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特許異議申立

2018-700617

ポリアミド樹脂組成物

審判番号
2018-700617
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-031803外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年07月25日
審決日
2019年01月30日
公報発行日
2019年03月29日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第113条、特許法第36条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6274232号発明「ポリアミド樹脂組成物」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6274232号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6274232号(請求項の数8。以下,「本件特許」という。)は,平成23年3月8日(優先権主張:平成22年3月8日(3件))を国際出願日とする特許出願(特願2012-504481号)の一部を,平成28年2月23日に新たな出願とした特許出願(特願2016-31803号)に係るものであって,平成30年1月19日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成30年2月7日である。)。 その後,平成30年7月25日に,本件特許の請求項1~8に係る特許に対して,特許異議申立人である山本龍郎(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は,以下のとおりである。 平成30年 7月25日 特許異議申立書 11月 2日 取消理由通知書 12月21日 意見書 第2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 ポリアミド樹脂(成分A),及びガラス(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物であって, 前記成分Aが,ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂であり, 前記成分Cが酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)であり, 前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中,前記成分Aが40~95重量%であり,前記成分C1が60~5重量%であり, スチレン系重合体(成分B1)及び変性ポリフェニレンエーテル(成分B2)を含まない, ポリアミド樹脂組成物。 【請求項2】 EGR方式による排気ガスを経由させるための部品における,請求項1記載のポリアミド樹脂組成物の使用。 【請求項3】 EGR方式による排気ガスを経由させるための部品における,請求項1記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品の使用。 【請求項4】 EGR方式による排気ガスを経由させるための部品であって,該部品は請求項1記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品を含み,該部品はインテークマニホールド,EGRデリバリパイプ,EGRパイプ,EGRバルブ及びEGRクーラーから選択される,部品。 【請求項5】 自動車の部品である請求項4記載の部品。 【請求項6】 エンジンルームの部品である請求項4記載の部品。 【請求項7】 請求項1記載のポリアミド樹脂組成物を成形することを含む,EGR方式による排気ガスを経由させるための部品の製造方法。 【請求項8】 請求項7記載の製造方法で得られるEGR方式による排気ガスを経由させるための部品を組込むことを含む,自動車の製造方法。 第3 取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由 本件発明1~8は,下記(1)~(3)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1~8に係る特許は,特許法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(4)の甲第1号証~甲第7号証(以下,単に「甲1」等という。)を提出する。 (1)取消理由1-1(進歩性) 本件発明1は,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2)取消理由1-2(進歩性) 本件発明2~8は,甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (3)取消理由2(明確性要件) 本件発明1~8は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではない。 (4)証拠方法 ・甲1 特開2009-40808号公報 ・甲2 特開平3-257039号公報 ・甲3 特表2007-529402号公報 ・甲4 特開2001-152985号公報 ・甲5 特開2000-161161号公報 ・甲6 福本修,「ポリアミド樹脂ハンドブック」,日刊工業新聞社,昭和63年1月30日,p.192 ・甲7 特開2009-233480号公報 2 取消理由通知書に記載した取消理由 上記1の取消理由1-1(進歩性),取消理由2(明確性要件)と同旨。 第4 当審の判断 以下に述べるように,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 1 取消理由通知書に記載した取消理由 (1)取消理由1-1(進歩性) ア 甲1に記載された発明 甲1の記載(請求項1,【0002】,【0013】,【0014】,【0056】,【0078】,【0125】,【0126】,【0130】,表1,実施例4)によれば,特に実施例4(表1)に着目すると,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。 「(A2)ポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製,商品名「ノバミッド(登録商標)1013J」。粘度数138ml/g(ISO307規格に準拠して,温度25℃,96重量%硫酸中,ポリアミド樹脂濃度0.5重量%で測定した。)100重量部と, (B1)扁平断面ガラス繊維(日東紡社製 商品名「CSG3PA830」,長円形断面,長径(D2)=28μm,短径(D1)=7μm,扁平率4。繊維径18μm相当の断面積を有する。カット長3mm,Eガラス,屈折率(nd)1.55)43重量部と, を溶融混練して得られた樹脂組成物ペレット。」(以下,「甲1発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「(A2)ポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製,商品名「ノバミッド(登録商標)1013J」。粘度数138ml/g(ISO307規格に準拠して,温度25℃,96重量%硫酸中,ポリアミド樹脂濃度0.5重量%で測定した。)」は,本件発明1における「ポリアミド樹脂(成分A)」であって,「前記成分Aが,ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂」に相当する。 甲1発明における「(B1)扁平断面ガラス繊維(日東紡社製 商品名「CSG3PA830」,長円形断面,長径(D2)=28μm,短径(D1)=7μm,扁平率4。繊維径18μm相当の断面積を有する。カット長3mm,Eガラス,屈折率(nd)1.55)」は,Eガラスからなるガラス繊維であるから,本件発明1における「ガラス(成分C)」に相当する。 甲1発明における「樹脂組成物ペレット」は,「(A2)ポリアミド6」と「(B1)扁平断面ガラス繊維」を溶融混練して得られたものであるから,本件発明1における「ポリアミド樹脂組成物」に相当する。 甲1発明における「樹脂組成物ペレット」は,「(A2)ポリアミド6」及び「(B1)扁平断面ガラス繊維」の2成分からなるものであり,前者は「100重量部」,後者は「43重量部」であるところ,「樹脂組成物ペレット」100重量%中に換算すると,前者は「70重量%」,後者は「30重量%」となる。一方,本件発明1は,「前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中,前記成分Aが40~95重量%であり,前記成分C1が60~5重量%であ」るというものであり,「成分C1」の配合量が特定されているが,「前記成分Cが酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)であり,」と特定されていることも踏まえると,本件発明1と甲1発明とは,「前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中,前記成分Aが40~95重量%であり」,前記成分Cが「60~5重量%」である限りで共通する。 甲1発明は,上記のとおり,「樹脂組成物ペレット」は,「(A2)ポリアミド6」及び「(B1)扁平断面ガラス繊維」の2成分からなるものであるから,本件発明1における「スチレン系重合体(成分B1)及び変性ポリフェニレンエーテル(成分B2)を含まない」ものに相当する。 そうすると,本件発明1と甲1発明とは, 「ポリアミド樹脂(成分A),及びガラス(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物であって, 前記成分Aが,ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂であり, 前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中,前記成分Aが40~95重量%であり,前記成分Cが60~5重量%であり, スチレン系重合体(成分B1)及び変性ポリフェニレンエーテル(成分B2)を含まない, ポリアミド樹脂組成物。」 の点で一致し,以下の点で相違する。 ・相違点1 本件発明1では,ガラス(成分C)が,「酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)」であるのに対して,甲1発明では,「Eガラス」である点。 (イ)相違点1の検討 a 本件発明1は,ポリアミド樹脂組成物に関するものである。 本件明細書の記載(【0002】~【0008】,【0011】,【0017】,【0031】,【0032】,【0036】,【0039】~【0041】,【0044】,【0059】~【0067】,【0074】~【0077】,実施例1~4,比較例1,2,表1)によれば,本件発明1は,耐酸性に優れ,かつ軽量である,インテークマニホールド,EGRデリバリパイプ,EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とするものである。そして,このような課題を解決するために,本件発明1は,ポリアミド樹脂(成分A)及びガラス(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物において,成分Aとして,「ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂」を用い,成分Cとして,「酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)」を用いるとともに,ポリアミド樹脂組成物100重量%中,成分Aの配合量を40~95重量%とし,成分C1の配合量を60~5重量%とするものであり,それにより,機械的特性を確保しつつ,耐酸性に優れ,かつ軽量である,インテークマニホールド,EGRデリバリパイプ,EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物を提供することができるという効果を奏するものである。 b 一方,甲1発明は,樹脂組成物ペレットに関するものである。 甲1の記載(請求項1,【0002】,【0004】,【0013】,【0014】,【0016】,【0074】,【0078】,【0113】~【0115】,【0125】,【0126】,【0130】~【0133】,実施例1~6,比較例1~4,表1)によれば,甲1発明は,機械的強度が良好でレーザー溶着特性に優れたレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とするものである。そして,このような課題を解決するために,甲1発明は,ポリアミド樹脂である「(A2)ポリアミド6」100重量部に対して,繊維長さ方向に垂直な断面が扁平形状である「(B1)扁平断面ガラス繊維」43重量部を配合するものであり,それにより,機械的強度が良好で,レーザー透過率が向上した,レーザー溶着特性に優れたレーザー溶着用熱可塑性樹脂組成物を提供することができるという効果を奏するものである。 c 上記のとおり,本件発明1と甲1発明とは,その解決しようとする課題が異なるものである。甲1には,機械的特性を確保しつつ,耐酸性に優れ,かつ軽量である,インテークマニホールド,EGRデリバリパイプ,EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物を提供することについて,何ら記載されておらず,また,そのために,ポリアミド樹脂組成物において,「ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂」と,「酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)」を含有させることについても,何ら記載されていない。 甲1には,ガラス繊維について,以下の記載がある。 「ガラス繊維(B)としては,Aガラス,Cガラス,Eガラス等の組成からなるものが好ましく,特に,Eガラス(無アルカリガラス)が,熱可塑性樹脂の熱安定性に悪影響を及ぼさない点で好ましい。また,屈折率1.560~1.600であるガラスも用いることができる。該ガラスは,通常,ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂に使用されるEガラス(屈折率1.555)を構成する組成成分からB2O3及びF2成分を除き,MgO,TiO2及びZnO等の成分の割合を増加したもので,該ガラスを採用することにより,本発明の樹脂組成物のレーザー透過性をより向上させることが可能となる。」(【0078】) 上記記載によれば,甲1には,ガラス繊維としては,特にEガラス(無アルカリガラス)が好ましいが,屈折率1.560~1.600であるガラスも用いることができ,該ガラスは,Eガラス(屈折率1.555)を構成する組成成分からB2O3(酸化ホウ素)及びF2成分を除き,MgO,TiO2及びZnO等の成分の割合を増加したものであることが記載されているといえる。しかしながら,甲1においては,上記のとおり,当該ガラスを採用することにより,樹脂組成物のレーザー透過性をより向上させることが可能となるというものであり,本件発明1のように耐酸性を向上させることを意図したもの(本件明細書【0031】)ではなく,機械的強度や軽量化を意図したものでもない。 また,甲1には,「ポリアミド樹脂が,例えば,インテークマニホールドのような中空部を有する製品等に展開されてきている。」(【0002】)との記載もあるが,機械的特性,耐酸性及び軽量化に特に着目したものではない。 d 甲2には,ガラス繊維,ガラス繊維強化合成樹脂製品及び消音器等の内燃機関用排気系部品について記載されているところ,5重量%以上40重量%以下のZrO2を含有するガラス繊維は,優れた耐酸,耐アルカリ性及び耐熱老化性を有すること,強化用繊維として,上記ガラス繊維を用いたガラス繊維強化合成樹脂製品は,従来のEガラス等よりなるガラス繊維を用いたものと比べて,優れた耐酸及び耐アルカリ性を有すること,上記ガラス繊維を構成材料として用いた内燃機関用排気系部品は,優れた耐酸,耐アルカリ性及び耐熱老化性を発揮することが記載されている(特許請求の範囲,2頁左上欄1行~右上欄17行,2頁左下欄15行~3頁左上欄6行)。 しかしながら,ガラス繊維については,酸化ホウ素(B2O3)が,必要に応じて用いられる成分として,「B2O3≦4重量」であるガラス繊維が例示され(3頁右下欄3~16行),実施例においては,ZrO2を16.9重量%含むが,酸化ホウ素(B2O3)は含まないガラス繊維が,単に示されているにすぎない(4頁左上欄17行~右上欄3行)。 このような甲2の記載に接した当業者は,ガラス繊維において,所定量のZrO2を含有することにより,優れた耐酸性が得られることは理解できるとしても,酸化ホウ素(B2O3)を含まないことにより,優れた耐酸性が得られることが理解できるとはいえない。 また,ガラス繊維により強化される合成樹脂については,ポリアミド樹脂も例示されているものの(3頁左下欄3~17行),実施例(ガラス繊維強化合成樹脂板及び消音器の製造)においては,不飽和ポリエステル樹脂が用いられており,実際にポリアミド樹脂を用いた実施例が記載されているわけでもない。 以上のとおり,甲2には,機械的特性を確保しつつ,耐酸性に優れ,かつ軽量である,インテークマニホールド,EGRデリバリパイプ,EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物を提供するために,ポリアミド樹脂組成物において,「ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂」と,「酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)」を含有させることについて,記載されているとはいえない。 e 甲3には,ガラスストランド,ガラスストランドと有機及び/又は無機材料からなる複合材料,ガラス繊維を含む排気系用の取付部品について記載されているところ,ガラスストランドにおいて,それぞれ,所定量のSiO2,Al2O3,CaO,MgO,Na2O+K2O+Li2O,TiO2,B2O3,ZnO,MnO及びFを含有させることにより,良好な成形性を示し,かつ,E-ガラス又はある種の現在入手できるガラスと比べて顕著に改良された,高温耐熱性,耐酸性及び機械的強度特性を有するガラスストランドを得ることが可能となることが記載されている(特許請求の範囲,【0020】~【0022】)。 また,甲3には,B2O3(酸化ホウ素)について,以下の記載がある。 「出願FR-A-2692248では,溶融及び繊維化の最中にE-ガラスと同様の挙動を示すガラス組成物が記載され,さらに特許請求の範囲とされている。そのガラス組成物は,特に無水ホウ酸及びアルミナの含量を減少させたために,特筆すべき優れた耐酸性を有している。それでもなお,特許請求の範囲とされているそのガラスは無水ホウ酸を2%より高い含量で有している。」(【0018】) 「本発明者らにより,酸腐蝕耐性及び高温耐熱性に対する酸化ホウ素の有害な作用が明らかにされているため,B2O3含量は,好ましくは1%を超えず,さらにより好ましくは0.5%を超えない。本発明のある特定の好ましい実施態様においては,B2O3含量は0.1%未満ですらある。」(【0028】) 「表1には,本発明の4つの例(番号は1~4)と,3つの比較例(番号はC1~C3)が示されている。C1は標準のE-ガラス組成であり,C2は国際公開WO99/12858に由来する組成,さらにC3は国際公開WO96/39362に教示されるものである。」(【0043】) 「3.体積画分が50%である繊維を含み,ビニルエステル樹脂(Dow Chemical Companyから販売されているDerakane 411-350(商品名))に基づいた複合材料を,室温で100時間,塩酸溶液(1N濃度のHCl)に浸漬した後の,3点曲げの破壊応力値。この応力はMPaで表され,酸腐蝕に対する繊維の耐性を特徴付ける。」(【0045】) 「表1に示されるように,本発明の繊維は,E-ガラス繊維(比較例C1)と比較して,耐熱性(差が約100℃)及び酸腐蝕耐性(破壊応力が2~3倍高い)について,実質的に非常に優れている。」(【0047】) 「例1,例2,3及び4を比較すると,ある種の酸化物が繊維の酸腐蝕耐性に与える影響が説明される。例えば,例2はSiO2の有利な作用と,Al2O3の不利な作用が示されているのに対し,例3及び4では酸化ホウ素の有害な影響が示されている。厳密に60%より高い,好ましいシリカ含量の影響は,例1と2を比較することによって示され,例2では酸腐蝕耐性が顕著に改善されている。」(【0049】) これらの記載から,仮に,ガラスストランドにおいて,B2O3の含有量を少なくする(さらには,実質的に0とする)ことにより,耐酸性を改善できることが理解できるとしても,上記のとおり,その耐酸性の評価は,ビニルエステル樹脂を用いた複合材料により行われたものである。甲3には,ポリアミド樹脂を用いた複合材料や排気系用の取付部品については記載されていない。ポリアミド樹脂(ポリアミド6やポリアミド66)を用いた複合材料においても,B2O3の含有量を実質的に0としたガラスストランド(酸化ホウ素を含まないガラス)を用いることにより,機械的特性を確保しつつ,耐酸性を改善できるかどうかは,不明というほかない。 以上のとおり,甲3には,機械的特性を確保しつつ,耐酸性に優れ,かつ軽量である,インテークマニホールド,EGRデリバリパイプ,EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物を提供するために,ポリアミド樹脂組成物において,「ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂」と,「酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)」を含有させることについて,記載されているとはいえない。 f 上記a~eのとおり,甲1のほか,甲2及び3にも,機械的特性を確保しつつ,耐酸性に優れ,かつ軽量である,インテークマニホールド,EGRデリバリパイプ,EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物を提供するために,ポリアミド樹脂組成物において,「ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂」と,「酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)」を含有させることについて,記載されているとはいえず,また,そのようなことが技術常識であるともいえない。 そして,本件発明1は,上記のとおり,機械的特性を確保しつつ,耐酸性に優れ,かつ軽量である,インテークマニホールド,EGRデリバリパイプ,EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物を提供することができるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 そうすると,甲1発明において,「(B1)扁平断面ガラス繊維」として,Eガラスからなるものに代えて,酸化ホウ素を含まないガラスからなるものを用いることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおり,本件発明1は,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,取消理由1-1(進歩性)によっては,本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由2(明確性要件) 本件発明1は,ポリアミド樹脂(成分A)及びガラス(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物に関するものである。 本件特許の特許請求の範囲の請求項1には,上記ガラス(成分C)について,「前記成分Cが酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)であり,」と記載されているから,本件発明1におけるガラス(成分C)が,酸化ホウ素を含まないガラス(すなわち,酸化ホウ素の含有量が0であるガラス)を意味することは,明らかである。 この点,特許権者は,平成30年12月21日付けの意見書において,「「酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)」なる記載自体は,ガラスが酸化ホウ素を含まないことを意味することは明らかであり,当業者にとっては技術的に明確である。」(8頁),「本件特許発明1では,酸化ホウ素を含むか否かのみを問題としており,」(10頁)と主張しており,上記の明確性についての判断は,特許権者の主張にも符号するものである。 以上によれば,本件発明1は明確である。本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~8についても同様であり,本件発明2~8は明確である。 したがって,取消理由2(明確性要件)によっては,本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由 (1)取消理由1-2(進歩性) 本件発明2~8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記1(1)で述べたとおり,本件発明1は,甲1に記載された発明並びに甲2及び3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 そして,甲4及び5には,EGR方式による排気ガスを経由させるための部品(インテークマニホールド)として,ガラス繊維を含有するポリアミド樹脂を用いることが記載されるのみであるから(甲4【0026】,【0027】,甲5【0079】),本件発明1についての上記判断は,甲4及び5に記載された事項を考慮したとしても,変わるものではない。 そうである以上,本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~8についても同様に,甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,取消理由1-2(進歩性)によっては,本件特許の請求項2~8に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2018-700617

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  • 2025-700320異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容澱粉含有樹脂組成物、ペレット、フレーク、樹脂成形物、澱粉含有樹脂組成物の製造方法…
    共通の審決分類: 121・C08L、537・C08L

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