特許拒絶査定不服審判
2019-009112
ゲームプログラム、方法、および情報処理装置
- 審判番号
- 2019-009112
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-090174外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年07月05日
- 審決日
- 2020年05月22日
- 公報発行日
- 2020年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .55 -Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法49条1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第49条第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018- 90174「ゲームプログラム,方法,および情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月14日出願公開,特開2019-195418〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成30年5月8日を出願日とする特許出願であって,平成30年9月5日に手続補正書が提出され,同年10月10日付けで拒絶理由が通知されたが,その指定期間内に出願人からは何らの応答もなかったため,平成31年4月22日付けで拒絶査定がなされ,同査定の謄本は同年5月7日に出願人に送達されたところ,これに対して,令和1年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は,平成30年9月5日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであり,当該特許請求の範囲の請求項1ないし12の記載は,つぎのとおりのものである。
「 【請求項1】
ゲームプログラムであって,
前記ゲームプログラムは,プロセッサと,メモリと,ユーザの入力操作を受け付ける操作受付部と,を備えるコンピュータにおいて実行されるものであり,
前記ゲームプログラムは,前記プロセッサに,
人間のキャラクタ,および,前記人間とは異なる外観のモンスターキャラクタ,のうち前記ユーザが所持するキャラクタを示す所持キャラクタ情報を前記メモリに記憶させる第1のステップと,
人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを含む複数のゲーム媒体のうちいずれかを確率的に選択し,選択された人間のキャラクタまたはモンスターキャラクタを前記ユーザに付与して前記メモリの前記所持キャラクタ情報を更新する第2のステップと,
所定のゲーム空間を構築する前に,前記ユーザが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で前記ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め操作可能キャラクタとして指定する第1の入力操作を受け付ける第3のステップと,
前記所定のゲーム空間を構築して前記指定された操作可能キャラクタを配置し,前記操作可能キャラクタとして指定された前記人間のキャラクタまたは前記モンスターキャラクタのうちいずれか片方を,戦闘に参加させるキャラクタとして前記ユーザの第2の入力操作により切り替える第4のステップと,
前記操作可能キャラクタを動作させるための第3の入力操作を受け付けて,戦闘に参加する前記操作可能キャラクタに,前記ユーザの操作に応じたアクションを行わせる第5のステップと,を実行させる,ゲームプログラム。
【請求項2】
前記ゲームプログラムに基づくゲームは,前記所定のゲーム空間において前記操作可能キャラクタの移動からシームレスに戦闘が開始されるものであり,
前記第4のステップにおいて,前記操作可能キャラクタとしてモンスターキャラクタが配置されず人間のキャラクタが配置されている状態で,前記第2の入力操作として前記モンスターキャラクタを指定する操作を受け付けることに基づいて,前記指定されたモンスターキャラクタを,戦闘に参加させるために前記所定のゲーム空間に配置し,
前記第5のステップにおいて,前記操作可能キャラクタとしてモンスターキャラクタが配置されず人間のキャラクタが配置されている状態で,前記第3の入力操作に応答して前記人間のキャラクタに戦闘のためのアクション動作をさせる一方,前記第2の入力操作に基づくモンスターキャラクタの指定に応じて前記モンスターキャラクタが配置されている状態で,前記第3の入力操作に応答して前記人間のキャラクタではなく前記モンスターキャラクタに戦闘のためのアクション動作をさせる,請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記第4のステップにおいて,前記ゲーム空間において前記操作可能キャラクタとしてモンスターキャラクタが配置されず人間のキャラクタが配置されている状態で,前記第2の入力操作として前記モンスターキャラクタを指定する操作を受け付けた場合に限り,前記指定されたモンスターキャラクタを前記所定のゲーム空間に配置するものであり,前記人間のキャラクタを前記第3の入力操作により前記所定のゲーム空間で前記ユーザの操作に応じたアクションを行わせることが可能な状態を経ることなく前記モンスターキャラクタを前記所定のゲーム空間において前記第3の入力操作に基づき戦闘可能に配置しない,
請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記第3のステップにおいて,前記操作可能キャラクタとして,複数の人間のキャラクタの指定を前記第2入力操作により受け付け,
前記第5のステップにおいて,前記複数の人間のキャラクタのうち1体の人間のキャラクタを選ぶ第4の入力操作を受け付けることにより,当該第4の入力操作で選ばれた1体の人間のキャラクタに前記第3の入力操作に応答して前記アクションを行わせる一方,前記1体の人間のキャラクタ以外のその他の前記人間のキャラクタについてオート操作によりアクションを行わせる,請求項1から3のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記操作受付部は,タッチスクリーンであり,
前記第5のステップにおいて,前記タッチスクリーンに対する前記ユーザのタッチ位置がタッチを継続させたまま第1の位置から第2の位置へ移動させる第5の入力操作に基づいて,前記操作キャラクタに攻撃アクションを行わせる,請求項1から4のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記第5のステップにおいて,前記タッチスクリーンに対するタップ操作を受け付けることにより,前記操作キャラクタに攻撃アクションを行わせ,
前記タップ操作に基づく攻撃アクションは,敵キャラクタに対するホーミング性能が,前記第5の入力操作に基づく攻撃アクションよりも高い,請求項5に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記メモリに記憶される前記所持キャラクタ情報は,前記ユーザが所持するキャラクタが行うことができるアクションの内容の情報を含み,
前記ユーザが所持するキャラクタについて,前記第5のステップで前記操作キャラクタに行わせるアクションの内容を編集するための編集画面を表示する第6のステップと,
前記編集画面において,前記アクションの内容を編集するための第6の入力操作を受け付けて,編集結果に基づき前記メモリの前記所持キャラクタ情報を更新する第7のステップとをさらに実行させる,請求項1から6のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項8】
前記第4のステップにおいて,前記モンスターキャラクタが前記所定のゲーム空間に配置されている状態で,前記第2の入力操作を受け付けることにより,前記モンスターキャラクタを前記ゲーム空間から削除して前記人間のキャラクタを前記ゲーム空間に配置する状態にする,請求項2または3に記載のゲームプログラム。
【請求項9】
前記ユーザが前記所定のゲーム空間において戦闘を行うことにより,課金処理によらず報酬アイテムを前記ユーザに付与する第8のステップと,
課金処理により,前記報酬アイテムとは異なる有価アイテムを前記ユーザに付与する第9のステップとをさらに実行させ,
前記第2のステップにおいて,前記報酬アイテムまたは前記有価アイテムを消費することにより,前記選択および付与を行う,請求項1から8のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項10】
前記ゲームプログラムに基づくゲームは,複数のユーザが同時に同じゲーム空間で各自の操作可能キャラクタを動作させることができるマルチプレイに対応しており,
前記第3のステップにおいて,各ユーザの端末とマルチプレイの同期の要求を送受信し,前記マルチプレイに参加する複数のユーザそれぞれが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で各ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め各ユーザの操作可能キャラクタとして指定した結果を各ユーザの端末から受信し,
前記第4のステップおよび前記第5のステップにおいて,前記マルチプレイに参加する各ユーザと前記所定のゲーム空間を共有して,ゲームを進行させる,請求項2または3のいずれかに記載のゲームプログラム。
【請求項11】
プロセッサ,メモリ,ディスプレイ,およびユーザの入力操作を受け付ける操作部を備えるコンピュータがゲームプログラムを実行する方法であって,
前記プロセッサが,
人間のキャラクタ,および,前記人間とは異なる外観のモンスターキャラクタ,のうち前記ユーザが所持するキャラクタを示す所持キャラクタ情報を前記メモリに記憶させる第1のステップと,
人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを含む複数のゲーム媒体のうちいずれかを確率的に選択し,選択された人間のキャラクタまたはモンスターキャラクタを前記ユーザに付与して前記メモリの前記所持キャラクタ情報を更新する第2のステップと,
所定のゲーム空間を構築する前に,前記ユーザが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で前記ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め操作可能キャラクタとして指定する第1の入力操作を受け付ける第3のステップと,
前記所定のゲーム空間を構築して前記指定された操作可能キャラクタを配置し,前記操作可能キャラクタとして指定された人間のキャラクタまたは前記モンスターキャラクタのいずれを戦闘に参加させるかを前記ユーザの第2の入力操作により切り替える第4のステップと,
操作可能キャラクタを動作させるための第3の入力操作を受け付けて,戦闘に参加する前記操作可能キャラクタに,前記ユーザの操作に応じたアクションを行わせる第5のステップと,を実行する,方法。
【請求項12】
情報処理装置であって,
前記情報処理装置は,
ゲームプログラムを実行することにより,前記情報処理装置の動作を制御するプロセッサと,
前記ゲームプログラムを記憶するメモリと,
ユーザの入力操作を受け付ける操作部と,を備え,
前記プロセッサは,
人間のキャラクタ,および,前記人間とは異なる外観のモンスターキャラクタ,のうち前記ユーザが所持するキャラクタを示す所持キャラクタ情報を前記メモリに記憶させる第1のステップと,
人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを含む複数のゲーム媒体のうちいずれかを確率的に選択し,選択された人間のキャラクタまたはモンスターキャラクタを前記ユーザに付与して前記メモリの前記所持キャラクタ情報を更新する第2のステップと,
所定のゲーム空間を構築する前に,前記ユーザが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で前記ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め操作可能キャラクタとして指定する第1の入力操作を受け付ける第3のステップと,
前記所定のゲーム空間を構築して前記指定された操作可能キャラクタを配置し,前記操作可能キャラクタとして指定された人間のキャラクタまたは前記モンスターキャラクタのいずれを戦闘に参加させるかを前記ユーザの第2の入力操作により切り替える第4のステップと,
操作可能キャラクタを動作させるための第3の入力操作を受け付けて,戦闘に参加する前記操作可能キャラクタに,前記ユーザの操作に応じたアクションを行わせる第5のステップと,を実行する,情報処理装置。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原審の平成31年4月22日付け拒絶査定の理由は,平成30年10月10日付け拒絶理由通知書(以下,「本件拒絶理由通知書」という。)において記載した理由によって拒絶すべきものであるというものであり,その理由は,つぎの理由をその要旨とするものである。
(新規事項)平成30年9月5日付け手続補正書でした補正(以下,「本件補正」という。)は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
記
(1)(省略)
(2)本件補正において,請求項1,11,12に「前記所定のゲーム空間を構築して前記指定された操作可能キャラクタを配置し,前記操作可能キャラクタとして指定された前記人間のキャラクタまたは前記モンスターキャラクタのうちいずれか片方を,戦闘に参加させるキャラクタとして前記ユーザの第2の入力操作により切り替える」を特定する補正は,「ユーザの入力操作に応じて,人間キャラクタの代わりにモンスターキャラクタのみを戦闘に参加させると共に操作可能なキャラクタとしてゲーム空間に配置する」処理を行うという新たな技術的事項が導入されるものとなる点で,当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではない。(以下,当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではないことを,単に,「新規事項を追加するもの」という。)
(3)本件補正において,請求項3に「前記人間のキャラクタを前記第3の入力操作により前記所定のゲーム空間で前記ユーザの操作に応じたアクションを行わせることが可能な状態を経ることなく前記モンスターキャラクタを前記所定のゲーム空間において前記第3の入力操作に基づき戦闘可能に配置しない」を特定する補正は,新規事項を追加するものである。
(4)本件補正において,請求項4に「前記第5のステップにおいて,前記複数の人間のキャラクタのうち1体の人間のキャラクタを選ぶ第4の入力操作を受け付けることにより,当該第4の入力操作で選ばれた1体の人間のキャラクタに前記第3の入力操作に応答して前記アクションを行わせる一方,前記1体の人間のキャラクタ以外のその他の前記人間のキャラクタについてオート操作によりアクションを行わせる」を特定する補正は,新規事項を追加するものである。
(5)本件補正において,請求項9に「前記ユーザが前記所定のゲーム空間において戦闘を行うことにより,課金処理によらず報酬アイテムを前記ユーザに付与する第8のステップと,課金処理により,前記報酬アイテムとは異なる有価アイテムを前記ユーザに付与する第9のステップとをさらに実行させ,前記第2のステップにおいて,前記報酬アイテムまたは前記有価アイテムを消費することにより,前記選択および付与を行う」を特定する補正は,新規事項を追加するものである。
(6)本件補正において,請求項10に「前記第3のステップにおいて,各ユーザの端末とマルチプレイの同期の要求を送受信し,前記マルチプレイに参加する複数のユーザそれぞれが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で各ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め各ユーザの操作可能キャラクタとして指定した結果を各ユーザの端末から受信し,前記第4のステップおよび前記第5のステップにおいて,前記マルチプレイに参加する各ユーザと前記所定のゲーム空間を共有して,ゲームを進行させる」を特定する補正は,新規事項を追加するものである。
第4 当審の判断
1 上記第3の(2)について
(1)原査定の拒絶理由の(2)において指摘された本件補正における補正事項は,「前記所定のゲーム空間を構築して前記指定された操作可能キャラクタを配置し,前記操作可能キャラクタとして指定された前記人間のキャラクタまたは前記モンスターキャラクタのうちいずれか片方を,戦闘に参加させるキャラクタとして前記ユーザの第2の入力操作により切り替える第4のステップ」に係るものであるところ,ここでの「操作可能キャラクタとして指定された」,「人間のキャラクタ」または「モンスターキャラクタ」のうちいずれか片方を,戦闘に参加させるキャラクタとしてユーザの第2の入力操作により切り替えることには,「人間キャラクタ」または「モンスターキャラクタ」のうちの片方のみを戦闘に参加させるキャラクタとしてユーザの入力操作により切り替えるものが含まれるものと解されるから,当初明細書等において,「所定のゲーム空間を構築して,指定された操作可能キャラクタを配置し,操作可能キャラクタとして指定されたモンスターキャラクタのみを戦闘に参加させるキャラクタとしてユーザの入力操作により切り替える」ことが記載されているか否かについて,以下検討する。
(2)当初明細書等の記載事項
ア 当初明細書等には,当該補正事項に関してつぎの記載がある。
(ア)「【0071】 (ゲーム空間とオブジェクトの配置) ユーザ端末100のゲーム進行部112は,ゲームプログラム231に基づくゲームを開始させる。ゲームが開始すると,オブジェクト制御部114は,ゲーム進行部112の指示に従って,所定のゲーム空間を構築し,該ゲーム空間に,予め定められた操作キャラクタを配置する。また,オブジェクト制御部114は該ゲーム空間に,木,岩,建物等,ゲーム空間の背景となる背景オブジェクトを配置してもよい。また,オブジェクト制御部114は該ゲーム空間に,操作キャラクタの戦闘相手である敵キャラクタ(他のキャラクタ)を配置してもよい。
【0072】 なお,本実施形態では,ゲームシステム1が実現するゲームの一例として,ユーザが,自分の所持しているキャラクタのうち,操作可能なキャラクタの中から1体のキャラクタを選んで,該キャラクタを操作する例について説明する。しかしながら,ゲームシステム1が実現するゲームでは,ユーザに,一度に複数のキャラクタ(例えば,後述する人間キャラクタと騎乗モンスター,または複数の人間キャラクタ等)を操作可能とさせてもよい。また,各キャラクタの全ての動きをユーザの入力操作に応じて行うのではなく,攻撃のタイミング,移動の方向等,一部の動きのみをユーザに操作させてもよい(所謂,セミオート操作)。
【0073】 本実施形態では,一例として,ゲームの開始時に草原等,屋外の空間に相当するゲーム空間(フィールド空間と称する)がオブジェクト制御部114によって構築され,該フィールド空間に操作キャラクタ等が配置される場合について説明する。
【0074】 なお,オブジェクト制御部114が構築するゲーム空間は,上述したフィールド空間に限られない。例えば,オブジェクト制御部114は,ゲーム進行部112の指示に応じて,洞窟または建物の中など,屋内(所謂,ダンジョン)の空間に相当するゲーム空間(ダンジョン空間と称する)を構築し,該空間に操作キャラクタ等を配置してもよい。例えば操作受付部111がダンジョンに入ることを指示する入力操作を受け付けた場合,ゲーム進行部112は,オブジェクト制御部114にダンジョン空間の構築および該空間への操作キャラクタ等の配置を指示してもよい。」
(イ)「【0075】 図3は,ゲーム空間の一種である,フィールド空間を描画した画面の一例を示す図である。フィールド空間には,少なくとも操作キャラクタが1体配置される。図3の状態(A)は,フィールド空間において,人間キャラクタ301が,該キャラクタの武器302を背に持った状態で配置された状態を示す図である。
【0076】 ここで,「人間キャラクタ」とは,操作可能なキャラクタの一種である。なお,「人間キャラクタ」はあくまで名称の一例であり,人間キャラクタ301は必ずしも人間または人型のキャラクタでなくてもよい。また,武器302は必須ではない。
【0077】 (騎乗モンスターと自動戦闘モンスター)図3の状態(B)は,フィールド空間において,人間キャラクタ301が騎乗モンスター303に騎乗した状態を示す図である。騎乗モンスター303とは,操作可能なキャラクタの一種であり,人間キャラクタ301の仲間(すなわち,戦闘における味方)となるキャラクタの一種である。また,騎乗モンスター303は,人間キャラクタ301の代わりに戦闘に参加可能であってよい。
【0078】 人間キャラクタ301は,騎乗モンスター303に騎乗することができる。換言すると,騎乗モンスター303は,人間キャラクタ301の乗り物となるキャラクタである。なお,「戦闘に参加するキャラクタ」とは,ある敵キャラクタ(後述)との戦闘中に,該ゲーム空間内に配置されているキャラクタであって,該戦闘中にユーザの操作キャラクタの味方となるキャラクタである。なお,戦闘に参加するキャラクタは,敵キャラクタに対し必ずしも攻撃等のアクションを実行しなくてもよい。また,戦闘に参加するキャラクタは,敵キャラクタからのアクションを受けなくてもよい。例えば,人間キャラクタ301が騎乗モンスター303に騎乗しているが,入力操作に基づく攻撃等の各種アクションは騎乗モンスター303のみが行う場合でも,人間キャラクタ301は戦闘に参加していることとする。」
(ウ)「【0079】 ユーザが騎乗モンスター303を指定する操作,および騎乗を指示する入力操作を行うと,操作受付部111はこれらの操作を受け付け,ゲーム進行部112は人間キャラクタ301を,指定された騎乗モンスター303と関連付ける。さらに,ゲーム進行部112は人間キャラクタ301と騎乗モンスター303を関連付けたことをオブジェクト制御部114に通知する。オブジェクト制御部114は該通知を受けて,人間キャラクタ301を騎乗モンスター303に騎乗させた体制および位置に配置する。これにより,ユーザは,ある人間キャラクタ301に対し,乗り物としての騎乗モンスター303の関連付けを変えてゲームを楽しむことができる。したがって,ゲームの興趣性が向上する。
【0080】 ゲーム進行部112の戦闘処理部112Aは,人間キャラクタ301を騎乗モンスター303に騎乗させた場合,騎乗している人間キャラクタ301を以降の戦闘で攻撃,防御等のアクションをさせないようにしてもよい。換言すると,戦闘処理部112Aは,騎乗モンスター303および人間キャラクタ301の両方を戦闘に参加させるが,いずれか片方しか戦闘での種々のアクションに係る入力操作は行えないようにしてもよい。」
(エ)「【0081】 なお,ゲーム進行部112はユーザの所定の入力操作に応じて,人間キャラクタ301の騎乗状態を解除してもよい。この場合,騎乗モンスター303はフィールド空間から削除され,人間キャラクタ301のみが該空間に残る。
【0082】 本発明に係る人間キャラクタ301と騎乗モンスター303との見かけの関係性は「騎乗」に限定されず,騎乗モンスター303の外観に応じて適宜定められてよい。例えば,人間キャラクタ301と鳥型の騎乗モンスター303とが関連付けられた場合,騎乗モンスター303は人間キャラクタ301を掴んで飛び上がってもよい。」
(オ)「【0151】さらに言えば,装備品に関連付けられる仲間キャラクタは,騎乗モンスターであることが望ましい。人間キャラクタは,例えばゲームのストーリーの進行に関わるキャラクタであったり,該ストーリーの進行に応じて獲得できる(すなわち,「仲間に加わる」) キャラクタであったりする場合がある。一方,騎乗モンスターは,操作可能なキャラクタと関連付けられることで,初めて戦闘に参加可能である。換言すると,騎乗モンスターは,それ自体で戦闘に参加することはできない。したがって,主たるキャラクタが装備品に関連付けられて戦闘に参加不可能となってしまうことを防止できる。また,人間キャラクタの装備品強化への使用を避け,騎乗モンスターを使用することとすることで,ストーリーの進行,およびユーザのストーリーの理解に支障が出ないようにすることができる。」
イ 上記アに摘示した記載事項からはつぎの点が読み取れる。
(ア)上記ア(ア)から読み取れる事項
a ゲームが開始されると,所定のゲーム空間が構築されて,該ゲーム空間に,予め定められた操作キャラクタが配置されること。
b ユーザが,自分の所持しているキャラクタのうち,操作可能なキャラクタの中から1体のキャラクタを選んで,該キャラクタを操作するゲーム及び,操作可能なキャラクタを一度に複数のキャラクタ(例えば,後述する人間キャラクタと騎乗モンスター,または複数の人間キャラクタ等)としても良いこと。
(イ)上記ア(イ)から読み取れる事項
a ゲーム空間の一例であるフィールド空間には,少なくとも操作キャラクタが1体配置されること,そして,フィールド空間において,人間キャラクタが,配置された状態があること。
b フィールド空間には,人間キャラクタが騎乗モンスターに騎乗した状態で配置された状態があること。
c 騎乗モンスターが,操作可能なキャラクタの一種であり,人間キャラクタの仲間(すなわち,戦闘における味方)となるキャラクタの一種であること。
d 騎乗モンスターは,人間キャラクタの代わりに戦闘に参加可能であってもよいこと。
e 騎乗モンスターは,人間キャラクタの乗り物となるキャラクタであること。
f 戦闘に参加するキャラクタとは,ある敵キャラクタとの戦闘中に,該ゲーム空間内に配置されているキャラクタであって,該戦闘中にユーザの操作キャラクタの味方となるキャラクタであること。
g 戦闘に参加するキャラクタは,敵キャラクタに対し必ずしも攻撃等のアクションを実行しなくてもよく,敵キャラクタからのアクションを受けなくてもよいこと。例えば,人間キャラクタが騎乗モンスターに騎乗しているが,入力操作に基づく攻撃等の各種アクションは騎乗モンスターのみが行う場合でも,人間キャラクタは戦闘に参加していることとなること。
(ウ)上記ア(ウ)から読み取れる事項
a ユーザが騎乗モンスターを指定する操作と騎乗を指示する入力操作を行うことで人間キャラクタを,指定された騎乗モンスターとが関連付けられて,人間キャラクタを騎乗モンスターに騎乗させた体制および位置に配置すること。
b 人間キャラクタを騎乗モンスターに騎乗させた場合,騎乗している人間キャラクタを以降の戦闘で攻撃,防御等のアクションをさせないようにしてもよいこと。
c 騎乗モンスターおよび人間キャラクタの両方を戦闘に参加させるが,いずれか片方しか戦闘での種々のアクションに係る入力操作は行えないようにしてもよいこと。
(エ)上記ア(エ)から読み取れる事項
a ユーザの所定の入力操作に応じて,人間キャラクタの騎乗状態を解除してもよいこと。この場合,騎乗モンスターがフィールド空間から削除され,人間キャラクタのみが該空間に残るようになること。
(オ)上記ア(オ)から読み取れる事項
a 騎乗モンスターは,操作可能なキャラクタと関連付けられることで,初めて戦闘に参加可能であって,騎乗モンスターは,それ自体で戦闘に参加することはできないこと。
(カ)以上まとめると,
当初明細書等において,操作可能キャラクタとしての「モンスターキャラクタ」については,「騎乗モンスター」が記載されているのみであり,操作キャラクタとして指定された「人間キャラクタ」と「モンスターキャラクタ」については,「人間キャラクタ」のみを戦闘に参加させること,及び,「モンスターキャラクタ」に「人間キャラクタ」を騎乗させて戦闘に参加させることが記載されているのみであり,ゲーム空間には,操作キャラクタとして複数のキャラクタを選んで配置することができる旨記載されていることを考慮しても,それからは,「人間キャラクタ」と「騎乗モンスターキャラクタ」の両方を戦闘に参加させることが読み取れるに止まり,「騎乗モンスターキャラクタ」のみを戦闘に参加させることまでが読み取れるものではない。
そして,「騎乗モンスター」が「人間キャラクタの代わりに戦闘に参加可能であってもよいこと」が記載されていることを考慮しても,「騎乗モンスター」のみを選択して戦闘に参加させることまでが読み取れるものではないし,「騎乗モンスター」が人間キャラクタの乗り物となるキャラクタであること,「人間キャラクタが騎乗モンスターに騎乗しているが,入力操作に基づく攻撃等の各種アクションは騎乗モンスターのみが行う場合でも,人間キャラクタは戦闘に参加していることとなること」が例示されていることを考慮すると,「騎乗モンスター」が「人間キャラクタの代わりに戦闘に参加可能であってもよい」とは,人間キャラクタが騎乗モンスターに騎乗している場合に,入力操作に基づく攻撃等の各種アクションは騎乗モンスターのみが行うようにしてもよいことが記載されているに止まるものというべきである。
また,「操作可能キャラクタとして指定されたキャラクタ」のうちのいずれかを選択して戦闘に参加させることに関する「ユーザの操作」についてみても,当初明細書等には,「ユーザが騎乗モンスターを指定する操作と騎乗を指示する入力操作を行うことで,人間キャラクタを騎乗モンスターに騎乗させた体制および位置に配置すること,及び,「ユーザの所定の入力操作に応じて,人間キャラクタの騎乗状態を解除されること」が記載されているのみであり,また,騎乗状態を解除した場合に,「騎乗モンスターがフィールド空間から削除され,人間キャラクタのみが該空間に残るようになる」ことが記載されているものの,当該記載を考慮しても,「騎乗モンスター」のみを戦闘に参加させることまでが読み取れるものではない。
なお,別の実施形態においてではあるが,騎乗モンスターは,操作可能なキャラクタと関連付けられることで,初めて戦闘に参加可能であって,騎乗モンスターは,それ自体で戦闘に参加することはできないとの記載(上記ア(オ))からも,「モンスターキャラクタ」のみを戦闘に参加させることは,本願発明においては想定されていないと解される。
ウ 上記イのとおりであるから,当初明細書等には,「操作可能キャラクタとして指定されたモンスターキャラクタのみを戦闘に参加させるキャラクタとしてユーザの入力操作により切り替える」ことについては記載も示唆もされていないというほかない。
また,「操作可能キャラクタとして指定されたモンスターキャラクタのみを戦闘に参加させるキャラクタとしてユーザの入力操作により切り替える」ことが,技術常識を考慮したとしても,当初明細書等の記載から当業者にとって自明な事項であるということもできない。
エ 審判請求人は,「本願明細書の段落0077において,「騎乗モンスター303は,人間キャラクタ301の代わりに戦闘に参加可能であってよい。」と記載されており,それに続いて,段落0078に「なお,「戦闘に参加するキャラクタ」とは,ある敵キャラクタ(後述)との戦闘中に,該ゲーム空間内に配置されているキャラクタであって,該戦闘中にユーザの操作キャラクタの味方となるキャラクタである。」と記載されていることを指摘し,これらの記載を合理的に解釈すれば,ゲーム空間内に,人間キャラクタに代えて騎乗モンスターを配置することがあり得ることとなる旨主張する。
しかしながら,請求人が指摘する【0078】の記載は,上記ア(イ)に摘示したとおりであって,段落【0078】の記載が,「騎乗モンスター」に「人間キャラクタ」が騎乗した場合に,操作可能となった「騎乗モンスター」に騎乗している「人間キャラクタ」が「戦闘に参加するキャラクタ」である旨を説明するものであると解するのが相当である。
また,段落【0077】の「騎乗モンスター303は,人間キャラクタ301の代わりに戦闘に参加可能であってよい。」との記載が,人間キャラクタが騎乗モンスターに騎乗している場合に,入力操作に基づく攻撃等の各種アクションは騎乗モンスターのみが行うようにしてもよいことが記載されていると解されるに止まることも上記イ(オ)のとおりである。
以上のとおりであるから,請求人の主張するように,段落【0077】及び【0078】の記載から,「ゲーム空間内に,人間キャラクタに代えて騎乗モンスターを配置することがあり得る」ことが合理的に読み取れるということはできない。
(3)小括
上記のとおりであるから,本件補正のうち,請求項1,11及び12において「前記所定のゲーム空間を構築して前記指定された操作可能キャラクタを配置し,前記操作可能キャラクタとして指定された前記人間のキャラクタまたは前記モンスターキャラクタのうちいずれか片方を,戦闘に参加させるキャラクタとして前記ユーザの第2の入力操作により切り替える」を特定する補正は,「ユーザの入力操作に応じて,人間キャラクタの代わりにモンスターキャラクタのみを戦闘に参加させると共に操作可能なキャラクタとしてゲーム空間に配置する」処理を行うという,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項が導入されるものとなるから,当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではない。
2 上記第3の(3)について
(1)原査定の拒絶理由の(3)において指摘された本件補正における補正事項は,請求項3の「前記人間のキャラクタを前記第3の入力操作により前記所定のゲーム空間で前記ユーザの操作に応じたアクションを行わせることが可能な状態を経ることなく前記モンスターキャラクタを前記所定のゲーム空間において前記第3の入力操作に基づき戦闘可能に配置しない」であるところ,これが何を特定しようとするものであるのかは,必ずしも明らかではないが,ここでの「前記第3の入力操作」が「操作可能キャラクタを動作させるための」入力操作であることからすれば,『「モンスターキャラクタ」が配置される前に,「人間のキャラクタ」を「第3の入力操作による動作を行わせることが可能である状態」とした後でなければ,当該「モンスターキャラクタ」を「ゲーム空間」で「第3の入力操作による操作に基づいて戦闘可能である状態で配置しない』ことを特定するものと解されるから,このような事項(以下,「補正事項(3)」という。)が当初明細書等に記載されているか否かについて以下検討する。
(2)当初明細書等に記載の事項
ア 当初明細書等には,当該補正事項(3)に関しては,上記1(2)アの(イ),(ウ)及び(オ)で摘示した記載がある。
イ 上記アに示した記載事項からはつぎの点が読み取れる。
(ア)上記1(2)ア(イ)から読み取れる事項
b フィールド空間には,人間キャラクタが騎乗モンスターに騎乗した状態で配置された状態があること。
c 騎乗モンスターが,操作可能なキャラクタの一種であり,人間キャラクタの仲間(すなわち,戦闘における味方)となるキャラクタの一種であること。
d 騎乗モンスターは,人間キャラクタの代わりに戦闘に参加可能であってもよいこと。
e 騎乗モンスターは,人間キャラクタの乗り物となるキャラクタであること。
f 戦闘に参加するキャラクタとは,ある敵キャラクタとの戦闘中に,該ゲーム空間内に配置されているキャラクタであって,該戦闘中にユーザの操作キャラクタの味方となるキャラクタであること。
g 戦闘に参加するキャラクタは,敵キャラクタに対し必ずしも攻撃等のアクションを実行しなくてもよく,敵キャラクタからのアクションを受けなくてもよいこと。例えば,人間キャラクタが騎乗モンスターに騎乗しているが,入力操作に基づく攻撃等の各種アクションは騎乗モンスターのみが行う場合でも,人間キャラクタは戦闘に参加していることとなること。
(イ)上記1(2)ア(ウ)から読み取れる事項
a ユーザが騎乗モンスターを指定する操作と騎乗を指示する入力操作を行うことで人間キャラクタを,指定された騎乗モンスターとが関連付けられて,人間キャラクタを騎乗モンスターに騎乗させた体制および位置に配置すること。
b 人間キャラクタを騎乗モンスターに騎乗させた場合,騎乗している人間キャラクタを以降の戦闘で攻撃,防御等のアクションをさせないようにしてもよいこと。
c 騎乗モンスターおよび人間キャラクタの両方を戦闘に参加させるが,いずれか片方しか戦闘での種々のアクションに係る入力操作は行えないようにしてもよいこと。
(ウ)上記1(2)ア(オ)から読み取れる事項
a 騎乗モンスターは,操作可能なキャラクタと関連づけられることで,初めて戦闘に参加可能である。換言すると,騎乗モンスターは,それ自体で戦闘に参加することはできない。
(エ)以上まとめると,当初明細書等には,ユーザが「騎乗モンスターを指定する操作と騎乗を指示する入力操作を行う」ことで「人間キャラクタを騎乗モンスターに騎乗させた体制および一に配置する」ことができることや,人間キャラクタが騎乗モンスターに騎乗した後において,いずれか片方しか操作可能としないことなどものとすることについては記載されているものの,騎乗モンスターを配置していない状態において,人間キャラクタのみを配置した際に,当該人間キャラクタを,ユーザ操作による操作が可能な状態としたり,ユーザ操作による操作が可能でない状態としたりできることについてや,それに関する制御手順については何ら記載も示唆もされていないし,騎乗モンスターを指定する操作と騎乗を指示する入力操作を行う際において,人間キャラクタがどのような状態であるのか,すなわち,ユーザ操作による操作が可能な状態であることについても記載も示唆もされていない。
また,「騎乗モンスター」が「それ自体で戦闘に参加することはできない」としても,それをもって,「騎乗モンスター」に騎乗する前の「人間キャラクタ」を必ず「ユーザ操作による操作が可能な状態」とすることが導き出せるものでもない。
ウ 以上のとおりであるから,補正事項(3)は,当初明細等において記載も示唆もされておらず,また,技術常識を考慮したとしても,当該補正事項(3)が当初明細書等の記載から当業者にとって自明な事項であるということもできない。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人は,段落【0151】に「騎乗モンスターは,操作可能なキャラクタと関連付けられることで,初めて戦闘に参加可能である。換言すると,騎乗モンスターは,それ自体で戦闘に参加することはできない。」と記載されていること,「騎乗モンスター」が「操作可能なキャラクタと関連付けられる」については,段落【0079】に「人間キャラクタを,指定された騎乗モンスターと関連付ける」との記載があること,及び段落【0078】に「戦闘に参加するキャラクタ」の定義が記載されており,『「戦闘に参加するキャラクタ」とは,ある敵キャラクタ(後述)との戦闘中に,該ゲーム空間内に配置されているキャラクタであって,該戦闘中にユーザの操作キャラクタの味方となるキャラクタである。』ことが明示されていることを指摘し,当業者がこれらの記載に接することにより,「人間キャラクタとモンスターキャラクタとを関連付ける操作を経ることなくモンスターキャラクタ自体で戦闘を行わせることはないこと」が明細書に記載されていることを,当業者が合理的に理解することから,補正事項(3)は当初明細書等に記載されていると主張する。
(イ)しかしながら,補正事項(3)は,「人間キャラクタとモンスターキャラクタとを関連付ける操作を経ることなくモンスターキャラクタ自体で戦闘を行わせることはないこと」を特定するものではなく,上記(1)において説示したように,『「モンスターキャラクタ」が配置される前に,「人間のキャラクタ」を「第3の入力操作による操作が可能である状態」とした後でなければ,当該「モンスターキャラクタ」を「ゲーム空間」で「第3の入力操作による操作に基づいて戦闘可能である状態で配置しない』ことを特定するものと解されるのであるから,請求人の主張は前提において失当であるというほかない。
(3)小括
上記のとおりであるから,本件補正において,請求項3において補正事項(3)を特定することを含む補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから,当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではない。
3 上記第3の(4)について
(1)原査定の拒絶理由の(4)において指摘された本件補正における補正事項である,請求項4の「前記第5のステップにおいて,前記複数の人間のキャラクタのうち1体の人間のキャラクタを選ぶ第4の入力操作を受け付けることにより,当該第4の入力操作で選ばれた1体の人間のキャラクタに前記第3の入力操作に応答して前記アクションを行わせる一方,前記1体の人間のキャラクタ以外のその他の前記人間のキャラクタについてオート操作によりアクションを行わせる」こと(以下,「補正事項(4)」という。)が,当初明細書等に記載されているか否かについて以下検討する。
(2)当初明細書等の記載事項
ア 当初明細書等には,補正事項(4)に関して,上記2(2)ア(ア)に加えて,つぎの記載がある。
(ア)「【0089】敵キャラクタ305は,所定の行動パターンに従って戦闘処理部112Aにより行動が制御されているNPC(non player character)である。敵キャラクタ305は,騎乗モンスター303または自動戦闘モンスター304の一種と同様の外見および能力(移動および攻撃方法等)を有していてもよい。」
(イ)「【0139】ユーザは,人間キャラクタとともに,該人間キャラクタが騎乗する騎乗モンスターを戦闘に参加させることができる。また,ユーザは人間キャラクタまたは騎乗モンスターとともに,自動戦闘モンスターを戦闘に参加させることができる。したがって,仲間キャラクタとは,騎乗モンスターまたは自動戦闘モンスターである。なお,人間キャラクタをNPCとして戦闘に参加させることが可能である場合,人間キャラクタも仲間キャラクタに含まれる。」
イ 上記アに摘示した記載事項からはつぎの点が読み取れる。
(ア)上記1(2)ア(ア)から読み取れる事項
a ゲームが開始されると,所定のゲーム空間が構築されて,該ゲーム空間に,予め定められた操作キャラクタが配置されること。
b ユーザが,自分の所持しているキャラクタのうち,操作可能なキャラクタの中から1体のキャラクタを選んで,該キャラクタを操作するゲーム及び,操作可能なキャラクタを一度に複数のキャラクタ(例えば,後述する人間キャラクタと騎乗モンスター,または複数の人間キャラクタ等)としても良いこと。
c 各キャラクタの全ての動きをユーザの入力操作に応じて行うのではなく,攻撃のタイミング,移動の方向等,一部の動きのみをユーザに操作させる,セミオート操作としてもよいこと。
(イ)上記ア(ア)から読み取れる事項
a 敵キャラクタが所定の行動パターンに従って戦闘処理部により行動が制御されているNPCであること。
(ウ)上記ア(イ)から読み取れる事項
a 人間キャラクタをNPCとして戦闘に参加させることが可能である場合には,人間キャラクタも仲間キャラクタに含まれること。
(エ)以上まとめると,当初明細書等には,ユーザが操作可能なキャラクタとして一度に複数の人間キャラクタを選択できることが記載されており,また,キャラクタについての入力操作をセミオートとしてもよいことが記載されているものといえるが,当該記載は,操作可能なキャラクタの入力操作についての一例として示されているにとどまり,複数のキャラクタのうちの一部のキャラクタについてセミオート操作とすることが記載されているものではない。
そして,敵キャラクタがNPCであることや人間キャラクタをNPCとして戦闘に参加させることが可能であることが示唆されているといえるとしても,そもそもNPCキャラクタは,操作可能なキャラクタとはいえないし,それを差し措いたとしても,当該記載から,複数の人間キャラクタのうちから選択された1体の人間キャラクタについてはユーザが操作可能とし,その他の人間キャラクタについてはNPCキャラクタとして戦闘に参加させることが読み取れるものでもない。
してみると,当初明細書等には,「ユーザが操作可能なキャラクタ」を「オート操作」とすることについては記載されておらず,また,ユーザが操作可能なキャラクタとして指定した複数の人間キャラクタのうち,選択された1体の人間キャラクタについてはユーザが操作可能とし,その他の人間キャラクタについてオート操作とすることについては記載も示唆もされていないと認められる。
ウ 以上のとおりであるから,補正事項(4)は,当初明細等において記載も示唆もされておらず,また,技術常識を考慮したとしても,当該補正事項(4)が当初明細書等の記載から当業者にとって自明な事項であるということもできない。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人は,段落【0139】に「人間キャラクタをNPCとして戦闘に参加させることが可能」と記載されており,「NPC」の定義については段落【0089】に「所定の行動パターンに従って行動が制御されているNPC」と記載されていることを指摘し,当業者が段落【0072】およびこれらの記載に接した場合,「前記複数の人間のキャラクタのうち1体の人間のキャラクタを選ぶ第4の入力操作を受け付けることにより,当該第4の入力操作で選ばれた1体の人間のキャラクタに前記第3の入力操作に応答して前記アクションを行わせる一方,前記1体の人間のキャラクタ以外のその他の前記人間のキャラクタについてオート操作によりアクションを行わせる」ことが明細書に記載されていることを合理的に理解できると主張する。
(イ)しかしながら,上記ウ(エ)で検討したように,段落【0139】に,「人間キャラクタをNPCとして戦闘に参加させることが可能であることが示唆されているとしても,そもそもNPCキャラクタは,操作可能なキャラクタとはいえないし,それを差し措いたとしても,当該記載から,複数の人間キャラクタのうちから選択された1体の人間キャラクタについてはユーザが操作可能とし,その他の人間キャラクタについてはNPCキャラクタとして戦闘に参加させることが読み取れるものでもない。
(ウ)請求人が根拠とする段落【0139】の記載についてさらに検討すると,当該段落【0139】の記載は,「【0137】〔実施形態3〕 本発明に係るゲームシステムは,操作キャラクタの装備品に,戦闘に参加可能な仲間キャラクタを関連付けてもよい。そして,装備品に仲間キャラクタが関連付けられた場合,仲間キャラクタを以降の戦闘に参加不可能とするとともに,前記装備品に該仲間キャラクタに応じた効果を付与してもよい。
【0138】ユーザは,人間キャラクタまたは騎乗モンスターを操作キャラクタとして操作することができる。したがって,操作キャラクタの装備品とは,例えば人間キャラクタ301の武器302,防具,およびアクセサリ,ならびに,騎乗モンスター303の武器,防具,アクセサリ等である。」に続けて,「【0139】ユーザは,人間キャラクタとともに,該人間キャラクタが騎乗する騎乗モンスターを戦闘に参加させることができる。また,ユーザは人間キャラクタまたは騎乗モンスターとともに,自動戦闘モンスターを戦闘に参加させることができる。したがって,仲間キャラクタとは,騎乗モンスターまたは自動戦闘モンスターである。なお,人間キャラクタをNPCとして戦闘に参加させることが可能である場合,人間キャラクタも仲間キャラクタに含まれる。」と記載されているように,段落【0139】の「人間キャラクタをNPCとして戦闘に参加させることが可能である場合,人間キャラクタも仲間キャラクタに含まれる。」との記載は,ユーザが操作可能である「操作キャラクタ」をNPCとして戦闘に参加させることについて述べたものではなく,「操作キャラクタ」の装備品に「戦闘に参加可能な仲間キャラクタ」を関連付けられるようにした場合の「仲間キャラクタ」に,NPCとして戦闘に参加する人間キャラクタが「仲間キャラクタ」になり得ることを説明したものであると解することが相当であるから,当該記載をもって「操作キャラクタ」をNPCとして戦闘に参加させることが示唆されていると解するのは相当でない。
(エ)以上のとおりであるから,請求人の主張は採用することができない。
(3)小括
上記のとおりであるから,本件補正において,請求項4において補正事項(4)を特定することを含む補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから,当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではない。
4 上記第3の(5)について
(1)原査定の拒絶理由の(5)において指摘された本件補正における補正事項である,請求項9の「前記ユーザが前記所定のゲーム空間において戦闘を行うことにより,課金処理によらず報酬アイテムを前記ユーザに付与する第8のステップと,課金処理により,前記報酬アイテムとは異なる有価アイテムを前記ユーザに付与する第9のステップとをさらに実行させ,前記第2のステップにおいて,前記報酬アイテムまたは前記有価アイテムを消費することにより,前記選択および付与を行う」こと(以下,「補正事項(5)」という。)が,当初明細書等に記載されているか否かについて以下検討する。
(2)当初明細書等の記載事項
ア 当初明細書等には,補正事項(5)に関して,つぎの記載がある。
(ア)「【0046】サーバ200は,各ユーザ端末100と通信して,ユーザ端末100がゲームを進行させるのを支援する機能を有する。例えば,有価データの販売,サービスの提供などを実行する。ゲームがマルチプレイゲームである場合には,サーバ200は,ゲームに参加する各ユーザ端末100と通信して,ユーザ端末100同士のやりとりを仲介する機能を有していてもよい。サーバ200は,プロセッサ20,メモリ21,ストレージ22,通信IF23,および入出力IF24等の協働によって,制御部210および記憶部220として機能する。」
(イ)「【0064】抽選部112Bは,キャラクタを獲得するための抽選に係る処理を実行する。抽選の方法は特に限定されない。例えば,抽選部112Bは,ユーザの所定の入力操作に応じてゲーム情報232に含まれている筐体(抽選のデータテーブル)を参照し,該テーブルに基づいて抽選結果を定めてよい。抽選部112Bは,抽選の結果,すなわち,ユーザに付与するキャラクタをモンスター付与部112Cに通知する。」
(ウ)「【0094】図4の状態(C)は,戦闘に勝利した状態を示す図である。例えば図示のように,人間キャラクタ301が1人で戦闘し,敵キャラクタ305に勝利したとする。この場合,戦闘処理部112Aは,戦闘の内容または結果に応じた報酬アイテムを,ユーザに付与する。具体的には,戦闘処理部112Aは,ユーザ情報233に含まれている該報酬アイテムの個数を示す値を増加させる。なお,戦闘処理部112Aは,付与される報酬アイテムの種類および数を,敵キャラクタ305の種類およびレベル等に応じて変化させてもよい。また,オブジェクト制御部114または表示制御部115は,ユーザが入手した(ユーザに付与された)報酬アイテムの種類および数を示すUIオブジェクト306またはUI画像306を,配置して表示してもよい。
【0095】詳しくは後述するが,戦闘処理部112Aは,該報酬アイテムを付与することで,報酬アイテムの所持数が所定数以上になった場合,ユーザに付与するキャラクタを決定してもよい。なお,付与するキャラクタは,人間キャラクタ301,騎乗モンスター303,および自動戦闘モンスター304のいずれであってもよいが,騎乗モンスター303または自動戦闘モンスター304であることが望ましい。」
(エ)「【0104】戦闘が終了したと判定すると,戦闘処理部112Aは,該戦闘の内容に応じて,ユーザに報酬アイテムを付与する(S108)。さらに,戦闘処理部112Aは,報酬アイテムが所定数貯まったか否かを判定する(S110)。報酬アイテムが所定数貯まっていない場合(S110でNO),戦闘処理部112Aは,以降の処理を行わない。一方,報酬アイテムが所定数貯まっている場合(S110でYES),戦闘処理部112Aは,ユーザの所持する報酬アイテムを該所定数だけ消費し(S112),該報酬アイテムに応じて,ユーザに付与するモンスターを決定する(S114)。例えば,戦闘処理部112Aは,報酬アイテムの種類に応じてユーザに付与するモンスターを決定する。モンスター付与部112Cは,決定したモンスターをユーザに付与する(S116)。」
(オ)「【0109】(抽選によるキャラクタ付与) 一方,抽選付与処理とは,抽選結果に応じてユーザにモンスターを付与する処理である。図7は,ゲームシステム1における抽選付与処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示す抽選付与処理は,ゲームにおいて,ユーザが任意のタイミングで,抽選を指示する入力操作を行うことにより,開始される。
【0110】ユーザ端末100の操作受付部111は,抽選を指示する入力操作を受け付ける(S200)。操作受付部111が該入力操作を受け付けると,抽選部112Bは,ユーザに付与するモンスターを,抽選により決定する(S202)。モンスター付与部112Cは,抽選部112Bが決定したモンスターを,ユーザに付与する(S204)。すなわち,モンスター付与部112Cは,ユーザ端末100のユーザ情報233に含まれている,キャラクタデータ233Aに,抽選部112Bが決定したモンスターのデータ(図3における1レコード)を追加する。最後に,ゲーム進行部112はS202における抽選結果を表示制御部115に通知し,表示制御部115は該抽選結果を示す画像を作成して,表示部152に表示させる(S206)。
【0111】なお,ユーザが抽選を実行するためには,何らかの対価が必要であってもよい。例えば,ゲーム進行部112は,ユーザが所定の抽選アイテムを所定数以上所持している場合は,S202以降の処理を実行し,ユーザが所定の抽選アイテムを所定数以上所持していない場合は,S202以降の処理を実行しないこととしてもよい。さらに,ゲーム進行部112は,S202以降の処理を行う場合は,記憶部120のユーザ情報233に記憶されている該抽選アイテムの数を,該所定数分だけ減少させてもよい。すなわち,ゲーム進行部112は,S202以降の処理を行う場合,抽選アイテムを所定数分だけ消費させてもよい。」
イ 上記アに示した記載事項からはつぎの点が読み取れる。
(ア)上記ア(ア)から読み取れる事項
a サーバが,有価データの販売を実行すること。
(イ)上記ア(イ)から読み取れる事項
a 抽選部は,キャラクタを獲得するための抽選に係る処理を実行すること。
b 抽選部は,抽選の結果,すなわち,ユーザに付与するキャラクタを決定すること。
(ウ)上記ア(ウ)及び(エ)から読み取れる事項
a 戦闘処理部は,戦闘の内容または結果に応じた報酬アイテムをユーザに付与すること。
b 戦闘処理部は,付与される報酬アイテムの種類および数を,敵キャラクタの種類およびレベル等に応じて変化させること。
c 戦闘処理部は,報酬アイテムを付与することで,報酬アイテムの所持数が所定数以上になった場合,ユーザに付与するキャラクタを決定すること。
(エ)上記ア(オ)から読み取れる事項
a 抽選付与処理とは,抽選部による抽選によりユーザに付与するモンスターを決定し,当該オンスターをユーザに付与する処理であること。
b 抽選付与処理は,ゲームにおいて,ユーザが任意のタイミングで,抽選を指示する入力操作を行うことにより,実行されるものであること。
c ユーザが抽選を実行するためには,何らかの対価が必要であってもよいこと。
d ゲーム進行部は,ユーザが所定の抽選アイテムを所定数以上所持している場合は,ユーザに付与するモンスターを抽選により決定する処理を実行し,ユーザが所定の抽選アイテムを所定数以上所持していない場合は,ユーザに付与するモンスターを抽選により決定する処理を実行しないこと。
e ゲーム進行部は,ユーザに付与するモンスターを抽選により決定する処理を行う場合,抽選アイテムを所定数分だけ消費させるようにすること。
(オ)以上まとめると,当初明細書等には,「サーバが有価データの販売」を実行することは記載されているものの,当該「有価データ」と抽選アイテムとの関係については何らの記載もない。
また,戦闘処理部が,戦闘の内容または結果に応じて「報酬アイテム」をユーザに付与することは記載されているものの,当該「報酬アイテム」は,所定数以上所持する場合に,キャラクタを付与するために用いられるものであることが記載されているのみであって,当該「報酬アイテム」を抽選処理において用いることや,抽選処理の対価として利用できることについては,記載も示唆もない。
そして,抽選処理を実行するにおいて,何らかの対価を必要とすること,具体的には,所定の抽選アイテムを所定数所持することを条件としたり,抽選処理を実行するに際して抽選アイテムを所定数消費することを条件とすることについて記載されているものといえるものの,当該抽選アイテムがどのようにしてユーザが取得するかについては何ら記載されていないし,当該抽選アイテムが有料なものであるか否かについての明示的な記載も見受けられないし,当該抽選アイテムが課金処理によりユーザに付与することについてや,そもそも課金処理に関する記載を含めて当初明細書等には,何らの記載もない。
また,抽選処理部において,「報酬アイテム」を抽選アイテムとして利用できることについても,記載も示唆もされていない。
してみると,当初明細書等には,「課金処理」により,「ユーザ」に「有価アイテムを付与する」ことや,「戦闘を行うことにより,課金処理によらず」「ユーザに付与される「報酬アイテム」」または,「課金処理により,ユーザに付与される」,「報酬アイテムとは異なる有価アイテム」を消費することにより,「前記選択および付与」(抽選処理)を行うことについては,記載されているものと認めることはできない。
ウ 以上のとおりであるから,補正事項(5)は,当初明細書等において記載されているものと認めることができず,また,技術常識を考慮したとしても,当該補正事項(5)が当初明細書等の記載から,当業者にとって自明な事項であるということもできない。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人は,本件補正後の請求項9において,特定されている事項及び段落【0111】に「ユーザが抽選を実行するためには,何らかの対価が必要であってもよい」ことが記載されていること,段落【0064】でユーザの入力操作に応じて抽選を行うことが記載されていることから,段落【0111】でいう「何らかの対価」とは,ユーザが無制限に抽選を行うことができるわけではないことが当業者に合理的に理解されることから,本願明細書では,ユーザが獲得できるアイテムとして,戦闘を行うことで得られる「報酬アイテム」,販売される有価データを購入することで得られる「有価データ」について記載されているといえることから,抽選を実行するための何らかの対価が必要であり,その対価として,これら「報酬アイテム」,「有価データ」があり得ることを合理的に理解することができる旨主張している。
(イ)しかしながら,ここで問題とされているのは,本件補正により補正された請求項9に記載された事項が,当初明細書等に記載された事項であるか否かであるから,その検討の際に,本件補正後の請求項9の記載を根拠とすることは,前提において失当といわざるを得ない。
また,その点を差し措いたとしても,上記エのとおり,当初明細書等には,抽選アイテムが課金処理によりユーザに付与することについてや,課金処理に関する記載を含めて何らの記載もないこと,抽選処理部において,「報酬アイテム」を抽選アイテムとして利用できることについても,記載も示唆もされていないのであるから,当初明細書等の記載から,抽選を実行するための何らかの対価が必要であり,その対価として,これら「報酬アイテム」,「有価データ」があり得ることを合理的に理解することができるということはできないことは明らかである。
よって,請求人の主張は採用することができない。
(3)小括
上記のとおりであるから,本件補正において,請求項9において補正事項(5)を特定することを含む補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから,当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではない。
5 上記第3の(6)について
(1)原査定の拒絶理由の(6)において指摘された本件補正における補正事項である,請求項10の「前記第3のステップにおいて,各ユーザの端末とマルチプレイの同期の要求を送受信し,前記マルチプレイに参加する複数のユーザそれぞれが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で各ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め各ユーザの操作可能キャラクタとして指定した結果を各ユーザの端末から受信し,前記第4のステップおよび前記第5のステップにおいて,前記マルチプレイに参加する各ユーザと前記所定のゲーム空間を共有して,ゲームを進行させる」こと(以下,「補正事項(6)」という。)が,当初明細書等に記載されているか否かについて以下検討する。
(2)当初明細書等の記載事項
ア 当初明細書等における補正事項(6)に関する事項について
(ア)当初明細書等には,「各ユーザの端末とマルチプレイの同期の要求を送受信」するような手順については何ら記載されていない。
(イ)補正事項(6)に関係する「第3ステップ」である「所定のゲーム空間を構築する前に,前記ユーザが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で前記ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め操作可能キャラクタとして指定する第1の入力操作を受け付ける」手順に関してみても,そもそも,その根拠となる記載は,当初明細書の「【0071】(ゲーム空間とオブジェクトの配置) ユーザ端末100のゲーム進行部112は,ゲームプログラム231に基づくゲームを開始させる。ゲームが開始すると,オブジェクト制御部114は,ゲーム進行部112の指示に従って,所定のゲーム空間を構築し,該ゲーム空間に,予め定められた操作キャラクタを配置する。」との記載であるところ,そこからは,「各ユーザの端末とマルチプレイの同期の要求を送受信し,前記マルチプレイに参加する複数のユーザそれぞれが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で各ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め各ユーザの操作可能キャラクタとして指定した結果を各ユーザの端末から受信」する手順が読み取れるものではない。
そして,その他に「ゲーム空間を構築する」前に,「ユーザが所持するキャラクタ」のうち,「ゲーム空間で前記ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め操作可能キャラクタとして指定する」ことに関する手順に関する記載はない。
(ウ)段落【0017】には,「ユーザ端末100が複数のコントローラ1020と通信する場合,各コントローラ1020を各ユーザが把持することで,ネットワーク2を介してサーバ200などの他の装置と通信せずに,該1台のユーザ端末100でマルチプレイを実現することができる。また,各ユーザ端末100が無線LAN(Local Area Network)規格等の無線規格により互いに通信接続する(サーバ200を介さずに通信接続する)ことで,複数台のユーザ端末100によりローカルでマルチプレイを実現することもできる。・・・」,段落【0043】において「なお,ゲームシステム1が実現するゲームは,マルチプレイが可能であってもよい。例えば,該ゲームは,複数のユーザが,各自のユーザ端末100を介して同時に同じゲーム空間内で各自の操作キャラクタを動作させてゲームを進行させる,MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)であってもよい。」との記載があるものの,これらの記載からは,マルチプレイが可能であることや,マルチプレイを実行するハードウェアの環境を備えるものが読み取れるにとどまり,「第3ステップ」において,「各ユーザの端末とマルチプレイの同期の要求を送受信し,前記マルチプレイに参加する複数のユーザそれぞれが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で各ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め各ユーザの操作可能キャラクタとして指定した結果を各ユーザの端末から受信」する手順が記載されているとか,その点についての示唆があるものと認めることできない。
イ 以上のとおりであるから,補正事項(6)は,当初明細書等において記載されているものと認めることができず,また,技術常識を考慮したとしても,当該補正事項(6)が当初明細書等の記載から,当業者にとって自明な事項であるということもできない。
ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は,(i)マルチプレイが可能である点とマルチプレイを実行するハードウェアの環境について記載されていること,(ii)請求項1の構成(1D)のように,「所定のゲーム空間を構築する前に,前記ユーザが所持するキャラクタのうち,前記ゲーム空間で前記ユーザが操作可能な人間のキャラクタおよびモンスターキャラクタを予め操作可能キャラクタとして指定する」こと,が記載されていることから,請求項10の構成(10D)もまた,願書に最初に添付した細書等に記載した事項の範囲内であり,新たな技術的事項を導入するものではない旨主張する。
(イ)しかしながら,上記請求人の主張する(i)及び(ii)を考慮したとしても,補正事項(6)が当初明細書等に記載されたものということができないことは,上記のとおりであるから,請求人の主張は,上記判断を左右するものではない。
(3)小括
上記のとおりであるから,本件補正において,請求項10に補正事項(6)を特定することを含む補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから,当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではない。
第5 むすび
上記第4で検討したとおり,本件補正(平成30年9月5日提出の手続補正書による補正)は,当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって,本願は,特許法第49条第1号に該当するから拒絶をすべき旨の査定をしなければならないものである。
よって,上記の結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2019-009112