特許拒絶査定不服審判
2019-002153
自動化された試料処理、流体分配、及び沈降検定
- 審判番号
- 2019-002153
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-557080外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年02月15日
- 審決日
- 2019年12月04日
- 公報発行日
- 2020年01月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】サンドストーン ダイアグノスティックス インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村井 康司
- 【請求人代理人】川分 康博
- 分類
- P18 . -WY (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-557080「自動化された試料処理、流体分配、及び沈降検定」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日国際公開、WO2014/124179、平成28年 3月 7日国内公表、特表2016-507065、請求項の数(25)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)2月6日(パリ条約による優先権主張 2013年2月7日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成30年4月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月5日付けで拒絶査定されたところ、平成31年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成30年10月5日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
理由1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開昭59-073766号公報
2.国際公開第2012/164552号
3.国際公開第2012/055707号
4.特開2009-233532号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2009-300433号公報(周知技術を示す文献)
第3 特許法第29条第2項の拒絶理由について
1 本願発明
本願の請求項1-25に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明25」という。)は、平成31年2月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-25に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
装置であって、
回転の中心を有し、且つ、試料中において懸濁した粒子又は細胞の沈降を生成するべく回転するように構成されたカートリッジであって、
前記試料を保持するように構成された受取空洞であって、前記受取空洞内への前記試料の進入を許容するように構成された試料進入孔を有する受取空洞と、
前記受取空洞の場所との関係において前記カートリッジの前記回転の中心から離れるように配置された第2空洞とを有する、カートリッジと、
前記受取空洞及び前記第2空洞を接続する通路であって、前記受取空洞の断面積よりも小さな断面積を有する通路と、を有し、
前記カートリッジは、前記粒子又は細胞の沈降のために前記カートリッジの回転の際に前記試料を前記受取空洞から前記第2空洞に転送するように構成されており、
前記第2空洞は、少なくとも1つの壁を更に有し、前記少なくとも1つの壁は、半径方向のラインから離れるように、且つ、前記回転の中心から離れるに従い、半径方向のラインよりも前記第2空洞の内部の領域を広げるように構成されており、前記半径方向のラインは、前記カートリッジの前記回転の中心から離れるように投射され、且つ、前記少なくとも1つの壁と交差している装置。」
2 引用文献・引用発明等
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由とともに引用された引用文献1(特開昭59-073766号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。以下同様。)
(引1A)「本発明は免疫学的検定法において使用される微小球型の粒子の分離、洗浄及び検出のための装置及び方法に関する。」(第3頁右下欄第12行目-15行目)
(引1B)「本発明の原理及び目的によれば、その中心の周りに半径方向に分散した複数のチャンバを有する実質的に円形の円形コンベヤーを含み、前記チャンバは中心に対して遠位の閉じた端部と、中心に対して近位の開いた端部とを有している。開いた端部は実質的に円形コンベヤーの中心に配置されている供給領域と連通している。全装置は遠心力により中心の周りに回転するようになっている。典型的には、隣接するチャンバは共通の壁で分けることができ、そして好ましい実施態様では、この装置は円形コンベヤーの半径に対して実質的に鉛直にチャンバ内に配置されており、且つチャンバの壁と連通しているバリヤー手段を更に含んでいる。これ等のバリヤー手段は洗浄溶液及び基質溶液を安定化し、且つ極微粒子の通過を許容するのに適合して配置され、そして寸法が定められている。」(第6頁左上欄第13行目-同頁右上欄第12行目)
(引1C)「中心部25を有する本質的に円形の円形コンベヤー3を形成している複数の半径方向に分散したチャンバ1を示している本発明の実施態様が第1図に例示されている。チャンバーは遠位の閉端部6と、供給領域4と連絡している近位の開端部7とを有している。好ましい実施態様は、溶液を安定化し、且つその間の機械的混合を最少にする少くとも1つのバリヤー5の如き手段を有している。
チャンバーはその中に3つの領域を有する如く記載できる。中心に対して最も遠位の領域である反応領域8は基質溶液を含んでいる。極微粒子は第2図に示されている如くこの領域内で読みとられ、そして基質溶液は使用される読みとり方法に従って選択される。例えば、極微粒子は、直接、即ちそれ等の螢光を測定することにより、あるいは光の散乱効果により、または他の容易に検出できる標識(label)によって読みとることができる。一般に、このような免疫学的検定法は、異なる特異性の多くの抗体に頼っており、それ等のいくつかは市販の物質を用いて標識付け(labcled)できる。これ等の技法はよく知られており、そしてサンプル内の、例えば抗原あるいは抗体の如き、物質の存在あるいは不存在を検出するのに有効であるべき本発明に対して、例示した円形コンベヤーの読みとりにおける標識付けした及び標識付けしない極微粒子のレベルと、サンプル内の物質のレベルとの間にある関係が確立されなければならないことは当業者において容易に理解されるであろう。従って、抗体あるいは抗原及び標識の選択は、上述の技法に従い、且つ当業者において明らかである如き使用される免疫学的検査法の型式に従う。
交互に標識を使用するため、その代りに基質溶液内に存在する基質への極微粒子の反応により作られる生成物を測定することができる。典型的には、読みとられるべき生成物あるいは検出されるべき標識は実施される免疫学的検査の型式及び所望の感度レベルに左右される。
更に第1図を参照すると、極微粒子が領域8で読みとることができる前に、これ等の極微粒子はサンプルからの未反応の自由な標識等の如き汚染物質を洗浄しなければならない。これは洗浄溶液を通り極微粒子を通過することより達成される。チャンバー1の中間領域9は洗浄工程のため残されている。洗浄溶液は典型的にはサンプル溶液の密度よりも大きいかあるいは等しいが、極微粒子の密度よりも少い密度を有するように選択される。遠心力に応答して、円形コンベヤー上の中央に配置されている、サンプル領域10から洗浄溶液を通る極微粒子の通過は、免疫学的検査・サンプル混合溶液から汚染成分の除去及び希釈を生ずる。
第8図は特に洗浄溶液の効果に関するその原理を例示している。ロータはいかなる形式のバリヤーあるいは他の安定化手段を除いて非常に簡単化して例示されており、そしてこのような実施態様では、ロータ85が旋回し、これにより遠心力によって溶液の各層の外方位置に強制しながら異なる溶液の層形成(layering)が達成される。第8a図は基質溶液81、洗浄溶液82及び反応またはサンプル混合物83が加えられた後のスタート位置を示している。連続遠心力の下で、サンプル混合物83内に含まれている極微粒子84は反応混合物83からのいわゆる溶解ドラグ(drag)あるいは他の汚染物質をも効果的に希釈する洗浄溶液82を介して移動する。洗浄溶液82は極微粒子の密度よりも大きくない密度を有し、そして好ましくは物理的混和を制限するため反応混合物83の密度よりも大きい密度を有するように選択される。結局、極微粒子は第8c図に示されている、基質溶液81を通過後沈澱する。斜線部分は基質溶液81内の基質の螢光生成物への酵素変換を例示している。螢光生成物は基質溶液を照射することにより、そしてこのような照射効果を測定することにより光学的窓86を介して測定されあるいは検出することができる。
再び第3図を参照すると、円形コンベヤー3の供給領域4内に置かれているサンプル保持器15の好ましい実施態様の平面図が示されている。サンプル保持器15は所望の免疫学上の反応を刺戟するため適切な環境に配置するためサンプル及び免疫学的成分を含んでいると好都合である。保持器15は好ましくは、中央領域16を有するように構成され、この中央領域16を介して基質溶液及び洗浄溶液は、一旦保持器が円形コンベヤー上に置かれ、且つ円形コンベヤーが遠心力により回転されている間に加えることができる。円形コンベヤー及び保持器は、供給領域に加えられる溶液がサンプルと接触してチャンバ内に流れないように構成される。保持器15の壁は減少した回転速度の下で、基質溶液及び洗浄溶液がチャンバー内で層状化され(layered)、そして減少する速度において発生する遠心力によりそこに維持され、それから回転速度、従って遠心力を増加するとき、サンプル18が保持器壁をオーバフローし、そしてチャンバー1のサンプル領域10内へ送られるように適切に設計されている。その後、遠心力は、サンプル溶液、洗浄溶液を通り、そして所望の基質溶液内への極微粒子の通過速度を調整するため適切に選択される。
第5a図乃至第5e図は本発明の原理及び適用を明示している。初めに、サンプル、極微粒子及び標識を含む決定要素がサンプル保持器15に加えられ、そしてこれにより得られる免疫学的検査・サンプル混合物18は必要なとき培養されあるいは処理される。免疫学的検査・サンプル混合物18を有するサンプル保持器15はそれから円形コンベヤー3の供給領域内に置かれそして円形コンベヤーは混合物を保持器壁からオーバフローせしめるのに不充分な速度で回転される。
回転速度がなお制限されている間に、中央部分16を介して基質溶液が加えられる。回転により発生される遠心力は基質領域8の方へ半径方向外方に向けられ、そしてこれに応答して、基質溶液はチャンバーの遠位端部、即ち反応領域8の方へ流れる。その後、洗浄溶液が加えられ、そして同様に、それは第5c図に示されている如く、チャンバー領域9内に流れる。回転速度を増加するとより大きな遠心力の付加となり、免疫学的検定サンプル混合物18をサンプル保持器から去らしめ、そしてそれ自身は第5d図に示される如く洗浄溶液に隣接する層になる。
連続遠心力は極微粒子19をサンプル混合物から去らしめ、領域9内の洗浄溶液を通過し、そしてついには第5e図に示されている如く領域8内の基質溶液内に送る。同時に、適用の1実施例においては、基質領域8は光励起源により励起し、そしてその結果生ずる螢光を第5e図に示されている如く検出器20により検知することができる。基質領域8内への極微粒子19の押入りは有効にその結果生ずる放射線の変化を生じ、これによりサンプル内の免疫学的決定要素の存在と直接相互に関連ずけることができる検出器信号を変化する。放斜線源の型式及び位置は図示の物理的配置に対して限定されないと理解されるべきである。
第6図は気孔30を有している安定バリヤー5の好ましい実施態様の平面図を示している。第7図に示されている側面図は、円形コンベヤー3のチャンバ内の溶液の安定を保進するためのバリヤーの構造を例示している。例示の如く、バリヤーは約1~5mmのチャネル及び直径約20~100ミクロンの気好を有するのが好ましい。作用上、気好の直径は極微粒子の直径よりも実質的に小さくできないことは容易に明らかである。
第9図及び第9a図は円形コンベヤーロータ装置の最も好ましい実施態様のそれぞれ側面図及び平面図を例示している。これ等の図及び第10図の実施態様は遠心/ピペッティング(centrifuge/pipetting)機械における連続操作により容易に適合できると信じられている。第9a図は中心102からの距離が増加するにつれて、増加する幅を有するようになっているロータ100のチャンバ101を例示しているが、一定の幅の如き他の手段により容易に代用できることは容易に理解されるであろう。第9図は読みとりチャンバ95と、洗浄チャンバ96と、洗浄流体槽97と、サンプル流体槽98とを有するロータ100の側面図を例示している。サンプル槽98と洗浄流体槽97との間には角度アルファを有するサンプル槽に隣接する傾斜を有するバリヤー103がある。バリヤー103はサンプル流体及び洗浄流体の分離を維持しているが、大きな遠心力の下では、その頂部を越えてサンプル流体の逃出を許容するように設計されている。同様に、チャンバ97内の洗浄流体はアルファよりも小さいベータの角度の傾斜を有するバリヤー94により定位置に保たれている。好ましくは、バリヤー94は、極微粒子が遠心力の下で読みとりチャンバ95の方へ流れるとき洗浄流体の効力を増加するため狭いチャネル、即ちチャンバ96を設けるようになっている。図示されたこの実施態様では、洗浄流体はまた基質溶液としても役立っている。サンプル混合物はオリフィス91を通りサンプル槽チャンバ98に付加することができ、そして同様に洗浄流体はオリフィス92を通り槽97へ加えることができる。チャンバ及び洗浄流体の容積は円形コンベヤー100の物理的寸法に従いそして経済性の指図により適切に選択されている。例えば、サンプルは0.25mlに、洗浄流体は1.2mlに調整することができ、そしてチャンバ96及び95はそれぞれ0.3ml及び0.9mlを保持するように設計されている。」(第7頁左上欄第12行目-第9頁右下欄第5行目)
引用文献1のFIG.1、2には、各々、次の図が記載されている。
なお、FIG1において、供給領域4から外側に延びている破線は、当審で付したものであり、円形コンベヤー3の中心から離れるように投射される半径方向のラインをあらわしている。
引用文献1のFIG.6、7には、各々、次の図が記載されている。
引用文献1のFIG.9、10には、各々、次の図が記載されている。
(引1D)上記FIG.1、2、9より、中間領域9及び反応領域8を構成する壁は、供給領域4の中心から離れるように投射される半径方向のラインと交差せずに、ほぼ平行に構成されていることが見てとれる。
(引1E)上記FIG.1、2、6、7より、バリヤー5が有するチャネルは供給領域4の断面積よりも小さい断面積を有することが見てとれる。
(引1F)FIG1より、供給領域4の上側には孔が設けられることが見てとれる。
(引1G)FIG1、2より、バリヤー5は、サンプル領域10と、中間領域9や反応領域8を接続することが見てとれる。
摘記事項(引1A)-(引1G)を総合すると、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「(a)免疫学的検定法において使用される微小球型の粒子の分離、洗浄及び検出のための装置であって、
(b)中心部25を有する本質的に円形の円形コンベヤー3を形成している複数の半径方向に分散したチャンバ1を有し、チャンバーは、遠位の閉端部6と、実質的に円形コンベヤーの中心に配置されている供給領域4と連絡している近位の開端部7とを有し、チャンバーは、中心に対して最も遠位の領域である反応領域8、中間領域9及び円形コンベヤー上の中央に配置されているサンプル領域10、の3つの領域を有し、全装置は遠心力により中心の周りに回転するようになっており、
(c)供給領域4の上側には孔が設けられ、
(d)サンプル、極微粒子及び標識を含む決定要素がサンプル保持器15に加えられ、そしてこれにより得られる免疫学的検査・サンプル混合物18を有するサンプル保持器15は円形コンベヤー3の供給領域内に置かれ、
(e)溶液を安定化し、且つその間の機械的混合を最少にする少くとも1つのバリヤー5を有し、バリヤー5は、サンプル領域10と、中間領域9や反応領域8を接続し、バリヤー5は供給領域4の断面積よりも小さい断面積を有する約1~5mmのチャネルを有し、
(f)ロータ85が旋回し、これにより遠心力によって溶液の各層の外方位置に強制しながら異なる溶液の層形成(layering)が達成され、連続遠心力の下で、サンプル混合物83内に含まれている極微粒子84は反応混合物83からのいわゆる溶解ドラグ(drag)あるいは他の汚染物質をも効果的に希釈する洗浄溶液82を介して移動し、結局、極微粒子は基質溶液81を通過後沈澱し、
(g)中間領域9及び反応領域8を構成する壁は、供給領域4の中心から離れるように投射される半径方向のラインと交差せずに、ほぼ平行に構成されている装置。」
(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由とともに引用された引用文献2(特に、第14頁第13行-第15行、第36頁第6行-第37頁第23行、第40頁第18行-第23行、Fig13a-13cを参照。)には、遠心分離微小流体ディスク上で免疫アッセイおよび臨床化学反応アッセイを行うデバイスにおいて、60μmに満たない深さ及び100μm幅×300μm長のフィンガ506にペレット化された蛍光ビーズを凝縮し検出する技術や、回転時にパウチを破裂させることで薬液を供給する技術が開示されている。
(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由とともに引用された引用文献3(特に、第1頁第18行-第26行、第21頁第1行-第6行、Fig.5、第25頁第26行-第34行、Fig.7を参照。)には、マイクロ流体試験担体において、試薬を溶解するための試薬チャンバ等を受容チャンバ等に接続する技術や、受容チャンバに突起部を設ける技術が開示されている。
(4)引用文献4について
原査定の拒絶の理由とともに引用された引用文献4(特に、【0011】を参照。)には、マイクロ流体デバイスに液体を供給するために用いられるマイクロ流体デバイス用液体供給カートリッジが開示されている。
(5)引用文献5について
原査定の拒絶の理由とともに引用された引用文献5(特に、【0001】、【0070】-【0072】を参照。)には、分析チップを回転させることにより、検体や試薬の送液および/または反応を一つの分析チップで行うことのできる免疫分析用の分析チップにおいて、反応室の開口部に、担体の堰き止め手段を設けることにより、反応室ユニットから担体が漏れないよう保持する技術が開示されている。
3 本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のとおりである。
(1)引用発明の「免疫学的検定法において使用される微小球型の粒子の分離、洗浄及び検出のための装置」は、本願発明1の「装置」に相当する。
(2)引用発明の「中心部25」は、本願発明1の「回転の中心」に相当し、引用発明の「サンプル混合物83内に含まれている極微粒子84」は、本願発明1の「試料中において懸濁した粒子」に相当する。また、引用文献1の第9頁右上欄第2行目-第3行目に「円形コンベヤーロータ装置」の記載があること等、引用文献1全体の記載を考慮すると、引用発明における「ロータ85」と「円形コンベヤー3」は同一の部材であるといえる。すると、引用発明の「中心部25を有する」「連続遠心力の下で」「極微粒子」が「沈澱する」ように「旋回」する「ロータ85」(「円形コンベヤー3」)は、本願発明1の「回転の中心を有し、且つ、試料中において懸濁した粒子」「の沈降を生成するべく回転するように構成されたカートリッジ」に相当する。
(3)引用発明の「サンプル保持器15」が「置かれ」る「供給領域4」は、本願発明1の「試料を保持するように構成された受取空洞」に相当する。また、引用発明では、供給領域4の上側に孔があり、「サンプル保持器15」は、「孔」を通して「円形コンベアーの供給領域内に置かれ」るものと考えることが自然である。したがって、引用発明の「供給領域4の上側」に「設けられ」た「孔」は、本願発明の「前記受取空洞内への前記試料の進入を許容するように構成された試料進入孔」に相当する。
(4)引用発明の「中心に対して最も遠位の領域である反応領域8」又は「中間領域9」のいずれかは、本願発明1の「前記受取空洞の場所との関係において前記カートリッジの前記回転の中心から離れるように配置された第2空洞」に相当する。
(5)引用発明の「サンプル領域10と、中間領域9や反応領域8を接続」する「バリヤー5」が有する「供給領域4の断面積よりも小さい断面積を有する約1~5mmのチャネル」は、本願発明1の「前記受取空洞及び前記第2空洞を接続する通路であって、前記受取空洞の断面積よりも小さな断面積を有する通路」に相当する。
(6)引用発明の「粒子」を「基質溶液81を通過後沈澱」することは、本願発明1の「前記粒子」「の沈降」に相当する。そして、本願発明1の「試料」には「粒子」も含まれることから、引用発明の「連続遠心力の下で、サンプル混合物83内に含まれている極微粒子84は反応混合物83からのいわゆる溶解ドラグ(drag)あるいは他の汚染物質をも効果的に希釈する洗浄溶液82を介して移動」することと、本願発明1の「前記カートリッジの回転の際に前記試料を前記受取空洞から前記第2空洞に転送する」ことは、「粒子」を「前記受取空洞から前記第2空洞に転送する」ことで共通する。
(7)したがって、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
「装置であって、
回転の中心を有し、且つ、試料中において懸濁した粒子又は細胞の沈降を生成するべく回転するように構成されたカートリッジであって、
前記試料を保持するように構成された受取空洞であって、前記受取空洞内への前記試料の進入を許容するように構成された試料進入孔を有する受取空洞と、
前記受取空洞の場所との関係において前記カートリッジの前記回転の中心から離れるように配置された第2空洞とを有する、カートリッジと、
前記受取空洞及び前記第2空洞を接続する通路であって、前記受取空洞の断面積よりも小さな断面積を有する通路と、を有し、
前記カートリッジは、前記粒子又は細胞の沈降のために前記カートリッジの回転の際に粒子を前記受取空洞から前記第2空洞に転送するように構成されており、
前記第2空洞は、少なくとも1つの壁を更に有し、前記半径方向のラインは、前記カートリッジの前記回転の中心から離れるように投射される装置。」
また、次の2点で相違する。
(相違点1)
本願発明1のカートリッジは(粒子を含む)「試料」を「受取空洞から第2空洞に転送」するのに対して、引用発明1の円形コンベアーは「粒子」を「サンプル混合物83内に含まれている極微粒子84は反応混合物83からのいわゆる溶解ドラグ(drag)あるいは他の汚染物質をも効果的に希釈する洗浄溶液82を介して移動」する点。
(相違点2)
本願発明1の「第2空洞」が「有」する「少なくとも1つの壁」は、「半径方向のラインから離れるように、且つ、前記回転の中心から離れるに従い、半径方向のラインよりも前記第2空洞の内部の領域を広げるように構成され」ており、「前記半径方向のライン」と「交差している」のに対して、引用発明の「中間領域9及び反応領域8を構成する壁」は、「半径方向のラインと交差せずにほぼ平行に構成されている」点。
4 本願発明1についての判断
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
ここで、「半径方向のラインから離れるように、且つ、前記回転の中心から離れるに従い、半径方向のラインよりも前記第2空洞の内部の領域を広げるように構成され」ており、「前記半径方向のライン」と「交差している」「少なくとも1つの壁」を「有」する「第2空洞」については、原査定で引用された引用文献1-5のいずれの文献にも記載されておらず、当業者にとって周知の技術であるともいえない。また、チャンバ101の容積を変更することは当業者が適宜なし得ることであるが、「少なくとも1つの壁」が「半径方向のラインから離れるように、且つ、前記回転の中心から離れるに従い、半径方向のラインよりも前記第2空洞の内部の領域を広げるように構成され」ており、「前記半径方向のライン」と「交差している」という構成により、チャンバ101の容積を変更することは、当業者が適宜なし得たことではない。そして、本願明細書には、当該構成により、本願発明1は「試料流体86が1つの方向88における安定した回転の際に高密度媒体85とインターフェイスする領域内において検定粒子89と沈降チューブの壁との間の衝突を極小化する」という効果を有することが記載されており(本願明細書の【0017】を参照。以下、「本願発明1の効果」という。)、このような効果は引用文献2-5のいずれにも記載されておらず、当業者が引用文献1-5に記載の事項から予測可能な効果であるとはいえない。
したがって、当該構成は、当業者が容易に想到し得た構成ではない。
よって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2-5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
5 本願発明2-25について
本願発明2-25は、本願発明1の発明特定事項をすべて有するものであ
るから、本願発明2-25は、当業者が引用発明及び引用文献2-5に開示された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
6 小括
よって、本願発明1-25は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものではないから、原査定の理由3を維持することはできない。
第5 特許法第36条第6項第2号の拒絶理由について
審判請求時の補正により、補正前の請求項15、23は削除された。
次に、補正前の請求項16の「前記受取空洞を前記第2空洞に接続する通路は、前記固体粒子の一部分の少なくとも1つの固体粒子の直径よりも小さい」が補正後の請求項15において「前記受取空洞を前記第2空洞に接続する通路は、前記固体粒子の一部分の少なくとも1つの固体粒子の直径よりも小さく、前記固体粒子が、前記受取空洞から前記通路を通過するのを阻害する」と補正され、「前記固体粒子が、前記受取空洞から前記通路を通過するのを阻害する」ことを目的としていることが明らかになったため、本願発明15は明確になった。
また、補正前の請求項17の「前記受取空洞を前記第2空洞に接続する通路は、前記固体粒子の一部分の少なくとも1つの固体粒子の直径よりも小さい」が補正後の請求項16において「前記試料中の固体粒子の量を推定するべく前記受取空洞内に保持されている固体粒子の容積を計測のためのシステムを更に有する」と補正されたため、前記受取空洞内に保持されている固体粒子の容積を計測することが明らかになったため、本願発明16は明確になった。
よって、原査定の理由1を維持することはできない。
第6 結び
以上のとおりであるから、原査定の理由1、3によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-002153