特許拒絶査定不服審判
2019-009805
空調システム
- 審判番号
- 2019-009805
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-132596外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月24日
- 審決日
- 2020年09月02日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
- 分類
- P18 .575-Z (F25B) / P18 .121-Z (F25B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-132596号「空調システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月22日出願公開、特開2019- 45129号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成30年7月12日(優先権主張平成29年9月5日)を出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年 9月 7日 :手続補正書
平成30年10月 1日 :拒絶理由通知
平成30年12月10日 :意見書、手続補正書
平成31年 4月19日 :拒絶査定
令和 1年 7月24日 :審判請求、手続補正書
令和 1年 9月17日 :上申書
第2 令和1年7月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年7月24日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により、補正される前の(すなわち、平成30年12月10日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1が下記の(2)に示す請求項1に補正された(下線は、補正箇所を示す。)。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「冷媒回路(RC)において冷凍サイクルを行う空調システム(100、100´、200)であって、
室外ユニット(10)と、
複数の室内ユニット(40)と、
前記室外ユニット及び前記室内ユニットを接続する冷媒連絡配管(Ga、La)と、
前記冷媒連絡配管上に配置され、冷媒の流れを妨げる制御弁(84、84a)と、
を備え、
前記冷媒連絡配管は、
対応する前記室内ユニットに連通する複数の室内側配管(82)と、
前記室外ユニット側において、対応する複数の前記室内側配管と連通する室外側配管(81)と、
2以上の前記室内側配管によって構成される室内側配管群(82)と、前記室外側配管と、を接続する分岐部(83、83a)と、
を含み、
前記室外側配管は、対応する前記室内側配管を経て前記室外ユニット側から前記室内ユニット側へ流れる冷媒、及び対応する前記室内側配管を経て前記室内ユニットから前記室外ユニットへ流れる冷媒、の双方に共通の冷媒流路を形成し、
前記冷媒連絡配管は、一の前記室外側配管と一の前記分岐部と前記室内側配管群とを有する第1部分(BP)を含み、
前記制御弁は、第1部分(BP)において前記室外側配管上のみに配置される、
空調システム(100、100´、200)。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「冷媒回路(RC)において冷凍サイクルを行う空調システム(100、100´、200)であって、
室外ユニット(10)と、
複数の室内ユニット(40)と、
前記室外ユニット及び前記室内ユニットを接続する冷媒連絡配管(Ga、La)と、
前記冷媒連絡配管上に配置され、冷媒の流れを妨げる制御弁(84、84a)と、を備え、
前記冷媒連絡配管は、
対応する前記室内ユニットに連通する複数の室内側配管(82)と、 前記室外ユニット側において、対応する複数の前記室内側配管と連通する室外側配管(81)と、
2以上の前記室内側配管によって構成される室内側配管群(82)と、前記室外側配管と、を接続する分岐部(83、83a)と、
を含み、
前記室外側配管は、対応する前記室内側配管を経て前記室外ユニット側から前記室内ユニット側へ流れる冷媒、及び対応する前記室内側配管を経て前記室内ユニットから前記室外ユニットへ流れる冷媒、の双方に共通の冷媒流路を形成し、
前記冷媒連絡配管は、一の前記室外側配管と一の前記分岐部と前記室内側配管群とを有する分岐部分(BP)を含み、
前記制御弁は、前記分岐部分(BP)であって、前記分岐部分(BP)の前記室外側配管及び前記室内側配管群の前記室内側配管のうち、前記室外側配管上のみに配置される、
空調システム(100、100´、200)。」
2 本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1部分(BP)」について、「分岐部分(BP)」であることを限定するとともに、「室外側配管上のみ」について、「分岐部分(BP)の前記室外側配管及び前記室内側配管群の前記室内側配管のうち、」であることを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか)について、以下、検討する。
3 独立特許要件の判断
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項、引用発明
ア 引用文献1:国際公開第2012/160598号
ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
「[0001] 本発明は、たとえばビル用マルチエアコン等に適用される空気調和装置に関するものである。
背景技術
[0002] 従来から、ビル用マルチエアコンなどの空気調和装置においては、たとえば建物外に配置した熱源機である室外機(室外ユニット)と建物内に配置した室内機(室内ユニット)との間を配管接続して冷媒回路を構成し、冷媒を循環させている。そして、冷媒の放熱、吸熱を利用して空気を加熱、冷却することで、空調対象空間の暖房又は冷房を行なっている。
[0003] このようなビル用マルチエアコンでは、複数の室内機を配管接続しており、停止している室内機、運転している室内機が混在していることも多い。また、室外機と室内機とを接続する配管がたとえば100mになることもある。配管が長くなるほど、多くの冷媒が空気調和装置内に充填されることになる。
[0004] このようなビル用マルチエアコンの室内機は、通常、人が居る室内空間(たとえば、オフィス空間や居室、店舗等)に配置されて利用される。ここで、たとえば何らかの原因によって、室内空間に配置された室内機から冷媒が漏れた場合、冷媒の種類によっては引火性、有毒性等を有している。このため、たとえば人体への影響及び安全性の観点から大きな問題となる。また、たとえば人体に有害ではない冷媒であったとしても、冷媒漏れによって、室内空間での酸素濃度が低下し、人体に悪影響を及ぼすことも想定される。
[0005] そこで、室外機に冷媒漏洩センサーと配管遮断弁とを設け、冷媒漏れが発生すると、室外機から冷媒が流出しないようにして、室内に漏洩する冷媒量を抑制するシステムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。」
「[0007] ところで、近年、地球温暖化の観点から、地球温暖化係数が高いHFC系冷媒(たとえば、R410Aや、R404A、R407C、R134a等)の使用を制限する動きがある。このため、地球温暖化係数が小さい冷媒(たとえば、HFO1234yf、R32、HC(炭化水素)及び二酸化炭素等)を用いた空気調和装置が提案されている。また、可燃性冷媒(たとえば、HFO1234yf、HFO1234ze、R32、R32とHFO1234yfと含む混合冷媒、前述した冷媒が少なくとも一成分含む混合冷媒及びHC等)を、ビル用マルチエアコンに、冷媒として用いる場合もある。このような冷媒においても、ビル用マルチエアコンに利用する際には多量の冷媒を必要とする。そこで、これらの冷媒が室内空間に漏れたときの対策を講じておく必要がある。
[0008] たとえば特許文献1に記載されている技術は、室外機に冷媒漏洩センサーと配管遮断弁を設けて、室内に漏洩する可燃性冷媒量を抑制する空気調和装置に関するものである。しかし、ビル用マルチエアコンのように室内機が多く接続され、建物内において配管長が長い空気調和装置では、室内機とその室内機に接続された配管等における冷媒漏洩量も考慮しなければならない。たとえば可燃性を有する可燃性冷媒が漏洩した際の装置の安全性を確保するためには、建物内側に配置した機器、配管等に関しても何らかの安全装置を具備しておく必要がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、安全性を確保しつつ、環境に与える負荷を低減することを可能とした空気調和装置を提供するものである。」
「[0021][室外機1]
室外機1には、圧縮機10と、四方弁等の冷媒流路切替装置11と、熱源側熱交換器12と、アキュムレーター19とが冷媒配管17で直列に接続されて搭載されている。」
「[0044] 濃度検出装置39が所定濃度を検出して5Vの電圧を信号として出力すると、遮断弁制御装置40のスイッチがOFF状態になる。第1遮断装置42、第2遮断装置43、第3遮断装置37、第4遮断装置38は、前述したように、非通電状態で遮断弁を閉じ、通電状態で開く。したがって、遮断弁制御装置40のスイッチがOFFすると、第1遮断装置42、第2遮断装置43、第3遮断装置37、第4遮断装置38へ給電が無くなるため、各遮断装置の遮断弁は閉じることとなる。」
「[0048] 次に各遮断装置について説明する。第1遮断装置42、第2遮断装置43は主管4に設置されているため、遮断装置内の弁口径を大きくする必要がある(CV値を大きくする必要がある)。さらに、第3遮断装置37、第4遮断装置38は各分岐装置16の枝管5側に設置されており、1台の室内機2の容量が大きい場合(たとえば4HP(馬力)以上)、遮断装置内の弁口径を大きくする必要がある(CV値を大きくする必要がある)。
[0049] そこで、本実施の形態では、第1遮断装置42、第2遮断装置43、第3遮断装置37、第4遮断装置38について、CV値の大きさに応じて、直動タイプ遮断装置とパイロット式遮断装置とを使い分けるようにする。そして、弁体をシールするためのシール材は、ゴム、PTFE等を用いる。たとえば、金属シールは耐久性に優れているが、遮断装置は通常の弁のように、頻繁に開閉するものではなく、緊急時にすぐに遮断するための弁である。このため、弁体とそれをシールする材料とは馴染みやすいものにする必要があることから、金属のシール材を用いずに、ゴム、PTFE等を用いる。
[0050] 第1遮断装置42は液冷媒側に設置されているため、CV値は小さくてよい。室外機1における容量が10HP程度では、CV=0.7程度(0.3以上)であり、小さくて安価な直動タイプの第1遮断装置42を使用することができる。同様に、第3遮断装置37は液冷媒側に設置されているため、容量が10HPより小さい場合ではCV=0.7程度(0.05以上)であり、小さくて安価な直動タイプの第3遮断装置37が使用できる。一方、第2遮断装置43はガス冷媒側に設置されているため、CV値は液冷媒側よりも大きくする必要がある。たとえば、容量が10HP程度ではCV=10程度(4.7以上)であり、パイロット式の遮断装置を使用する必要がある。同様に、第4遮断装置38はガス冷媒側に設置されているため、容量が10HP程度ではCV=10程度(0.75以上)であり、パイロット式の遮断装置又は直動タイプの遮断装置を1台~複数台使用する必要がある。
[0051] また、緊急時に素早く遮断できるように、第1遮断装置42、第2遮断装置43、第3遮断装置37、第4遮断装置38の最低作動圧力差は0[kPa]程度と十分に小さい値でなければならない。
[0052] ここで、多くの冷媒が空間に漏れると、燃焼や酸欠等の危険があることから、冷媒の種類毎に、安全に使用できる漏洩冷媒量の最大濃度である限界濃度というものが定義されている。限界濃度は、たとえば、R410Aでは0.44[kg/m3 ]、R32では0.061[kg/m3 ]、HFO1234yfでは0.0578[kg/m3 ]、プロパンは0.008[kg/m3 ]等の値をとる。
[0053] たとえば、空間内に冷媒が漏れたときに、冷媒配管に設置された遮断装置において遮断弁を閉じて、冷媒漏洩の拡大を防止することを考える。このとき、冷媒が限界濃度までに至ってから遮断等をしたのでは間に合わないので、空間内の冷媒の濃度が限界濃度の95%に達した時に、遮断弁を閉じるものとする。したがって、遮断弁を閉じた後に、冷媒が限界濃度に達するまでに、更に漏れてもよい量は5%ということになる。」
「[0056] 図7は冷媒量と発火のリスクとの関係を示す図である。本実施の形態1の設置状態、用途等を考慮して、業務用空調機の発火リスクアセスメントを実施したところ、冷媒量と発火のリスクは図7に示す関係となった。図7において、横軸は冷媒量、縦軸はリスクを表している。ここで、リスクとは発火が発生する確率を表しており、一般的に1.0×10-7未満であれば社会で受け入れられるリスクであると言われている(交通事故での死亡リスクは1.0×10-5程度と言われている)。ほぼ発火の発生が無い領域である1.0×10-9未満のリスクを目指した場合、図7に示すように、冷媒量は26kg未満にしなければならない。さらに、現場で、目標充填量に対し、20%程度、過充填される可能性を考慮すると、充填目標冷媒量は、室内空間容量が25[m3 ]の場合に、約20[kg]となる。したがって、たとえば業務用の直膨の空気調和装置における冷媒の充填量の上限値は、単位容積当りの空間で、20[kg]を25[m3 ]で除した値である、0.800[kg/m3 ]程度となる。」
「[0070] また、室外機容量が18HP、n=10、D1=13.88[mm](外径15.88、肉厚1.0)[mm]、L1=50[m]、D2=7.92(外径9.52、肉厚0.8)[mm]、L2=15.0[m]、V1=25.0[m3]の場合、式(1-1)右辺~(1-3)右辺より、限界の冷媒充填量は20.0[kg]となる。主管4と室外機1の合計冷媒量が式(1-1)の左辺より約18.93[kg]<20.0[kg]で、枝管4と室内機2の合計冷媒量が式(1-2)の左辺より約12.3[kg]<20.0[kg]となる。空気調和装置の合計冷媒量は、式(1-3)の左辺合計より31.23[kg]>20.0[kg]となるため、第1遮断装置42、および第2遮断装置43、もしくは第3遮断装置37、および第4遮断装置38のいずれかを設置する必要がある。そして、冷媒漏洩量に対する安全性をより高めるために、上記例に第1遮断装置42、第2遮断装置43、第3遮断装置37、第4遮断装置38の全てを設置してもよい。」
「[0140] 1 室外機、2 室内機、2a 室内機、2b 室内機、2c 室内機、2d 室内機、3 中継装置(分岐装置)、4 4a、4b 主管、5 枝管、6 室外空間、7 室内空間、8 非空調空間、9 建物、10 圧縮機、11 冷媒流路切替装置、12 熱源側熱交換器、13 第1逆止弁、13a 第1逆止弁、13b 第1逆止弁、13c 第1逆止弁、13d 第1逆止弁、14 気液分離器、15 第2絞り装置、16 分岐装置、17 冷媒配管、19 アキュムレーター、21 第2逆止弁、21a 第2逆止弁、21b 第2逆止弁、21c 第2逆止弁、21d 第2逆止弁、22 第3逆止弁、22a 第3逆止弁、22b 第3逆止弁、22c 第3逆止弁、22d 第3逆止弁、23 第1開閉装置、23a第1開閉装置、23b 第1開閉装置、23c 第1開閉装置、23c 第1開閉装置、23d 第1開閉装置、24 第2開閉装置、24a 第2開閉装置、24b 第2開閉装置、24c第2開閉装置、24d 第2開閉装置、25 第1絞り装置、25a 第1絞り装置、25b 第1絞り装置、25c 第1絞り装置、25d 第1絞り装置、26 利用側熱交換器、26a 利用側熱交換器、26b 利用側熱交換器、26c 利用側熱交換器、26d 利用側熱交換器、27 第3絞り装置、31 第1温度センサー、31a 第1温度センサー、31b 第1温度センサー、32 第2温度センサー、32a 第2温度センサー、32b 第2温度センサー、32c 第2温度センサー、32d 第2温度センサー、33 第1圧力センサー、34 第2圧力センサー、37 第3遮断装置、37a 第3遮断装置、37b 第3遮断装置、37c 第3遮断装置、37d 第3遮断装置、38 第4遮断装置、38a 第4遮断装置、38b 第4遮断装置、38c 第4遮断装置、38d 第4遮断装置、39 濃度検出装置、40 遮断弁制御装置、 41 濃度算出装置、42 第1遮断装置、43 第2遮断装置、100 空気調和装置、200 空気調和装置。」
「[請求項1] 圧縮機及び熱源側熱交換器を有する室外機と、
負荷側絞り装置及び負荷側熱交換器を有して空調空間の空気調和を行う複数の室内機と、
前記室外機とは複数の主管で配管接続し、各室内機とは複数の枝管で配管接続して、前記主管側からの冷媒を分岐して前記枝管に流し、前記枝管側からの冷媒を合流して前記主管に流す分岐装置と、
前記空調空間と異なる空間であり前記冷媒が漏れると前記空調空間に前記冷媒が拡散する可能性がある位置関係にある非空調空間に設置した冷媒濃度検出装置と、
前記主管側において前記室外機と前記分岐装置との間の流路を遮断するおよび/または前記枝管側において前記室内機と前記分岐装置との間の流路を遮断する遮断装置と、
前記冷媒濃度検出装置の検出に基づいて前記冷媒が漏洩したものと判断すると、前記遮断装置に前記冷媒の流路を遮断させる制御を行う制御装置と を備えることを特徴とする空気調和装置。」
「[請求項4] 前記分岐装置を前記非空調空間に設置し、
前記主管内の冷媒量を主管封入冷媒量W1[kg]、前記枝管内の冷媒量を枝管封入冷媒量W2[kg]、前記室外機内の冷媒量をM1[kg]、前記室内機内の冷媒量をM2[kg]としたときに、
前記主管封入冷媒量W1と前記室外機内の冷媒量M1との和を前記空調空間の容積V[m3 ]で除した値(W1+M1)/Vと、前記枝管封入冷媒量W2と前記室内機内の冷媒量M2との和を前記空調空間の容積V[m3 ]で除した値(W2+M2)/Vとが、ともに所定の冷媒充填量限界値B[kg/m3 ]以下であり、かつ、前記(W1+M1)/Vと前記(W2+M2)/Vの和が前記冷媒充填量限界値B[kg/m3 ]以上であって、前記主管側又は前記枝管側のいずれかに前記遮断装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。」
「
」
イ) 引用文献1に記載された発明
上記[0044]段落によれば、遮断装置は、遮断弁を非通電状態で閉じ、通電状態で開く、ものであることがわかる。
そうすると、上記記載事項及び認定した事項を総合し、請求項1を引用する請求項4に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「圧縮機と、四方弁等の冷媒流路切替装置と、熱源側熱交換器と、アキュムレーターを有する室外機と、
負荷側絞り装置及び負荷側熱交換器を有して空調空間の空気調和を行う複数の室内機と、
前記室外機とは複数の主管で配管接続し、各室内機とは複数の枝管で配管接続して、前記主管側からの冷媒を分岐して前記枝管に流し、前記枝管側からの冷媒を合流して前記主管に流す分岐装置と、
前記空調空間と異なる空間であり前記冷媒が漏れると前記空調空間に前記冷媒が拡散する可能性がある位置関係にある非空調空間に設置した冷媒濃度検出装置と、
前記主管側において前記室外機と前記分岐装置との間の流路を遮断するおよび/または前記枝管側において前記室内機と前記分岐装置との間の流路を遮断する遮断弁を非通電状態で閉じ、通電状態で開く遮断装置と、
前記冷媒濃度検出装置の検出に基づいて前記冷媒が漏洩したものと判断すると、前記遮断装置に前記冷媒の流路を遮断させる制御を行う制御装置と
を備え、
前記分岐装置を前記非空調空間に設置し、
前記主管側又は前記枝管側のいずれかに前記遮断装置を備えた、
空気調和装置。」
(3) 対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
引用発明の「分岐装置」、「主管」、「枝管」、及び「遮断装置」は、その機能や技術上の意義を考慮すると、それぞれ、本件補正発明の「分岐部(83、83a)」、「室外側配管(81)」、「室内側配管(82)」、及び「制御弁(84、84a)」に相当する。
引用発明の「室外機」と「空調空間の空気調和を行う複数の室内機」と「冷媒」からなる「空気調和装置」は、冷媒回路において、冷凍サイクルをなすものであることは明らかであり、空調システムを構成しているので、本件補正発明の「冷媒回路(RC)において冷凍サイクルを行う空調システム(100、100´、200)」に相当する。
引用発明の「圧縮機と、四方弁等の冷媒流路切替装置と、熱源側熱交換器と、アキュムレーターを有する室外機」は、図2の各装置の配置からみて、ユニットをなしており、本件補正発明の「室外ユニット(10)」に相当する。
引用発明の「負荷側絞り装置及び負荷側熱交換器を有して空調空間の空気調和を行う複数の室内機」は、図2の各装置の配置からみて、本件補正発明の「複数の室内ユニット(40)」に相当する。
引用発明の「前記室外機とは複数の主管で配管接続し、各室内機とは複数の枝管で配管接続して」いる態様は、室外機と室内機とが、主管と枝管で接続して冷媒を連絡している配管といえるから、本件補正発明の「前記室外ユニット及び前記室内ユニットを接続する冷媒連絡配管(Ga、La)」を備えた態様に相当する。そうすると、引用発明は、本件補正発明の「対応する前記室内ユニットに連通する複数の室内側配管(82)と、前記室外ユニット側において、対応する複数の前記室内側配管と連通する室外側配管(81)と」を含むものに相当する。
引用発明の「前記主管側からの冷媒を分岐して前記枝管に流し、前記枝管側からの冷媒を合流して前記主管に流す分岐装置」は、分岐した枝管は室内側の複数の配管群をなすことから、本件補正発明の「2以上の前記室内側配管によって構成される室内側配管群(82)と、前記室外側配管と、を接続する分岐部(83、83a)」に相当する。
引用発明の「前記主管側において前記室外機と前記分岐装置との間の流路を遮断するおよび/または前記枝管側において前記室内機と前記分岐装置との間の流路を遮断する遮断弁を非通電状態で閉じ、通電状態で開く遮断装置」は、主管上に設けられた遮断弁は冷媒の流れを妨げるので、本件補正発明の「前記冷媒連絡配管上に配置され、冷媒の流れを妨げる制御弁(84、84a)」に相当する。
引用発明の「前記室外機とは複数の主管で配管接続し、各室内機とは複数の枝管で配管接続して、前記主管側からの冷媒を分岐して前記枝管に流し、前記枝管側からの冷媒を合流して前記主管に流す」ことは、「室外機」が「四方弁等の冷媒流路切替装置」を有していて、冷暖房の切り替えにより冷媒の流れが逆に流れて、室外機から室内機へ、室内機から室外機へ流れる冷媒双方に共通の冷媒流路を形成することから、本件補正発明の「前記室外側配管は、対応する前記室内側配管を経て前記室外ユニット側から前記室内ユニット側へ流れる冷媒、及び対応する前記室内側配管を経て前記室内ユニットから前記室外ユニットへ流れる冷媒、の双方に共通の冷媒流路を形成し」ていることに相当する。
引用発明の「前記室外機とは複数の主管で配管接続し、各室内機とは複数の枝管で配管接続して、前記主管側からの冷媒を分岐して前記枝管に流し、前記枝管側からの冷媒を合流して前記主管に流す分岐装置」を備えた態様と、本件補正発明の「前記冷媒連絡配管は、一の前記室外側配管と一の前記分岐部と前記室内側配管群とを有する分岐部分(BP)を含」む態様とは、「前記冷媒連絡配管は、一の前記室外側配管と前記分岐部と前記室内側配管群とを有する分岐部分(BP)を含」む態様の限りで一致する。
そうすると、引用発明の「前記主管側又は前記枝管側のいずれかに前記遮断装置を備えた」態様は、「前記主管側」「に前記遮断装置を備えた」態様を選択したものは、遮断装置が室外側の配管上のみに配置されているので、本件補正発明の「前記制御弁は、前記分岐部分(BP)であって、前記分岐部分(BP)の前記室外側配管及び前記室内側配管群の前記室内側配管のうち、前記室外側配管上のみに配置される」ことに相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の構成において一致する。
「冷媒回路(RC)において冷凍サイクルを行う空調システム(100、100´、200)であって、
室外ユニット(10)と、
複数の室内ユニット(40)と、
前記室外ユニット及び前記室内ユニットを接続する冷媒連絡配管(Ga、La)と、
前記冷媒連絡配管上に配置され、冷媒の流れを妨げる制御弁(84、84a)と、
を備え、
前記冷媒連絡配管は、
対応する前記室内ユニットに連通する複数の室内側配管(82)と、
前記室外ユニット側において、対応する複数の前記室内側配管と連通する室外側配管(81)と、
2以上の前記室内側配管によって構成される室内側配管群(82)と、前記室外側配管と、を接続する分岐部(83、83a)と、
を含み、
前記室外側配管は、対応する前記室内側配管を経て前記室外ユニット側から前記室内ユニット側へ流れる冷媒、及び対応する前記室内側配管を経て前記室内ユニットから前記室外ユニットへ流れる冷媒、の双方に共通の冷媒流路を形成し、
前記冷媒連絡配管は、一の前記室外側配管と前記分岐部と前記室内側配管群とを有する分岐部分(BP)を含み、
前記制御弁は、前記分岐部分(BP)であって、前記分岐部分(BP)の前記室外側配管及び前記室内側配管群の前記室内側配管のうち、前記室外側配管上のみに配置される、
空調システム(100、100´、200)。」
そして、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点>
分岐部分(BP)について、本件補正発明は、「一の前記分岐部」を有するとされているのに対して、引用発明は、分岐装置(分岐部相当)の個数について、特段そのような限定をしていない点。
イ 判断
ア) 相違点について
分岐部分(BP)において、分岐部をいくつ設けるかは、例えば、室内機が2台であれば、分岐部は一つ、室内機が3台であれば、分岐部は二つというように、配置する室内機の台数に応じて定まるものであり、室内機を何台設けるかということは、当業者が適宜なし得る設計的事項であると認められる。
そうすると、引用発明において、「前記室外機とは複数の主管で配管接続し、各室内機とは複数の枝管で配管接続して、前記主管側からの冷媒を分岐して前記枝管に流し、前記枝管側からの冷媒を合流して前記主管に流す分岐装置」を備えた態様において、設ける室内機の台数を2台として、分岐装置を一つとすることで、上記相違点に係る本件補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ) 効果について
本件補正発明の奏する効果は、引用発明から予測し得る程度のものであり、当業者の予測を超える格別のものとは認められない。
ウ) 請求人の主張について
請求人は、本願発明が「冷媒漏洩時に室外ユニット側から室内ユニット側への冷媒の流れを抑制可能としつつ、分岐部分の室外側配管及び室内側配管の全てに制御弁を設ける場合に比べて制御弁の個数を抑制し、空調システムの材料費や作業費を低減できる、という顕著な効果を奏します。」(令和1年7月24日の審判請求書「(d)本願発明と引用発明との対比(d1)本願発明1について」)と主張している。
しかしながら、上述のとおり、引用発明の「前記主管側又は前記枝管側のいずれかに前記遮断装置を備えた」態様において、「前記主管側」「に前記遮断装置を備えた」態様を選択したものは、遮断装置が室外側の配管上のみに配置されているので、本件補正発明の「前記制御弁は、前記分岐部分(BP)であって、前記分岐部分(BP)の前記室外側配管及び前記室内側配管群の前記室内側配管のうち、前記室外側配管上のみに配置される」ことに相当し、遮断装置を設ける台数を考慮すると、制御弁の個数を抑制し、空調システムの材料費や作業費を低減できることは、当業者が予測できたことである。
よって、上記請求人の主張は採用できない。
なお、請求人は、上申書(令和1年9月17日)で、特許請求の範囲について、補正案を提示して意見を述べているが、当該事項を検討しても、上記判断に影響するものではないので、補正の機会を与える必要がないものと認めた。
(4) 結論
よって、本件補正発明は、引用発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~12に係る発明は、平成30年12月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(1)に記載のとおりのものと認める。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の一部は、以下のとおりである。
(進歩性)本願発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:国際公開第2012/160598号
3 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記「第2の[理由] 3 (2) 引用文献の記載事項、引用発明」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、「第1部分(BP)」について、「分岐部分(BP)」であることの限定、及び「室外側配管上のみ」について、「分岐部分(BP)の前記室外側配管及び前記室内側配管群の前記室内側配管のうち、」であることの限定を省いたものであり、本願発明と引用発明とは、上記相違点で相違する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本件補正発明についての前記「第2の[理由] 3 (3) 対比・判断」における検討を踏まえると、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-009805