特許拒絶査定不服審判
2019-000527
ショベル
- 審判番号
- 2019-000527
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-538386外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年01月16日
- 審決日
- 2019年12月02日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (F02D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-538386「ショベル」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月4日国際公開、WO2016/017674〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
1.本願は、2015年(平成27年)7月29日(優先権主張2014年(平成26年)7月30日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年7月4日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:同年7月10日)、平成30年9月10日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年10月11日に拒絶査定がなされ(発送日:同年10月16日)、これに対し、平成31年1月16日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に、手続補正書が提出されたものである。
第2 平成31年1月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前の平成30年9月10日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
下部走行体と、上部旋回体と、ブーム及びアームを含むアタッチメントと、コントローラと、エンジンと、該エンジンによって駆動され且つ前記アタッチメントを駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプとを搭載するショベルであって、
前記コントローラは、前記アタッチメントに加わる油圧負荷を取得し、該取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を、所定の時間間隔毎に算出する、
ショベル。」
(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)
「【請求項1】
下部走行体と、上部旋回体と、ブーム及びアームを含むアタッチメントと、コントローラと、エンジンと、該エンジンによって駆動され且つ前記アタッチメントを駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプとを搭載するショベルであって、
前記コントローラは、前記アタッチメントに加わる油圧負荷を取得し、該取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすように前記エンジンを回転数制御するため、負荷が変化する際に所定の時間間隔毎に、前記取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出する、
ショベル。」
2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「コントローラ」において、「取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすように前記エンジンを回転数制御するため、負荷が変化する際に所定の時間間隔毎に」エンジン回転数を算出するとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件補正発明」という。)が、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2012/046788号(以下、「引用文献1」という。)には、「ハイブリッド型作業機械」に関して、図面(特に、図1ないし図3、図7及び図9を参照。)と共に次の記載が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
(ア)「[0010]本発明の一実施態様によれば、エンジンと、該エンジンに連結された電動発電機と、該エンジンの出力により回転駆動される可変容量式油圧ポンプと、該エンジンの回転数及び該可変容量式油圧ポンプを制御する制御部とを有し、該制御部は、油圧負荷に基づいて該エンジンを回転数制御することを特徴とするハイブリッド型作業機械が提供される。
[0011] 上述の発明によれば、エンジン回転数を出来る限りを下げて傾転角比を大きくすることで、可変容量式油圧ポンプの効率をより高い状態に維持することができる。
(イ)「[0016]図1に示すハイブリッド型油圧ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。」
[0017]図2は、図1に示すハイブリッド型油圧ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線でそれぞれ示されている。
[0018]機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。油圧ポンプ14は可変容量式油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量を制御することができる。以下、可変容量式油圧ポンプ14を単に油圧ポンプ14と称することもある。
[0019]コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。また、旋回機構2を駆動するための旋回用油圧モータ2Aもコントロールバルブ17に接続される。
(ウ)「[0029]次に、本発明の第1実施例によるハイブリッド型作業機械における回転数可変制御アルゴリズムについて説明する。図3は本発明の第1実施例による回転数可変制御アルゴリズムの制御機能ブロック図である。この回転数可変制御アルゴリズムによる制御はコントローラ30により行なわれる。
(エ)「[0030]まず、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40-1において、油圧ポンプ14の吐出圧力Piとポンプ制限電流Iとを用いてポンプ馬力制御PQ線図からポンプ吐出量Vが求められる。求められたポンプ吐出量Vにポンプ回転速度(回転数)を乗じることで油圧ポンプ14の目標吐出流量Qが算出される。すなわち、要求されている油圧負荷から、油圧ポンプ14が出力すべき目標吐出流量Qが求められる。油圧ポンプ14の吐出圧力Piとポンプ制限電流Iとポンプ回転速度(回転数)とが、油圧負荷を表す値として用いられる。油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40-1において求められた目標吐出流量Qは、回転数演算ブロック40-2に供給される。
(オ)「[0041]次に、本発明の第2実施例について説明する。図7は本発明の第2実施例による回転数可変制御アルゴリズムの制御機能ブロック図である。この回転数可変制御アルゴリズムによる制御はコントローラ30により行なわれる。図7において、図3に示す構成部分と同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
(カ)「[0042]本実施例による回転数可変制御アルゴリズムでは、エンジン11が出力すべき動力として要求エンジン出力Penを求めてから、要求エンジン出力Penから求められるエンジン回転数Ne2と、目標吐出流量Qから求められるエンジン回転数Ne1とのうちいずれか大きい方を選択し、選択したエンジン回転数をエンジン回転数指令Neに設定する。
[0043]したがって、本実施例では、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40-1と回転数指令演算ブロック40-2との間に、要求エンジン出力演算ブロック40-6が設けられる。図8は要求エンジン出力演算ブロック40-6で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。図8には、アシスト出力演算ブロック40-4で行なわれる処理の演算アルゴリズムも示されているが、アシスト出力演算ブロック40-4で行なわれる処理の演算アルゴリズムについては、上述の第1実施例で説明したものと同様であり、その説明は省略する。
[0044]要求エンジン出力演算ブロック40-6では、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40-1から供給される目標吐出流量Qに油圧ポンプ吐出圧力Piが乗算され、油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutが求められる。そして、求められた油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutをポンプ全効率η0で除算することで、油圧負荷要求出力Ppが求められる。油圧負荷要求出力Ppは、油圧ポンプ出力(軸入力側)Winに相当する。ここで、求められた油圧負荷要求出力Ppから、要求アシスト出力演算ブロック4-4で求められた蓄電器補償アシスト量Pa2が減算され、要求エンジン出力Penとして回転数指令演算ブロック40-2に出力される。油圧負荷要求出力Ppから蓄電器補償アシスト量Pa2が減算されることで、エンジン11が出力すべき要求エンジン出力Penを精度よく求めることができる。
[0045]回転数演算ブロック40-2での処理は、上述の第1実施例での処理とは異なる。本実施例では、要求エンジン出力Penは要求エンジン出力演算ブロック40-6で求められているので、回転数演算ブロック40-2では、要求エンジン出力Penからエンジン回転数指令Neを決定する処理が行なわれる。
(キ)上記(イ)の記載及び図1の図示内容より、ブーム4及びアーム5は、ハイブリット型油圧ショベルにおいてアタッチメントとして設けられているといえる。
(ク)上記(イ)の記載より、ハイブリッド型油圧ショベルが、エンジン11によって駆動されかつブーム4及びアーム5を駆動させる油圧ポンプ14を備えているといえる。
(ケ)図7には、コントローラ30において、「油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40-1」、「要求エンジン出力演算ブロック40-6」及び「回転数演算ブロック40-2」を備えた構成が図示されている。
(コ)上記(カ)の記載及び図7および図9の図示内容より、コントローラ30は、取得したポンプ圧情報(Pi)に見合う要求エンジン出力Penをもたらすように、エンジン11を回転数制御するため、前記取得したポンプ圧情報(Pi)に見合う要求エンジン出力Penをもたらすエンジン回転数Ne2を算出する構成であるといえる。
これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、整理すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「下部走行体1と、上部旋回体3と、ブーム4及びアーム5を含むアタッチメントと、コントローラ30と、エンジン11と、該エンジンによって駆動され且つ前記アタッチメントを駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプとを搭載するハイブリット型油圧ショベルであって、
前記コントローラ30は、ポンプ圧力情報(Pi)を取得し、該取得したポンプ圧情報(Pi)に見合う要求エンジン出力Penをもたらすようにエンジン11を回転数制御するため、前記取得したポンプ圧情報(Pi)に見合う要求エンジン出力Penをもたらすエンジン回転数Ne2を算出する、
ショベル」
(3) 引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「ハイブリッド型油圧ショベル」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「ショベル」に相当し、以下同様に、「ポンプ圧力情報(Pi)」は「アタッチメントに加わる油圧負荷」に、「要求エンジン出力Pen」は「取得した油圧負荷に見合うエンジン出力」に、「エンジン回転数Ne2」は「エンジン回転数」にそれぞれ相当する。
したがって、両者は、
「下部走行体と、上部旋回体と、ブーム及びアームを含むアタッチメントと、コントローラと、エンジンと、該エンジンによって駆動され且つ前記アタッチメントを駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプとを搭載するショベルであって、
前記コントローラは、前記アタッチメントに加わる油圧負荷を取得し、該取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすように前記エンジンを回転数制御するため、前記取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出する、
ショベル。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
コントローラに関し、前者は「負荷が変化する際に所定の時間間隔毎に」エンジン回転数を算出する構成を備えているのに対し、後者は「負荷が変化する際に所定の時間間隔毎に」エンジン回転数を算出している構成を備えているかが不明である点。
(4) 判断
上記相違点について検討する。
引用文献1には、「回転数演算ブロック40-2」において、「要求エンジン出力Pen」より「エンジン回転数Pe2」を求める構成が記載されている。そして、図9には、要求出力に対応する回転数を算出するためのグラフであって、要求出力に対して回転数がリニアに増加する状態が示されている。また、より適切に制御を行うためにエンジン状態に応じた制御を適切な時間間隔毎におこなうことが好ましいことは、例えば、国際公開第2010/150382号の段落【0015】、特開2009-216058号公報の【請求項4】等において、所定の時間間隔毎にエンジン制御を行う構成が示されているように、当業者にとり周知といえる。したがって、引用発明1において、要求出力の状態を所定の時間間隔毎に検出し、エンジン回転数を算出すること、つまり相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
また、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明の記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
したがって、本件補正発明は、引用発明の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。
3.特開2012-180683号公報を引用文献とする場合についての予備的検討
なお、予備的に、原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2012-180683号公報(以下、「引用文献2」という。)を引用文献とする場合についても、検討を行う。
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献2
引用文献2には、「建設機械の制御装置」に関して、図面(特に、図1、図3及び図13を参照。)と共に次の記載が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。
(ア)「【0001】本発明は、油圧ショベルやホイールローダ等の油圧アクチュエータを備えるハイブリッド式建設機械に係り、特にその制御装置に関する。」
(イ)「【0013】図1に示す油圧駆動制御装置は、油圧ポンプ3で吐出した圧油をまず複数のコントロールバルブを備えるバルブ装置4に供給し、当該バルブ装置4で圧油の流量・方向・圧力を適宜変更した後に各油圧アクチュエータ5に供給することで各油圧アクチュエータ5の駆動を制御している。本実施の形態に係る油圧ショベルに設置される油圧アクチュエータ5としては、上部旋回体の前方に取り付けられた多関節型のフロント作業装置を駆動するための油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダ等)や、上部旋回体を旋回させるための油圧モータ(旋回モータ)や、上部旋回体の下部に取り付けられた下部走行体を走行させるための油圧モータ(走行モータ)等があるが、図1ではこれらをまとめて油圧アクチュエータ5と表記している。
【0014】エンジン1は、ガバナ7によって燃料噴射量を制御することで調速される。油圧ポンプ3には、油圧ポンプ3の負荷を演算するために必要な情報を検出する手段(ポンプ情報検出手段21)として、油圧ポンプ3から吐出される圧油の圧力を計測する吐出圧センサと、当該圧油の流量を計測する流量計と、油圧ポンプ3の傾転角を計測する傾転角センサとが設置されており、これら吐出圧センサ、流量計及び傾転角センサはコントローラ8に検出したセンサ値を出力している。コントローラ8におけるポンプ負荷演算部26(後述)は、このポンプ情報検出手段21から入力される各センサ値に基づいて油圧ポンプ3の負荷を演算する。」
(ウ)「【0018】図3は本発明の実施の形態におけるコントローラ8の概略構成図である。この図に示すコントローラ8は、エンジン1、電動・発電機2及び油圧ポンプ3に対するそれぞれの指令値の演算を行うもので、目標回転数設定部(目標回転数設定手段)17と、エンジン最大出力演算部(エンジン最大出力演算手段)18と、アシスト出力演算部(アシスト出力演算手段)19と、吸収トルク上限演算部(吸収トルク上限演算手段)22と、操作信号生成部(操作信号生成手段)24と、蓄電量演算部25と、ポンプ負荷演算部26と、エンジン出力演算部32を備えている。
【0019】コントローラ8には、回転数センサ(実回転数検出手段)16によって検出されるエンジン実回転数と、エンジントルクセンサ(エンジントルク検出手段)31によって検出されるエンジントルクと、蓄電情報検出手段22によって検出された蓄電情報(蓄電装置10の電流、電圧及び温度)と、ポンプ情報検出手段21によって検出されたポンプ情報(圧油の圧力及び流量並びに油圧ポンプ3の傾転角)と、油圧ショベルの運転室(キャブ)内に設置されオペレータによって所望の目標エンジン回転数が入力される目標回転数入力装置29(例えば、エンジンコントロールダイヤル)から入力される目標エンジン回転数が入力されている。」
(エ)「【0023】目標回転数設定部17は、ポンプ負荷演算部26で算出される油圧ポンプ3の負荷(油圧アクチュエータ5の負荷状態)に応じたエンジン出力が確保されるようにエンジン1の目標回転数を定める部分であり、当該目標回転数は目標回転数入力装置29から入力されるものよりも優先して決定される。なお、その際、エンジン1における燃料消費量を低減する観点から、エンジン1の必要出力に対する燃料消費量が最小となる動作点をエンジン1の目標回転数指令値として設定することが好ましい。目標回転数設定部17で定められた目標回転数は、吸収トルク上限演算部22と操作信号生成部23に出力されている。さらに、目標回転数は、回転数センサ16によって検出される実回転数との偏差としてアシスト出力演算部19に出力されている。なお、ここで定められる目標回転数は、発電・電動機2の制御にも利用されるが、エンジン1と電動・発電機2が減速機などを介して接続されている場合には、一旦定めた目標回転数に当該減速機の減速比を乗じた値を別途目標回転数として定義して利用すれば良い。」
(オ)「【0064】 図13は、油圧ポンプ3の負荷が急激に増加したことに対応するためにエンジン1の目標回転数を急激に増加させた場合における建設機械の制御例の1つを示している。
【0065】ここでは、フロント作業装置が急激な重負荷作業を実施したことにより、図13における(a)のように油圧ポンプ3の負荷が変化したものとする。このとき、目標回転数設定部17は、ポンプ負荷の急激な増加に対応するために目標回転数を図13中の(c)(当審による注釈:(b)の誤記である)のように素早く立ち上げてエンジン出力を上げる。すなわち、一時的に回転数偏差ΔNが大きく生じる。ここで、アシスト出力演算部19は、生じた回転数偏差ΔNを解消するためにモータトルク指令値として最大のアシスト出力PMmaxを算出し、電動・発電機2は図13中の(c)に示すように最大のアシスト出力PMmaxを発生する。このように最大のアシスト出力が発生されると、回転数偏差の設定値は最小値NCminに設定される。このとき、当該設定値と回転数偏差ΔNの差は非常に大きな値となるため、吸収トルク上限演算部23では減トルク量が大きくとられる。これによりポンプ吸収トルク上限値は大きく減少して、ポンプ負荷は図13中の(d)のように目標に対して大きく制限されることになる。
【0066】このように、目標となるポンプ負荷が大きくなる時には、ポンプ吸収トルク上限値の制限によってエンジン1に対する負荷が小さくなるため、電動・発電機2によって過渡的に大きなアシスト出力を発生させることなくエンジン1を目標回転数に素早く追従させることが可能になる。」
(カ)図1には、エンジン1によって駆動され且つ油圧シリンダを駆動させる作動油を吐出するポンプ3とを搭載する油圧ショベルの概略図が示されている。
(キ)(エ)に記載された「目標回転数設定部17」は、図7を参照すると「コントローラ8」の構成の一部といえる。したがって、「目標回転数設定部17」が「エンジン1の目標回転数を定める」との構成は、「コントローラ8」が「エンジン1の目標回転数を定め」ている。
また(オ)の記載において、油圧ポンプ3負荷の変化に対応して、目標回転数設定部17が、目標回転数を素早く立ち上げてエンジン出力を上げる構成について記載されている。
よって、引用文献2には、油圧ポンプの負荷に見合うエンジン出力をもたらすようにエンジンを回転数制御している構成が記載されているといえる。
これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、整理すると、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「下部走行体と、上部旋回体と、上部旋回体前方に取り付けられた多関節型のフロント作業装置、該作業装置を駆動するためのブームシリンダ、アームシリンダ及び、コントローラ8と、エンジン1と、該エンジン1によって駆動され且つ前記油圧シリンダを駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプ3とを搭載する油圧ショベルであって、
前記コントローラ8は、ポンプ負荷演算部26で算出される油圧ポンプ3の負荷(油圧アクチュエータ5の負荷状態)を取得し、該油圧ポンプ3の負荷に見合うエンジン出力を確保されるようにエンジン1の目標回転数を回転数制御するため、油圧ポンプ3の負荷(油圧アクチュエータ5の負荷状態)に応じたエンジン出力をもたらすエンジン1の目標回転数を定める、
油圧ショベル。」
(3) 引用発明2との対比
本件補正発明と引用発明2とを対比すると、後者の「油圧ショベル」は前者の「ショベル」に相当し、以下同様に、「油圧ポンプ3の負荷(油圧アクチュエータ5の負荷状態)」は「油圧負荷」に、「エンジン出力が確保されるようにエンジン1の目標回転数を定める」は「油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出する」に、それぞれ相当する。
また、後者の「ブームシリンダ及びアームシリンダ」は、前者の「ブーム及びアームを含むアタッチメント」と「ブームシリンダ及びアームシリンダ」を有する限りにおいて一致する。
したがって、両者は、
「下部走行体と、上部旋回体と、ブームシリンダ及びアームシリンダと、コントローラと、エンジンと、該エンジンによって駆動され且つ前記アタッチメントを駆動させる作動油を吐出する油圧ポンプとを搭載するショベルであって、
前記コントローラは、前記ブームシリンダ及びアームシリンダに加わる油圧負荷を取得し、該取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすように前記エンジンを回転数制御するため、前記取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出する、
ショベル。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]「ブームシリンダ及びアームシリンダ」について、前者は「ブーム及びアームを含むアタッチメント」を備えたショベルであるのに対して、後者は「ブームシリンダ及びアームシリンダ」であって「アタッチメント」を備えているか不明な点。
[相違点2]コントローラに関し、前者は「負荷が変化する際に所定の時間間隔毎に」エンジン回転数を算出する構成を備えているのに対し、後者は当該構成を備えているかが不明である点。
(4) 判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
「ブームシリンダ」及び「アームシリンダ」は通常「ブーム」及び「アーム」と一体で使用されていることが技術常識といえることから、引用発明2の油圧ショベルも「ブーム」及び「アーム」もアタッチメントとして備えていることは自明といえる。したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえず、引用発明2も相違点1に係る発明特定事項を備えているといえる。
(イ)相違点2について
作業状態が常に変化する装置において、より適切な制御を行おうとする場合、装置の状態変化を所定時間間隔毎に検出し、状態に応じた制御を適切な時間間隔毎におこなうことが好ましいことは、当業者にとって周知といえる。例えば、国際公開第2010/150382号の段落【0015】、特開2009-216058号公報の【請求項4】等には、所定の時間間隔毎にエンジン制御を行う構成について示されている。
ここで、引用発明2において、油圧ポンプ3の負荷を、ポンプ負荷演算部26において算出し、コントローラはその負荷に見合うエンジン出力を確保するようエンジン1の回転目標数を算出する構成を備えている。
引用文献2の図13に示されるように、油圧ポンプ3の負荷が急激に増加することは作業を行うにあたり通常生じる状況であることから、コントローラにおいて、負荷が変化する際に所定の時間間隔毎に、取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出することは、当業者であれば容易に想到し得たものといえる。
そして、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明の記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
したがって、本件補正発明は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。
なお、請求人は平成31年1月16日付け審判請求書において、「ア)本願の請求項1に関わる発明と引用文献1に記載された発明との相違について」として、以下の主張をしている。(当審による注釈:審判請求書において「引用文献1」とされているのは上記において検討した引用文献2の特開2012-180683号公報である。)
(主張1)「本願の請求項1に関わる発明は『油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を(所定の時間間隔毎に)算出する』ことを特定している。この特定事項により、本願の請求項1に関わる発明では、コントローラが所定の時間間隔毎にエンジン出力をもたらすエンジン回転数(指令値)を算出することを明確にしている。」
(主張2)「エンジン出力が増加した後(時刻t2以降)は、低減されたエンジン回転数(指令値)が『油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数』として算出される。その結果、ブースト圧等が増加(エンジン出力が増加)した後にエンジン回転数(指令値)を元に戻したとしても、油圧負荷に見合うエンジン出力トルクをもたらすことができる。このように、本願発明を用いることで、油圧負荷に見合うエンジン出力トルクをもたらしつつエンジン回転数(指令値)を上げたり下げたり制御ができるため、燃費を向上させることができる。」
(主張3)「一方、引用文献1には『油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出する』ことは何ら記載されておらず、示唆もされていない。」と主張している。
以下、上記主張について検討する。
(主張1について)
上記「3.特開2012-180683号公報を引用文献とする場合についての予備的検討」において述べたように、引用文献2の段落【0023】には、「目標回転数設定部17は、ポンプ負荷演算部26で算出される油圧ポンプ3の負荷(油圧アクチュエータ5の負荷状態)に応じたエンジン出力が確保されるようにエンジン1の目標回転数を定める」構成が記載されており、「油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出する」構成が記載されているといえる。そして、3.(4)相違点において検討したとおり、所定の時間間隔毎に算出することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(主張2について)
請求人の主張2は、本件補正発明により、エンジン出力が増加した後、エンジン回転数を低減させることで、油圧負荷に見合うエンジン出力トルクをもたらすことができ、ひいては燃費を向上させることができると要約できる。しかし、当該主張2については、本件補正発明の一実施形態により実現できるものであり、本件補正発明は「主張1について」において検討したとおり、引用発明2及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものである。
(主張3について)
上記「主張1について」で述べたとおり、引用文献2には、段落【0023】において「目標回転数設定部17は、ポンプ負荷演算部26で算出される油圧ポンプ3の負荷(油圧アクチュエータ5の負荷状態)に応じたエンジン出力が確保されるようにエンジン1の目標回転数を定める」構成が記載されており、油圧ポンプの負荷に見合うエンジン出力が確保されるようエンジン回転数を算出する構成が記載されているといえる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
4.むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
平成31年1月16日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成30年9月10日の手続補正により補正された請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、第2 1.(1)に記載したとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1又は予備的検討をおこなった引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.国際公開第2012/046788号
引用文献2.特開2012-180683号公報
3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2[理由]2.(2)に記載したとおりである。
また、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項は、前記第2[理由]3.(1)に記載したとおりである。
4.対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2.で検討した本件補正発明における「取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすように前記エンジンを回転数制御するため、負荷が変化する際に所定の時間間隔毎に、前記取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出する」との記載を「取得した油圧負荷に見合うエンジン出力をもたらすエンジン回転数を算出する」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、前記第2[理由]3.(3)及び(4)において予備的検討をおこなったとおり、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に理由により、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-000527