筆記具用キャップとキャップ本体の開口部に嵌合する軸筒を具備する筆記具」とすることは,当業者が当然なし得ることにすぎない。 したがって,相違点1-1は,実質的に相違点ではないか,当業者が当然なし得る程度のことにすぎない。 b 相違点1-2について 側面にクリップを備えるキャップを形成するにあたり,射出形成などにより,キャップにクリップを一体的に設けるようにすることは,例を挙げるまでもなく周知の手法であるから,甲2発明において,キャップとクリップを一体的に設けることに格別の困難性はなく,上記相違点1-2は,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 c 相違点1-3について (a)異議申立人の提出した甲5号証(意匠登録第600338号公報),甲6号証(意匠登録第724902号公報)及び甲7号証(意匠登録第760328号公報)に記載されているように,「筆記具用キャップ」の「クリップ」の形状が「長方形」の板状であるものは,本件優先日前に従来周知の構成(以下,「周知技術1」という。)であり,さらに甲8号証(意匠登録第835849号公報),甲9号証(意匠登録第835850号公報)及び甲10号証(意匠登録第8535638号公報)に記載されているように,筆記具本体に形成された「クリップ」の形状が筆記具の本体と略同一の幅を有する長方形の板状であるものも,本件優先日前において従来周知の構成(以下,「周知技術2」という。)であると認められる。 本件訂正発明1の「クリップ部」は,「略長方形」であって,かつ,「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びて」いることが特定されるものであり,甲2発明の「クリップ」の形状を,上記周知技術1や周知技術2にあるように「筆記具の本体と略同一の幅を有する長方形の板状」とすることは,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 しかしながら,甲2発明の「筆記具用キャップ」と「該キャップに嵌合する軸筒を具備」する筆記具が甲2号証に記載されているに等しいとしても,当該筆記具の具体的な寸法が開示されているわけではないことからすれば,甲2発明の「クリップ」を「筆記具の重心位置まで伸ばす」ことまでが観念できるものとはいえない。 また,「クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びている」構成が,周知であることを示す証拠もない。 (b)甲12号証には,後記(2)ア(イ)で認定したように,「ボールペンのキャップの枝を延長し目盛りを付けて定規を設けたキャップ式定規付きボールペンであって,キャップの定規につながる部分及び定規の紙面に接触している部分を平らとし,キャップの枝を延長し目盛りを付けた定規とされた部分の幅は,キャップの幅と略同じ幅としたボールペン」の発明が記載されており,甲12号証の「キャップの枝を延長し目盛りを付けて定規」とした部分は,長方形状であり,かつ,筆記具の重心位置を超えた部分まで伸びていることは明らかであると認められる。 しかしながら,甲12発明の「キャップの枝」は,定規として用いるために形成されたものであり,当該「キャップの枝」がクリップの役目を果たすか否かは,甲12号証の記載からは不明である。また,甲12発明の「キャップの枝」は,キャップと筆記具の軸筒の長さの2/3程度まで伸びており,甲2発明の板状のクリップをそのような長さとした場合には,クリップとしての使用に支障が生じることは明らかである。 してみると,甲2発明に甲12発明の「キャップの枝」を適用することには,阻害要因があるというべきである。 (c)以上のとおりであるから,相違点1-3は,当業者が容易に想到し得るものということはできない。 d 相違点1-4について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0074】及び本件特許図面の図38に示されている角度Aからみて,甲2発明の「キャップ中心軸を通る直線とクリップのキャップ本体頭部側端面とキャップ本体頭部に装着された消しゴムのクリップ側角部とを結んだ直線との交差角度」は,本件特許発明1の「角度A」に対応する角度である。 してみると,甲2発明の「キャップ中心軸を通る直線とクリップのキャップ本体頭部側端面とキャップ本体頭部に装着された消しゴムのクリップ側角部とを結んだ直線との交差角度が52°」であることは,本件特許発明1の「消去動作時に紙面と当該筆記具の中心軸線とが成す角度Aが52度となるように,前記クリップ部の前端面にガイド面が形成されている」ことに相当するものといえる。 しかしながら,甲2発明には,「クリップの前端面に平坦なガイド面が形成されている」点を備えるものではなく,当該構成は,消去部を有する筆記具について記載された甲3号証及び甲13号証にも開示されていない。 してみると,上記相違点1-4は,当業者が容易に想到し得るものということはできない。 e 相違点1-5について 本件訂正発明1においては,「キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ」ており,「当該接続部がT字型の横断面形状を有している」ところ,「筆記具のキャップ」を開示する甲3号証,甲5号証ないし甲13号証(甲1号証は,上記1のとおり,本件優先日後に公開されたものであるから除外される。)には,キャップの側面にクリップ部を接続する接続部の断面形状がT字型であるものは記載も示唆もされていない。 そして,当該構成により,クリップ部の周方向の力に対する強度が増すことにより,クリップ部に対して周方向の力が加わった場合であっても接続部の破損を防止するという作用効果を奏することに照らせば,当該構成が設計的事項であるということもできない。 してみると,相違点1-5を当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから,本件訂正発明1は,取消理由3-1,すなわち,異議申立人の主張する申立理由4-2によっては,取り消すことができない。 なお,上記で検討したように,本件訂正発明1と甲2発明との間に相違点が存在する以上,異議申立人の主張する申立理由4-1によっても,本件訂正発明1を取り消すことができないことは明らかである。 ウ 本件訂正発明2について(取消理由では,取消理由3-1は本件訂正発明2に対して通知されていないが,異議申立人が申立理由4-1及び4-2として,本件訂正発明2についても取消の理由として主張していることから,本件訂正発明2についても検討する。) (ア)本件訂正発明2と甲2発明との対比 本件訂正発明2と甲2発明とを対比すると,両者は,「消去部材を備えたキャップと,前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して設けられ,前記クリップ部が軸線方向に延びる板状部材である筆記具キャップ」である限りにおいて一致し,つぎの相違点で相違する。 <相違点2-1> 本件訂正発明2が「キャップ」と,「該キャップが嵌合する軸筒を具備す」る「筆記具」であるのに対して,甲2発明は筆記具用の「キャップ」であって,キャップが嵌合する軸筒を具備する筆記具であることは特定されない点。 <相違点2-2> 「キャップの側面」に「接続部」を介して設けられた「クリップ部」に関して,本件訂正発明2は,「一体的に設けられ」ているのに対して,甲2発明が一体的に設けられたものか否かが不明である点 <相違点2-3> 本件訂正発明2の「クリップ部」は,「軸線方向に伸びる略長方形の板状部材」であって,「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びて」いるのに対して,甲2発明の「クリップ」は,「軸線方向に伸びる板状部材」であるものの,「略長方形」であると特定されず,「クリップ」の幅はキャップの径より小さく,クリップが当該キャップに嵌合される筆記具の重心位置まで伸びているか否かが不明である点 <相違点2-4> 本件訂正発明2は,「接続部がT字型の横断面形状を有」するのに対して,甲2発明は,そのように特定されない点 (イ)判断 a 相違点2-1について 甲2発明は「筆記具用キャップ」であって,その形状及び技術常識に照らせば,「キャップ本体の開口部」に軸筒を有する筆記具が嵌合するものであることは明らかであるから,甲2号証に接した当業者にとって,甲2発明の「筆記具キャップ」の本体開口部に軸筒を有する筆記具が嵌合されたもの,すなわち,甲2発明の「筆記具キャップ」と「該キャップに嵌合する軸筒を具備」する筆記具は,記載されているに等しい事項であるといえる。 また,そうでないとしても,甲2発明が「筆記具用キャップ」であることからすれば,甲2発明の「筆記具用キャップ」の「キャップ本体の開口部」に「軸筒を具備する筆記具」を嵌合するようにして,「筆記具用キャップとキャップ本体の開口部に嵌合する軸筒具備する筆記具」とすることは,当業者が当然なし得ることにすぎない。 したがって,相違点2-1は,実質的に相違点ではないか,当業者が当然なし得る程度のことにすぎない。 b 相違点2-2について 側面にクリップを備えるキャップを形成するにあたり,射出形成などにより,キャップにクリップを一体的に設けるようにすることは,例を挙げるまでもなく周知の手法であるから,甲2発明において,キャップとクリップを一体的に設けることに格別の困難性はないから,上記相違点2-2は,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 c 相違点2-3について (a)本件訂正発明2の「クリップ部」は,「略長方形」であって,かつ,「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びて」いることが特定されるものであり,甲2発明の「クリップ」の形状を,上記イ(イ)c(a)で説示したとおり,上記周知技術1や周知技術2を適用して「筆記具の本体と略同一の幅を有する長方形の板状」とすることは,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 しかしながら,甲2発明の「筆記具用キャップ」と「該キャップに嵌合する軸筒を具備」する筆記具が甲2号証に記載されているに等しいとしても,当該筆記具の具体的な寸法が開示されているわけではないことからすれば,甲2発明の「クリップ」を「筆記具の重心位置まで伸ばす」ことまでが観念できるものとはいえない。 また,「クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びている」構成が,周知であることを示す証拠もない。 (b)甲12号証には,後記(2)ア(イ)で認定したように,「ボールペンのキャップの枝を延長し目盛りを付けて定規を設けたキャップ式定規付きボールペンであって,キャップの定規につながる部分及び定規の紙面に接触している部分を平らとし,キャップの枝を延長し目盛りを付けた定規とされた部分の幅は,キャップの幅と略同じ幅としたボールペン」の発明が記載されており,甲12号証の「キャップの枝を延長し目盛りを付けて定規」とした部分は,長方形状であり,かつ,筆記具の重心位置を超えた部分まで伸びていることは明らかであると認められる。 しかしながら,甲12発明の「キャップの枝」は,定規として用いるために形成されたものであり,当該「キャップの枝」がクリップの役目を果たすか否かは,甲12号証の記載からは不明である。また,甲12発明の「キャップの枝」は,キャップと筆記具の軸筒の長さの2/3程度まで伸びており,甲2発明の板状のクリップをそのような長さとした場合には,クリップとしての使用に支障が生じることは明らかである。 してみると,甲2発明に甲12発明の「キャップの枝」を適用することには,阻害要因があるというべきである。 (c)以上のとおりであるから,相違点2-3は,当業者が容易に想到し得るものということはできない。 d 相違点2-4について 本件訂正発明2においては,「キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ」ており,「当該接続部がT字型の横断面形状を有している」ところ,甲3号証,甲5号証ないし甲13号証(甲1号証は,上記1のとおり,本件優先日後に公開されたものであるから除外される。)には,キャップの側面にクリップ部を接続する接続部の断面形状がT字型であるものは記載も示唆もされていない。 そして,当該構成により,クリップ部の周方向の力に対する強度が増すことにより,クリップ部に対して周方向の力が加わった場合であっても接続部の破損を防止するという作用効果を奏することに照らせば,当該構成が設計的事項であるということもできない。 してみると,相違点2-4を当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから,本件訂正発明2は,異議申立人の主張する申立理由4-2によっては,取り消すことができない。 なお,上記で検討したように,本件訂正発明2と甲2発明との間に相違点が存在する以上,異議申立人の主張する申立理由4-1によっても,本件訂正発明2を取り消すことができないことは明らかである。 (2)取消理由3-2(甲12号証を主引用例とする進歩性違反について) ア 甲12号証について (ア)本件優先日前に出願公開された甲12号証(特開2003-251990号公報)にはつぎの事項が記載されている。 a 「【特許請求の範囲】【請求項1】ボールペンのキャップ(2)の枝(3)を延長して定規(4)を設けたキャップ式定規付きボールペン」 b 「【0004】【課題を解決するための手段】ボールペン(1)のキャップ(2)の枝(3)を延長し目盛りを付けて定規を設けた。キャップをつまんで紙面に押さえるため定規につながる部分及び紙面に接触している部分は平らとする。本発明は以上の構成よりなるキャップ式定規付きボールペンである。キャップと一体になった定規で線を引けばいい。 【0005】【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について説明する。ボールペン(1)のキャップ(2)の枝(3)を延長し定規(4)を設ける。 (イ) ボールポン(1)からキャップ(2)をはずしそのキャップをつまみ,平らの部分を紙面に押さえる。 (ロ) 平らの枝(3)を延長した部分(4)が定規として機能する。 本発明は以上のような構造で,これを使用する時は,ボールペンのキャップ(2)をはずし,キャップ(2)をつまんで平らな部分を紙面に押し当てキャップの枝(3)から延長した部分(4)を定規として使用すればいい。目盛りを付けると定規としての機能をより発揮出来る。」 c 図1 d 図2 e 図3 (イ)上記(ア)のa及びbの記載並びに図1ないし3によれば,甲12号証には, 「ボールペンのキャップの枝を延長し目盛りを付けて定規を設けたキャップ式定規付きボールペンであって,キャップの定規につながる部分及び定規の紙面に接触している部分平らとし,キャップの枝を延長し目盛りを付けた定規とされた部分の幅は,キャップの幅と略同じ幅としたボールペン」の発明(以下,「甲12発明」という。)が記載されているものと認められる。 なお,図1ないし3によれば,甲12号証の「キャップの枝を延長し目盛りを付けて定規」とした部分は,長方形状であり,かつ,筆記具の重心位置を超えた部分まで伸びていることは明らかである。 イ 本件訂正発明2について (ア)本件訂正発明2と甲12発明との対比 本件訂正発明2と甲12発明とを対比すると,両者は「キャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し,前記キャップの側面に設けられ,軸線方向に延びる略長方形の板状部材であり,前記板状部材の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記板状部材が当該筆記具の重心位置まで伸びていることを特徴とする筆記具」である点で一致し,次の相違点で相違する。 <相違点3-1> 本件訂正発明2の「キャップ」が「消去部材を備え」るものであるのに対して,甲12発明は,消去部材を備えるものではない点 <相違点3-2> 本件訂正発明2の「クリップ部」が,「接続部を介して一体的に」キャップの側面に設けられているのに対して,甲12発明の「キャップの枝」はクリップ部とは特定されず,またキャップの側面に「キャップの枝」がどのように取り付けられるものであるのかが特定されない点。 <相違点3-3> 本件訂正発明2は,「接続部がT字型の横断面形状を有」するのに対して,甲2発明は,そのように特定されない点 (イ)判断 a 相違点3-1について 本件優先日前において,消去具を備えるボールペンは,既に周知のものであり(例えば,異議申立人の提出した甲13号証等。以下,「周知技術3」という。),甲12発明のキャップの頭部に消去部材を備えるものとすることは,当業者が容易に想到し得る程度のことというべきである。 b 相違点3-2について クリップ部を接続部を介してキャップ側面に設けるようにした構成は,甲2号証,甲3号証及び甲7号証等に記載されているように本件優先日前に周知の構造(以下,「周知技術4」という。)であり,上記(1)イ(イ)bで既に検討したとおり,「キャップとクリップを一体的に設ける」ことに格別の困難性はないから,甲12発明の「キャップの枝」を,「接続部を介して一体的に」キャップの側面に設けるよう構成することに格別の困難性はない。 しかしながら,甲12発明の「キャップの枝」は,定規として用いるために形成されたものであり,当該「キャップの枝」がクリップの役目を果たすか否かは,甲12号証の記載からは不明である。 そして,甲12発明の「キャップの枝」がキャップと筆記具の軸筒の長さの2/3程度まで伸びていることに照らせば,甲12発明の「キャップの枝」がクリップとして使用することに支障が生じることは明らかである。 してみると,甲12発明の「キャップの枝」を「クリップ部」とすることには,阻害要因があるというべきであるから,相違点3-2に係る本件特許発明2の構成のようにすることは,当業者が容易になし得ることとはいえない。 c 相違点3-3について 本件訂正発明2においては,「キャップの側面」に「クリップ部が接続部を介して一体的に設けられ」ており,「当該接続部がT字型の横断面形状を有している」ところ,甲2号証,甲3号証,甲5号証ないし甲11号証及び甲13号証(甲1号証は,上記1のとおり,本件優先日後に公開されたものであるから除外される。)には,キャップの側面にクリップ部を接続する接続部の断面形状がT字型であるものは記載も示唆もされていない。 そして,当該構成により,クリップ部の周方向の力に対する強度が増すことにより,クリップ部に対して周方向の力が加わった場合であっても接続部の破損を防止するという作用効果を奏することに照らせば,当該構成が設計的事項であるということもできない。 してみると,相違点3-3を当業者が容易に想到し得るものというとはできない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから,本件訂正発明2は,取消理由3-2によっては,取り消すことができない。 (3)取消理由3-3(甲13号証を主引用例とする進歩性欠如について) ア 各証拠について (ア)甲13号証について 異議申立人の提出した甲13号証は,三菱鉛筆株式会社のホームページでアクセス可能なプレスリリースのウェブページ(https://www.mpuni.co.jp/news/pressrelease/detail/20130326160559.html)であって,そこには,「プレスリリース詳細」,「キャップでこすると書いた文字を消せるゲルインクボールペン誕生!」,『uni-ball FANTHOM(ユニボール ファントム)』,「2010年3月23日新発売」との記載がされており,さらに,「■キャップで消せる ・・・キャップの先端でこすると細かい部分の色を消すことが出来ます。」との記載,「商品名:uni-ball FANTHOM (ユニボール ファントム)」,「品名:UF-202-05」が写真とともに開示されているものと認められる。 してみると,甲13号証からは,「消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し,前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して設けられ,前記クリップ部が軸線方向に延びる部材である筆記具」が,遅くとも本件優先日前に販売されていた事実を認めることができる。 (イ)甲4号証について 甲4号証は,異議申立人が作成した測定結果報告書であって,その3~4頁の「2 測定結果」の(3)には,三菱鉛筆株式会社の「ユニボールファントム」の青,黒,赤について,キャップ中心軸を通る直線と,クリップのキャップ先端側端部とキャップ先端部曲面の接戦とを結んだ直線との交差角度を測定した結果,当該交差角度が,青42.769度,黒43.569度,赤43.295度であることが記載されている。 (ウ)甲4号証の「ユニボールファントム」は,いつ,どこで購入されたものかは明らかではないものの,甲13号証の商品名と同じ商品名であることが認められ,キャップの形状も甲13号証の写真と同じであるものと認められる。 以上を総合すると,甲13号証には, 「消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し,前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して設けられ,前記クリップ部が軸線方向に延びる部材であり,キャップ中心軸を通る直線と,クリップのキャップ先端側端部とキャップ先端部曲面の接戦とを結んだ直線との交差角度を測定した結果,当該交差角度が,42.769度,43.569度,又は43.295度である筆記具」の発明(以下,「甲13発明」という。)が記載されているものと認められる。 イ 本件訂正発明1について (ア)本件訂正発明1と甲13発明との対比 本件訂正発明1と甲13発明とを対比すると,両者は,「消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し,前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して設けられ,前記クリップ部が軸線方向に延びる部材である筆記具」において一致し,次の相違点で相違する。 <相違点4-1> 「キャップの側面」に「接続部を介して設けられた「クリップ部」に関して,本件訂正発明1は,「一体的に設けられ」ているのに対して,甲13発明が一体的に設けられたものか否かが不明である点 <相違点4-2> 本件訂正発明1の「クリップ」は,「軸線方向に伸びる略長方形の板状部材」であって,「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びて」いるのに対して,甲13発明の「クリップ」は「軸線方向に伸びる板状部材」であるものの,「略長方形」であると特定されず,「クリップ」の幅はキャップの径より小さく,クリップが当該キャップに嵌合される筆記具の重心位置まで伸びているか否かが不明である点 <相違点4-3> 本件特許発明1は「消去動作時に紙面と当該筆記具の中心軸線とが成す角度Aが40~80度の範囲となるように,前記クリップ部の前端面に平坦なガイド面が形成されている」のに対して,甲13発明は「キャップ中心軸を通る直線と,クリップのキャップ先端側端部とキャップ先端部曲面の接戦とを結んだ直線との交差角度を測定した結果,当該交差角度が,42.769度,43.569度,又は43.295度である」ことが特定される点。 <相違点4-4> 本件訂正発明1は,「接続部がT字型の横断面形状を有」するのに対して,甲2発明は,そのように特定されない点 (イ)判断 a 相違点4-1について 側面にクリップを備えるキャップを形成するにあたり,射出形成などにより,キャップにクリップを一体的に設けるようにすることは,例を挙げるまでもなく周知の手法であるから,甲13発明において,キャップとクリップを一体的に設けることに格別の困難性はないから,上記相違点4-1は,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 b 相違点4-2について (a)本件訂正発明1の「クリップ部」は,「略長方形」であって,かつ,「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びて」いることが特定されるものであり,甲13発明の「クリップ」の形状を,上記イ(イ)c(a)で説示した周知技術1や周知技術2を適用して「筆記具の本体と略同一の幅を有する長方形の板状」とすることは,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 しかしながら,これら周知技術を適用したとしても,甲13発明において,「クリップ部」を「筆記具の重心位置まで伸ばす」ことまでは想到することはできない。 そして,「クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びている」構成が,周知であることを示す証拠もない。 (b)甲12号証には,上記(2)ア(イ)で認定したように,「ボールペンのキャップの枝を延長し目盛りを付けて定規を設けたキャップ式定規付きボールペンであって,キャップの定規につながる部分及び定規の紙面に接触している部分を平らとし,キャップの枝を延長し目盛りを付けた定規とされた部分の幅は,キャップの幅と略同じ幅としたボールペン」の発明が記載されており,甲12号証の「キャップの枝を延長し目盛りを付けて定規」とした部分は,長方形状であり,かつ,筆記具の重心位置を超えた部分まで伸びていることは明らかであると認められる。 しかしながら,甲12発明の「キャップの枝」は,定規として用いるために形成されたものであり,当該「キャップの枝」がクリップの役目を果たすか否かは,甲12号証の記載からは不明である。また,甲12発明の「キャップの枝」は,キャップと筆記具の軸筒の長さの2/3程度まで伸びており,甲2発明の板状のクリップをそのような長さとした場合には,クリップとしての使用に支障が生じることは明らかである。 してみると,甲13発明の「クリップ部」に甲12発明の「キャップの枝」を適用することには,阻害要因があるというべきである。 (c)以上のとおりであるから,相違点4-2は,当業者が容易に想到し得るものということはできない。 c 相違点4-3について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0074】及び本件特許図面の図38に示されている角度Aからみて,甲13発明の「キャップ中心軸を通る直線と,クリップのキャップ先端側端部とキャップ先端部曲面の接戦とを結んだ直線との交差角度を測定した結果,当該交差角度」は,本件特許発明1の「角度A」に対応する角度である。 してみると,甲13発明の「キャップ中心軸を通る直線と,クリップのキャップ先端側端部とキャップ先端部曲面の接戦とを結んだ直線との交差角度を測定した結果,当該交差角度が42.769度,43.569度,又は43.295度である」であることは,本件訂正発明1の「消去動作時に紙面と当該筆記具の中心軸線とが成す角度Aが42.769度,43.569度,又は43.295度となるように,前記クリップ部の前端面にガイド面が形成されている」ことに相当するものといえる。 しかしながら,甲13発明には,「クリップの前端面に平坦なガイド面が形成されている」点については,開示されておらず,その点は,消去部を有する筆記具を開示する甲2号証及び甲3号証にも開示されていない。 してみると,上記相違点4-3は,当業者が容易に想到し得るものということはできない。 e 相違点4-4について 本件訂正発明1においては,「キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ」ており,「当該接続部がT字型の横断面形状を有している」ところ,甲2号証,甲3号証,及び甲5号証ないし甲12号証(甲1号証は,上記1のとおり,本件優先日後に公開されたものであるから除外される。)には,キャップの側面にクリップ部を接続する接続部の断面形状がT字型であるものは記載も示唆もされていない。 そして,当該構成により,クリップ部の周方向の力に対する強度が増すことにより,クリップ部に対して周方向の力が加わった場合であっても接続部の破損を防止するという作用効果を奏することに照らせば,当該構成が設計的事項であるということもできない。 してみると,相違点4-4は,当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (ウ)小括 以上のとおり,本件訂正発明1は,取消理由3-3,すなわち,申立理由6-2によっては,取り消すことができない。 なお,上記で検討したように,本件訂正発明1と甲13発明との間に相違点が存在する以上,異議申立人の主張する申立理由6-1によっても,本件訂正発明1を取り消すことができないことは明らかである。 ウ 本件訂正発明2について (取消理由では,取消理由3-3は本件訂正発明2に対して通知されていないが,異議申立人が申立理由6-1及び6-2として,本件訂正発明2についても取消の理由として主張していることから,本件訂正発明2についても検討する。) 本件訂正発明2と甲13発明とを対比すると,両者は,「消去部材を備えたキャップと,該キャップが嵌合する軸筒とを具備し,前記キャップの側面にクリップ部が接続部を介して設けられ,前記クリップ部が軸線方向に延びる部材である筆記具」において一致し,次の相違点で相違する。 <相違点5-1> 「キャップの側面」に「接続部を介して設けられた「クリップ部」に関して,本件訂正発明2は,「一体的に設けられ」ているのに対して,甲13発明が一体的に設けられたものか否かが不明である点 <相違点5-2> 本件訂正発明2の「クリップ」は, 「軸線方向に伸びる略長方形の板状部材」であって,「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びて」いるのに対して,甲13発明の「クリップ」は「軸線方向に伸びる板状部材」であるものの,「略長方形」であると特定されず,「クリップ」の幅はキャップの径より小さく,クリップが当該キャップに嵌合される筆記具の重心位置まで伸びているか否かが不明である点 <相違点5-3> 本件訂正発明2は,「接続部がT字型の横断面形状を有」するのに対して,甲13発明は,そのように特定されない点 (イ)判断 a 相違点5-1について 側面にクリップを備えるキャップを形成するにあたり,射出形成などにより,キャップにクリップを一体的に設けるようにすることは,例を挙げるまでもなく周知の手法であるから,甲13発明において,キャップとクリップを一体的に設けることに格別の困難性はないから,上記相違点5-1は,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 b 相違点5-2について (a)本件訂正発明2の「クリップ部」は,「略長方形」であって,かつ,「前記クリップ部の幅と前記キャップの径とが略同一であり,前記クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びて」いることが特定されるものであり,甲13発明の「クリップ」の形状を,上記イ(イ)c(a)で説示した周知技術1や周知技術2を適用して「筆記具の本体と略同一の幅を有する長方形の板状」とすることは,当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 しかしながら,これら周知技術を適用したとしても,甲13発明において,「クリップ部」を「筆記具の重心位置まで伸ばす」ことまでは想到することはできない。 そして,「クリップ部が当該筆記具の重心位置まで伸びている」構成が,周知であることを示す証拠もない。 (b)甲12号証には,上記(2)ア(イ)で認定したように,「ボールペンのキャップの枝を延長し目盛りを付けて定規を設けたキャップ式定規付きボールペンであって,キャップの定規につながる部分及び定規の紙面に接触している部分を平らとし,キャップの枝を延長し目盛りを付けた定規とされた部分の幅は,キャップの幅と略同じ幅としたボールペン」の発明が記載されており,甲12号証の「キャップの枝を延長し目盛りを付けて定規」とした部分は,長方形状であり,かつ,筆記具の重心位置を超えた部分まで伸びていることは明らかであると認められる。 しかしながら,甲12発明の「キャップの枝」は,定規として用いるために形成されたものであり,当該「キャップの枝」がクリップの役目を果たすか否かは,甲12号証の記載からは不明である。また,甲12発明の「キャップの枝」は,キャップと筆記具の軸筒の長さの2/3程度まで伸びており,甲2発明の板状のクリップをそのような長さとした場合には,クリップとしての使用に支障が生じることは明らかである。 してみると,甲13発明の「クリップ部」に甲12発明の「キャップの枝」を適用することには,阻害要因があるというべきである。 (c)以上のとおりであるから,相違点5-2は,当業者が容易に想到し得るものということはできない。 c 相違点5-3について 本件訂正発明2においては,「キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ」ており,「当該接続部がT字型の横断面形状を有している」ところ,甲2号証,甲3号証,及び甲5号証ないし甲12号証(甲1号証は,上記1のとおり,本件優先日後に公開されたものであるから除外される。)には,キャップの側面にクリップ部を接続する接続部の断面形状がT字型であるものは記載も示唆もされていない。 そして,当該構成により,クリップ部の周方向の力に対する強度が増すことにより,クリップ部に対して周方向の力が加わった場合であっても接続部の破損を防止するという作用効果を奏することに照らせば,当該構成が設計的事項であるということもできない。 してみると,相違点5-3を当業者が容易に想到し得るものということはできない。 (ウ)小括 以上のとおり,本件訂正発明2は,申立理由6-2によっては,取り消すことができない。 なお,上記で検討したように,本件訂正発明2と甲13発明との間に相違点が存在する以上,異議申立人の主張する申立理由6-1によっても,本件訂正発明2を取り消すことができないことは明らかである。 5 申立理由3(甲第1号証を主引用例とする新規性違反について) 上記1で検討したとおり,本件特許に係る出願の出願日は,平成24年5月30日とみなされることとなり,その結果,本件優先日も平成23年12月9日であると認める。 してみると,本件出願の出願日を平成28年11月30日であることを前提とする異議申立人が主張する申立理由3は,主引用例としている甲1号証は,本件優先日より後に出願公開がされたものであることになるから,詳細に検討するまでもなく,申立理由3によっては,本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことができないことは明らかである。 6 申立理由5-1及び5-2について(甲3号証を主引用例とする新規性・進歩性違反) 申立理由5-1及び5-2は,本件訂正発明1及び2が,甲3号証に記載された発明であること,及び甲3号証並びに甲1ないし12号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができた旨主張するものである。 しかしながら,上記4(1)イ(イ)e,同(1)ウ(イ)d,同(2)イ(イ)c,同(3)イ(イ)e及び同(3)ウ(イ)cにおいて検討したことから明らかなように,本件訂正発明1及び2の発明特定事項である「キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ」ており,当該「接続部がT字型の横断面形状を有」している構成は,甲3号証には記載されておらず,少なくとも本件訂正発明1及び2と甲3号証記載の発明(以下,「甲3発明」という。)とは,本件訂正発明1及び2が,「キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ」ており,当該「接続部がT字型の横断面形状を有」しているのに対して,甲3発明がそのように特定されない点で相違する。 そして,「キャップの側面にクリップ部が接続部を介して一体的に設けられ」ており,当該「接続部がT字型の横断面形状を有」している点については,甲2号証,及び甲5号証ないし甲13号証(甲1号証は,上記1のとおり,本件優先日後に公開されたものであるから除外される。)には記載も示唆もない。 そして,当該構成により,クリップ部の周方向の力に対する強度が増すことにより,クリップ部に対して周方向の力が加わった場合であっても接続部の破損を防止するという作用効果を奏することに照らせば,当該構成が設計的事項であるということもできない。 してみると,当該相違点を容易に想到し得るものということはできないから,本件特許の請求項1及び2に係る特許は,申立理由5-1及び5-2によっては,取り消すことができない。 第5 まとめ 以上のとおりであるから,特許第6392298号の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,請求項1,2について訂正することを認める。 本件特許の訂正請求書による取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって,は本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,上記結論のとおり決定する。

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2019-700219

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