特許無効審判
2018-800065
1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTH含有骨粗鬆症治療/予防剤
- 審判番号
- 2018-800065
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2015-105266
- 登録番号
- 6198346
- 請求日
- 2018年05月24日
- 審決日
- 2023年12月18日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】沢井製薬 株式会社
- 【請求人代理人】森本 純
- 【被請求人】旭化成ファーマ 株式会社
- 【被請求人代理人】細田 芳徳
- 【被請求人代理人】亀ヶ谷 薫子
- 審判長/審判官
- 審判長 松波 由美子
- 審判官 齋藤 恵
- 審判官 冨永 みどり
- 分類
- P1113.536-ZAA(A61K) / P1113.537-ZAA(A61K) / P1113.121-ZAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法61条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第148条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第3項、特許法第134条の2第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6198346号「1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTH含有骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」の特許無効審判事件についてされた令和2年4月22日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において、審決を取り消す判決(令和2年(行ケ)第10069号、令和3年12月9日判決言渡)があり、当該判決はその後確定したので、更に審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6198346号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第6198346号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6198346号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る発明についての出願(特願2015-105266号)は、平成22年9月8日(優先権主張 平成21年9月9日)を国際出願日とする特願2011-530844号の一部を、新たな特許出願として平成27年5月25日に出願されたものであって、平成29年9月1日に特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、請求人は、平成30年5月24日付けで本件特許の請求項1及び2に係る発明の特許を無効にすることについて、特許無効審判の請求を行った。本件特許無効審判手続の経緯は以下のとおりである(当審合議体による書面以外についての日付は、書面の受付日である。)。
1 一次審決までの主な手続の経緯
平成30年 5月24日 審判請求書
同年 8月20日 審判事件答弁書
同年 10月15日 参加申請書(ニプロ株式会社、特許法第148条第1項の規定により請求人側に参加することを申請)
同年 10月17日付け 審理事項通知書(請求人及び被請求人宛て)
同年 11月 1日付け 参加許否の決定(ニプロ株式会社の参加を許可)
同年 11月 5日付け 審理事項通知書(請求人、被請求人及びニプロ株式会社宛て)
同年 11月 8日 参加申請書(テバファーマスーティカル株式会社、特許法第148条第1項の規定により請求人側に参加することを申請)
同年 11月30日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 12月 3日付け 参加許否の決定(テバファーマスーティカル株式会社の参加を許可)
同年 12月 3日付け 審理事項通知書(請求人、被請求人、ニプロ株式会社及びテバファーマ+9スーティカル株式会社宛て)
同年 12月12日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 12月14日 口頭審理陳述要領書(ニプロ株式会社)
同年 12月17日 口頭審理陳述要領書(テバファーマスーティカル株式会社)
同年 12月26日 口頭審理
平成31年 1月11日 上申書(請求人)
同年 1月15日 上申書(ニプロ株式会社)
同年 1月15日 上申書(テバファーマスーティカル株式会社)
同年 2月12日 上申書(被請求人)
同年 2月14日付け 審尋(請求人、ニプロ株式会社及びテバファーマスーティカル株式会社宛て)
同年 3月 4日 上申書(請求人)
同年 3月 5日 上申書(ニプロ株式会社)
同年 3月 6日 上申書(テバファーマスーティカル株式会社)
同年 4月11日 参加申請取下書(テバファーマスーティカル株式会社)
令和 1年 7月25日 参加申請取下書(ニプロ株式会社)
同年 8月 6日付け 審決の予告
同年 10月15日 訂正請求書
同年 10月17日 上申書(被請求人)
同年 11月28日 弁駁書
同年 12月27日 上申書(被請求人)
令和 2年 4月22日付け 審決(以下「一次審決」という。)
上記のとおり、平成31年4月11日に「テバファーマスーティカル株式会社」の参加申請が取り下げられ、令和1年7月25日に「ニプロ株式会社」の参加申請が取り下げられたため、これらについては「参加人」とはいわず、それぞれ、「テバファーマスーティカル株式会社」、「ニプロ株式会社」という。
2 一次審決
一次審決の結論は、
「 特許第6198346号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。
特許第6198346号の請求項1及び2に係る発明についての審判請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。」
というものであり、同審決は、令和2年5月1日に請求人に送達された。
3 審決取消訴訟
請求人は、一次審決の取消しを求めて、令和2年5月26日に知的財産高等裁判所に訴えを提起した。
上記訴えは、知的財産高等裁判所において、令和2年(行ケ)第10069号事件として審理され、令和3年12月9日に、主文を
「1 特許庁が無効2018-800065号事件について令和2年4月22日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。」
とする判決(以下「取消判決」という。)の言渡しがあり、その後、同判決は確定した。
4 取消判決確定後の主な手続の経緯
令和 4年 6月 2日 訂正請求申立書(被請求人)
同年 6月 3日付け 審理再開通知(請求人及び被請求人宛て)
同年 6月10日付け 訂正請求のための期間指定通知(被請求人宛て)
同年 6月27日 訂正請求書(被請求人)
同年 7月12日 上申書(被請求人)
同年 8月 8日 弁駁書(請求人)
同年 10月14日 上申書(被請求人)
令和 5年 7月 6日付け 審決の予告
同年 9月 6日 訂正請求書(被請求人)
第2 訂正請求について
被請求人が提出した令和1年10月15日受付の訂正請求書を、以下「本件第1訂正請求書」といい、当該訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件第1訂正請求」という。また、令和4年6月27日受付の訂正請求書を、以下「本件第2訂正請求書」といい、当該訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件第2訂正請求」という。そして、令和5年9月6日受付の訂正請求書を、以下「本件第3訂正請求書」といい、当該訂正請求書による訂正の請求及び訂正を、以下それぞれ、「本件第3訂正請求」及び「本件第3訂正」という。
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
本件第3訂正は、本件特許の特許請求の範囲を、本件第3訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを求めるものであって、その内容は、以下の訂正事項1及び2のとおりのものである(下線部が訂正箇所である)。
なお、本件第3訂正前の請求項2は、請求項1の記載を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件第3訂正請求は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である請求項1、2についてされたものである。
また、本件第1訂正請求及び本件第2訂正請求は、特許法134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、骨粗鬆症治療ないし予防剤であって、下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とし、48週を超過して72週以上までの間投与される、骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤;
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」
と記載されているのを、
「1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、骨粗鬆症治療ないし予防剤であって、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とし、48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間投与される、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者の骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤;
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である。」
に訂正する。
(審決注:訂正事項1は、請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正するものである。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「PTH(1-34)又はその塩がヒトPTH(1-34)酢酸塩である、請求項1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。」
とあるのを、
「PTH(1-34)又はその塩がヒトPTH(1-34)酢酸塩であり、前記(2)の既存の骨折が既存の椎体骨折である、請求項1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。」
に訂正する。
2 訂正の適否の判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2における投与対象である骨粗鬆症患者を、「(4)クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である。」との条件によってさらに限定し、これに伴い、「下記(1)~(3)の全ての条件を満たす」とあったのを「下記(1)~(4)の全ての条件を満たす」に訂正するものである。
訂正事項1は、また、「骨折抑制のための」とあったのを「下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者の骨折抑制のための」に訂正することで、訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2における骨折抑制の対象患者を、(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に限定するものである。
訂正事項1は、さらに、「48週を超過して72週以上までの間投与される」とあったのを、「48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間投与される」に訂正することで、訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2において、骨粗鬆症治療ないし予防剤が、48週を超過して72週以上までの間投与される対象を、48週投与時点の腰椎骨密度変化率が特定の範囲内にある患者に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」ともいう。)においては、高リスク患者について、「下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者(ないし対象者)を「高リスク患者」として定義する。
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」(【0068】)と定義されている。そして、本件明細書には、実施例2において、原発性骨粗鬆症と診断された男女の高リスク患者に対して、被験薬であるテリパラチド酢酸塩200単位を含む注射用凍結乾燥製剤または対照薬であるテリパラチド酢酸塩を実質的に含まないプラセボ製剤をそれぞれ生理的食塩水1mLで用時溶解して72週間にわたり週に1回の頻度で間欠的に皮下投与した試験を行ったことが記載され、当該試験の結果として、クレアチニンクリアランスが80ml/min以上の腎機能正常(【0124】)の骨粗鬆症患者である「Normal(80≦)」の被験者について、被験薬投与群である「PTH200群」と対照薬投与群である「P群」の新規椎体骨折発生率(%)に加えて、投与24週後、投与48週後、投与72週後の新規椎体骨折発生率を示す表とともに、「上記の表が示すように、半年ごとの新規椎体骨折発生率は、P群では、いずれの区間も約5%でほぼ一定であった。それに対して、PTH200群では、投与期間が長くなるにつれて区間毎の発生率が低下しており、48週を超えてからの新規椎体骨折の発生はなかった。また、PTH200群の新規椎体骨折発生率は、24週以内、24週~48週、48週~72週のいずれの区間でもP群より低く、プラセボに対する相対リスク減少率(Relative Risk Reduction;RRR)は投与を継続するにつれて増加した。」と記載されている(【0098】【0126】【表25】【0131】【表34】【0132】)。これらの記載によれば、実施例2において、被験薬であるテリパラチド酢酸塩200単位を含む製剤が、クレアチニンクリアランスが80ml/min以上の腎機能正常の上記(1)~(3)の条件を満たす高リスク骨粗鬆症患者に投与され、当該患者の骨折を抑制したことが理解できる。
したがって、投与対象である骨粗鬆症患者が「クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である」こと、及び、骨折抑制の対象患者を、訂正後の請求項1における「(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者」とすることは、本件明細書の記載から導き出せる事項である。
本件明細書には、実施例2における骨密度増加に関し、24週後、48週後、72週後の腰椎骨密度変化率(%)の表が示され(【0127】【表26】)、クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である腎機能正常の骨粗鬆症患者である「Normal(80≦)」のうち、「PTH200群」の48週後の腰椎骨密度変化率(%)の平均値が5.4、標準偏差が3.7であることが記載されている。そして、【0104】に、腰椎骨密度の測定は開始時と以降24週毎に実施したとの記載があることから、【表26】に記載の「48週後」、は「48週投与時点」の意味であると理解できる。
したがって、骨粗鬆症治療ないし予防剤が48週を超過して72週以上までの間投与される対象が、「48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、」であることは、本件明細書の記載から導き出せる事項である。
以上より、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1及び請求項1を引用する請求項2において、投与対象である骨粗鬆症患者を、「(4)クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である。」との条件によって、さらに限定するとともに、骨折抑制の対象患者を、(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に限定し、これに伴い、「下記(1)~(4)の全ての条件を満たす」とし、さらに、骨折抑制の対象患者を、「(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者」に限定するとともに、骨粗鬆症治療ないし予防剤が、48週を超過して72週以上までの間投与される対象を、「48週投与時点の腰椎骨密度変化率が48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者範囲内にある患者に対し、」と限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1及び請求項1を引用する訂正前の請求項2に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、請求項2において、引用先の請求項1における「(2)既存の骨折がある」について、「既存の骨折が既存の椎体骨折である」との特定により、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
高リスク患者について、本件明細書においては、「下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者(ないし対象者)を「高リスク患者」として定義する。
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」(【0068】)と定義されているところ、本件明細書における骨折は、椎体骨折及び非椎体骨折のいずれをも含むものであり(【0045】)、高リスク患者を定義する上記の記載に続けて、「本発明でいう椎体骨折数は、例えば、Genantらの方法(非特許文献14)により容易に計測可能である。椎体以外の部位の骨折は、例えば、レントゲンフィルムを用いて容易に確認され得る。」と記載されている(【0069】)。そして、このことは、高リスク患者の要件として、年齢、既存の椎体骨折、骨密度あるいは骨萎縮度の点から定義されていることや(【0079】【表1】)、実施例2において、対象とされる高リスク患者について、増悪椎体骨折を評価していることなどとも符合する(【0098】、【0118】【表20】)。そうすると、対象とする骨粗鬆症患者の満たす(2)の条件を「既存の椎体骨折」とすることは、本件明細書の記載から導き出せる事項である。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項2は、請求項2に係る発明について、「既存の骨折が既存の椎体骨折である」態様に限定するものであり、訂正前の請求項2に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3) 独立特許要件
本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、訂正後の請求項1、2について、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(「独立特許要件」)は課されない。
3 訂正請求についての結論
以上のとおり、本件第3訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件第3訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 本件第3訂正発明
上記第2のとおり、本件第3訂正が認められるから、本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件第3訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(下線部は本件第3訂正による訂正箇所である)。
なお、以下、本件第3訂正後の請求項1、2に係る発明を、その請求項に付された番号にしたがって、「本件第3訂正発明1」のように記載することがある。また、これらをまとめて「本件第3訂正発明」ということがある。
【請求項1】
1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、骨粗鬆症治療ないし予防剤であって、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とし、48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間投与される、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者の骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤;
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である。
【請求項2】
PTH(1-34)又はその塩がヒトPTH(1-34)酢酸塩であり、前記(2)の既存の骨折が既存の椎体骨折である、請求項1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。
第4 請求の趣旨、請求人の主張及び請求人が提出した証拠方法
請求人は、「特許第6198346号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、本件特許が無効とされるべき理由として、審判請求書において下記1~4に要約される無効理由1~4を主張し、証拠方法として下記5の書証を提出している。
1 無効理由1(明確性要件)
請求項1及び2に記載されている「200単位」に係るPTH1単位量については、その具体的な特定を欠いているため、当業者は、特許請求の範囲に記載された発明を明確に把握することができない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
2 無効理由2(実施可能要件)
請求項1及び2に記載されている「200単位」に係るPTH1単位量については、発明の詳細な説明の記載を考慮しても、その具体的な特定を欠いているため、当業者は、本件特許発明を実施することができない。
したがって、本件特許発明1及び2については、発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
3 無効理由3(サポート要件)
本件特許発明1及び2は、1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤を「72週以上」の間投与する発明であるが、本件特許明細書には、上記骨粗鬆症治療ないし予防剤について、72週を超えた投与及びその効果につき具体的な記載が何らなされていないから、72週を超えた投与の有効性及び安全性は、発明の詳細な説明に開示された内容から拡張ないし一般化できるものではなく、これは、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって、本件特許の請求項1及び2の記載は、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」に適合していないから、特許法第36条第6項第1号の規定に規定する要件を満たしていないものであり、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきである。
4 無効理由4(進歩性)
本件特許発明1及び2は、甲第7号証に記載された発明及び技術常識に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る発明についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
5 証拠方法
・甲第1号証 特願2009-208039号の出願書類(平成21年9月9日特許出願)
・甲第2号証 再公表特許WO2011/030774号(2010年9月8日国際出願の再公表)
・甲第3号証 薬学図書館、Vol.31、No.4(1986年)p.200-219(1986年)
・甲第4号証 Endocrinology、Vol.85(1969年)p.80
1-810
・甲第5号証 米国特許第4086196号明細書(1978年)
・甲第6号証 特願2011-530844号の審査過程において特許庁に提出された意見書p.1~12、p.20、p.24、p.52(平成26年4月18日)
・甲第7号証 Osteoporosis International、Vol.9(1999年)p.296-306
・甲第8号証 「退行期骨粗鬆症の診断」、医学のあゆみ、Vol.152、No.5(1990年)p.288-290
・甲第9号証 「原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)」日本骨代謝学会雑誌、Vol.18、No.3(2001年)p.76-82(奥付は甲第35号証)
・甲第11号証 日本慢性腎臓病対策協議会「腎機能をチェックしましょう」(インターネットホームページ http://j-ckdi.jp/c kd/check.html)(平成30年5月16日出力)
・甲第12号証 山口徹 外編「今日の治療指針 私はこう治療している2009」(2009年1月1日)医学書院、p.1167-1175
・甲第19号証 Journal of Bone and Mineral Research、Vol.24、No.4(2008年にオンライン出版)p.726-736
・甲第20号証 Journal of Bone and Mineral Research、Vol.23、No.10(2008年)p.1591-1600
(以上、審判請求書に添付。甲第10号証、甲第13号証~甲第18号証は欠番。甲第15号証は後に提出。)
・甲第15号証の1 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「販売名 フォルテオ皮下注カート600μg、同皮下注キット600μg」の審査報告書(平成22年4月6日、平成22年5月6日付け審議結果報告書に添付)p.1-3、p.53-57、p.85-87
(審決注:下記甲第15号証の2には、甲第15号証の1に係る審査報告書が2010年7月26日に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページサイト上に掲載されたことが記載されている。したがって、甲第15号証の1の公知日は、2010年7月26日であると認める。)
・甲第15号証の2 独立行政法人医薬品医療機器総合機構からの、甲15の1の承認情報掲載のお知らせ(2010年7月26日)
・甲第22号証 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編、折茂 肇 代表「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」(2007年)ライフサイエンス出版株式会社、p.54-55、p.93-94
・甲第34号証 沢井製薬株式会社 柳慎一郎「報告書」(平成30年11月16日)
・甲第35号証 「原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)」日本骨代謝学会雑誌、Vol.18、No.3(2001年)p.76-82(甲第9号証と同じ)
・甲第36号証 World Health Organization「 WHO Expert Committee on Biological Standardization 26th Report」(1975年)p.9-11
・甲第37号証 World Health Organization「 WHO Expert Committee on Biological Standardization 32nd Report」(1982年)p.28-29
・甲第38号証 World Health Organization「WHO Expert Committee on Biological Standardization 36th Report」(1987年)p.25-26
・甲第39号証 Japanese Journal of Transfusion Medicine、Vol.44、No.4(1998年)p.465-472
・甲第40号証 Endocrinology、Vol.99、No.2(1976年)p.429-436
・甲第41号証 日本骨代謝学会雑誌 JJBM、Vol.3、No.1(1985年)p.29-37
・甲第42号証 社団法人日本分析化学会 編「分析化学実験ハンドブック」(昭和62年)丸善株式会社、p.571-591
・甲第43号証 臨床薬理 Jpn J Clin Pharmacol Ther、Vol.40、No.2(2009年3月)P.11S-12S
・甲第44号証 平田純生 編「腎不全と薬の使い方Q&A-腎不全時の薬物投与一覧-」(平成17年)株式会社じほう、p.245-252
・甲第48号証の1 「ボノテオ(R)錠50mg添付文書」(2018年4月改訂、2011年9月販売開始)
(審決注:「(R)」は、丸囲いのRである。以下同じ。)
・甲第48号証の2 「リカルボン(R)錠50mg添付文書」(2018年4月改訂、2011年9月販売開始)
・甲第48号証の3 小野薬品工業株式会社 外「骨粗鬆症治療薬 月1回間歇経口剤「リカルボン(R)錠50mg/ボノテオ(R)錠50mg」国内承認申請のお知らせ」(2010年9月10日)
・甲第49号証 「テリボン(R)皮下注用56.5μg添付文書」(2018年1月改訂、2013年12月販売開始)
・甲第50号証 西沢良記 外編「~かかりつけ医でみる~骨粗鬆症Q&A」(2010年)株式会社先端医学社、p.86-90
・甲第51号証 乙第23号証の抄訳
・甲第52号証 Archives of Internal Medicine、Vol.164、No.18(2004年)p.2024-2030
・甲第59号証 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編、折茂 肇 代表「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」(2007年)ライフサイエンス出版株式会社、p.48-52
(以上、平成30年12月12日受付の口頭審理陳述要領書に添付。甲第16号証~甲第18号証、甲第21号証、甲第23号証~甲第33号証、甲第45号証~甲第47号証、甲第53号証~甲第58号証は欠番。)
・甲第60号証 Osteoporosis international(2007年)Vol.18、No.1、p.59-68(丁第19号証)の抄訳
(以上、令和4年8月8日受付の弁駁書に添付。)
以下、甲号証については、その番号によって、「甲1」などということがある。
第5 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。
・乙第1号証 社団法人日本生化学会編「生化学データブック I 縮刷版 」(1981年)株式会社東京化学同人、p.1348-1349
・乙第2号証 山科郁男 監修「レーニンジャーの新生化学〔上〕 第2版 」廣川書店(平成10年)p.168-169
・乙第3号証 厚生省医薬安全局審査管理課長「「臨床試験のための統計的原則」について 医薬審第1047号」(平成10年11月30日)表紙、目次、p.35-36
・乙第8号証の1 「エルシトニン(R)注10単位の医薬品インタビューフォーム」(2011年2月改訂、1982年9月1日発売)表紙、p.9、p.11、p.25
(審決注:(R)は○の中にRを表す。)
・乙第8号証の2 「カルシトラン(R)注10の医薬品インタビューフォーム」(2015年3月改訂、1990年5月25日発売)表紙、p.9、p.11、p.18
・乙第8号証の3 「ダイドロネル(R)錠200の医薬品インタビューフォーム」(2013年9月改訂、1990年11月30日発売)表紙、p.7、p.24
・乙第8号証の4 「ワンアルファ(R)錠0.25μg ワンアルファ(R)錠0.5μg ワンアルファ(R)錠1.0μg ワンアルファ(R)内用液0.5μg/mLの医薬品インタビューフォーム」(2014年10月改訂、内用液は1987年11月9日発売、錠剤は1988年7月21日発売)表紙、p.14、p.27
・乙第8号証の5 「ロカルトロール(R)カプセル0.25 ロカルトロール(R)カプセル0.5の医薬品インタビューフォーム」(2015年4月改訂、1986年5月6日発売)表紙、p.1
・乙第8号証の6 「グラケー(R)カプセル15mgの医薬品インタビューフォーム」(2014年4月改訂、1995年10月4日発売)表紙、p.9、p.30
・乙第9号証 Journal of Bone and Mineral Metabolism、Vol.22(2004年)p.569-576
・乙第10号証 知的財産高等裁判所 平成27年(行ケ)第10241号の判決書(平成28年11月28日判決言渡)p.1-9、p.63-65
・乙第11号証 NPO法人日本腎臓病協会「腎機能をチェックしましょう」(インターネットURL https://j-ka.or.jp/ckd/check.php)(平成30年8月10日出力)
・乙第21号証 異議2018-700232の異議の決定(平成30年5月30日付け)(特許第6198346号に対する異議の決定)
・乙第22号証 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」、「III 骨粗鬆症による骨折の危険因子」第1ページ、「V 骨粗鬆症の治療 A.治療の目的と開始基準:骨折の危険因子をふまえて a.目標」p.1-2(インターネットURL https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0046/G0000129/0001、https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0046/G0000129/0018、https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0046/G0000129/0022)
・乙第23号証 The American Journal of Medicine、Vol.112(2002年)p.281-289
(以上、審判事件答弁書に添付。乙第4号証~乙第7号証、乙第12号証~乙第20号証は欠番。乙第12号証、乙第13号証、乙第15号証、乙第16号証、乙第18号証は後に提出。)
・乙第12号証 特願2011-530844号の審査過程において特許庁に提出された意見書p.1、p.12、p.20、p.62-64(平成26年4月18日)
・乙第12号証の2 特願2011-530844号の審査過程において特許庁に提出された意見書p.1、p.24(平成26年4月18日)
・乙第12号証の3 NIH Consensus Statement、Vol.17、No.1(2000年)p.1-5
・乙第13号証 総括班長 祖父江逸郎「厚生省厚生科学研究費補助金 シルバーサイエンス研究 昭和63年度研究報告」(1989年)p.81-82
・乙第15号証 旭化成ファーマ株式会社「テリパラチド酢酸塩静注用100「旭化成」の医薬品インタビューフォーム」(2008年9月改訂、2008年3月7日製造販売承認、2008年6月20日発売)表紙、p.5、p.7
・乙第16号証 Bone and Mineral、Vol.3(1988年)p.193-199
・乙第22号証の2 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編、折茂肇 代表「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」(2007年)ライフサイエンス出版株式会社、表紙、奥付
(以上、平成30年11月30日受付の口頭審理陳述要領書に添付。)
・乙第9号証の2 医療法人財団健康院理事長 健康院クリニック院長 折茂肇「陳述書」(平成28年1月5日)
・乙第9号証の3 五反田リハビリテーション病院院長補佐 中村利孝「陳述書」(平成28年4月28日)
・乙第15号証の2 東洋醸造株式会社「一般的名称 酢酸テリパラチド、販売名 ヒトPTH(東洋)」の医薬品製造承認申請書(昭和60年4月22日)表紙、提出資料一覧表の表紙とp.1、提出資料のうちの「ヒトPTH(1-34)の概要」表紙、中表紙、目次、p.1-3、p.18-21
・乙第15号証の3 日本内分泌学会雑誌、Vol.60、No.3(1984年)p.159-170
・乙第15号証の4 Endocrinol. Japon.、Vol.31、No.1(1984年)p.33-40
・乙第15号証の5 Bone、Vol.16、No.4(1995年)p.477-484
・乙第15号証の6 特開平5-70367号公報(平成5年3月23日)
・乙第15号証の7 WO93/05805(1993年4月1日国際公開)
・乙第15号証 の8 Biopolymers、Vol.20(1981年)p.1823-1832
・乙第15号証の9 旭化成ファーマ株式会社「テリパラチド酢酸塩静注用100「旭化成」の医薬品インタビューフォーム」(2008年)表紙、p.1-3
・乙第18号証 旭化成ファーマ株式会社 臨床開発センターデータサイエンス部 山路太一朗「実験成績証明書」(平成30年10月25日)
(以上、平成31年2月12日受付の上申書に添付。)
・乙第50号証 旭化成ファーマ株式会社 メディカル・アフェアーズ部 鵜澤豊暢「陳述書」(2019年10月7日)
・乙第51号証 各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局審査管理課長通知「骨粗鬆症用薬の臨床評価方法に関するガイドラインについて」医薬審第742号(平成11年4月15日)
・乙第55号証 旭化成ファーマ株式会社 臨床開発センター データサイエンス部 田中理砂「実験成績証明書C」(令和1年10月11日)
・乙第61号証 旭化成ファーマ株式会社 医薬マーケティング本部 骨領域事業戦略部 中村泰朗「テリボンの開発に関する陳述書」(令和1年10月9日)
・乙第62号証 最高裁判所 平成30年(行ヒ)第69号の判決書(令和1年8月27日判決言渡)p.1-6
(以上、令和1年10月17日受付の上申書に添付。乙第24号証~乙第49号証、乙第52号証~乙第54号証、乙第56号証~乙第60号証は欠番。)
・乙第63号証 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「テリボン皮下注用56.5μgの再審査報告書」(平成30年11月8日)
(以上、令和1年12月27日受付の上申書に添付。)
・乙第66号証 N Engl J Med(2001年)Vol.344、No.19、p.1434-1441(丁第7号証)の抄訳
(以上、令和4年7月12日受付の上申書に添付。乙第64号証~乙第65号証は欠番。)
以下、乙号証については、その番号によって、「乙1」などということがある。
第6 テバファーマスーティカル株式会社が提出した文献のうち、合議体が引用する文献
・引用文献1 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編、折茂肇代表「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」(2006年)ライフサイエンス出版株式会社、iii-ix、p.9-12、p.22-83、p.93-102、p.110-113、p.120-141
(当該引用文献1は、テバファーマスーティカル株式会社が丁第4号証として、平成30年12月17日受付の口頭審理陳述要領書に添付して提出したものである。)
第7 甲号証の記載事項
請求人が提出した甲号証には、以下の記載がある。外国語で記載された甲号証については、当審合議体による日本語訳文で摘記する。なお、文中に挿入されている参照文献番号は、特に必要のない限り省略する。
1 甲3
甲3-ア
「生体内のカルシウム代謝に関しては主として取り込み口として小腸、貯蔵所として骨、排出口として腎の三つの臓器が関与している。カルシウムの恒常性は3種類のカルシウム調節ホルモン、すなわち、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)、カルチトニン(calcitonine、CT)、および活性型ビタミンD(一種のステロイドホルモン1,25-dihydroxyvitamineD3-1,25(OH)2D3)が小腸、骨、および、腎臓を標的器官として相互に作用することにより維持されており、血液中のカルシウムレベルは9.5~10.5mg/100mlと恒常的な値に保たれている。」
(200頁左欄9行~22行)
甲3-イ
「図7.PTHの標的細胞における作用機序
その作用はcAMPをセカンドメッセンジャーとして発現される。・・・
[図:0001415602000001.jpg]
」
(206頁図7)
2 甲4
甲4-ア
「酵素調製物。 標準のPurina chowで、通常通りの飼育条件を保った、体重150-200gの雄のSDラットを、断頭で死亡させた。腎臓を素早く切除し、冷やした0.25Mスクロース中に入れ、外側の腎皮質を、可能な限り髄質を少なくするよう取り除き、切り離した。組織(500mg、2つの腎臓の腎皮質を表す)を、4mlの10%v/vジメチルスル ホキシド(DMSO)を含有する、Tris-HCl、0.05M、pH7.4に移し、モーター駆動のテフロン乳棒を用いて、ガラスチューブ中でホモジナイズした。2000×gで10分間ホモジネートを遠心分離することにより微粒子状フラクションを得て、沈殿物を4mlのTris-HCl-DMSO中に再懸濁し、再度遠心分離した。微粒子状酵素調製物をTris-HCl-DMSO中に懸濁して、約15mg/mlのタンパク質濃度とし、少量ずつ分注して液体窒素中で保存した。タンパク質濃度はLowryらの方法により決定した。」
(802頁右欄1行~22行)
甲4-イ
「in vitroの副甲状腺ホルモンのバイオアッセイ。 5μlの容量のペプチド調製物を反応混合物に加え、アデニルシクラーゼ懸濁液を添加することにより、反応を開始した。インキュベーションは、記載してある場合を除き、10分間行った。活性は、タンパク質mg当たり、生成した3’,5’-AMPのμmoleとして、表された;生成した3’,5’-AMPの量は、添加した放射活性のある基質の既知の比活性から計算した。
バイオアッセイは、用量反応曲線の線形部分の中で、3つの濃度の標準調製物と、未知の調製物により行った。各濃度で、4回の測定を行った。結果はGaddumの方法により解析し、全ての比較データは、並行性と線形性の基準を満たす副甲状腺ホルモンを示した。アッセイの傾きは、最小二乗法で計算した。副甲状腺ホルモンのラジオイムノアッセイは、以前報告された方法で行った。」
(803頁左欄28行~同頁右欄18行)
甲4-ウ
「アデニルシクラーゼのアッセイ。 α-標識AT32Pから3’,5’-cyclicAM32P(3’,5’-AMP)の形成は、Krishnaらにより報告されているのと同様のアッセイに、KClとATPの再生系を加えて修正して測定した。反応混合物は以下のものを含む:総容量70μlにおいて示される、Tris-HCl、0.05M、pH7.4;MgCl2、4.5×10-3M;テオフィリン、9×10-3M;ウシ血清アルブミン、0.013%;KCl、3×10-2M;ピルビン酸キナーゼ、0.07mg/ml;ホスホエノールピルビン酸(PEP)、5.4×10-3M;α-32P-ATP、1.1×10-3M(比放射活性 約25cpm/μmole);約400μgの酵素懸濁液;そして、ホルモン、ポリペプチド、またはNaF。」
(802頁右欄23行~803頁左欄1行)
甲4-エ
「インキュベーションは、Dubnoff metabolic shaker中37℃で行い、Tris-HCl、0.05M、pH7.4中に、ATPを4×10-2M、3H-3’,5’-AMPを1.25×10-2M(約3×104cpm)含有するキャリア溶液100μlを加える事により、反応を停止させた。」
(803頁左欄1行~7行)
甲4-オ
「使用したバイオアッセイの標準品は、我々の研究室で調製した、TCAフラクションの1ロットであり、National Institute for Medical Research、Mill Hill、ロンドンのMedical Research Councilに提供し、ロット番号MRC67/342としてパッケージされ、流通している。副甲状腺抽出物USP(リリー)に対するin vivoのバイオアッセイをいくつか行った後、そのロットを265USPU/mgの活性のあるタンパク質と指定した(180USPU/vial)。」
(801頁右欄8行~16行)
甲4-カ
「副甲状腺腺腫から抽出し、TCA沈殿の段階まで精製した、ヒト副甲状腺ホルモンによってもアデニルシクラーゼの活性化が起こった。しかし、反応の傾きはウシのホルモンで得られたものの30%しかなく、効力を特定することは出来なかった。」
(806頁右欄24行~31行)
甲4-キ
「ラット腎臓からのアデニルシクラーゼの安定な調製による、in Vitroの副甲状腺ホルモンのバイオアッセイ」
(801頁論文タイトル)
3 甲7
甲7-ア
「ヒト副甲状腺ホルモン(1-34)の骨粗鬆症に対する間欠週1回投与の効果:3種類の投与量を用いた無作為化二重盲検前向き試験」
(296頁論文タイトル)
甲7-イ
「要約。 骨粗鬆症治療における骨形成促進剤として見込まれるヒト副甲状腺ホルモンのアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の効果を試験するため、二重盲検方式で無作為に3群に割り付けた71施設の220人の骨粗鬆症患者で50単位(L群)、100単位(M群)又は200単位(H群)のhPTH(1-34)の週1回皮下注射を開始した。二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による腰椎骨密度(BMD)が48週間後にL、M及びH群でそれぞれ0.6%、3.6%及び8.1%増加し、L群と比べてM及びH群の応答が有意に高かった(p<0.05、マン・ホイットニーのU検定)。腰椎測定値の変動係数は1~2.5%に留まったため、3.6%及び8.1%の増加は有意であると思われた。X線写真測定法(radiogrammetry)によって測定した中手骨BMD及び皮質骨幅は有意に変化しなかった。各群で血清カルシウムが低下し、M及びH群で血清リンが低下した。H群で12週目に、M及びL群で24週目及び48週目に尿カルシウム/クレアチニンが低下した。48週目に各群で血清25(OH)ビタミンD及び1,25(OH)2ビタミンDが低下した(p<0.05)。H及びM群で4週目に血清骨型アルカリホスファターゼが増加し、H群では48週目に低下した。各群で尿ヒドロキシプロリン、ピリジノリン及びデオキシピリジノリンが有意に減少した。各群の30~40%で背部痛が改善された。試験期間中、重篤な有害作用は認められなかった。hPTH(1-34)の間欠週1回注射は骨粗鬆症において腰椎BMDを増加させたことから、骨粗鬆症治療における有用性が示唆される。」
(296頁左欄1行~右欄7行)
甲7-ウ
「緒言
閉経後及び退行期骨粗鬆症の治療は主に、エストロゲン、ビスホスホネート類及びカルシトニン類などの骨吸収抑制剤に頼っている。これらの薬剤の使用によって骨密度(BMD)が増加するため、骨折予防は飛躍的に進歩したことから、骨形成の刺激によって、骨吸収抑制剤の即効性の、時に一時的な効果が補完されることが考えられ、骨吸収抑制剤の骨形成促進作用の持続時間が長くなり、退行期骨粗鬆症、特に低回転型の疾患に対して注目すべき有効な治療となり得ることが期待される。副甲状腺ホルモン(PTH)は、特に間欠投与時に骨形成促進作用を有することが動物及びヒトで示されているが、骨が極めて高用量のPTHに持続的に曝露されることによって、原発性副甲状腺機能亢進症に見られるような線維性骨炎が発生しないか懸念された。100又は200単位のヒトPTHアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の単回皮下注射による予備試験では、血清リンの低下、血漿サイクリックAMPの上昇並びにカルシウム及びサイクリックAMPの尿中排泄量の増加など、有意な代謝効果が示された。100又は200単位の週1回注射は26週間後に腰椎BMDの有意な増加をもたらしたが、週1回5単位は効果がなかった。
したがって、本試験においては、220人の骨粗鬆症患者で週1回50、100又は200単位のhPTH(1-34)の効果に関する無作為前向き二重盲検多施設試験を実施した。主要エンドポイントは二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)によって評価した腰椎BMDであり、補助変数としてX線写真測定法による中手骨皮質骨BMD及び骨代謝回転の生化学マーカーを用いた。取り組むべき問題は、週1回投与するこれらの用量のhPTH(1-34)(過去に試験されたことのない低用量間欠レジメンに相当する)が骨粗鬆症治療に有効か否かであった。」
(296頁右欄10行~297頁左欄25行)
甲7-エ
「被験者
71施設が参加する多施設試験を計画した。この試験は、厚生省の支援下にある委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された45歳~95歳の220人の被験者で実施した。この方式では、骨粗鬆症を単に非外傷性脊椎骨折が存在する、又は脊椎骨折が2箇所に存在するものとして定義するのでなく、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義するものである。スコアの計が4より高い場合(骨粗鬆症として定義される)を本試験への組入れ基準とした。・・・X線写真上の骨減少は腰椎の側面X線像上での骨梁の粗鬆化、すなわち、(1)横走骨梁の欠損に起因する縦走骨梁の著明化、(2)縦走骨梁の粗化及び(3)縦走骨梁の減少が認められた場合とした。X線写真上の骨減少はBMDの若年成人平均値から20%又は2.5SDの減少に相当する。・・・X線写真上の骨減少度がグレード1~3又はBMDが若年成人の平均値から2.5SD未満の場合はスコア3とした。椎体骨折が1箇所の場合はスコア1、骨折が2箇所以上の場合はスコア2とした。大腿骨頸部骨折がある場合はスコア3とし、遠位橈骨骨折はスコア1とした。骨粗鬆症の診断を裏付ける因子に関して、正常な血清カルシウム、リン及びアルカリホスファターゼの値をスコア1とすることにより、骨軟化症、原発性副甲状腺機能亢進症及び腎性骨ジストロフィーなどの骨減少に係る骨粗鬆症以外の原因を除外し、一方でこれらのうちの1つ以上が異常であった場合にはスコア1を減じた。同様に、被験者が閉経前である場合にはスコア1を減じた。
2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している被験者、過敏症の既往がある被験者及び自覚症状の自己評価の信頼性が疑わしい被験者は除外した。・・・
他の薬物の効果とhPTH(1-34)の効果を取り違えないように、試験開始3ヵ月前から試験期間を通して、骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤は控えられた。こうした薬剤には、エストロゲン類、カルシトニン類、活性型ビタミンD、ビタミンK2、イプリフラボン、ビスホスホネート類及びアナボリックステロイド類が含まれた。」
(297頁左欄27行~右欄29行)
甲7-オ
「hPTH(1-34)(テリパラチド酢酸塩)の調製及び投与方法
旭化成工業によって合成されたhPTH(1-34)の純度及び生物学的効力について、国際標準ウシPTH(1-84)に対するラット腎皮質膜によるサイクリックAMP産生を利用してアッセイしたところ、3300単位/mgが得られた。各バイアルには50、100又は200単位のテリパラチド酢酸塩が含まれ、これは約15、30及び60μgのペプチドに相当した。・・・バイアルの内容物を使用直前に1mlの生理食塩水に溶解し、週1回、48週間にわたって皮下注射した。
・・・
週1回100又は200単位のhPTH(1-34)を26週間投与したところ腰椎BMDが上昇した予備試験の結果に基づき、試験期間は48週間に設定した。この期間は、恒常的に骨折の危険性及び不安を抱える骨粗鬆症集団において、脱落率が過度とならずに、定期的に骨測定並びに血液及び尿試料採取を行う適切に管理された多施設試験を実施できる限界とも考えられた。Schwietert et al.がまた、ヒトにおける5μg/kgPTH(1-84)の投与の安全性に関しても報告している。」
(297頁右欄43行~298頁左欄24行)
甲7-カ
「収集されたデータ
ベースラインデータ。 年齢、性別、閉経時年齢、身長、体重、入院又は外来通院状態、一般病歴、hPTH(1-84)抗原性に関する皮内テストの結果、骨粗鬆症の診断スコア、既往歴、骨粗鬆症に対する治療歴及びその合併症、試験期間中に服用する被験薬以外の薬物、一般用カルシウム製品及び乳製品の使用を記録した。
自覚症状。 骨粗鬆症に起因する痛みを安静時自発痛と運動時痛に分類し、治療0、2、4、12、24及び48週間後又は試験終了時に以下のグレード評価スキームによって評価した。安静時痛は、1;痛みなし、2;中等度の痛み、3;かなり痛いが耐えられる痛み、及び4;重度の耐えられない痛みとしてグレード分けした。運動時痛は、1;痛みなし、2;中等度の痛み、3;動きを妨げるかなりの痛み、及び4;動くことが不可能な激痛としてグレード分けした。患者は自身の痛みの程度をアナログ尺度で自己評価した。
骨所見。 (a)腰椎BMDの測定。治療0、12、24及び48週間後又は試験終了時に腰椎(L2-4)の骨塩量、骨面積及びBMDをDXA(QDR(Hologic)、DPX(Lunar)又はXR(Norland)によって前後方向投影で測定した。参加施設数が多いため、十分な品質管理を維持することが困難であった。各施設でBMD測定がルーチン的に行われ、装置に付随する推奨に従い毎日ファントムを測定した結果、変動係数(CV)が1%~2.5%に維持された。
患者の年齢が高いため、圧迫骨折及び結果として起こる変化に加え、脊椎の退行性変化が脊椎BMDの前後方向測定において深刻な問題となった。このため、L2、L3又はL4に骨棘や圧迫変形などの脊椎の退行性変化を有する被験者は全て、薬物効果の根拠となるデータから除外した。このため、脊椎BMD測定における組み入れ前の脱落率が高くなった。
(b)中手骨BMDの測定。 治療0、12、24及び48週間後又は試験終了時にファントムと共に手の前後方向X線写真で非利き手側第2中手骨のX線写真測定法を行った。試験完了後、71施設で撮影された全てのフィルムのコンピュータデジタル画像処理による測定がトーヨー検査センターで実施された。1人の観察者による同じフィルム上の中手骨BMDの10回連続測定(ΣGS/D)に基づくデジタル画像処理方法の精度により0.59のCVが得られ、3人の観察者による同じ手順から1.47のCVが得られた。同じ被験者から4枚の手のフィルムを撮影し、各々について測定を行ったところ、1.72のCVが得られた。
(c)椎体骨折評価。 それぞれL3及びT8に焦点を絞った腰椎及び胸椎の側面X線像で、1人の放射線科医が椎体の圧迫骨折や変形を評価した。前縁高/後縁高比の25%以上の低下及び中央高/後縁高の20%以上の低下を有意な変形と定義した。
生化学パラメータ。 治療前及び治療2、4、12、24及び48週間後又は試験終了時に、日本最大の商業的臨床検査所であるスペシアルレファレンスラボラトリーにより、カルシウム(Ca)、リン(P)、25(OH)ビタミンD(競合タンパク質結合分析による)、1,25(OH)2ビタミンD(ラジオレセプターアッセイによる)、オステオカルシン、中間部PTH(ラジオイムノアッセイによる)、血清中の全及び骨型アルカリホスファターゼ及びアルブミン並びに尿中のCa、P、ヒドロキシプロリン、ピリジノリン、デオキシピリジノリン(HPLCによる)及びクレアチニンが測定された。
治療0、12、24、36及び48週間後又は試験終了時に各施設で血球計算(RBC、WBC及び白血球分画、ヘマトクリット、ヘモグロビン及び血小板数)、血清生化学検査(GOT、GPT、A/G、BUN、クレアチニン、総コレステロール、CPK、Na、K、Cl及びグルコース)及び検尿(潜血、タンパク、糖、ウロビリノーゲン、ビリルビン及びpH)を行った。
有害反応及び有害事象の調査。 試験中の有害事象を記録し、詳細を調査した。有害事象は、その経過、重症度、治療及び結果の総合的判定に基づき、(1)被験薬が原因である、(2)恐らく被験薬が原因である、(3)恐らく被験薬が原因ではない、及び(4)被験薬が原因ではないとしてグレード分けした。有害反応には暫定的に(1)~(3)を含めた。」
(298頁左欄25行~299頁左欄3行)
甲7-キ
「結果
表1は、本試験への参加が認められた被験者の組入れ基準の詳細を要約する。
当初無作為二重盲検割り付けによって本試験に登録した220人の被験者[50単位群(L)に73人、100単位群(M)に75人及び200単位群(H)に72人]のうち、41人は骨粗鬆症の診断基準を満たさず、また、前治療薬のウォッシュアウトが不十分なため、不適格とした。
BMDの正確な測定を妨げる腰椎の退行性変化及び圧迫変形を有する患者、及び指定時間外に測定が行われた患者の除外が、更に64人の患者に上った。したがって腰椎BMDに対する効果の分析は115人の被験者:L群39人、M群38人及びH群38人(表2)で行った。61人の被験者は、副作用、中途での心変わりにより試験を拒絶、合併症の増悪等が理由で本試験を完了することができなかったが、最初の3か月以内に脱落しない限り、これらの被験者も分析群に含めた。
被験者の治療開始時の特徴を各グループで比較したものを表3に示した。
3群とも被験者が一様に分布していることを確認した。」
(299頁左欄10行~300頁左欄3行)
甲7-ク
「
[図:0001415602000002.jpg]
」
(299頁表1)
甲7-ケ
「
[図:0001415602000003.jpg]
」
(299頁表2)
甲7-コ
「
[図:0001415602000004.jpg]
」
(300頁表3)
甲7-サ
「自覚症状
主に背部痛からなる自覚症状は、L群で52人中21人の被験者(40%)、M群で60人中18人の被験者(30%)及びH群で47人中17人の被験者(36%)が中等度以上の改善を示した。群間に有意な差はなかった(表4)。」
(300頁左欄4行~10行)
甲7-シ
「
[図:0001415602000005.jpg]
」
(300頁表4)
甲7-ス
「骨測定
本試験の48週間における腰椎BMDの変化を図1に示す。腰椎BMDは、24及び48週間後に試験開始時のレベルと比較してL、M及びH群でそれぞれ0.6%、3.6%及び8.1%と用量依存的に増加した。この増加は24及び48週目にL群よりもM及びH群で高く、及び48週目にM群よりもH群で大きかった(p<0.05)。応答は、64歳以下及び65歳以上、体重49kg以下及び50kg以上、閉経後10年未満、10~20年及び20年超、椎骨骨折0、1及び2箇所以上の被験者サブ群間で同様であった。第2の中手骨(皮質骨からなる)のX線写真測定法による密度に有意な差は認められなかったことから、各群間で皮質骨及びX線写真上の骨減少の程度が維持されていることが示唆される。椎体骨折数はL群で3、M群で5及びH群で0発生した;各群間の差は有意でなかった。」
(300頁左欄11行~右欄末行)
甲7-セ
「
[図:0001415602000006.jpg]
図1.治療週数に対する腰椎BMD(平均値±SD)のパーセンテージ変化。点線で結んだ白抜きの四角□:50単位PTHを投与した被験者(L群)のデータ、実線で結んだ塗り潰しの丸●:100単位PTHを投与した被験者(M群)のデータ、破線で結んだ白抜きの丸○:200単位PTHを投与した被験者(H群)のデータ
aマン-ホイットニーのU検定によりL群の値とp<0.05で有意差あり
bM群の値とp<0.05で有意差あり。*マン-ホイットニーのU検定によりp<0.05で有意なベースライン値からの増加。」
(300頁図1)
甲7-ソ
「生化学パラメータ
図2に示されるとおり、血清Caは2週目から低下し始め、4週目以降は基礎値よりも有意に低かった。血清Pもまた2週目から低下した。尿中Caは2週目から低下し、試験期間を通じて基礎レベル未満に留まり、及び尿中Pもまた低下した。血清25(OH)ビタミンD及び1,25(OH)2ビタミンDレベルは、図3に示されるとおり、各群で48週目にベースライン値からやや低下した。図4に示されるとおり、骨型アルカリホスファターゼは4週目にベースラインレベルよりも高く、H群においてのみ24及び48週目に低かった。尿ピリジノリン、デオキシピリジノリン及びヒドロキシプロリン排泄量は、図5に示されるとおり、L及びH群で24及び48週目にベースライン値から減少した。
表5に示されるとおり、各群で本試験の経過中に何らかの異常検査所見が現れたが、いずれも顕著でなく、又は持続性でなく、被験薬が原因因子であることを示すものではなかった。表6は、治療中に起こった有害反応を要約する。29症例で被験者が症状に起因して試験から脱落した。hPTH(1-34)の用量の増加と合致して有害反応の総数が増加したものの、重篤な有害事象は認められなかった。」
(301頁左欄1行~右欄4行)
甲7-タ
「
[図:0001415602000007.jpg]
」
(303頁表5)
甲7-チ
「表6.被験者における治療期間中の有害反応
[図:0001415602000008.jpg]
a 臨床検査異常を含む。
b 有害反応による脱落症例数。」
(305頁表6)
甲7-ツ
「考察
原発性副甲状腺機能亢進症における過剰量のPTHの持続的な分泌は、骨、特に皮質骨の顕著な欠損によって特徴付けられるが、組織形態測定では皮質骨が比較的良好に保存されていることが示される。PTHはまた、骨芽細胞活性及び骨形成も刺激し、骨に形成促進作用を及ぼし得る。
動物試験ではPTHの骨形成促進作用が高頻度で確認されており、骨の物理的特性の改善が報告されている。1つのN末端アミノ酸を取り除くと効果がほぼ消失したため、かかる骨形成促進作用はPTHの失われていないN末端部分に依存するものと思われる。
海綿骨の増加が一貫して報告された一方、皮質骨は反応が低かった。間欠投与はPTHの骨形成促進作用を生じさせるのに一層有効であるように思われた。これまで骨粗鬆症の治療には主にエストロゲン、カルシトニン及びビスホスホネートなどの骨吸収抑制剤が利用されており、骨吸収を刺激する骨形成促進剤は、特に低代謝回転型の骨粗鬆症において有用となり得る。フッ化物は、BMDの驚くべき増加を誘導するその作用にも関わらず、問題がないわけではない:フッ化物は骨折発生率を低下させることはできず、かつ骨疼痛などの副作用を生じる。PTHは依然として骨形成促進剤の良好な候補である。ヒトにおいては、PTHもまた、高用量で用いる場合にBMDを増加させるが、ヒトにおいて好ましい効果を生じる間欠投与方法は依然として未解決の問題である。Reeveらは、12人の骨粗鬆症患者で間欠用量のhPTH(1-34)(7日間投与及び21日間休薬を16サイクル繰り返す)を用いて多施設試験を行い、様々な実施施設で全身Caの僅かな増加が観察されたが、BMDの増加は有意でなかったと報告している。1日1回投与(これは持続注入と比べてなおも間欠的であり得る)は、より好ましい結果をもたらした。Reeveらは21人の患者に6~24ヵ月にわたって約250単位のhPTH(1-34)を1日1回投与して、重篤な有害作用のない、血清アルカリホスファターゼの15%上昇を伴う顕著な骨の付着成長を実証した。Lindsayらは3年間の無作為化対照試験を実施し、ホルモン補充療法を受けている17人の閉経後女性に1日1回の皮下注射によって25μghPTH(1-34)を投与し、その結果を対照群であるホルモン補充療法単独を行った17人の閉経後女性と比較した。PTHの投与を受けた群では椎骨BMDが13.0%増加したが、対照群では有意な増加は示されなかった。他の試験では、PTHはエストロゲンとの併用が有効であった。
また、ビタミンD誘導体との併用によってPTHの効果を増強することも試みられた。400~500単位のhPTH(1-34)を0.25μgの1、25(OH)2ビタミンD3と併せて投与したとき、骨梁の増加が認められた。カルシトニンとの併用もまた用いられた。Heschらは720~750単位のhPTH(1-37)を8週間にわたって毎日、2~4日目、6~8日目及び8~10日目の間に1日1回の鼻腔内カルシトニン投与を4サイクル繰り返した。Hodsmanらもまた、1ヵ月間にわたる1日1回の800単位のPTH投与の後に2ヵ月間休止する反復サイクルによる治療の結果として、2年で腰椎BMDの8~10%の増加を達成した。
単位量当たりのhPTH(1-34)の生物学的活性は試験間で異なるように見える。例えば、Lindsayらの試験では、400単位(25μg)のhPTH(1-34)が用いられた。用いられた製剤が異なるため、hPTH(1-34)の用量に関して本試験の結果を他と比較することは難しいが、本試験における間欠週1回投与は明らかに、多くの先行試験と比べてhPTH(1-34)の総用量を抑えることができる。中手骨骨密度(ほとんどが皮質骨からなる)を減少させることなく腰椎BMD(主に海綿骨からなる)を48週間という比較的短期間で有意に用量依存的に増加させたことにより、hPTH(1-34)による骨粗鬆症治療はきわめて将来有望であると思われる。」
(301頁右欄5行~303右欄23行)
甲7-テ
「
[図:0001415602000009.jpg]
図2.治療週に対する血清中のCa(左)とP(右)の値(平均値±SD)。
白抜きの四角、□:50単位のPTHを投与した被験者(L群)の値、
黒塗りの丸、●:100単位のPTHを投与した被験者(M群)の値、
白抜きの丸、○:200単位のPTHを投与した被験者(H群)の値。
*マン・ホイットニーのU検定による危険率p<0.05で基準値に対して有意差あり。」
(301頁図2)
4 甲8
甲8-ア
「本症の発生頻度は加齢とともに増加するので、本症は骨の生理的加齢現象にすぎないと考える人もあるがそうではない。加齢に伴い、生理的にも骨のなかの蛋白およびCa、Pが減少するが、このような骨の生理的加齢を基盤に、さまざまな要因が加わって発症し、腰背痛や、病的骨折を伴うものを骨粗鬆症とよぶべきである。」
(288頁左欄13行~18行)
甲8-イ
「骨粗鬆症の骨病変は通常胸椎および腰椎に認められるので、退行期骨粗鬆症の診断にさいしてまず必要なことは、胸椎および腰椎の側面X線写真撮影を行うことである。ついでこの胸椎および腰椎の側面X線写真を用いて骨密度の減少あるいは圧迫骨折の有無をチェックする。・・・胸椎・腰椎の骨密度の減少を判定する方法としては慈恵大の方式が一般に用いられている。
骨粗鬆症ではまず椎体の密度が減少するために椎体のX線透過度が増大し、ついで縦の骨梁がめだつようになり、さらに進行すると上下面が陥没し・・・ついには椎体が崩れて圧迫骨折の像を呈するに至る。慈恵大方式では、このような骨X線像を基にして骨粗鬆症の程度をI~III度に分類している。・・・最近、厚生省骨粗鬆症研究班では、これをより簡略化したものとして表2に示すような骨萎縮度の基準を提唱しており、今後はこの方法が広く用いられることが期待される。」
(288頁右欄7行~289頁左欄17行)
甲8-ウ
「表2 骨萎縮度の基準
[図:0001415602000010.jpg]
」
(289頁)
甲8-エ
「1988年度から、厚生省シルバーサイエンスプロジェクトとして「老人性骨粗鬆症の予防および治療法に関する総合的研究班」(班長:折茂肇)が結成されたが、この研究班ではこのような立場から本症において認められる自・他覚所見をスコア化し、そのスコアに応じて、○1(審決注:丸数字の1を表す。以下、同様に、○に続けてアラビア数字を記載されているのは、丸数字を表す。)確実、○2ほぼ確実、○3疑いあり、○4否定的、の4つに分類する診断基準を提唱している(表3)」
(290頁左欄20行~26行)
甲8-オ
「
[図:0001415602000011.jpg]
」
(289頁表3)
5 甲9
甲9-ア
「表1 原発性骨粗鬆症の診断基準(1996年度改訂版)
[図:0001415602000012.jpg]
」
(77頁表1)
甲9-イ
「
[図:0001415602000013.jpg]
」
(78頁表3)
6 甲15の1
甲15の1-ア
[用法・用量] 通常、成人には1日1回テリパラチド(遺伝子組換え)として20μgを皮下に注射する。
なお、本剤の投与は18ヵ月間までとすること。」
(2頁)
7 甲19
甲19-ア
「要旨:重症骨粗鬆症のテリパラチド治療の中止後、治療をすべきかどうかは明らかになっていない。2年間の前向き無作為化コントール試験において、我々は、1年間のテリパラチド投与の後、3つのフォローアップ治療のBMDへの効果と臨床上の安全性を比較した(テリパラチドによる骨形成、ラロキシフェンによる骨吸収抑制、または、治療なし)。骨粗鬆症で最近脆弱性骨折の既往があった閉経後女性が、非盲検でテリパラチド(20μg/日)を12ヶ月間投与された後、テリパラチドを継続する群(n=305)、ラロキシフェン60mg/日に切り替える群(n=100)、2年目は何も積極的な治療を受けない群(n=102)にランダムに割り付けられた(3:1:1)。全患者はカルシウムとビタミンDの補充を受けた。部位BMDにおけるベースラインから24ヶ月後の変化を混合モデルの反復測定を用いて解析した。2年間の連日のテリパラチド投与は腰椎BMDを10.7%有意に増加した。2年目にラロキシフェンを投与した患者は、1年目から腰椎BMDにさらなる変化はなく(ベースラインからの変化、7.9%)、一方、何も積極的な治療を受けない患者は、2年目に2.5%BMDが減少した(ベースラインからの変化、+3.8%)。股関節における、ベースラインから2年目のBMD増加は、テリパラチドで2.5%、ラロキシフェンで2.3%、積極的な治療なしで0.5%であった。;大腿骨頚部については、それぞれ3.5%、3.1%、そして1.3%の変化であった。本試験は骨折に対する有効性を評価するには不十分である。結論として、重症骨粗鬆症女性における2年間にわたるテリパラチド治療で、BMDは漸進的に増加した。テリパラチドの中止後、ラロキシフェンは腰椎BMDを維持し、股関節BMDを増加した。」
(726頁要旨)
甲19-イ
「材料と方法
研究仮説
複合的な第一の研究仮説は、2年間続けたテリパラチド投与か、1年間のテリパラチドに続いて1年間のラロキシフェンの投与かの、いずれが、1年間のテリパラチドに続いて1年間何も積極的な治療を受けない場合(すなわち、カルシウムとビタミンDの補充のみ)に得られるBMD対して、優れたBMDの結果を生み出すのか、である。この報告に関連する第二の仮説は、1年間のテリパラチドの後、2年目のテリパラチドが、BMDに対して、ラロキシフェンよりも優れたBMDの結果を生み出すのかどうか、である。」
(727頁左欄41行~51行)
甲19-ウ
「被験者
EUROFORSは10の欧州の国の95施設で行われた。我々は、閉経後少なくとも2年経過した55歳以上の歩行可能な女性で、腰椎、股関節、又は大腿骨頚部でT-scoreが-2.5以下であり、過去3年以内に1以上の椎体または非椎体の脆弱性骨折の既往がある患者を組み入れた。適格な女性は、また、血清中のPTH、アルカリホスファターゼ、カルシウムのベースラインレベルが正常でなくてはならず、骨粗鬆症以外の重症または慢性的な障害を持っていないこと、とされた。腰椎L2-L4のうち少なくとも2つがBMDの評価が可能でなくてはならなかった。
我々は、骨粗鬆症を二次的に作り出す原因となることが知られている薬剤を摂取しているか、そのような疾患を持っている女性、または、テリパラチドまたはラロキシフェンでの治療に禁忌となっている女性は除外した。いずれの骨吸収抑制剤の使用歴があっても、制限やウォッシュアウト期間なしで許可されたが、これらの薬剤はベースラインの時点では中止しなければならなかった。
参加女性は、(1)治療経験なし(すなわち、試験の参加前に何も骨粗鬆症治療薬を投与されたことがない);(2)骨吸収抑制剤で前治療がある(AR前治療あり);または(3)AR前治療で不十分な臨床的成果であった(不十分なAR反応患者)であり得た。」
(727頁左欄52行~右欄18行)
甲19-エ
「試験デザインと手順
試験は、2つのサブスタディと、それぞれ12ヶ月間の2つの治療フェーズから構成された(図1)。この報告では、サブスタディ1のみの結果を示す。・・・
登録のための適格性を調べる1ヶ月間のスクリーニング期間の後、全患者、治療の最初の年を通じて、カルシウム(500mg/日)とビタミンD(400-800IU/日)の補充とともに、テリパラチド(20μg/日)を1日1回の皮下自己注射で投与された。12ヶ月後、すべての治療経験なしの参加者とAR前治療のある参加者は、2年目の間、テリパラチドを継続する群(治療群1)、ラロキシフェン60mg/日に切り替える群(治療群2)、2年目は何も積極的な治療を受けない群(治療群3)にランダムに割り付けられた(3:1:1)(サブスタディ1)。
・・・
試験の間、最も重要な結果の測定値である部位BMDは、ベースラインと、治療の6、12、18、24ヶ月目に、種々の密度計(Hologic、Lunar、または、Norland)を用いたDXAにより、腰椎(L1-L4)、股関節、大腿骨頚部について評価した。密度計は、相互校正され、すべてのBMDスキャンは、品質評価と解析のために、中央の読み取り担当者(バイオイメージングテクノロジーズ、ライデン、オランダ)に送付された。試験は、非盲検で遂行された;しかし、中央の読み取り担当者は、患者個人の治療群の割付について、盲検化された。」
(727頁右欄26行~728頁左欄10行)
甲19-オ
「治療期間のBMDの変化
腰椎BMDは、各治療群で全ての時点においてベースラインから有意に増加した。腰椎BMDの増加(平均的なベースラインBMDを有する患者について)は、ラロキシフェンに切り替えた女性と、積極的な治療なしの女性についてはベースラインから24ヶ月で、それぞれ7.9%と3.8%であったのに比べて、ランダム割付後テリパラチドの投与を続けた女性については、10.7%であった(図3A)。ベースラインから24ヶ月後の腰椎BMDにおける絶対的変化は、積極的な治療なし群と比べて、テリパラチド群で(治療群の差、0.051g/cm2;95% CI、0.039-0.062;p<0.001)、積極的な治療なし群と比べてラロキシフェン群で(治療群の差、0.030g/cm2;95% CI、0.017-0.044;p<0.001)、ラロキシフェン群に比べてテリパラチド群で有意に大きかった(治療群の差、0.020g/cm2;95% CI、0.009-0.031;p<0.001)。
治療2年目の間、腰椎BMDは、テリパラチド群において有意に増加し続け、ラロキシフェン群において有意な変化はなく、積極的な治療なしの群にいて有意に減少した(表2)。
股関節BMDは、テリパラチド群とラロキシフェン群において、ベースラインから18ヶ月目、24ヶ月目で、有意に増加した(図3B)。一方、積極的な治療なしの群においては、いずれのフォローアップ評価の時点においてもベースラインから有意な変化はなかった。ベースラインから24ヶ月目までの股関節BMDのパーセント変化(平均的なベースラインBMDを有する患者について)は、積極的な治療なしの群(0.5%)より、テリパラチド群(2.5%)とラロキシフェン群(2.4%)で大きかった(図3B)。ベースラインから24ヶ月目の股関節BMDにおける絶対的変化は、積極的な治療なしの群に対してテリパラチド群で大きく(治療群の差、0.014;95% CI、0.005-0.022;p=0.001)、積極的な治療なしの群に対してラロキシフェン群で有意に大きかった(治療群の差、0.013;95% CI、0.003-0.023;p=0.012;図3B);テリパラチド群とラロキシフェン群の差は統計学的に有意ではなかった(治療群の差、0.001;95% CI、-0.007から0.009;p=0.849)。股関節BMDの値は、テリパラチド群とラロキシフェン群では12ヶ月から24ヶ月で有意に増加したが、積極的な治療なしの群では有意な変化はなかった(表2)。
大腿骨頚部BMDは、3つすべての治療群でベースラインから18ヶ月目と24ヶ月目に有意に増加したが、ベースラインから24ヶ月目のパーセント変化は、テリパラチド群(3.5%)とラロキシフェン群(3.1%)で、積極的な治療なしの群より大きかった(1.3%;図3C)。ベースラインから24ヶ月目の大腿骨頚部BMDにおける絶対的変化は、積極的な治療なしの群に対してテリパラチド群で(治療群の差、0.014;95%CI、0.005-0.023;p=0.002)、積極的な治療なしの群に対してラロキシフェン群で有意に大きかったが(治療群の差、0.011;95%CI、0.000-0.022;p=0.044)、ラロキシフェン群に対してテリパラチド群は有意差がなかった(治療群の差、0.003;95% CI、-0.006-0.012;p=0.577)。大腿骨頚部BMDの値は、3つすべての治療群で12ヶ月から24ヶ月で有意に増加したが、テリパラチド群における増加量は、積極的な治療なしの群において得られた増加量より有意に大きかった(表2)。」
(729頁右欄10行~730頁右欄7行)
甲19-カ
「
[図:0001415602000014.jpg]
」
(731頁図3A)
甲19-キ
「
[図:0001415602000015.jpg]
」
(731頁図3B)
甲19-ク
「
[図:0001415602000016.jpg]
図3 EUROFORSのサブスタディ1参加者におけるBMDの変化。ベースラインから治療6、12、18、24ヶ月後のBMD(g/cm2)における絶対的変化(A)が腰椎、(B)が股関節、および、(C)が大腿骨頸部(最大の解析対象集団)。棒グラフの頂点にある数字はベースラインからのBMD変化率。」
(731頁図3C、及び、図3A~図3C全体についての説明)
甲19-ケ
「
[図:0001415602000017.jpg]
」
(732頁表2)
タイトルの訳:表2.治療24ヶ月目におけるランダム割り付け(12ヶ月目)からのBMDの変化
BMD:骨密度
Treatment Arm:治療群1
Treatment Arm Comparison:治療群比較
TPTD:テリパラチド群(2年間テリパラチド投与群)
Raloxifene:ラロキシフェン群(1年目テリパラチド、2年目ラロキシフェン投与群)
No active treament:積極的治療なし群(1年目テリパラチド、2年目積極的治療なし(カルシウムとビタミンDの投与のみ))
TPTD vs. no active treament:テリパラチド群 対 積極的治療なし群
Raloxifene vs. no active treament:ラロキシフェン群 対 積極的治療なし群
TPTD vs. Raloxifene:テリパラチド群 対 ラロキシフェン群
Lumbar spine:腰椎
Mean Change:平均の変化
p value:p値
Mean % change:平均の変化%
Total hip:股関節
Femoral neck:大腿骨頸部
甲19-コ
「臨床的脆弱性骨折
2年の試験の間、サブスタディ1の評価可能な患者632名の内64名(10.1%)が、計77の臨床的骨折を被り、内56は脆弱性骨折と分類された(15が椎体、41が非椎体)。これらの骨折の内、16がランダム割付後に発生した:テリパラチド群で13(4.3%)(椎体4、前腕/手首3、下腿2、股関節1、その他3)、ラロキシフェン群で2(2.1%)(1が上腕骨、1が骨盤)、そして、治療薬なし群で1(1.0%)(下腿1)。グループ間の差は統計的に有意ではなかった。すべての評価可能なサブスタディ1の患者と、2年目にテリパラチド群にランダム割付された患者における、臨床的脆弱性骨折の縦断的な記述解析は、表3に示されている。」
(730頁右欄8行~20行)
甲19-サ
「安全性
すべての患者がテリパラチドを投与されている治療1年目の間、最も頻発した有害事象は、吐き気(12.4%)、関節痛(7.9%)、頭痛(69%)、そして四肢における痛み(5.1%)であった。2年の試験期間全体にわたり、連日テリパラチド群に割り付けられた患者のうち37名(4.3%)で高カルシウム血症が報告された。しかしながら、治療2年目のみの期間では、高カルシウム血症と腎石症の発生率は、すべての群で3%未満のままであり、サブスタディ1の3つの治療群間で有意差はなかった(フィッシャーの正確確率検定):高カルシウム血症(テリパラチド群1.0%、ラロキシフェン群0%、治療薬なし群1.0%;p>0.999);腎石症(テリパラチド群0.7%、ラロキシフェン群0%、治療薬なし群0%;p>0.365)。
治療2年目の間に最も頻発した有害事象と、そのグループ間での統計学的な有意性は、表4にまとめられている。ラロキシフェン治療群で、筋痙攣、顔面潮紅、不眠がより頻繁に報告された。」
(730右欄第21行~732左欄末行、但し731を含まない)
甲19-シ
「考察
本報告は、重症骨粗鬆症の閉経後女性において、テリパラチド一年間投与後の逐次的治療に対して3つの異なるアプローチ(骨形成、骨吸収抑制、そして、治療薬なし)の効果を直接比較した初めての無作為化コントロール試験である。本試験は、結果の変数として部位BMDを用い、次の事を示すことにより治療効果の明確なヒエラルキーを確立するものである。(1)テリパラチドの2年目は腰椎と股関節いずれにおいても優位で漸進的なBMD増加を伴う。(2)テリパラチド投与一年の後に続くラロキシフェンによる治療は腰椎のBMD増加を維持し、股関節のBMDをさらに増加する。(3)カルシウムとビタミンDのみによる逐次的治療は、テリパラチドにより前もって増加した腰椎BMDの部分的な消失を伴う。」
(732右欄第1行~733左欄第4行)
甲19-ス
「我々の試験は骨折に対する効果を評価するためにデザインされておらず、適切に評価する検出力もない。予測通り、試験期間中の臨床的脆弱性骨折の全数は少なく、ランダムに割り付けられた2年目の治療の群間比較は、3つの逐次的治療の相対的な骨折抑制効果に関して導かれるどの結論も許可されるものではない。しかしながら、時間と共に骨折発生率が徐々に減少することは(表3)、興味深い記述的な発見であるが、確認のためのさらなる試験を必要とするであろう。
テリパラチドによる2年間の治療は一般に安全で、良好な忍容性を示した。2年目の間、テリパラチドに関連する可能性のある有害事象(高カルシウム血症と腎石症)は、他の治療群と同等の発生率であった。ラロキシフェンにおけるよく知られた副作用である、筋痙攣、顔面潮紅、そして、不眠は、ラロキシフェン群において他の治療群よりも、有意に多くの女性から報告された。」
(733右欄第41行~57行)
甲19-セ
「
[図:0001415602000018.jpg]
*これらの数値はラロキシフェン治療群で生じた2の脆弱性骨折と、治療薬なし群で生じた1の脆弱性骨折を含む。」
タイトル部の訳:表3 すべてのランダム割り付けされた集団と、治療群1(テリパラチドを2年間継続)における、6ヶ月毎の臨床的脆弱性骨折
Time interval:投与期間
Total number of patients:全患者数
Number(%) of patients with fracture:骨折患者数(%)
Total number of fractures:総骨折数
Fractures per 1000 patinet-years:1000患者年当たりの骨折
Total randomized cohort(substudy 1):すべてのランダム割り付けされた集団(サブスタディ1)
mo:月
Treatment arm 1(continuous teriparatide for 2yr):治療群1(テリパラチドを2年間継続投与)
(732頁表3)
甲19-ソ
「まとめると、24ヶ月に渡るテリパラチドによる治療において、腰椎の一部と股関節のBMDは漸進的に増加する。12ヶ月のテリパラチド治療に続いて、ラロキシフェンで12ヶ月治療するとき、股関節と大腿骨頚部のBMDは漸進的に増加し、腰椎BMDは2年目の間安定に維持される。我々の結果は、初めて3群の直接比較を用い、テリパラチドによる骨形成治療の追加の一年が、骨吸収抑制剤(ラロキシフェン)への切り替えよりも優れていること、同様に、カルシウムとビタミンDのみによるフォローアップ治療より勝ることを示すことにより、(BMDに関しての)治療効果のヒエラルキーを確立するものである。」
(734頁40行~52行)
8 甲20
甲20-ア
「要旨:骨吸収抑制剤(AR)の前治療は、テリパラチドヘの反応に影響を及ぼす可能性がある。我々は、24ヶ月間、テリパラチド投与を受けた骨粗鬆症の閉経後女性503名のサブグループにおいて、BMDの反応と安全性を調査した。患者はARの前治療に基づいて、3群に分類された:治療経験なし(n=84);前治療があり、治療応答が不十分であったエビデンスなし(n=134);前治療があり、AR投与に対して不十分な応答を示した(n=285)、不十分な応答については、治療中に、骨折、持続的に低いBMD、及び/または、明らかなBMDの喪失の発生により、あらかじめ定義された。ベースラインからのBMDの変化は混合モデルの反復測定を用いて解析した。腰椎BMDは3群すべてで、ベースラインから6、12、18、24ヶ月目に、有意に増加した。24ヶ月にわたる腰椎BMDの平均の増加は、治療経験なし(治療ナイーブ)群(0.095g/cm2;13.1%)において、AR前治療あり群(0.074g/cm2;10.2%;p<0.005)と不十分なAR応答患者(0.071g/cm2;9.8%;p<0.001)よりも、大きかった。股関節BMDは、同様の増加であり、それぞれ、3.8%、2.3%及び2.3%であった。不十分なAR応答患者における股関節BMDの早期の低下は、投与18ヶ月後までには逆転した。18ヶ月目と24ヶ月目の間におけるBMDの増加は、大きく有意なものであった。吐き気(13.3%)と関節痛(11.7%)は最も頻回に報告された有害事象であった。無症候性の高カルシウム血症は患者の5.0%で報告があった。24ヶ月のテリパラチド治療は、ARの使用歴がある患者およびない患者において、BMDの有意な増加に関与する。AR前治療はテリパラチドに対するBMDの反応をわずかに鈍くした。安全性は、現在処方されている添付文書と一致するものであった。」
(1591頁要旨)
甲20-イ
「
[図:0001415602000019.jpg]
」
(1595頁図2)
9 甲44
甲44-ア
「NOTE:GFRマーカー物質
腎から尿中に排泄されやすい物質であれば、腎動脈から血液を糸球体で濾過して原尿を作り出す能力をクリアランス試験によって定量的に評価できる。そのためGFRを評価するマーカーとして、○1血漿蛋白と結合せず、○2糸球体基底膜を自由に通過し、○3尿細管で再吸収、分泌を受けず合成や分解もされない物質(イヌリン)が利用される。全身クリアランスが腎クリアランスに相当する物質で、さらに臨床的有用性・簡便さから、○4一定速度で常に産生される内因性物質で、○5測定が簡単な物質が望ましいため、臨床ではクレアチニンが用いられる。」(審決注:○の後ろにアラビア数字は、丸囲いの数字を表す。)
(44頁)
甲44-イ
「Q-4 では、腎機能の低下によってどのように薬物の投与設計を行えばよいのでしょうか?
A 腎不全では、水溶性薬物や水溶性の代謝物が蓄積しますので、腎機能に応じた適切な減量が必要になります。一般的に、薬物の腎クリアランスの変化はクレアチニンクリアランスCLCrの変化に比例することが認められています。このことは前述のように糸球体濾過値GFRが糸球体だけでなく腎臓全体の機能を表すことを意味しています。このことを利用したGlusti and Hayton法によって(1)消失半減期t2/1の延長の程度(あるいは消失速度定数Kelの低下の程度)によって投与間隔を設定することができます。あるいは(2)当該薬物の腎排泄の寄与率(薬物の尿中未変化体排泄率、あるいは総クリアランスにおける腎クリアランスの割合)と患者の腎機能(CLCr)から腎障害の程度に応じた至適投与量、あるいは至適投与間隔の設定をすることができます。」
(68頁)
10 甲52
甲52-ア
「閉経後骨粗鬆症女性におけるテリパラチド投与中止後の持続的な椎体骨折リスクの低下」
(2024頁表題)
甲52-イ
「方法:この試験は、閉経後骨粗鬆症女性に平均18か月間テリパラチド(20または40μg)を1日1回投与した無作為化プラセボ対照試験、骨折抑制試験(FPT)のフォローアップ試験である。FPT終了時に残っていた女性の90%以上がフォローアップ試験を継続した(n=1262)。」
(2024頁要旨6行~12行)
甲52-ウ
「
[図:0001415602000020.jpg]
図3 テリパラチド(遺伝子組換えヒト副甲状腺ホルモン)治療中および治療後の腰椎の骨密度(BMD)変化。・・・骨粗鬆症治療薬を全く使用しなかった女性(C)。EPは骨折抑制試験の終了時点を示す。アスタリスクはP<.001、エラーバーは標準偏差を表す。」
BMD Change From Baseline、%:ベースラインからのBMDの変化、%
mo:monthの略であり月
Teriparatide Group:テリパラチド群
Placebo Group:プラセボ群
(732頁表3)
11 甲60
甲60-ア
「NIHコンセンサス会議では、骨粗鬆症の定義を「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患・・・」に修正した。さらに、「骨強度」は骨密度と骨質の二つの要因からなり、BMDは骨強度のほぼ70%を説明するとした。残りの30%の説明要因を“骨質”という用語に集約し、その内容には、構造、骨代謝回転、微細損傷の集積、骨組織のミネラル化などをあげた。」
(2頁右欄27行~36行)
第8 乙号証の記載事項
被請求人が提出した乙号証には、以下の記載がある。外国語で記載された乙号証については、当審合議体による日本語訳文で摘記する。
なお、文中に挿入されている参照文献番号は、特に必要のない限り省略する。
1 乙1
乙1-ア
「d.活性測定
i)バイオアッセイ
1)in vitro法:一般にin vivoによる測定法より感度、再現性が高い。
(1)ラットアデニルシクラーゼ法2)3):PTHによるラットの腎皮質のアデニルシクラーゼの活性化を32Pで標識したATPを用いて測定。」
(1349頁右欄1行~7行)
乙1-イ
「1)・・・
2)R.Marcus、G.D.Aurbach、Endocrinology、85、801(1969)
3)・・・」
(1349頁下欄の引用文献の箇所)
2 乙13
乙13-ア
「
[図:0001415602000021.jpg]
」
(81頁表2)
第9 引用文献の記載事項
引用文献には、次の事項が記載されている。
なお、文中に挿入されている参照文献番号は、特に必要のない限り省略する。
1 引用文献1
引用文献1-ア
「骨量測定方法の進歩と普及を背景に、1991年の国際骨粗鬆症会議において、骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の破綻によって特徴づけられる疾患であり、骨の脆弱性亢進と骨折危険率の増大に結びつく疾患と定義された。この定義に従った診断基準がわが国でも整備され、1996年の日本骨代謝学会診断基準をもとに、2000年に改訂版が作成されて今日に至っている(表21)。」
(31頁左欄3行~10行)
引用文献1-イ
「表21 原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)
低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず、骨評価の結果が下記の条件を満たす場合、原発性骨粗鬆症と診断する。
[図:0001415602000022.jpg]
」
(31頁)
引用文献1-ウ
「III骨粗鬆症による骨折の危険因子
・・・
骨折の危険因子は、「骨密度低下」「骨質低下」「外力(転倒など)」に影響を与える因子である。骨折高リスク者を判定するには、骨密度測定に加えて、「骨質」「外力」に関連する危険因子を評価する必要があり、骨密度とは独立した骨折危険因子が何であるかを知っておくことがポイントとなる。
年齢、性・・・
低骨密度・・・
骨折既往・・・
・・・」
(34頁)
引用文献1-エ
「表22 骨折の危険因子・・・(メタアナリシス、システマティック・レビューによる結果〔エビデンスレベルI〕のみ表示)
[図:0001415602000023.jpg]
」
(35頁)
引用文献1-オ
「現在、骨粗鬆症治療開始は骨密度を基準に行われているが、同じ骨密度を示していても年齢が高いほど、表22の危険因子*をもつほど、骨折リスクは高くなる。骨密度、年齢、危険因子を総合的に考慮に入れることで、骨折リスクの高い人をより効果的に判別できる。」(35頁)
引用文献1-カ
「表30 骨粗鬆症治療についての基本的な考え方
1.骨粗鬆症治療は骨折危険性を抑制し、QOLの維持改善をはかることを目的とする。
2.脆弱性骨折予防のための薬物治療開始基準は、骨粗鬆症診断基準とは別 に定める。
3.わが国では骨折危険因子として、低骨密度、既存骨折、年齢に関するエビデンスがあり、WHOのメタアナリシスでは過度のアルコール摂取(1日2単位以上)、現在の喫煙、大腿骨頸部骨折の家族歴が確定している。
4.骨粗鬆症の薬物治療開始は上記の骨折危険因子を考慮して決定する。」
(53頁)
引用文献1-キ
「■副甲状腺ホルモン(PTH)
ヒトPTH(1-34)(テリパラチド)
皮下注射剤骨形成促進薬としての効果が期待されているPTHは、海外において大規模臨床試験が実施され、すでに米国をはじめとする多くの国で認可されている。閉経後5年以上を経過し椎体骨折を有する骨粗鬆症患者を対象とした大規模臨床試験では、20μgのヒトPTH(1-34)の平均18ヵ月にわたる連日自己皮下注射により新規椎体骨折の発生を対照群の14%から5%へと1/3近く低下させた。」
(99頁)
2 引用文献2
引用文献2-ア
「3)投与期間の上限
・・・それまでに実施した臨床試験における投与期間を基に設定することとし、米国及び欧州では投与期間の上限を24ヵ月間として承認されている。国内においては、GHDB試験での18ヵ月間のデータより安全性が確認されることを前提に、投与期間の上限を18ヵ月間として承認申請を行い、その後18ヵ月時点のデータを提出した。なお、国内GHDB試験において24ヵ月間投与の使用経験を得るため、投与期間を24ヵ月間に延長して2009年9月に終了した。」
(96頁)
引用文献2-イ
「
[図:0001415602000024.jpg]
」
(98頁表50)
引用文献2-ウ
「
[図:0001415602000025.jpg]
」
(98頁表51)
第10 当審の判断
事案に鑑み、無効理由4(進歩性欠如)から、判断する。
1 無効理由4(進歩性欠如)について
(1) 優先権について
ア 本件特許は、
(i)平成21年9月9日に優先権の基礎となる特許出願(特願2009-208039号(甲1))(以下「本件基礎出願」という。)がされ、
(ii)平成22年9月8日に本件基礎出願に基づく優先権を主張した国際特許出願(PCT/JP2010/065379)(以下「本件国際出願」という。)がされ、
(iii)本件国際出願が日本国に国内移行がされたもの(特願2011-530844号)の一部を平成27年5月25日に新たな特許出願としたものについて、特許権の設定登録がなされたものであり、
(iv)本件特許に係る出願は、適法に分割された出願であると認められるから、本件特許に係る出願の出願日は、本件国際出願の国際出願日である平成22年9月8日とみなされる。
イ 本件第3訂正発明は、上記第3に記載のとおり、1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、骨粗鬆症治療ないし予防剤であって、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とし、48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間投与される、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者の骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤の発明である。
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である。
ウ しかしながら、本件基礎出願の特許請求の範囲及び明細書には、「1回当たり200単位」のヒトPTH(1-34)の投与について、わずかに以下に示す記載があるだけで、具体的な実施例の記載などは全くない(同明細書に記載の唯一の実施例である「(実施例1)」は、5単位、100単位の投与結果を示すものである)。
「【請求項1】
カルシウム剤と併用され、かつ、1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤。
・・・
【請求項8】
カルシウム剤と併用され、かつ、1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤。」
「【0014】
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
〔1〕カルシウム剤と併用され、かつ、1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤。
・・・
〔8〕カルシウム剤と併用され、かつ、1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤。」
「【0018】
本発明は、カルシウム(カルシウム剤)併用下で1回当たり100~200単位のPTHが週1回(以下、「週1回」を「隔週」と称することもある。)投与されることを特徴とする、PTHによる骨粗鬆症治療方法又は骨折抑制ないし予防方法を提供する。また、本発明は、カルシウム併用下で1回当たり100~200単位のPTHが隔週投与されることを特徴とする、PTHを有効成分とする骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制ないし予防剤を提供する。さらに、本発明は、前記骨粗鬆症治療剤又は前記骨折抑制ないし予防剤の製造のためのPTHの使用を提供する。」
「【0032】
従って、本発明は、その投与量として、1回当たり100~200単位であることを特徴の一つとする。ここでPTHの1単位量は、自体公知の活性測定方法により測定可能である(非特許文献9)。投与量として、好ましく1回当たり100又は200単位、最も好ましく1回当たり200単位が例示される。」
「【0045】
また、好ましくは、本剤は、骨粗鬆症治療剤及び骨折抑制/予防剤として、1回当たり100~200単位のヒトPTH(1-34)をカルシウムと併用して隔週で投与すべき旨を記載したパッケージに収容されるか、そのような旨を記載した添付文書とともにパッケージに収容された薬剤とすることができる。」
エ このように、本件基礎出願の特許請求の範囲及び明細書には、「1回当たり200単位」のヒトPTH(1-34)を本件第3訂正発明における(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に対し投与することについて、試験条件や試験結果について、何ら具体的な記載がなされていない。
本件明細書における投与量「1回当たり200単位」についての試験の記載(【0098】~【0134】、図2~5に係る「(実施例2)」の記載)は、本件基礎出願に基づく優先権を主張した本件国際出願の明細書において、初めて記載されたものである(甲2)。
したがって、「1回当たり200単位」の投与に係る本件第3訂正発明の構成については、本件基礎出願に基づく優先権主張の利益を享受することはできず、本件第3訂正発明の特許要件の判断の基準日は、上記「(実施例2)」の1回当たり200単位に係る試験結果が明細書に初めて記載された、本件国際出願の国際出願日である、平成22年9月8日(以下「本件基準日」という。)となる。
(2) 甲7に記載された発明
取消判決において認定されたとおり、甲7の記載によると、一次審決が認定するとおりの甲7発明を認定することができ、当該甲7発明における「厚生省による委員会定める「退行性骨粗鬆症の診断基準(1989年)」である(以下、厚生省シルバーサイエンス骨粗鬆症研究班の定める「退行性骨粗鬆症の診断基準(1989年)」を、「厚生省1989年診断基準」という。)。
(甲7発明)
「hPTH(1-34)の200単位を毎週皮下注射する、hPTH(1-34)を有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤であって、厚生省1989年診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上の場合の患者であって、2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している患者は除外された患者に投与される、骨粗鬆症治療剤。」
(3) 本件第3訂正発明1について
ア 対比
本件第3訂正発明1と甲7発明とを対比する。
甲7発明の「hPTH(1-34)の200単位を毎週皮下注射する、hPTH(1-34)を有効成分として含有する」は、本件第3訂正発明1にいう「1回当たり200単位のヒトPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、ヒトPTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、」に相当し、甲7発明の「骨粗鬆症治療剤」は、本件第3訂正発明1の「骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」に相当する。
また、甲7発明の「厚生省1989年診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上の場合の患者であって、2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している患者は除外された患者」も、また、本件第3訂正発明1の
「下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である。」
も、いずれも、骨粗鬆症患者のうちの「特定の骨粗鬆症患者」であることに変わりはない。
したがって、両者は、
「1回当たり200単位のヒトPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、ヒトPTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、骨粗鬆症治療ないし予防剤であって、特定の骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とする、骨粗鬆症治療剤ないし予防剤。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1
特定の骨粗鬆症患者が、
本件第3訂正発明1では
「下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である。」
であるのに対し、
甲7発明では、
「厚生省1989年診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上の場合の患者であって、2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している患者は除外された患者」
である点。
・相違点2
本件第3訂正発明1では、骨粗鬆症治療剤ないし予防剤が、「48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間投与される、」「(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者の骨折抑制のためのものである」ことが特定されているのに対し、甲7発明では、そのような特定がない点。
イ 相違点1について
(ア) 本件第3訂正発明1における(1)~(4)の条件の技術的意義
a 本件明細書には、本件第3訂正発明が、従来の骨粗鬆症薬であるPTHについて、安全性が高くかつ効能・効果の面で優れた骨粗鬆症治療ないし予防方法を提供すること及び安全性の高い骨折抑制ないし予防方法を提供することを課題とすること(【0012】)、骨粗鬆症における骨折の危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者に対して本件第3訂正発明の骨粗鬆症治療剤ないし予防剤を投与することが望ましいこと及び骨粗鬆症における骨折の危険因子としては、年齢、性、低骨密度、骨折既往、喫煙、アルコール飲酒、ステロイド使用、骨折家族歴、運動、転倒に関連する因子、骨代謝マーカー、体重、カルシウム摂取等が挙げられることが記載され、その上で、「下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者(ないし対象者)を「高リスク患者」として定義する。
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」と記載され、上記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者が「高リスク患者」として定義されている(【0068】)。
また、本件明細書には、骨粗鬆症及び腎障害は加齢とともにその有病率が上昇するから、腎障害を有する骨粗鬆症患者に対して有効かつ安全な薬剤を提供することが重要であること(【0064】)、クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minは、中等度腎機能障害と判断できること(【0066】)、クレアチニンクリアランスが50以上80未満ml/minは、軽度腎機能障害と判断できることが記載されている。
そして、実施例1においては、上記(1)~(3)の全ての条件を満たす高リスク患者について、PTHの週1回100単位投与群は同5単位投与群に比べ、有意に高い骨密度の増加、有意に低い新規椎体骨折発生及び有意に低い椎体以外の骨折発生が認められたこと、実施例2においては、上記(1)~(3)の全ての条件を満たす高リスク患者について、PTHの週1回200単位投与群は対照薬(プラセボ)投与群に比べ、新規椎体多発骨折及び増悪骨折の抑制効果が認められ、血清カルシウムに関する安全性及び副作用発現率に関する安全性が、腎機能正常の骨粗鬆症患者群と軽度及び中等度の腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群で同等であったことが記載されている。
b 上記aによれば、本件第3訂正発明1における(1)~(3)の条件は、骨折の危険性の高まった骨粗鬆症において、骨折の危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者に対して治療剤ないし予防剤を投与することが望ましいとの認識の下、当該危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者を特定する条件として設定されたものといえる。これに対し、本件第3訂正発明1における(4)の条件は、腎障害を有する骨粗鬆症患者に対しても有効かつ安全な薬剤を提供することは重要であるとの認識の下、腎機能障害が軽度又は中等度であっても腎機能正常者と安全性が同等であるとの知見を踏まえ、設定されたものであると認められる。他方で、実施例2においても、上記【0068】に定義される(1)~(3)の全ての条件を満たし、軽度及び中等度の腎機能障害者を有する患者に対して、新規椎体骨折抑制効果及び骨密度増加効果が奏されるとの記載はあるが(本件明細書【0126】、【表25】、【0127】、【表26】)、本件第3訂正発明1における(4)の条件を加えたことによって骨折抑制効果が奏されるとの記載はない。したがって、本件第3訂正発明1における(1)~(3)の全ての条件と本件第3訂正発明1における(4)の条件とはその目的を異にする独立の条件であると理解できる。
(イ) 本件基準日(平成22年9月8日)における骨粗鬆症に関する技術常識について
取消判決が、無効理由3についての判断の前提として認定したとおり、本件基準日において、(i)骨粗鬆症は、骨強度の低下を特徴とし、骨折の危険性が増大した骨疾患であり、その治療の目的は、骨折を予防し、QOLの維持改善を図ることである(引用文献1)、(ii)骨粗鬆症は、加齢とともに発生が増加する(引用文献1)、(iii)骨粗鬆症による骨折の複数の危険因子の中で、わが国では、低骨密度、既存骨折、年齢に関するエビデンスがある(引用文献1)、(iv)骨粗鬆症の診断基準に関して、1990年当時、厚生省シルバーサイエンスプロジェクト「老人性骨粗鬆症の予防および治療に関する総合的研究班」により提唱された診断基準(1989年診断基準。甲8、乙13)があったが、1996年に診断基準が整備され(甲9、35。以下、この診断基準を「1996年診断基準」という。)、その後、2000年に改訂版が作成された(引用文献1)。(以下、この基準を「2000年診断基準」という。)、(v)骨強度は骨密度と骨質の2つの要因からなり、骨密度が骨強度のほぼ70%を、骨質が残りの30%を説明することが当時の技術常識であったことが認められる。
(ウ) 本件第3訂正発明1における(1)~(3)の条件について
a 本件第3訂正発明1と甲7発明とは、「1回当たり200単位のヒトPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする」との用量の点において一致するが、その投与の対象となる骨粗鬆症患者の範囲を異にする。
b 甲7発明で投与対象とされた患者は、前記(2)のとおり、1989年診断基準で骨粗鬆症と診断された患者であるところ、甲7発明に接した当業者が、甲7発明のPTH200単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する対象患者を選択するのであれば、より新しい基準を参酌しながらその患者を選別することは、当業者がごく普通に行うことであるから、1989年診断基準とともに、より新しい、1996年診断基準又は2000年診断基準を参酌するといえる。
そして、1996年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は、(i)骨萎縮度I度以上又は骨密度値がYAMの80%以下の低骨量で非外傷性椎体骨折を有する者か、(ii)X線上椎体骨折を認めないが、骨萎縮度II度以上、又は、骨密度値がYAMの70%未満である者であり、2000年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は、(iii)骨萎縮度II度以上又は骨密度がYAMの80%未満の低骨量で、軽微な外力による非外傷性椎体骨折等(脆弱性骨折)を有する者か、(iv)脆弱性骨折がないものの、骨萎縮度II度以上、又は、骨密度値がYAMの70%未満の者である(甲9及び引用文献1)。
本件第3訂正発明1における(2)の条件及び本件第3訂正発明1における(3)の条件は、上記(i)と同じであるから(既存の骨折」は「非外傷性骨折」を含む。)、当業者が甲7発明の200単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する骨粗鬆症患者を本件第3訂正発明1における(2)の条件及び本件第3訂正発明1における(3)の条件で選別するのには何ら困難を要しない。
また、前記(ア)のとおり、骨粗鬆症は、加齢とともに発生が増加するとの技術常識があり、高齢者は加齢を重ねた者であるのは明らかであるところ、高齢者として65歳以上の者を選択するのは常識的なことである。したがって、これらを参酌し、骨粗鬆症による骨折の複数の危険因子として、低骨密度及び既存骨折に並んで年齢が掲げられていることに着目して投与する骨粗鬆症患者を65歳以上として、本件第3訂正発明1における(2)の条件及び本件第3訂正発明1における(3)の条件に加えて本件第3訂正発明1における(1)の条件のように設定することはごく自然な選択であって、何ら困難を要しない。
そうすると、甲7発明に接した当業者が、投与対象患者を、本件第3訂正発明1における(1)~(3)の全ての条件を満たす患者と特定することは、当業者に格別の困難を要することではない。
(エ)本件第3訂正発明1における(4)の条件について
a 甲7発明は、腎機能障害者の中から重症の者を投与対象から除外しているところ、甲7には、腎機能障害を有する者のみを組み入れたとの記載はなく、また、腎機能障害を有する者のみが骨粗鬆症に罹患するとの技術常識もないから、甲7における試験は、腎機能正常の骨粗鬆症患者も対象とするものであり、甲7に接した当業者は、甲7発明の骨粗鬆症治療薬は、腎機能正常の骨粗鬆症患者にも有効であると理解するといえる。
b ここで、クレアチニンクリアランスは、糸球体濾過値を、クレアチニンをマーカーとして測定したものである(甲44)。また、販売名 フォルテオ皮下注カート600μg、同皮下注キット600μgの審査結果報告書においては、腎機能障害の程度を、クレアチニンクリアランスを指標として、この値に沿って、「80以上」、「50以上80未満」、「30以上50未満」及び「30未満」と区分している(引用文献2-イ、ウ)。
そうすると、甲7発明の投与対象患者の中から、腎機能障害の程度をクレアチニンクリアランスの値で表して、「クレアチニンクリアランスが80ml/min以上」の者を「正常者」としてその投与対象とすることは、当業者であれば何ら困難を要しないものである。
c 以上のとおりであるから、甲7発明の骨粗鬆症治療剤の投与対象患者を、本件第3訂正発明1における(4)の条件を満たす者とすることは、当業者にとって格別困難を要することとはいえない。
ウ 相違点2について
(ア) 本件基準日(平成22年9月8日)時点のPTH製剤の投与期間に関する技術常識等について
取消判決が認定したとおり、本件基準日時点のPTH製剤の投与期間に関する技術常識として、(i)海外では既に投与期間の上限を24か月とするPTH20μg連日投与の製剤が認可されていたこと、(ii)PTH20μg又は40μg18か月間以上の連日投与により骨密度の増加と新規椎体骨折の発生の抑制を得られること、(iii)甲19の試験では、1年間のテリパラチド20μg連日投与後、2年目もテリパラチドの投与を続けた群(305例)では、2年目も腰椎骨密度の上昇が継続したのに対し、2年目にテリパラチドの投与をやめて、ラロキシフェン投与に切り替えた群(100例)では腰椎骨密度の変化はなく、2年目に積極的な治療を行わないでカルシウムとビタミンDの補充のみに切り替えた群(102例)では腰椎骨密度が減少したこと(726頁要旨欄、729頁右欄10行ないし730頁右欄7行目、731頁図3A、732頁右欄1行ないし733頁左欄4行目、733頁表2、734頁40ないし52行目)、(iv)甲20の試験では、2年間のテリパラチド20μg連日投与により、腰椎骨密度が継続して上昇したこと(1595頁図2)、(v)甲52の試験では、テリパラチド20μg連日投与又は40μg連日投与を18か月で終了すると、その6か月後、18か月後に骨密度が下降していったこと(2028頁図3C)が技術常識として当業者に知られていたものと認められる。
(イ) 「48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間」投与されることの技術的意義
本件第3訂正発明1は、投与期間を「48週を超過して72週以上までの間」とするものであるところ、これは、「までの間」として一定の期間内における投与を規定し、その始期(投与自体の開始は0週からである。)を「48週を超過」と、同終期を「72週以上」とするものと理解できる。
そして、本件明細書には、骨折発生を主要評価項目とした二重盲検比較臨床試験において、その効果が24週後又は26週後という早期から発現し、投与後48週を超えてからの新規椎体骨折は認められなかったことが記載された上で、投与期間として、24週以上、26週以上、48週以上、52週以上、72週以上や78週以上が例示され、最も好ましいものを78週以上としている(【0032】)。
また、実施例2として、本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)に対して、被験薬(PTH200単位)又は対照薬(プラセボ)を、72週間にわたり週に1回の頻度で間欠的に皮下投与したところ(【0098】)、半年毎の新規椎体骨折発生率は、対照薬投与群では、24週以下、24週を超えて48週以下、48週を超えて72週以下のいずれの区間でも約5%でほぼ一定であったが、被験薬投与群では、投与期間が長くなるにつれて区間ごとの発生率が低下しており、48週を超えてからの新規椎体骨折の発生はなかったこと(【0131】、【0132】、【表34】、【表35】)、カプラン-マイヤー推定法による72週後の椎体骨折(新規及び増悪)発生率が、被験薬投与群で3.5%、対照薬投与群で16.3%であること(【0133】)が記載されている。
これらの記載によると、本件第3訂正発明1は、遅くても48週を超えてからの新規椎体骨折の発生はなかったことを踏まえて、始期を「48週を超過」とし、試験期間が72週であったことを踏まえて、少なくとも72週までの継続した投与を要するとの趣旨で終期を「72週以上」(72週が含まれる。)としたものと理解される。
本件明細書には、上記のほかに「48週」なる数値の技術的意義についての記載はないが、【表34】において、48週を超えて72週までの間に骨折発生がなかったということは、24週を超えて48週以下までの間に発生した最後の骨折以降に更なる骨折発生がなかったことを意味し、しかも、その骨折発生時期は不明であるものの、24週という相当長期の間に発生した骨折例数はわずか2例であること(本件明細書【表35】)に鑑みると、単に新規椎体骨折発生の有無にだけ着目するならば、その効果は24週を超えて48週以下の区間で既に奏していたとの評価もできる。また、72週を超える期間での骨折発生率は、本件明細書上不明である。
また、本件第3訂正発明1は、投与対象とする骨粗鬆症患者を「48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者」とするものであるところ、本件明細書には、上記実施例2の結果として、24週後、48週後、72週後及び最終時の腰椎骨密度変化率が、骨粗鬆症患者の腎機能によって、クレアチニンクリアランスが80以上である腎機能正常者、クレアチニンクリアランスが50以上80未満である軽度腎機能障害者、クレアチニンクリアランスが50未満である中等度腎機能障害者に分けて示され、腎機能正常の骨粗鬆症患者では、48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)として、平均5.4、標準偏差3.7の数値が示されるとともに、「腎機能正常の骨粗鬆症患者、軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬が腰椎骨密度増加効果を有することが明らかとなった。」との記載がある(【0127】、【表26】)ほかは、腰椎骨密度ないしその増加率についての記載はない。そして、本件明細書には、他に腎機能正常の骨粗鬆症患者において、骨粗鬆症治療剤の投与対象を、48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲である患者に限定することの技術的意義についての記載は見当らない。
そうすると、本件第3訂正発明の1における「48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間」投与されるとの特定は、単にPTHが48週投与された時点で、腰椎骨密度が増加した患者に対して、72週以上継続して投与されることを、実施例2において、腎機能正常の骨粗鬆症患者で得られた骨密度増加率の平均値及び標準偏差に基づき、表現したものであると認められる。
以上からすると、「48週を超過して72週以上までの間」、及び、「48週投与時点」の腰椎骨密度変化率(%)が「平均5.4、標準偏差3.7の範囲」のいずれの数値範囲についても、臨界的意義を認めることは困難であり、本件第3訂正発明1の「48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間」投与されるとの限定には格別の技術的意義を見いだすことができず、単に、適宜の区間についてPTHの投与継続につれて腰椎骨密度が増加し、骨折発生率が低下していることを示すためだけのものにすぎないと認められる。
(ウ) 相違点2の容易想到性について
上記(ア)のとおり、本件基準日において、連日投与のPTH製剤に関し、48週を超えた投与により骨密度が上昇し、骨折発生が減少することが知られていた。
一方、甲7発明は、PTH200単位週1回投与により、48週までの間、腰椎BMDが継続的に増加し、48週後には8.1%有意に増加し(甲7の296頁左欄1行~右欄7行)、さらに、PTH200単位投与群であるH群では48週の投与期間中に椎体骨折が発生しなかったものである(甲7の300頁左欄11行~右欄6行)。そして、前記イ(イ)記載の技術常識によると、当業者であれば、そのような骨密度の増大は骨折の予防に寄与すると理解するといえるところ、甲7の試験は、48週までの投与についてのものであるが、その増加率に逓減傾向があるとしても、腰椎BMDが継続的に増加していることが見て取れ(甲7の図1)、48週を超えると、これが減少に転じるとする根拠は見当たらない。
また、腰椎骨密度の測定は、骨粗鬆症の診療において日常的に行われ(甲8、甲9)、治療効果を知るための指標の一つとされているのであって、骨粗鬆症治療剤を投与されている骨粗鬆症患者の骨密度増加作用を確認すべく、48週投与時点の腰椎骨密度を測定して腰椎骨密度変化率の平均値及び標準偏差を特定することは、当業者であれば、何ら困難を要しないことである。
以上からすると、連日投与のPTHに関して、48週を超えて、18か月間(76週)以上の投与がされ、それによる骨密度の上昇及び椎体骨折発生の減少が報告されていたことを踏まえ、甲7発明の骨粗鬆症治療剤においても、骨密度の上昇と新規椎体骨折の抑制のために48週を超過して72週以上までの間投与するようにすること及び48週投与時点の腰椎骨密度を測定することにより得られた腰椎骨密度変化率を本件第3訂正発明1におけるように特定することは、当業者として容易に想到することといえ、これにより本件第3訂正発明1に至るものといえる。
エ 効果について
本件第3訂正発明1の構成に基づく骨折抑制効果(【0126】)についてみると、甲7には、骨密度の増加が骨折予防に寄与することが記載され(296頁右欄10行~297頁左欄25行)、その上で、甲7発明が48週で骨密度を8.1%増大させたことが開示されている(300頁左欄11行~右欄6行)。そして、前記イ(イ)のとおり、骨粗鬆症は、骨強度の低下を特徴とし、骨折の危険性が増大した骨疾患で、骨粗鬆症の治療の目的は骨折を予防することであり、骨強度は骨密度と骨質の2つの要因からなり、骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとの技術常識があることから、当業者は、骨密度の増加は骨折の予防に寄与すると理解する。そうすると、甲7に接した当業者は、甲7発明が、骨折抑制効果を奏し、また、上記イ(エ)のとおり、クレアチニンクリアランスが80ml/min以上の骨粗鬆症患者にも有効であると理解するといえる。
したがって、本件第3訂正発明1の構成により奏される効果は、甲7発明から、当業者が予測する範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件第3訂正発明1は、甲7発明並びに甲7の記載及び本件基準日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件第3訂正発明2について
ア 対比
本件第3訂正発明2は、本件第3訂正発明1について、PTH(1-34)又はその塩がヒトPTH(1-34)酢酸塩であり、前記(2)の既存の骨折が既存の椎体骨折である、との特定事項によって、さらに限定して特定した発明である。
本件第3訂正発明2と甲7発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は、上記(3)アの一致点並びに相違点1~2と同様の一致点及び相違点に加えて、以下の相違点3において相違する。
・相違点3
本件第3訂正発明2は、
PTH(1-34)又はその塩がヒトPTH(1-34)酢酸塩であり、既存の骨折が既存の椎体骨折である、と特定されているのに対し、甲7発明においては、当該事項は特定されていない点。
イ 相違点1~2について
上記(3)で本件第3訂正発明1について検討したとおり、甲7発明を相違点1~2に係る構成を備えるものとすることについては、甲7発明並びに甲7の記載及び本件基準日における技術常識に基づいて、当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点3について
甲7には、PTHがヒトPTH(1-34)酢酸塩であることが記載されているから(甲7-オ)、本件第3訂正発明2と甲7発明とは、相違点のうち、PTHがヒトPTH(1-34)酢酸塩であるかどうかにおいて実質的に相違するものではない。
また、1996年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は、(i)骨萎縮度I度以上又は骨密度値がYAMの80%以下の低骨量で非外傷性椎体骨折を有する者か、(ii)X線上椎体骨折を認めないが、骨萎縮度II度以上、又は、骨密度値がYAMの70%未満である者であり、2000年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は、(iii)骨萎縮度II度以上又は骨密度がYAMの80%未満の低骨量で、軽微な外力による非外傷性椎体骨折等(脆弱性骨折)を有する者か、(iv)脆弱性骨折がないものの、骨萎縮度II度以上、又は、骨密度値がYAMの70%未満の者である(甲9及び引用文献1)とされている。椎体骨折は、非外傷性椎体骨折を含むから、本件第3訂正発明2における(2)の条件は、上記(i)と同じである。そうすると、当業者が甲7発明の200単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する骨粗鬆症患者を、既存の骨折として椎体骨折があるとの条件で選別するのには何ら困難を要しない。
エ 効果について
上記(3)エのとおり、甲7に接した当業者は、甲7発明が、骨折抑制効果を奏し、また、上記(3)イ(エ)のとおり、クレアチニンクリアランスが80ml/min以上の骨粗鬆症患者にも有効であると理解するといえるから、本件第3訂正発明2の構成に基づく骨折抑制効果(【0126】)についても、甲7発明から、当業者が予測する範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件第3訂正発明2は、甲7発明並びに甲7の記載及び本件基準日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 無効理由4についてのまとめ
以上のとおり、本件第3訂正発明1及び2は、甲7発明並びに甲7の記載及び本件基準日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件第3訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
2 無効理由1(明確性要件)について
(1) 請求人の主張
請求人は、本件発明における投与量「200単位」に係るPTHの1単位量について、本件明細書の【0034】には、「ここでPTHの1単位量は、自体公知の活性測定方法により測定可能である(非特許文献9)」と記載されているが、同明細書の記載及び非特許文献9である甲4(本件明細書の【0011】参照)の記載を斟酌しても、上記「200単位」にかかるPTH1単位量は具体的な特定を欠いていて、当業者は、特許請求の範囲に記載された発明を明確に把握することができないから、本件発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨、主張する。
(2) 判断
本件明細書の【0034】に甲4(非特許文献9)を引用して記載されているPTHの単位の測定法は、同じく甲4を引用している生化学データブック(乙1)にも示されるような、PTHの生物活性の測定法としてごく一般的なラットアデニルシクラーゼ法である。具体的には、PTHによるラット腎皮質のアデニルシクラーゼ酵素の活性化を、32Pで標識したATP(AT32P)を用いて測定するものである(乙1-ア、乙1-イ)。
PTHは、ラット腎皮質の受容体に結合し、その受容体と連関するアデニルシクラーゼ酵素を活性化させ、そのアデニルシクラーゼ酵素の反応によってATPからcAMP(「3’5’AMP」、「cyclicAMP」とも表記される)へと変換する(甲3-ア)。ラットアデニルシクラーゼ法は、AT32Pを用い、酵素反応によって生成したcAM32P(cAMPのPが32P放射標識体であるもの)を定量することにより、PTHの生物活性を測定する方法である。甲4では、ラット腎皮質をホモジナイズ、精製等して得られたアデニルシクラーゼ酵素調製物(調製法については甲4-ア)とAT32Pを添加した酵素反応用液に、測定目的のPTH試料と、生物活性既知の標準品をそれぞれ添加し、両者のcAM32P産生量を比較することにより(測定方法については甲4-イ、酵素反応用の反応混合物の組成については甲4-ウ、酵素反応のインキュベーション条件と反応中止条件については甲4-エ、標準品については甲4-オ)、PTH試料の生物活性の結果を得ている。
したがって、PTH試料として、本件第3訂正発明1におけるヒトPTH(1-34)を用いたときにも、本件明細書で引用されている甲4記載の方法、もしくは同方法と同じ結果を再現できる同等の方法を用いることにより、200単位のヒトPTH(1-34)の量を当業者は特定できる。
したがって、本件第3訂正発明1及び2は明確であるから、請求人が主張する無効理由1には、理由がない。
3 無効理由2(実施可能要件)について
請求人は、上記無効理由1において述べた理由と同じ理由で、本件発明における「200単位」に係るPTH1単位量については、発明の詳細な説明の記載を考慮しても、その具体的な特定を欠いているため、当業者は、本件発明を実施することができない旨、主張する。
しかしながら、上記2の(2)において述べたとおり、「200単位のヒトPTH(1-34)」は当業者が明確に理解できるものであり、また、甲4記載の「MRC67/342」が入手できないようなことがあった場合にも、例えば「ヒトPTH注(東洋)」や「テリパラチド酢酸塩静注用100「旭化成」」を標準品として用いることにより、本件第3訂正発明1における200単位量のヒトPTH(1-34)を測定することができるものである。
したがって、当業者は、本件明細書の記載及び出願時の技術常識に基づき、本件第3訂正発明1及び2を実施することができるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件をみたすものであり、請求人が主張する無効理由2には、理由がない。
4 無効理由3(サポート要件)について
(1) 請求人の主張
請求人は、「本件特許発明1及び2は、1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤を「48週を超過して72週以上」にわたり投与する発明であるが、本件特許明細書には、上記骨粗鬆症治療ないし予防剤について、「72週を超えた」投与及びその効果につき何ら具体的な記載がなされていないから、72週を超えた投与の有効性及び安全性は、発明の詳細な説明に開示された内容から拡張ないし一般化できるものではなく、これは、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって、本件特許発明1及び2は、特許請求の範囲の記載が「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」に適合していないから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、これらの請求項に係る発明についての特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきである。」旨、主張する。
(2) 判断
本件第3訂正発明は、「1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、骨粗鬆症治療ないし予防剤であって、下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とし、48週投与時点の腰椎骨密度変化率(%)が平均5.4、標準偏差3.7の範囲の骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間投与される、骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤;
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが80ml/min以上である。」発明であり、その解決しようとする課題は、「上記条件(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に、1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)又はその塩(酢酸塩)を有効成分として含有する、48週を超過して72週以上までの間投与される、骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤を提供すること」と認められる。
この点確かに、本件明細書の実施例2に示される試験の投与期間は72週までであって、72週を超えた投与期間についての具体的な結果の記載はない。
しかしながら【表35】(【0131】)には、その新規椎体骨折発生率が、投与開始~24週まででは2.3%(6/261)であったものが、24~48週では0.9%(2/219)となり、48~72週では0%(0/206)となったことが示されており、投与期間の長期化に伴って新規椎体骨折発生の割合が下がり、かつ、48週を超過して72週までの間の投与においては新規椎体骨折発生率が0%となったことが認められる。そして本件明細書の【0132】においても、「PTH200群では、投与期間が長くなるにつれて区間毎の発生率が低下しており、48週を超えてからの新規椎体骨折の発生はなかった。また、PTH200群の新規椎体骨折発生率は、24週以内、24週~48週、48週~72週のいずれの区間でもP群より低く、プラセボに対する相対リスク減少率(Relative Risk Reduction;RRR)は投与を継続するにつれて増加した。・・・また、本剤による骨折抑制効果は、投与とともに増強する傾向が認められた。」との説明がなされている。ここで、PTH200群は本件第3訂正発明の骨粗鬆症治療剤を投与した群に相当し、P群はプラセボを投与した対照群である。
そうすると、上記【表35】の試験結果や【0132】の投与期間の長期化により骨折抑制効果が増強される旨の説明に基づくと、当業者は、本件第3訂正発明の骨粗鬆症治療剤を、72週を超えて投与したときにも、本件第3訂正発明の骨粗鬆症治療剤を、骨折抑制のために用いることができると理解すると認められる。
したがって、本件第3訂正発明1及び2は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであると認められ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであるから、請求人が主張する無効理由3には、理由がない。
第11 むすび
以上のとおりであるから、本件第3訂正請求は適法であり、本件特許の特許請求の範囲を、本件第3訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。そして、請求人が主張する無効理由4(進歩性欠如)には理由があり、本件第3訂正後の請求項1及び2に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-800065