特許拒絶査定不服審判
2019-004519
建築物の消費電力低減構造
- 審判番号
- 2019-004519
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-022081外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月05日
- 審決日
- 2020年07月07日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】legami株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人まこと国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H01F) / P18 .575-Z (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2018- 22081「建築物の消費電力低減構造」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日出願公開、特開2018-133564〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月9日に出願したものであって(優先権主張 平成29年2月15日(以下「優先日」という。))、平成30年6月20日付け拒絶理由通知に対して同年10月24日付けで手続補正がなされたが、同年12月27日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成31年4月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成31年4月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成31年4月5日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正について
平成31年4月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前に、
「【請求項1】
建築物に付随する配線であって、屋外の電力供給元に接続されている配線と、
前記配線に接続された建築物の差込接続器と、
消費電力低減装置と、を有し、
前記消費電力低減装置が、Ni-Zn系フェライトから形成された第1部材と、前記第1部材の裏面に積層された第2部材であって、Feを主成分として含み且つCu、Nb、Ti及びMnを含む金属材料から形成された第2部材と、を有し、
前記消費電力低減装置が、その第2部材を配線側に向けて前記配線に直接的に取り付けられている、建築物の消費電力低減構造。
【請求項2】
前記消費電力低減装置が、分電盤内の配線に直接的に取り付けられている、請求項1に記載の建築物の消費電力低減構造。
【請求項3】
前記分電盤が、ブレーカーを有し、
前記消費電力低減装置が、前記ブレーカーに接続された配線の、前記ブレーカーから10cm以内の範囲に直接的に取り付けられている、請求項2に記載の建築物の消費電力低減構造。
【請求項4】
前記第1部材及び第2部材がそれぞれ扁平状であり、
前記第2部材の裏面には、貼着剤層が積層されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の消費電力低減構造。
【請求項5】
前記第2部材の少なくとも周端面が絶縁層で被覆されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の消費電力低減構造。
【請求項6】
前記配線が、複数本の電気コードを有し、
前記消費電力低減装置が、前記複数の電気コードを横断して直接的に取り付けられている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の消費電力低減構造。
【請求項7】
前記消費電力低減装置が、長軸と短軸を有する平面視形状に形成されており、
前記長軸が前記配線の長手方向に沿うように、前記消費電力低減装置が前記配線に直接的に取り付けられている、請求項1乃至6の何れか一項に記載の消費電力低減構造。
【請求項8】
前記配線が、複数本の電気コードを有し、
前記消費電力低減装置が、前記複数の電気コードにそれぞれ独立して直接的に取り付けられている、請求項7に記載の消費電力低減構造。
【請求項9】
配線と前記配線に接続された差込接続器とを有する建築物の、前記配線に、Ni-Zn系フェライトから形成された第1部材と前記第1部材の裏面に積層された第2部材であってFeを主成分として含み且つCu、Nb、Ti及びMnを含む金属材料から形成された第2部材とを有する消費電力低減装置を、その第2部材を配線側に向けて直接的に取り付ける、建築物の消費電力低減方法。」とあったところを、
本件補正により、
「【請求項1】
建築物に付随する配線であって、屋外の電力供給元に接続されている配線と、
前記配線に接続された建築物の差込接続器と、
消費電力低減装置と、を有し、
前記消費電力低減装置が、Ni-Zn系フェライトから形成された第1部材と、前記第1部材の裏面に積層された第2部材であって、Feを主成分として含み且つCu、Nb、Ti及びMnを含む金属材料から形成された第2部材と、を有し、
前記消費電力低減装置が、長軸と短軸を有する平面視形状に形成されており、
前記長軸が前記配線の長手方向に沿うようにして、前記消費電力低減装置が、その第2部材を配線側に向けて前記配線に直接的に取り付けられている、建築物の消費電力低減構造。
【請求項2】
前記配線が、複数本の電気コードを有し、
前記消費電力低減装置が、前記複数の電気コードにそれぞれ独立して直接的に取り付けられている、請求項1に記載の消費電力低減構造。」とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。
上記の補正は、
ア.補正前の請求項2ないし6及び9を削除し、
イ.補正前の請求項1の「前記消費電力低減装置が、その第2部材を配線側に向けて前記配線に直接的に取り付けられている、」という構成を、「前記消費電力低減装置が、長軸と短軸を有する平面視形状に形成されており、前記長軸が前記配線の長手方向に沿うようにして、前記消費電力低減装置が、その第2部材を配線側に向けて前記配線に直接的に取り付けられている、」とし(本件補正後の請求項1)、
ウ.補正前の請求項7を引用していた請求項8の引用請求項を1とするとともに、項番を2に繰り上げ(本件補正後の請求項2)
たものである。
上記補正事項アは、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。
上記補正事項イは、補正前の請求項1に補正前の請求項7の「前記消費電力低減装置が、長軸と短軸を有する平面視形状に形成されており、前記長軸が前記配線の長手方向に沿うように」という構成を付加して限定するものであり(実質的に、補正前の請求項7のうち請求項1の記載を引用するものを独立形式の記載に改めて補正後の請求項1としたものである)、補正前後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記補正事項ウは、補正事項ア及びイによって、補正前の請求項7が実質的に補正後の請求項1になったことに伴い、補正前の請求項7を引用していた請求項8の引用請求項を1とするとともに、項番を2に繰り上げたものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。
2.引用文献及びその記載事項
(1)引用文献1・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された「NTE ECO CHIP,インターネット,株式会社ソフィ,2013年5月28日,平成29年6月8日検索,URL,http://eco-chip.net/」(以下、「引用文献1」という。)には、「NTE ECO CHIP」という商品の宣伝に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
ア.第1頁の左上には、節電を宣伝する「節電エコチップ」という文言とともに「NTE ECO CHIP」という商品名が掲載されている。
イ.第1頁の左下には、商品であるチップの包装パッケージの写真が掲載されており、包装パッケージ内のチップは長方形の形状をしており、表面に商品名「NTE EPO CHIP」が記載されている。
また、当該写真の右側には「『NTE ECO CHIP』は、ソフトフェライトを素材に使用し、電磁波を吸収します。」との文章が掲載されている。
ウ.第1頁の中程には、長方形のチップが、建築物に付随するブレーカに取り付けられており、ブレーカが配線と接続されている写真が掲載されている。
エ.第2頁の左上には、長方形のチップが、建築物に付随する配電盤ケースに取り付けられており、配電盤ケースのスイッチが「入」である写真が掲載されている。
・上記アないしエによれば、建築物に付随するブレーカまたは配電盤ケースに、節電を宣伝し、電磁波を吸収するとされるチップが取り付けられている。ここで、ブレーカや配電盤は配線とともに建築物に付随するものであるから、建築物の構造といえる。
・上記ウ及びエによれば、ブレーカは配線と接続され、配電盤ケースのスイッチは「入」である。また、ブレーカ及び配電盤ケースの内部にも配線を有していることは自明である。
・上記イないしエによれば、チップはソフトフェライトを素材に使用し、長方形の形状をしたものである。
したがって、上記記載事項及び図面を勘案すると上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「建築物に付随するブレーカまたは配電盤ケースに、節電を宣伝し、電磁波を吸収するとされるチップが取り付けられており、
ブレーカは配線と接続され、配電盤ケースのスイッチは「入」であり、ブレーカ及び配電盤ケースの内部にも配線を有しており、
チップはソフトフェライトを素材に使用し、長方形の形状をしたものである、建築物の構造。」
(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-239172号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
ア.「【0009】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1、図2に示すように、電磁波吸収熱変換チップ1は、携帯電話機の筐体外面(裏面)に貼り付けて通話時に発生する電磁波を抑制するものであって、全体が偏平な円盤形に形成され、その大きさは好ましくは直径15~25mm、厚さ1.5~2.5mmとされる。なお、電磁波吸収熱変換チップ1は、円盤形に限らず、カード形に形成されて携帯電話機の筐体外面(裏面)に広く貼り付けられる大きさとしてもよい。なお、携帯電話機には多機能携帯電話機も含む。
【0010】
電磁波吸収熱変換チップ1は、扁平な円盤型の磁性体2と、磁性体2の裏面に一体的に張設された磁気シールドシート3とから形成されている。
【0011】
磁性体2としては、酸化鉄を主成分とするフェライト材を1000~1400℃の高温で焼き固めたチップ型のものが用いられる。
【0012】
磁気シールドシート3は、高透磁率ナノ結晶軟磁性材料薄帯31を上下両面からホットメルト接着剤33を介してPETフィルム(樹脂フィルム)32で挟持したシートによって形成されたものが用いられる(図1参照)。高透磁率ナノ結晶軟磁性材料薄帯31としては、Feを主成分としSi、B、Cu及びNbが添加された金属の高温融液を急冷して製造された非晶質軟磁性合金薄帯とし、この薄帯を結晶化温度以上で熱処理することによって得られる結晶粒径50nm以下の微細なナノ結晶粒組織を主体とした軟磁性材料薄帯が、好ましく使用される。
【0013】
電磁波吸収熱変換チップ1は、磁気シールドシート3の表面に携帯電話機貼り付け用の粘着部4が形成され、この粘着部4の表面を覆うように剥離紙5が設けられる。
【0014】
そして、図3に示すように、電磁波吸収熱変換チップ1は、剥離紙5を剥ぎ取って粘着部4を露出させて、これを携帯電話機の裏面(画面側とは反対側の筐体外面)に貼り付けて使用される。このようにして、電磁波吸収熱変換チップ1を、剥離紙5を剥がして携帯電話機の裏面(画面側の反対面)に貼り付けると、携帯電話機の通話時に機器内部から発生する電磁波による磁束が磁性体2に収束される(図2参照)。磁気シールドシート3は、磁性体2において携帯電話機の筐体外面への貼り付け面側に設けられているので、携帯電話機と磁性体2との間に配置されるから、磁性体2によって収束される電磁波がこの磁気シールドシート3に確実に集められる。すると、磁気シールドシート3には電磁波による磁束によって渦電流が流れて熱を発生し、電磁波の磁界エネルギーが熱変換されて熱として消費される。磁気シールドシート3に集められる電磁波は、磁気シールドシート3を形成する高透磁率ナノ結晶軟磁性材料によって打ち消される。磁気シールドシート3がナノ結晶で構成されるから、広周波数帯域の電磁波を打ち消すことができる。磁気シールドシート3は、Feを主成分としSi、B、Cu及びNbが添加されて結晶粒径50nm以下のナノ結晶粒組織を主体とした軟磁性材料薄帯を、上下両面から樹脂フィルムで挟持したシートによって形成されることにより、軟磁性を良好に確保して高透磁率を保持することができ、広周波数帯域の電磁波に対して十分な電磁波減衰効果、ノイズ抑制効果が得られる。
【0015】
このように、携帯電話機の通話時に発生する電磁波は、磁性体2によって収束され、磁気シールドシート3によって打ち消されるから、効率よく減衰される。従って、携帯電話機において電磁波吸収熱変換チップ1を貼り付けた裏面側及び電磁波吸収熱変換チップ1を貼り付けていない表面側(画面側)の両側ともに電磁波を効率よく減衰することができ、使用者の頭部側への電磁波を大幅に低減することができる。」
上記アによれば、上記引用文献2には電磁波吸収に関係する次の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されている。
「電磁波吸収するチップが、フェライト材を焼き固めたチップ型の磁性体と、前記磁性体の裏面に一体的に張設されたFeを主成分とする磁気シールドシートとからなり、磁気シールドシートの表面に形成された粘着部を貼り付けて使用することで、電磁波が磁性体によって収束され、磁気シールドシートによって打ち消されること」
(3)引用文献3及び4
(3-1)引用文献3
原査定において、周知技術を示す文献として引用された特開2002-180214号公報(以下、「引用文献3」という。)には、磁気シールド材に関して、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
ア.「【0012】本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)~(5)を提供する。
(1)カラー陰極線管の磁気シールドに用いられる板厚0.05mm以上0.5mm以下の鋼板であって、重量%で、C:0.06%以下、Si:1%以下、Mn:0.1%以上2%以下、P:0.1%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.001%以上1%以下、N:0.006%以下、Ti:0.01%以下、V:0.01%以下、Nb:0.01%以下、Cu:0.005%以上0.5%以下、Sn:0.001%以上0.3%以下、Ni:0.005%以上2%以下、Cr:0.004%以上0.2%以下、Mo:0.3%以下を含み、残部が実質的にFeからなり、Al2O3/(Al2O3+CaO+MnO+SiO2)≧0.1の関係を満たし、非履歴透磁率が7500以上であることを特徴とするカラー陰極線管磁気シールド用冷延鋼板。」
(3-2)引用文献4
原査定において、周知技術を示す文献として引用された特開平11-50207号公報(以下、「引用文献4」という。)には、磁気シールド材に関して、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
ア.「【0002】
【従来の技術】カラーブラウン管の基本構成は、電子銃と電子ビームを映像に変える蛍光面から成り立ち、更には電子ビームが地磁気により偏向されるのを防ぐ磁気シールド材やシャドウマスクが内部を覆っているが、マスクフレーム材はこれらの構造を支えるフレーム材として重要である。また、最近のTVの大型化やハイビジョン化などで画面の鮮明度に対する要求が強いことから、マスクフレーム材にも磁気シールド性が求められる。磁気シールド性は、通常磁気特性の保磁力で評価される。マスクフレーム用冷延鋼板は通常0.5~1.5mmの鋼板で、この鋼板コイルは電気メーカでプレス加工された後、550~650℃程度の温度の湿潤雰囲気で黒化処理を施されブラウン管内部に組み込まれる。黒化処理の目的は、錆防止、熱放射率を大きくすることと電子の乱反射抑止、プレス加工による磁性劣化の回復などである。」
イ.「【0008】
【課題を解決するための手段】その発明の要旨とするところは、
(1)重量%で、C≦0.005%,Si≦0.1%,Mn:0.1~1.0%,P≦0.1%,S≦0.017%,solAl:0.001~0.015%,N≦0.004%,B:0.0005~0.005%,Ti≦0.01%,V≦0.01%,Nb≦0.01%,Cu:0.005~0.2%,Sn:0.001~0.1%,Ni:0.005~0.2%,Cr:0.004~0.1%,Mo≦0.1%,Al2O3/(Al2O3+CaO+MnO+SiO2)比率≧0.1、残部が鉄および不可避的不純物からなる化学成分であり、平均結晶粒径が15~70μmで、調質圧延に相当する歪みが0.1~1.0%であり、板厚0.5~1.5mmであることを特徴とするTVブラウン管マスクフレーム用冷延鋼板。」
(3-3)上記の記載によれば、引用文献3及び4には、磁気シールド材に関して、以下の技術事項が記載されている。
「Feを主成分とする磁気シールド材にMn、Ti、Nb、Cuを含有させること」
(4)引用文献5
原査定において、周知技術を示す文献として引用された登録実用新案3071897号公報(以下、「引用文献5」という。)には、電磁波の吸収に関して、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
ア.「【請求項1】 電子機器のケーブルに取りつけて用いられる不要電磁波吸収具であって、ケーブルを包囲する形状の二分割された軟磁性体と、この軟磁性体を覆う二分割された収納ケースに於いて、該収納ケースを透明樹脂で形成したことを特徴とする不要電磁波吸収具。」
イ.「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、電子機器のケーブルに取り付け、ケーブルから放射される不要電磁波の抑制、或いは外部からケーブルに流入するサージ電流の低減等を目的とする不要電磁波吸収具であって、クランプフィルターとも称されるクランプ式不要電磁波吸収具に関するものである。」
ウ.図1及び図2には、不要電磁波吸収具がケーブルを覆うように取り付けられている状態が記載されている。
上記の記載によれば、引用文献5には、電磁波の吸収に関して、以下の技術事項が記載されている。
「ケーブルから放射される電磁波を抑制するために、ケーブルを電磁波を吸収する部材で覆うように取り付けること」
3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明のブレーカや配電盤ケースが、建築物に付随する配線によって商用の電力系統や室内の電源コンセントと接続されていることは自明であるから、本願補正発明が「建築物に付随する配線であって、屋外の電力供給元に接続されている配線と、前記配線に接続された建築物の差込接続器」を有することに相当する。
イ.引用発明の「節電を宣伝し、電磁波を吸収するとされるチップ」は、本願補正発明の「消費電力低減装置」に相当する。
ウ.本願補正発明は「前記消費電力低減装置が、Ni-Zn系フェライトから形成された第1部材と、前記第1部材の裏面に積層された第2部材であって、Feを主成分として含み且つCu、Nb、Ti及びMnを含む金属材料から形成された第2部材と、を有し、」「その第2部材を配線側に向けて」取り付けられているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない点で相違する。
エ.引用発明のチップは、「長方形の形状」をしているから長軸と短軸を有する形状であり、本願補正発明の「前記消費電力低減装置が、長軸と短軸を有する平面視形状に形成されて」いることに相当する。
オ.本願補正発明は「前記長軸が前記配線の長手方向に沿うようにして、前記消費電力低減装置が、」「前記配線に直接的に取り付けられている」のに対して、引用発明は、チップがブレーカまたは配電盤ケースに取り付けられている点で相違する。
カ.引用発明の「節電を宣伝し、電磁波を吸収するとされるチップ」が取り付けられている建築物の構造は、本願補正発明の「建築物の消費電力低減構造」に相当する。
そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「建築物に付随する配線であって、屋外の電力供給元に接続されている配線と、
前記配線に接続された建築物の差込接続器と、
消費電力低減装置と、を有し、
前記消費電力低減装置が、長軸と短軸を有する平面視形状に形成されている、建築物の消費電力低減構造。」で一致し、
以下の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明は「前記消費電力低減装置が、Ni-Zn系フェライトから形成された第1部材と、前記第1部材の裏面に積層された第2部材であって、Feを主成分として含み且つCu、Nb、Ti及びMnを含む金属材料から形成された第2部材と、を有し、」「その第2部材を配線側に向けて」取り付けられているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない点。
<相違点2>
本願補正発明は「前記長軸が前記配線の長手方向に沿うようにして、前記消費電力低減装置が、」「前記配線に直接的に取り付けられている」のに対して、引用発明は、チップがブレーカまたは配電盤ケースに取り付けられている点。
4.判断
上記相違点について判断する。
(1)<相違点1>について
引用文献2には、電磁波吸収するチップが、フェライト材を焼き固めたチップ型の磁性体と、前記磁性体の裏面に一体的に張設されたFeを主成分とする磁気シールドシートとからなり、磁気シールドシートの表面に形成された粘着部を貼り付けて使用することで、電磁波が磁性体によって収束され、磁気シールドシートによって打ち消されることが記載されている(上記「2.(2)」参照)。
ここで、フェライト材としてNi-Zn系フェライトは普通に使用されている。また、Feを主成分とする磁気シールド材にMn、Ti、Nb、Cuを含有させることは、引用文献3及び4(上記「2.(3)」参照)に記載されているように本願の優先日前から周知の技術事項である。
そうすると、引用発明の電磁波を吸収するとされるチップにフェライト材を使用することの阻害要因はないから、引用文献2記載の技術事項及び周知の技術事項を適用して、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(2)<相違点2>について
配線から電磁波が放射されることは自明であるところ、ケーブルから放射される電磁波を抑制するために、ケーブルを電磁波を吸収する部材で覆うように取り付けることは、引用文献5等に記載されているように、本願の優先日前から周知の技術事項である(上記「2.(4)」参照。その他の周知技術を示す文献として必要であれば、特開平11-177273号公報(【0015】、【0041】-【0043】、【0054】及び図2を参照)。
そうすると、引用発明のチップの取り付け場所として、上記周知の技術事項を適用して、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
なお、請求人は、審判請求書(令和1年6月20日に提出された手続補正書を参照)において「引用文献1においては、配線盤にエコチップを貼るだけで効果が得られるものであり、引用文献1には、これを敢えて3本の電線に直接的に貼り付ける行為に至るべき理由はなく、さらに進んで、これを長軸が配線の長手方向に沿うようにして配線に直接的に貼り付けるべき積極的な理由も見当たりません。」と主張している。
しかしながら、電磁波を吸収する部材であれば、上記<相違点2>について検討したとおり、ケーブルを覆うように取り付けることも周知の技術事項であるから、3本の電線に直接的に貼り付けることや、長軸が配線の長手方向に沿うようにして配線に直接的に貼り付けることは、当業者が適宜なし得る事項である。
よって、請求人の主張を採用することはできない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1ないし2、及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
5.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
平成31年4月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成30年10月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりものである。
2.引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項、引用発明、及び引用文献2ないし5は、上記「第2[理由]2.(1)ないし(4)」に記載したとおりである。
3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]1.」で検討した本願補正発明から「前記消費電力低減装置が、長軸と短軸を有する平面視形状に形成されており、前記長軸が前記配線の長手方向に沿うようにして」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]3.及び4.」に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項から当業者が容易になし得たものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。
第4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2019-004519