意匠拒絶査定不服審判
2019-011285
立体音響設定機能付き電子計算機
- 審判番号
- 2019-011285
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2018-003614外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 1656174
- 請求日
- 2019年08月28日
- 審決日
- 2020年02月14日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- D18 .121-WY (H6-6)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第2項、意匠法第14条第1項、意匠法第2条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
意願2018- 3614「立体音響設定機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠(以下「本願意匠」という。)を3年間秘密にすることを請求した、平成30年(2018年)2月22日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月28日付け 拒絶理由の通知
平成31年 2月 1日 意見書の提出
令和 1年 5月23日付け 拒絶査定
令和 1年 8月28日 拒絶査定不服審判の請求
第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「立体音響設定機能付き電子計算機」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。
第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、画像図中、頂点に当たる部分(音を聴く人の位置を示すアイコン)から上方に向かって放射状に配された2本の直線部分であり、頂点が右側から左側に移動するとともに、2本の直線の向き及び長さが変化するものと認められますが、画像を利用する物品分野において、頂点が左右方向に移動することにより、頂点から放射状に伸びる曲線の向き及び長さが変化するものは、例えば下記意匠に見られるように本願出願前から見受けられるところ、本願意匠は、本願出願前から見られる手法を用い、曲線を直線とし、頂点から伸びた直線が、頂点が移動するとともに向き及び長さが変わる変化をするものとした程度に過ぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
(中略)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1509399号の意匠
意匠に係る物品「携帯用情報端末」(当審注:「携帯用情報端末
機」の誤記と認められる。)のうち、画像部分の意匠」
第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。
1 本願意匠の認定
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「立体音響設定機能付き電子計算機」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「本物品は、立体音響を設定する機能を有する電気計算機である。例えば、本物品を用いて立体音響を設定することにより、立体音響による音の出方、タイミング、位置等の設定を行うことができる。「画像図」~「変化後の画像図」、「A-A間部分拡大図」~「B-B間部分拡大図」、及び「C-D間部分拡大図」~「E-F間部分拡大図」に表示された図形は、本物品の有する立体音響設定機能を果たすために必要な表示を行う画像であり、立体音響による音の制御範囲を示す。「画像図」から「変化後の画像図」への画像の変化は、音を聴く人の位置を示すアイコンを動かすことにより、音の制御範囲が変更されることに由来する。「参考図」に示すように、立体音響による音場空間がグラフとして表示され、当該グラフ中の左右の座標上にスピーカーが表示されている。また、当該グラフ上の丸印が音の位置等を、実線や破線が音の移動態様を示している。なお、各画像図中に示す音場空間は、配置されているスピーカーに対し、真上から視て模したものである。」
また、願書の「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
「桃色で着色した部分以外の実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。本物品全体の形態を示す一組の図面は、意匠登録を受けようとする部分が現れないため省略する。「画像図」~「変化後の画像図」、「A-A間部分拡大図」~「B-B間部分拡大図」、及び「C-D間部分拡大図」~「E-F間部分拡大図」に示す画像の変化を含め、意匠登録を受けようとするものである。なお、各図において、色彩は便宜上付したものにすぎず、本意匠は色彩を特定しない意匠である。」
これらの願書の記載によれば、本願物品は、「立体音響を設定する機能を有する電気計算機」であって、立体音響を設定することにより、立体音響による音の出方、タイミング、位置等の設定を行うことができるものである。
また、「参考図」に示された「音を聴く人の位置を示すアイコン」を動かすことによって音の制御範囲が変更され、その変化が「画像図」から「変化後の画像図」への画像の変化として表されている。
(2)「画像図」及び「変化後の画像図」に表された画像
上記(1)のとおり「本物品全体の形態を示す一組の図面は、意匠登録を受けようとする部分が現れないため省略する。」と説明されていること、及び「画像図」及び「変化後の画像図」に表された画像(以下「本願画像」という。)が立体音響を設定する操作の用に供されることから、本願画像は意匠法第2条第2項で定められた、本願物品と「一体として用いられる物品」に表示された画像であると認められる。すなわち、本願画像は、同法同条同項が規定する物品の操作の用に供される画像に該当するものであると認められる。
本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像内で「桃色で着色した部分以外の実線で表した部分」(以下「本願画像部分」という。)である。
(3)本願画像部分の用途及び機能
上記(1)の願書の記載によれば、本願画像部分は立体音響による音の制御範囲を示すものであって、本願画像部分の用途及び機能は、音を聴く人の位置を示すアイコンを動かすことによって音の制御範囲を変更することであると認められる。そして、このアイコンは、下記(4)及び(5)で認定する2つの直線状部分の下端付近にあり、アイコン及び2つの直線状部分(の位置、大きさ、範囲及び形態)は操作によって本願画像内で変化するものである。
(4)本願画像における本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像内で実線で表された本願画像部分は、本願画像(縦横比は約1:1.9)内の左上に位置しており(「参考図」における「音場空間」内の位置)、2つの直線状部分から成る略V字状の大きさ及び範囲については、略V字状の部分の最大縦幅と最大横幅が、「画像図」においては本願画像の縦幅の約1/12、横幅の約1/10を占めており、「変化後の画像図」においては本願画像の縦幅の約1/10、横幅の約1/9を占めている。
(5)本願画像部分の形態
ア 「画像図」における形態
2つの直線状部分の下端が近接し、全体として左に傾いた略V字状に配されており、左側の直線状部分(以下「左側直線部分」という。)が長く、右側の直線状部分(以下「右側直線部分」という。)が短く(左側の約1/2.4)表されている。左に傾いた左側直線部分が仮想水平線と成す角度は約25°であり、右に傾いた右側直線部分が仮想水平線と成す角度は約74°であって、左側直線部分と右側直線部分(以下「両直線部分」という。)の成す角度は。約81°である。
イ 「変化後の画像図」における形態
2つの直線状部分の上端の位置は「画像図」と同じであって、その下端が近接し、全体として右に傾いた略V字状に配されており、左側直線部分が短く、右側直線部分が長く(左側の約2.6倍)表されている。両直線部分は共に右に傾いており、略V字状の下端部の位置は、左側直線部分の上端の位置よりも外側にある。左側直線部分が仮想水平線と成す角度は約76°であり、右側直線部分が仮想水平線と成す角度は約24°であって、両直線部分の成す角度は。約52°である。
2 引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された、引用意匠について、以下のとおり認定する(別紙第2参照)。
(1)引用意匠について
引用意匠は、意匠登録第1509399号の意匠における画像部分であり、画像を利用する物品分野において、頂点が左右方向に移動することにより、頂点から放射状に伸びる曲線の向き及び長さが変化するものが本願出願前から見受けられることの一例として、引用されたものである。
引用意匠の意匠に係る物品(以下「引用物品」という。)は「携帯用情報端末機」であり、前記第3に掲げた公報の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「本物品は、通話、経路誘導(ナビゲーション)、カメラ、メール、ブラウジング、データの送受信、文章等のデータ作成に係る機能を主に有する携帯用情報端末機である。本願意匠は、拡張現実(Augmented Reality)技術を利用した経路誘導において、利用者の現在地を基にした目的の場所または施設(以下、目的地、と呼ぶ。)の方向を、利用者の移動に伴い刻々と告知するものである。本願意匠において、本願意匠の水平線側が利用者側、水平な一点差線(当審注:「一点鎖線」の誤記と認められる。)に接する本願意匠の頂点側が利用者から見た目的地側を表わしている。当該頂点が左右に移動することにより、利用者は、その移動に伴う目的地の方向を把握することができる(正面図および変化した状態を示す正面図1~同4参照)。」
(2)引用意匠の用途及び機能
上記「意匠に係る物品の説明」によれば、引用物品は経路誘導(ナビゲーション)などの機能を有しており、目的地の方向を移動中の利用者に刻々と告知するものであって、利用者は目的地の方向を把握するために引用物品を用いる。引用意匠は、このような経路誘導に関する用途及び機能を有している。また、上記「意匠に係る物品の説明」及び上記公報に掲載された図面によれば、引用物品の正面の周囲に余地部を残して配された縦長長方形状の画像(引用意匠)の下端寄りに水平線(「使用状態を示す参考図」で「表参道」の文字が表示された横長帯状部の上端線に相当する。)が利用者の現在地として設けられ、水平な一点鎖線(引用意匠を構成しない)を左右に移動する頂点(及び当該水平線の両端と頂点を結ぶ2つの弧状線)により目的地の方向が表されている(頂点は「使用状態を示す参考図」において200mの文字が記入された略風船形状の下端に相当する。)。
(3)引用意匠の形態
破線部も含めて、引用意匠(縦長長方形状の画像)の形態を認定する。
ア 全体は、縦横比が約1.6:1である縦長長方形状の画像であって、その画像内の下端寄りに水平な直線状部分(以下「水平直線部」という。)が配されて、その左端及び右端から略1/4円の2つの弧状線(画像の左右方向中心に向かって凸弧状)が左右対称状に上方に向けて表されて、画像の左右方向(水平方向)の中心位置で接し、左側弧状線と右側弧状線は、両者の接点(頂点)で途切れている。
イ 「変化した状態を示す正面図1」における形態
2つの弧状線の接点が、画像の左右方向(水平方向)を左から1:3に内分する位置にあり、左側弧状線が略片側放物線状に表され、右側弧状線が略倒片側放物線状に表されている。
ウ 「変化した状態を示す正面図2」における形態
2つの弧状線の接点が、画像の左右方向(水平方向)を左から3:1に内分する位置にあり、左側弧状線が略倒片側放物線状に表され、右側弧状線が略片側放物線状に表されている。
エ 「変化した状態を示す正面図3」における形態
2つの弧状線の接点が、画像の左右方向(水平方向)を左から1:7に内分する位置にあり、左側弧状線が幅狭の略片側放物線状に表され、右側弧状線が略倒片側放物線状に表されている。
オ 「変化した状態を示す正面図4」における形態
2つの弧状線の接点が、画像の左右方向(水平方向)を左から7:1に内分する位置にあり、左側弧状線が略倒片側放物線状に表され、右側弧状線が幅狭の略片側放物線状に表されている。
カ 変化の態様
頂点の高さ(水平直線部からの高さ)は、「正面図」「変化した状態を示す正面図1」「同2」「同3」及び「同4」において同じである。すなわち、頂点を通る仮想水平線、水平直線部及び引用意匠の両端から成る横長長方形状の区画の位置、大きさ及び範囲は、引用意匠において変化していない。
また、これらの図において、頂点の左右方向の位置は、引用意匠の左端と右端の間にあり、すなわち、2つの弧状線の左端又は右端の外側にはない。
さらに、「変化した状態を示す正面図1」と「同2」の接点の位置及び左右の放物線は左右対称状であり、「変化した状態を示す正面図3」と「同4」の接点の位置及び左右の放物線も左右対称状である。
3 本願意匠の創作非容易性について
請求人の主張を踏まえ、本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
まず、本願画像部分の用途及び機能が、音を聴く人の位置を示すアイコンを動かすことによって音の制御範囲を変更することであるところ、引用意匠の引用意匠の用途及び機能が経路誘導に関するものであるから、両者の用途及び機能は異なっており、用途及び機能が異なる引用意匠に基づいて当業者が本願画像部分を容易に創作できた手法(ありふれた手法)が明らかであるとはいい難い。特に、本願画像部分においては、音を聴く人の位置を示すアイコンを操作によって本願画像内で変化させることができるところ、そのような用途及び機能を有する画像の形態が本願の出願前に公然知られているかについては明らかではない。
次に、本願画像部分の大きさ及び範囲について、「画像図」から「変化後の画像図」にかけて最大縦幅が本願画像の縦幅の約1/12から約1/10に変化し、最大横幅が本願画像の約1/10から約1/9に変化する点は、音を聴く人の位置を示すアイコンの操作によって本願画像内に占める大きさ及び範囲が大きくなるものであるところ、引用意匠では、頂点が左右方向(水平方向)に移動するのみであって、頂点を通る仮想水平線、水平直線部及び引用意匠の両端から成る横長長方形状の区画の大きさ及び範囲は変化していないから、引用意匠のみをもって、音を聴く人の位置を示すアイコンの操作による本願画像部分の大きさ及び範囲の変化が、本願の出願前に公然知られているということはできない。
そして、本願画像部分の形態についても、左右の直線部分から成る、下に凸の略V字状の形態は引用意匠には表されておらず、引用意匠においては直線ではなく弧状線が表されており、下に凸ではなく、左右の弧状線が接する上に凸の形状が表されているにすぎない。さらに、本願画像部分では「変化後の画像図」において略V字状の下端部の位置が左側直線部分の上端の位置よりも外側にあるので略V字状が大きく右側に傾いているところ、引用意匠では頂点の左右方向の位置が2つの弧状線の左端又は右端の外側にはなく、総じて略山状である点においても、本願画像部分と引用意匠の形態は大きく異なっている。そうすると、当業者が、引用意匠の形態に基づいて、本願画像部分の形態を容易に創作することができたということはできない。
したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。
第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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