特許拒絶査定不服審判
2025-002897
活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物
- 審判番号
- 2025-002897
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-128425
- 請求日
- 2025年02月25日
- 審決日
- 2026年03月30日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サカタインクス株式会社
- 【請求人代理人】前田 伸哉
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 外川 敬之
- 審判官 古屋野 浩志
- 分類
- P18 .121-Z (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-128425「活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和4年2月10日出願公開、特開2022-25542〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は令和2年7月29日の出願であって、 令和6年5月13日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月29日付けで拒絶理由が通知され、同年10月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月5日付け(送達日同年同月10日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、令和7年2月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、令和6年8月29日付け拒絶理由通知書に理由2として記載した、下記のとおりのものである。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2015/141552号(周知技術を示す文献)
2.国際公開第2019/017270号(周知技術を示す文献)
3.特開2020-023614号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2018-065912号公報
第3 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年10月28日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
エチレン性不飽和結合を備えた化合物及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物であって、
ジアリルフタレート樹脂、4~6官能のポリエステルアクリレート、及びsp値が9.0~11.0(cal/cm3)1/2であるロジン変性アルキッド樹脂からなる群より選択される少なくとも一つを含み、
前記エチレン性不飽和結合を有する化合物の少なくとも一部として、分子中にエチレンオキシド(EO)単位を6個以上9個以下含むEO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を含み、EO変性されていないTMPTAを実質的に含まないことを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物。」
第4 引用文献の記載事項及び引用発明の認定等
1 引用文献4
(1)引用文献4の記載事項
原査定において引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である、特開2018-065912号(拒絶査定時の引用文献4)には、以下の記載がある(合議体にて、発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。)。
ア 「【請求項1】
樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm3)1/2であり、酸価が1~50mgKOH/gであることを特徴とするロジン変性アルキッド樹脂 。」
イ 「【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項記載のロジン変性アルキッド樹脂を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物。
【請求項12】
活性エネルギー線硬化型であることを特徴とする請求項11記載のオフセット印刷用インキ組成物。」
ウ 「【0079】
オフセット印刷用インキ組成物の成分として本発明のロジン変性アルキッド樹脂を用いる場合、植物油や鉱物油等の油成分に溶解させてワニスとすればよい。また、活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物の成分として本発明のロジン変性アルキッド樹脂を用いる場合、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等といった低粘度のモノマーに溶解させてワニスとすればよい。」
エ 「【実施例】
【0081】
以下、実施例を示すことによりさらに具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味するものとする。
【0082】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、イソフタル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例1の樹脂を得た。実施例1の樹脂の酸価は13mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.74であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.7万だった。」
オ 「【0102】
[モノマーに対する相溶性試験]
実施例1~16、及び比較例1~4のそれぞれの樹脂について、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物に用いられる各種モノマーに対する相溶性を試験した。試験は、樹脂80部、モノマー19部、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)1部を80℃の加温下で混合及び撹拌してから25℃まで冷却して、溶解状態を目視で観察することにより行った。次の基準で各樹脂を評価し、その結果を表1に示す。なお、表1に示すsp値の単位は、(cal/cm3)1/2である。
○:完全に溶解し、溶液は透き通っている
△:溶液は僅かに濁っている
×:溶液が白濁している、固体が析出している、又は溶けない
【0103】
表1に示した各モノマーは、次の通りである。なお、通常のオフセット印刷用インキ組成物で用いられる油成分である大豆油、及びAFソルベント7号(JX日鉱日石株式会社製)も試験に加えた。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
DI-TMPTA:ジトリメトロールプロパンテトラアクリレート
3EO-TMPTA:エチレンオキシド3モル付加TMPTA
6EO-TMPTA:エチレンオキシド6モル付加TMPTA
NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
3PO-TMPTA:プロピレンオキシド3モル付加TMPTA
2PO-NPGDA:プロピレンオキシド2モル付加NPGDA
AF-7:AFソルベント7号
【0104】
表1から理解できるように、sp値が9.0~11.0である本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、活性エネルギー線硬化型インキ組成物で用いられる各種のモノマーに対して良好な相溶性を示すことがわかる。
【0105】
【表1】
[図:0001435909000001.jpg]
」
カ 「【0106】
[ワニスの調製]
実施例1~16の樹脂のそれぞれについて、樹脂80部、DI-TMPTA19部、及びBHT1部を冷却管付き反応釜に仕込み、100℃で1時間加熱及び撹拌することによりワニス1~16をそれぞれ調製した。いずれのワニスも透明であり、相溶性は良好だった。各ワニスの粘度は概ね1.9~5.4Pa・sの範囲だった。なお、比較例1~4の樹脂については、相溶性が悪く、ワニスを調製することはできなかった。
【0107】
[活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物の調製]
上記の手順で調製したワニス1~16のそれぞれを用いて、インキ1~16をそれぞれ調製した。調製の手順は、ワニス70部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、製品名#60)15部、イルガキュア907(BASF社製)7部、4,4 ’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)3部を混合し、ロール温度40℃の3本ロールミルを用いて粒度が5.0μm以下になるまで練肉し、必要に応じてTMPTA5部を添加して粘度が40Pa・s付近となるように調節してインキ組成物とした。」
(2)引用発明
上記(1)の「ア」、「イ」、「エ」及び「カ」に示した記載からみて、引用文献4には次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0~11.0(cal/cm3)1/2であり、酸価が1~50mgKOH/gであるロジン変性アルキッド樹脂(【請求項1】)としての、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、ロジン160部、イソフタル酸50部を加えて、縮重合反応を行なって得た、sp値が9.74(cal/cm3)1/2であり、酸価は13mgKOH/gである樹脂(【0082】、【0105】)80部と、sp値が9.81(cal/cm3)1/2であるDI-TMPTA19部、及びBHT1部により調製したワニス1(【0106】)70部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、製品名#60)15部、イルガキュア907(BASF社製)7部、4,4 ’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)3部を混合した(【0107】)、活性エネルギー線硬化型であるオフセット印刷用インキ組成物(【請求項11】、【請求項12】)。」
(3)引用文献4に記載された技術事項
ア 引用文献4に記載された技術事項1
また、上記(1)の「エ」及び「オ」に示した記載からみて、引用文献4には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献4に記載された技術事項1」という。)。
「ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、ロジン160部、イソフタル酸50部を加えて、縮重合反応を行なって得た、酸価は13mgKOH/gである樹脂(【0082】)について、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物に用いられる各種モノマーに対する相溶性を試験し、3EO-TMPTA(エチレンオキシド3モル付加TMPTA)、6EO-TMPTA(エチレンオキシド6モル付加TMPTA)、9EO-TMPTA(エチレンオキシド9モル付加TMPTA)とのモノマーそれぞれに対して、sp値が9.74である実施例1のロジン変性アルキッド樹脂は、いずれも完全に溶解し良好な相溶性を示し、3EO-TMPTAのspが9.73、6EO-TMPTAのspが9.65、9EO-TMPTAのspが9.60であること(【0102】、【0103】、【0105】。」
イ 引用文献4に記載された技術事項2
さらに、上記(1)の「ウ」には示した記載からみて、引用文献4には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献4に記載された技術事項2」という。)。
「活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物の成分として本発明のロジン変性アルキッド樹脂を用いる場合、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等といった低粘度のモノマーに溶解させてワニスとすればよいこと。」
2 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
原査定において周知技術を示す文献として引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である、国際公開第2015/141552号(拒絶査定時の引用文献1)には、以下の記載がある(合議体にて、発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。以下同様。)。
ア 「[0038] 本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物に使用する重合性ウレタンアクリレート化合物(A)以外の重合性アクリレートモノマー(B)としては公知公用のアクリレートモノマーを挙げることができ、例えば、・・・トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリアクリレート、ビスフェノールA1モルに2モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリアクリレート等が挙げられる。
[0040] ・・・具体例として、EO3TMPTA(エチレンオキサイド平均3モル変性トリメチロールプロパントリアクリレート、粘度50~70mPa・s、重量平均分子量428)・・・等が挙げられるが、特に、これらの中でも、重量平均分子量300~600の範囲にあるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートは低粘度かつ硬化性に優れ、オフセット印刷適性も良好である点において好ましい。これら重合性アクリレートモノマー(B)は単独で用いてもいずれか1種以上を組み合わせて用いてもよい。」
イ「[0059]
[表1]
[図:0001435909000002.jpg]
・・・
[0061] 表1、及び表2の数値は重量%である。
・・・
・MIRAMER M3130:エチレンオキサイド(平均3モル付加)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(EO3TMPTA)、粘度50~70mPa・s、重量平均分子量428、 MIWON社製
・・・」
(2)引用文献1に記載された技術事項
上記(1)の記載からみて、引用文献1には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献1に記載された技術事項」という。)。
「活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物に使用する重合性アクリレートモノマー(B)として、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリアクリレートが挙げられ、具体例として、EO3TMPTA(エチレンオキサイド平均3モル変性トリメチロールプロパントリアクリレート、粘度50~70mPa・s、重量平均分子量428)が挙げられ、重量平均分子量300~600の範囲にあるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートは低粘度かつ硬化性に優れ、オフセット印刷適性も良好である点において好ましく、EO3TMPTAとしてMIRAMER M3130を用いること。」
3 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
原査定において周知技術を示す文献として引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である、国際公開第2019/017270号(拒絶査定時の引用文献2)には、以下の記載がある。
「[0058]実施例9~21及び比較例1 印刷インキの製造
下記表3~5に示す割合で各成分を配合し、ミキサー(単軸ディゾルバー)で撹拌した後、3本ロールミルを用いて練肉して印刷インキを得た。実施例14については、組成物(1)以外の成分を配合してミキサー(単軸ディゾルバー)で撹拌し、3本ロールミルを用いて練肉した後、組成物(1)を添加して混合し、印刷インキを得た。
得られた印刷インキについて下記の要領で種々の評価を行った。結果を表3~5に示す。
[0059]
[表2]
[図:0001435909000003.jpg]
」
(2)引用文献2に記載された技術事項
上記(1)の記載からみて、引用文献2には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)。
「印刷インキの製造にエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートであって、1分子あたりのエチレンオキサイド付加数が3であるMIRAMER M3130を用いること。」
4 引用文献3
(1)引用文献3の記載事項
原査定において周知技術を示す文献として引用され、本願の出願日前に頒布された引用文献である、特開2020-23614号公報(拒絶査定時の引用文献3)には、以下の記載がある。
「【0019】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化性オフセットインキは、バインダー(A)、及び(メタ)アクリレートモノマー(B)を含有する事が好ましく、インキの硬化性を考慮すると、更に光重合開始剤を含有する事がより好ましい。・・・」
「【0086】
(実施例15:活性エネルギー線硬化性オフセット墨インキ(15)の調整)100℃下で、DAPA:ジアリルフタレート樹脂(大阪ソーダ社製)を樹脂比率40%になるようにトリメチロールプロパンエチレンオキサイド(以下EOと略す)変性トリアクリレート(TMP(EO)3TA)MiramerM3130(MIWON社製)で希釈し、ワニスを作製した。続いて、当該ワニス15質量部、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(TMP(EO)3TA)MiramerM3130(MIWON社製)55質量部、光重合開始剤としてα-アミノアルキルフェノン系開始剤、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(IGM社製「Omnirad907」)10質量部、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン(OmniradEMKIGM製)5質量部を60℃で3時間混合して、活性エネルギー線硬化性インキ組成物)を得た後、墨顔料Raven1060Ultra(ビルラ社製)を15質量部加え、ミキサー(単軸ディゾルバー)を用いて撹拌した後、配合物を3本ロールミルで練肉し、活性エネルギー線硬化性オフセットインキ(15)を得た。作製したインキの25℃におけるインキ粘度は5Pa.sであった。
・・・
【0088】
(実施例17:活性エネルギー線硬化性オフセット墨インキ(17)の調整)
100℃下で、ISODAP:ジアリルフタレート樹脂(大阪ソーダ社製)を樹脂比率40%になるようにトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(TMP(EO)3TA)MiramerM3130(MIWON社製)で希釈し、ワニスを作製した。続いて、当該ワニス20質量部、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(TMP(EO)3TA)MiramerM3130(MIWON社製)50質量部、光重合開始剤としてα-アミノアルキルフェノン系開始剤、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(IGM社製「Omnirad907」)10質量部、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン(OmniradEMKIGM製)5質量部を60℃で3時間混合して、活性エネルギー線硬化性インキ組成物)を得た後、墨顔料Raven1060Ultra(ビルラ社製)を15質量部加え、ミキサー(単軸ディゾルバー)を用いて撹拌した後、配合物を3本ロールミルで練肉し、活性エネルギー線硬化性オフセットインキ(17)を得た。作製したインキの25℃におけるインキ粘度は5Pa.sであった。」
(2)引用文献3に記載された技術事項
上記(1)の記載からみて、引用文献3には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献3に記載された技術事項」という。)。
「(メタ)アクリレートモノマー(B)としてトリメチロールプロパンエチレンオキサイド(以下EOと略す)変性トリアクリレート(TMP(EO)3TA)MiramerM3130を含有する、活性エネルギー線硬化性オフセットインキ。」
5 周知の技術事項
上記「2」~「4」に示した事項からみて、引用文献1~3には次の周知の技術事項が記載されていると認められる(以下「周知の技術事項」という。)
「活性エネルギー線硬化性オフセットインキに、重合性アクリレートモノマーとして、トリメチロールプロパン1モルに3モルのエチレンオキサイドを付加して得たトリオールである、EO3TMPTAを用いること。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1)インキとしての種類について
引用発明の「DI-TMPTA」、「イルガキュア907(BASF社製)」は、それぞれ本願発明の「エチレン性不飽和結合を備えた化合物」、「光重合開始剤」に相当する。
また、引用発明の「活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用」との用途は、本願発明の「活性エネルギー線硬化型であるオフセット印刷用」との用途に相当し、引用発明の「インキ組成物」は、本願発明の「インキ組成物」に相当する。
(2)群より選択されることについて
引用発明の「sp値が9.74(cal/cm3)1/2であ」ることは、本願発明の「sp値が9.0~11.0(cal/cm3)1/2である」ことに相当し、引用発明の「ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、ロジン160部、イソフタル酸50部を加えて、縮重合反応を行なって得た」「樹脂」は、本願発明の「ロジン変性アルキッド樹脂」に相当する。
そして、引用発明における上記「樹脂」を用いることは、本願発明において「ジアリルフタレート樹脂、4~6官能のポリエステルアクリレート、及びsp値が9.0~11.0(cal/cm3)1/2であるロジン変性アルキッド樹脂からなる群より選択される少なくとも一つを含」むことに相当する。
2 一致点・相違点
したがって、本願発明と引用発明とは、
「 エチレン性不飽和結合を備えた化合物及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物であって、
ジアリルフタレート樹脂、4~6官能のポリエステルアクリレート、及びsp値が9.0~11.0(cal/cm3)1/2であるロジン変性アルキッド樹脂からなる群より選択される少なくとも一つを含む、ことを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物。」
である点において一致し、次の相違点において相違する。
[相違点]
インキ組成物の組成に関して、本願発明が「エチレン性不飽和結合を有する化合物の少なくとも一部として、分子中にエチレンオキシド(EO)単位を6個以上9個以下含むEO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を含み、EO変性されていないTMPTAを実質的に含まない」のに対して、引用発明はエチレン性不飽和結合を有する化合物として「DI-TMPTA」を用いる点。
3 判断
上記相違点について検討すると、引用文献4に記載された技術事項1の「6EO-TMPTA」、「9EO-TMPTA」は、いずれも本願発明の「エチレン性不飽和結合を有する化合物」に相当し、それぞれ「分子中にエチレンオキシド(EO)単位を6個」「含む変性トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)」、「分子中にエチレンオキシド(EO)単位を」「9個」「含む変性トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)」に相当する。
また、引用文献4に記載された技術事項1の上記「6EO-TMPTA」、「9EO-TMPTA」は、いずれも「3EO-TMPTA」とともに、「ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、ロジン160部、イソフタル酸50部を加えて、縮重合反応を行なって得た、酸価は13mgKOH/gである樹脂」との相溶性について、「DI-TMPTA」と同様に「完全に溶解し良好な相溶性を示」すとされるものであるところ、引用文献4に記載の技術事項2のとおり、引用発明の「ロジン変性アルキッド樹脂を用いる場合」には、「トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等といった低粘度のモノマーに溶解させてワニスとすればよい」のであるから(下線は当審において付した)、「DI-TMPTA」に換えて、これと同程度のsp値をもつ「3EO-TMPTA」、「6EO-TMPTA」、「9EO-TMPTA」のいずれかを適用することは、引用文献4に触れた当業者であれば、当然想起し得ることと解されるし、実際上記周知の技術事項において、「3EO-TMPTA」を用いられることが示されることも踏まえると、引用発明の「エチレン性不飽和結合を有する化合物」として、「DI-TMPTA」に換えて、「3EO-TMPTA」、「6EO-TMPTA」、「9EO-TMPTA」の少なくともいずれか一つを用いるようになすことは、当業者であれば容易になし得ることであるし、その中の「6EO-TMPTA」、「9EO-TMPTA」を採用することも同様である。
以上のことからみて、上記相違点に係る構成のうちの、「エチレン性不飽和結合を有する化合物の少なくとも一部として、分子中にエチレンオキシド(EO)単位を6個以上9個以下含むEO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を含」むとの本願発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることであると認められる。
また、それによって、当然に上記相違点のうちの、「EO変性されていないTMPTAを実質的に含まない」との構成も充足されることになる。
なお、「3EO-TMPTA」については、新規性欠如について回避することを目的として補正により本願発明1から排除されたとの経緯に鑑みると、上記「EO」の単位の数は引用文献4に記載された技術事項の範囲において当業者が任意に選択し得る事項であると認められる。
第6 本件審判請求人の反論について
1 反論1
本件の審判請求人は、審判請求書において、反論1として「引用文献1~3には、3EO-TMPTAを用いてインキ組成物を調製したことしか記載されておらず、引用文献4に至っては、そもそもEO変性TMPTAを用いてインキ組成物を調製することすら記載されてい」ないこと、及び、「引用文献1~4にてインキ組成物への適用実績のない6EO-TMPTAや9EO-TMPTAを用いた場合にも、3EO-TMPTAと同じように良好な硬化性を示すインキ組成物が得られるとは限」らないことを主張する。
しかるに、引用文献4に記載された技術事項2において、「ロジン変性アルキッド樹脂」を「低粘度のモノマーに溶解させてワニスとす」ることが示され、かつ、引用文献4に記載された技術事項1から、「3EO-TMPTA」、「6EO-TMPTA」、「9EO-TMPTA」のいずれにおいても、引用発明の「DI-TMPTA」と同程度の相溶性を備えることが示されている以上、それらが当該「低粘度のモノマー」の候補として当業者が認識し得ると解することができるし、明示的に記載はなくとも、上述のとおり当業者であればこれらを「低粘度のモノマー」として採用することは容易に想起し得、これを妨げる特段の事情も認められないから、当該反論1における主張は採用できない。
2 反論2
また、反論2として「「ジアリルフタレート樹脂、多官能ポリエステルアクリレート、及びsp値が9.0~11.0(cal/cm3)1/2であるロジン変性アルキッド樹脂からなる群より選択される少なくとも一つを含む」インキ組成物にてEO変性TMPTAを用いる場合、耐摩擦性を満足させるためにはEO単位数の上限を9とすればよいということが重要なのであり、その事実を解明したことも発明として評価されるべき」と主張するが、引用文献4に記載された技術事項1において、「3EO-TMPTA」、「6EO-TMPTA」、「9EO-TMPTA」を技術事項として含むものの、9よりも大きいEO単位数のものが含まれていない以上、引用発明及び引用文献4に記載の技術事項1から得られる発明における最も大きなEO単位数は9となるから、当該反論2における主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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