特許異議申立
2018-700449
医療用診療装置
- 審判番号
- 2018-700449
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-511013
- 登録番号
- 特許第6244064号(P6244064)
- 請求日
- 2018年06月05日
- 審決日
- 2018年09月04日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社モリタ製作所
- 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【異議申立人】伊藤 裕美
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 真徳
- 審判官 関谷 一夫
- 審判官 瀬戸 康平
- 分類
- P1651.121-Y (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6244064号発明「医療用診療装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6244064号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6244064号の請求項1~11に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2016年(平成28年)4月6日(優先権主張 平成27年4月7日)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成30年6月5日に特許異議申立人伊藤裕美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものである。
第3 申立理由の概要
1 申立理由1
申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2~7号証を提出するとともに、次の(1)~(6)のとおり主張し、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張している。
(1)本件発明1,3,7,9~10は、甲第1~2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2は、甲第1~2号証に記載された発明及び甲第3号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明4は、甲第1~2号証に記載された発明及び甲第4号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明5~6は、甲第1~2,5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明8は、甲第1~2,6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明11は、甲第1~2,7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 申立理由2
申立人は、主たる証拠として甲第2号証及び従たる証拠として甲第1,3~7号証を提出するとともに、次の(1)~(6)のとおり主張し、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張している。
(1)本件発明1,3,7,9~10は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証に例示される周知技術及び甲第3号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明4は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証に例示される周知技術及び甲第4号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明5~6は、甲第2,5号証に記載された発明及び甲第1号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明8は、甲第2,6号証に記載された発明及び甲第1号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明11は、甲第2,7号証に記載された発明及び甲第1号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 証拠方法
甲第1号証:特開2002-336281号公報
甲第2号証:特開2014-52888号公報
甲第3号証:特開2003-241991号公報
甲第4号証:特開2002-196933号公報
甲第5号証:特開2006-202206号公報
甲第6号証:特開2001-337817号公報
甲第7号証:特開2012-58841号公報
第4 判断
1 申立理由1について
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、「所望の診療機能を備えた複数の機能モジュールを選択して組み合わせることが可能な医療用診療機器であって、所望の診療機能を備えた少なくとも1つの機能モジュールを備える、医療用診療機器。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
なお、申立人は、親機と子機とのように親子関係にあるシステムにおいて、子機のプログラムの更新処理を親機で管理するとともに子機に実行させることは、例示するまでもなく周知慣用の事項であるといえるため、甲第1号証においても、親機である医療用診療機器10の中央演算処理装置が子機である機能モジュール20の中央演算処理装置に対してプログラム更新処理を実行させることは自明である旨主張した上で、甲第1号証に記載された発明を「1a 所望の診療機能を備えた複数の機能モジュールを選択して組み合わせることが可能な医療用診療機器であって、1b 所望の診療機能を備えた少なくとも1つの機能モジュールと、1c 診療機能を実現するためのプログラムを更新する更新処理を機能モジュールに実行させる更新制御部を有する中央演算処理装置と、を備え、1d 機能モジュールは、診療機能を実現するためのプログラムを更新する更新処理を実行する更新部を有する中央演算処理装置を備える。」と認定している。
しかしながら、機能モジュール20のプログラム更新処理に関して、甲第1号証には、診療機能において制御ソフトのバージョンアップがあった場合、機能モジュール側の制御ソフト記憶手段(ROM)を交換したり、機能モジュールを新機能のものに交換することで、対応することができること(段落【0084】)、及び、機能モジュールに記憶保存された制御ソフトは、通信ラインを通じて転送されたものであってもよいこと(段落【0097】)が記載されており、医療用診療機器10の中央演算処理装置が機能モジュール20の中央演算処理装置に対してプログラム更新処理を実行させているとは認められない。すなわち、申立人が認定した甲第1号証に記載された発明における「1c」及び「1d」の構成は、甲第1号証の記載から認定することはできない。
したがって、甲1発明の認定は、上記のとおりとする。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は「機能を発揮するためのプログラムおよびデータの少なくとも1つを所定の更新情報に基づき更新する更新処理を、前記機能部に実行させる更新制御部とを備え、前記更新制御部は、前記医療用診療装置に取り付け可能な全ての前記機能部の前記更新情報を包括した包括更新情報を取得する取得部と、前記医療用診療装置に取り付けられている前記機能部を特定する機能特定部と、前記取得部で取得した前記包括更新情報の中から前記機能特定部で特定した前記機能部に対応する前記更新情報を特定する更新情報特定部と、前記機能特定部で特定した前記機能部に対して、少なくとも前記更新情報特定部で特定した前記更新情報を送信する送信部とを含み、前記機能部は、前記送信部から送信された前記更新情報に基づき前記更新処理を実行する更新部を含み、前記更新制御部または前記機能部は、前記プログラムおよび前記データの少なくとも1つと、前記更新情報特定部で特定された前記更新情報とに基づき、前記更新処理を実行する必要があるか否かを判定する更新有無判定部をさらに含む」との構成を備えているのに対し、甲1発明はそのような構成を備えていない点。
イ 判断
上記相違点1に関し、甲第2号証には、「複数のオプションユニットを選択して組み合わせることが可能な画像形成装置において、画像形成装置は、オプション機能を備えた少なくとも1つのオプションユニットと、オプション機能を実現するためのプログラムを更新する更新処理をオプションユニットに実行させるCPUと、を備え、CPUは、接続され得るオプションユニットの最新の制御プログラムを全て含む本体制御プログラムを取得する手段と、取り付けられているオプションユニットを特定する手段と、本体制御プログラムの中から取り付けられているオプションユニットに対応する最新の制御プログラムを特定する手段と、取り付けられているオプションユニットに対して、対応する最新の制御プログラムを送信する手段とを含み、オプションユニットは、送信された対応する最新の制御プログラムに基づき更新処理を実行する手段を含み、CPUは、更新処理を実行する必要があるか否かを判定する手段を更に含む」との技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。
また、甲第2号証の段落【0004】~【0005】の記載によれば、甲2技術の課題は、画像形成装置の本体にファクスボード等のオプションユニットを装着して使用する場合に、オプションユニットの同一部番管理に起因する、本体とオプションユニットとのプログラムのバージョン不一致による問題の発生を容易に防ぐことであると認められる。
しかしながら、甲1発明は、医療用診療機器に関するものであり、甲2技術の画像形成装置とは技術分野が異なること、及び、甲第1号証には、機能モジュール20の制御プログラムをバージョンアップすることは記載されているものの、医療用診療装置10のバージョンについては記載がないし、機能モジュール20を同一部番管理することについても記載がないことから、甲1発明が甲2技術と同様の課題を有するとはいえない。
したがって、甲1発明に甲2技術を適用すべき動機付けが存在するということはできない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲第1~2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~11について
本件発明2~11は、本件発明1を更に減縮したものであるから、本件発明2~11と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1で相違する。
そして、上記相違点1に係る構成が甲1発明及び甲2技術から容易想到でないことは、上記(2)のとおりである。
また、上記相違点1に係る構成について、甲第3~7号証のいずれにも記載がない。
よって、本件発明2~11は、甲第1~2,5~7号証に記載された発明並びに甲第3号証に例示される周知技術及び甲第4号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 申立理由2について
(1)甲第2号証の記載
甲第2号証には、「複数のオプションユニットを選択して組み合わせることが可能な画像形成装置であって、オプション機能を備えた少なくとも1つのオプションユニットと、オプション機能を実現するためのプログラムを更新する更新処理をオプションユニットに実行させるCPUと、を備え、CPUは、接続され得るオプションユニットの最新の制御プログラムを全て含む本体制御プログラムを取得する手段と、取り付けられているオプションユニットを特定する手段と、本体制御プログラムの中から取り付けられているオプションユニットに対応する最新の制御プログラムを特定する手段と、取り付けられているオプションユニットに対して、対応する最新の制御プログラムを送信する手段とを含み、オプションユニットは、送信された対応する最新の制御プログラムに基づき更新処理を実行する手段を含み、CPUは、更新処理を実行する必要があるか否かを判定する手段を更に含む、画像形成装置。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、以下の点で相違する。
(相違点2)
本件発明1は「医療用診療装置」に関するものであるのに対し、甲2発明は「画像形成装置」に関するものである点。
イ 判断
申立人は、上記相違点2に関し、本体に所望の機能を有する機能部を選択して組み合わせることが可能な医療用診療装置において、機能部のプログラム更新処理を実行することは、甲第1号証に記載されるように周知技術であるとした上で、「よって、甲2発明のプログラム更新処理を医療用診療装置に適用することは、当業者が容易になし得たことである。」(特許異議申立書第34ページ第13~14行)旨主張している。
そこで、甲2発明を主たる引用発明とし、甲2発明に上記周知技術を適用して上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるかどうか検討する。
甲第2号証には、「画像形成装置」を「医療用診療装置」とする旨の記載ないし示唆はなく、「画像形成装置」を画像形成装置以外の装置とする旨の記載ないし示唆もない。
また、甲第2号証の段落【0004】によれば、甲2発明の課題は、画像形成装置の本体にファクスボード等のオプションユニットを装着して使用する場合に、オプションユニットの同一部番管理に起因する、本体とオプションユニットとのプログラムのバージョン不一致による問題の発生を容易に防ぐことであると認められ、当該課題と同様の課題を「医療用診療装置」が有するとも認められない。
したがって、甲2発明において、「画像形成装置」を「医療用診療装置」とすべき動機付けが存在するということはできない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~11について
本件発明2~11は、本件発明1を更に減縮したものであるから、本件発明2~11と甲2発明とは、少なくとも上記相違点2で相違する。
そして、上記相違点2に係る構成が甲2発明及び甲第1号証に例示される周知技術から容易想到でないことは、上記(2)のとおりである。
また、上記相違点2に係る構成について、甲第3~7号証のいずれにも記載がない。
よって、本件発明2~11は、甲第2,5~7号証に記載された発明並びに甲第1号証に例示される周知技術、甲第3号証に例示される周知技術及び甲第4号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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