特許拒絶査定不服審判
2019-015374
被疑ファイル収集装置、マルウェア検知システム、および、マルウェア検知方法
- 審判番号
- 2019-015374
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-252205
- 請求日
- 2019年11月18日
- 審決日
- 2021年01月22日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】NECフィールディング株式会社
- 【請求人代理人】加藤 朝道
- 【請求人代理人】内田 潔人
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 茂和
- 審判官 月野 洋一郎
- 審判官 山澤 宏
- 分類
- P18 .121-Z (G06F) / P18 .575-Z (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-252205「被疑ファイル収集装置、マルウェア検知システム,および,マルウェア検知方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日出願公開,特開2016-115072〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成26年12月12日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年11月 6日 :出願審査請求書の提出
平成30年 7月27日付け:拒絶理由通知
平成30年 9月13日 :意見書,手続補正書の提出
平成31年 2月26日付け:拒絶理由通知
平成31年 3月14日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 8月28日付け:拒絶査定
令和 1年11月18日 :審判請求書,手続補正書の提出
第2 令和1年11月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年11月18日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
「 【請求項1】
記憶部に被疑ファイルを有する検査対象装置を含むマルウェア検知システムにおいて、
前記検査対象装置に接続可能な、被疑ファイル収集装置と、
前記被疑ファイル収集装置からアクセス可能な、監視装置と、を備え、
ここで、前記被疑ファイル収集装置は、前記被疑ファイルおよび所定のプログラムを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された被疑ファイルを前記監視装置に送出する送出手段と、を有し、
前記所定のプログラムは、接続される前記検査対象装置において実行されるものであり、前記記憶部のうちのマルウェア動作に関連する所定の領域からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集する収集手段であり、
前記監視装置は、前記被疑ファイル収集装置から受信した被疑ファイルを実行した結果を監視するよう構成されており、
前記検査対象装置は、前記被疑ファイル収集装置に接続し、前記記憶手段に記憶されている前記所定のプログラムを実行する、
マルウェア検知システム。
【請求項2】
前記監視装置は、前記実行された被疑ファイルが行う通信を監視する、
請求項1に記載のマルウェア検知システム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記実行された被疑ファイルが送出した情報、および/または、前記
実行された被疑ファイルの通信先を示す情報を監視する、
請求項2に記載のマルウェア検知システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成31年3月14日にされた手続補正により補正された特許請求の記載は次のとおりである。(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
「 【請求項1】
検査対象装置に接続可能な被疑ファイル収集装置であって、
前記検査対象装置により起動されるプログラムを用いて、前記検査対象装置が有する記憶部のうちのマルウェアの動作に関連する所定の領域からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集するよう構成された収集手段と、
前記被疑ファイルを記憶するよう構成された記憶手段と、
前記被疑ファイルを実行した結果を監視する監視装置に対して、前記記憶手段に蓄積された被疑ファイルを送出するよう構成された送出手段と、を備える、
ことを特徴とする被疑ファイル収集装置。
【請求項2】
前記所定の領域は、マルウェアがアクセスする領域、または、マルウェアが設定を行う領域である、
請求項1に記載の被疑ファイル収集装置。
【請求項3】
前記収集手段は、前記所定の領域から所定の拡張子を有するファイルを前記被疑ファイルとして収集する、
請求項1または2に記載の被疑ファイル収集装置。
【請求項4】
検査対象装置に接続可能な被疑ファイル収集装置と、
前記被疑ファイル収集装置からアクセス可能な監視装置と、を備え、
前記被疑ファイル収集装置は、
前記検査対象装置により起動されるプログラムを用いて、前記検査対象装置が有する記憶部のうちのマルウェアの動作に関連する所定の領域からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集するよう構成された収集手段と、
前記被疑ファイルを記憶するよう構成された記憶手段と、
前記記憶手段に蓄積された被疑ファイルを前記監視装置に送出するよう構成された送出手段と、を有し、
前記監視装置は、前記被疑ファイル収集装置から受信した被疑ファイルを実行した結果を監視するよう構成された、
ことを特徴とするマルウェア検知システム。
【請求項5】
前記監視装置は、前記実行された被疑ファイルが行う通信を監視する、
請求項4に記載のマルウェア検知システム。
【請求項6】
前記監視装置は、前記実行された被疑ファイルが送出した情報、および/または、前記実行された被疑ファイルの通信先を示す情報を監視する、
請求項5に記載のマルウェア検知システム。
【請求項7】
検査対象装置に接続可能な被疑ファイル収集装置が、前記検査対象装置により起動されるプログラムを用いて、前記検査対象装置が有する記憶部のうちのマルウェアの動作に関連する所定の領域からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集するステップと、
前記被疑ファイルを記憶手段に記憶するステップと、
前記被疑ファイルを実行した結果を監視する監視装置に対して、前記記憶手段に蓄積された被疑ファイルを送出するステップと、を含む、
ことを特徴とするマルウェア検知方法。」
2 補正の適否
本件補正は,補正前の請求項1~3,7を削除するとともに,補正前の請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「マルウェア検知システム」について,「記憶部に被疑ファイルを有する検査対象装置を含む」との限定を付加し,同「記憶手段」について,被疑ファイルおよび「所定のプログラムを記憶する」との限定を付加し,その他の事項の記載順序を整えて請求項1としたものである。
そして,補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,本件補正は,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記「1(1)」の請求項1に記載された下記のとおりのものである(再掲)。
「記憶部に被疑ファイルを有する検査対象装置を含むマルウェア検知システムにおいて、
前記検査対象装置に接続可能な、被疑ファイル収集装置と、
前記被疑ファイル収集装置からアクセス可能な、監視装置と、を備え、
ここで、前記被疑ファイル収集装置は、前記被疑ファイルおよび所定のプログラムを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された被疑ファイルを前記監視装置に送出する送出手段と、を有し、
前記所定のプログラムは、接続される前記検査対象装置において実行されるものであり、前記記憶部のうちのマルウェア動作に関連する所定の領域からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集する収集手段であり、
前記監視装置は、前記被疑ファイル収集装置から受信した被疑ファイルを実行した結果を監視するよう構成されており、
前記検査対象装置は、前記被疑ファイル収集装置に接続し、前記記憶手段に記憶されている前記所定のプログラムを実行する、
マルウェア検知システム。」
(2)引用文献の記載事項
(2-1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2010-198054号公報(平成22年9月9日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。)
A 「【0034】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
最初に、図1に示すコンピュータ検査システムの全体構成図を用いて、本発明の概要を説明する。本システムを構成する要素として、検査サーバ(1)、検査対象コンピュータであるユーザPC(2)、マルウェアの解析システム(4)、駆除ツールの生成システム(5)がある。各システムは、公知のパーソナルコンピュータやワークステーション等で構成することが簡便であり、各要素間は例えばインターネットなどの通信ネットワークで接続する。通信ネットワークはWAN(ワイドエリアネットワーク)や、LAN(ローカルエリアネットワーク)、携帯電話、PHS等の公衆回線網でもよい。
【0035】
検査サーバ(1)から、ユーザPC(2)に対して探索プログラムの送付(1a)を行う。ユーザPC(2)上で探索プログラムを起動し、稼働させる(2a)ことで、不正な挙動が行うマルウェアがないかどうか探索する。
その結果、不正な挙動が発見された場合には、その実行コードを検出し、検査サーバ(1)に送出(2b)する。
【0036】
検査サーバ(1)では、実行コードを受信するとすぐに解析を開始(1b)する。本発明では、この解析にマルウェアの解析システム(4)を用いる。解析システム(4)に実行コードを送り、そのコードを静的解析(4a)、動的解析(4b)する。このような解析はミクロ解析として様々な技術が提案されており、それらを任意に用いることができる。 静的解析とは、マルウェアのコードを分析し、どのような不正処理を行うかを分析する手法であり、具体的には実行コードを逆アセンブリして処理内容を取得する方法がある。
動的解析とは、マルウェアを実際に動作させて、例えば不正パケットの送出や、ファイル操作処理など、不正処理の詳細を把握する方法である。
これらの解析結果(1c)は検査サーバ(1)に返される。解析結果(1c)はユーザPC(2)の探索プログラム(2a)に通知して、探索プログラムから表示するようにしてもよい。」
B 「【0038】
(実施例1)
次に、本発明の具体的実施例を示す。実施例1としては、本発明システムを検査サーバ(1)とユーザPC(2)、両者を接続するインターネット(3)で構成し、駆除ツールの生成を含まない構成を説明する。
図2は、検査サーバ(1)の構成図、図3はユーザPC(2)の構成図、図4は本実施例のフローチャートである。
【0039】
検査サーバ(1)は、インターネット上に配置されるサーバ装置として構成されているが、本発明に必須な要素として、CPU(10)、イーサネット(登録商標)カードや無線LAN通信カードなどの通信アダプタ(11)、ハードディスク等の記憶装置(12)を備える。この他、公知のように、CPU(10)と協働するメモリや、管理者からの入力を受け付けるキーボード、モニタ等を備えることもできるが、ここでは省略する。
【0040】
記憶装置(12)には、ユーザPC(2)で実行する探索プログラム(120)を格納し、これは常に最新版に改訂されることが望ましい。
CPU(10)には、探索プログラム送信部(100)、探索結果受信部(101)、不正プログラム解析部(102)、解析結果送信部(103)を備える。」
C 「【0045】
探索プログラム(120)は、ユーザPC(2)内で稼働、常駐しているプログラムの中からマルウェアの疑いのある怪しいオブジェクトコード(実行コード)を探索して収集する。
本発明ではマルウェアかどうかの解析を検査サーバ(1)で行うことができるため、ユーザPC(2)の負荷や、ユーザへの誤った通知の恐れを考慮する必要がない。そこで、探索プログラム(120)はフォールスポジティブを許容する(不正でない対象を、不正と誤判定することを許す状態)という考え方に基づいて、不審なプログラムはすべて抽出することが望ましい。
【0046】
単純な方法としては、未知のプログラムをすべて抽出することが挙げられる。探索プログラムに検査サーバで検査済みのプログラムの情報を備えておき、そのプログラムリストにないプログラムを抽出する方法がある。
この場合、単純にファイル名だけでなく、ファイル容量やハッシュ値などの比較などを組み合わせて同一性を判定することができる。なお、ファイルバックアップソフトウェア等において、ファイルの同一性の判定技術、差分の抽出技術については公知であり、それらを用いてもよい。」
D 「図1
」
イ 引用文献1に記載の上記技術的事項について検討する。
(ア)上記Aにおける「最初に、図1に示すコンピュータ検査システムの全体構成図を用いて、本発明の概要を説明する。本システムを構成する要素として、検査サーバ(1)、検査対象コンピュータであるユーザPC(2)、マルウェアの解析システム(4)、駆除ツールの生成システム(5)がある。各システムは、公知のパーソナルコンピュータやワークステーション等で構成することが簡便であり、各要素間は例えばインターネットなどの通信ネットワークで接続する。」との記載から,引用文献1には,
「コンピュータ検査システムであって,
本システムを構成する要素として,検査サーバ,検査対象コンピュータであるユーザPC,マルウェアの解析システムがあり,各要素間は通信ネットワークで接続されている」
ことが記載されているといえる。
(イ)上記Aにおける「検査サーバ(1)から、ユーザPC(2)に対して探索プログラムの送付(1a)を行う。ユーザPC(2)上で探索プログラムを起動し、稼働させる(2a)ことで、不正な挙動が行うマルウェアがないかどうか探索する。
その結果、不正な挙動が発見された場合には、その実行コードを検出し、検査サーバ(1)に送出(2b)する。」との記載から,引用文献1には,
「検査サーバから,ユーザPCに対して探索プログラムの送付を行い,ユーザPC上で探索プログラムを起動し,稼働させることで,不正な挙動が行うマルウェアがないかどうか探索するものであり,
その結果,不正な挙動が発見された場合には,その実行コードを検出し,検査サーバに送出する」
ことが記載されているといえる。
(ウ)上記Aにおける「検査サーバ(1)では、実行コードを受信するとすぐに解析を開始(1b)する。本発明では、この解析にマルウェアの解析システム(4)を用いる。解析システム(4)に実行コードを送り、そのコードを静的解析(4a)、動的解析(4b)する。」,及び,「動的解析とは、マルウェアを実際に動作させて、例えば不正パケットの送出や、ファイル操作処理など、不正処理の詳細を把握する方法である。」との記載から,引用文献1には,
「検査サーバでは,実行コードを受信するとすぐに解析を開始するものであり,この解析にマルウェアの解析システムを用いるものであって,解析システムに実行コードを送り,そのコードを動的解析するものであり,
動的解析とは、マルウェアを実際に動作させて,不正処理の詳細を把握する方法である」
ことが記載されているといえる。
(エ)上記Bにおける「検査サーバ(1)は、インターネット上に配置されるサーバ装置として構成されているが、本発明に必須な要素として、CPU(10)、イーサネット(登録商標)カードや無線LAN通信カードなどの通信アダプタ(11)、ハードディスク等の記憶装置(12)を備える。」,及び,「記憶装置(12)には、ユーザPC(2)で実行する探索プログラム(120)を格納し、これは常に最新版に改訂されることが望ましい。」との記載から,引用文献1には,
「検査サーバは,記憶装置を備えるものであり,
記憶装置には,ユーザPCで実行する探索プログラムを格納している」
ことが記載されているといえる。
(オ)上記Cにおける「探索プログラム(120)は、ユーザPC(2)内で稼働、常駐しているプログラムの中からマルウェアの疑いのある怪しいオブジェクトコード(実行コード)を探索して収集する。」,及び,「そこで、探索プログラム(120)はフォールスポジティブを許容する(不正でない対象を、不正と誤判定することを許す状態)という考え方に基づいて、不審なプログラムはすべて抽出することが望ましい。」との記載から,引用文献1には,
「探索プログラムは,ユーザPC内で稼働,常駐しているプログラムの中からマルウェアの疑いのある怪しいオブジェクトコード(実行コード)を探索して収集するものであり,
探索プログラムはフォールスポジティブを許容する(不正でない対象を,不正と誤判定することを許す状態)という考え方に基づいて,不審なプログラムはすべて抽出するものである」
ことが記載されているといえる。
ウ 上記イの検討から,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「コンピュータ検査システムであって,
本システムを構成する要素として,検査サーバ,検査対象コンピュータであるユーザPC,マルウェアの解析システムがあり,各要素間は通信ネットワークで接続されており,
検査サーバから,ユーザPCに対して探索プログラムの送付を行い,ユーザPC上で探索プログラムを起動し,稼働させることで,不正な挙動が行うマルウェアがないかどうか探索するものであり,
その結果,不正な挙動が発見された場合には,その実行コードを検出し,検査サーバに送出するものであり,
検査サーバでは,実行コードを受信するとすぐに解析を開始するものであり,この解析にマルウェアの解析システムを用いるものであって,解析システムに実行コードを送り,そのコードを動的解析するものであり,
動的解析とは,マルウェアを実際に動作させて,不正処理の詳細を把握する方法であり,
検査サーバは,記憶装置を備えるものであり,
記憶装置には,ユーザPCで実行する探索プログラムを格納しており,
探索プログラムは,ユーザPC内で稼働,常駐しているプログラムの中からマルウェアの疑いのある怪しいオブジェクトコード(実行コード)を探索して収集するものであり,
探索プログラムはフォールスポジティブを許容する(不正でない対象を,不正と誤判定することを許す状態)という考え方に基づいて,不審なプログラムはすべて抽出するものである,
コンピュータ検査システム。」
(2-2)引用文献2に記載されている技術的事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2011-13917号公報(平成23年1月20日出願公開。以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
E 「【0043】
マルウェア収集部20は、故意に脆弱性を持たせた処理部でありインターネットNと接続している。そして、マルウェア収集部20は、インターネットNを介してシェルコードV1及びマルウェアV2を侵入させ、侵入してきたマルウェアV2を収集すると共に、シェルコードV1を動作させることによって生成された動作環境E1に関する情報を含む環境情報6収集して情報データベース30へ出力する。」
F 「【0048】
収集したマルウェアV2は、一旦、情報データベース30に記憶され、挙動解析が行われる場合にマルウェア解析部40によって呼び出される。」
イ 上記E、及びFの記載から,引用文献2には次の技術が記載されているといえる。
「マルウェア収集部は,マルウェアV2を収集するものであり,収集したマルウェアV2は,一旦,情報データベースに記憶される。」
(2-3)引用文献3に記載されている技術的事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2012-014320号公報(平成24年1月19日出願公開。以下,「引用文献3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
G 「【0046】
システム管理者600は、記録媒体150をマルウェア感染端末(図11の端末装置140)に接続し、検体抽出プログラム207を実行することによって、マルウェア本体、ならびに、不審な設定変更を抽出する。
システム管理者600は、抽出結果を別途、記録媒体(書き込み可能)に取り込み、それをベンダへ送付して解析を依頼する。
【0047】
検体抽出プログラム207が端末装置140(マルウェア感染端末)のCPU1401で実行される際の動作例は図8に示す通りである。
【0048】
つまり、検体抽出プログラム207は、記録媒体150内のホワイトリスト321を読み出して端末装置140内のメモリ1402にロードした後、端末装置140内に存在するソフトウェアを検索し(S801)、検出したソフトウェアがホワイトリスト321に含まれている適正ソフトウェアと一致するか否かを判断する(S802、S803)。
なお、S801の処理では、端末装置140上において、検査対象となる通常起動されている実行ファイル、ハードディスク上の実行可能ファイル、ライブラリ(DLL、デバイスドライバ)、ドキュメントファイル、特定パス下に保存されているファイルを、端末装置140内でソフトウェアがインストールされているメモリやハードディスクから、ファイルの属性(実行ファイル、ライブラリ、ドキュメントファイルなど)を元に検索する。
そして、一致しない場合(S802でNO又はS803でYES)は、検体抽出プログラム207は、S801で検出したソフトウェアを検体一覧に追加する(S804)。
検体一覧は、端末装置140のメモリ1402内の所定の記憶領域で一時的に記憶される。
また、検体抽出プログラム207は、端末装置140内のすべてのソフトウェアに対する検査が終了した場合(S805でYES)は、端末装置140における設定(図5の情報記憶部503内の設定情報)を読み込み(S806)、読み込んだ設定がホワイトリスト321に含まれている正常設定と一致するか否かを判断する(S807、S808)。
なお、S805において、すべてのソフトウェアに対する検査が終了したか否かの判断は、端末装置内の全てのファイルに対して、S801の処理が完了したか否かで行う。
そして、一致しない場合(S807でNO又はS808でYES)は、検体抽出プログラム207は、S806で読み込んだ設定を抽出設定一覧に追加する(S809)。
なお、S806では、ホワイトリストに含まれる特定設定パスを元に端末装置140上の設定パスを参照して、設定されている変数と値を読み込む。
抽出設定一覧は、端末装置140のメモリ1402内の所定の記憶領域で一時的に記憶される。
そして、検体抽出プログラム207は、端末装置140内のすべての設定に対する検査が終了した際(S810でYES)に、端末装置140のメモリ1402内の検体一覧と抽出設定一覧を記録媒体150に出力する。
なお、S810において、すべての設定に対する検査が終了したか否かの判断は、ホワイトリストに含まれるすべての特定設定パスに対する変数、値を検査し終わったか否かで行う。
以上にて、端末装置140に対する検体抽出プログラム207の検査は終了であり、システム管理者600は、記録媒体150を端末装置140から抜き取り、前述のように、記録媒体150内の検体一覧と抽出設定一覧をベンダに提供して、マルウェアの検出を依頼する。」
イ 引用文献3に記載の上記技術的事項について検討する。
(ア)上記Gにおける「システム管理者600は、記録媒体150をマルウェア感染端末(図11の端末装置140)に接続し、検体抽出プログラム207を実行することによって、マルウェア本体、ならびに、不審な設定変更を抽出する。」との記載から,引用文献3には,
「記録媒体をマルウェア感染端末に接続し,検体抽出プログラムを実行することによって,マルウェア本体を抽出する」
ことが記載されているといえる。
(イ)上記Gにおける「検体抽出プログラム207が端末装置140(マルウェア感染端末)のCPU1401で実行される際の動作例は図8に示す通りである。」なる記載,及び,「つまり、検体抽出プログラム207は、記録媒体150内のホワイトリスト321を読み出して端末装置140内のメモリ1402にロードした後、端末装置140内に存在するソフトウェアを検索し(S801)、検出したソフトウェアがホワイトリスト321に含まれている適正ソフトウェアと一致するか否かを判断する(S802、S803)。
なお、S801の処理では、端末装置140上において、検査対象となる通常起動されている実行ファイル、ハードディスク上の実行可能ファイル、ライブラリ(DLL、デバイスドライバ)、ドキュメントファイル、特定パス下に保存されているファイルを、端末装置140内でソフトウェアがインストールされているメモリやハードディスクから、ファイルの属性(実行ファイル、ライブラリ、ドキュメントファイルなど)を元に検索する。
そして、一致しない場合(S802でNO又はS803でYES)は、検体抽出プログラム207は、S801で検出したソフトウェアを検体一覧に追加する(S804)。
検体一覧は、端末装置140のメモリ1402内の所定の記憶領域で一時的に記憶される。」との記載から,引用文献3には,
「検体抽出プログラムが端末装置(マルウェア感染端末)のCPUで実行される際の動作は,端末装置内に存在するソフトウェアを検索するものであり,端末装置において,特定パス下に保存されているファイルを検索するものであり,
検体抽出プログラムは,検出したソフトウェアを検体一覧に追加するものであり,
検体一覧は,端末装置のメモリ内の所定の記憶領域で一時的に記憶される」
ことが記載されているといえる。
ウ 上記イの検討から,引用文献3には次の技術が記載されているといえる。
「記録媒体をマルウェア感染端末に接続し,検体抽出プログラムを実行することによって,マルウェア本体抽出するものであって,
検体抽出プログラムが端末装置(マルウェア感染端末)のCPUで実行される際の動作は,端末装置内に存在するソフトウェアを検索するものであり,端末装置において,特定パス下に保存されているファイルを検索するものであり,
検体抽出プログラムは,検出したソフトウェアを検体一覧に追加するものであり,
検体一覧は,端末装置のメモリ内の所定の記憶領域で一時的に記憶される。」
(2-4)引用文献4に記載されている技術的事項
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2011-221745号公報(平成23年11月4日出願公開。以下,「引用文献4」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
H 「【0019】
システムフォルダとは、PCの各種アプリケーションが保存・管理されているフォルダである。マルウェアは、多数の実行ファイルが管理されているフォルダに自身をコピーすることで他の実行ファイルと見分け難くすることを目的として、システムフォルダに感染することが多い。本実施形態では、正規のアプリケーションのインストール先およびマルウェアの感染先がシステムフォルダであることを想定しているが、これ以外であっても、以下の手法を同様に適用することが可能である。」
(2-5)引用文献5に記載されている技術的事項
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,国際公開第2004/084063号公(2004年9月30日国際公開。以下,「引用文献5」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
I 「探索の対象となるウィルスが、共有フォルダへ侵入する性質を持つウィルスであることもある。このような共有フォルダへ侵入するウィルスは、おとりフォルダを設けることで、その活動を検出できる。」
(第6ページ第10行~第12行)
(2-6)引用文献6に記載されている技術的事項
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2005-56243号公報(平成17年3月3日出願公開。以下,「引用文献6」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
J 「【0002】
ワームとよばれる自己増殖を目的とした不正プログラムがある。ワームは、ネットワーク上のファイル共有や、ネットワークアプリケーションを利用して増殖する。ファイル共有を利用する場合は、以下のように増殖する。まず、ワームに感染した端末が、ネットワーク上の他の端末に、ファイル共有できるものがあるか否かを探す。ファイル共有できるものがあれば、共有フォルダにワームを書き込む。そして、再起動時にワームが動くようにワームを書き込んだ端末の設定変更を行なう。」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は,「コンピュータ検査システムであって,
本システムを構成する要素として,検査サーバ,検査対象コンピュータであるユーザPC,マルウェアの解析システムがあり,各要素間は通信ネットワークで接続されており,
検査サーバから,ユーザPCに対して探索プログラムの送付を行い,ユーザPC上で探索プログラムを起動し,稼働させることで,不正な挙動が行うマルウェアがないかどうか探索する」
ものである。
してみると,引用発明は,「コンピュータ検査システムであって」,「検査対象コンピュータであるユーザPC」があり,「ユーザPC上で探索プログラムを起動し,稼働させることで,不正な挙動が行うマルウェアがないかどうか探索するもの」であるから,「検査対象コンピュータであるユーザPC上」で「マルウェア」を探索する「検査システム」であるといえ,引用発明の「検査対象コンピュータであるユーザPC」,「マルウェア」は,それぞれ本件補正発明の“検査対象装置”,“マルウェア”に相当するものである。
そして,引用発明は,「不正な挙動が発見された場合には,その実行コードを検出し,検査サーバに送出する」ものであって,「探索プログラムはフォールスポジティブを許容する(不正でない対象を,不正と誤判定することを許す状態)という考え方に基づいて,不審なプログラムはすべて抽出する」ものである。
ここで,「不正な挙動が発見された場合」における「その実行コード」とは,「フォールスポジティブを許容する(不正でない対象を,不正と誤判定することを許す状態)という考え方に基づいて,不審なプログラムはすべて抽出」された実行コードであるから,マルウェアと疑われる実行コードであり,マルウェアに感染していることが疑われる“被疑ファイル”といえ,かかる「その実行コード」が「検査対象コンピュータであるユーザPC」の“記憶部”に記憶されているものであることは明らかであるから,引用発明は,検査対象コンピュータであるユーザPCの記憶部に記憶されているマルウェアの被疑ファイルを検査するシステムであるといえる。
よって,本件補正発明と引用発明とは,“記憶部に被疑ファイルを有する検査対象装置を含むマルウェア検知システム”である点で一致している。
(イ)引用発明の「コンピュータ検査システム」は,「本システムを構成する要素として,検査サーバ,検査対象コンピュータであるユーザPC,マルウェアの解析システムがあり,各要素間は通信ネットワークで接続されて」いるものであるから,「検査サーバ」,「検査対象コンピュータであるユーザPC」,及び「マルウェアの解析システム」とを備えており,「各要素間は通信ネットワークで接続されて」いることから,各要素間である「検査サーバ」と「検査対象コンピュータであるユーザPC」,ならびに,「検査サーバ」と「マルウェアの解析システム」とは接続されているものである。
そして,引用発明の「検査サーバ」は,「検査サーバでは,実行コードを受信するとすぐに解析を開始するもの」であって,「その結果,不正な挙動が発見された場合には,その実行コードを検出し,検査サーバに送出する」であるところ,上記(ア)の検討も踏まえると,マルウェアの被疑ファイルである実行コードを,検査対象コンピュータであるユーザPCから収集しているといえる。よって,引用発明の「検査サーバ」は,本件補正発明の“被疑ファイル収集装置”に相当するものである。
以上のことから,本件補正発明と引用発明とは,“マルウェア検知システムにおいて”“検査対象装置に接続可能な,被疑ファイル収集装置を備えている”点で一致している。
(ウ)引用発明の「コンピュータ検査システム」は,上記(イ)で検討したとおり,「検査サーバ」と「マルウェアの解析システム」とを備えるものであって,「検査サーバ」と「マルウェアの解析システム」とは「通信ネットワークで接続されて」おり,「検査サーバでは,実行コードを受信するとすぐに解析を開始するものであり,この解析にマルウェアの解析システムを用いるもの」であるから,「マルウェアの解析システム」は,マルウェアを解析するために「検査サーバ」からアクセス可能であることは明らかであって,また,マルウェアを解析することはマルウェアの動作を監視することといえるから,引用発明の「マルウェアの解析システム」は,本件補正発明の“監視装置”に相当するといえる。
そして,上記(イ)で検討したとおり,引用発明の「検査サーバ」は,本件補正発明の“被疑ファイル収集装置”に相当するものであるから,本件補正発明と引用発明とは,“マルウェア検知システムにおいて”“被疑ファイル収集装置からアクセス可能な,監視装置を備えている”点で一致している。
(エ)引用発明は,「検査サーバは,記憶装置を備えるものであり, 記憶装置には,ユーザPCで実行する探索プログラムを格納して」いるところ,「探索プログラム」は“所定のプログラム”といえ,「記憶装置」は“記憶手段”といえるから,引用発明の「検査サーバ」は,“所定のプログラムを記憶する記憶手段”を有しているといえる。
そして,引用発明は,「検査サーバでは,実行コードを受信するとすぐに解析を開始するものであり,この解析にマルウェアの解析システムを用いるものであって,解析システムに実行コードを送り,そのコードを動的解析する」ものであるから,引用発明の「検査サーバ」は,「解析システムに実行コードを送」るための,何らかの“送出手段”を備えていることは明らかである。
そして,上記(ア)~(ウ)で検討したとおり,引用発明の「実行コード」,「検査サーバ」,「マルウェアの解析システム」は,それぞれ,本件補正発明の“被疑ファイル”,“被疑ファイル収集装置”,“監視装置”に相当するものであるから,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“被疑ファイル収集装置は,所定のプログラムを記憶する記憶手段と,被疑ファイルを監視装置に送出する送出手段と,を有する”点で一致している。
(オ)引用発明は,「検査サーバから,ユーザPCに対して探索プログラムの送付を行い,ユーザPC上で探索プログラムを起動し,稼働させることで,不正な挙動が行うマルウェアがないかどうか探索する」ものであって,「探索プログラムは,ユーザPC内で稼働,常駐しているプログラムの中からマルウェアの疑いのある怪しいオブジェクトコード(実行コード)を探索して収集する」ものである。
してみると,引用発明の「探索プログラム」は,接続されるユーザPC上で稼動,すなわち“実行”されるものであって,「ユーザPC」から「マルウェアの疑いのある怪しいオブジェクトコード(実行コード)を探索して収集する」“収集手段である”といえ,上記(ア)で検討したとおり,マルウェアの“被疑ファイル”が,「検査対象コンピュータであるユーザPC」の“記憶部”に記憶されているものであることは明らかであり,上記(エ)で検討したとおり,引用発明の「探索プログラム」は“所定のプログラム”といえることから,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“所定のプログラムは,接続される検査対象装置において実行されるものであり,記憶部からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集する収集手段である”点で一致している。
(カ)引用発明は,「この解析にマルウェアの解析システムを用いるものであって,解析システムに実行コードを送り,そのコードを動的解析するものであり,動的解析とは,マルウェアを実際に動作させて,不正処理の詳細を把握する方法」であるから,「マルウェアの解析システム」は「マルウェアを実際に動作させて,不正処理の詳細を把握する」「動的解析」を行うものであり,この動的解析は,被疑ファイルである実行コードを実行させて,その実行した結果を監視して解析を行うように構成されるといえる。
そして,上記(ウ)で検討したとおり,引用発明の「マルウェアの解析システム」は,本件補正発明の“監視装置”に相当するものであるから,本件補正発明と引用発明とは,“監視装置は,被疑ファイル収集装置から受信した被疑ファイルを実行した結果を監視するよう構成されている”点で一致している。
(キ)引用発明は,「検査サーバから,ユーザPCに対して探索プログラムの送付を行い,ユーザPC上で探索プログラムを起動し,稼働させることで,不正な挙動が行うマルウェアがないかどうか探索する」ものであって,「検査サーバは,記憶装置を備えるものであり, 記憶装置には,ユーザPCで実行する探索プログラムを格納して」いるものであるから,引用発明の「ユーザPC」は,「検査サーバ」に接続し,「検査サーバ」が「備える」「記憶装置」に「格納して」いる「探索プログラム」を稼動,すなわち“実行”しているといえる。
そして,上記(ア),(イ),及び(エ)で検討したとおり,引用発明の「検査対象コンピュータであるユーザPC」,「検査サーバ」,「記憶装置」,「探索プログラム」は,それぞれ,本件補正発明の“検査対象装置”,“被疑ファイル収集装置”,“所定のプログラム”に相当するものであるから,本件補正発明と引用発明とは,“検査対象装置は,被疑ファイル収集装置に接続し,記憶手段に記憶されている所定のプログラムを実行する”点で一致している。
イ 上記(ア)~(キ)の検討から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。
<一致点>
「記憶部に被疑ファイルを有する検査対象装置を含むマルウェア検知システムにおいて,
前記検査対象装置に接続可能な,被疑ファイル収集装置と,
前記被疑ファイル収集装置からアクセス可能な,監視装置と,を備え,
ここで,前記被疑ファイル収集装置は,所定のプログラムを記憶する記憶手段と,被疑ファイルを前記監視装置に送出する送出手段と,を有し,
前記所定のプログラムは,接続される前記検査対象装置において実行されるものであり,前記記憶部からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集する収集手段であり,
前記監視装置は,前記被疑ファイル収集装置から受信した被疑ファイルを実行した結果を監視するよう構成されており,
前記検査対象装置は,前記被疑ファイル収集装置に接続し,前記記憶手段に記憶されている前記所定のプログラムを実行する,
マルウェア検知システム。」
<相違点1>
本件補正発明は,記憶手段が「被疑ファイル」を記憶し,「前記記憶手段に記憶された」被疑ファイルを監視装置に送出するものであるのに対して,引用発明は,記憶手段が被疑ファイルを記憶する点が特定されていない点。
<相違点2>
本件補正発明は,記憶部のうちの「マルウェア動作に関連する所定の領域」からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集するものであるのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。
(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
上記「(2)(2-2)イ」に示したとおり,引用文献2には,「マルウェア収集部は,マルウェアV2を収集するものであり,収集したマルウェアV2は,一旦,情報データベースに記憶される」技術が記載されており,また,上記「(2)(2-3)ウ」に示したとおり,引用文献3には,「検体抽出プログラムは,検出したソフトウェアを検体一覧に追加するものであり,検体一覧は,端末装置のメモリ内の所定の記憶領域で一時的に記憶される」技術が記載されており,被疑ファイルの収集装置において,収集した被疑ファイルを記憶手段に記憶することは,一般的行われている技術にすぎない。
一方,引用発明は,「検査サーバは,記憶装置を備える」ものであって,「検査サーバでは,実行コードを受信するとすぐに解析を開始するものであり,この解析にマルウェアの解析システムを用いるものであって,解析システムに実行コードを送」るものであるところ,被疑ファイルである「実行コードを受信」した際に,当該「検査サーバ」に備えられた前記「記憶装置」に「実行コード」,すなわち“被疑ファイル”を記憶するようにすることは,前述したように,被疑ファイル収集装置において,収集した被疑ファイルを記憶手段に記憶することが一般的に行われている技術にすぎないことを勘案すれば,当業者であれば容易になし得る事項である。
イ 相違点2について
上記「(2)(2-4)」に示したとおり,引用文献4には,「マルウェアの感染先がシステムフォルダであることを想定している」ことが記載され,上記「(2)(2-5)」に示したとおり,引用文献5には,「探索の対象となるウィルスが、共有フォルダへ侵入する性質を持つウィルスであることもある」ことが記載され,上記「(2)(2-6)」に示したとおり,引用文献6には,「ワームは、ネットワーク上のファイル共有や、ネットワークアプリケーションを利用して増殖する」ことが記載されている。
してみると,ウィルスやワームなどのマルウェアが,システムフォルダや共有フォルダなどの,“記憶部のうちのマルウェア動作に関連する所定の領域”に感染することは,本願出願時において当業者に広く知られていた事実であると認められる。
一方,引用発明も,「探索プログラムは,ユーザPC内で稼働,常駐しているプログラムの中からマルウェアの疑いのある怪しいオブジェクトコード(実行コード)を探索して収集する」ものであるところ,探索プログラムが,ユーザPCの“記憶部のうちのマルウェア動作に関連する所定の領域”から被疑ファイルである実行コードを収集するとすることは,前述したように,ウィルスやワームなどのマルウェアが,“記憶部のうちのマルウェア動作に関連する所定の領域”に感染するという広く知られていた事実を勘案すれば,当業者であれば容易になし得るものと認められる。
ウ 小括
上記ア及びイで検討したとおり,相違点1及び相違点2に係る構成は,引用発明,及び引用文献2~6に記載された技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明,及び引用文献2~6に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,及び引用文献2~6に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
令和1年11月18日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成31年3月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項4に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項4に記載された事項により特定される,上記「第2[理由]1(2)」の請求項4に記載された下記のとおりのものである。
「検査対象装置に接続可能な被疑ファイル収集装置と、
前記被疑ファイル収集装置からアクセス可能な監視装置と、を備え、
前記被疑ファイル収集装置は、
前記検査対象装置により起動されるプログラムを用いて、前記検査対象装置が有する記憶部のうちのマルウェアの動作に関連する所定の領域からマルウェアへの感染が疑われる被疑ファイルを収集するよう構成された収集手段と、
前記被疑ファイルを記憶するよう構成された記憶手段と、
前記記憶手段に蓄積された被疑ファイルを前記監視装置に送出するよう構成された送出手段と、を有し、
前記監視装置は、前記被疑ファイル収集装置から受信した被疑ファイルを実行した結果を監視するよう構成された、
ことを特徴とするマルウェア検知システム。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項4に係る発明は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献A~Fに記載された発明に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
A.特開2010-198054号公報
B.特開2011-13917号公報
C.特開2012-014320号公報
D.特開2011-221745号公報
E.国際公開第2004/084063号
F.特開2005-56243号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献A~F,及びその記載事項は,上記「第2[理由]2(2)(2-1)~(2-6)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は,上記「第2[理由]2(1)」で検討した本件補正発明の「マルウェア検知システム」について,「記憶部に被疑ファイルを有する検査対象を含む」との限定を削除し,同「記憶手段」について,被疑ファイルおよび「所定のプログラムを記憶する」との限定を削除し,その他の事項の記載順序を変更したものである
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2[理由]2(3),(4)」に記載したとおり,引用発明,及び引用文献2~6に記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明,及び引用文献2~6に記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項4に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2019-015374