特許拒絶査定不服審判
2019-002283
強アルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤および強アルカリ域用アルミニウム洗浄液組成物
- 審判番号
- 2019-002283
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-252507外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年02月19日
- 審決日
- 2020年07月14日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】朝日化学工業株式会社
- 【請求人代理人】西教 圭一郎
- 分類
- P18 .121-WZ (C11D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-252507「強アルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤および強アルカリ域用アルミニウム洗浄液組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日出願公開、特開2016-113527〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月12日の出願であって、平成30年8月27日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年11月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月13日付けで拒絶査定され、これに対し、平成31年2月19日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和元年6月21日に上申書が提出され、同年11月28日付けで当審から拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和2年1月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和2年1月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「 【請求項1】
炭素数14~36の有機二塩基酸またはその塩の少なくとも1種を、pH13以上のアルカリ洗浄液によるアルミニウムの腐食抑制成分として含む水溶液であることを特徴とする強アルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤。」
第3 令和元年11月28日付けの当審拒絶理由の内容
当審において通知した拒絶理由は次のとおりである。
1 (進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記刊行物2、3~5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
刊行物2:特開2006-8932号公報
刊行物3:特開2005-225957号公報(周知技術)
刊行物4:特開2007-99906号公報(周知技術)
刊行物5:特開2009-185311号公報(周知技術)
第4 当審の判断
1.刊行物及びその記載事項
(1)引用刊行物
刊行物2:特開2006-8932号公報(当審からの拒絶理由における刊行物2)
刊行物5:特開2009-185311号公報(当審からの拒絶理由における刊行物5)
(2)刊行物の記載
ア 刊行物2の記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】
一般式(1)で示される有機アルカリ(A)、アルキル基の炭素数が1~6のトリアルキルアミン(B)、並びに数平均分子量32~500の1価アルコール(C1)、数平均分子量62~250の2価アルコール(C2)、数平均分子量92~400の3~9価アルコール(C3)および該(C1)、(C2)もしくは(C3)の全ての水酸基を除いた残基と炭素数1~8のアルキル基とから構成されるアルキルエーテル(C4)からなる群から選ばれる1種以上の親水性有機溶剤(C)を含有し、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づく(B)の含量が0.01~1.0重量%であるアルカリ洗浄剤。
【化1】
〔式中、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ炭素数1~24の炭化水素基または-(R7O)p-Hで表される基であり、R7は炭素数2~4のアルキレン基、pは1~6の整数を表す。〕」
(1b)「【0023】
本発明の洗浄剤には、・・・、必要によりさらに・・・その他の添加剤(G)および/または水を含有してもよい。」
(1c)「【0032】
その他の添加剤(G)としては、防錆剤[アミン(炭素数6~30、例えばシクロヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミンなど)のEO(2~10モル)付加物、クロム酸塩、亜硝酸塩、アミン(炭素数6~30)の高級脂肪酸(炭素数8~30)塩、ジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)塩、ジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカノールアミド(例えば、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミド)、ジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカノールアミドアルカリ金属塩(例えば、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドナトリウム塩)など]、酸化防止剤[フェノール化合物(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなど)、含硫化合物(ジラウリルチオジプロピオネートなど)、(B)以外のアミン化合物(オクチル化ジフェニルアミンなど)、リン化合物(トリフェニルホスファイトなど)など]、金属イオン封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)などが挙げられる。
(G)の含有量は、洗浄剤の全重量に基づいて、防錆剤は通常20%以下、好ましくは0.5~10%、酸化防止剤は通常5%以下、好ましくは0.1~1%、金属イオン封鎖剤は通常20%以下、好ましくは0.5~10%である。」
(1d)「【0034】
本発明の洗浄剤は、通常、固体または液状であり、使いやすさの観点から好ましいのは液状であり、液状の場合は透明または白濁液状のいずれでもよい。本発明の洗浄剤が液状の場合の25℃における粘度は、通常2~300mm2/s、洗浄性およびリンス性の観点から、好ましくは3~100mm2/s、更に好ましくは4~50mm2/sである。粘度はオストワルドまたはウベローデなどの粘度計にて測定できる。
本発明の洗浄剤のpH(10%水溶液)は通常10~14、洗浄性および耐腐蝕性の観点から、好ましくは10.5~13.5である。」
(1e)「【0045】
【表1】
」
(1f)「【0047】
本発明の洗浄剤は、耐アルミ腐蝕性に優れ、かつ、油分、指紋、樹脂およびパーティクルを除去する能力にも優れているので、液晶パネル用ガラス基板などの電子部品の洗浄用途だけでなく、電気部品、金属部品および建材等の洗浄用途に適用が可能であり極めて有用性が高い。」
イ 刊行物5の記載事項
本願出願前に頒布された刊行物5には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0055】
(防錆剤)
潤滑皮膜中には、耐食性を更に高める目的で、防錆剤を含有しても良い。防錆剤の種類は、特に限定されず、潤滑被膜に通常含まれるものを用いることができるが、例えば、アルケニルコハク酸アルミ塩・・・などが挙げられる。」
(2b)「【0073】
本発明に用いられる金属材の組成は、塑性加工に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、・・・非鉄金属材(アルミ材、・・・)の種々の金属材が用いられる。」
(2c)「【0085】
一方、皮膜処理液として、表1に示すNo.1~10の潤滑剤を水に5倍希釈した混合液を用意した。
【0086】
表1中、A~E成分の詳細は以下のとおりである。
A:メタ硼酸ナトリウム
B:ステアリン酸亜鉛
C:水酸化カルシウム
D1:1-ドデセン/無水マレイン酸共重合体(数平均分子量28,000)のジメチルアミノプロピルアミン付加物・部分ナトリウム塩
D2:1-エイコセン/無水マレイン酸共重合体(数平均分子量16,000)のジエチルアミノヘキシルアミン付加物・部分ナトリウム塩
E1:界面活性剤としてスルホン酸ナトリウム
E2:防錆剤としてドデセニルコハク酸アミン塩」
2.刊行物2に記載された発明
刊行物2の請求項1にはアルカリ成分(A)を含むアルカリ洗浄剤が記載され(摘記1a参照)、その他の添加剤(G)として防錆剤であるジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)塩を含有してもよいことが記載され(摘記1c参照)、該洗浄剤は、金属(特にアルミ)非腐蝕性に優れることが記載されている(摘記1f参照)。
そうすると、刊行物2には「ジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカリ金属塩を防錆剤として含有してもよいアルミニウムのアルカリ洗浄液に添加する防錆剤。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
3.対比・判断
(1)本願発明と引用発明の対比。
引用発明の「防錆剤」は、アルカリ洗浄剤に添加される防錆剤であるから、本願発明の「アルカリ洗浄液によるアルミニウム腐食抑制成分」に相当する。
引用発明の「アルミニウムのアルカリ洗浄液に添加する防錆剤」は、本願発明の「アルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、「アルカリ洗浄液によるアルミニウムの腐食抑制成分を含むことを特徴とするアルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点1>
本願発明は炭素数14~36の有機二塩基酸またはその塩の少なくとも1種を含むのに対して、引用発明はジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカリ金属塩を含む点。
<相違点2>
アルカリ洗浄液、アルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤が、本願発明では、それぞれ、pH13以上のアルカリ洗浄液であり、強アルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤であると特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。
<相違点3>
本願発明は水溶液であると特定されているのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
(2)相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「ジカルボン酸・・・のアルカリ金属塩」は、本願発明の「有機二塩基酸・・・その塩」に相当するものであり、それらの炭素数も重複している。
また、刊行物2には、引用発明の「ジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカリ金属塩」におけるジカルボン酸の具体例についての記載はないが、刊行物2の摘記1cの【0032】には、「ジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)塩、ジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカノールアミド(例えば、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミド)、ジカルボン酸(炭素数12~24)のアルカノールアミドアルカリ金属塩(例えば、ドデセニルコハク酸ジエタノールアミドナトリウム塩)」との記載があるから、当該ジカルボン酸としては、ドデセニルコハク酸(炭素数16)などが予定されていると解するのが合理的である。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違ではないと解するのが相当である。
イ 相違点2について
刊行物2には「本発明の洗浄剤のpH(10%水溶液)は通常10~14、洗浄性および耐腐蝕性の観点から、好ましくは10.5~13.5である。」と記載され(摘記1d参照)、実施例1としてpHが13.1のものが記載されている(摘記1e参照)。
そうすると、引用発明において、アルカリ洗浄液、アルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤を、それぞれ、pH13以上のアルカリ洗浄液であり、強アルカリ域用アルミニウム腐食抑制剤とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 相違点3について
刊行物2には、「本発明の洗浄剤には、・・・、必要によりさらに・・・その他の添加剤(G)および/または水を含有してもよい。」と記載されており(摘記1b参照)、刊行物5にはドデセニルコハク酸アミン塩のようなジカルボン酸の塩を含む防錆剤を水溶液として用いることが記載されている(摘記2c参照)。
そうすると、引用発明においても水溶液とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
4.本願発明の効果について
そして、本願発明の効果について検討するに、発明の詳細な説明には「本発明の腐食抑制剤組成物を・・・、特にはpH13以上の強アルカリ洗浄液に添加し、アルミニウムまたはアルミニウム合金を洗浄した場合に、非鉄金属素地の腐食を著しく抑制することができる」(段落【0018】)と記載されているものの、引用発明においても、「本発明の洗浄剤は、耐アルミ腐蝕性に優れ、・・・液晶パネル用ガラス基板などの電子部品の洗浄用途だけでなく、電気部品、金属部品および建材等の洗浄用途に適用が可能」である(摘記1e参照)とされているから、本願発明が刊行物2、5に記載された事項から当業者が予測できない顕著な効果を奏したものとも認められない。
よって、本願発明は、刊行物2に記載された発明及び刊行物5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.請求人の主張について
請求人は、令和2年1月28日付けの意見書において、刊行物2における防錆剤は、洗浄後の発錆を防止するために加えられるものと考えることが合理的であると主張する。
しかし、刊行物2には、必要によりさらに防錆剤を含有してもよいと記載されているのであって、防錆剤が洗浄後の発錆を防止するために加えられるものという示唆もなく、また、刊行物2記載の洗浄剤は、耐アルミ腐蝕性に優れていることも記載されており(摘記1e参照)、該防錆剤は耐アルミ腐蝕性に寄与するものであって、洗浄時のアルミニウムの腐食を抑制することは明らかであるから、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は、刊行物2には、有機二塩基酸をpH13以上の強アルカリ域におけるアルミニウムの腐食防止剤として用いることは全く示唆されていない旨を主張する。
しかし、上記3.(2)イのとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。
さらに、請求人は、刊行物5の発明は、アルカリ洗浄剤ではなく、化成処理液による金属表面の化成処理であり、本願発明とは全く異なる技術であることは明らかであると主張する。
確かに、刊行物5の発明はアルカリ洗浄剤自体の発明ではないものの、アルミ材等の非鉄金属の耐食性を高めるために用いるドデセニルコハク酸のような防錆剤が水溶液として使用できることが記載されており、該防錆剤の使用形態を本願発明に適用することを阻害する記載は見出せないから、請求人の上記主張は採用できない。
6.進歩性についてのまとめ
上記のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2、5の記載に基いて当業者が容易に想到し得るものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その他の請求項及びその他の理由について検討するまでもなく、同法第49条の規定により、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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