特許拒絶査定不服審判
2022-003222
チップ電子部品及びその実装基板
- 審判番号
- 2022-003222
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-180972
- 請求日
- 2022年03月02日
- 審決日
- 2023年02月20日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
- 【請求人代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 酒井 朋広
- 審判官 山本 章裕
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P18 .121-Z (H01F) / P18 .55 -Z (H01F) / P18 .575-Z (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-180972「チップ電子部品及びその実装基板」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月 4日出願公開、特開2021- 13042〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月23日(パリ条約による優先権主張 2014年7月29日 韓国)を出願日とする特願2014-216123号の一部を平成30年10月10日に新たに特許出願した特願2018-191770号の一部を令和2年10月28日に新たに特許出願したものであって、令和3年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年5月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月27日付けで拒絶査定されたところ、令和4年3月2日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出され、同年7月21日に上申書が提出されたものである。
第2 令和4年3月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年3月2日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の概要
令和4年3月2日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和3年5月31日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される、
「 磁性体本体と、
前記磁性体本体の内部に配置された内部コイルと、
前記内部コイルと接続され、前記磁性体本体の少なくとも一面に露出した引出部と、
前記引出部のうち、前記磁性体本体から露出した領域と接続された金属層と、
前記金属層を覆う外部電極と、を含み、
前記金属層は、前記磁性体本体から前記引出部が露出した面全体を覆い、
前記金属層は、めっきによって形成されためっき層であり、
前記磁性体本体は、樹脂内に分散された金属系軟磁性粒子を含む、インダクタ。」
との発明(以下、「本願発明」という。)を、
「 磁性体本体と、
前記磁性体本体の内部に配置された内部コイルと、
前記内部コイルと接続され、前記磁性体本体の少なくとも一面に露出した引出部と、
前記引出部のうち、前記磁性体本体から露出した領域と接続された金属層と、
前記金属層を覆う外部電極と、を含み、
前記金属層は、前記磁性体本体から前記引出部が露出した面全体を覆い、
前記金属層は、めっきによって形成されためっき層であり、
前記磁性体本体は、樹脂内に分散された金属系軟磁性粒子を含み、
前記引出部が前記磁性体本体から露出した領域の幅は、前記内部コイルの線幅と実質的に同一である、インダクタ。」(下線部は、補正箇所を示す。)
との発明(以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。
2.補正の適否
(1)補正の目的要件
上記補正の内容は、「引出部」について、その「磁性体本体から露出した領域の幅」が「内部コイルの線幅と実質的に同一である」ことを特定する補正である。そうしてみると、上記補正は請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する補正であり、上記補正の前後で産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当し、特許法第17条の2第5項第2号に規定された事項を目的とするものである。
(2)新規事項の有無
審判請求人は、上記補正の根拠が「図2等」であるとしている(審判請求書5ページ下から3ないし1行)。そこで、図2(図1の巻線型インダクタのA-A’断面を示す)を参照すると、内部コイル20と引出部21、22は直線状に同じ幅で描かれており、「前記引出部が前記磁性体本体から露出した領域の幅は、前記内部コイルの線幅と実質的に同一である」ように見える。
しかしながら、図1のB-B’断面である図3を参照すると、内部コイルの一端は巻線の内部から巻線をまたいで引出部21として側面まで引き出されている。この場合、巻線をまたぐ部分では内部コイルとこれをまたぐ部分との合計が幅になるところ、図2には一定の幅のままで記載されており図の記載が対応していない。また、本件明細書の段落【0015】の「また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。」との記載も合わせて参酌すると、図2は説明のための概略図であって、寸法を正確に表したものとはいえないから、図2を根拠として「前記引出部が前記磁性体本体から露出した領域の幅は、前記内部コイルの線幅と実質的に同一である」ことが記載されているとはいえない。また、他に引出部の磁性体本体から露出した領域の幅と内部コイルの線幅が実質的に同一である旨を示唆する記載はない。
したがって、上記補正により追加された「前記引出部が前記磁性体本体から露出した領域の幅は、前記内部コイルの線幅と実質的に同一である」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。よって、本件補正発明は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
3.独立特許要件について(予備的見解)
(1)上記「2.」で検討したとおり、本件補正における、本件補正前の請求項1についての補正事項は、特許法第17条の2第3項の規定(新規事項)に違反するものであるが、更に進めて、仮に新規事項には当たらないと判断されるとした場合についても以下に予備的に検討する。
上記「2.(1)」で検討したように、本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に規定された事項を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。
(2)本件補正発明
本件補正後の発明は、上記「1.」において「本件補正発明」としたものである。
(3)引用文献と引用発明
引用文献1(特開2003-297646号公報)には、図面とともに次の記載がある。なお、下線部は当審で付与した。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動体通信などの電子機器等に好適に用いられるチップ型電子部品に関するものである。」
「【0019】図1において、1は両端に端面1a,1bを有した基体で、基体1は誘電体材料、磁性材料、絶縁材料の少なくとも一つで構成される。特に磁性材料を用いることにより、高いインピーダンス値を得ることができる。具体的には、Fe2O3,ZnO,NiO,CuOなどを含む磁性材料で構成することが好ましい。基体1は、前記構成材料をプレス加工,押出し,または積層工法などにより、略直方体,略角柱状,略円柱状などの形状に形成される。特に略直方体にすることによって、構造が非常に簡単になるので、生産性がよく、コスト面が有利になり、実装性を向上させることができる等の効果を有する。また、断面形状は長方形状,円形状などで形成される。特に断面形状を長方形状にすることにより、回路基板に実装した際に取り付け高さを低くすることができるので、電子機器等の小型化を行なうことができる。また、基体1の角部には衝撃などにより角部に欠けなどによる特性の劣化などの発生を抑えるために面取りを施している。
【0020】2は、基体1中に設けられた内部導体で、内部導体2はインダクタンス,キャパシタンス,レジスタンスの内少なくとも一つの機能を有する部材で構成されている。内部導体2を構成する材料としては、銀,パラジウム,ニッケル,銅,白金,金の少なくとも一つを含む金属材料で構成されている。特に酸化や変質などを生じにくくするために、銀単体,もしくは銀合金(銀パラジウムなど)で構成することが好ましい。
【0021】内部導体2としての全体形状は、線状体,印刷などによる膜状体,導電箔を転写して構成するなどの箔状体等で構成される。
【0022】また、内部導体2の断面は、基体1中に略方形状,略円形状などに形成されている。更に、内部導体2は、略直線的に配置したり、図示していないが、蛇行的に配置したり、スパイラル状に埋設させたりしてもよい。
【0023】2a,2bは、内部導体の一部もしくは内部導体と電気的に接合された導体の一部を基体1の対向する一対の端面1a,1bのそれぞれの表面に表出させた引出部である。
【0024】3a,3bは基体1の端面1a,1bにそれぞれ設けられ、引出部2a,2bを通じて、内部導体2の一部もしくは内部導体2と電気的に接合された導体の一部を単層または多層構造によって形成された外部電極である。また、外部電極3a,3bはそれぞれ互いに非接触である。
【0025】図2は本発明の一実施の形態におけるチップ型電子部品の外部電極構成を示す断面拡大図である。
【0026】図2において4は外部電極3a,3bそれぞれの一構成であり、引出部2bが突出した端面1bを少なくとも含む基体1の表面に設けられた導電部である。導電部4は、端面1bより突出した引出部2bの端面側から形成するのではなく、引出部2bの端面よりも低い位置にある端面1bより形成し、引出部2bの側面と接合するようにしたことにより、従来のように導電膜3cを引出部2bと端面1bを少なくとも含む基体1表面に直接同時に形成する方法において、特に引出部2bの側面根元部分に導電膜3cの非形成部を生じる現象を回避して気泡などの隙間を生じにくくすることができ、導電部4と、これを覆うように形成した導電膜3cにおいて、引出部2bとの接合面積を増すことができるので、外部電極3bと内部導体2の接合強度を高めることができる。
【0027】導電部4の形成方法としては、塗布法、転写法、メッキ法、蒸着法などがある。
【0028】例えば従来のように、導電膜3cを引出部2bと端面1bを少なくとも含む基体表面に直接同時に導電性ペーストなどを塗布、乾燥、焼成などの硬化によって形成する法などに比較して、引出部2bの側面根元部分に気泡などの隙間を生じにくくすることができるだけでなく、導電性ペーストなどの塗布時に生じた隙間によって、乾燥、焼成などの硬化過程で導電性ペーストの収縮歪などで隙間部が発泡することや、避けることなどで生じていた損傷をも防止することができるので、更に外部電極3bと内部導体2の接合信頼性を高めることができる。
【0029】導電部4を構成する材料としては、導電材料および導電材料と非導電材料の複合材、および非導電材料などを用いる。特に金属を主成分とした材料を用いる。主成分とする金属材料としては、Au,Ag,Ni,Cu,Snなどが好ましい。また、Au,Ag,Ni,Cu,Snなどの材料には、耐候性などを向上させるために所定の元素を添加してもよい。
・・・(略)・・・
【0033】3cは導電膜で、Agなどを主成分とする導電性ペーストが導電部4を覆うように塗布し、焼付け、または乾燥硬化などにより形成される。3dは導電膜で導電膜3cを覆うようにAu,Ag,Ni,Cu,Snなどを主成分とし、めっきなどにより形成されている。また、導電膜3dは単層で構成してもよいが、材料構成的に多層構造としてもよい。」
【図2】
[図:0001399966000001.jpg]
上記記載事項から次のことがいえる。
上記段落【0019】によれば、両端に端面1a,1bを有しFe2O3,ZnO,NiO,CuOなどを含む磁性材料で構成される基体1を有している。
上記段落【0020】【0022】によれば、基体1中に設けられたインダクタンスの機能を有するたスパイラル状の内部導体2を備えている。
上記段落【0023】によれば、内部導体の一部を基体1の対向する一対の端面1a,1bのそれぞれの表面に表出させた引出部2a、2bを有している。
上記段落【0026】によれば、「引出部2bが突出した端面1bを少なくとも含む基体1の表面に設けられた導電部である」から、導電部4は端面1bに形成されている。また、「導電部4」は「引出部2bの端面よりも低い位置にある端面1bより形成し、引出部2bの側面と接合する」から、「導電部4」は引出部2bの側面と接合している。さらに、段落【0027】【0029】によれば、導電部4はメッキ法により形成され、金属を主成分としているといえる。
上記段落【0033】によれば、導電膜3cは導電部4を覆うように形成され、導電膜3dは導電膜3cを覆うように形成されている。
したがって、引用文献1には、「チップ型電子部品」に関して次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「 両端に端面1a,1bを有し、Fe2O3,ZnO,NiO,CuOなどを含む磁性材料で構成される基体1を有し、
基体1中に設けられたインダクタンスの機能を有するスパイラル状の内部導体2を備え、
内部導体2の一部を基体1の対向する一対の端面1a,1bのそれぞれの表面に表出させた引出部2a、2bを有し、
引出部2bが突出した端面1bを少なくとも含む基体1の表面に設けられた導電部4を有し、
導電膜3cは導電部4を覆うように形成され、導電膜3dは導電膜3cを覆うように形成され、
導電部4は、端面1bに形成されて引出部2bの側面と接合しており、メッキ法により形成され、金属を主成分とする、チップ電子部品。」
(4)対比、判断
ア 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明を引用発明と対比すると
(ア)引用発明の「基体1」は磁性材料で構成されるから、本件補正発明の「磁性体本体」に相当する。
(イ)引用発明は「基体1中に設けられたインダクタンスの機能を有するスパイラル状の内部導体2を備え、内部導体2の一部を基体1の対向する一対の端面1a,1bのそれぞれの表面に表出させた引出部2a、2bを有し」ている。ここで、「内部導体2」の「基体1中に設けられインダクタンスの機能を有するスパイラル状」の部分は、スパイラル状でありインダクタンスとして機能するから「コイル」といえ、本件補正発明の「前記磁性体本体の内部に配置された内部コイル」に相当する。
(ウ)本件補正発明の「前記内部コイルと接続され、前記磁性体本体の少なくとも一面に露出した引出部」を引用発明が有しているか特定されていない点で相違する。
(エ)引用発明の「導電部4」は、基体の端面1bに形成されて引出部2bの側面と接合してるから、本件補正発明の「前記引出部のうち、前記磁性体本体から露出した領域と接続された」「金属層」に相当する。
(オ)引用発明では「導電膜3cは導電部4を覆うように形成され、導電膜3dは導電膜3cを覆うように形成され」るから、「導電膜3c」と「導電膜3d」を合わせた構成が、本件補正発明の「前記金属層を覆う外部電極」に相当する。
(カ)引用発明においては、「導電部4」は引出部2bが表面に表出した「端面1bに形成されており、この点では本件補正発明と共通するものの、本件補正発明のように「面全体」を覆っているといえるかどうかは明らかではない点で相違する。
(キ)引用発明の「導電部4」は「メッキ法により形成され」ており、当該事項は本件補正発明の「前記金属層は、めっきによって形成されためっき層」であることに対応する。
(ク)本件補正発明において、「前記磁性体本体は、樹脂内に分散された金属系軟磁性粒子を含」むのに対して、引用発明の「基体1」は磁性材料を含んでいる点で共通するものの、「樹脂内に分散された金属系軟磁性粒子を含」むことは特定されていない点で相違する。
(ケ)本件補正発明では「前記引出部が前記磁性体本体から露出した領域の幅は、前記内部コイルの線幅と実質的に同一である」が、引用発明では当該事項が特定されていない点で相違する。
(コ)引用発明の「チップ電子部品」は「内部導体2」がインダクタンスとして機能するからインダクタといえ、本件補正発明の「インダクタ」に相当する。
そうしてみると、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「 磁性体本体と、
前記磁性体本体の内部に配置された内部コイルと、
引出部のうち、前記磁性体本体から露出した領域と接続された金属層と、
前記金属層を覆う外部電極と、を含み、
前記金属層は、前記磁性体本体から前記引出部が露出した面に形成され、
前記金属層は、めっきによって形成されためっき層であり、
前記磁性体本体は、磁性材料を含む、インダクタ」
(相違点1)
本件補正発明は「前記内部コイルと接続され、前記磁性体本体の少なくとも一面に露出した引出部」を備えるのに対して、引用発明が有しているか特定されていない点。
(相違点2)
金属層に関して、本件補正発明は磁性体本体から引出部が露出した面全体に形成されているのに対して、引用発明においては、金属層は引出部が露出した面に形成されているものの、「面全体」を覆っているかは明らかでない点。
(相違点3)
磁性体本体について、本件補正発明は「樹脂内に分散された金属系軟磁性粒子を含」むのに対して、引用発明においては「樹脂内に分散された金属系軟磁性粒子を含」むことは特定されていない点。
(相違点4)
本件補正発明では「前記引出部が前記磁性体本体から露出した領域の幅は、前記内部コイルの線幅と実質的に同一である」のに対して、引用発明では当該事項が特定されていない点。
イ.容易性の判断
(ア)相違点1について
引用発明は「基体1中に設けられインダクタンスの機能を有するスパイラル状の内部導体2を備え、内部導体の一部を基体1の対向する一対の端面1a,1bのそれぞれの表面に表出させた引出部2a、2bを有し」ている。ここで、内部導体2はスパイラル状の部分と端面1a,1bの表面に表出した引出部2a、2bとを接続する部分を有していることは明らかである。そうしてみると、「内部導体2」は「基体1中に設けられインダクタンスの機能を有するスパイラル状」の部分と、スパイラル状以外の引出部2a、2bを含んだ部分とから構成されるということができる。そして、このように「内部導体2」を2つの部分に分けてとらえると、「内部導体2」のスパイラル状以外の引出部2a、2bを含んだ部分が本件補正発明の「前記内部コイルと接続され、前記磁性体本体の少なくとも一面に露出した引出部」に相当する。したがって、相違点1は実質的な相違とはいえない。
(イ)相違点2について
引用発明においては、導電部(本件補正発明の金属層に相当)は端面に形成されているものの、「面全体」を覆っていることは明記されていない。しかしながら、端面1bに形成する場合、その面の一部に形成するか全面に形成するかは特に制限されるものではなく(阻害要因はなく)、適宜なし得たことにすぎない。
(ウ)相違点3について
磁性体として樹脂内に分散された金属系軟磁性粒子を含む構成は慣用される構成にすぎず、コイルに使用することも、例えば、特表2012-526389号公報(【0028】参照)、特許第5082002号公報(【0030】参照)、特開2009-9985号公報(【0026】参照)に記載されているように周知の技術にすぎない。したがって、相違点3は磁性体を単に周知の技術で置換することにより当業者が容易に想到できたものである。
(エ)相違点4について
引用発明では「内部導体の一部を基体1の対向する一対の端面1a,1bのそれぞれの表面に表出させた引出部2a、2bを有し」ているから、「引出部2a、2b」は内部導体の一部を表出させたものであるから、スパイラルを構成する内部導体と同一幅であると考えるのが自然である。また仮に同一幅ではなかったとしても、同一幅に構成することは当業者が適宜実施できる程度の事項にすぎない。
なお、請求人は令和4年7月21日に提出した上申書において、請求項1の「前記磁性体本体の内部に配置された内部コイル」を「前記磁性体本体の内部に配置された、平面に沿って巻取されてスパイラルを形成された内部コイル」と補正する用意がある旨主張している。しかしながら、引用文献1には段落【0022】に内部導体をスパイラル状にすることが記載されているから、請求人の上記補正案を採用しても本件補正発明が進歩性を有するということはできない。
(オ)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4.本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、仮に違反しないとしても、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
令和4年3月2日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和3年5月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2[理由]1.」に「本願発明」として記載したとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
請求項1に係る発明に対する原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1、5ないし9に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2003-297646号公報
5.特表2012-526389号公報
6.特許第5082002号公報
7.特開2009-9985号公報
8.特開2013-212642号公報
9.特開2010-186909号公報
3.引用文献の記載及び引用発明等
原査定の引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由]3.(3)」に記載したとおりである。
4.対比、判断
本願発明は、上記「第2[理由]3.(4)」で検討した本件補正発明から「前記引出部が前記磁性体本体から露出した領域の幅は、前記内部コイルの線幅と実質的に同一である」(相違点4に対応)という事項を削除したものである。
そうしてみると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]3.(4)イ.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術から当業者が容易になし得たものであるから、本願発明も同様の理由(相違点4の判断は除く)により、引用発明及び周知技術から当業者が容易になし得たものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-003222