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特許拒絶査定不服審判

2021-012990

インダクタ

審判番号
2021-012990
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-157469外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年09月28日
審決日
2022年09月06日
公報発行日
2022年11月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01F) / P18 .575-Z (H01F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第159条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-157469「インダクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日出願公開、特開2019- 36649〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年8月17日の出願であって、令和3年3月19日付けで拒絶理由が通知され、同年5月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月22日付けで拒絶査定されたところ、同年9月28日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和3年9月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年9月28日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の概要 令和3年9月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和3年5月20日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される、 「 絶縁被膜を有する1対のコイル導体と、各コイル導体の2つの引出端子を2つの端面にそれぞれ露出して該コイル導体を内蔵する磁性体とを備え、 該1対のコイル導体は、巻回軸が平行で、且つ開口面が同一平面内に配置され、且つ巻回部の巻数の多い側同士を互いに隣接して配置され、 該1対のコイル導体は、それぞれ同一の自己インダクタンス値を有し、 該1対のコイル導体の同一端面に露出する該引出端子が、それぞれ電気的に接続されて1対の外部電極を構成し、 該外部電極の一方からみたそれぞれのコイル導体の巻回方向が互いに逆向きである、インダクタ。」 との発明(以下、「本願発明」という。)を、 「 絶縁被膜を有する1対のコイル導体と、各コイル導体の2つの引出端子を2つの端面にそれぞれ露出して該コイル導体を内蔵する磁性体とを備え、 該1対のコイル導体は、巻回軸が平行で、且つ開口面が同一平面内に配置され、且つ巻回部の巻数の多い側同士を互いに隣接して配置され、 該1対のコイル導体は、それぞれ同一の自己インダクタンス値を有し、 該1対のコイル導体の同一端面に露出する該引出端子が、それぞれ電気的に接続されて1対の外部電極を構成し、 該外部電極の一方からみたそれぞれのコイル導体の巻回方向が互いに逆向きであり、 該コイル導体はそれぞれ、断面が矩形の平角線をその両端が外周に位置する様に、平角線の幅広面が巻軸と平行な状態で2段に巻回した巻回部及び巻回部の両端から引き出された2つの引出端子を備える、インダクタ。」(下線部は、補正箇所を示す。) との発明(以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。 2 補正の適否 (1)補正の目的要件、新規事項の有無、シフト補正の有無 上記補正は、「コイル導体」が「それぞれ、断面が矩形の平角線をその両端が外周に位置する様に、平角線の幅広面が巻軸と平行な状態で2段に巻回した巻回部及び巻回部の両端から引き出された2つの引出端子を備える」ことを限定する補正であり、上記補正の前後で産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 また、本願明細書の段落【0038】及び図11(下図参照)に記載された第6の実施例では、コイル導体が、断面が矩形の平角線をその両端が外周に位置するように、平角線の幅広面が巻軸と平行な状態で2段に巻回した巻回部及び巻回部の両端から引き出された2つの引出端子を備えていると認められる。したがって、上記補正は新規事項を追加するものではなく、さらにシフト補正にも該当しない。 したがって、上記補正は特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)に規定された事項を目的とするものであり、また、同法第17条の2第3項(新規事項)、及び第4項(シフト補正)に違反するところはない。 [図:0001390248000001.jpg] (2)独立特許要件について 上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。 ア 本件補正発明 本件補正発明は、上記「1 補正の概要」の項の「本件補正発明」のとおりのものと認める。 イ 引用発明 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に公開された文献である米国特許出願公開第2016/0126000号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付した。 a「[0043]FIG. 1 is a perspective view illustrating an inductor device 100 having a 2-in-1 structure, and FIG. 2 is a plan view illustrating the inductor device 100 shown in FIG. 1, according to an embodiment of the present invention. Referring to FIGS. 1 and 2, the inductor device 100 includes a coil unit 110 and a core unit 120, and may further include induction units 130A, 130B, 130C, 130D, 130E, and 130F (see FIGS. 3A-8C), as described below.」 (当審仮訳:[0043]図1は、2in1構造を有するインダクタ素子100を示す透視図であり、図2は、図1に示したインダクタ素子100を示す平面図であり、本発明の一実施形態である。図1及び図2を参照すると、インダクタ素子100は、コイル部110及びコア部120と、以下に述べるように誘導部130A、130B、130C、130D、130E、130F(図3A-8C参照)を含むことができる。) b「[0044]The coil unit 110 includes a first coil 111 and a second coil 112. The first coil 111 and the second coil 112 may be disposed adjacent to each other and coupled to each other. The inner and outer spaces of the first and second coils 111, 112, which are disposed adjacent to each other, may be surrounded by the core unit 120. The first coil 111 may be wound within the core unit 120, and a start point 111a and an end point 111b of the first coil 111 may be connected to external terminals 140 which are oppositely mounted at both ends of the core unit 120. The second coil 112 may be wound adjacent to the first coil 111 within the core unit 120, and a start point 112a and an end point 112b of the second coil 112 may be connected to external terminals 140. As described above, the coil unit 110 may have a 2-in-1 structure in which the first and second coils 111, 112, respectively, are disposed adjacent to each other within the core unit 120.」 (当審仮訳:[0044]コイル部110は、第1コイル111と第2コイル112とを有する。第1コイル111と第2コイル112は、互いに隣接して配置され、相互に結合されてもよい。互いに隣接して配置された第1及び第2コイル111、112の内側空間と外側空間は、コア部120によって取り囲まれてもよい。第1コイル111は、コア部120内に巻回されてもよく、第1コイル111の開始端111aと第1コイル111の終端111bは、コア部120の両端部に対向配置された外部端子140に接続されてもよい。第2のコイル112は、コア部120内に第1コイル111に隣接して巻回され、第2コイル112の開始端112aと終端112bは、外部端子140に接続されてもよい。上述したように、コイル部110は、第1、第2コイル111、112が、それぞれコア部120内に互いに隣接して配置されている2in1構造を有していてもよい。) c「[0045]The first and second coils 111, 112 may be wound in different directions while having a predetermined shape such as a circular shape, an elliptical shape, or the like. The first coil 111 includes a first winding section 1111 that has two lines wound in one direction, particularly, in the counter-clockwise direction. The second coil 112 includes a second winding section 1121 that has two lines wound in the opposite direction to the first coil 111, particularly, in the clockwise direction (see also FIGS. 2-8C). As an example, it will be assumed in the following description that each of the first winding section 1111 of the first coil 111 and the second winding section 1121 of the second coil 112 has two lines that are laminated in the thickness direction. However, the first winding section 1111 of the first coil 111 and the second winding section 1121 of the second coil 112 are not limited thereto in terms of the winding shape, the number of lines, the lamination shape, and the like. For example, the first winding section 1111 and the second winding section 1121 may have one line, may be wound in the form of a spring, and may also be changed or modified in various manners.」 (当審仮訳:[0045]第1及び第2コイル111、112は、円形状、楕円形状等の所定形状を有しながら、異なる方向に巻回することができる。第1コイル111は、一方向、特に反時計回り方向に巻かれた2本の線を有する第1巻線部1111を備えている。第2コイル112は、第1コイル111とは反対方向、特に時計周り方向(図2-8Cも参照)に巻回された2本の線を有する第2の巻線部1121を備えている。一例として、以下の説明では第1コイル111の第1巻回部1111及び第2コイル112の第2巻線部1121のそれぞれは、厚さ方向に積層されている2本の線を有すると仮定する。しかしながら、第1コイル111の第1巻回部1111及び第2コイル112の第2巻線部1121は、巻線の形状、線の数、積層形状等の点でこれらに限定されるものではない。例えば、第1巻線部1111及び第2の巻線部1121は、1つの線を有することができ、ばねの形に巻くことができ、また、様々な方法で変更または修正されてもよい。) d「[0046]The external terminals 140 may be mounted on both opposite sides of the core unit 120. The start points 111a, 112a and end points 111b, 112b of the coil unit 110 may be electrically connected to the external terminals 140, respectively. That is, the start point 111a of the first coil 111 and the start point 112a of the second coil 112 may be electrically connected to the external terminals 140 mounted on one side of the core unit 120. Further, the end point 111b of the first coil 111 and the end point 112b of the second coil 112 may be electrically connected to the external terminals 140 mounted on the other side of the core unit 120, which is opposite to the one side of the core unit 120. The core unit 120 may serve as a space for forming a magnetic path through which magnetic fluxes, induced in internal electrodes as current is applied to the external terminals 140, pass, and may be made of a material having high magnetic permeability, such as a ceramic material, a ferrite material, or a combination thereof. The core unit 120 may also be made of a metal alloy. Although the core unit 120 has been described as being made of a ceramic material, a ferrite material, a combination thereof, or a metal alloy by way of example, the material of the core unit 120 is not limited thereto. Other materials having high permeability may be used as the material of the core unit 120 so long as the core unit 120 can form a magnetic path as current is applied to the external terminals 140.」 (当審仮訳:[0046]外部端子140は、コア部120の両側に取り付けてもよい。コイル部110の開始端111a、112a、終端111b、112bは、外部端子140にそれぞれ電気的に接続されてもよい。すなわち、第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112aは、コア部120の一方側に設けられた外部端子140と電気的に接続されてもよい。さらに、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120のコア部120の一方側とは反対側であるコア部120の他方の側に設けられた外部端子140に電気的に接続されてもよい。コア部120は、電流が外部端子140に印加されるときに内部電極に誘導される磁束が通過する磁束が通過する磁路を形成するための空間として機能することができ、例えば、セラミック材料、フェライト材料、またはそれらの組み合わせの材料を用いるのがよい。コア部120はまた、金属合金から作製され得る。コア部120は、セラミック材料、フェライト材料、これらの組み合わせ、または金属合金より構成されているとして説明したが、コア部120の材料はこれに限定されるものではない。電流が外部端子140に印加されるときにコア部120が磁気経路を形成することができる限り、高い透磁率を有する他の材料は、コア部120の材料として用いることができる。) e「[0054]Since the induction unit 130A is positioned on the upper surfaces of the second winding section-adjacent portion 1111a and the first winding section-adjacent portion 1121a and connects them to each other, the induction unit 130A can be induced by a magnetic field generated between the first and second coils 111, 112. The induction unit 130A is induced not only by a magnetic field generated by the first coil 111, but also by a self-magnetic field generated by the second coil 112, and these two magnetic fields are mutually compensated in the induction unit 130A. 」 (当審仮訳:[0054]誘導部130Aは、第2の巻線部の隣接する部分1111aと、第1の巻線部の隣接する部分1121aの上部表面上に配置され、それぞれを連結するものであるので、誘導部130Aは、第1及び第2のコイル111、112との間に発生する磁界により誘導することができる。誘導部130Aは、第1コイル111によって生成された磁界だけでなく、第2コイル112によって生成される自己磁場により誘導され、そしてこれらの2つの磁界は誘導部130Aで互いに相殺される。) f 図1、図2として以下の図面が記載されている。 「 [図:0001390248000002.jpg] 」 (イ)上記の記載によれば、引用文献1には次の事項が記載されている。 ・段落[0043][0044]によれば、インダクタ素子100は、互いに隣接して配置された第1コイル111と第2コイル112とを有するコイル部110と、第1及び第2コイル111、112の内側空間と外側空間を取り囲むコア部120からなるといえる。 したがって、引用文献1には、互いに隣接して配置された第1コイル111と第2コイル112とを有するコイル部110と、第1及び第2コイル111、112の内側空間と外側空間を取り囲むコア部120からなるインダクタ素子100が記載されている。 ・図1、2によれば、第1コイル111と第2コイル112の巻回軸は平行であり、開口面が同一平面内となるように隣接して配置されていることが見て取れる。 したがって、引用文献1は第1コイル111と第2コイル112の巻回軸は平行であり、開口面が同一平面内となるように隣接して配置されている。 ・段落[0045]、及び図1、2によれば、第1コイル111と第2コイル112は異なる方向に巻回されているものの、寸法と巻き数は同一であることが読み取れ、また誘導部130Aを有する図3Aに関する記述ではあるものの、段落[0054]に第1及び第2のコイル111、112との間に発生する磁界が互いに相殺されることが記載されている。そうしてみると、第1コイル111と第2コイル112は、同一の自己インダクタンスを有すると解するのが自然である。 ・段落[0046]によれば、第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112aは、コア部120の一方側に設けられた外部端子140と電気的に接続され、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120の他方の側に設けられた外部端子140に電気的に接続されている。そして、特に図2を参照すれば、第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112は、コア部120の一方側に設けられた外部端子140と電気的に接続されるためにコア部120の一方側に露出しているといえ、また、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120の他方の側に設けられた外部端子140に電気的に接続されるためにコア部120の他方の側に露出しているといえる。 したがって、第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112aは、コア部120の一方側に設けられた外部端子140と電気的に接続され、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120の他方の側に設けられた外部端子140に電気的に接続され、第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112aは、コア部120の一方側に露出し、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120の他方の側に露出している。 ・段落[0045]及び図1、2によれば、第1コイル111と第2コイル112とは異なる方向に巻回されている。 ・段落[0044][0045]及び図1、2によれば、第1コイル111は、「第1巻回部1111」と、当該第1巻回部1111の両端から引き出された「開始端111a」「終端111b」からなり、また、第2コイル112は、「第2巻回部1121」と、当該第2巻回部1121の両端から引き出された「開始端112a」「終端112b」から構成されているといえる。 また、段落[0045]及び図1、2によれば、第1コイル111の第1巻回部1111及び第2コイル112の第2巻線部1121のそれぞれは、厚さ方向に積層されている2本の線を有している。 (ウ)以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「 互いに隣接して配置された第1コイル111と第2コイル112とを有するコイル部110と、第1及び第2コイル111、112の内側空間と外側空間を取り囲むコア部120からなるインダクタ素子100であって、 第1コイル111と第2コイル112の巻回軸は平行であり、開口面が同一平面内となるように隣接して配置され、 第1コイル111と第2コイル112は、同一の自己インダクタンスを有し、 第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112aは、コア部120の一方側に設けられた外部端子140と電気的に接続され、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120の他方の側に設けられた外部端子140に電気的に接続され、第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112aは、コア部120の一方側に露出し、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120の他方の側に露出し、 第1コイル111と第2コイル112とは異なる方向に巻回され、 第1コイル111は、第1巻回部1111と、当該第1巻回部1111の両端から引き出された開始端111aと終端111bからなり、また、第2コイル112は、第2巻回部1121と、当該第2巻回部1121の両端から引き出された開始端112aと終端112bから構成され、 第1コイル111の第1巻回部1111及び第2コイル112の第2巻線部1121のそれぞれは、厚さ方向に積層されている2本の線を有する、 インダクタ素子100。」 ウ 対比 (ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「第1コイル111と第2コイル112」は、「巻回軸は平行であり、開口面が同一平面内となるように隣接して配置され」、「同一の自己インダクタンスを有し」ている点で本件補正発明の「1対のコイル導体」に相当する。 ただし、引用発明の「第1コイル111と第2コイル112」は絶縁被膜を有しているか明らかではなく、また「巻回部の巻数の多い側同士を互いに隣接して配置され」ることが特定されていない点で本件補正発明の「1対のコイル導体」と相違している。 b.引用発明では「第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112は、コア部120の一方側に露出し、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120の他方の側に露出し」ているのに対して、本件補正発明では「各コイル導体の2つの引出端子を2つの端面にそれぞれ露出して」なるものである。そうしてみると、引用発明の第1コイル111の「開始端111a」「終端111b」、第2コイル112の「開始端112a」「終端112b」はそれぞれ、本件補正発明の2つの端面にそれぞれ露出する各コイル導体の「2つの引出端子」に相当する。 また、引用発明の「コア部120」は第1及び第2コイル111、112の内側空間と外側空間を取り囲んでいるから、本件補正発明のコイル導体を内蔵する「磁性体」に相当する。 c.引用発明では「第1コイル111の開始端111aと第2コイル112の開始端112aは、コア部120の一方側に設けられた外部端子140と電気的に接続され、第1コイル111の終端111bと第2コイル112の終端112bは、コア部120の他方の側に設けられた外部端子140に電気的に接続され」ているから、引用発明のコア部120の一方側及び他方の側にそれぞれ設けられた「外部端子140」は、本件補正発明の「該1対のコイル導体の同一端面に露出する該引出端子が、それぞれ電気的に接続されて」「構成し」た「1対の外部電極」に相当する。 d.引用発明では「第1コイル111と第2コイル112とは異なる方向に巻回され」ているから、「外部端子140」の一方からみた第1コイル111と第2コイル112の巻回方向も互いに逆向きであり、「該外部電極の一方からみたそれぞれのコイル導体の巻回方向が互いに逆向き」であるといえる点で引用発明と本件補正発明とは一致する。 e.引用発明の「第1巻回部1111」「第2巻回部1121」は、本件補正発明の「巻回部」に相当している。 ただし、本件補正発明では「巻回部」は「断面が矩形の平角線をその両端が外周に位置する様に、平角線の幅広面が巻軸と平行な状態で2段に巻回」する構成であるのに対して、引用発明では「第1コイル111の第1巻回部1111及び第2コイル112の第2巻線部1121のそれぞれは、厚さ方向に積層されている2本の線を有する」構成である点で相違している。 f.引用発明の「インダクタ素子100」は、本件補正発明の「インダクタ」に相当する。 (イ)したがって、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「 1対のコイル導体と、各コイル導体の2つの引出端子を2つの端面にそれぞれ露出して該コイル導体を内蔵する磁性体とを備え、 該1対のコイル導体は、巻回軸が平行で、且つ開口面が同一平面内に配置され、 該1対のコイル導体は、それぞれ同一の自己インダクタンス値を有し、 該1対のコイル導体の同一端面に露出する該引出端子が、それぞれ電気的に接続されて1対の外部電極を構成し、 該外部電極の一方からみたそれぞれのコイル導体の巻回方向が互いに逆向きであり、 該コイル導体はそれぞれ、巻回部及び巻回部の両端から引き出された2つの引出端子を備える、インダクタ。」 (相違点1) 本件補正発明の「コイル導体」は「絶縁被膜を有する」のに対して、引用発明では当該事項が特定されていない点 (相違点2) 本件補正発明では「該1対のコイル導体」が「巻回部の巻数の多い側同士を互いに隣接して配置され」ているのに対して、引用発明では当該事項が特定されていない点 (相違点3) 本件補正発明では「巻回部」は「断面が矩形の平角線をその両端が外周に位置する様に、平角線の幅広面が巻軸と平行な状態で2段に巻回した」ものである旨特定されているのに対して、引用発明では「厚さ方向に積層されている2本の線を有する」ものである点。 エ 判断 (ア)相違点1について検討する。 インダクタにおいて、絶縁性を確保するためにコイル導体に絶縁被膜を設けることは技術常識にすぎず、格別な事項とはいえない。 したがって相違点1は当業者が容易に構成できた事項にすぎない。 (イ)相違点2について検討する。 引用発明において、1対のコイル導体を設置するにあたり巻き数の多い方同士を隣接するように配置するか、あるいは離れるように配置するかは適宜採用される構成である。巻き数の多い方同士を隣接するように2つのコイルを形成することも、例えば、特開2013-211330号公報(拒絶査定の引用文献2、[0012]~[0017]、図7参照)、特開2015-220312号公報(拒絶査定の引用文献3、図1、3、7参照)、国際公開第2017/115604号([0065]~[0067]、図17参照)に記載されているように、従来から適宜採用されている周知の構成にすぎないことからみて、引用発明においても、一対のコイル導体を巻き数の多い方同士を隣接するように配置する構成とすることに阻害要因もなく適宜採用し得たことである。 したがって、相違点2は当業者が容易に想到できた事項にすぎない。 (ウ)相違点3について検討する。 引用発明では「第1コイル111の第1巻回部1111及び第2コイル112の第2巻線部1121のそれぞれは、厚さ方向に積層されている2本の線を有する」ようなコイルが採用されている。しかしながら、上記「イ(ア)c」に引用したように、引用文献1には「巻線の形状、線の数、積層形状等の点でこれらに限定されるものではな」く、「様々な方法で変更または修正されてもよい」ことが示唆されている。一方で、コイルの巻き方として、いわゆるアルファ巻きと言われる「断面が矩形の平角線をその両端が外周に位置する様に、平角線の幅広面が巻軸と平行な状態で2段に巻回した」コイルは周知技術である(例えば、特開2013-211330号公報(拒絶査定の引用文献2)、国際公開第2017/115604号参照)。そうしてみると、引用発明において引用文献1の上記示唆に従い、コイルとして周知の「断面が矩形の平角線をその両端が外周に位置する様に、平角線の幅広面が巻軸と平行な状態で2段に巻回した」コイルを用いることは阻害要因が存在するものでもなく、当業者が容易に相当できた事項にすぎない。 したがって、上記(ア)ないし(ウ)に検討したように、本件補正発明は引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 審判請求人の主張について 審判請求人は令和3年9月28日に提出された審判請求書において、引用文献1に記載の発明は薄型化を目的としているのに対して、引用文献2に記載のアルファ巻のコイルは平角線の幅広面を巻軸と平行な状態で2段に巻回されているため、薄型化することが困難であり、また引用文献1に記載の発明においては、コイル間の結合が前提であるのに対し、引用文献2に記載の発明においては、コイル間に結合が認められないから、引用文献1と引用文献2の組合せには、阻害要因がある旨主張している。 しかしながら、引用文献1の課題は小型化や軽量化に限られたものではなく、例えば、段落[0054]に記載されているようにインダクタのインダクタンスの増大を課題とするものでもある。引用文献1が「薄型化」を目的(課題)の1つとしているとしても、引用文献2の構成を採用することに阻害要因があるとまではいえない。 また、引用文献2には、2つのコイルを形成する形態として巻き数の多い方同士を隣接するように形成する構成が記載されており、引用文献2の2つのコイル間に結合がないとしても、当業者であれば引用文献1において2つのコイルを形成する際に、引用文献2に記載のように巻き数の多い方同士を隣接するように形成する構成を採用することは容易に想起できる事項であり、これを妨げる要因があるとまではいえない。 したがって、阻害要因があるとする審判請求人の主張を採用することはできない。 (3)小括 以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和3年9月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和3年5月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2」[理由]の「1 補正の概要」の「本願発明」のとおりのものと認める。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 「●理由2(特許法第29条第2項)について この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1-7 ・引用文献 1-3 <引用文献等一覧> 1.米国特許出願公開第2016/0126000号明細書 2.特開2013-211330号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2015-220312号公報(周知技術を示す文献)」 3 引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2」[理由]の「2(2)イ」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本件補正発明から、「該コイル導体はそれぞれ、断面が矩形の平角線をその両端が外周に位置する様に、平角線の幅広面が巻軸と平行な状態で2段に巻回した巻回部及び巻回部の両端から引き出された2つの引出端子を備える」という限定を省いたものである。 そうしてみると、本願発明と引用発明とは上記「第2」の「2(2)ウ(イ)」で(相違点1)(相違点2)とした点で相違するものの、上記「第2」の「2(2)エ」で判断したとおり、引用発明及び周知技術から当業者が容易に想到できた事項にすぎない。 したがって、本件補正発明から上記限定事項を省いたものに相当する本願発明についても、引用文献1に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-012990

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