特許訂正審判
2018-390130
液体容器
- 審判番号
- 2018-390130
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2003-290713
- 登録番号
- 特許第4432025号(P4432025)
- 請求日
- 2018年09月06日
- 審決日
- 2018年12月07日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】セイコーエプソン 株式会社
- 【請求人代理人】飯田 秀郷
- 【請求人代理人】隈部 泰正
- 【請求人代理人】奥津 啓太
- 【請求人代理人】清水 紘武
- 審判長/審判官
- 審判長 尾崎 淳史
- 審判官 後藤 昌夫
- 審判官 森次 顕
- 分類
- P141 .851-Y (B41J) / P141 .854-Y (B41J) / P141 .855-Y (B41J) / P141 .856-Y (B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第4432025号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4432025号の明細書および特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書および特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第4432025号(以下「本件特許」という。)は、平成15年8月8日に出願され、平成22年1月8日に特許権の設定登録がされ、平成30年9月6日に本件審判の請求がされたものである。
第2 請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、本件審判請求書の請求の趣旨に記載されるとおり、特許第4432025号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める、というものである。
第3 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。(審決注:下線部分は審決で付した。以下同様。)
1 訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に
「ピン取付部の頂面に設けられた前記ピン取付部よりも小径の係止ピンを有する装置側固定構造を備えた液体消費装置」
とあるのを、
「ピン取付部の頂面に設けられた前記ピン取付部よりも小径の係止ピンを有する装置側固定構造と、電気的な接続に使用される接点とを備えた液体消費装置」
と訂正する(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし9も同様に訂正する。)。
2 訂正事項2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に
「液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着され、前記液体消費装置に供給される液体を内部に貯留する液体容器において、」
とあるのを、
「液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着され、前記液体消費装置に供給される液体を内部に貯留し、前記液体消費装置の前記接点と電気的に接続するための電極が形成された回路基板を備えた液体容器であって、前記係止ピンにより、前記電極が前記接点の方向に押し付けられる液体容器において、」
と訂正する(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2ないし9も同様に訂正する。)。
3 訂正事項3
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0013】に
「ピン取付部の頂面に設けられた前記ピン取付部よりも小径の係止ピンを有する装置側固定構造を備えた液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着され、前記液体消費装置に供給される液体を内部に貯留する液体容器において、」
とあるのを、
「ピン取付部の頂面に設けられた前記ピン取付部よりも小径の係止ピンを有する装置側固定構造と、電気的な接続に使用される接点とを備えた液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着され、前記液体消費装置に供給される液体を内部に貯留し、前記液体消費装置の前記接点と電気的に接続するための電極が形成された回路基板を備えた液体容器であって、前記係止ピンにより、前記電極が前記接点の方向に押し付けられる液体容器において、」
と訂正する。
第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否について
訂正事項1は、「液体消費装置」について、訂正前の請求項1に係る発明では「ピン取付部の頂面に設けられた前記ピン取付部よりも小径の係止ピンを有する装置側固定構造を備えた」と特定していたものを、訂正後の請求項1に係る発明では「ピン取付部の頂面に設けられた前記ピン取付部よりも小径の係止ピンを有する装置側固定構造と、電気的な接続に使用される接点とを備えた」と特定するものであって、「液体消費装置」が「電気的な接続に使用される接点」を備えるという発明特定事項を付加するものであるから、訂正前の請求項1に係る発明における「液体消費装置」をさらに限定するものである。
よって、本件審判の請求にかかる訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許明細書の段落【0038】には「インクジェット式記録装置100のカートリッジ装着部101にインクカートリッジ1を装着した状態を示しており、カートリッジ装着部101には、インクカートリッジ1の前面部が接続されるスライダー部材102が設けられている。」と記載されており、「スライダー部材102」は「インクジェット式記録装置100」の一部であるといえるところ、本件特許明細書の段落【0046】には「スライダー部材102の前面の一端部には、記憶装置8の電極8aに接続される装置側接点113を有する接点用突出部114が設けられている。」と記載されているから、本件特許明細書には「インクジェット式記録装置100」が「装置側接点113」を備えることが記載されていると認められる。そして、本件特許明細書に記載の「装置側接点113」は、「電極8aに接続される」ものであるから、電気的な接続に使用されるものであることは自明である。
してみると、「液体消費装置」が「電気的な接続に使用される接点」を備えることは、本件特許明細書等の記載から自明な事項である。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項1は「液体消費装置」が「電気的な接続に使用される接点」を備えるという発明特定事項を付加するものであって、訂正前の請求項1に係る発明における「液体消費装置」をさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的の適否について
訂正事項2は、「液体容器」について、訂正前の請求項1に係る発明では「液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着され、前記液体消費装置に供給される液体を内部に貯留する」と特定していたものを、訂正後の請求項1に係る発明では「液体消費装置の容器装着部に着脱自在に装着され、前記液体消費装置に供給される液体を内部に貯留し、前記液体消費装置の前記接点と電気的に接続するための電極が形成された回路基板を備えた液体容器であって、前記係止ピンにより、前記電極が前記接点の方向に押し付けられる」と特定するものであって、「液体容器」が「前記液体消費装置の前記接点と電気的に接続するための電極が形成された回路基板を備え」るとともに「前記係止ピンにより、前記電極が前記接点の方向に押し付けられる」という発明特定事項を付加するものであるから、訂正前の請求項1に係る発明における「液体容器」をさらに限定するものである。
よって、本件審判の請求にかかる訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
ア 本件特許明細書の段落【0034】には「カートリッジ側固定構造7に近い側の容器本体2の一方の側面には、インクの種類、残量等の情報を記憶させるIC(半導体記憶素子)を搭載した回路基板8bが設けられており、この回路基板8bの表面にはICと電気的に接続されていると共に、記録装置本体の装置側接点と接触する電極(カートリッジ側電極)8aを備え、記憶装置8を構成している。」と記載されているから、本件特許明細書等には「容器本体2」が「装置側接点と接触する電極(カートリッジ側電極)8a」を備える「回路基板8b」を備えることが記載されていると認められる。
してみると、「液体容器」が「前記液体消費装置の前記接点と電気的に接続するための電極が形成された回路基板を備え」ることは、本件特許明細書等に記載されている。
イ(ア) 本件特許明細書の段落【0079】には「係止ピン112はバネ部材109によってインクカートリッジ1の一側面の方向に向かって付勢されおり、該一側面には記憶装置8の電極8aが設けられている。バネ部材109の付勢力は、係止ピン112及び最終停止用側壁部18aを介して、記憶装置8の電極8aを装置側接点113(図9,図10)の方向に押し付けるように作用し、これにより、記憶装置8の電極8aと装置側接点113との接続状態を良好に維持することができる。」と記載されているから、本件特許明細書等には「バネ部材109」によって付勢された「係止ピン112」は「電極8aを装置側接点113(図9,図10)の方向に押し付ける」という技術的事項(以下、「技術的事項1」という。)が記載されていると認められる。
(イ) ところで、訂正後の請求項1に係る発明における「前記係止ピンにより、前記電極が前記接点の方向に押し付けられる」という発明特定事項(以下、「発明特定事項1」という。)は、技術的事項1に対して「係止ピン」が「バネ部材によって」付勢されているという技術的事項を捨象しており、「バネ部材によって」付勢される以外の手法により「係止ピン」に力が加えられることも包含される。そこで、当該捨象が、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでないか検討する。
「係止ピン112」が、「バネ部材109」によって付勢されるのではなく、その他の何らかの手法により力を加えられるのであっても、「電極8aと装置側接点113との接続状態を良好に維持する」という課題を解決できることは明らかであり、この点について、技術的事項1と発明特定事項1とは、同様の技術上の意義を有する。そして、発明特定事項1においては「係止ピン」に力を加える個別具体的な手法が特定されているわけではないことに鑑みれば、上記捨象をしたとしても、それにより、そのような個別具体的な手法に特有の技術上の意義が新たに追加されるということはできない。
(ウ) してみると、上記捨象は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものということはできない。
ウ 上記アおよびイより、訂正事項2は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
上記(1)のとおり、訂正事項2は「液体容器」が「前記液体消費装置の前記接点と電気的に接続するための電極が形成された回路基板を備え」るとともに「前記係止ピンにより、前記電極が前記接点の方向に押し付けられる」という発明特定事項を付加するものであって、訂正前の請求項1に係る発明における「液体容器」をさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
3 訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて
「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正後の請求項1、および、これを直接的または間接的に引用する請求項2ないし9に係る発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
したがって、訂正事項1および2は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
4 訂正事項3について
(1)訂正の目的の適否について
訂正前の明細書の段落【0013】には、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に対応する記載があるところ、訂正事項1および2による訂正後の請求項1の発明特定事項と一致せず、不明瞭となる。
訂正事項3は、訂正事項1および2による訂正後の特許請求の範囲の記載と、明細書の記載を整合させる訂正であり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
(2)本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
上記1(2)および2(2)で検討したとおり、「液体消費装置」が「電気的な接続に使用される接点」を備えること、「液体容器」が「前記液体消費装置の前記接点と電気的に接続するための電極が形成された回路基板を備え」ること、および、「液体容器」が「前記係止ピンにより、前記電極が前記接点の方向に押し付けられる」ることは、いずれも、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項3は、明細書の記載を、訂正事項1および2による訂正後の請求項1の発明特定事項と整合させるための訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第6項の規定に適合する。
第5 むすび
以上のとおり、本件審判の請求に係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号および第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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