2019-012116
表刷り用グラビア印刷インキ組成物
- 審判番号
- 2019-012116
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-076759外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年09月12日
- 審決日
- 2020年05月20日
- 公報発行日
- 2020年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サカタインクス株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人朝日奈特許事務所
- 分類
- P18 .113-Z (C09D) / P18 .121-Z (C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法49条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第49条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月3日を出願日とする特許出願であって、平成30年12月10日付けの拒絶理由通知に対し、平成31年2月12日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、令和元年7月11日付けの拒絶査定に対し、同年9月12日付けで審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、さらに、同年12月19日付けで上申書の提出がなされたものである。
第2 令和元年9月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和元年9月12日付けの手続補正を却下する。
〔理由〕
1.補正の内容
令和元年9月12日付けの手続補正(以下「第2補正」という。)は、
補正前の請求項1の
「顔料と、バインダー樹脂と、硬化剤と、有機溶剤とを含み、前記バインダー樹脂は、(A)ジオール化合物と有機ジイソシアネート化合物とが反応したポリウレタン樹脂を含み、前記硬化剤は、多官能イソシアネート化合物を含み、前記硬化剤の含有量は、3~10質量%であり、前記バインダー樹脂は、さらに、(B)セルロース誘導体および塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくともいずれか1種を含み、(A)および(B)の少なくともいずれか1種は、多官能イソシアネート化合物と反応する反応基を有しており、前記ポリウレタン樹脂(A)と前記セルロース誘導体との質量比率は、ポリウレタン樹脂(A):セルロース誘導体=5:95~95:5であり、前記ポリウレタン樹脂(A)と前記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体との質量比率は、ポリウレタン樹脂(A):塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体=95:5~5:95である、表刷り用グラビア印刷インキ組成物。」との記載を、
補正後の請求項1の
「顔料と、バインダー樹脂と、硬化剤と、有機溶剤とを含み、前記バインダー樹脂は、(A)ジオール化合物と有機ジイソシアネート化合物とが反応したポリウレタン樹脂を含み、前記硬化剤は、多官能イソシアネート化合物を含み、前記硬化剤の含有量は、3~10質量%であり、前記バインダー樹脂は、さらに、(B)セルロース誘導体および塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくともいずれか1種を含み、(A)および(B)の少なくともいずれか1種は、多官能イソシアネート化合物と反応する反応基を有しており、前記ポリウレタン樹脂(A)と前記セルロース誘導体との質量比率は、ポリウレタン樹脂(A):セルロース誘導体=5:95~95:5であり、前記ポリウレタン樹脂(A)と前記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体との質量比率は、ポリウレタン樹脂(A):塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体=95:5~50:50である、表刷り用グラビア印刷インキ組成物。」との記載に改める補正を含むものである。
2.補正の適否
(1)補正の目的について
上記請求項1についての補正は、平成31年2月12日付けの手続補正(以下「第1補正」という。)による補正後の請求項1の「ポリウレタン樹脂(A):塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体=95:5~5:95である」との記載部分を「ポリウレタン樹脂(A):塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体=95:5~50:50である」との記載に改める補正からなるものである。
そして、当該補正により「ポリウレタン樹脂(A):塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体」の質量比率の範囲が、補正前の「95:5~5:95」から、補正後の「95:5~50:50」へと限定して減縮されており、当該補正により、補正前後の請求項1に記載される発明の「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」が変更されるものでもない。
してみると、上記請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載される発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とする補正に該当するといえる。
そこで、第2補正よる補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について検討する。
(2)独立特許要件について
ア.引用文献及びその記載事項
(ア)引用文献1(特開2012-025107号公報)
本願の出願日前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2012-025107号公報)には、次の記載がある。
「【請求項1】被印刷体上に、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)、ポリイソシアネート架橋剤(c)、および金属キレート化合物(d)、溶媒(e)からなり、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が重量換算(固形)で70:30~30:70であるグラビア印刷インキ組成物にて印刷する工程、次いで印刷皮膜を温度100℃~170℃、時間10秒~15秒の加熱、乾燥による皮膜架橋工程からなることを特徴とするグラビア印刷方法。」
「【0015】本発明に使用するポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)としては、Polym.,Bull.,8,239(1982)に製造法が開示されているポリウレタンセグメントとアクリルセグメントを化学的に結合し一液型として使用し得るポリウレタン/アクリルグラフト共重合樹脂、特開平10-1524号開示のエチレン性不飽和二重結合基を両末端に有する高分子直鎖状ポリウレタンに(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系モノマーを重合させるポリウレタン/アクリル共重合樹脂などが使用できる。…【0016】…ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)の重量平均分子量は3万~7万が好ましい。3万以下だと印刷裏面へのインキ皮膜の転移(ブロッキング)が生じ、かつ充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、7万以上だと硬化剤配合後の可使時間が短くなる。…【0017】…塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)の数平均分子量は2.5万~5万が好ましい。2.5万以下だと印刷裏面へのインキ皮膜の転移(ブロッキング)が生じ、かつ充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、5万以上だと硬化剤配合後の可使時間が短くなる。」
「【0023】グラビア印刷は円筒状のシリンダー表面に彫られた画線部となる凹部にインキを詰め、ドクターと呼ばれる金属板で非画線部のインキをかきとった後、シリンダーの凹部に残ったインキを紙やプラスチックフィルムなどの被印刷体に転移させて画像を形成する印刷する方法である。凹部の深さでインキ量を制御し印刷画像の濃淡を表現し、食品包装の印刷などに広く用いられている。」
「【0026】以下、実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において特に断りのない限り「部」および「%」は「重量部」および「重量%」である。【0027】実施例1<塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)ワニスの調整>塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニールアルコール共重合樹脂(=88/1/11、水酸基価166mgKOH/g、数平均分子量28,000、)25部を酢酸エチル75部に混合溶解させて、試験用塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂ワニス(樹脂ワニスb1、固形分25重量%)を得た。続きを表示(全19行)塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(=86/14、水酸基価0mgKOH/g、数平均分子量25,000)25部を酢酸エチル75部に混合溶解させて、試験用塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂ワニス(樹脂ワニスb2、固形分25重量%)を得た。【0028】実施例2~7、比較例1~4実施例2~7、比較例1~4については、実施例1と同様な方法により、上記の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂およびポリウレタン/アクリル共重合樹脂の各樹脂を用いて、表1に示す材料をサンドミルで混練し、更に硬化剤、架橋剤を配合し、本発明の印刷インキ組成物を得た。なお、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂ワニス(樹脂ワニスa1)、(樹脂ワニスa2)、顔料、滑剤、溶剤、硬化剤、架橋剤としては下記のものを用いた。【0029】樹脂ワニスa1:ポリウレタン(ポリエステル系)/アクリル=30/70、固形分40%、水酸基価42.5mgKOH/g(固形分換算)、重量平均分子量30,000、大成ファインケミカル(株)製樹脂ワニスa2:ポリウレタン(ポリエステル系)/アクリル=50/50、固形分40%、水酸基価0mgKOH/g(固形分換算)、重量平均分子量30,000、大成ファインケミカル(株)製「アクリット8UA-140」顔料:リオノールブルー7358(東洋インキ製造(株))滑剤:ハイフラットT10P4(岐阜セラック製造所(株)製)溶剤:メチルエチルケトンポリイソシアネート架橋剤A:ヘキサメチレンジイソシアネートのビュッレトタイプポリイソシアネート架橋剤B:ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレットタイプ金属キレート化合物:チタンテトラキスアセチルアセトネート【0030】調整した試験用グラビア印刷インキ組成物を用いて、コロナ放電処理したポリエステルフィルム(ルミラーS10東レ(株)製)にグラビア校正機を利用して印刷し、乾燥オーブンで90℃、105℃、120℃、165℃の各温度で12秒間の加熱行なった後、下記の方法で、再溶解性、耐溶剤性、可使時間の評価を行なった。…【0035】【表1】」
(イ)参考文献A(特開2011-148302号公報)
本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2011-148302号公報(以下「参考文献A」という。)には、次の記載がある。
「商品名「アクリット8UA-140」…は、表3に示すとおり、ネオペンチルグリコール8.1重量%、エチレングリコール3.3重量%、テレフタル酸12.9重量%、イソフタル酸12.9重量%、イソホロンジイソシアネート17.2重量%、メタクリル酸n-ブチル30.9重量%、メタクリル酸メチル14.7重量%を単量体成分…として構成された…ポリエステルジオール系のウレタンアクリル系樹脂の溶液…である。」
(ウ)参考文献B(特開平10-1524号公報)
引用文献1の段落0015において参照された刊行物である特開平10-1524号公報(以下「参考文献B」という。)には、次の記載がある。
「【0011】…ウレタンセグメントを作るには常法に従い、すなわち、長鎖ジオール、短鎖グリコール、場合に応じ鎖延長剤を併用し、これらに生成する共重合体の分子量に応じ、理論量の有機ジイソシアネートを加えて反応する。」
イ.引用文献1に記載された発明
摘記1aの「ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)、ポリイソシアネート架橋剤(c)、および金属キレート化合物(d)、溶媒(e)からなり、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が重量換算(固形)で70:30~30:70であるグラビア印刷インキ組成物」との記載、
摘記1bの「本発明に使用するポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)としては、…特開平10-1524号開示の…高分子直鎖状ポリウレタンに(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系モノマーを重合させるポリウレタン/アクリル共重合樹脂などが使用できる。…ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)の重量平均分子量は3万~7万が好ましい。3万以下だと印刷裏面へのインキ皮膜の転移(ブロッキング)が生じ、かつ充分な耐溶剤性を得ることが困難にな…る。」との記載、
摘記1cの「グラビア印刷は…凹部の深さでインキ量を制御し印刷画像の濃淡を表現し、食品包装の印刷などに広く用いられている。」との記載、
摘記1dの「本実施例において特に断りのない限り「部」および「%」は「重量部」および「重量%」である。…塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニールアルコール共重合樹脂(…水酸基価166mgKOH/g、数平均分子量28,000…)…を酢酸エチル75部に混合溶解させて、試験用塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂ワニス(樹脂ワニスb1、固形分25重量%)を得た。…樹脂ワニスa2:ポリウレタン(ポリエステル系)/アクリル=50/50、固形分40%、水酸基価0mgKOH/g(固形分換算)、重量平均分子量30,000、大成ファインケミカル(株)製「アクリット8UA-140」…溶剤:メチルエチルケトン…ポリイソシアネート架橋剤A:ヘキサメチレンジイソシアネートのビュッレトタイプ」との記載、及び「表1」の実施例5の記載、並びに
各成分の質量部の合計量が、10+22.5+36+5.5+26+5+1=106と計算されることからみて、引用文献1には、
『ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)として樹脂ワニスa2(固形分40%)の大成ファインケミカル(株)製「アクリット8UA-140」を22.5重量部、
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)として水酸基価166mgKOH/gの樹脂ワニスb1(固形分25%)を36.0重量部、
ポリイソシアネート架橋剤(c)としてポリイソシアネート架橋剤A(ヘキサメチレンジイソシアネートのビュッレトタイプ)を5.0重量部、
金属キレート化合物(d)を1.0重量部、
溶媒(e)としてメチルエチルケトンを26.0重量部、
顔料を10.0重量部、
滑剤を5.5重量部、の合計106重量部からなり、
ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が重量換算(固形)で50:50である、
印刷裏面へのインキ皮膜の転移(ブロッキング)が生じず、かつ充分な耐溶剤性を得ることできる、食品包装の印刷などに用いられるグラビア印刷インキ組成物。』についての発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
ウ.対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)として樹脂ワニスa2(固形分40%)の大成ファインケミカル(株)製「アクリット8UA-140」を22.5重量部」は、一般に「ポリウレタン」が「ウレタン結合を有する重合体の総称」とされ、引用発明の「ポリウレタン/アクリル共重合樹脂」という重合体が『ウレタン結合を有する重合体』としての「ポリウレタン樹脂」の範疇に包含されることが明らかであることから、補正発明の「バインダー樹脂」に含まれる「ポリウレタン樹脂」に相当する。
引用発明の「塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)として水酸基価166mgKOH/gの樹脂ワニスb1(固形分25%)を36.0重量部」は、その「水酸基価」との記載からみて「水酸基」を有する樹脂であることが明らかであるところ、補正発明の「バインダー樹脂」に含まれる「(B)セルロース誘導体および塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくともいずれか1種」のうちの「塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体」において「(A)および(B)の少なくともいずれか1種は、多官能イソシアネート化合物と反応する反応基を有して」いるものに相当する。
引用発明の「ポリイソシアネート架橋剤(c)としてポリイソシアネート架橋剤A(ヘキサメチレンジイソシアネートのビュッレトタイプ)を5.0重量部」は、引用発明の「合計106重量部」に対する重量百分率が、5÷106×100=4.72重量%と計算されることから、補正発明の「多官能イソシアネート化合物」を含む「硬化剤」において「前記硬化剤の含有量は、3~10質量%」であるものに相当する。
引用発明の「溶媒(e)としてメチルエチルケトンを26.0重量部」と「顔料を10.0重量部」の各々は、補正発明の「有機溶剤」と「顔料」の各々に相当する。
引用発明の「ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が重量換算(固形)で50:50である」は、補正発明の「前記ポリウレタン樹脂(A)と前記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体との質量比率は、ポリウレタン樹脂(A):塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体=95:5~50:50である」に相当する。
引用発明の「印刷裏面へのインキ皮膜の転移(ブロッキング)が生じず、かつ充分な耐溶剤性を得ることできる、食品包装の印刷などに用いられるグラビア印刷インキ組成物」は、そのインキ皮膜の転移が生じる「印刷裏面」と反対側の「表面」側に「表刷り」として印刷がなされることを意図していることが明らかであることから、補正発明の「表刷り用グラビア印刷インキ組成物」に相当する。
してみると、補正発明と引用発明は、
『顔料と、バインダー樹脂と、硬化剤と、有機溶剤とを含み、
前記バインダー樹脂は、(A)ポリウレタン樹脂を含み、
前記硬化剤は、多官能イソシアネート化合物を含み、
前記硬化剤の含有量は、3~10質量%であり、
前記バインダー樹脂は、さらに、(B)セルロース誘導体および塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくともいずれか1種を含み、
(A)および(B)の少なくともいずれか1種は、多官能イソシアネート化合物と反応する反応基を有しており、
前記ポリウレタン樹脂(A)と前記セルロース誘導体との質量比率は、ポリウレタン樹脂(A):セルロース誘導体=5:95~95:5であり、前記ポリウレタン樹脂(A)と前記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体との質量比率は、ポリウレタン樹脂(A):塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体=95:5~50:50である、表刷り用グラビア印刷インキ組成物。』という点において一致し、次の(α)の点において一応相違する。
(α)ポリウレタン樹脂が、補正発明は「ジオール化合物と有機ジイソシアネート化合物とが反応した」ものとして特定されているのに対して、引用発明の「アクリット8UA-140」という製品名のポリウレタン樹脂が「ジオール化合物と有機ジイソシアネート化合物とが反応した」ものであるのか不明である点。
エ.判断
上記(α)の相違点について検討する。
引用発明の「アクリット8UA-140」という製品名のポリウレタン樹脂は、例えば、参考文献Aの段落0071(摘記A1)の「商品名「アクリット8UA-140」…は、…エチレングリコール3.3重量%、…イソホロンジイソシアネート17.2重量%、…を単量体成分…として構成された…ポリエステルジオール系のウレタンアクリル系樹脂の溶液…である。」との記載、本願明細書の段落0026の「ジオール化合物としては…エチレングリコール…が例示される。」との記載、及び同段落0028の「ジイソシアネート化合物としては…イソホロンジイソシアネート…が例示される。」との記載、並びに本願出願当時の技術常識をも参酌するに、これが「ジオール化合物と有機ジイソシアネート化合物とが反応した」ものであることは当業者に自明であるから、上記(α)の相違点は、実質的な相違点を構成するものとはいえない。
したがって、補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
また、仮に上記(α)の相違点について実質的な差異があるとしても、引用文献1の段落0015(摘記1b)の「特開平10-1524号」との記載にある参考文献Bの段落0011(摘記B1)には「長鎖ジオール」などのジオール化合物と「有機ジイソシアネート」のような有機ジイソシアネート化合物とを反応させることが「ウレタンセグメント」を作る「常法」であると記載されており、引用発明の「ポリウレタン/アクリル共重合樹脂」の「ウレタンセグメント」を当該「常法」という周知技術に基づき製造することは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
したがって、補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
オ.審判請求人の主張について
令和元年12月19日付けの上申書の第5頁では「各引用文献に記載された発明との差異をより一層明確にすべく、たとえば、食品用軟包装用途であることを請求項1で明記する補正を行う準備がございます。」との主張がなされている。しかしながら、当該「食品用軟包装用途」という事項は、補正発明の発明特定事項とされていないので、上記主張を斟酌しても、補正発明と引用発明とに何らかの相違点があるとはいえない。
また、同第5頁では『審査官殿が「引用文献1には、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂と塩化ビニル又は酢酸ビニル共重合体との質量比率について70:30~50:50が好ましいことも記載されている」との開示は、アクリル樹脂を含む樹脂を前提とした質量比率の範囲が開示されているに過ぎず、本願発明の質量比率を開示するものではありません。』との主張がなされている。しかしながら、摘記1dの「樹脂ワニスa2:ポリウレタン(ポリエステル系)/アクリル=50/50」との記載にあるように、引用発明の「アクリット8UA-140」という製品名のポリウレタン樹脂における「ポリウレタン構造部分」の割合は50%を占めているので、摘記1aの「ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が重量換算(固形)で70:30」との記載にある「70:30」という比率の左辺を、その「ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)」のうちの50%の「ウレタン構造部分」のみを基準にした比率に換算しても、その場合の比率は「35:30」となって補正発明の「95:5~50:50」の範囲に含まれる。したがって、仮に「ポリウレタン構造部分」を基準した比率のものに補正発明の発明特定事項を書き換えたとしても、その新規性ないし進歩性を認めることはできない。
したがって、これらの審判請求人の主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、上記請求項1についての補正は、独立特許要件違反があるという点において特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
このため、その余のことを検討するまでもなく、第2補正は、同法第159号第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
第2補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、第1補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下「本1発明」ともいう。)は、上記『第2 1.』の項に示したとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は「この出願については、平成30年12月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。」というものである。
そして、平成30年12月10日付け拒絶理由通知書には、理由1として「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由と、理由2として「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」との理由が示されるとともに、その「記」には、上記『第2 2.(2)ア.(ア)』の項に示した「特開2012-025107号公報」が「引用文献1」として提示されるとともに、次のとおりの指摘がなされている。
「・理由1、2(新規性、進歩性)について・請求項1~3・引用文献等1」
また、令和元年7月11日付け拒絶査定の備考欄には、次のとおりの指摘がなされている。
「●理由1、2(特許法第29条第1項第3号、同条第2項)について・請求項1~3・引用文献等1引用文献1について先の拒絶理由通知書参照。補正によって、本願上記請求項に係る発明のインキ組成物は、ポリウレタン樹脂(A)とセルロース誘導体/塩化ビニル又は酢酸ビニル共重合体との質量比率について5:95~95:5に特定された。しかしながら、引用文献1に記載のインク組成物も、ポリウレタン樹脂:塩化ビニル又は酢酸ビニル共重合体=5:95~95:5に包含されるから(例えば、引用文献1の実施例1において、ポリウレタン/アクリル=30/70、固形分40%より、ワニスa1のポリウレタン樹脂固形分3.78、ワニスb1の塩化ビニル/酢酸ビニル固形分5.4となるから、5:95~95:5に包含される。)、本願上記請求項に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。」
3.理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
(1)引用文献1の記載事項、及び引用文献1に記載された発明
引用文献1には、上記『第2 2.(2)ア.(ア)』の項に示したとおりの記載がある。
また、引用文献1には、上記『第2 2.(2)イ.』の項に示したとおりの「引用発明」が記載されている。
(2)対比・判断
上記『第2 2.(2)』の項において検討した「補正発明」は、上記『第2 2.(1)』の項に示したように「本1発明」を限定的に減縮したものであるから、本1発明は「補正発明」を包含するものである。
してみると、上記『第2 2.(2)ウ.~エ.』の項において検討した理由と同様の理由により、本1発明に新規性及び進歩性は認められない。
したがって、本1発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本1発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
4.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第49条第2号の「その特許出願に係る発明が第29条の規定により特許をすることができないものであるとき」に該当するから、その余のことを検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-012116