特許拒絶査定不服審判
2019-007105
電動くリーン歯
- 審判番号
- 2019-007105
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-191284外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年05月13日
- 審決日
- 2020年10月14日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】口田 友一
- 分類
- P18 .537-WZ (A46B) / P18 .121-WZ (A46B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018-191284「電動くリーン歯」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月26日出願公開,特開2020- 44310〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯の概略
本願は,平成30年9月18日を出願日とする出願であって,その手続の経緯は,おおむね,以下のとおりである。
平成31年1月22日付け:拒絶理由通知書
平成31年2月 4日 :意見書の提出(2月6日受付)
平成31年4月 2日付け:拒絶査定
令和 元年5月13日 :審判請求書の提出(5月15日受付)
令和 2年5月29日付け:拒絶理由通知書
令和 2年6月13日 :意見書の提出(6月15日受付)
第2 特許請求の範囲
本願の請求項1の記載は次のとおり。
「【請求項1】
電動歯ブラシから分離された歯ブラシ(1)の電動取り付けハンドルのブラシ付根(5)を20度から25度位ブラシ頭部(7)をくの字型にブラシ側に曲げると,歯の曲面とブラシ曲面が自然な形で角度が口内で接地され歯の外面,内面共に,電動で動くブラシの毛先の振動が歯の曲面とブラシの曲面が合体して電動歯ブラシの効果を倍増する。」
第3 当審にて通知した拒絶の理由の概要
当審にて令和2年5月29日付けで通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。
1 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1には,「電動歯ブラシから分離された歯ブラシ」と記載されているが,「電動歯ブラシ」の具体的な構成が把握できず,「電動歯ブラシという歯ブラシを含むものが,さらに当該電動歯ブラシと分離され得る別の歯ブラシを具備する」のか,「電動歯ブラシが歯ブラシを含み,当該歯ブラシが電動歯ブラシから分離され得る」のか,あるいは,これらとは別の構成を具備しているのかが,不明確である。
(2)請求項1には,「ブラシ付根(5)を20度から25度位ブラシ頭部(7)をくの字型にブラシ側に曲げる」と記載されているが,当該記載により,「ブラシ付根を曲げる」構成を規定したいのか,「ブラシ頭部を曲げる」構成を規定したいのかが,不明である。
また,何を基準として「20度から25度位曲げる」としているのかも,不明である。
さらに,「20度から25度位」と記載されているが,「位」との文言によりどの程度の範囲のずれを表わしているのかが,不明りょうである。
(3)請求項1には,「歯の曲面とブラシ曲面が自然な形で角度が口内で接地され歯の外面,内面共に,電動で動くブラシの毛先の振動が歯の曲面とブラシの曲面が合体して電動歯ブラシの効果を倍増する」と記載されているが,当該記載により,「歯ブラシ」に関するどのような構成あるいは構造を規定しようとしているのかが,不明である。
(4)請求項1に係る発明は,「電動歯ブラシ」または「歯ブラシ」といった「物の発明」であるのか,「電動歯ブラシにより歯を磨く方法」といった「方法の発明」なのか,あるいは,「歯ブラシの製造方法」といった「物を生産する方法」であるのかが不明確であるため,請求項1に係る発明自体が不明確となっている。
2 この出願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
引用文献1:特開2003-260071号公報
引用文献2:特開2006-55178号公報
第4 当審にて通知した拒絶の理由についての判断
1 理由1(特許法第36条第6項第2号)
(1)請求項1には,「ブラシ付根(5)を20度から25度位ブラシ頭部(7)をくの字型にブラシ側に曲げる」と記載されている。
上記記載では,曲げる対象について,
ア 「ブラシ付根」をくの字型にブラシ側に曲げる。
イ 「ブラシ頭部」をくの字型にブラシ側に曲げる。
など多義的な解釈が可能で,請求項1に係る発明を明確に特定することができない。
また,曲げる角度について,「何を基準に(何に対して)」,20度から25度位曲げるのか不明であるので,請求項1に係る発明を明確に特定することができない。
さらに,曲げる角度範囲について,「20度から25度位」と記載されているが,「位」との文言によりどの程度の範囲のずれを許容しているのかが,不明りょうであるので,請求項1に係る発明を明確に特定することができない。
よって,請求項1に係る発明が明確であるとは認められない。
(2)請求項1には,「歯の曲面とブラシ曲面が自然な形で角度が口内で接地され歯の外面,内面共に,電動で動くブラシの毛先の振動が歯の曲面とブラシの曲面が合体して電動歯ブラシの効果を倍増する」と記載されている。
上記記載は,
ア それ以前の記載によって特定される構成による作用を表している。
イ それ以前の記載によって特定される構成に加えて,新たな構成を表している。
など多義的な解釈が可能で,請求項1に係る発明を明確に特定することができない。仮に上記イの場合,上記記載によって,具体的にどのような構成を表しているのかが不明である。
よって,請求項1に係る発明が明確であるとは認められない。
(3)請求項1の記載は前記のとおりであるが,このような記載では,請求項1に係る発明が,
ア 「電動歯ブラシ」又は「歯ブラシ」の発明(物の発明)
イ 「電動歯ブラシにより歯を磨く方法」の発明(方法の発明)
ウ 「電動歯ブラシの製造方法」又は「歯ブラシの製造方法」の発明(物を生産する方法の発明)
など多義的な解釈が可能で,請求項1に係る発明を明確に特定することができない。
特許法では,第68条で「特許権者は,業として特許発明の実施をする権利を専有する」とし,第2条第3項では「実施」を物の発明,方法の発明及び物を生産する方法の発明に区分(請求項に係る発明の属するカテゴリー)して定義している。これらを考慮すれば,請求項に係る発明の属するカテゴリーが不明確である場合又は請求項に係る発明の属するカテゴリーがいずれのカテゴリーともいえない場合に,そのような発明に特許を付与することは権利の及ぶ範囲が不明確になり適切ではない。そのため,請求項に係る発明の属するカテゴリーが明確になるように請求項を記載する必要がある。
しかしながら,本願の請求項1の記載は前記のとおりであって,請求項1に係る発明の属するカテゴリーが不明確である(請求項1に係る発明が,物の発明,方法の発明,物を生産する方法の発明のいずれであるのか不明確である。)。
よって,請求項1に係る発明が明確であるとは認められない。
(4)以上のとおり,請求項1に係る発明が明確であるとは認められない。
2 理由2(特許法第29条第2項)
(1)請求項1に係る発明
前記1のとおり,請求項1は記載内容が著しく不明確であるが,前記1の(1)~(3)については以下のように解釈をし,請求項1に係る発明については,以下のように認定した上で検討する。
ア 前記1の(1)について,明細書の段落【0004】の「本案の電動くリーン歯はブラシの首部分を内側に曲げることにより」との記載,段落【0008】の「図5,図6(5)くの字型に曲げ本案の特許習得をする部分である。」との記載及び図5,6の参照番号5で示される位置を参酌すると,曲げる対象については,「ブラシ付根」をくの字型にブラシ側に曲げるものと解する余地はある。そのように解する場合,電動取り付けハンドルに対して,およそ,「20度から25度」曲げるものであると解することはできる。
イ 前記1の(2)について,明細書の段落【0006】には,「本案の電動くリーン歯はブラシの付け根を20度~25度位ブラシ側に曲げることによりブラシの曲面と歯の曲面が一致することにより毛先全面が歯の外曲面,内曲面に接地するため,歯ブラシの毛先全面が有効に働き従来の歯ブラシ効果が,倍増,違和感もなく大人,こどもを含め歯垢除去,歯周病に歯磨き効果を発揮できる電動くリーン歯である。」(下線は当審にて付した。)と記載されているので,請求項1の「歯の曲面とブラシ曲面が自然な形で角度が口内で接地され歯の外面,内面共に,電動で動くブラシの毛先の振動が歯の曲面とブラシの曲面が合体して電動歯ブラシの効果を倍増する」なる記載は,ブラシを曲げた構成による作用を表しているものと解する余地はある。
ウ 前記1の(3)について,請求人が意図する「請求項に係る発明の属するカテゴリー」は不明であるが,明細書及び図面には,歯ブラシは記載されているので,「物の発明」であると解することは一応できる。
エ したがって,請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)については,以下のように認定した上で検討する。
「【請求項1】
電動歯ブラシの本体から分離される歯ブラシにおいて,前記歯ブラシは電動取り付けハンドル,ブラシ付根,ブラシ頭部,及び,ブラシを備え,前記電動取り付けハンドルに対して,前記ブラシ頭部が20度から25度の範囲に位置するように前記ブラシ付根をくの字型に前記ブラシ側に曲げた歯ブラシ。」
(2)引用文献,引用発明等
ア 引用文献1について
当審にて通知した拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審にて付与した。)。
(ア)「【請求項1】 本体ケース1と,本体ケース1の上端に突設されたブラシ腕2と,ブラシ腕2の上端部の一側に配置されるブラシ体3とを備えており,
ブラシ腕2の上端部内に,ブラシ体3を駆動する超音波モータ10が配置されており,
ブラシ腕2が,非直線状に折り曲げ形成されていることを特徴とする電動歯ブラシ。」
(イ)「【請求項6】 ブラシ腕2が,本体ケース1に固定される腕基部2Aと,超音波モータ10を収容するモータケース2Bとからなり,
モータケース2Bが,腕基部2Aに対して軸35を介して前後傾動可能に連結されており,
腕基部2Aの内部に,モータケース2Bを傾動不能にロック固定するロック具36が配置されている請求項1記載の電動歯ブラシ。」
(ウ)「【請求項7】 ブラシ腕2が,本体ケース1に対して着脱可能に固定されている請求項1記載の電動歯ブラシ。」
(エ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ブラシ腕の上端一側に設けた歯磨き用のブラシ体を超音波モータで駆動する形態の電動歯ブラシに関する。」
(オ)「【0005】本発明の目的は,ブラシ腕を湾曲ないしは屈曲することにより,歯の表側を磨く場合はもちろんのこと,歯の裏側や奥歯を磨く場合にも,自然な姿勢で楽に歯磨きが行える電動歯ブラシを提供することにある。」
(カ)「【0014】
【発明の作用効果】本発明によれば,ブラシ腕2の上端部内に配置した超音波モータ10でブラシ体3を直接に駆動するので,超音波モータ10とブラシ体3との間に伝動機構を設ける必要がない。従って,ブラシ腕2を湾曲ないしは屈曲させてブラシ体3の回転中心軸Pを斜め下向きに指向させることができる。このようにブラシ腕2を湾曲させた電動歯ブラシによれば,歯の表側を磨く場合はもちろんのこと,歯の裏側や奥歯を磨く場合にも,口を大きく開く必要もなく自然な姿勢で楽にしかも快適に歯磨きを行える。」
(キ)「【0020】図6に示すように本体ケース1に固定される腕基部2Aと,超音波モータ10を収容するモータケース2Bとでブラシ腕2を構成し,モータケース2Bを腕基部2Aに対して軸35を介して前後傾動可能に連結した電動歯ブラシによれば,必要に応じてモータケース2Bの傾き具合を自由に変更できるので,使用者の好みや事情に応じてブラシ体3の傾き角度を調整し,使用しやすい状態で電動歯ブラシを使用できる。さらに,任意の傾き角度において,モータケース2Bをロック具36で傾動変位不能にロック固定することにより,ブラシ腕2の傾動姿勢を保持固定できるので,使用途中に使用者の意に反してモータケース2Bが前後傾動するのを確実に阻止できる。ロック具36をロック解除操作した状態においては,必要に応じてモータケース2Bを折り畳み収納しておくことも可能となる。」
(ク)「【0021】図7に示すようにブラシ腕2を本体ケース1に対して着脱可能に固定した電動歯ブラシによれば,ブラシ腕2を人数分用意することにより本体ケース1を複数人で共用できるのはもちろんのこと,口腔内にくわえるブラシ腕2を個々人で専用使用できるので,衛生的である。」
(ケ)「【0022】
【実施例】(第1実施例) 図1ないし図4は本発明に係る電動歯ブラシの第1実施例を示す。図1において電動歯ブラシは,グリップを兼ねる本体ケース1と,本体ケース1の上端に固定されるブラシ腕2と,ブラシ腕2の上端部の一側に配置されるブラシ体3とからなる。
【0023】本体ケース1は中空筒状のプラスチック成形品からなり,その上端側にブラシ腕2を水密状に固定し,本体ケース1の下端側の開口を電池蓋4で水密状に塞いでいる。本体ケース1の内部には,複数の電池5と,制御回路が実装された回路基板9とを配置してある。その交換や点検のために,電池蓋4は本体ケース1に対して着脱可能に装着されている。本体ケース1の上部外面には,後述する超音波モータ10への通電回路をオン状態に切り替えるオンボタン6と,通電回路をオフ状態に切り替えるオフボタン7とを備えている。電池5は一次電池と二次電池とのいずれであってもよい。
【0024】ブラシ腕2は,上下方向に長い先すぼまり状の中空筒状のプラスチック成形品からなり,上端部内にブラシ体3を駆動する超音波モータ10が配置されている。超音波モータ10は,正逆転可能であり,その出力軸12が,後述する取付部13の前方外面に突出する状態でブラシ腕2に固定されている。
【0025】すなわち,図2においてブラシ腕2の上端の一側(前側)には,超音波モータ10を固定するための取付部13が一体に突出形成されており,取付部13と対向する壁面に(後壁面)装填口14が開口しており,超音波モータ10は装填口14側からブラシ腕2の内部に組み込まれる。
【0026】詳しくは,取付部13の内面に超音波モータ10の締結フランジを当て付け,取付部13の前面外側からねじ込んだビス15で締結フランジを取付部13に締結して,超音波モータ10を取付部13に固定する。この固定状態において,出力軸12用の軸孔16と,ビス15用の挿通孔17とをそれぞれ水密状に封止するために,図2に示すごとく軸孔16の内面にリング状のシール体18を配置し,ビス15の首部にリング状のシール体19を配置してある。
【0027】同様に,装填口14はプラスチック製のカバー20で塞ぎ,カバー20に装着したシール体21で両者14・20間を封止している。カバー20は装填口14に対して分離不能に固定する。超音波モータ10と回路基板9とは,図1に示すごとくブラシ腕2内に配線したリード線22で接続する。先のビス15まわりを囲む取付部13の円形の壁には,図3および図4に示すごとく一定間隔置きに溝33を形成して,後述する連結ピース25と取付部13との間に入り込んだ水を外部に排出しやすくしてある。
【0028】ブラシ体3は,図2および図3に示すごとく円筒状のプラスチック製ホルダ23と,その前側に円筒状に植設したブリッスル24とからなり,超音波モータ10の出力軸12に固定した連結ピース25に対して,ホルダ23が着脱可能に装着される。
【0029】図3において連結ピース25は,出力軸12に対して相対回転不能に固定されるボス部26と,ボス部26まわりの外周に設けた大径のフランジ部27と,ボス部26の前面側に突出する角軸部28とを一体に備えたプラスチック成形品である。フランジ部27の外周面の4箇所には,ホルダ23を抜け止め状に保持するためのリブ状の突起29が設けられている。この突起29にホルダ23の円筒壁の内周面に設けた周回溝30を嵌係合することにより,連結ピース25にホルダ23を抜け止め状に保持できる。また,ホルダ23の内奥壁に設けた角穴32に角軸部28を嵌入係合することにより,ホルダ23は連結ピース25と同行回転できる。」
(コ)「【0030】かかる電動歯ブラシにおいて,本発明は,ブラシ腕2の全体を湾曲させ,さらにブラシ体3の駆動中心軸Pを斜め下向きに指向させることにより,口を大きく開く必要もなく自然な姿勢で楽に歯の裏側や奥歯を磨けるようにしたものである。詳しくは,図1に示すようにブラシ腕2をブラシ体3の突出側面の側,つまり本体ケース1の前面側へ向かって湾曲状に傾斜させ,さらに取付部13を傾斜させることにより,ブラシ体3の駆動中心軸Pを斜め下向きに指向させている。具体的には,駆動中心軸Pと本体ケース1の縦方向の中心軸とで挟む角度θを68度とした。」
(サ)「【0033】(第2実施例) 図5は本発明の第2実施例を示す。ここでのブラシ腕2は,本体ケース1に固定される中空の腕基部2Aと,超音波モータ10を収容するモータケース2Bと,腕基部2Aとモータケース2Bとの間に設けられる湾曲変形可能なフレキシブルアーム2Cとからなる。フレキシブルアーム2Cは中空の管体からなり,その内部にリード線22を通してある。
【0034】このように,ブラシ腕2の中途部がフレキシブルアーム2Cで構成されていると,モータケース2Bと本体ケース1とを両手で掴み,フレキシブルアーム2Cを曲げ操作するだけでブラシ腕これ全体の湾曲形状を変更し,ブラシ体3の傾度調整を簡便に行えることになる。他は第1実施例と実施的に同じであるので,同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。第3実施例においても同様の扱いとする。」
(シ)「【0035】(第3実施例) 上記の各実施例では,ブラシ腕2の全体または一部を湾曲させたが,ブラシ腕2の中途部を前後傾動可能に連結して,ブラシ体3の駆動中心軸Pを斜め下向きに指向させるようにしてもよい。図6はそのための本発明の第3実施例を示しており,ブラシ腕2が本体ケース1に固定される直線状の腕基部2Aと,超音波モータ10を収容するモータケース2Bとからなり,モータケース2Bの下端が腕基部2Aの上端に対して横向きの軸35を介して前後傾動可能に連結されている。
【0036】腕基部2Aの内部には,モータケース2Bを任意の傾動角度において傾動不能にロック固定するロック具36を配置する。そのロック具36としては,縦長の棒状を呈していて,腕基部2Aに上下スライド自在に支持されてばね37で押し上げ付勢されており,ロック具36の上端に設けた係合部38を,モータケース2Bの下端周面に設けた係合溝39のひとつと係合させることにより,モータケース2Bを傾動不能にロック固定できるようになっている。腕基部2Aの外表面に操作ノブ40を備えており,この操作ノブ40をばね37の付勢力に抗して押し下げ操作すると,ロック具36によるロック状態を解除できる。」
(ス)「【0037】(第4実施例) 図7は本発明の第4実施例を示しており,この場合のブラシ腕2は,これの下端が本体ケース1の上端に対して着脱可能に固定できるようになっている。ここでのブラシ腕2と本体ケース1とは,両者の連結部に設けた雄雌のコネクタ41・42を介して,電気的に接続することができる。符号43は防水用のパッキンである。」
(セ)上記(ケ),図1より,電動歯ブラシは本体ケース1と,前記本体ケース1と接続されるブラシ腕2及びブリッスル24を備えるブラシ体3からなる歯ブラシとから構成され,前記ブラシ腕2は,ブラシ体3が接続される先端部(以下,「ブラシ腕先端部」という。),ブラシ腕先端部と接続する部分(以下,「ブラシ腕接続部」という。),及び,前記ブラシ腕先端部及びブラシ腕接続部以外の部分(以下,「ブラシ腕本体部」という。)とから構成されるといえる(以下の参考図1を参照)。
(ソ)参考図1
(タ)上記(コ),(セ),(ソ)より,図1には,電動歯ブラシにおいて,ブラシ腕2を湾曲させ,ブラシ体3の駆動中心軸Pを斜め下向きに指向させた構成が記載されており,当該構成において,駆動中心軸Pと本体ケース1の縦方向の中心軸とで挟む角度θを68度とする,すなわち,本体ケース1の縦方向の中心軸に対して,ブラシ腕先端部の曲げ角度を22度(90度-68度)とする点が記載されている。
(チ)上記(セ),(ソ),(タ)より,歯ブラシは,ブラシ腕本体部に対して,ブラシ腕先端部が22度に位置するようにブラシ腕2の全体を湾曲させブリッスル24側に曲げた歯ブラシであることがわかる。
したがって,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「電動歯ブラシの本体ケース1に接続された歯ブラシにおいて,前記歯ブラシはブラシ腕本体部,ブラシ腕接続部,ブラシ腕先端部,及び,ブリッスル24を備え,前記ブラシ腕本体部に対して,前記ブラシ腕先端部が22度に位置するようにブラシ腕2の全体を湾曲させ前記ブリッスル24側に曲げた歯ブラシ。」
イ 引用文献2について
当審にて通知した拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審にて付与した。)。
(ア)「【請求項6】
レバー軸を任意方向に屈曲形成することを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の電動歯ブラシ。
【請求項7】
第一運動変換機構におけるモータ軸とレバー軸との連結角度と,第二運動変換機構におけるレバー軸とブラシ体との連結角度とを,任意角に設定することを特徴とする請求項1~6のいずれか記載の電動歯ブラシ。」
(イ)「【請求項11】
モータを備えるグリップ本体部と,該グリップ本体部に着脱自在であってレバー軸とブラシ体とを備えるブラシ部とで電動歯ブラシ本体部を形成することを特徴とする請求項1~10のいずれか記載の電動歯ブラシ。」
(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,電動歯ブラシに関し,詳しくは,モータの回転運動をブラシ体の回転往復運動に変換する為の技術に関する。」
(エ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり,ブラッシング時の使用感を向上させる為にブラシ体を薄型に形成したりブラシ近傍に角度を設けることが容易であり,構造が簡素化可能であるとともに,動力の伝達効率が高い電動歯ブラシを提供することを課題とするものである。」
(オ)「【0012】
また,レバー軸5を任意方向に屈曲形成することも好ましく,このようにすることで,奥歯等のブラシ先端の届き難い箇所に当てることが更に容易になり,ブラッシング時の使用性が向上するとともに歯垢を高効率で除去することができる。
【0013】
また,第一運動変換機構51におけるモータ軸3aとレバー軸5との連結角度と,第二運動変換機構52におけるレバー軸5とブラシ体4との連結角度とを,任意角に設定することも好ましく,このようにすることで,奥歯等のブラシ先端の届き難い箇所に当てることが更に容易になり,ブラッシング時の使用性が向上するとともに歯垢を高効率で除去することができる。」
(カ)「【0017】
また,モータ3を備えるグリップ本体部40と,該グリップ本体部40に着脱自在であってレバー軸5とブラシ体4とを備えるブラシ部41とで電動歯ブラシ本体部1を形成することも好ましく,このようにすることで,ブラシ部40がアタッチメントとして交換可能になるとともに,グリップ本体部40側の構造をシンプルにすることができる。」
(キ)「【0018】
【発明の実施の形態】
以下,本発明を添付図面に示す実施の形態に基づいて説明する。本発明の実施の形態における一例の電動歯ブラシは,図1等に示すように,電動歯ブラシ本体部1の外殻を成すケース2の内部に駆動源であるモータ3を備えるとともに,ケース2の先端部側面からは円筒形のブラシ体4を一部露出させて備えている。ブラシ体4の露出側の正面にはブラシ8を立設しており,また,ケース2内に位置するブラシ体4の下端部には回転中心軸10を設けていて,回転中心軸10を中心にブラシ体4とブラシ8は一体に回転自在となっている。この回転中心軸10は後述のレバー軸5の軸方向と略直交するものである。そして,ケース2内においてモータ3とブラシ体4との間には,その中央部に支点9を有して該支点9を中心に両端部5a,5bがシーソー状に揺動自在となるようにレバー軸5を設けている。
【0019】
モータ3にはレバー軸5側に向けてモータ軸3aを突設させており,モータ軸3aとレバー軸5を略一直線上に位置させている。また,モータ軸3aには図2,図3等にも示すような偏心部材6を圧入により連結させている。レバー軸5の両端部5a,5bのうちモータ軸3aと対向する側の端部5aには,前記偏心部材6を嵌入して連結させる為の受け部7を凹設している。偏心部材6のヘッド部6aはモータ軸3aの回転に伴い偏心回転運動を行うように該モータ軸3aとは偏心させたものであり,受け部7は,前記偏心部材6のヘッド部6aが行う偏心回転運動のうち所定方向の直線往復運動のみをレバー軸5側に伝達して,支点9を中心とした平面的な揺動運動を端部5aに行わせるように形成している。つまり,本例においては,上記の偏心部材6及び受け部7によって,モータ軸3aの回転運動をレバー軸5の一端部である端部5aの揺動運動に変換する第一運動変換機構51を形成している。
【0020】
なお,偏心部材6と受け部7との接触部分には,転がり部材25として図4に示すような回転リング体11を設けても良い。この場合,回転リング体11をリング固定軸12に回転自在に嵌合させてヘッド部6aを形成するとともに,リング固定軸12の一端側を偏心部材6のベース部6bに圧入することでヘッド部6aとベース部6bとを一体化させて偏心部材6を構成している。回転リング体11はリング固定軸12の圧入側と逆側で抜け止めされており,且つ,上記のように回転自在であるので,駆動時にはレバー軸5の受け部7と回転リング体11とが転がり摩擦することとなり,偏心部材6と受け部7との接触部分における摩耗が殆ど発生しなくなる。回転リング体11とリング固定軸12との間にはすべり摩擦が生じるが,これは線接触である為に摩耗は抑制される。これに対して回転リング体11を設けない場合は,偏心部材6と受け部7との接触部分において常に点接触で滑り摩擦することとなり,摩耗が急速に生じてしまう。つまり,上記のような転がり部材25を設けることで,第一運動変換機構51の寿命が向上するものである。
【0021】
図5には,レバー軸5の端部5aとは逆側の端部5bと,ブラシ体4とを示している。図示のように,レバー軸5の端部5bには,その先端が挟み形状となるように溝部13を凹設しており,ブラシ体4の下端部には回転中心軸10と平行に且つ該回転中心軸10とは偏心させて円柱形状のピン部14を設けている。溝部13はピン部14の軸方向に貫通して形成されているので,図6に示すようにレバー軸5の端部5bとブラシ体4とを対向させた状態で溝部13にピン部14を嵌入させると,端部5bの挟み形状の先端部分がピン部14を挟持した状態で溝部13とピン部14とが摺動自在に連結する。ピン部14は溝部13内においてレバー軸5の軸方向にスライド自在であって,レバー軸5が支点9を中心に揺動運動を行うと,溝部13及びピン部14を介してブラシ体4全体が回転中心軸10を中心とした回転往復運動を行う。
【0022】
このように,本例においては,ブラシ体4にピン部14を設けるとともに,レバー軸5の端部5bにピン部14と摺動自在に連結してレバー軸5の端部5bの揺動運動をブラシ体4の回転往復運動に変換する溝部13を設けることで,レバー軸5の他端部である端部5bの揺動運動をブラシ体4の回転往復運動に変換する第二運動変換機構52を形成しているが,上記構成に限らず,例えば図7に示すように,レバー軸5の端部5bにピン部14´を設けるとともに,ブラシ体4にピン部14´と摺動自在に連結してレバー軸5の端部5bの揺動運動をブラシ体4の回転往復運動に変換する溝部13´を設けることでも,同様の第二運動変換機構52を形成することができる。
【0023】
そして,本例においては,上記の第一運動変換機構51,レバー軸5,第二運動変換機構52等を用いてモータ3からブラシ体4に動力を伝達する構成であることから,高効率での駆動力伝達を実現することができるとともに,ブラシ体4の構成も簡素でよくて薄く形成可能となる。加えて,レバー軸5には支点9を精度良く設けるだけで動力の伝達効率低下や騒音の発生を有効に防止することができ,シンプル且つ安価な電動歯ブラシとなるものである。」
(ク)「【0024】
また,本例においては,ブラシ8近傍に適当な角度を設けて効率的なブラッシングを可能にすることができる利点もある。具体的には,例えば図8に示すようにレバー軸5中に屈曲部15を設け,この屈曲部15を介してレバー軸5を任意方向に屈曲形成すれば良い。屈曲部15は第一運動変換機構51側の端部5aと支点9との間に設けても良いし,支点9と第二運動変換機構52との間に設けても良く,いずれの場合であっても,支点9によりレバー軸5を揺動自在に確実に支持しておけば第一及び第二運動変換機構51,52を介して同様の動力伝達を実現することができる。そして,上記構成によって,電動歯ブラシ本体1を構成するグリップ本体部40とブラシ部41とにおいて,使用者が把持して手動操作を行うグリップ本体部40の中心軸C1に対して,ブラシ体4を備えるブラシ部41の中心軸C2を,レバー軸5の屈曲角である角度αだけ傾斜させることができ,ブラシ8の先端を届き難い箇所にまで容易に当てることができて使用性が向上するとともに高効率での歯垢除去が可能となる。」
(ケ)「【0030】
図13には,電動歯ブラシ本体部1を構成するブラシ部41をグリップ本体部40から着脱自在に設けた場合を示しているが,この場合,モータ3と偏心部材6をグリップ本体部40に備え,ブラシ体4とレバー軸5をブラシ部41に備えるとともに,偏心部材6とレバー軸5の受け部7とがブラシ部41の取外し状態では連結せず,ブラシ部41の装着により偏心部材6と受け部7が連結して第一運動変換機構51を形成するように設けることで,グリップ本体部40側の構造をシンプルにすることができる。」
(コ)「【0040】
また,請求項6記載の発明にあっては,請求項1~5のいずれか記載の発明の効果に加えて,奥歯等のブラシ先端の届き難い箇所に当てることが更に容易になり,ブラッシング時の使用性が向上するとともに歯垢を高効率で除去することができるという効果がある。
【0041】
また,請求項7記載の発明にあっては,請求項1~6のいずれか記載の発明の効果に加えて,奥歯等のブラシ先端の届き難い箇所に当てることが更に容易になり,ブラッシング時の使用性が向上するとともに歯垢を高効率で除去することができるという効果がある。」
(サ)「【0045】
また,請求項11記載の発明にあっては,請求項1~10のいずれか記載の発明の効果に加えて,ブラシ部がアタッチメントとして交換可能になるとともに,グリップ本体部側の構造をシンプルにすることができるという効果がある。」
(シ)上記(ク),図8より,電動歯ブラシ本体部1を構成するグリップ本体部40の中心軸C1に対して,ブラシ体4を備えるブラシ部41の中心軸C2を,レバー軸5の屈曲角である角度αだけ傾斜させた構成が記載されていることがわかる。
(ス)上記(キ),(ケ),図1,13より,グリップ本体部40から分離されるブラシ部41は,ブラシ体4が接続される先端部(以下,「ブラシ部ケース先端部」という。),ブラシ部ケース先端部と接続する部分(以下,「ブラシ部ケース接続部」という。),及び,前記ブラシ部ケース先端部及びブラシ部ケース接続部以外の部分(以下,「ブラシ部ケース本体部」という。)とから構成されるといえる(以下の参考図2を参照)。
(セ)参考図2
(ソ)上記(ク),(ス),(セ),図8より,ブラシ部41は,グリップ本体部40に対して,ブラシ8近傍が角度αに位置するように屈曲部15をくの字型にブラシ8側に曲げた構成であることがわかる。
したがって,引用文献2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明2)
「電動歯ブラシ本体部1のグリップ本体部40から分離されるブラシ部41において,前記ブラシ部41はブラシ部ケース本体部,ブラシ部ケース接続部,ブラシ部ケース先端部,及び,ブラシ8を備え,前記グリップ本体部40に対して,ブラシ8近傍が角度αに位置するように屈曲部15をくの字型にブラシ8側に曲げたブラシ部41。」
(3)対比・判断
ア 引用発明1に基づく検討
(ア)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,引用発明1における「電動歯ブラシの本体ケース1」,「歯ブラシ」,「ブラシ腕本体部」,「ブラシ腕接続部」,「ブラシ腕先端部」,「ブリッスル24」は,その機能に照らして,それぞれ,本願発明1における「電動歯ブラシの本体」,「歯ブラシ」,「電動取り付けハンドル」,「ブラシ付根」,「ブラシ頭部」,「ブラシ」に相当する。
そして,引用発明1の「電動歯ブラシの本体ケース1に接続された歯ブラシ」と本願発明1の「電動歯ブラシの本体から分離される歯ブラシ」は,「電動歯ブラシの本体に接続された歯ブラシ」という点で共通する。
また,引用発明1は「前記ブラシ腕本体部に対して,前記ブラシ腕先端部が22度に位置するようにブラシ腕2の全体を湾曲させ前記ブリッスル24側に曲げた」ものである。他方,本願発明1は「前記電動取り付けハンドルに対して,前記ブラシ頭部が20度から25度の範囲に位置するように前記ブラシ付根をくの字型に前記ブラシ側に曲げた」ものであり,20度から25度の範囲には,22度が含まれるので,両者は「前記電動取り付けハンドルに対して,前記ブラシ頭部が22度に位置するようにブラシ側に曲げた歯ブラシ」という点で共通する。
そうすると,両者は以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「電動歯ブラシの本体に接続された歯ブラシにおいて,前記歯ブラシは電動取り付けハンドル,ブラシ付根,ブラシ頭部,及び,ブラシを備え,前記電動取り付けハンドルに対して,前記ブラシ頭部が22度に位置するようにブラシ側に曲げた歯ブラシ」である点。
(相違点1)
本願発明1は,歯ブラシが電動歯ブラシの本体から分離されるのに対し,引用発明1は,歯ブラシが電動歯ブラシの本体から分離されるか否かについて明らかでない点。
(相違点2)
歯ブラシをブラシ側に曲げることについて,本願発明1は「ブラシ付根をくの字型」に曲げているのに対し,引用発明1はブラシ腕2の全体を湾曲させている点。
(相違点3)
歯ブラシをブラシ側に曲げることで,電動取り付けハンドルに対して,ブラシ頭部が取り得る角度の範囲について,本願発明1は,20度から25度の範囲であるのに対し,引用発明1は,22度である点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点1について
上記第4の2(2)ア(ス)によると,引用文献1には,本体ケース1に対して,ブラシ腕2が着脱可能に固定できる点が記載されている。
よって,引用発明1において,上記引用文献1に記載された事項を参酌して,歯ブラシが電動歯ブラシの本体から分離されるようにすることは当業者が容易になし得たことである。
b 相違点2について
上記第4の2(2)ア(オ),(カ)によると,引用文献1に記載された発明は,「ブラシ腕を湾曲ないしは屈曲することにより,歯の表側を磨く場合はもちろんのこと,歯の裏側や奥歯を磨く場合にも,自然な姿勢で楽に歯磨きが行える電動歯ブラシを提供する」ことを目的とし,ブラシ腕2を湾曲ないしは屈曲させてブラシ体3の回転中心軸Pを斜め下向きに指向させることによって,この目的を達成したものである。
そして,上記第4の2(2)ア(シ)によると,引用文献1には図6に関し,ブラシ腕2の中途部で,ブラシ体3をブリッスル24側に曲げた構成も記載されている(第3実施例)。
このように,引用文献1の記載からすると,所期の目的を達成するためには,ブラシ体3の回転中心軸Pを斜め下向きに指向させることが重要で,ブラシ腕2を湾曲又は屈曲させることによりそれが可能であることがわかるから,引用発明1には,ブラシ腕2を屈曲させることの動機付けが十分に認められる。
そうすると,上記目的及び図6に記載された構成(第3実施例)を参酌すれば,引用発明1において,ブラシ腕全体を湾曲させた構成に代えて,特定の箇所で屈曲させた構成とすることは当業者が容易に行い得たことである。そして,前記目的を達成すべく最適,好適な屈曲点の位置を決定することは当業者が通常行うことであり,その屈曲点をブラシ付根(ブラシ腕接続部)とすることに格別の困難性は認められない。
c 相違点3について
上記第4の2(2)ア(コ)によると,引用発明1は,ブラシ腕2の全体を湾曲させ,さらにブラシ体3の駆動中心軸Pを斜め下向きに指向させることにより,口を大きく開く必要もなく自然な姿勢で楽に歯の裏側や奥歯を磨けるようにしたものである。具体的には22度に曲げることによるものであるが,好適な角度の例示であって,この角度に限定されるものではないことは技術的に明らかである。
このような引用発明1において,上記の観点,及び,口の大きさ,歯の形状等は個人差があることは技術常識であることに鑑み,電動取り付けハンドルに対して,ブラシ頭部が取り得る角度に関して,その上限値,下限値を,実験的に最適化または好適化して値を設定することは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
そして,22度の角度で曲げた引用発明1において,20度から25度の範囲の角度は特段顕著なものではなく(およそ採用し得ないような角度ではない),当該角度範囲を採用することに関し,格別の困難性も認められない。
d 本願発明1の奏する作用効果をみても,引用発明1及び引用文献1に記載された事項から予測される範囲内のものであって,格別顕著なものでもない。
e 以上のとおりであるから,引用発明1において,上記相違点に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって,本願発明1は,引用発明1に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 引用発明2に基づく検討
(ア)対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると,引用発明2における「電動歯ブラシ本体部1のグリップ本体部40」,「ブラシ部41」,「ブラシ部ケース本体部」,「ブラシ部ケース接続部」,「ブラシ部ケース先端部」,「ブラシ8」は,その機能に照らして,それぞれ,本願発明1における「電動歯ブラシの本体」,「歯ブラシ」,「電動取り付けハンドル」,「ブラシ付根」,「ブラシ頭部」,「ブラシ」に相当する。
引用文献2の図13を参酌すると,引用発明2における「前記グリップ本体部40に対して,ブラシ8近傍が角度αに位置するように屈曲部15をくの字型にブラシ8側に曲げたブラシ部41」と本願発明1の「前記電動取り付けハンドルに対して,前記ブラシ頭部が20度から25度の範囲に位置するように前記ブラシ付根をくの字型に前記ブラシ側に曲げた歯ブラシ」は,「ブラシ頭部側をくの字型にブラシ側に曲げた歯ブラシ」という点で共通する。
そうすると,両者は以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「電動歯ブラシの本体から分離される歯ブラシにおいて,前記歯ブラシは電動取り付けハンドル,ブラシ付根,ブラシ頭部,及び,ブラシを備え,ブラシ頭部側をくの字型にブラシ側に曲げた歯ブラシ」である点。
(相違点1)
歯ブラシをくの字型にブラシ側に曲げる位置について,本願発明1は「ブラシ付根」であるのに対し,引用発明2は屈曲部15で曲げているものの,前記屈曲部15はブラシ付根ではない点。
(相違点2)
歯ブラシをくの字型にブラシ側に曲げる角度について,本願発明1は,電動取り付けハンドルに対して,ブラシ頭部が20度から25度の範囲に位置する角度であるのに対し,引用発明2は,具体的な曲げ角度及び前記曲げ角度が取り得る範囲が不明である点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点1について
上記第4の2(2)イ(ク)によると,引用文献2には,「屈曲部15は第一運動変換機構51側の端部5aと支点9との間に設けても良いし,支点9と第二運動変換機構52との間に設けても良く,いずれの場合であっても,支点9によりレバー軸5を揺動自在に確実に支持しておけば第一及び第二運動変換機構51,52を介して同様の動力伝達を実現することができる。」と記載されている。そして,上記構成により,「電動歯ブラシ本体1を構成するグリップ本体部40とブラシ部41とにおいて,使用者が把持して手動操作を行うグリップ本体部40の中心軸C1に対して,ブラシ体4を備えるブラシ部41の中心軸C2を,レバー軸5の屈曲角である角度αだけ傾斜させることができ,ブラシ8の先端を届き難い箇所にまで容易に当てることができて使用性が向上するとともに高効率での歯垢除去が可能」となる効果があることが記載されている。
そうすると,引用発明2において,屈曲部15を,支点9と第二運動変換機構52との間に設けることは当業者が容易になし得たことである。そして,上記効果を得るために最適,好適な屈曲点の位置を決定することは当業者が通常行うことであり,その屈曲点をブラシ付根とすることに格別の困難性は認められない。
b 相違点2について
上記第4の2(2)イ(ク)によると,引用文献2には,「また,本例においては,ブラシ8近傍に適当な角度を設けて効率的なブラッシングを可能にすることができる利点もある。・・・(中略)・・・そして,上記構成によって,電動歯ブラシ本体1を構成するグリップ本体部40とブラシ部41とにおいて,使用者が把持して手動操作を行うグリップ本体部40の中心軸C1に対して,ブラシ体4を備えるブラシ部41の中心軸C2を,レバー軸5の屈曲角である角度αだけ傾斜させることができ,ブラシ8の先端を届き難い箇所にまで容易に当てることができて使用性が向上するとともに高効率での歯垢除去が可能となる。」と記載されている。そして,ブラシの先端が届き難い箇所にまで容易に当てられるよう,前記角度αを実験的に最適化または好適化して値を設定することは,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
また,上記第4の2(2)ア(コ)によると,引用文献1には,電動歯ブラシを構成する歯ブラシにおいて,口を大きく開く必要もなく自然な姿勢で楽に歯の裏側や奥歯を磨けるように,歯ブラシを,本体の縦方向の中心軸に対して,歯ブラシのブラシ頭部を22度に位置するようにブラシ側に曲げた構成が記載されている。
そして,電動取り付けハンドルに対して,ブラシ頭部が取り得る角度に関して,口の大きさ,歯の形状等は個人差があることは技術常識であるとともに,引用文献1に22度の角度で曲げた点が記載されていることも踏まえれば,20度から25度の範囲の角度は特段顕著なものではないから(およそ採用し得ないような角度ではない),引用発明2において,当該角度範囲を採用することに関し,格別の困難性も認められない。
c 本願発明1の奏する作用効果をみても,引用発明2及び引用文献1に記載された事項から予測される範囲内のものであって,格別顕著なものでもない。
d 以上のとおりであるから,引用発明2において,上記相違点に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって,本願発明1は,引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)以上のとおり,本願発明1は,引用発明1,又は,引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
(5)審判請求書及び令和2年6月13日付け(令和2年6月15日提出)の意見書(以下,「意見書2」という。)には,個人の歯に合わせて頭部の角度を20度又は25度を選択することが可能である旨の記載がある(審判請求書の1ページの[本発明と引用発明の対比],及び,意見書2の1ページの【意見の内容】を参照。)。
仮に本願発明1が上記事項を含んでいるものとしても,この点は,当業者が容易になし得たことである。
すなわち,上記第4の2(2)ア(サ),(シ)によると,引用文献1の段落【0033】-【0036】,図5,6には,本体ケース1の縦方向の中心軸とブラシ頭部のなす角度を変更可能とする構成が記載されている。
そして,口の大きさ,歯の形状等は個人差があることは技術常識であることも鑑みれば,引用発明1又は引用発明2において,個人の歯に合うように複数の角度を選択できるようにすることは当業者が容易になし得たことである。
また,電動歯ブラシの歯ブラシにおいて,個人で専用の交換用歯ブラシを使用することは周知である(上記第4の2(2)ア(ク)を参照。)。
そうすると,各個人の歯に合うように,頭部の角度が異なる複数の交換用歯ブラシを用意し,それらを選択可能とすることは当業者が容易になし得たことである。
その場合,20度と25度の角度は特段顕著なものではなく(およそ採用し得ないような角度ではない。),当該角度を採用することに関し,格別の困難性も認められない。
したがって,本願発明1が審判請求書及び意見書2に記載の事項を含むものであるとしても,本願発明1は,引用発明1,又は,引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり,本願は,請求項1に係る発明が明確でないから,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものとは認められず,本願は拒絶すべきものである。
また,請求項1に係る発明が明確であるとしても,請求項1に係る発明は,引用発明1,又は,引用発明2及び引用文献1に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-007105