意匠拒絶査定不服審判
2019-009152
カーペット
- 審判番号
- 2019-009152
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2018-016621外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月08日
- 審決日
- 2019年12月10日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- D18 .113-WY (C1-3)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2018- 16621「カーペット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
平成30年7月30日 意匠登録出願
平成30年12月26日付け 拒絶理由の通知
平成31年2月13日 意見書の提出
平成31年4月12日付け 拒絶査定
令和1年7月8日 審判請求書の提出
第2 本願意匠
本願の意匠は、意匠に係る物品が「カーペット」であり、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付された図面代用写真に現されたとおりのものである。(別紙第1参照)
第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由として引用した意匠は、以下のとおりのものである。
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2017年12月15日に受け入れた「TOLI FLOORING CATALOG 東リ 総合カタログ 2017-2018 床材・カーペット・立面仕上げ材」第63頁上部中央列、GA10311Tの写真及びその上部の拡大写真所載の「GA100T スピアライン」として掲載されたタイルカーペットの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC29019219号)(別紙第2の当審で示した赤色矢印のア及びイ参照)
第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「カーペット」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「タイルカーペット」であるところ、共に歩きやすさや装飾などのために屋内の床に設置される点で本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品の用途は共通する。
また、引用意匠がタイルカーペットとして隙間なく貼り合わされる機能を有する点で両意匠の意匠に係る物品の機能は一部相違するものの、共に表面が立毛したパイル糸によって弾力性や衝撃吸収性を確保している点で主な機能が一致しており、これらを総合すると、両意匠の意匠に係る物品の機能はほぼ共通する。
2 形態の対比
両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。なお、本願意匠の正面の織りの向きに合わせるため、引用意匠の向きを右に90度回転させる。
(1)共通点
両意匠は、主に以下の点が共通する。
A 全体が、厚みの薄い略矩形状である点
B 正面から見て、パイル糸が横方向に密に並んだ列(以下「横列」という。)が形成されて、その横列が縦方向に密に並び、濃いパイル糸から成る横列と薄いパイル糸から成る横列が交互に表されている点
C パイル糸は、略ループ状に立毛している点
(2)相違点
両意匠は、主に以下の点が相違する。
a 正面の縦横比について、本願意匠は約1:4であるのに対し、引用意匠は約1:1である点。
b パイルの色彩について、本願意匠は、明度の低い茶色、明度の高い灰色により構成されているのに対し、引用意匠は、明度の高い灰色、明度の低い灰色により構成されている点。
c 正面の全体の明度について、本願意匠は、明度の低い茶色のパイルが、明度の高い灰色のパイルより大きな割合を占めているため、全体として明度が低いのに対して、引用意匠は、明度の高い灰色のパイルが、明度の低いパイルより大きな割合を占めているから、全体として明度が高い点。
d 正面の全体の模様のうち、任意の一本の横列において、本願意匠は、大きい目から成る横列の部分と小さい目から成る横列の部分があることから、当該横列に太さ細さの変化があり、さらに、この変化はほぼ全ての横列で認められ、全体観察した場合には、横列は分断されて認識され、正面全体では「まだら模様」のように認められる。一方、引用意匠の横列は横方向に一定の長さを保つものが多く、全体観察した場合には正面全体では横方向の「筋状模様」と認められる。
e ループの立毛の態様について、引用意匠は、大きさがおおよそ大小の2種に分かれ、大きいループほどループの高さが高めでかつ明度も高い灰色で、小さいループほどループの高さが低めでかつ明度も低い灰色であるのに対し(なお、引用意匠については、前記2の引用意匠の「拡大写真所載の『GA100T スピアライン』として掲載されたタイルカーペットの意匠」から認定した。)、本願意匠のループの高さは不明であり、ループの高低とその色彩の関係は不明である点。
第5 類否判断
1 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、用途が共通し、機能もほぼ共通するから、類似する。
2 両意匠の類否判断について
カーペット及びタイルカーペットの物品分野における主な需要者は、建築物の内装施工時の施主及び内装業者のほか、施工後の利用者、すなわち、歩行したり椅子などの什器に座ったりする者である。
したがって、需要者は、施工前にあっては、パイルの色彩や明度、パイルの目の並び方や目の高低、床に設置して全体として俯瞰したときの装飾の具体的な態様、施工後にあっては、利用者が立ったり座ったりする高さからの足元や俯瞰したときの装飾の具体的な態様、に最も注意を払うといえ、それが創作上の本質的な特徴となるから、立毛した大小様々なループの具体的な態様のほか、ループの立毛による平面視の模様及び色彩の態様、について評価し、各態様を総合して意匠全体として形態を評価することとする。
3 形態の共通点の評価
全体の構成の共通点として挙げたAないしCについて、
Aの、全体が厚みの薄い略矩形状のもの、そして、Cの、パイル糸が略ループ状に立毛しているものは、例を挙げるまでもなく、従来から見受けられるから、これらの共通点は、格別、需要者の注意をひくものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
Bの、正面から見て、横列が縦方向に密に並び、濃いパイル糸から成る横列と薄いパイル糸から成る横列が交互に表されているものは、両意匠の他にも従来から見られるもの(参考意匠)であり、両意匠のみの特徴ということはできないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
参考意匠(別紙第3参照)
特許庁が平成28年(2016年)9月20日に発行した意匠公報記載
意匠登録第1559186号(意匠に係る物品「タイルカーペット」)
そうすると、共通点AないしCは、いずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいものと認められる。
4 形態の相違点の評価
aの正面の縦横比の相違について、本願意匠のように横長長方形状のものも引用意匠のように正方形状のものも、例を挙げるまでもなく、従来から見受けられるものであって、需要者の注意をひくものではないから、この相違が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
bのパイルの色彩の相違について、色彩の数も、色相の相違も、この種物品の分野においては、例を挙げるまでもなく、従来より、装飾という観点から敷物に単色または様々な色のパイル糸を用い、そして、購入時などに選択する観点にするものであって、さらに、茶色も灰色も格別特徴のある色ではないから、需要者の注意をひくものではなく、この相違が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
cの正面の全体の明度の相違についても、正面の全体の明度を変えることは、この種物品の分野において、従来からなされていることであるから、需要者の注意をひくものではなく、この相違が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
しかし、dの正面の全体の模様の相違について、需要者は敷物の装飾の具体的な態様に最も注意を払うことを考えると、横列に太さ細さの変化があってこの変化がほぼ全ての横列で認められ、全体観察すると横列は分断されて認識され、正面全体では「まだら模様」のように認められるものと、横列が横方向に一定の長さを保つものが多く、全体観察すると正面全体では横方向の「筋状模様」のように認められるものとのあいだには、大きな相違を明確に視認することができることから、この相違は明瞭で需要者の注意を強くひくものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は非常に大きい。
さらに、eのループの立毛の態様の相違についても、ループの高低差やループの立毛の配置の態様によって様々な立体的様相が表れることを鑑みれば、引用意匠は、大きさがおおよそ大小の2種に分かれ、大きいループほどループの高さが高めでかつ明度も高い灰色で、小さいループほどループの高さが低めでかつ明度も低い灰色である点に、創作上の特徴が見受けられるのに対して、本願意匠は、ループの高さは不明であってループの高低とその色彩の関係も不明であるところ、引用意匠のループの立毛の態様に需要者は注意を払うというべきであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
そうすると、相違点aないしcは、類否判断に与える影響は小さいものの、相違点d及びeが、意匠の類否判断に与える影響は大きく、なかでもdが与える影響は非常に大きいものである。
5 類否判断
以上のとおり、両意匠の意匠に係る物品は類似しているが、両意匠の形態については、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点d及びeが意匠の類否判断に与える影響は大きいことを勘案すると、相違点が意匠の類否判断に与える影響は大きく、相違点から生じる視覚的効果は、共通点のそれを凌駕して、類否判断を支配しているものであるから、両意匠は類似しないものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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