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特許拒絶査定不服審判

2019-008367

サーマルプリンタ及び階調テーブル設計方法

審判番号
2019-008367
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-080939外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年06月24日
審決日
2020年09月28日
公報発行日
2020年12月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B41J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015- 80939「サーマルプリンタ及び階調テーブル設計方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-198955〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成27年4月10日の出願であって、平成30年12月19日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年3月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して、令和1年6月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、令和2年5月21日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和2年7月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1乃至9に係る発明は、令和2年7月27日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「エネルギーが印加されて発熱する複数の発熱体と、 前記発熱体にエネルギーを印加するエネルギー印加手段と、 階調ごとのエネルギーが設定された階調テーブルを記憶する記憶手段と、 前記階調テーブルに基づいて、印刷画像の階調に応じた制御データを前記エネルギー印加手段に転送し、前記エネルギー印加手段が前記発熱体に印加するエネルギーを制御する制御手段と、を備え、 前記階調テーブルは、画像の反射率と前記発熱体に印加されるエネルギーとの関係に基づいて、前記反射率と前記階調との関係が対数関係となるように、定められた階調ごとのエネルギーが設定されていることを特徴とするサーマルプリンタ。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記   (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項   1(補正後の請求項2である「本願発明」に対応) ・引用文献等 2 引 用 文 献 等 一 覧 2.特開平9-174939号公報 第4 引用文献に記載された事項及び引用発明について 1 引用文献2 (1)当審拒絶理由において引用した本願の出願日前に出願公開された引用文献2(特開平9-174939号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。) ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、サーマル転写プリンタ、光プリンタ等のプリンタに関し、特に中間調イメージを再現する中間調記録方式に関する。」 イ 「【0029】図1は、本発明の一実施例におけるドットレベルの階調値と記録体に印加する印字エネルギを決定するパルス列とを示す図である。図2は、ドットレベルの階調値と図1のパルス列で制御される印字エネルギとの関係を示す図である。図3は、図1におけるドットレベルの階調値と記録濃度との関係を示す図である。 【0030】図1に示すように、本実施例においては、ドットレベルの可変が5段階であって、0レベル(印字がないドット)を含めて6階調の表現が可能な、幅が互いに異なる複数個のパルスT1、T2、T3、T4、T5を組み合せた印加パルス列によって、各ドットレベルの記録を行う。具体的には、0レベルではパルスを発生させない。1レベルではパルスT1を発生させる。2レベルではパルスT1、T2を発生させる。以下、同様にして、5レベルではパルスT1、T2、‥‥‥、T5を発生させる。ここで各印加パルスは、例えばサーマル転写プリンタにおいては、サーマルヘッドの発熱体に印加する通電時間を変更することによって、印字エネルギの制御を行う。またレーザプリンタにおいては、レーザビームによる記録体への露光時間を変更することによって、印字エネルギの制御を行う。 【0031】図1において、複数の印加パルスT1~T5の関係を、T1<T2<T3<T4<T5となるように設定することによって、図2に示すように、各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係は、印字エネルギが直線的に増加するのではなく、ドットレベルが大きくなるにつれて増加の度合が大きくなる。 【0032】ここでは、ドットレベルの階調値と記録体に印加する印字エネルギとの関係を、図11に示すような従来の最大印字エネルギを階調数で等分割した印字エネルギと比較して、階調値が低い程、印字エネルギを低く設定することができる。 【0033】このようにすることによって、図8(a)、(b)、(c)に示すようにドットが隣接して形成されるときにも、ドットレベルの階調値が低いときの印字エネルギを低く設定することができるので、両ドットがつながったり離れたりすることによって、ドットの大きさが不安定になったり、階調が不安定になるという問題が解決される。これは階調値が低いときの印字エネルギを低く設定することによって、隣接するドットが同時に発熱することによって生じる熱のドット間への流入をより少なくすることができるということ、およびサーマル転写記録に用いるインクリボン上のインクのつながりをより防止できるということによるものである。」 ウ 「図1 」 エ「図2 」 オ 「図3 」 カ 上記イ及び図3より、各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係を、ドットレベルが大きくなるにつれて増加の度合が大きくなるよう印字エネルギの制御を行うことによって、ドットレベルの階調値と記録濃度(OD)とが比例関係となるよう制御しているものと認められる。 (2)引用文献2に記載された発明 上記(1)ア乃至カから、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「サーマルヘッドの発熱体に印加する通電時間を変更することによって印字エネルギの制御を行うサーマル転写プリンタであって、 各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係がドットレベルが大きくなるにつれて増加の度合が大きくなるように印字エネルギの制御を行うことによって、 ドットレベルの階調値と記録濃度(OD)とが比例関係となるよう制御する、サーマル転写プリンタ。」 第5 当審の判断 1 本願発明と引用発明との対比 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 ア 後者の「印字エネルギ」、「発熱体」、「ドットレベルの階調値」、「記録濃度(OD)」及び「サーマル転写プリンタ」は、それぞれ、前者の「エネルギー」、「発熱体」、「階調」、「反射率」及び「サーマルプリンタ」に相当する。 イ 前者の「発熱体」と後者の「発熱体」とは、エネルギーが印加されて発熱するものとの概念で共通する。 そして、サーマルヘッドの発熱体が複数の発熱体から構成されることは自明の事項といえるものである。 してみると、前者の「サーマルプリンタ」と後者の「サーマル転写プリンタ」とは、エネルギーが印加されて発熱する複数の発熱体と、前記発熱体にエネルギーを印加するエネルギー印加手段を備えている点で共通する。 ウ 後者の「サーマル転写プリンタ」は、各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係により印字エネルギの制御を行うものであるから、「エネルギー印加手段が発熱体に印加するエネルギーを制御する制御手段」を備えていることは明らかである。 (2)したがって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「エネルギーが印加されて発熱する複数の発熱体と、 前記発熱体にエネルギーを印加するエネルギー印加手段と、 前記エネルギー印加手段が前記発熱体に印加するエネルギーを制御する制御手段と、を備えた、サーマルプリンタ。」 <相違点1> 本願発明は、「階調ごとのエネルギーが設定された階調テーブルを記憶する記憶手段」と、「前記階調テーブルに基づいて、印刷画像の階調に応じた制御データ」を前記エネルギー印加手段に転送する制御手段とを備えるのに対し、引用発明は、そのような記憶手段及び制御手段を備えるのか定かでない点。 <相違点2> 本願発明は、「前記階調テーブルは、画像の反射率と前記発熱体に印加されるエネルギーとの関係に基づいて、前記反射率と前記階調との関係が対数関係となるように、定められた階調ごとのエネルギーが設定されている」ものであるのに対し、引用発明は、「各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係がドットレベルが大きくなるにつれて増加の度合が大きくなるように印字エネルギの制御を行うことによって、ドットレベルの階調値と記録濃度(OD)とが比例関係となるよう制御する」ものである点。 2 相違点についての判断 (1)<相違点1>について 引用発明は、「各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係がドットレベルが大きくなるにつれて増加の度合が大きくなるように印字エネルギの制御を行うもの」であるから、各ドットレベルの階調値毎に印字エネルギが設定され、各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係が記憶されていることは明らかであるから、引用発明の「各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係」は、本願発明の「階調ごとのエネルギーが設定された階調テーブル」に相当し、引用発明が、「各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係」を記憶する記憶手段を備えることは明らかといえるか、少なくとも、そのような記憶手段を備えることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。 また、引用発明は、「各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係がドットレベルが大きくなるにつれて増加の度合が大きくなるように印字エネルギの制御を行うもの」であるから、引用発明が、各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係に基づき印字エネルギを制御して発熱体に印加するようしていることは明らかといえる。 してみると、引用発明が、「階調テーブルに基づいて、印刷画像の階調に応じた制御データ」をエネルギー印加手段に転送する制御手段を備えることは明らかといえるか、少なくとも、引用発明において、そのような制御手段を備えることは、当業者が適宜なし得る程度のことであるから、上記相違点1は、実質的な相違でないか、少なくとも、当業者が適宜なし得る程度のことである。 (2)<相違点2>について ア 引用発明におけるドットレベルの階調値は、マトリクス内のドットの大きさを指し、ドットの大きさが大きくなればなるほど、反射率が小さくなることは、上記ウ図1及びエ図2からして、明らかといえる。 してみると、引用発明の「各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係」は、本願発明の反射率と発熱体に印加されるエネルギとの関係に相当するといえる。 ここで、明度と視感反射率とが対数関係にあることは技術常識といえる事項であって(マンセル明度関数)、マンセル明度とは、「黒」を「0」、「白」を「10」とし、人間の感覚に等しい歩度で10分割して対応付けた値を指す(「岩波 理化学事典 第5版」長倉三郎(他5名)、岩波書店、1998年12月25日第3刷発行、570頁、「新編 色彩科学ハンドブック(第2版)」、日本色彩学会、東京大学出版会、1998年6月10発行、134~140頁)。 そして、マンセル明度「0」である「黒」とは、階調値が最大であることに対応し、また、マンセル明度「10」である「白」とは、階調値が最小のことに対応することは明らかである。 そうすると、マンセル明度関数の定義に基づき、画像の反射率を人間の感覚に等しくなるよう設定する、すなわち、明度と視感反射率との関係を対数関係に設定すると、階調値と視感反射率との関係も対数関係となる。 そして、プリンタの分野において、画像の反射率を人間の感覚に近いものとすることは、自明の課題といえるものであって、引用発明においても、内在する課題であるといえるのだから、引用発明においても、当然、人間の感覚に等しい画像の反射率に対応した記録濃度(DO)となるようドットレベルの階調値を設定していることは明らかといえる。 してみると、引用発明の「記録濃度(OD)」とは、人間の感覚に等しい画像の反射率に対応したものといえるのであるから、引用発明の「ドットレベルの階調値と記録濃度(OD)とが比例関係となるよう制御する」とは、本願発明の「反射率と階調との関係が対数関係となるように、定められた階調ごとのエネルギが設定」することに相当する。 以上のとおりであるから、上記相違点2は、実質的な相違点とはいえない。 イ 上記相違点2の「前記階調テーブルは、画像の反射率と前記発熱体に印加されるエネルギとの関係に基づいて、前記反射率と前記階調との関係が対数関係となるように、定められた階調ごとのエネルギが設定されている」については、本願明細書、図面、又は特許請求の範囲(以下「明細書等」という。)を参酌すると、次の技術的意義を持つものと解する余地もあることから、念のため、以下検討しておく。 (ア)上記相違点2における「画像の反射率と前記発熱体に印加されるエネルギとの関係」とは、明細書等の【0006】~【0009】を参酌すれば、印刷画像の光学濃度と明るさを表す反射率と間に「光学濃度=-log(反射率)」の関係があることに起因して、光学濃度の変化の度合いが一定となるように発熱体に印加するエネルギを設定しても、高濃度領域における反射率の変化が乏しくなるという現象を指す。 (イ)上記相違点2における「前記反射率と前記階調との関係が対数関係となるように、定められた階調ごとのエネルギが設定されている」とは、明細書等の【0045】を参酌すれば、人間の目に階調の変化が認識し易くなるように各階調値のエネルギを設定することを指す。 (ウ)以上のことからすれば、上記相違点2に係る構成は、人間の目に階調の変化が認識しやすくするために、反射率と階調との関係が所定の対数関係となるように各階調値を設定するものであり、そのために、予め「画像の反射率と発熱体に印加されるエネルギ」の関係を求めて、その関係に基づいて、各階調値のエネルギを設定することを意味するものと解される。 しかしながら、一般に、印刷画像の光学濃度と反射率との関係が「光学濃度=-log(反射率)」であることは技術常識であるといえる事項であって(例えば、特開2000-326537号公報(【0050】参照。)、特表2000-508978号公報(20~22頁例4参照。)、特開平9-18734号公報(【0035】参照。))、光学濃度の変化の度合いが一定になるようにエネルギを設定しても高濃度領域では反射率の変化が乏しいことは、本願出願時において、既に知られた技術常識であるといえる。 そうすると、引用発明において、「各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係がドットレベルが大きくなるにつれて増加の度合が大きくなるように印字エネルギの制御を行う」ようにすることで「ドットレベルの階調値と記録濃度(OD)とが比例関係」となるように設定しても、高濃度領域の反射率の変化が乏しいものとなることは技術常識であるといえるから、当業者であれば、その点を考慮して工夫しようとすることには、動機付けがあるというべきであるし、上記アのとおり、明度と視感反射率とが対数関係にあることは技術常識といえる事項であるのだから、引用発明の「各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係がドットレベルが大きくなるにつれて増加の度合が大きくなるように印字エネルギの制御を行うことによって、ドットレベルの階調値と記録濃度(OD)とが比例関係となるよう制御する」に際し、反射率と階調との関係を対数関係となるようにし、人間の目に階調の変化が認識し易くするようにすることも、当業者が適宜なし得ることである。 以上のことからすれば、引用発明において、各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係に基づいて印字エネルギの制御を行っているところ、各ドットレベルの階調値と印字エネルギとの関係を、高濃度領域の反射率の変化が乏しいという技術常識及び人が感じる明度と視感反射率の関係が対数関係となるという技術常識に基づいて、人間の目に階調の変化が認識し易くするよう考慮して、画像の反射率と前記発熱体に印加されるエネルギとの関係に基づいて、前記反射率と前記階調との関係が対数関係となるように、定められた階調ごとのエネルギが設定されている」上記相違点2に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得るものである。 そして、本願発明によって奏される効果も、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。 3 小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5 むすび 上記第4のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、上記の結論のとおり審決する。

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2019-008367

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