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特許拒絶査定不服審判

2019-016068

密封スイッチトリラクタンスモータ

審判番号
2019-016068
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-530909外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年11月28日
審決日
2020年12月07日
公報発行日
2021年06月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H02K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-530909「密封スイッチトリラクタンスモータ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月21日国際公開,WO2015/073658,平成28年12月 1日国内公表,特表2016-537948〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
【理 由】

第1 手続の経緯の概略

本願は,2014年(平成26年)11月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2013年11月13日,US)を国際出願日とする特許出願であって,その手続の経緯は,おおむね,以下のとおりである。

平成30年10月 4日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月 9日  :意見書,手続補正書の提出
令和 元年 7月22日付け:拒絶査定
令和 元年11月28日  :審判請求書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和元年7月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は,以下の引用文献1-3に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧

1.特開2003-339128号公報

2.特開2001-112223号公報

3.国際公開第2009/139278号

第3 本願発明

本願請求項1-19に係る発明(以下,請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は,平成31年4月9日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-19に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「  【請求項1】
少なくとも1つのロータ突極を有する密封ロータと,
前記少なくとも1つのロータ突極から密封され,前記少なくとも1つのロータ突極の少なくとも一部で重なるように,前記密封ロータに向かって径方向に延在する少なくとも1つのステータ突極を備えるステータであって,少なくとも1つのステータ突極が,ステータ突極と関連する励磁巻線を有し,前記少なくとも1つのステータ突極と前記少なくとも1つのロータ突極との間に軸方向磁束回路を生じさせるために,前記少なくとも1つのロータ突極と相互作用する,ステータと,
を備える,
続きを表示(全45行)
スイッチトリラクタンスモータ。
【請求項2】
各ロータ突極が,軸方向で変位した副極のセットを備える,請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのロータ突極が,前記少なくとも1つのステータ突極から密封される,請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのステータ突極が,ステータ極の接続部材から前記密封ロータに向かって延在する軸方向で変位した端部材を有する,請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項5】
各ロータ突極が,電気角分ずれた副極のセットを備える,請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項6】
前記密封ロータが,非磁性コアを備え,前記少なくとも1つのロータ突極が,強磁性である,請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのロータ突極が,強磁性裏当てに取り付けられる,請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項8】
前記強磁性裏当てが,前記軸方向磁束流回路を生じさせるために,前記少なくとも1つのステータ突極に向かって径方向に延在する部材を備える,請求項7記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのステータ突極が,前記軸方向磁束流回路を生じさせるために,前記少なくとも1つのロータ突極が通過するスロットとして構成される,請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのロータ突極および少なくとも1つのステータ突極が,対面する端部材を有し,前記軸方向磁束流回路を生じさせるように構成される,請求項1記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項11】
少なくとも1つのロータ突極を有し,スイッチトリラクタンスロータとして構成されるロータと,
密封区画によって前記ロータから分離される,ブラシレスステータとして構成されるステータであって,前記ステータは,前記ロータおよび前記ステータがモータ内で軸方向磁束流を生成するように構成されるよう,前記少なくとも1つのロータ突極が通過するスロットを形成する軸方向で変位した端部材を備えた少なくとも1つのステータ突極を有する,ステータと,
を備えるスイッチトリラクタンスモータであって,
各ロータ突極が,軸方向で変位した副極の対応するセットを備え,前記軸方向で変位した副極の対応するセットは,各ロータ突極を通した各軸方向磁束回路が,前記ロータ突極の前記軸方向で変位した副極の対応するセットの各軸方向で変位した副極に共通であるように配置される,
スイッチトリラクタンスモータ。
【請求項12】
前記少なくとも1つのロータ突極が,強磁性裏当てに取り付けられ,前記端部材が,軸方向磁束流を生じさせるために,前記ステータに向かって延在する,請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項13】
前記ステータが,少なくとも3つの相巻線の独立したセットを備える,請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項14】
前記ステータが,それぞれがステータ極および励磁コイルを備える独立ステータモジュールのセットを備える,請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項15】
前記密封区画が,前記少なくとも1つのステータ突極から前記少なくとも1つのロータ突極を密封する,請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項16】
各ロータ突極が,電気角分ずれた副極のセットを備える,請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項17】
前記ロータが,非磁性コアを備え,前記少なくとも1つのロータ突極が,強磁性である,請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項18】
前記少なくとも1つのロータ突極が,強磁性裏当てに取り付けられる,請求項11記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項19】
前記強磁性裏当てが,前記軸方向磁束流回路を生じさせるために,前記少なくとも1つのステータ突極に向かって径方向に延在する部材を備える,請求項18記載のスイッチトリラクタンスモータ。」

第4 引用文献及び引用発明

1 引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審にて付与した。以下同様である。)

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,スイッチド・リラクタンスモータ及びその製造方法に関する。さらに,当該モータに適したステータコア及びロータコア並びにその製造方法に関する。」
イ 「【0015】本発明は,上記従来技術の問題を解決するために,ステータコア内に発生する渦電流を抑制し,鉄損を低減することによって,高いエネルギー効率を有するモータを提供することを目的とする。同時に,モータサイズに対する回転トルク比が高いモータを提供することを目的とする。
【0016】また,そのモータを実現するために適したステータコア及びロータコアを提供することを目的とする。
【0017】さらに,これらのモータ,ステータコア及びロータコアを簡易かつ安価に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。」
ウ 「【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明は,ロータと,前記ロータの周囲を囲むように配置された励磁用のステータコアであって,屈曲した鋼板を相互の電気的絶縁を保つように積層した積層体を含んでなるステータコアとを備え,前記ステータコアに含まれる前記積層体によって前記ロータの少なくとも一部を挟み込んで成ることを特徴とする。」
エ 「【0035】
【発明の実施の形態】<第1の実施の形態>図1に第1の実施の形態におけるモータの構造を示す。図1(a)はモータの要部平面図,図1(b)はモータの要部断面図(要部平面図のC-C'で切断した断面)を示す。
【0036】ロータ14は薄型化されて平板状に形成されており,中心軸24を介してベアリング26によってモータケースに回転可能に設置されている。ロータ14は外向きに突出した突極18を有している。ステータコア22はU字型の形状を有し,ロータ14の突極18を回転軸方向に挟み込むようにステータ10の内壁に固定されている。それぞれのステータコア22には励磁用のコイル16が巻かれている。
【0037】本実施形態では,U字型のステータコア22を用いているがこれに限定されるものではない。ロータ14の突極18を回転軸方向に挟み込む構造であれば良い。さらに,図1のように,U字型の先端部にロータ14の回転軸と平行な方向に突出部28を有することが好ましい。回転軸と平行な方向とは回転軸に対して完全に平行である必要はなく,ほぼ平行であれば良い。
【0038】ロータ14の突極18の数と,ステータコア22の数は互いに倍数の関係にならないように設定される。本実施形態では,突極18が4つ,ステータコア22が3つであるモータを例示しているが,本発明のモータはこれに限定されるものではない。例えば,ステータコア極数/ロータ極数を,12/8,8/6又は6/4等の組み合わせにすることができる。
【0039】ロータ14の少なくとも突極18は強磁性材料を含むことが好ましい。例えば,軟性磁性体であるフェライト等の鉄系酸化物を用いることが好ましい。
【0040】図2に,本実施形態におけるステータコア22及びそれに巻かれたコイル16の構成図を示す。ステータコア22は,鋼板の積層体を含んでいる。鋼板のそれぞれはU字型に曲げられ,U字型の開放端の間にロータ14の端部が挟み込まれるように配置されている。鋼板は,鉄を主材料として珪素を混合した軟性磁性体である鉄系酸化物等を含む電磁鋼板とすることが好ましい。さらに,方向性電磁鋼板を用い,ステータコア22内に形成される磁場の磁力線に沿った方向30に方向性電磁鋼板の容易磁化方向を配置することがより好ましい。」
オ 「【0043】以下に,図を参照して本実施形態におけるモータの動作を説明する。
【0044】ステータコア22の胴部に巻かれたコイル16に電流を流すと,ロータ14の回転軸と平行な方向に外部磁場32が発生する。外部磁場32の磁力線はロータ14の突極18を貫き,突極18がステータコア22に引き付けられる。ステータコア22を順次選択し,そのステータコア22のコイル16に電流を流すことによって,突極18が連続的に磁場に引き付けられてロータ14が回転する。
【0045】本実施の形態におけるモータは,U字型のステータコア22を有することによって,ロータ14の回転軸と平行な方向に外部磁場32が発生し,ロータ14を回転させることができる。
【0046】また,ステータコア22は,内部に発生する磁場の磁力線方向に連続的な鋼板の積層体から形成されているため,ステータコア22内に磁場を遮る部分がなく,磁気抵抗を低減することができる。その結果,コイル16の電気エネルギーを外部磁場32に低損失で変換することができる。
【0047】また,積層体の鋼板間に電気的な絶縁物が設けられているため,各鋼板間の電気抵抗を大きくすることができる。従って,鋼板間をまたがって流れようとする渦電流を抑制し,ステータコア22における鉄損を低減することができる。
【0048】さらに,ステータコア22に方向性電磁鋼板を用い,磁場の磁力線に沿って容易磁化方向を揃えることで,ステータコア22内によって発生する磁場を有効に外部磁場32として伝達することができる。
【0049】その結果,外部磁場32を強めることが可能となり,モータの回転トルク,モータの効率を高めることができる。
【0050】また,ステータコア22に突出部28を設けることにより,ロータ14の回転軸に平行な方向に外部磁場32を集中させることができる。」

カ 図1には,以下の事項が図示されている。

キ 図2には,以下の事項が図示されている。

ク 上記エ,カ,キより,ステータ10は,回転軸方向において,ロータ14の4つの突極18の少なくとも一部で重なるように,前記ロータ14に向かって径方向に延在する部分及び回転軸と平行な方向に延びる突出部28を有するステータコア22を備えていることがわかる。

ケ 上記オ,キより,ステータコア22の胴部に巻かれたコイル16によって,ステータコア22の内部に磁場が発生することから,前記コイル16は,前記ステータコア22と関連していることがわかる。

コ 上記オ,キより,ステータコア22の突出部28とロータ14の突極18との間に回転軸方向の磁束回路を生じさせるために,ロータ14の突極18とステータ10が相互作用していることがわかる。

(2)上記の記載及び図面の記載からみて,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(引用発明)

「4つの突極18を有するロータ14と,
回転軸方向において前記4つの突極18の少なくとも一部で重なるように,前記ロータ14に向かって径方向に延在する部分及び回転軸と平行な方向に延びる突出部28を有する3つのステータコア22を備えるステータ10であって,3つのステータコア22が,ステータコア22と関連するコイル16を有し,前記3つのステータコア22と前記4つの突極18との間に回転軸方向の磁束回路を生じさせるために,前記4つの突極18と相互作用する,ステータ10と,
を備える,
スイッチド・リラクタンスモータ。」

2 引用文献2の記載

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体製造工程に使用される電磁誘導を用いた真空モータ,及び,真空モータにより駆動する搬送装置に関する。」
(2)「【0002】複数のプロセスチャンバ(処理室)を備えたマルチチャンバ方式の処理装置には,被処理体たる半導体ウェハ(以下,「ウェハ」と称する。)をプロセスチャンバ間で搬入出するための搬送アームが備えられている。この搬送アームは,トランスファチャンバ(共通移載室)内に収容されている。搬送アームに設けられている基板保持部は,トランスファチャンバ内のみならず,トランスファチャンバに接続されている各種プロセスチャンバ内や真空予備室内にも侵入可能に構成されている。
【0003】上記搬送アームの一般的なものとして,スカラ型搬送アームとフロッグレッグ型搬送アームとがある。スカラ型搬送アームは,基板保持部と回転軸を2以上のアームにより接続し,さらにその回転軸に回転ベルトとプーリを介して回転機構が接続されている。かかる構成により,回転機構を作動させると,上記アームが水平方向に移動し,基板保持部が所定位置に移動する。一方,フロッグレッグ型搬送アームは,一対のアームを略蛙足形状に複数接続してなるフロッグレッグアームを有し,このフロッグレッグアームで基板保持部と回転軸を接続している。かかる構成により,上記回転軸に接続されている回転機構を作動させると,フロッグレッグアームが搬送アームの回転中心から半径方向に伸縮し,基板保持部が所定位置に移動する。
【0004】従来,上記回転機構における真空処理室内で用いられるモータは,電磁誘導により機械的動力を得るためのコイル及び鉄芯等の磁性体(以下,「ステータ」と称する。)を,回転軸を駆動するための磁性体(以下,「ロータ」と称する。)とともに真空雰囲気中に配するものであった。しかし,コイルやステータを真空雰囲気内に配すると,アウトガスやパーティクル等の発生や発熱による処理への悪影響を避けられない。そこで,近年の半導体製造工程においては,大気雰囲気と真空雰囲気とをカンシールと称される非磁性体の隔壁により隔絶し,コイルやステータを大気雰囲気中に配した真空モータが用いられている。」
(3)「【0005】上述のコイル及びステータを大気雰囲気中に配した真空モータの構成の一例を,図4及び図5を参照しながら説明する。真空モータ300は,図4に示したように,大気雰囲気と真空雰囲気とを隔絶する非磁性体のカンシール310を備え,カンシール310にベアリングBを介して配置された外側回転軸350と内側回転軸360の2つの回転軸を備えている。
【0006】さらに,真空モータ300は,大気雰囲気側に設けられ,コイル320aが巻装された外側回転軸用ステータ330aと,真空雰囲気側に外側回転軸用ステータ330aに対応して設けられ,外側回転軸用ステータ330aより磁気的動力が伝達されて外側回転軸350を駆動する外側回転軸用ロータ340aとを備えている。また同様に,大気雰囲気側に設けられ,コイル320bが巻装された内側回転軸用ステータ330bと,真空雰囲気中に内側回転軸用ステータ330bに対応して設けられ,内側回転軸用ステータ330bより磁気的動力が伝達されて内側回転軸360を駆動する内側回転軸用ロータ340bとを備えている。
【0007】コイル320aが巻装された外側回転軸用ステータ330a及び外側回転軸用ロータ340aは,図5に示したように,外側回転軸350を囲むように10箇所設けられている。同様に,コイル320bが巻装された内側回転軸用ステータ330b及び内側回転軸用ロータ340bは,内側回転軸360を囲むように10箇所設けられている。なお,図5では,外側回転軸350及び内側回転軸360については,図より省略している。
【0008】真空モータ300の真空雰囲気側は,図示の例では,真空処理室390が形成されており,カンシール310の一辺は真空処理室390の側壁の一部をなしている。カンシール310の端部は,例えばOリング等のシール部材Oにより真空処理室390の側壁392と気密に接続されている。外側回転軸350及び内側回転軸360は,上述のように,真空処理室390内の搬送装置,例えば搬送アームを駆動する。
【0009】なお,図中符号370aは,外側回転軸用ステータ330a及び外側回転軸用ロータ340aの動作を制御するためのエンコーダであり,符号370bは,内側回転軸用ステータ330b及び内側回転軸用ロータ340bの動作を制御するためのエンコーダである。また,符号380は,コイル320a,320b及びエンコーダ370a,370bに通電するためのケーブルである。以上説明した各構成要素はモータケース395に収納されている。
【0010】以上説明したように,カンシール310により大気雰囲気と真空雰囲気とを隔絶し,コイルが巻装されたステータ330a,330bを大気雰囲気中に配することにより,真空雰囲気中におけるアウトガスやパーティクル等の発生や発熱による処理への悪影響を解消することができる。」

(4)図4には,以下の事項が図示されている。

(5)図5には,以下の事項が図示されている。

第5 対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明における,「突極18」,「ステータコア22」,「ステータ10」,「コイル16」,「回転軸方向の磁束回路」,「スイッチド・リラクタンスモータ」は,その機能に照らして,それぞれ,本願発明1における,「ロータ突極」,「ステータ突極」,「ステータ」,「励磁巻線」,「軸方向磁束回路」,「スイッチトリラクタンスモータ」に相当する。

また,引用発明における,「4つの突極18」,「3つのステータコア22」は,それぞれ,本願発明1における,「少なくとも1つのロータ突極」,「少なくとも1つのステータ突極」に相当し,引用発明の「回転軸方向において前記4つの突極18の少なくとも一部で重なるように」は,本願発明1の「前記少なくとも1つのロータ突極の少なくとも一部で重なるように」に相当する。

引用発明の「ロータ14」と本願発明1の「密封ロータ」は,「ロータ」である点で共通し,引用発明の「前記ロータ14に向かって径方向に延在する部分及び回転軸と平行な方向に延びる突出部28を有する3つのステータコア22」と本願発明1の「前記密封ロータに向かって径方向に延在する少なくとも1つのステータ突極」は,「ロータに向かって径方向に延在する少なくとも1つのステータ突極」である点で共通する。

そうすると,本願発明1と引用発明は以下の点で一致し,相違する。

(一致点)

「少なくとも1つのロータ突極を有するロータと,
前記少なくとも1つのロータ突極の少なくとも一部で重なるように,前記ロータに向かって径方向に延在する少なくとも1つのステータ突極を備えるステータであって,少なくとも1つのステータ突極が,ステータ突極と関連する励磁巻線を有し,前記少なくとも1つのステータ突極と前記少なくとも1つのロータ突極との間に軸方向磁束回路を生じさせるために,前記少なくとも1つのロータ突極と相互作用する,ステータと,
を備える,
スイッチトリラクタンスモータ。」

(相違点)

本願発明1は,ロータが「密封ロータ」であって,ステータが,前記少なくとも1つのロータ突極から「密封」されているのに対し,引用発明は,ロータ14が密封ロータではなく,ステータ10が,突極18から密封されていない点。

第6 判断

1 相違点について

(1)以下,前記相違点について検討する。

引用文献2には,半導体製造工程に使用される真空モータ(300)において,大気雰囲気側に設けられたステータ(330a,330b)と,真空雰囲気側に設けられたロータ(340a,340b)との間にカンシール(310)(隔壁)を設け,ステータが配置された大気雰囲気とロータが配置された真空雰囲気とを隔絶した構成が記載されている(段落【0001】,【0005】-【0006】,【0008】,【0010】,図4,5参照。)。

引用発明の用途については引用文献1に明示的な記載はないものの,スイッチトリラクタンスモータは様々な機械分野において利用されるモータであるところ,真空雰囲気下で作業する半導体製造装置の動力源として用いられることも知られており(一例として,特開2013-132093号公報の段落【0041】参照。),引用発明を半導体製造装置の動力源として利用することに格別のものは見あたらない。

そして,引用発明を半導体製造装置に用いる際に,ロータ14が真空雰囲気下に密封して配置される必要があることは,当業者であれば当然考慮すべきことであり,真空雰囲気下における使用に適するように,引用発明において,引用文献2に記載された事項を適用して,真空雰囲気下に配置されるロータ14と,大気雰囲気下に配置されるステータ10とを隔絶する,すなわち,ロータ14を密封ロータとし,ステータ10を突極18から密封することは当業者が容易になし得たことである。

したがって,引用発明において,引用文献2に記載された事項を適用し,相違点に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは当業者が容易に行い得たことである。

(2)また,本願発明1の奏する作用効果をみても,引用発明,引用文献2に記載された事項から予測される範囲内のものであって,格別顕著なものでもない。

2 請求人の主張について

(1)請求人は,審判請求書において,おおむね,以下の点を主張している。

ア 引用文献1は,ステータコアのいくつかのブロックの組合せを排除しており,単一部品のU字型ステータコアを備えるものであるのに対し,引用文献2は,カンシール110の両側で互いに使用される異なるブロックからなるステータを必要とするものである。

したがって,引用文献1のステータコアは複数の部品から形成することはできないため,カンシール110の両側で使用される複数の部品からなるステータを備える引用文献2の構成を適用することはできない。

イ 引用文献1のステータコアが,引用文献2のカンシールを通過しない場合,カンシールは,ステータコアとロータとの間の距離を大きくすることなく(及び磁場の強度を減少させることなく),引用文献1のステータコアとロータとの間をどのように通過することができるか開示がない。

(2)以下,上記主張について検討する。

アに関して,上記第6 1(1)で記載したように,引用文献2から導かれる事項は,段落【0001】,【0005】-【0006】,【0008】,【0010】,図4,5に記載されているロータとステータとの間にカンシール310を配置した真空モータの構成に基づいており,カンシールの両側で異なるブロックに分けたステータを備える真空モータの構成に基づくものではない。そして,引用発明に引用文献2に記載された事項を適用することが容易であることは上記第6 1(1)に示したとおりである。

イに関して,引用発明に引用文献2に記載された事項を適用する際,引用発明のロータ及びステータの形状,位置関係等を考慮して,磁場強度への影響が小さくなるように隔壁を設けるようにすることは当業者が通常行うことである。

また,本願請求項1には,どのように密封ロータを構成しているのか,また,どのようにステータをロータ突極から密封しているかについて,具体的な開示がなく,どのように密封を実現させているのか不明であり,本願発明1の密封を実現する構成が格別のものであるとはいえない。

3 したがって,本願発明1は,引用発明,引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第7 むすび

以上のとおり,本願請求項1に係る発明(本願発明1)は,引用発明,引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。

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2019-016068

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