特許訂正審判
2019-390118
カートリッジ
- 審判番号
- 2019-390118
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2018-092665
- 登録番号
- 特許第6547107号(P6547107)
- 請求日
- 2019年11月22日
- 審決日
- 2020年03月09日
- 公報発行日
- 2020年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】セイコーエプソン 株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人明成国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 尾崎 淳史
- 審判官 塚本 丈二
- 審判官 吉村 尚
- 分類
- P141 .851-Y (B41J) / P141 .853-Y (B41J) / P141 .854-Y (B41J) / P141 .841-Y (B41J) / P141 .856-Y (B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条、特許法第41条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6547107号に関する訂正審判事件について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第6547107号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6547107号は,平成25年1月10日に出願された特願2013-512029号(特許法第41条に基づく国内優先権主張:平成24年1月13日 特願2012-5347号,平成24年1月25日 特願2012-13238号,及び,平成24年2月6日 特願2012-22819号)の一部を,平成26年12月2日に特願2014-243739号として出願し,更にその一部を平成27年2月10日に特願2015-24065号として出願し,更にその一部を平成28年10月27日に特願2016-210123号として出願し,更にその一部を平成30年5月14日に特願2018-92665号として出願したものであって,その請求項1ないし3に係る発明は,令和1年7月5日にその特許権の設定登録がなされたものであって,同年11月22日に本件訂正審判の請求がされ,その後,同年12月25日付けで訂正拒絶理由が通知され,それに対して,令和2年2月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は,令和2年2月5日付け手続補正書に添付した審判請求書(以下,「本件審判請求書」という。)に記載のとおり,「特許第6547107号の明細書,特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり訂正することを認める,との審決を求める。」ものである(以下,「本件特許第6547107号の明細書」,「本件特許第6547107号の特許請求の範囲」及び「本件特許第6547107号の図面」を,それぞれ,「本件特許明細書」,「本件特許請求の範囲」及び「本件特許図面」という。また,「本件特許明細書」,「本件特許請求の範囲」及び「本件特許図面」を総称して,「本件特許明細書等」という。)。
第3 訂正の内容
訂正の内容は,以下のとおりである(下線は,訂正箇所を示すために付加した。)。
1 訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1の,
「印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって,」を,
「印刷装置のカートリッジ装着部であって,装置側端子と位置決め部とを有する装置側端止部を備えるカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって,」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2も同様。)
2 訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項1の,
「前記凹部に基板が配置され,前記基板は前記前面側に向かうにつれて前記第2側面側に位置するように傾斜しており,更に,前記基板の表面には端子が形成されている,」を,「前記前面と前記第1側面とが交差するコーナー部に凹部が設けられ,」の直後に移動させ,また,「前記凹部に基板が配置され,前記基板は前記前面側に向かうにつれて前記第2側面側に位置するように傾斜しており,前記基板の表面には端子が形成されており,」と訂正する。(請求項1を引用する請求項2も同様。)
3 訂正事項3
本件特許請求の範囲の請求項1の,
「前記第1の側壁と前記第2の側壁には,前記前面において開口し,前記後面に向かって延びるように溝が形成され,」を,
「前記第1の側壁と前記第2の側壁には,前記前面において開口し,前記後面に向かって延びる溝であって,前記装置側端止部の前記位置決め部が挿入されることで,前記装置側端子と前記端子とが接触する接触位置まで前記装置側端子と前記端子とを案内する溝が形成されている,」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2も同様。)
4 訂正事項7
本件特許明細書の段落【0013】の,
「本発明は,上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり,以下の形態または適用例として実現することができる。
[形態1]
印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって,
前面と,前記前面と対向する後面と,前記前面および前記後面と交わる第1側面,前記第1側面と対向する第2側面と,を備え,
前記前面と前記第1側面とが交差するコーナー部に凹部が設けられ,
前記凹部の内壁の一部を構成する第1の側壁と第2の側壁とを有し,
前記第1の側壁と前記第2の側壁は,互いに対向して配置されており,
前記第1の側壁と前記第2の側壁には,前記前面において開口し,前記後面に向かって延びるように溝が形成され,
前記凹部に基板が配置され,前記基板は前記前面側に向かうにつれて前記第2側面側に位置するように傾斜しており,
更に,前記基板の表面には端子が形成されている,カートリッジ。
[形態2]
印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって,
前面と,前記前面と対向する後面と,前記前面および前記後面と交わる第1側面,前記第1側面と対向する第2側面と,を備え,
前記前面と前記第1側面とが交差するコーナー部に凹部が設けられ,
前記凹部の内壁の一部を構成する第1の側壁と第2の側壁とを有し,
前記第1の側壁と前記第2の側壁は,互いに対向して配置されており,
前記第1の側壁と前記第2の側壁には,互いに向かい合うように突出した凸部が形成され,
前記凹部に基板が配置され,前記基板は前記前面側に向かうにつれて前記第2側面側に位置するように傾斜しており,
更に,前記基板の表面には端子が形成されている,カートリッジ。」を,
「本発明は,上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり,以下の形態または適用例として実現することができる。
[形態1]
印刷装置のカートリッジ装着部であって,装置側端子と位置決め部とを有する装置側端止部を備えるカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって,
前面と,前記前面と対向する後面と,前記前面および前記後面と交わる第1側面,前記第1側面と対向する第2側面と,を備え,
前記前面と前記第1側面とが交差するコーナー部に凹部が設けられ,
前記凹部に基板が配置され,前記基板は前記前面側に向かうにつれて前記第2側面側に位置するように傾斜しており,
前記基板の表面には端子が形成されており,
前記凹部の内壁の一部を構成する第1の側壁と第2の側壁とを有し,
前記第1の側壁と前記第2の側壁は,互いに対向して配置されており,
前記第1の側壁と前記第2の側壁には,前記前面において開口し,前記後面に向かって延びる溝であって,前記装置側端止部の前記位置決め部が挿入されることで,前記装置側端子と前記端子とが接触する接触位置まで前記装置側端子と前記端子とを案内する溝が形成されている,カートリッジ。
[形態2]
印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって,
前面と,前記前面と対向する後面と,前記前面および前記後面と交わる第1側面,前記第1側面と対向する第2側面と,を備え,
前記前面と前記第1側面とが交差するコーナー部に凹部が設けられ,
前記凹部の内壁の一部を構成する第1の側壁と第2の側壁とを有し,
前記第1の側壁と前記第2の側壁は,互いに対向して配置されており,
前記第1の側壁と前記第2の側壁には,互いに向かい合うように突出した凸部が形成され,
前記凹部に基板が配置され,前記基板は前記前面側に向かうにつれて前記第2側面側に位置するように傾斜しており,
更に,前記基板の表面には端子が形成されている,カートリッジ。」に訂正する。
第4 当審における判断
1 訂正事項1について
(1) 訂正の目的について
ア 訂正前の請求項1に係る特許発明では,「印刷装置のカートリッジ装着部」についてはどのような構成を備えるかを何ら特定されていない。
これに対して,訂正後の請求項1に係る特許発明では,印刷装置のカートリッジ装着部が,装置側端子と位置決め部とを有する装置側端子部を備えることを特定するものである。
したがって,当該訂正事項1は,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,特許法126条1項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ また,訂正事項1は,訂正事項3によって,「前記装置側端止部」,「前記位置決め部」及び「前記装置側端子」を記載する訂正を行うから,これよりも前に「装置側端止部」,「位置決め部」及び「装置側端子」を記載することで,不合理を生じさせないようするための訂正ともいえる。
したがって,当該訂正事項1は,特許法126条1項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものともいえる。
(2) 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するか否かについて
ア 上記(1)アで検討したように,訂正事項1は,「印刷装置のカートリッジ装着部」及びカートリッジの「溝」をさらに限定するものであるから,訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法126条6項の規定に適合するものである。
イ また,上記(1)イで検討したように,訂正事項1を,明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解した場合には,訂正前後で実質的な内容に差がないことから,訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(3) 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものか否かについて
ア 本件特許明細書には,以下の記載がある(下線は,当審において付加した。)。
(ア) 「【0041】
本実施形態のプリンター10は,インクをヘッド22から吐出するインクジェットプリンターである。このプリンター10は,ポスター等の大判の用紙(A2~A0等)に印刷を行う大型のプリンターである。プリンター10は,カートリッジ装着部6と,制御部31と,キャリッジ20と,ヘッド22と,駆動機構30とを備える。また,プリンター10は,プリンター10の動作を利用者が操作するための操作ボタン15を備える。」
(イ) 「【0053】
A-2.カートリッジ装着部の詳細構成:
図5~図9を用いてカートリッジ装着部6の詳細構成について説明する。図5は,カートリッジ装着部6の第1の外観斜視図である。図6は,カートリッジ装着部6の第2の外観斜視図である。図7は,カートリッジ装着部6の第3の外観斜視図である。図8は,カートリッジ装着部6の第4の外観斜視図である。図9は,カートリッジ装着部6の第5の外観斜視図である。なお,図5及び図8には,カートリッジ装着部6に取り付けられたチューブ24が図示されている。また,図6,7,9は,カートリッジ装着部6の内部の構成が視認できるように,一部の構成の図示は省略している。なお,本実施例のカートリッジ装着部6は,4つのカートリッジ4を独立して着脱できるが,プリンター10の仕様に応じてカートリッジ4の着脱個数を増加できるように構成されている。すなわち,図6に示すように,最も+X軸方向側には,増やしたカートリッジ4が装着できるように予備の装着空間や部材が設けられている。
【0054】
図5に示すように,カートリッジ装着部6は,以下に述べる6つの壁部によってカートリッジ4を収容するカートリッジ収容室61が形成されている。カートリッジ収容室61は,略直方体形状である。カートリッジ収容室61の形状は,カートリッジ4の外観形状に対応している。なお,カートリッジ収容室61のうち,4つのカートリッジ4のうちの1つを収容する部分をそれぞれ,スロットとも呼ぶ。
【0055】
カートリッジ装着部6は,装置側前壁部62と,第1の装置側側壁部63と,第2の装置側側壁部64とを備える。また,カートリッジ装着部6は,第3の装置側側壁部65と,第4の装置側側壁部66と,開口壁部67と,を備える。これらの6つの壁部62,63,64,65,66,67によってカートリッジ収容室61が区画形成されている。6つの壁部62,63,64,65,66,67の外形はそれぞれ,略長方形状である。
【0056】
図5及び図6に示すように,装置側前壁部62は,カートリッジ収容室61に対して-Y軸方向側に位置する。装置側前壁部62は,プリンター10の使用状態において,垂直な壁部である。
【0057】
図6に示すように,装置側前壁部62には,装置側端子部70と,印刷材供給機構640と,ロッド662が設けられている。詳細には,+Z軸方向から-Z軸方向に向かうに順に,装置側端子部70,印刷材供給機構640,ロッド662が配列されている。装置側端子部70及び印刷材供給機構640は,装置側前壁部62の+Y軸方向側(カートリッジ収容室61が位置する側)の面に設けられている。また,ロッド662は,装置側前壁部62をY軸方向に貫通するように設けられている。装置側前壁部62の-Y軸方向側(カートリッジ収容室61とは反対の側)には,ポンプ機構7が設けられている。
【0058】
印刷材供給機構640は上述の印刷材供給管642を備え,カートリッジ4内のインクをプリンター10側に流通させるために利用される。装置側端子部70は,上述の装置側端子群721(図7)及びコネクター739(図6)を備え,カートリッジ4とプリンター10を電気的に接続するために利用される。図6に示すように装置側端子部70は,印刷材供給管642よりも第1の装置側側壁部63側(+Z軸方向側)に設けられている。ロッド662は,カートリッジ4のインクエンド状態をプリンター10側で検出するために用いられる。すなわち,ロッド662は,後述するプリンター10の検出機構の一部を構成する。また,ロッド662は,カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際に,正しい装着位置からの位置ずれを抑制するための位置決め部材としても機能する。なお,装置側端子部70,印刷材供給機構640,及び,ロッド662のそれぞれの詳細構成は後述する。」
(ウ) 「【0081】
A-3-3.装置側端子部70の詳細構成:
図10及び図11に示すように装置側端子部70は,端子装着部694に設けられている。詳細には,図12に示すように装置側端子部70の一対の端子側嵌合部762が,端子装着部694に嵌め合わされることで端子装着部694に取り付けられている。また,装置側端子部70は,装置側前壁部62(詳細には,端子装着部694)に対してX軸方向及びZ軸方向に移動可能な状態で取り付けられている。詳細には,装置側端子部70は,装置側前壁部62に対してX軸方向及びZ軸方向に微小に移動可能に取り付けられている。
【0082】
さらに,図14~図18を用いて装置側端子部70の説明を行う。図14は,装置側端子部70の第1の分解斜視図である。図15は,装置側端子部70の第2の分解斜視図である。図16は,装置側端子部70の第1の外観斜視図である。図17は,装置側端子部70の第2の外観斜視図である。図18は,図17の17-17断面図である。なお,図18には,理解の容易の為に第1の前壁部690の一部を実線で,位置決め部756を点線で図示している。
【0083】
図14及び図15に示すように,装置側端子部70は,装置側端子群721と,端子台724と,ホルダー750とを備える。また,装置側端子部70は,コネクター基板730を備える。コネクター基板730は,表面に設けられた端子群732(図15)と,裏面に設けられたコネクター739と,を備える。端子群732は複数の端子(本実施例では,9つ)からなり,コネクター739と電気的に接続されている。
【0084】
装置側端子群721は,複数の端子(本実施例では,9つ)を備える。装置側端子群721のそれぞれの端子は,弾性変形可能に構成されている。装置側端子群721の各端子は,U字状の板バネによって構成されている。各端子の先端のうち,一方は,端子台724の表面724faから露出している。端子台724の表面724faから露出した先端部は,装着状態においてカートリッジ4の回路基板50の対応するカートリッジ側端子と接触する端子接点722となる。すなわち,端子接点722は,端子台724の表面724fa上に設けられる。各端子の先端のうち,他方は,端子台724の裏面724fbから露出している。端子台724の裏面724fbから露出した先端部は,端子群732の対応する端子と接触する端子接点723となる。すなわち,端子接点723は,端子台724の裏面724fb上に設けられる。」
(エ) 「【0087】
図14及び図15に示すように,ホルダー750は,収容空間751に対してX軸方向両側に位置する一対の壁部752と,壁部752に設けられた一対の位置決め部756を有する。ここで,一対の壁部752のうち収容空間751に対して+X軸方向側に位置する一方を第1壁部752tとも呼び,-X軸方向側に位置する他方を第2壁部752wとも呼ぶ。また,一対の位置決め部756のうち第1壁部752tに設けられた一方を第1の位置決め部756tとも呼び,第2壁部752wに設けられた他方を第2の位置決め部756wとも呼ぶ。なお,第1壁部752tと第2壁部752wとを区別することなく用いる場合は,壁部752を用いて説明する。また,第1の位置決め部756tと第2の位置決め部756wとを区別することなく用いる場合は,位置決め部756を用いて説明する。」
イ 上記アで摘記した事項から,本件特許明細書等には,プリンター10が備えるカートリッジ装着部6は,装着部前壁部62を備え,装置側前壁部62には,装置側端子部70が設けられ,装置側端子部70は,装置側端子群721と,ホルダー750とを備え,ホルダー750は,収容空間751に対してX軸方向両側に位置する一対の壁部752と,壁部752に設けられた一対の位置決め部756を有することが記載されているものと認められるから,訂正事項1は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
したがって,訂正事項1は,特許法126条5項の規定に適合するものである。
2 訂正事項2について
(1) 訂正の目的について
訂正事項2は,後述する訂正事項3によって,「前記端子」を記載する訂正を行うから,これよりも前に「端子」を記載することで,不合理を生じさせないようにするための訂正であると認められる。
したがって,当該訂正事項2は,特許法126条1項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
(2) 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するか否か,及び本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものか否かについて
訂正事項2は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,訂正前後で実質的な内容に差がないことから,本件訂正事項は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,また,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
したがって,訂正事項2は,特許法126条5項及び6号の規定に適合するものである。
3 訂正事項3について
(1) 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明では,「溝」についてはどのような機能を奏するのか何ら特定していない。
これに対して,訂正後の請求項1に係る特許発明では,「溝」について,「前記装置側端子部の前記位置決め部が挿入されることで,前記装置側端子と前記端子とが接触する接触位置まで前記装置側端子と前記端子とを案内する」という機能を奏するものであることを特定することで,特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって,当該訂正事項3は特許法126条1項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するか否かについて
上記(1)で検討したように,訂正事項3は,カートリッジの「溝」をさらに限定するものであるから,訂正事項3は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法126条6項の規定に適合するものである。
(3) 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものか否かについて
ア 本件特許明細書等には,以下の記載がある(下線は,当審において付加した。)。
(ア) 「【0083】
図14及び図15に示すように,装置側端子部70は,装置側端子群721と,端子台724と,ホルダー750とを備える。また,装置側端子部70は,コネクター基板730を備える。コネクター基板730は,表面に設けられた端子群732(図15)と,裏面に設けられたコネクター739と,を備える。端子群732は複数の端子(本実施例では,9つ)からなり,コネクター739と電気的に接続されている。
【0084】
装置側端子群721は,複数の端子(本実施例では,9つ)を備える。装置側端子群721のそれぞれの端子は,弾性変形可能に構成されている。装置側端子群721の各端子は,U字状の板バネによって構成されている。各端子の先端のうち,一方は,端子台724の表面724faから露出している。端子台724の表面724faから露出した先端部は,装着状態においてカートリッジ4の回路基板50の対応するカートリッジ側端子と接触する端子接点722となる。すなわち,端子接点722は,端子台724の表面724fa上に設けられる。各端子の先端のうち,他方は,端子台724の裏面724fbから露出している。端子台724の裏面724fbから露出した先端部は,端子群732の対応する端子と接触する端子接点723となる。すなわち,端子接点723は,端子台724の裏面724fb上に設けられる。」
(イ) 「【0087】
図14及び図15に示すように,ホルダー750は,収容空間751に対してX軸方向両側に位置する一対の壁部752と,壁部752に設けられた一対の位置決め部756を有する。ここで,一対の壁部752のうち収容空間751に対して+X軸方向側に位置する一方を第1壁部752tとも呼び,-X軸方向側に位置する他方を第2壁部752wとも呼ぶ。また,一対の位置決め部756のうち第1壁部752tに設けられた一方を第1の位置決め部756tとも呼び,第2壁部752wに設けられた他方を第2の位置決め部756wとも呼ぶ。なお,第1壁部752tと第2壁部752wとを区別することなく用いる場合は,壁部752を用いて説明する。また,第1の位置決め部756tと第2の位置決め部756wとを区別することなく用いる場合は,位置決め部756を用いて説明する。
【0088】
第1壁部752tと第2壁部752wは,収容空間751を区画形成する壁である。第1の位置決め部756tと第2の位置決め部756wは,それぞれ端子台724の表面724faの+X軸方向側の側方及び-X軸方向側の側方に位置する。第1と第2の位置決め部756t,756wは,カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際に,装置側端子群721の各端子と対応するカートリッジ側端子群の各端子とが接触する接触位置にカートリッジ4と装置側端子部70を案内する。詳細には,第1の位置決め部756tと第2の位置決め部756wは,カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際に,装置側端子群721とカートリッジ側端子群との接触が開始される前に,カートリッジ4に形成された溝への挿入が開始されるように構成される。これにより,カートリッジ4と装置側端子部70が接触位置まで精度よく移動できる。第1の位置決め部756tは,Y軸方向(カートリッジ4の挿入方向)に沿って延びる。また,第1の位置決め部756tは,第1壁部752tから+X軸方向に突出する。第2の位置決め部756wは,Y軸方向(カートリッジ4の挿入方向)に沿って延びる。また,第2の位置決め部756tは,第2壁部752wから-X軸方向に突出する。本実施例では上記の第1の構成を実現するために,図18に示すように,位置決め部756の+Y軸方向側の端部757が端子接点722よりも+Y軸方向側に位置するように位置決め部756が設けられている。なお,端部757は,+Y軸方向から-Y軸方向に向かうに従ってZ軸方向の寸法が大きくなるテーパー形状である。これにより,カートリッジ4の後述する規制部に位置決め部756を容易に挿入できる。位置決め部756t,756wは,それぞれ,カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着された装着状態において,カートリッジ4に形成された溝と接触する4つの接触面を有する。これら4つの接触面のうち,図16及び図17には,位置決め部756wの接触面756wa,756wb,756wc,756wdと,位置決め部756tの接触面756tb,756tdのみが示されている。4つの接触面のうち,Z軸方向において対向する2つの面であって,+Z軸方向側に位置するものをA面756ta(図33~36),756wa,-Z軸方向側に位置するものをB面756tb,756wbとよぶ。また,X軸方向に交わる面をC面756tc(図33~36),756wcとよぶ。また,+Y軸方向の先端面をD面756td,756wdとよぶ。」
(ウ) 「【0101】
図19及び図21に示すように,カートリッジ4はさらに,前面42と第1側面43とが交差するコーナー部89に設けられた凹部90を備える。換言すれば,凹部90は,前面42と第1側面43に亘って設けられている。凹部90には,回路基板50が配置されている。回路基板50の表面50fa(図21)には,カートリッジ側端子群521が形成されている。カートリッジ側端子群521は,複数の端子(本実施例では,9個)を備える。装着状態において,カートリッジ側端子群521の各端子は,装置側端子群721(図15)の対応する各端子と接触することで,電気的に接続される。
【0102】
さらに,図27~図32を用いて凹部90の詳細構成について説明する。図27は,凹部90近傍の外観斜視図である。図28は,凹部90近傍の正面図である。図29は,図28の28a-28a断面図である。図30は,図28の28b-28b断面図である。図31は,装置側端子部70と回路基板50の接続状態を説明するための図である。図32は,装着状態における28a-28a断面図である。」
(エ) 「【0105】
図27乃至図30に示すように,凹部90のX軸方向において対向する一対の側壁902t,902wには,一対の溝906t,906wがそれぞれ設けられている。これらの溝906t,906wは,X軸方向に互いに向かい合うように設けられている。また,図28に示すように,溝906t,906wは,YZ平面28cに対して対称に設けられている。このYZ平面28cは,カートリッジのX軸方向の寸法(幅)の中心を構成する面である。凹部90内に配置される回路基板50及び凹部90を構成する各要素は,このYZ平面28cに対して対称に設けられている。すなわち,YZ平面28cは,カートリッジ側端子群521のX軸方向の寸法(幅)の中心を通る。そして,カートリッジ側端子群521のうち,カートリッジ端子群521の幅方向の中心に設けられた電極521cが,YZ平面28cと交わる。また,YZ平面28cは,回路基板50のX軸方向の寸法(幅)の中心を通る。また,このYZ平面28cは,回路基板50を底壁98に取り付けるために底壁988に設けられた取付け部50a,50bを通る。また,YZ平面28cは,カートリッジ側端子群521のうち,X軸方向の中央部に設けられた端子521cを通る。この端子521cは,装置側端子群721のうち,X軸方向の中央部に設けられた端子721c(図16参照)と接触する端子である。また,凹部90の溝906t,906wと,一対の壁側壁902t,902wは,YZ平面28cに対して対称に設けられる。さらに,YZ平面28cは,先に説明した第1凸部432(432a,432b)及び第2凸部442(442a,442b,図21及び図25参照)のX軸方向の寸法(幅)の中心を通る。また,図28には示していないが,YZ平面28cは,第1側面43に設けられた第1係止部436(図25)及び第2側面44に設けられた第2係止部446(図25)のZ軸方向の寸法(幅)の中心を通る。また,この第1係止部436及び第2係止部446を係止する板ばね684及び605(図6,図7)は,このYZ平面28cと交差する。」
(オ) 「【0113】
A-5.カートリッジ側端子群521と装置側端子群721との接触態様:
次に,図33~図36を用いて,カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される際の,カートリッジ側端子群521と装置側端子群721との接触態様について説明する。図33は,接触態様を説明するための第1の図である。図34は,接触態様を説明するための第2の図である。図35は,接触態様を説明するための第3の図である。図36は,接触態様を説明するための第4の図である。図33から図36の図面番号順に,カートリッジ4の装着の際の様子が時系列に図示されている。また,図33~図36は,カートリッジ側端子群521の1つのカートリッジ側端子521aと装置側端子群721のうちの1つの装置側端子721aに着目して説明する。なお,他の端子についても同様の装着態様である。第1と第2の位置決め部756ta,waの形状は同一であり,第1と第2の溝906t,wの形状は同一であることから,図33~図36では理解の容易のために,符号756ta,waを併記すると共に符号906t,wを併記している。
【0114】
図33に示すように,カートリッジ4(図19)をカートリッジ装着部6(図5)に装着する際,カートリッジ4は-Y軸方向にカートリッジ装着部6のスロット内に押し進められる。このとき,図34に示すように,カートリッジ側端子521aが装置側端子721aの端子接点722aと接触する前に,溝906への位置決め部756の挿入が開始される。この時,カートリッジ装着部6に若干の製造誤差が生じていた場合でも,装置側端子部70がX軸方向及びZ軸方向に移動することで,カートリッジ4の凹部90内に,その誤差を吸収しながら導かれる。位置決め部756が溝906の入口部分916の面に接触しながらカートリッジ4が-Y軸方向に押し進められることで,カートリッジ側端子521aと装置側端子721aとが接触する位置に装置側端子部70が案内される。図34では,装置側端子部70が矢印V1に示した方向(-Z軸方向)に僅かに移動しながら凹部90内(図27)に導かれる様子を示している。
【0115】
図35に示すように,カートリッジ4がさらに-Y軸方向に押し進められ,溝906の接触部分926t,wに位置決め部756t,wが挿入されると,位置決め部756t,wのC面756tc,wcが,それぞれ溝906t,wのC面944,964に接触することで,装置側端子部70(図10)のX軸方向の移動が規制される。また,このとき,位置決め部756t,wのA面756ta,waが,それぞれ溝906t,wのA面942,962に接触し,B面756tb,wbが,それぞれB面946,966に接触することで,装置側端子部70のZ軸方向の移動が規制される。これにより,カートリッジ側端子521aと端子接点722aとのX軸方向及びZ軸方向の位置が定められる。そして,位置決め部756の接触部分926への挿入が始まった後,完全な挿入が完了する直前に,端子接点722aが初めてカートリッジ側端子521aに接触する。この時点では,位置決め部756t,wの先端面756td,756wdは溝906t,wのD面948,968に接触しておらず,更にカートリッジ4を押し進めることが可能である。図35に示す状態から,カートリッジ4を更に-Y軸方向に押し進めると,装置側端子721aが弾性変形し,装置側端子721aの接点722aがカートリッジ側端子521aと接触しながら矢印YR1aの向きに移動する。このとき,僅かに装置側端子群とカートリッジ側端子群とが擦れ合う。そして,最終的には,図36に示すように,位置決め部756t,wの先端面756td,twが溝906t,wのD面948,968に接触し,カートリッジ側端子521aと端子接点722aとのY軸方向の位置が定められる。この状態で,カートリッジ4のカートリッジ装着部6への装着が完了する。また,装着完了時及び装着状態では,図35に示した装着の最終段階と同様,位置決め部756t,wのA面756ta,waと溝906t,wのA面942,944とが+Z軸方向において接触している。また,B面756tb,wbと溝906t,wのB面946,966とが-Z軸方向において接触している。また,第1の位置決め部のC面756tcが+X軸方向において第1の溝906tのC面944と接触し,第2の位置決め部のC面756wcが-X軸方向において第2の溝906wのC面964と接触している。よって,位置決め部756t,wのZ軸方向及びX軸方向の動きが,溝906t,wによって規制される。これにより,装置側端子721aとカートリッジ側端子521aとの接触を良好に図ることができる位置に,両者721a,521aを保持することができる。」
イ 上記アで摘記した事項から,本件特許明細書等には,装置側端子部70に備えられるホルダー750は,位置決め部756を有し,カートリッジ4に備えられた凹部90には,一対の溝906が設けられ,位置決め部756が溝906の入口部分916の面に接触しながらカートリッジ4が押し進められることで,カートリッジ側端子521aと装置側端子721aとが接触する位置に装置側端子部70が案内されることが記載されているものと認められるから,訂正事項3は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
したがって,訂正事項3は,特許法126条5項の規定に適合するものである。
4 独立特許要件について
請求項1及び2についての訂正事項である訂正事項1ないし3のうち,訂正事項1及び3は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができるので,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか検討したところ,訂正後の請求項1及び2に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする新たな理由は見い出せない。
したがって,請求項1及び2についての訂正事項は,特許法126条7項の規定に適合する。
5 訂正事項7について
(1) 訂正の目的について
訂正事項7は,訂正事項1ないし3に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,本件特許明細書の段落【0013】の形態1の記載を,訂正後の請求項1に対応させる訂正である。
したがって,当該訂正事項7は,特許法126条1項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2) 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するか否か,及び本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものか否かについて
上記(1)で検討したように,訂正事項7は,訂正事項1ないし3に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,本件特許明細書の段落【0013】の形態1の記載を,訂正後の請求項1に対応させるための訂正であり,訂正事項1ないし3が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,また,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは,上記1(2),同(3),2(2),3(2)及び同(3)で検討したとおりである。
したがって,訂正事項7は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,また,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから,特許法126条5項及び6号の規定に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正審判の請求は,特許法126条1項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条5ないし7項の規定に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-390118