特許拒絶査定不服審判
2019-000450
低水分粒子状食品の表面低温殺菌または殺菌のための方法およびシステム
- 審判番号
- 2019-000450
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-512082外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年01月15日
- 審決日
- 2019年11月05日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ロイヤル・デイヴィス・ヴィーナー・ベー・フェー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P18 .121-Z (A23L) / P18 .575-Z (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-512082「低水分粒子状食品の表面低温殺菌または殺菌のための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日国際公開、WO2013/171336、平成27年 6月11日国内公表、特表2015-516167〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願は、2013年5月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年5月18日(US)米国、2012年9月12日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とするものでって、平成27年1月13日付けで特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書が出され、平成29年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年8月4日に意見書、手続補正書および手続補足書が提出され、同年12月28日付けで拒絶理由が通知され、平成30年7月5日に意見書および手続補正書が提出され、同年9月7日付けで拒絶査定され、平成31年1月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年2月7日に手続補正書(方式)が提出され、平成31年4月24日、令和1年7月24日、同年8月21日付けで上申書が提出されたものである。
第2 平成31年1月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月15日にされた手続補正を却下する。
1 補正の内容
平成31年1月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、平成30年7月5日付け手続補正により補正された請求項1
「【請求項1】
低水分粒子状食品を表面低温殺菌または殺菌する方法であって、
食品が予備加熱され、ガス中で低温殺菌または殺菌され、冷却され、
食品を低温殺菌または殺菌するガスが、水蒸気および1つ以上のさらなるガスを含み、
食品がガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に予備加熱される方法。」
を
「【請求項1】
低水分粒子状食品を表面低温殺菌または殺菌する方法であって、
食品が予備加熱され、ガス中で低温殺菌または殺菌され、冷却され、
食品を低温殺菌または殺菌するガスが、水蒸気および1つ以上のさらなるガスを含み、
食品が、食品を低温殺菌または殺菌するガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に予備加熱され、
低温殺菌または殺菌の間、ガスの圧力が0.8から1.2barの範囲にある方法。」(下線部は、補正箇所である。)とする補正を含むものである。
2 補正の適否
(1)本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ガス」に関して、「食品を低温殺菌または殺菌する」と限定し、「低温殺菌または殺菌の間」の「ガス」に関して、「低温殺菌または殺菌の間、ガスの圧力が0.8から1.2barの範囲にある」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2項に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について検討する。
(2)本願補正発明
本願補正発明は、前記1に記載したとおりのものである。
(3)引用刊行物
刊行物1:特開2000-135273号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2)
刊行物2:特開2002-112749号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1)
刊行物3:特開2000-24091号公報
なお、刊行物2~3は本願優先日時点の技術常識を示す文献である。
(4)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-135273号公報には、以下の記載がある。
訳文にて示す。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定温度・圧力に制御された水蒸気と非凝縮性気体の混合気体からなる雰囲気中で粉粒体を攪拌・移送しながら殺菌する加熱殺菌処理装置と、加熱殺菌処理した粉粒体を加圧下に移送する間に水蒸気を分離する水蒸気分離装置と、水蒸気を分離した粉粒体を非凝縮性気体の加圧雰囲気中で攪拌・移送しながら冷却した後、外部へ排出する冷却装置とを順次直結して備え、少なくとも1つの駆動手段により各装置を駆動することを特徴とする粉粒体の連続攪拌殺菌装置。」
(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉粒体の連続攪拌殺菌装置に関するものであり、更に詳述すると、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料などの粉粒体が本来有する香味、風味、分散性、形状、外観、色相などの品質を損なわずに連続的に攪拌しながら効率よく殺菌、冷却して低菌数の粉粒体を提供できるようにした粉粒体の連続攪拌殺菌装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、粉粒体、例えば香辛料などはそれぞれ風味、香りに特徴を持ち、その風味及び香りの良さは味と共に品質を左右するものである。この場合、特に香辛料などにおいてはそのほとんどが植物の種子、果実、根茎、葉、樹皮、蕾、花などを利用するものであり、通常これらの表面は微生物で汚染されているため、その用途に応じて殺菌処理が必要となる。
【0003】従来、粉粒体食品の殺菌方法としては加熱殺菌法が一般的に行われている。しかし加熱殺菌法では、成分、香り、味、色などの変質、有効成分の逸散などを伴い、食品そのものの品質を低下させる問題があった。放射線殺菌、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのガス殺菌法が提案されているが、いずれも食品衛生法上許可されておらず、食品の殺菌法として適用されるに至っていない。
【0004】粉粒体食品を過熱水蒸気の高速気流に分散して移動させて数秒で殺菌する方法(特公昭63-50984号公報)や粉粒体食品を過熱水蒸気などを用い、間接加熱された旋回流発生加熱管中で加熱処理する方法(特公平5-53号公報)が提案されているが、下記1)~7)の欠点がある。
1)水蒸気100%の気体中での殺菌であるので、処理物への水蒸気水分の浸透量が多い。
2)飽和水蒸気圧曲線の飽和温度付近では特に処理物への蒸気の凝縮量が多くなるので、それを避けるために過熱水蒸気にして殺菌温度を数度から数十度高く設定せざるを得ない。
3)水分、加熱によって粘着性の出る原料(例えば、オニオン、ガーリックなど)などは、装置内部、特に高圧ロータリバルブなどに付着、固化などを起こして、装置の連続運転が不可能となり、水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などは品質劣化など、品質ダメージが大きい問題がある。
4)殺菌後高圧から低圧に瞬間的に戻す時に香りが飛散し、品質が劣化する。
5)高温の粉粒体を冷却することなく空気輸送することにより香りが飛散し、品質が劣化する。
6)乾燥工程において気流中で乾燥するので香りが気流中に飛散し、品質が劣化する。
7)冷却工程に移送されるまでに時間がかかり、その間に香りが飛散し、品質が劣化する。
【0005】高速あるいは低速攪拌羽根付き耐圧混合機を用いて粉粒体を加圧水蒸気により殺菌する方法が提案されている(特開昭58-121954号公報、特開平2-92253号公報、特開平3-83567号公報、特開平7-274916号公報、特開平8-242807号公報、特開平8-318147号公報など)が、やはり処理物への水蒸気の過度の浸透、それに伴う処理物の成分の変質、また比較的長時間加熱となるための品質劣化など大きい問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、より低い温度で殺菌効果のでる殺菌処理を行い、かつ、処理物への水蒸気凝縮量を最小限にして、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料などの粉粒体、特に、水分、加熱によって粘着性の出る粉粒体(例えば、オニオン、ガーリックなど)や水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などについても、それらが本来有する香味、風味、薬効、性能、分散性、色相などの品質を損なわずに連続的に容易に効率よく殺菌、冷却して低菌数で高品質の粉粒体を供給できる粉粒体の連続攪拌殺菌装置を提供することである。」
(1c)「【0021】本発明の粉粒体の連続攪拌殺菌装置は、加熱殺菌処理装置、水蒸気分離装置および冷却装置がこの順序で順次直結されて構成されている。加熱殺菌処理装置中で所定温度・圧力に制御された水蒸気と非凝縮性気体の混合気体からなる雰囲気中で攪拌・移送されながら加熱殺菌処理された粉粒体は、加圧下にすぐに次の水蒸気分離装置に移送され、加圧下で水蒸気が分離される。水蒸気が分離された粉粒体はすぐに次の冷却装置に移送されて加圧下に冷却されて、製品は外部に排出される。このように加圧下で加熱殺菌処理後、加圧下で水蒸気分離を行えば粉粒体がダマになるのを防止しながら粉粒体に過多に付着する水分を除去できる。したがって、加熱殺菌処理した粉粒体をあらためて「乾燥処理」を行うことが不必要となり、装置を小型化、簡便化でき、イニシャルコストもランニングコストも低減でき経済的になる。本発明の粉粒体の連続攪拌殺菌装置は、従来の殺菌処理のように殺菌後、高圧から低圧に瞬間的に戻したり、空気輸送したり、気流中で乾燥したり、冷却工程に移送されるまでに時間がかからないので、香りが飛散し、品質が劣化することがない。したがって、水分、加熱によって粘着性の出る原料(例えば、オニオン、ガーリックなど)などや、水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などであっても粉粒体への水蒸気水分の浸透量が少なくなり、より低温で品質を損なわずに容易に効率よく殺菌処理を行うことができ、装置内部、特に高圧ロータリバルブなどに付着、固化などを起こすことなく連続加熱殺菌処理が可能となる。
【0022】本発明における加熱殺菌処理の具体例を次に示す。例えば、温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度に制御された非凝縮性気体および水蒸気を含む加熱加圧混合気体中で粉粒体を攪拌・移送しながら加熱殺菌処理する。水蒸気の潜熱を利用して加熱殺菌処理を行うとともに加熱殺菌処理装置側からの顕熱も利用して加熱殺菌処理を行うために、加熱殺菌処理装置は電気ヒータやスチームなどを利用した間接加熱により約80~300℃程度に加熱することが好ましい。水蒸気/非凝縮性気体の重量比は、約20/1~2/1が好ましく、約9/1程度がさらに好ましい。温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度に制御された混合気体中で、滞留時間約3sec.~60sec.程度となるように攪拌羽付回転軸の回転数を決め、装置内における粉粒体の充填率を適正にして、混合気体との接触効率を高め、均一、迅速に加熱殺菌処理するのが好ましい。
【0023】本発明において用いる非凝縮性気体は空気などでもよく特に限定されないが、非凝縮性気体として酸素を含まない気体、例えば窒素、炭酸ガスなどの不活性ガスを用いることにより、処理物の酸化を防ぐことができる。」
(1d)「【0051】
【発明の効果】本発明の粉粒体の連続攪拌殺菌装置は、水蒸気と非凝縮性気体の混合気体からなる加圧雰囲気中で殺菌するので、処理物の昇温時間を短縮できるとともに、処理物への水蒸気水分の浸透量が少なく、より低い温度で殺菌効果のでる殺菌処理を行える。また、従来の殺菌処理のように殺菌後、高圧から低圧に瞬間的に戻したり、空気輸送したり、気流中で乾燥したり、冷却工程に移送されるまでに時間がかかったりしないので、香りが飛散し、品質が劣化することがない。したがって、水分、加熱によって粘着性の出る原料(例えば、オニオン、ガーリックなど)などや、水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などであっても装置内部、特に高圧ロータリバルブなどに付着、固化などを起こすことなく、品質を維持しながら連続運転が可能となる。加熱殺菌処理した粉粒体を含む非凝縮性気体を加熱殺菌処理装置から移送して加圧下に水蒸気分離するので、粉粒体がダマになるのを防止しながら粉粒体に過多に付着する水分を除去できる。したがって、あらためて「乾燥処理」を行うことが不必要となり、装置を小型化、簡便化でき、イニシャルコストもランニングコストも低減でき経済的になる。本発明において用いる非凝縮性気体は空気などでもよいが、非凝縮性気体として酸素を含まない気体、例えば窒素、炭酸ガスなどの不活性ガスを用いることにより、処理物の酸化を防ぐことができる。」
イ 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-112749号公報には、以下の記載がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 密閉され得る処理室を、被殺菌物の重力落下による移送経路途中に設け、この処理室に高圧の蒸気を充填した状態で、被殺菌物を通過させて前記蒸気にこの被殺菌物を曝して加熱殺菌を行う装置において、前記処理室が装置外部との間で通気状態とならないように、処理室の投入口側及び排出口側に前後の移送経路と遮断状態とすることのできるシャッタ装置を具え、これら投入口側のシャッター装置と排出口側のシャッター装置との間には、底部に排出ダンパを有するインナーホッパーユニットを一つ以上具えることを特徴とする落下式蒸気殺菌装置。
・・・
【請求項6】 前記処理室の前段に殺菌処理を行う前に被殺菌物を予め予備加熱しておく予備加熱室が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の落下式蒸気殺菌装置。」
(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は流動自在な粉粒状材料、例えば胡椒原粒、そば粒、茶葉、トウガラシ、スパイス、乾燥野菜及び小麦粉等の食材の殺菌に用いるのに適切な落下式蒸気殺菌装置並びに方法に関するものである。」
(2c)「【0010】更にまた請求項6記載の落下式蒸気殺菌装置は、前記請求項1、2、3、4または5記載の要件に加え、前記処理室の前段に殺菌処理を行う前に被殺菌物を予め予備加熱しておく予備加熱室が設けられていることを特徴として成るものである。この発明によれば、予備加熱によって被殺菌物の温度が上昇して蒸気の温度との差が減少するため、被殺菌物の水分(蒸気)付着量を少なくすることが可能となり、被殺菌物の変色、香りの飛び、蒸れ等が減少し、後処理も簡単となる。」
(2d)「【0015】次に処理部2について説明する。処理部2は、内部に蒸気殺菌を行うための処理室20Rを形成する円筒状の処理バレル20と、この内部に設けられるインナーホッパユニット24とから成る。本実施の形態では、インナーホッパユニット24を収容した処理バレル20を二基縦に並べて連接して処理部2を構成するが、インナーホッパユニット24を収容した処理バレル20は、その他三基や四基連接して構成することが可能であるし、あるいは一基で構成することも可能である。また処理する被殺菌物Aによっては、処理室20Rにインナーホッパユニット24を設けない構造とすることも可能である。
【0016】処理バレル20について更に説明すると、このものは上下端にフランジ21を有し、一例として下端のフランジ21には、固定金具Bを受け入れる切欠溝21aが形成されている。また処理バレル20の周側面には、蒸気導入口22と蒸気排気口23が設けられ、ここにそれぞれパイプ22P、23Pが接続されて、新規の蒸気Jが定常的に処理室20Rに導入されるとともに、処理室20R内の蒸気Jが排出される。因みに供給される蒸気Jの蒸気圧力は、一例として0.03~0.5MPに設定されるものであり、また蒸気排気口23もしくはパイプ23Pには流量調節弁が設けられ、排気量が適宜の量に調整される。」
(2e)「【0025】本発明の落下式蒸気殺菌装置Sは、以上のような具体的な形態を有するものであって、以下この作動態様を説明するとともに、本発明の落下式蒸気殺菌方法について説明する。
(1)投入、予備加熱(図6(a)参照)
・・・予備加熱部5では、一例として熱風Hが予備加熱バレル50の熱風導入口52から供給され、ホッパー本体55の熱風口56や排出口55bからインナーホッパユニット54内に充満されており、被殺菌物Aは、殺菌処理の前処理として予備加熱がなされる。・・・現実には被殺菌物Aの種類や被殺菌物Aが投入される間隔により、種々の開閉タイミングが採られる。」
(2f)「【0040】更にまた請求項6記載の落下式蒸気殺菌装置によれば、処理室20Rの前段に予備加熱室50Rが設けられ、殺菌処理を行う前に被殺菌物Aの予め予備加熱がなされるため、被殺菌物Aの温度が上昇して蒸気Jの温度との差が減少するため、被殺菌物Aの水分(蒸気)付着量を少なくすることが可能となり、被殺菌物Aの変色、香りの飛び、蒸れ等が減少し、後処理が簡単となる。」
ウ 刊行物3
本願の優先日前に頒布された刊行物3には、以下の記載がある。
(3a)「【請求項1】 一端近傍に圧力保持機能を有する供給装置を設け、この供給装置を経て粉粒体を加圧された非凝縮性気体中に供給するとともに他端に第1絞りノズルを設けた原料供給路と、この第1絞りノズルを経て非凝縮性気体と共に供給された粉粒体を水蒸気および非凝縮性気体を含む加熱加圧混合気体に混合して移送する間に加熱処理するとともに出口などに少なくとも1個の第2絞りノズルを設けた加熱処理装置とを備えたことを特徴とする粉粒体殺菌装置。
・・・
【請求項4】 前記供給装置を経て粉粒体を加熱加圧した非凝縮性気体中に供給して予熱することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の粉粒体殺菌装置。」
(3b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉粒体殺菌装置に関するものであり、更に詳述すると、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料などの粉粒体が本来有する香味、風味、分散性、形状、外観、色相などの品質を損なわずに連続的に効率よく殺菌して低菌数の粉粒体を提供できるようにした粉粒体殺菌装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、粉粒体、例えば香辛料などはそれぞれ風味、香りに特徴を持ち、その風味及び香りの良さは味と共に品質を左右するものである。この場合、特に香辛料などにおいてはそのほとんどが植物の種子、果実、根茎、葉、樹皮、蕾、花などを利用するものであり、通常これらの表面は微生物で汚染されているため、その用途に応じて殺菌処理が必要となる。
【0003】従来、粉粒体食品の殺菌方法としては加熱殺菌法が一般的に行われている。しかし加熱殺菌法では、成分、香り、味、色などの変質、有効成分の逸散などを伴い、食品そのものの品質を低下させる問題があった。放射線殺菌、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのガス殺菌法が提案されているが、いずれも食品衛生法上許可されておらず、食品の殺菌法として適用されるに至っていない。
【0004】粉粒体食品を過熱水蒸気の高速気流に分散して移動させて数秒で殺菌する方法(特公昭63-50984号公報)や粉粒体食品を過熱水蒸気などを用い、間接加熱された旋回流発生加熱管中で加熱処理する方法(特公平5-53号公報)が提案されているが、下記1)~3)の欠点がある。
1)水蒸気100%の気体中での殺菌であるので、処理物への水蒸気水分の浸透量が多い。
2)飽和水蒸気圧曲線の飽和温度付近では特に処理物への蒸気の凝縮量が多くなるので、それを避けるために過熱水蒸気にして殺菌温度を数度から数十度高く設定せざるを得ない。
3)水分、加熱によって粘着性の出る原料(例えば、オニオン、ガーリックなど)などは、装置内部、特に高圧ロータリバルブなどに付着、固化などを起こして、装置の連続運転が不可能となり、水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などは品質劣化など、品質ダメージが大きい問題がある。
【0005】高速あるいは低速攪拌羽根付き耐圧混合機を用いて粉粒体を加圧水蒸気により殺菌する方法が提案されている(特開昭58-121954号公報、特開平2-92253号公報、特開平3-83567号公報、特開平7-274916号公報、特開平8-242807号公報、特開平8-318147号公報など)が、やはり処理物への水蒸気の過度の浸透、それに伴う処理物の成分の変質、また比較的長時間加熱となるための品質劣化など大きい問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、より低い温度で殺菌効果のでる殺菌処理を行い、かつ処理物への水蒸気凝縮量を最小限にして、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料などの粉粒体、特に水分、加熱によって粘着性の出る粉粒体(例えば、オニオン、ガーリックなど)や水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などについても、それらが本来有する香味、風味、薬効、性能、分散性、色相などの品質を損なわずに連続的に容易に効率よく殺菌して低菌数の粉粒体を供給できる粉粒体殺菌装置を提供することである。」
(3c)「【0008】本発明においては、過熱水蒸気を用いず、非凝縮性気体および水蒸気を含む加熱加圧混合気体中で粉粒体を加熱処理するので、粘着性の出る粉粒体(オニオン、ガーリックなど)や水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)であっても粉粒体への水蒸気水分の浸透量が少なくなり、より低温で品質を損なわずに連続的に容易に効率よく殺菌処理などの加熱処理を行うことができる。
【0009】原料供給路に設けた第1絞りノズルを経て圧力や温度などを制御されて非凝縮性気体と共に(例えば、温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度、流速10~40m/sec.程度)粉粒体を加熱処理装置へ供給して、加熱処理装置中で粉粒体を、水蒸気(例えば、温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度、流速10~40m/sec.程度)および非凝縮性気体を含む加熱加圧混合気体(例えば、水蒸気/非凝縮性気体の重量比は、20/1~2/1が好ましく、9/1程度がさらに好ましい)の高速気流中に混合、浮遊、接触せしめて、加熱処理装置中を移送する間に殺菌処理などの加熱処理(例えば、温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度、滞留時間約3sec.~60sec.程度)を行う。加熱処理装置は間接加熱により約80~300℃程度に加熱することが好ましい。」
(3d)「【0016】本発明の請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の粉粒体殺菌装置において、前記供給装置を経て粉粒体を加熱加圧した非凝縮性気体中に供給して予熱することを特徴とする。この予熱により、処理物への水蒸気の浸透量をさらに少なく抑えることが可能となる。予熱の方法は特に限定されないが、原料供給路中で加熱加圧した非凝縮性気体中に粉粒体を供給して予熱すれば、加熱処理装置中における粉粒体の付着や固化を抑制できる上、水蒸気の割合を低減したり、加熱処理時間を短縮したりできる。」
(3e)「【0032】図4は、本発明の粉粒体殺菌装置の他の原料供給路の実施形態を示す説明図である。図1~図4において同じ符号のものは同じものを示す。図4において、ヒータ8の代わりに、間接加熱装置8Aを設けた以外は図3に示した原料供給路10と同様になっている。図示しない圧縮機から供給される空気などの非凝縮性気体5は減圧弁6Aで減圧され、ブロア6、フィルタ7を経て所定の圧力に制御され、原料供給路10に供給されたこの非凝縮性気体5と混合された粉粒体3は、スチームによって間接加熱された間接加熱装置8A中のコイル8B内を移送される間に所定の温度に予熱される。特に水分、加熱によって粘着性の出る粉粒体(例えば、オニオン、ガーリックなど)や水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などの場合はこのような間接加熱による予熱が好ましい。」
(3f)「【0048】供給装置を経て粉粒体を加熱加圧した非凝縮性気体中に供給して予熱することにより、処理物への水蒸気の浸透量をさらに少なく抑えることが可能となる。原料供給路中で加熱加圧した非凝縮性気体中に粉粒体を供給して予熱すれば、加熱処理装置中における粉粒体の付着や固化を抑制できる上、水蒸気の割合を低減したり、加熱処理時間を短縮したりできる。
【0049】供給装置を経て粉粒体を加圧された非凝縮性気体中に供給した後、原料供給路を間接加熱して予熱すれば、粘着性が出る原料(オニオン、ガーリックなど)や水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などであっても品質を維持し、付着や固化を抑制できる。」
(5)刊行物1記載の発明
ア 刊行物1は、食品を含めた粉粒体の連続攪拌殺菌に関するものであることが記載されており(摘記(1b))、摘記(1a)には、「所定温度・圧力に制御された水蒸気と非凝縮性気体の混合気体からなる雰囲気中で粉粒体を攪拌・移送しながら殺菌する加熱殺菌処理装置と、加熱殺菌処理した粉粒体を加圧下に移送する間に水蒸気を分離する水蒸気分離装置と、水蒸気を分離した粉粒体を非凝縮性気体の加圧雰囲気中で攪拌・移送しながら冷却した後、外部へ排出する冷却装置とを順次直結して備え、少なくとも1つの駆動手段により各装置を駆動することを特徴とする粉粒体の連続攪拌殺菌装置」との記載があり、該記載は、明細書において具体的に対応した発明が記載されたものであり、該連続攪拌殺菌装置を用いて連続攪拌殺菌する方法の発明として記載されているに等しいのであるから、以下の発明が認定できる(以下「刊行物1発明」という。)。
「所定温度・圧力に制御された水蒸気と非凝縮性気体の混合気体からなる雰囲気中で粉粒体を攪拌・移送しながら殺菌する加熱殺菌処理装置と、加熱殺菌処理した粉粒体を加圧下に移送する間に水蒸気を分離する水蒸気分離装置と、水蒸気を分離した粉粒体を非凝縮性気体の加圧雰囲気中で攪拌・移送しながら冷却した後、外部へ排出する冷却装置とを順次直結して備え、少なくとも1つの駆動手段により各装置を駆動する粉粒体食品の連続攪拌殺菌装置を用いた方法」
(6)対比・判断
ア 刊行物1発明との対比
(ア)対比
本願補正発明と刊行物1発明を対比する。
刊行物1発明の「粉粒体食品の連続攪拌殺菌装置を用いた方法」は、本願補正発明の「粒子状食品を表面低温殺菌または殺菌する方法」に該当し、刊行物1発明の「水蒸気と非凝縮性気体の混合気体からなる雰囲気中で粉粒体を攪拌・移送しながら殺菌する」ことは、本願補正発明の「食品を低温殺菌または殺菌するガスが、水蒸気および1つ以上のさらなるガスを含」む「ガス中で低温殺菌または殺菌され」ることに相当する。
また、刊行物1発明の「水蒸気を分離した粉粒体を非凝縮性気体の加圧雰囲気中で攪拌・移送しながら冷却」することは、本願補正発明の「食品が」「冷却され」ることに該当する。
そうすると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「粒子状食品を表面低温殺菌または殺菌する方法であって、
食品が、ガス中で低温殺菌または殺菌され、冷却され、
食品を低温殺菌または殺菌するガスが、水蒸気および1つ以上のさらなるガスを含む方法」
である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:殺菌の対象について、本願補正発明は、「低水分粒子状食品」と特定されているのに対して、刊行物1発明は「粉粒体食品」であるものの、低水分とは特定されていない点
相違点2:本願補正発明は、「食品が予備加熱され、・・・、食品が、食品を低温殺菌または殺菌するガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に予備加熱され」ることが特定されているのに対して、刊行物1発明では、食品の予備加熱や加熱温度に関して特定されていない点
相違点3:殺菌中のガスの圧力について、本願補正発明は、「低温殺菌または殺菌の間、ガスの圧力が0.8から1.2barの範囲にある」と特定しているのに対して、刊行物1発明においては、加熱殺菌処理中の圧力について特定していない点
(イ) 相違点の判断
上記相違点について検討する。
a 相違点1について
刊行物1の摘記(1b)には、刊行物1発明の処理対象として、食品などの粉粒体が例示され、香辛料が粉粒体の例示として挙げられており(【0002】、本願補正発明の「低水分粒子状食品」の例示にスパイスが挙げられるとおり(本願明細書【0001】)、刊行物1発明の処理対象に低水分粒子状食品が含まれることは明らかである。
したがって、相違点1は実質的な相違点でないか、殺菌の対象である「粉粒体食品」について、「低水分粒子状食品」と特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項にすぎない。
b 相違点2について
刊行物1には、水蒸気を用いた殺菌において、水蒸気の凝縮によって品質劣化を生じるとの認識から処理物への水蒸気凝縮量を最小限にして品質を損なわずに粉粒体の殺菌を行うことを課題としている(摘記(1b))ことが記載されている。
そして、刊行物2には、スパイス等の流動自在な粉粒状材料食材の殺菌に関して、加熱殺菌処理の前に予備加熱しておくことで、被殺菌物の温度が上昇して蒸気の温度との差が減少して、被殺菌物の水分(蒸気)付着量を少なくでき、被殺菌物の変色、香りの飛び、蒸れ等が減少することが記載されている(摘記(2b)(2c)(2f))。
また、刊行物3には、非凝縮性気体と共に供給された粉粒体を水蒸気および非凝縮性気体で混合移送する間に加熱処理する殺菌において、非凝縮性気体で予熱することが記載され(摘記(3a))、水蒸気凝縮量を最小限にして食品などの粉粒体の殺菌を品質を損なわずに行うことを課題としていることが記載されている(摘記(3b))。
そして、非凝縮性気体中で予熱することで処理物への水蒸気の浸透量をさらに抑えられることも記載されている(摘記(3d))。
上記の刊行物2,3にも示されるとおり、粉粒体の殺菌処理の前に、被処理物を予熱することで処理物への水蒸気の凝縮量や浸透量を抑制して被殺菌物の品質低下を抑制することが周知の技術的事項であるのだから、水蒸気凝縮量を最小限にして食品などの粉粒体の殺菌を品質を損なわずに行うことを課題とする刊行物1発明において、粉粒体の殺菌処理の前に、被処理物を予熱することで処理物への水蒸気の凝縮量や浸透量を抑制して被殺菌物の品質低下を抑制する上記周知の技術的事項に基づいた構成をさらに追加することは、当業者が容易になし得ることであり、その際、被処理物の予備加熱の温度として、その後の食品を低温殺菌または殺菌するガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に設定することも、殺菌に水分含有ガスを用いている以上、水蒸気の凝縮を抑制するという目的からみて、当然なし得る技術的事項にすぎない。
c 相違点3について
まず、本願補正発明の「ガスが0.8から1.2barの範囲」との特定事項は、ガスの圧力の種類が全圧を示すものか、ある成分の分圧を示すものか一義的に理解できるものとはいえないため、本願明細書を参酌すると、圧力に関する記載としては、「【0004】
従来の低温殺菌システムで、通常の圧力および温度(すなわち、1barおよび100℃)での蒸気の適用が用いられる。」「【0017】
さらなる実施形態において、低温殺菌または殺菌の間、ガスは大気圧±20%、すなわち0.8から1.2barの範囲、好ましくは±10%、すなわち0.9から1.1barの範囲にある。
【0018】
本発明による方法は、大気圧での、またはその付近での操作を可能にし、その結果低温殺菌容器に関して真空ポンプを必要とせず、装置および運転のコストを実質的に抑える。」
「【0042】
この例において、システムは、ベッセルを通る湿潤空気の一定の流れを保持するために、大気圧よりも若干高い、例えば1.1barで運転された。」(下線は当審にて追加。以下同様。)と記載されるとおり、全圧を示すものであることが明らかであるので、その前提において以下、判断することとする。
刊行物1発明は、「所定温度・圧力に制御された水蒸気と非凝縮性気体の混合気体からなる雰囲気中で粉粒体を攪拌・移送しながら殺菌する」(摘記(1a))するもので、加熱殺菌処理に関して、「【0021】・・・本発明の粉粒体の連続攪拌殺菌装置は、従来の殺菌処理のように殺菌後、高圧から低圧に瞬間的に戻したり、空気輸送したり、気流中で乾燥したり、冷却工程に移送されるまでに時間がかからないので、香りが飛散し、品質が劣化することがない。したがって、水分、加熱によって粘着性の出る原料(例えば、オニオン、ガーリックなど)などや、水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などであっても粉粒体への水蒸気水分の浸透量が少なくなり、より低温で品質を損なわずに容易に効率よく殺菌処理を行うことができ、装置内部、特に高圧ロータリバルブなどに付着、固化などを起こすことなく連続加熱殺菌処理が可能となる。
【0022】本発明における加熱殺菌処理の具体例を次に示す。例えば、温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度に制御された非凝縮性気体および水蒸気を含む加熱加圧混合気体中で粉粒体を攪拌・移送しながら加熱殺菌処理する。」(摘記(1c))と記載されるように、本願補正発明の圧力範囲である0.8から1.2barという常圧付近を、例示された圧力範囲(常圧~10kg/cm2 G程度(1~10bar程度))として含んでいるものである。
そして、刊行物2の「【0016】処理バレル20について更に説明すると、このものは上下端にフランジ21を有し、一例として下端のフランジ21には、固定金具Bを受け入れる切欠溝21aが形成されている。また処理バレル20の周側面には、蒸気導入口22と蒸気排気口23が設けられ、ここにそれぞれパイプ22P、23Pが接続されて、新規の蒸気Jが定常的に処理室20Rに導入されるとともに、処理室20R内の蒸気Jが排出される。因みに供給される蒸気Jの蒸気圧力は、一例として0.03~0.5MPに設定されるものであり、また蒸気排気口23もしくはパイプ23Pには流量調節弁が設けられ、排気量が適宜の量に調整される。」(摘記(2d)(0.03~0.5MPは、0.3~5barに相当)との記載や、刊行物3の「【0009】原料供給路に設けた第1絞りノズルを経て圧力や温度などを制御されて非凝縮性気体と共に(例えば、温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度、流速10~40m/sec.程度)粉粒体を加熱処理装置へ供給して、加熱処理装置中で粉粒体を、水蒸気(例えば、温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度、流速10~40m/sec.程度)および非凝縮性気体を含む加熱加圧混合気体(例えば、水蒸気/非凝縮性気体の重量比は、20/1~2/1が好ましく、9/1程度がさらに好ましい)の高速気流中に混合、浮遊、接触せしめて、加熱処理装置中を移送する間に殺菌処理などの加熱処理(例えば、温度約80~200℃、圧力常圧~10kg/cm2 G程度、滞留時間約3sec.~60sec.程度)を行う。」(摘記(3c)(常圧~10kg/cm2 G程度は、1bar~10bar程度に相当)との記載からみても、本願補正発明の圧力範囲である0.8から1.2barという常圧付近を、例示された圧力範囲として含んでいる圧力範囲で殺菌処理を行うことが普通に知られていることが理解できる。
そうすると、相違点3は実質的な相違点とはいえない。
また、常圧付近を用いることが、装置面や取扱いの面で望ましくコスト面でも有利であることは、処理装置一般の技術常識であるのだから、水蒸気凝縮量の低下を達成する前提の範囲で、刊行物1発明において、例示された圧力範囲から常圧付近を選択することは、当業者であれば容易になし得る技術的事項である。
d 本願補正発明の効果について
本願明細書には、本願補正発明が、水蒸気および1つ以上のさらなる気体を含む食品をガス低温殺菌または殺菌することで、蒸気と比較して、食品に悪影響を与えないように十分に低い温度で行え、予備加熱で、凝縮が相対的に制限され、または回避されさえするので、低温殺菌または殺菌の後の乾燥が必要ではなく、装置、時間、エネルギーを低減することが示されている(【0011】~【0014】)。
刊行物1発明の方法は、上述のとおり「低い温度で殺菌効果のでる殺菌処理を行い、かつ、処理物への水蒸気凝縮量を最小限にして、食品、医薬品、漢方薬品、化粧品、飼料、肥料などの粉粒体、特に、水分、加熱によって粘着性の出る粉粒体(例えば、オニオン、ガーリックなど)や水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などについても、それらが本来有する香味、風味、薬効、性能、分散性、色相などの品質を損なわずに連続的に容易に効率よく殺菌、冷却して低菌数で高品質の粉粒体を供給できる粉粒体の連続攪拌殺菌装置を提供すること」(【0006】)や、「加熱殺菌処理した粉粒体をあらためて「乾燥処理」を行うことが不必要となり、装置を小型化、簡便化でき、イニシャルコストもランニングコストも低減でき経済的になる。本発明の粉粒体の連続攪拌殺菌装置は、従来の殺菌処理のように殺菌後、高圧から低圧に瞬間的に戻したり、空気輸送したり、気流中で乾燥したり、冷却工程に移送されるまでに時間がかからないので、香りが飛散し、品質が劣化することがない。したがって、水分、加熱によって粘着性の出る原料(例えば、オニオン、ガーリックなど)などや、水分浸透に弱い粉粒体(パン粉、デンプン粉、野菜片、茶葉、抹茶など)などであっても粉粒体への水蒸気水分の浸透量が少なくなり、より低温で品質を損なわずに容易に効率よく殺菌処理を行うことができ、装置内部、特に高圧ロータリバルブなどに付着、固化などを起こすことなく連続加熱殺菌処理が可能となる。」(【0021】)ことが記載されており、刊行物2,3にも示されるとおり、粉粒体の殺菌処理の前に、被処理物を予熱することで処理物への水蒸気の凝縮量や浸透量を抑制して被殺菌物の品質低下を抑制できることが周知技術であることを考慮すると、本願補正発明の効果は、刊行物1発明及び刊行物2~3の本願優先日時点の技術常識からみて、当業者の予測を超える顕著なものとはいえない。
e 審判請求人の主張について
(a)請求人は、審判請求書4頁(b)において、引用文献2(刊行物1)は、ガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に食品を加熱することを記載も示唆もしていない旨主張している。
しかしながら、粉粒体の殺菌処理の前に、被処理物を予熱することで処理物への水蒸気の凝縮量や浸透量を抑制して被殺菌物の品質低下を抑制することが周知の技術的事項であるのだから(刊行物2,3参照)、水蒸気凝縮量を最小限にして食品などの粉粒体の殺菌を品質を損なわずに行うことを課題とする刊行物1発明において、粉粒体の殺菌処理の前に、被処理物を予熱することで処理物への水蒸気の凝縮量や浸透量を抑制して被殺菌物の品質低下を抑制することは、当業者が容易になし得ることであり、その際、被処理物の予備加熱の温度として、何ら上限温度を限定することなく、ガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に設定しているのであるから、水蒸気の凝縮を抑制する目的からみて、当然なし得る技術的事項にすぎないことは、上述のとおりである。
よって請求人の上記主張を採用することはできない。
(b)請求人は、令和1年8月21日付け上申書1頁下から12行~2頁11行において、引用文献1(刊行物2)の方法が従来の蒸気殺菌に関するもので、圧力を下げて作業する必要があり、設定圧力を制御するために殺菌室に空気が入らないようにすることが特徴であるので、ほぼ大気圧で行われる殺菌方法に用いることができない点や、引用文献1(刊行物2)は、予熱が熱風で行われ、湿潤空気で行うことを開示していない点を指摘して、本願発明の進歩性を主張している。
しかしながら、処理室が装置外部との間で通気状態とならないための装置構成の発明が刊行物2には、記載された発明の一つとして示されているだけであり、刊行物2の処理室に供給される蒸気圧力の一例として0.03~0.5MP(0.3bar~5barに相当)として設定されるとおり(【0016】)、常圧付近を含めて処理可能であるものといえ、刊行物1,3においても常圧~10kg/cm2 G程度(1~10bar程度)を例示し、常圧を含めた範囲で処理圧力を設定することが例示されている。また、処理圧力として常圧付近を用いることが、装置面や取扱いの面で望ましくコスト面でも有利であることは、処理装置一般の技術常識であるのだから、水蒸気凝縮量の低下を達成する前提の範囲で、刊行物1発明において、例示された圧力範囲から常圧付近を選択することは、当業者であれば容易になし得る技術的事項であること、被処理物の予備加熱の温度として、何ら上限温度を限定することなく、ガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に設定しているのであるから、水蒸気の凝縮を抑制する目的からみて、当然なし得る技術的事項にすぎないことは上述のとおりである。
さらに、予熱が湿潤空気で行うことを開示していないとの主張は、本願発明においても、「食品が予備加熱され」ることしか特定していないのであるから、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
よって請求人の上記主張も採用することはできない。
(7)小括
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正却下のまとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
前記第2のとおり、平成31年1月15日付け手続補正は却下されたので、この出願の請求項1に係る発明は、平成30年7月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】
低水分粒子状食品を表面低温殺菌または殺菌する方法であって、
食品が予備加熱され、ガス中で低温殺菌または殺菌され、冷却され、
食品を低温殺菌または殺菌するガスが、水蒸気および1つ以上のさらなるガスを含み、
食品がガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に予備加熱される方法。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の1つ(理由3の(2))は、概略、以下のとおりのものと認める。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記文献1~2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
文献2:特開2000-135273号公報
文献1:特開2002-112749号公報
3 引用文献の記載
文献2は前記刊行物1、文献1は前記刊行物2である。
そして、各刊行物には、前記第2 2(4)に記載のとおりの記載がある。
4 対比・判断
(1)本願発明と刊行物1発明との対比
ア 対比
前記第2 2(6)ア(ア)で検討したのと同様に、本願発明と刊行物1発明とは、
「粒子状食品を表面低温殺菌または殺菌する方法であって、
食品が、ガス中で低温殺菌または殺菌され、冷却され、
食品を低温殺菌または殺菌するガスが、水蒸気および1つ以上のさらなるガスを含む方法」
である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1’:殺菌の対象について、本願発明は、「低水分粒子状食品」と特定されているのに対して、刊行物1発明は「粉粒体食品」であるものの、低水分とは特定されていない点
相違点2’:本願発明は、「食品が予備加熱され、・・・、食品がガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に予備加熱され」ることが特定されているのに対して、刊行物1発明では、食品の予備加熱や加熱温度に関して特定されていない点
イ 相違点の判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1’について
前記第2 2(6)ア(イ)aで検討したのと同様に、相違点1は実質的な相違点でないか、殺菌の対象である「粉粒体食品」について、「低水分粒子状食品」と特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項にすぎない。
(イ)相違点2’について
刊行物1には、水蒸気を用いた殺菌において、水蒸気の凝縮によって品質劣化を生じるとの認識から処理物への水蒸気凝縮量を最小限にして品質を損なわずに粉粒体の殺菌を行うことを課題としている(摘記(1b))ことが記載されている。
そして、刊行物2には、スパイス等の流動自在な粉粒状材料食材の殺菌に関して、加熱殺菌処理の前に予備加熱しておくことで、被殺菌物の温度が上昇して蒸気の温度との差が減少して、被殺菌物の水分(蒸気)付着量を少なくでき、被殺菌物の変色、香りの飛び、蒸れ等が減少することが記載されている(摘記(2b)(2c)(2f))。
上記の刊行物2にも示されるとおり、粉粒体の殺菌処理の前に、被処理物を予熱することで処理物への水蒸気の付着量を抑制して被殺菌物の品質低下を抑制することが周知の技術的事項であるのだから、水蒸気凝縮量を最小限にして食品などの粉粒体の殺菌を品質を損なわずに行うことを課題とする刊行物1発明において、粉粒体の殺菌処理の前に、被処理物を予熱することで処理物への水蒸気の付着量を抑制して被殺菌物の品質低下を抑制する上記周知の技術的事項に基づいた構成をさらに追加することは、当業者が容易になし得ることであり、その際、被処理物の予備加熱の温度として、その後の食品を低温殺菌または殺菌するガス中の水蒸気の凝縮温度よりも高い温度に設定することも、殺菌に水分含有ガスを用いている以上、水蒸気の凝縮を抑制するという目的からみて、当然なし得る技術的事項にすぎない。
なお、水蒸気および非凝縮性気体での加熱処理する殺菌において、非凝縮性気体で予熱することで水蒸気凝縮量を最小限にして食品などの粉粒体の殺菌を品質を損なわずに行うことが当業者にとって周知の技術的事項であることは、前記刊行物3にも記載されるとおりである。
(ウ)本願発明の効果について
刊行物1発明の方法に関して、刊行物1の【0006】【0021】の記載や、刊行物2にも示されるとおり、粉粒体の殺菌処理の前に、被処理物を予熱することで処理物への水蒸気の付着量を抑制して被殺菌物の品質低下を抑制できることが周知技術であることを考慮すると、本願発明の効果は、刊行物1発明及び刊行物2の本願優先日時点の技術常識からみて、当業者の予測を超える顕著なものとはいえない。
5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、文献1(刊行物2)~文献2(刊行物1)に記載された発明に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1(文献2)に記載された発明及び本願優先日時点の技術常識に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-000450