特許異議申立
2018-700675
状況に基づく飛行モード選択
- 審判番号
- 2018-700675
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-526860
- 登録番号
- 特許第6278539号(P6278539)
- 請求日
- 2018年08月13日
- 審決日
- 2018年10月19日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エスゼット ディージェイアイ テクノロジー カンパニー リミテッド
- 【権利者代理人】龍華国際特許業務法人
- 【異議申立人】西村 竜平
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 篠原 将之
- 審判官 平岩 正一
- 分類
- P1651.121-Y (G05D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6278539号発明「状況に基づく飛行モード選択」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6278539号の請求項1ないし37に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の主な経緯
特許第6278539号の請求項1ないし37に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)9月5日を国際出願日とする出願であって、平成30年1月26日にその特許権の設定登録がされ、平成30年2月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年8月13日に特許異議申立人「西村 竜平」(以下単に「申立人」という。)は特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第6278539号の請求項1ないし37の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし37に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
無人航空機を制御するシステムであって、
前記無人航空機によって運ばれ、センサデータを供給する1つまたは複数のセンサと、
1つまたは複数のプロセッサであって、
前記センサデータに基づいて、環境に対する環境タイプを判断し、
前記環境タイプに基づいて複数の異なる飛行モードから飛行モードを選択し、前記複数の異なる飛行モードのそれぞれは、異なる作動規則のセットに関連付けられており、
前記選択された飛行モードの複数の作動規則の前記セットに適合しつつ、前記無人航空機を動作させ、
1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の障害物を検出する信号を受信する
1つまたは複数のプロセッサと
を備え、
前記複数の作動規則はそれぞれ、前記作動規則に対応する特定の前記環境タイプに対して構成され、前記障害物が検出された場合の、複数の互いに異なる障害物回避戦略のいずれかを定義しているシステム。
【請求項2】
前記環境タイプは、屋内環境、屋外環境、高空環境または低空環境のうち1または複数を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
複数の前記環境タイプは前記無人航空機の高度に基づいて区別される請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
複数の前記環境タイプは、無人航空機を囲む構造物の量に基づいて区別される請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
複数の前記環境タイプは、前記無人航空機を制御しているユーザからの前記無人航空機の距離に基づいて区別される請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つまたは複数のセンサは、GPSセンサ、慣性センサ、ビジョンセンサ、ライダセンサ、超音波センサ、気圧計または高度計、のうち1または複数を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つまたは複数のセンサはライダセンサを有するとともに、前記環境タイプは前記ライダセンサにより得られた飛行時間データに基づいて判断される請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つまたは複数のセンサはビジョンセンサを有するとともに、前記環境タイプは前記ビジョンセンサにより得られた画像データに基づいて判断される請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記1つまたは複数のセンサはビジョンセンサを有するとともに、前記環境タイプは前記ビジョンセンサにより得られた前記画像データに関連付けられた露出時間に基づいて判断される請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の異なる飛行モードは、屋内飛行モード、屋外飛行モード、高空飛行モード、低空飛行モード、完全自律飛行モード、半自律的飛行モードまたは手動飛行モード、のうちの1、2又は3以上を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
複数の作動規則の各々のセットは、前記1つまたは複数のセンサにより得られたデータを処理するための複数の処理規則を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数の処理規則は、前記1つまたは複数のセンサにより得られた前記データのセンサフュージョンを実行するのに使用される請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
複数の作動規則の各々のセットは、前記無人航空機の飛行を制御する複数の制御規則を有する請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
無人航空機を制御する方法であって、
前記無人航空機により運ばれる1つまたは複数のセンサからセンサデータを受信するステップ、
前記センサデータに基づいて、環境の環境タイプを判断するステップ、
前記環境タイプに基づいて、複数の異なる飛行モードから飛行モードを選択するステップであって、前記複数の異なる飛行モードは複数の作動規則の異なるセットに関連付づけられている、前記選択するステップ、
前記選択された飛行モードの複数の作動規則の前記セットに適合しつつ、前記無人航空機を動作させるステップ、
1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の障害物を検出する信号を受信するステップ
を含み、
前記複数の作動規則はそれぞれ、前記作動規則に対応する特定の前記環境タイプに対して構成され、前記障害物が検出された場合の、複数の互いに異なる障害物回避戦略のいずれかを定義している方法。
【請求項15】
無人航空機を制御するシステムであって、
前記無人航空機により運ばれる1つまたは複数のセンサと、
1つまたは複数のプロセッサであって、
複数の異なる飛行モードから飛行モードを選択し、前記異なる飛行モードのそれぞれは互いに異なる複数の障害物回避戦略のいずれかに関連付けられており、
前記無人航空機の所望の移動経路を示す信号を受信し、
前記1つまたは複数のセンサから前記所望の移動経路に沿ったまたは近くに位置された1つまたは複数の障害物を検出する信号を受信し、
前記障害物が検出された場合に、前記無人航空機が前記1つまたは複数の障害物と衝突するのを防ぐために、前記複数の障害物回避戦略のうち、前記選択された飛行モードに関連付けられた前記障害物回避戦略に基づいて、前記所望の移動経路を修正する
1つまたは複数のプロセッサと
を備えるシステム。
【請求項16】
前記複数の異なる飛行モードは、屋内飛行モード、屋外飛行モード、高空飛行モード、低空飛行モード、完全自律飛行モード、半自律的飛行モードまたは手動飛行モード、のうちの1、2又は3以上を有する請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記飛行モードは、前記1つまたは複数のセンサにより得られたセンサデータに基づいて選択される請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記センサデータは、前記無人航空機が位置する環境に関する環境情報を有する請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記センサデータは、前記無人航空機の状態に関する情報を有する請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記飛行モードは、ユーザ入力命令に基づいて選択される請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
複数の前記障害物回避戦略のうち少なくとも1つは、前記1つまたは複数の障害物から特定された距離の適切な位置で前記無人航空機をホバリングさせることを有する請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
複数の前記障害物回避戦略のうち少なくとも1つは、前記1つまたは複数の障害物の周りに前記無人航空機をナビゲートさせることを有する請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
前記所望の移動経路を示す前記信号は、前記無人航空機のユーザにより動作されたリモートコントローラから受信される請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
前記1つまたは複数のプロセッサは、前記1つまたは複数の障害物との潜在的な衝突を示す警告情報をユーザに送信するよう更に構成されている請求項15に記載のシステム。
【請求項25】
前記1つまたは複数のプロセッサは、前記修正された所望の移動経路に沿って前記無人航空機をナビゲートさせるよう更に構成され、これにより前記1つまたは複数の前記障害物を回避する請求項15に記載のシステム。
【請求項26】
前記無人航空機に対する前記1つまたは複数の障害物の空間的配置を図表表示するよう構成されたディスプレイユニットを更に備える請求項15に記載のシステム。
【請求項27】
無人航空機を制御する方法であって、
複数の異なる飛行モードから飛行モードを選択するステップであって、前記異なる飛行モードは互いに異なる複数の障害物回避戦略のいずれかに関連付けられている、前記選択するステップ、
前記無人航空機に対する所望の移動経路を示す信号を受信するステップ、
1つまたは複数のセンサを用いて、前記所望の移動経路に沿った1つまたは複数の障害物を検出すること、および、
前記障害物が検出された場合に、前記無人航空機が前記1つまたは複数の障害物に衝突するのを防ぐため、前記複数の障害物回避戦略のうち、前記選択された飛行モードに関連付けられた前記障害物回避戦略に基づいて前記所望の移動経路を変更すること
を含む方法。
【請求項28】
無人航空機を制御するシステムであって、
前記無人航空機によって運ばれる1つまたは複数のセンサと、
1つまたは複数のプロセッサであって、
前記1つまたは複数のセンサからのデータを用いて、前記無人航空機が第1環境タイプにいることを判断し、
前記第1環境タイプに基づいて異なる飛行モードから第1飛行モードを選択し、前記異なる飛行モードの各々は複数の作動規則の異なるセットに関連付けられており、
前記第1飛行モードの複数の作動規則の前記セットに適合しつつ前記無人航空機を動作させ、
前記1つまたは複数のセンサからのデータを用いて、前記無人航空機が第2環境タイプにいることを検出し、
前記第2環境タイプに基づいて前記異なる飛行モードから第2飛行モードを選択し、
前記第2飛行モードの複数の作動規則の前記セットに適合しつつ前記無人航空機を動作させ、
1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の障害物を検出する信号を受信する
1つまたは複数のプロセッサと
を備え、
前記第1環境タイプの前記複数の作動規則は、前記第1環境タイプに対して構成された、前記障害物が検出された場合の、障害物回避戦略を定義しており、
前記第2環境タイプの前記複数の作動規則は、前記第2環境タイプに対して構成され、前記障害物が検出された場合の、前記第1環境タイプとは異なる障害物回避戦略を定義しているシステム。
【請求項29】
前記第1および第2環境タイプのうち少なくとも1つは、屋内環境、屋外環境、高空環境または低空環境を有する請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1および第2環境タイプのうち少なくとも1つは、前記無人航空機の高度に基づいて区別される請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記第1および第2環境タイプのうち少なくとも1つは、前記無人航空機を囲む構造物の量に基づいて区別される請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1および第2環境タイプのうち少なくとも1つは、前記無人航空機を制御しているユーザからの前記無人航空機の距離に基づいて区別される請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記1つまたは複数のセンサはライダセンサを有するとともに、前記第1および第2環境タイプのうち少なくとも1つは前記ライダセンサにより得られた飛行時間データに基づいて判断される請求項28に記載のシステム。
【請求項34】
前記1つまたは複数のセンサはビジョンセンサを有するとともに、前記第1および第2環境タイプのうち少なくとも1つは前記ビジョンセンサにより得られた画像データに基づいて判断される請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記1つまたは複数のセンサはビジョンセンサを有するとともに、前記第1および第2環境タイプのうち少なくとも1つは前記ビジョンセンサにより得られた前記画像データに関連付けられた露出時間に基づいて判断される請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
複数の前記異なる飛行モードは、屋内飛行モード、屋外飛行モード、高空飛行モード、低空飛行モード、完全自律飛行モード、半自律的飛行モードまたは手動飛行モード、のうちの1、2又は3以上を有する請求項28に記載のシステム。
【請求項37】
無人航空機を制御する方法であって、
1つまたは複数のセンサを用いて、前記無人航空機が第1環境タイプにいることを判断すること、
前記第1環境タイプに基づいて異なる飛行モードから第1飛行モードを選択することであって、前記異なる飛行モードの各々は複数の作動規則の異なるセットが関連付られている、前記選択すること、
前記第1飛行モードの作動規則の第1のセットに適合しつつ前記無人航空機を動作させること、
前記1つまたは複数のセンサを用いて、前記無人航空機が第2環境タイプにいることを検出すること、
前記第2環境タイプに基づいて前記異なる飛行モードから第2飛行モードを選択すること、
前記第2飛行モードの作動規則の第2のセットに適合しつつ前記無人航空機を動作させることと、
1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の障害物を検出する信号を受信することを含み、
前記第1環境タイプの前記複数の作動規則は、前記第1環境タイプに対して構成された、前記障害物が検出された場合の、障害物回避戦略を定義しており、
前記第2環境タイプの前記複数の作動規則は、前記第2環境タイプに対して構成され、前記障害物が検出された場合の、前記第1環境タイプとは異なる障害物回避戦略を定義している方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として特開2011-150512号公報(甲第1号証。以下「甲1」という。)及び従たる証拠として特許第4852688号公報(甲第2号証。以下「甲2」という。)、塩入英明,外1名,「不確実情報下における航空機の衝突回避制御則」,日本航空宇宙学会論文集,2003年8月,第51巻,第595号,p.427-432(甲第3号証。以下「甲3」という。)、米国特許出願公開第2008/0059015号(甲第4号証。以下「甲4」という。)及び特開2004-130852号公報(甲第5号証。以下「甲5」という。)を提出し、以下の旨を主張している。
1.請求項1ないし9、11ないし15、17ないし35及び37に係る特許は、甲1に記載された発明及び甲2ないし4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、当該特許は取り消されるべきものである。
2.請求項10、16及び36に係る特許は、甲1に記載された発明、甲2ないし4に記載された技術的事項及び甲5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、当該特許は取り消されるべきものである。
第4 甲1ないし5の記載事項並びに甲1発明、甲2ないし4に記載された技術的事項及び甲5に記載された技術的事項
1.甲1
(1)甲1には図面と共に以下の事項が記載されている。
ア.段落0026
「図1~図6は、本発明の一実施例による無人移動体の制御方法を示しており、この無人移動体の制御方法は、図1に示すように、携帯型の遠隔操縦装置Aで、無人移動体Bの移動をコントロールするのに用いられるものとなっている。」
イ.段落0027
「この実施例において、無人移動体は、自律して走行可能な半自律走行車Bであり、図2及び図3に示すように、車両制御用コンピュータ10及びこの車両制御用コンピュータ10とLAN11を介して接続される自律走行用コンピュータ30によって制御されるようになっている。」
ウ.段落0031
「自律走行用コンピュータ30の入力側には、近距離情報取得に適したレーザセンサ(レーザレンジファインダ)31と、遠距離で且つ広角情報取得に適した自律走行用カメラ32,33が接続されており、この自律走行用コンピュータ30は、LAN11を介して、レーザセンサ31や自律走行用カメラ32,33で取得した測距データを遠隔操縦装置Aに送信する機能を有している。」
エ.段落0035
「半自律走行車Bに搭載された上記車両制御用コンピュータ10は、測距部であるレーザセンサ31や自律走行用カメラ32,33で取得した測距データや遠隔操縦装置Aからの指令に基づいて移動経路を計画する経路計画手段と、この移動経路に応じた移動速度を計画する速度計画手段と、計画した移動経路内の障害物を検出する障害物検出手段を有しており、これらの計画した移動経路及び移動速度に従って、モータドライバ21を介して操舵用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23を作動させる」
オ.段落0036
「上記車両制御用コンピュータ10において、例えば、半自律走行車Bの走行中に、遠隔操縦装置Aから新規のステアリング指令(新規操舵指令)及び速度指令を受信した際に、このステアリング指令に基づいて経路計画手段により作成される新規の移動経路上に障害物が有るか否かを障害物検出手段により判定し、新規の移動経路上に障害物が有ると判定した場合には、経路計画手段により新たに障害物回避経路を作成して、半自律走行車Bを安全に走行させるべく制御する」
カ.段落0053
「上記した実施例では、無人移動体が半自律走行車Bである場合を示したが、これに限定されるものではなく、無人移動体が自律歩行するロボットであったり、自律飛行する航空機であったりしてもよい。」
(2)上記(1)から甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「自律飛行する航空機(以下単に「航空機」という。)の制御システム又は方法であって、
航空機によって運ばれ、近距離情報取得に適したレーザセンサ31と、遠距離で且つ広角情報取得に適したカメラ32,33と、
制御用コンピュータ10であって、
レーザセンサ31及びカメラ32,33で取得した情報や遠隔操縦装置Aからの指令に基づいて移動経路を計画する経路計画手段と、この移動経路に応じた移動速度を計画する速度計画手段を有し、これらの計画した移動経路及び移動速度に従って、航空機を動作させ、計画した移動経路内の障害物を検出する障害物検出手段を有しており、
移動経路上に障害物が有ると判定した場合には、経路計画手段により新たに障害物回避経路を作成して、航空機を安全に航行させるべく制御する、システム又は方法。」
2.甲2
(1)甲2には図面と共に以下の事項が記載されている。
ア.請求項1
「乗物の移行路を計画する方法であって、
航空機の動力特性を表す第1の複数の制約条件を決定する工程と、
障害物に対する衝突を表す第2の複数の制約条件を決定する工程と、
脅威対象についての視認性を表す第3の複数の制約条件を決定する工程と、
混合整数線形計画法について、第1、第2及び第3の複数の制約条件を用いて、障害物及び脅威対象を含む環境下で、開始地点から目的地点までの乗物の軌道を生成する工程を有する方法。」
イ.段落0002
「本発明は、乗物を自動で制御する方法に関し、特に地形追随飛行用の航空機を自動で制御する方法に関する。」
(2)上記(1)から甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「地形追随飛行用の航空機の移行路を計画する方法であって、混合整数線形計画法について、障害物に対する衝突を表す制約条件を含む複数の制約条件を用いて、障害物及び脅威対象を含む環境下で、開始地点から目的地点までの前記航空機の軌道を生成する工程を有する方法。」
3.甲3
(1)甲3には図面と共に以下の事項が記載されている。
ア.p.427左コラム第2及び3行
「意思決定はさまざまな情報に基づいて行われ、このことは航空機の衝突回避問題においても同様である。」
イ.p.430右コラム第19行ないしp.431左コラム第12行
「3.2.3 結果 回避軌跡及び回避角速度をそれぞれ第12,13図に示す。実線は提案された不確実制御則、破線は従来型制御則の結果である。従来型制御則では、確定情報に基づく回避及び誤情報による目標の突然出現(情報なしに目標が出現)の2通りの回避を示している。回避軌跡(第12図)から、従来型制御則では誤情報時に回避開始時期の遅延が顕著なことが分かるが、これは目標を確認するまで回避しないためである。一方、不確実制御則ではIR(情報獲得要求値)の違いによって回避経路が異なっている。すなわち、IRは情報を得ようとする尺度と解釈できるため、IRが大きい程、目標へ近接する度合が高まり、初めから大きな回避をとることはない。このため、IR=0.9のとき、2段階の回避(第1段が情報に基づく回避及び情報獲得行動、第2段が目標視認後の回避)が顕著である。また、回避角速度(第13図)から、従来型制御則の誤情報時に生起する急激で激しい回避は、不確実性を導入することによって十分に改善されていることが分かる。」
(2)上記(1)から甲3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「航空機の衝突を回避する方法であって、
情報を得ようとする尺度IRを導入する不確実制御則を用いることにより、IRが大きい程、目標へ近接する度合が高まり、初めから大きな回避をとることはないため、従来型制御則の誤情報時に生起する、急激で激しい回避を改善する方法。」
4.甲4
(1)甲4には図面と共に以下の事項が記載されている。なお()内は当審による仮訳である。
ア.段落0018
「The present invention preferably encompasses systems, methods, and apparatuses that provide for autonomous high-speed navigation of terrain by an un-manned robot.」(本発明は、好ましくは、無人ロボットによる地形の自律的高速ナビゲーションを提供するシステム、方法、および装置を包含します。)
イ.段落0036
「Even though the pre-planned path is useful in predicting and enabling high-speed navigation, the robot will encounter circumstances in the field that cannot be anticipated by pre-planning. For example, obstacles may be encountered along the route, thus forcing the robot to deviate from the pre-planned path and speed to avoid them.」(あらかじめ計画された経路は、高速ナビゲーションの予測と有効化に役立ちますが、ロボットは現場で事前計画では予測できない状況に遭遇します。例えば、ロボットはルートに沿って障害物に遭遇するかも知れず、それ故に、障害物を避けるために、ロボットはあらかじめ計画された経路とスピードから逸れることを強制されます。)
ウ.段落0036
「The robot will be forced to alter the specific path that is followed during the navigation itself through the information obtained about the local environment during travel. While this information is integral to the success of the autonomous vehicle, the pre-planned route nonetheless provides the robot with valuable information.」(ロボットは、移動中にローカル環境について得られた情報を介して、ナビゲーション自体の間に続く特定の経路を変更するように強制されます。 この情報は自律車両の成功に不可欠ですが、あらかじめ計画されたルートにもかかわらず、貴重な情報がロボットに与えられます。)
エ.段落0039
「Various perception systems are preferably employed by the present invention to assess terrain drivability, detect the presence of roads (if applicable), and detect the presence of obstacles.」(本発明では、地形の運転性を評価し、道路の存在を検出し(該当する場合)、障害物の存在を検出するために、様々な知覚システムを使用することが好ましい。 )
(2)上記(1)から甲4には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「無人ロボットによる地形の自律的高速ナビゲーション方法であって、
無人ロボットは移動中に知覚システムを使用して、ローカル環境に障害物の存在を検出した場合に、あらかじめ計画された経路を変更する方法。」
5.甲5
(1)甲5には図面と共に以下の事項が記載されている。
ア.段落0001
「本発明は、無人ヘリコプタ、無人ヘリコプタの離陸方法及び無人ヘリコプタの着陸方法に関する。」
イ.段落0039
「無人ヘリコプタ20は、図1及び図2に示すように、地上からの制御指令や予め記憶された制御指令に基づいて機体のロータ等を駆動制御して自律飛行させる飛行制御装置21、GPS衛星からの信号を受信して機体の位置、速度、高度等を検出する機体側GPS受信機22、…(中略)…等を備えている。」
ウ.段落0041
「飛行制御装置21には、図1に示すように、機体側GPS受信機22、慣性センサ23、磁方位センサ24及び指令受信機26が接続されている。」
エ.段落0042
「機体側GPS受信機22は、GPSアンテナ22aを介してGPS衛星からの信号を受信して位置情報を算出する。」
オ.段落0068
「着陸制御プログラムでは、機体が降下して目標降下高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測された場合に、目標降下高度到達時点から着地時点まで、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を一時的に抑制する。」
(2)上記(1)から甲5には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「無人ヘリコプタ20の着陸方法であって、
無人ヘリコプタ20は、飛行制御装置21及び機体側GPS受信機22を備え、飛行制御装置21には、機体側GPS受信機22が接続されており、機体側GPS受信機22は、GPS衛星からの信号を受信して位置情報を算出するものであり、
無人ヘリコプタ20が目標降下高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測された場合に、目標降下高度到達時点から着地時点まで、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を一時的に抑制する、方法。」
第5 当審の判断
1.請求項1に係る発明について
(1)一致点及び相違点
請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「航空機」は本件発明の「無人航空機」に相当する。
以下同様に、甲1発明の「近距離情報」及び「遠距離で且つ広角情報」は本件発明の「センサデータ」に、甲1発明の「レーザセンサ31及びカメラ32,33」は本件発明の「センサ」に、甲1発明の「制御用コンピュータ10」は本件発明の「プロセッサ」に、甲1発明の「障害物」は本件発明の「障害物」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「計画した移動経路内の障害物を検出する障害物検出手段」は甲1発明の「1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の障害物を検出する信号を受信する」事項に相当する。
また、甲1発明の「障害物回避経路」と本件発明の「障害物回避戦略」は、検出された障害物を回避する点を限度として一致する。
すると、本件発明と甲1発明は、
「無人航空機を制御するシステムであって、
前記無人航空機によって運ばれ、センサデータを供給する1つまたは複数のセンサと、
1つまたは複数のセンサから1つまたは複数の障害物を検出する信号を受信する、1つまたは複数のプロセッサと
を備え、
前記障害物が検出された場合、障害物を回避するよう無人航空機を制御するシステム。」
の点では一致するものの、以下の相違点1及び2で互いに相違する。
ア.相違点1
本件発明は「前記センサデータに基づいて、環境に対する環境タイプを判断」するのに対し、甲1発明は、レーザセンサ31,自律走行用カメラ32,33で取得した情報に基づいて環境タイプを判断するものではない点。
イ.相違点2
本件発明は「前記環境タイプに基づいて複数の異なる飛行モードから飛行モードを選択し、前記複数の異なる飛行モードのそれぞれは、異なる作動規則のセットに関連付けられており、前記選択された飛行モードの複数の作動規則の前記セットに適合しつつ、前記無人航空機を動作させ」「前記複数の作動規則はそれぞれ、前記作動規則に対応する特定の前記環境タイプに対して構成され、前記障害物が検出された場合の、複数の互いに異なる障害物回避戦略のいずれかを定義している」のに対し、甲1発明は、複数の異なる飛行モード、複数の作動規則又は複数の互いに異なる障害物回避戦略を有しない点。
(2)相違点について
相違点1について検討すると、甲2ないし4には、センサのデータに基づいて、環境に対する環境タイプを判断する点は記載も示唆もされていない。
相違点2について検討すると、甲2ないし4には、複数の異なる飛行モードを有する点は記載も示唆もされておらず、そのため、当該飛行モードに関連づけられた複数の作動規則も記載も示唆もされていない。また、甲2ないし4には、障害物との衝突を回避する目的で航空機の経路を変更する点は記載されていると認められるものの、複数の異なる飛行モードの複数の作動規則が複数の互いに異なる障害物回避戦略を定義する点は記載も示唆もされていない。
よって、本件発明は、甲1発明及び甲2ないし4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
事案に鑑み、甲1発明と甲5に記載された技術的事項との組合せについても検討すると、甲5には、無人ヘリコプタ20が目標降下高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測された場合に、目標降下高度到達時点から着地時点まで、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を一時的に抑制する技術的事項が記載されているものの、甲5に記載された技術的事項は、機体側GPS受信機を備える無人ヘリコプタの着陸方法に係るものであるのに対して、甲1発明は、無人ヘリコプタであるか否か不明である上、機体側GPS受信機相当の部材を有しないから、甲1発明に対して、甲5に記載された技術的事項を適用する動機付けは存在しない。
また、甲5には、複数の互いに異なる障害物回避戦略を有する点は記載も示唆もされていないから、仮に、甲1発明に対して、甲5に記載された技術的事項を適用する動機付けが存在するとしても、それにより当業者が本件発明1が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明は、甲1発明及び甲5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は「(甲1の)段落0035には、『半自律走行車Bに搭載された上記車両制御用コンピュータ10は、測距部であるレーザセンサ31や自律走行用カメラ32,33で取得した測距データや遠隔操縦装置Aからの指令に基づいて移動経路を計画する』と記載されている。即ち、甲第1号証には、センサデータで検出される環境に応じて複数の異なる作動規則のセットが決められることが開示されている」と主張する(特許異議申立書の第28ページ第2ないし7行を参照。)。しかし、当該記載は、レーザセンサ31及びカメラ32,33で取得した情報や遠隔操縦装置Aからの指令に基づいて移動経路を計画することをいうものに過ぎず、レーザセンサ31及びカメラ32,33で取得した情報に基づいて、環境タイプを判断するものではないから、係る主張には理由がない。
2.請求項2ないし13に係る発明について
請求項2ないし13に係る発明は、本件発明に対して、更に請求項2ないし13に係る発明中で特定される技術的事項を各々付加したものであるから、「1.請求項1に係る発明について」の「(2)相違点について」に示す理由と同様の理由により、請求項2ないし13に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
3.請求項14に係る発明について
請求項14に係る発明は「前記センサデータに基づいて、環境の環境タイプを判断するステップ」、「前記環境タイプに基づいて、複数の異なる飛行モードから飛行モードを選択するステップであって、前記複数の異なる飛行モードは複数の作動規則の異なるセットに関連付づけられている、前記選択するステップ」及び「前記複数の作動規則はそれぞれ、前記作動規則に対応する特定の前記環境タイプに対して構成され、前記障害物が検出された場合の、複数の互いに異なる障害物回避戦略のいずれかを定義している」という事項を有しているから、「1.請求項1に係る発明について」の「(2)相違点について」に示す理由と同様の理由により、請求項14に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
4.請求項15に係る発明について
請求項15に係る発明と甲1発明を対比すると、請求項15に係る発明は「複数の異なる飛行モードから飛行モードを選択し、前記異なる飛行モードのそれぞれは互いに異なる複数の障害物回避戦略のいずれかに関連付けられて」いるのに対し、甲1発明は、複数の異なる飛行モード又は複数の互いに異なる障害物回避戦略を有しない点で、少なくとも両者は相違する。
「1.請求項1に係る発明について」の「(2)相違点について」に示したとおり、甲2ないし4には、複数の異なる飛行モードを有する点は記載も示唆もされていない。また、甲2ないし4には、障害物との衝突を回避する目的で航空機の経路を変更する点は記載されていると認められるものの、複数の互いに異なる障害物回避戦略を有する点は記載も示唆もされていない。また、甲5には、複数の互いに異なる障害物回避戦略を有する点は記載も示唆もされていない。
よって、請求項15に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
5.請求項16ないし26に係る発明について
請求項16ないし26に係る発明は、請求項15に係る発明に対して、更に請求項16ないし26に係る発明中で特定される技術的事項を各々付加したものであるから、「4.請求項15に係る発明について」に示す理由と同様の理由により、請求項16ないし26に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
6.請求項27に係る発明について
請求項27に係る発明は「複数の異なる飛行モードから飛行モードを選択するステップであって、前記異なる飛行モードは互いに異なる複数の障害物回避戦略のいずれかに関連付けられている、前記選択するステップ」という事項を有しているから、「4.請求項15に係る発明について」に示す理由と同様の理由により、請求項27に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
7.請求項28に係る発明について
請求項28に係る発明は「前記1つまたは複数のセンサからのデータを用いて、前記無人航空機が第1環境タイプにいることを判断し、」「前記1つまたは複数のセンサからのデータを用いて、前記無人航空機が第2環境タイプにいることを検出」するという事項を有しているから、「1.請求項1に係る発明について」の「(2)相違点について」に示す理由と同様の理由により、請求項28に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
8.請求項29ないし36に係る発明について
請求項29ないし36に係る発明は、請求項28に係る発明に対して、更に請求項29ないし36に係る発明中で特定される技術的事項を各々付加したものであるから、「7.請求項28に係る発明について」に示す理由と同様の理由により、請求項29ないし36に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
9.請求項37に係る発明について
請求項37に係る発明は「1つまたは複数のセンサを用いて、前記無人航空機が第1環境タイプにいることを判断する」という事項及び「前記1つまたは複数のセンサを用いて、前記無人航空機が第2環境タイプにいることを検出する」という事項を有しているから、「1.請求項1に係る発明について」の「(2)相違点について」に示す理由と同様の理由により、請求項37に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
以上のとおり、本件発明及び請求項2ないし37に係る発明は、甲1発明及び甲2ないし5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし37に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし37に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700675