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特許異議申立

2018-700088

ヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法

審判番号
2018-700088
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-010718
登録番号
特許第6173931号(P6173931)
請求日
2018年02月01日
審決日
2018年11月27日
公報発行日
2019年03月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日宝化学株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
  • 【異議申立人】浜 俊彦
審判長/審判官
  • 審判長 大橋 賢一
  • 審判官 豊永 茂弘
  • 審判官 宮澤 尚之
分類
P1651.113-YAA(C01D) / P1651.121-YAA(C01D) / P1651.536-YAA(C01D) / P1651.537-YAA(C01D) / P1651.851-YAA(C01D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6173931号発明「ヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6173931号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6173931号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6173931号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年1月23日の出願であって、平成29年7月14日に特許権の設定登録がなされ、その後、同年8月2日に特許掲載公報の発行がなされたところ、平成30年2月1日に特許異議申立人の浜 俊彦(以下、単に「異議申立人」という。)により請求項1ないし5に係る特許について特許異議の申立てがなされ、同年5月21日付けで特許権者に取消理由通知がなされ、特許権者より同年7月20日に意見書及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)が提出され、これに対して、異議申立人より同年8月30日に意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「粉末状のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属を製造するヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法であって、 溶媒中にヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属が溶解または懸濁されている、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液から当該溶媒を除去しながらヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属を粉砕する除去粉砕工程を含むことを特徴とするヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。」とあるのを、 「粉末状のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属を製造するヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法であって、 溶媒中にヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属が溶解または懸濁されている、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液から当該溶媒を除去しながらヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属を粉砕する除去粉砕工程を含み、 上記除去粉砕工程では、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液が入っている容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、上記溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粉砕を行い、 上記容器、および回転翼を備えた乾燥機が、粉砕式濃縮乾燥機又は薄膜式蒸発乾燥機であり、 上記除去粉砕工程における減圧条件が30kPa以下であり、加熱条件が、100℃以上、250℃以下であることを特徴とするヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。」に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、「上記除去粉砕工程では、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液が入っている容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、上記溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粉砕を行うことを特徴とする請求項1に記載のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。」とあるのを、 「上記除去粉砕工程では、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液が入っている容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、上記溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粉砕を行ない、 上記容器、および上記回転翼の材質がチタンであることを特徴とする請求項1に記載のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。」に訂正する。 2 訂正の適否 2-1 訂正事項が全ての訂正要件に適合しているか否かについて ア 訂正事項1 a 訂正の目的について 上記訂正事項1は、請求項1における「除去粉砕工程」を、「・・・容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、上記溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粉砕を行う」と減縮し、さらに「容器、および回転翼を備えた乾燥機が、粉砕式濃縮乾燥機又は薄膜式蒸発乾燥機である」と減縮し、上記除去粉砕工程における「減圧条件が30kPa以下であり、加熱条件が、100℃以上、250℃以下である」と限定するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲を減縮するものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aの理由から明らかなように、上記訂正事項1は、「除去粉砕工程」において、「容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、上記溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粉砕を行う」と限定し、さらに「除去粉砕工程」において用いられる容器および回転翼を備えた乾燥機を限定し、「除去粉砕工程」における減圧条件及び加熱条件を限定することによって、発明の範囲を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正前の請求項2、及び本件の出願当初明細書の【0014】において、「除去粉砕工程では、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液が入っている容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、上記溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粉砕を行う」ことが記載されている。 また、本件の出願当初明細書の【0055】には「上記容器および上記回転翼を備えた市販の装置としては、例えば、粉砕式濃縮乾燥機(トリプルマスター、品川工業所製)、薄膜式蒸発乾燥機(ハイエバオレーター、櫻製作所製)等が挙げられる」と記載されている。 また、本件の出願当初明細書の【0062】には、「除去粉砕工程を行なう際の好ましい減圧条件は、30kPa以下あることが好ましい」ことが記載されており、本件の出願当初明細書の【0063】には、除去粉砕工程が「減圧条件下において、100℃以上、350℃以下の温度で行われることが好ましい」ことが記載されており、本件の出願当初明細書の【0096】には「天板温度が250℃では、60分間乾燥を続けたことにより乾燥が進み、ヨウ化リチウムはほぼ結晶化した」ことが記載されている。 従って、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 イ 訂正事項2 a 訂正の目的について 上記訂正事項2は、請求項2における「除去粉砕工程」において用いられる容器および回転翼の材質をチタンに減縮するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲を限定するものである。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記aの理由から明らかなように、上記訂正事項2は、「除去粉砕工程」において用いられる容器および回転翼の材質をチタンに減縮することにより発明の範囲を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること 本件の出願当初明細書の【0052】には「粉砕する際の容器および回転翼の材質としては、例えば、SUS、ハステロイ、グラスライニング、セラミック、チタン等が挙げられ、特に、チタンが好ましい」ことが記載されている。 従って、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 2-2 一群の請求項についての説明 訂正前の請求項1の記載を訂正前の請求項2~5がそれぞれ引用し、また、訂正前の請求項2の記載を訂正前の請求項3~5がそれぞれ引用しているので、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1~5について請求されたものである。 2-3 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1~5について特許異議申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 2-4 小括 上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1~5について請求されたものであり、また、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。 したがって、訂正後の〔1-5〕について訂正を認める。 第3 本件請求項に係る発明 前記「第2」で示したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された以下の事項により特定されるものと認める。(当審注:下線は、訂正箇所を示し、特許権者が付与した。) 「【請求項1】 粉末状のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属を製造するヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法であって、 溶媒中にヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属が溶解または懸濁されている、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液から当該溶媒を除去しながらヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属を粉砕する除去粉砕工程を含み、 上記除去粉砕工程では、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液が入っている容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、上記溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粉砕を行い、 上記容器、および回転翼を備えた乾燥機が、粉砕式濃縮乾燥機又は薄膜式蒸発乾煥機であり、 上記除去粉砕工程における減圧条件が30kpa以下であり、加熱条件が、100℃以上、250℃以下であることを特徴とするヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。 【請求項2】 上記除去粉砕工程では、ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液が入っている容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、上記溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粉砕を行ない、 上記容器、および上記回転翼の材質がチタンであることを特徴とする請求項1に記載のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。 【請求項3】 上記除去粉砕工程によって得られる粉末状のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の粒子径が5mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。 【請求項4】 上記ヨウ化アルカリ金属溶液、ヨウ化アルカリ土類金属溶液、ヨウ化アルカリ金属懸濁液、またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液は、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物とヨウ化物とを溶媒中で反応させる反応工程により生成されたものであることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。 【請求項5】 上記反応工程に用いられる上記溶媒は水であることを特徴とする請求項4に記載のヨウ化アルカリ金属またはヨウ化アルカリ土類金属の製造方法。」 第4 申立理由および取消理由 異議申立人は、甲第1号証ないし甲第12号証を証拠方法として提出すると共に、理由1ないし4を申立理由として主張し、当審では、理由5ないし理由8を取消理由として通知した。 ・甲第1号証:中国特許出願公開第101565192号明細書 ・甲第1号証(抄訳) ・甲第2号証:社団法人日本化学会編,第5版実験化学講座23-無機 化合物-,丸善株式会社発行,平成17年3月10日, p.322 ・甲第3号証:特開2011-33241号公報 ・甲第4号証:特開平6-304401号公報 ・甲第5号証:特開平5-264792号公報 ・甲第6号証:特開平5-331496号公報 ・甲第7号証:特開2001-152195号公報 ・甲第8号証:半田裕利、戸嶋大輔,PVミキサーの紹介,神鋼パンテ ック技報,2000.3,Vol.43.No.2, p.73-81 ・甲第9号証:戸嶋大輔,山崎忠成,翼加熱型SVミキサーの開発、神 鋼パンテック技報,2001.2,Vol.44. No.2,p.40-45 ・甲第10号証:国際公開第2009/096446号 ・甲第11号証:特開2005-47764号公報 ・甲第12号証:財団法人日本規格協会編,JIS工業用語大辞典【第 5版】,財団法人日本規格協会発行,2001年3月 30日,p.2064の「粉末」の項目 (1)理由1:特許法第29条第1項第3号および特許法第29条第2項 訂正前の本件発明1~3は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない発明である。 同本件発明1~5は、甲第1、10、11号証に記載された発明および技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明である。 (2)理由2:特許法第29条第2項 訂正前の本件発明1~5は、甲第2、3~11号証に記載された発明および技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明である。 (3)理由3:特許法第36条第4項第1号 本件特許の発明の詳細な説明は、訂正前の本件発明1~5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法36条第4項第1号の規定に適合するものではないので、同本件発明1~5は、特許を受けることができない発明である。 (4)理由4:特許法第36条第6項第1号 訂正前の本件請求項1~5の記載は、本件の課題を解決できない態様(比較例2)を含むものであるから、特許法36条第6項第1号の規定に適合するものではないので、同本件発明1~5は、特許を受けることができない発明である。 (5)理由5:特許法第29条第1項第3号 訂正前の本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない発明である。 (6)理由6:特許法第29条第2項 訂正前の本件発明2は、甲第1号証に記載された発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明である。 (7)理由7:特許法第29条第1項第3号および特許法第29条第2項 訂正前の本件発明3~5は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、もしくは、甲第1号証に記載された発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明である。 (8)理由8:特許法36条第6項第1号 訂正前の本件請求項1および本件請求項2を引用しない本件請求項3~5の記載は、当業者が本件の課題を解決することができると認識する範囲を超えるものであるから、特許法36条第6項第1号の規定に適合するものではないので、同本件発明1および本件発明2を引用しない本件発明3~5は、特許を受けることができない発明である。 第5 甲各号証に記載の事項 第5-1 甲第1号証に記載の事項 (中国特許出願公開明細書には、外字が多数存在するため、明細書の本文の摘示は行わず、異議申立人による訳のみを示す。) (甲1-1)「(1)純度99.999%の水酸化リチウム150gを取って2000mlのフラスコに入れ、更に濃度45.5.%の分析用純ヨウ化水素酸約500mlを添加し、攪拌して十分に反応させ、溶液のpH値を6.5とし、その後更に少量のアンモニア水を添加して溶液のpH値を8.0に調整し、不純物をろ過し、ろ液を濃縮して再結晶し、得られた結晶を水中に溶解し、ヨウ化リチウム水溶液を得る;」(明細書10頁1~4行) (甲1-2)「(2)ヨウ化リチウム水溶液をチタン樽中に置いて、ヨウ化リチウム水溶液にアルゴンを通し、ブレード攪拌機を用いた攪拌状態下で、チタン樽内のヨウ化リチウム水溶液を加熱し、10℃/minの加熱速度で加熱し、250℃まで昇温した後樽内に粉体が現れ始め、昇温し続けて280℃に至り、溶液が粉体に変わるまでこの温度を保持し、その後除々に温度を下げて室温に至り、0.5個の結晶水を含むヨウ化リチウム粉末として約180gの粉末を得た;」(明細書10頁5~9行) (甲1-3)「(1)純度99.999%の炭酸リチウム100gを取って2000mlのフラスコに入れ、更に濃度45.5.%の分析用純ヨウ化水素酸約500mlを添加し、攪拌して十分に反応させ、溶液のpH値を6.5とし、その後更に少量のアンモニア水を添加して溶液のpH値を8.0に調整し、不純物をろ過し、ろ液を濃縮して再結晶し、得られた結晶を水中に溶解し、ヨウ化リチウム水溶液を得る;」(明細書10頁下から2行~11頁2行)(当審注:上記訳の「炭酸リチウム」は、異議申立人による訳では「水酸化リチウム」とあるのを当審が誤訳修正した。) (甲1-4)「(2)ヨウ化リチウム水溶液をチタン樽中に置いて、ヨウ化リチウム水溶液にアルゴンを通し、ブレード攪拌機を用いた攪拌状態下で、チタン樽内のヨウ化リチウム水溶液を加熱し、10℃/minの加熱速度で加熱し、250℃まで昇温した後樽内に粉体が現れ始め、昇温し続けて280℃に至り、溶液が粉体に変わるまでこの温度を保持し、その後除々に温度を下げて室温に至り、0.5個の結晶水を含むヨウ化リチウム粉末として約180gの粉末を得た;」(明細書11頁3~8行) 第5-2 甲第2号証に記載の事項 (甲2-1)「 ヨウ化リチウム[lithium iodide]LiI 【製法】39) LiIは通常水和物として市販されている。無水物は次のようにして得られる。 過剰の(NH4)2CO3の水溶液をLiOHのそれに加え沈殿物をろ過(当審注:「”さんずい”および”戸”からなる漢字を「ろ」で代用した。以下、同じ。)後,これを200℃で数時間乾しLi2CO3を得る。次に,アルゴン雰囲気中,蒸留精製したヨウ化水素酸を上記のLi2CO3と反応させたのち,生成物を蒸留水に溶解する。ここで,過剰のLi2CO3は溶解しないのでろ別し,ろ液を85℃で加熱濃縮することで固化させ,さらに真空中,120℃で乾燥する。得られた無水LiIは密封容器またはドライボックス中に保管する。高純度のLiIを得るには,Li2CO3をさらに精製する。」(322頁9~17行) 第5-3 甲第3号証ないし甲第12号証に記載の事項 ・甲3号証には、【請求項1】、【0005】、【0015】、【0035】等からして、遠心式薄膜乾燥機を用いて、例えば、ホウ酸ナトリウム系水溶液を粉体化することの記載がある。 ・甲第4号証には、【請求項1】、【0025】、【0026】、【0031】等からして、遠心式薄膜乾燥機を用いて、例えば、硫酸ナトリウムを主成分とする廃液から粉体を得ることの記載がある。 ・甲第5号証には、【0051】、【0053】等からして、遠心式薄膜乾燥機を用いて、例えば、C-14を含む炭酸ソーダ0.1wt%、硫酸ソーダ9wt%、酸化鉄0.9wt%からなる濃度10%の模擬濃縮廃液から平均粒径約50μmの粉末を得ることの記載がある。 ・甲第6号証には、【0002】~【0005】、【0012】、【0019】~【0021】、【0030】【表1】等からして、回転薄膜蒸発機を用いて、アニオン活性剤を含有する水スラリーからアニオン活性粉粒体を製造することの記載がある。 ・甲第7号証には、【請求項1】、【請求項2】、【0002】、【0007】、【0017】、【0018】、【0025】、【0026】、【0036】【表2】等からして、回転薄膜蒸発機を用いて、アルキル硫酸エステル塩と炭酸ナトリウムとを含有する水スラリーからアルキル硫酸エステル塩粉粒体を製造することの記載がある。 ・甲第8号証には、「まえがき 当社では粉体混合乾燥機として、SVミキサー,コニカルドライヤ,フィルタドライヤがあり,医薬中間体,化成品をはじめ幅広い分野で使用されている。特に粉体機器の主力製品であるSVミキサーは,自公転の遊星運動によりマイルドに粉体を混合するため,粒子破壊が少なく壊れやすい物質の混合や攪拌熱の発生が少ないため熱に敏感な物質の混合乾燥に有効である。」(73頁左欄下から8行~同右欄下から8行)、 「1 PVミキサーの特長 ・・・(中略)・・ )内容物を全体に循環混合するため,短時間に混合乾燥が行える。また,缶壁での流動状態が良いため,缶壁での付着が少なく外套からの熱伝熱性に優れている。 ・・・(中略)・・ (3) 缶壁での付着が少ない PVミキサーは粉体を缶内全体で循環混合するため壁面での粉体の動きが速く缶壁に内容物が付着しにくい。SVミキサーではスクリューと缶壁との間のクリアランス部で粉体層を形成し伝熱効率が低下する場合が多い。」(74頁左欄16行~同右欄下から8行)、第1図、第3図等からして、PVミキサーは、粉体を缶内全体で循環混合するため壁面での粉体の動きが速く缶壁に内容物が付着しにくいものであり、また、SVミキサーは、スクリューと缶壁との間のクリアランス部で粉体層が形成されやすいものの、マイルドに粉体を混合するため、粒子破壊が少ない混合攪拌が行われるものであり、さらに、粉体混合乾燥機として、PVミキサー、SVミキサーの他に「Double ribbon impeller」などを用いることの記載がある。 ・甲第9号証には、40頁左欄下から12行~同右欄下から11行、45頁左欄9~15行、第1図等からして、SVミキサーについて、甲第8号証と同様の記載がある。 ・甲第10号証には、[0131]~[0133]、[0141]、[0220]、[0221]等からして、例えば、エバポレータによる減圧濃縮乾燥、または凍結乾燥などにより、無機ヨウ化物溶液から無機ヨウ化物を固体として得ることの記載がある。 ・甲第11号証には、【0003】、【0037】等からして、金属ヨウ化物の水溶液を濃縮し、一部の金属ヨウ化物を析出させ、濾別、乾燥、粉砕または全量乾固、粉砕して粉末の金属ヨウ化物を製造することの記載がある。 ・甲第12号証には、「粉末」とは、「最大寸法1mm以下の粒子の集合体」であるとの定義を示す記載がある。 第6 甲第1、2号証に記載の発明 第6-1 甲第1号証に記載の発明 上記「第5-1 甲第1号証に記載の事項」からして、甲第1号証には、「ヨウ化アルカリ金属粉体の製造方法であって、ヨウ化リチウム水溶液をチタン樽中に置いて、ヨウ化リチウム水溶液にアルゴンを通し、ブレード攪拌機を用いた攪拌状態下で、チタン樽内のヨウ化リチウム水溶液を加熱し、10℃/minの加熱速度で加熱し、250℃まで昇温し、さらに昇温し続けて280℃に至り、溶液が粉体に変わるまでこの温度を保持し、その後除々に温度を下げて室温に至り、0.5個の結晶水を含むヨウ化リチウム粉末を得る、ヨウ化アルカリ金属粉体の製造方法。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 第6-2 甲第2号証に記載の発明 上記「第5-2 甲第2号証に記載の事項」からして、甲第2号証には、「アルゴン雰囲気中、蒸留精製したヨウ化水素酸をLi2CO3と反応させたのち、生成物を蒸留水に溶解した溶解液をろ別し、このろ別により得られたろ液を85℃で加熱濃縮することで固化させ、さらに真空中、120℃で乾燥することで、無水LiIを得る、無水LiIの製造方法。」(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。 第7 当審の判断 第7-1 新規性および進歩性について (A)甲1発明を主引用例とする場合(理由1、6、7、8) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも、本件発明1は、「粉末状のヨウ化アルカイ金属」の「製造」において「ヨウ化アルカリ金属溶液」「またはヨウ化アルカリ土類金属懸濁液が入っている容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら、溶媒の除去およびヨウ化アルカリ金属」「の粉砕を」「粉砕式濃縮乾燥機又は薄膜式蒸発乾煥機で」「行」なう「除去粉砕工程における減圧条件が30kpa以下であり、加熱条件が、100℃以上、250℃以下である」ことを発明特定事項にするのに対して、甲1発明は、「ヨウ化リチウム水溶液にアルゴンを通し、ブレード攪拌機を用いた攪拌状態下で、チタン樽内のヨウ化リチウム水溶液を加熱し、10℃/minの加熱速度で加熱し、250℃まで昇温し、さらに昇温し続けて280℃に至り、溶液が粉体に変わるまでこの温度を保持し、その後除々に温度を下げて室温に至り、0.5個の結晶水を含むヨウ化リチウム粉末を得る」という点(以下、「相違点」という。)で相違する。 上記より、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 次に、上記相違点について検討する。 (i)甲第2、10ないし12号証には、上記相違点に係る発明特定事項に関する記載も示唆もなく、また、上記「第5-3」で示したように、甲第8号証の「PVミキサー」は、粉体を缶内全体で循環混合するため壁面での粉体の動きが速く缶壁に内容物が付着しにくいものであると共に、甲第8、9号証の「SVミキサー」は、スクリューと缶壁との間のクリアランス部で粉体層が形成されやすいものの、マイルドに粉体を混合するため、粒子破壊が少ない混合攪拌が行われるものであることからして、両ミキサーは、上記発明特定事項における「容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら粉砕を行う粉砕式濃縮乾燥機、薄膜式蒸発乾煥機」には当たらず、さらに、甲第8号証の「Double ribbon impeller」は、本件の比較例2の円錐形リボン混合乾燥機に相当するといえるところ、そもそも、本件特許の発明の詳細な説明において、比較例2の円錐形リボン混合乾燥機と実施例1の粉砕式濃縮乾燥機および実施例2の薄膜式蒸発乾煥機とは別の装置として認識(定義)されているといえることからして、甲第8号証の「Double ribbon impeller」も、比較例2の円錐形リボン混合乾燥機と同じく、上記発明特定事項における「粉砕式濃縮乾燥機、薄膜式蒸発乾煥機」には当たらないというべきである。 (ii)一方、甲第3ないし7号証には、上記発明特定事項における「粉砕式濃縮乾燥機、薄膜式蒸発乾煥機」に相当する乾燥機を用いて粉体を得る(製造する)ことの記載があり、また、一般に、粉砕式濃縮乾燥機、薄膜式蒸発乾煥機を用いて粉体を得る(製造する)ことは、本件特許に係る出願前の技術常識であるということができるものの、甲1発明は、上記で示したように、「ヨウ化リチウム水溶液にアルゴンを通し、ブレード攪拌機を用いた攪拌状態下で、チタン樽内のヨウ化リチウム水溶液を加熱し、10℃/minの加熱速度で加熱し、250℃まで昇温し、さらに昇温し続けて280℃に至り、溶液が粉体に変わるまでこの温度を保持し、その後除々に温度を下げて室温に至」らせることで、「0.5個の結晶水を含むヨウ化リチウム粉末」を得ることができるものであり、仮に、甲第3ないし7号証に記載の上記技術常識を適用することで、ブレード攪拌機に代えて「粉砕式濃縮乾燥機、薄膜式蒸発乾煥機」を用いるとしても、その圧力条件および加熱条件が、30kpa以下および(かつ)100℃以上250℃以下になることを当業者が容易に想到し得るとはいえない。 (iii)上記(i)(ii)より、上記相違点に係る発明特定事項を導き出すことは、甲1発明および甲第2ないし12号証に記載の事項(上記技術常識)に基いて当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 よって、本件発明1は、理由1、6、7、8により取り消されるものではなく、また、本件発明2~5は、本件発明1と同じく、上記発明特定事項を有するものであるので、同様に、理由1、6、7、8により取り消されるものではない。 (B)甲2発明を主引用例とする場合(理由2) 本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも、本件発明1は、上記「(A)」で示した甲1発明との相違点に係る発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は、「ヨウ化水素酸をLi2CO3と反応させたのち、生成物を蒸留水に溶解した溶解液(水溶液)をろ別し、このろ別により得られたろ液を85℃で加熱濃縮することで固化させ、さらに真空中、120℃で乾燥することで、無水LiIを得る」という点(以下、「相違点’」という。)で相違する。 以下、上記相違点’について検討する。 (α)甲第1、10ないし12号証には、上記相違点’に係る発明特定事項に関する記載も示唆もなく、また、上記「(A)」の「(i)」で示したように、甲第8号証の「PVミキサー」「Double ribbon impeller」および甲第8、9号証の「SVミキサー」は、上記発明特定事項における「容器の内面に付着した固形物を回転翼によって掻き取りながら粉砕を行う粉砕式濃縮乾燥機、薄膜式蒸発乾煥機」には当たらないというべきである。 (β)一方、甲第3ないし7号証には、上記発明特定事項における「粉砕式濃縮乾燥機、薄膜式蒸発乾煥機」に相当する乾燥機を用いて粉体を得る(製造する)ことの記載があり、また、一般に、粉砕式濃縮乾燥機、薄膜式蒸発乾煥機を用いて粉体を得る(製造する)ことは、本件特許に係る出願前の技術常識であるということができるものの、甲2発明は、上記で示したように、「ろ液を85℃で加熱濃縮することで固化させ、さらに真空中、120℃で乾燥することで、無水LiIを得る」ものであることからして、粉砕を意図するものではないので、甲2発明と、甲第3ないし7号証に記載の上記技術常識とは、乾燥の際に粉砕を行うかどうかという前提技術において相違し、甲2発明に、甲第3ないし7号証に記載の上記技術常識を適用する動機付けはないというべきである。 (γ)上記(α)(β)より、当該相違点’に係る発明特定事項を導き出すことは、甲2発明および甲第1、3ないし12号証に記載の事項(上記技術常識)に基いて当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 よって、本件発明1は、理由2により取り消されるものではなく、また、本件発明2~5は、本件発明1と同じく、上記発明特定事項を有するものであるので、同様に、理由2により取り消されるものではない。 第7-2 実施可能要件(理由3)およびサポート要件(理由4、9)について 理由3、4、9は、本件の課題を解決し得ない比較例2(円筒型リボン混合乾燥機)が、本件発明1~5に包含されるものであることを前提(根拠)にするものであるといえるところ、そもそも、本件特許の発明の詳細な説明において、比較例2の円錐形リボン混合乾燥機と実施例1の粉砕式濃縮乾燥機および実施例2の薄膜式蒸発乾煥機とは別の装置として認識(定義)されている(本件発明1~5に比較例2は包含されていない)といえ、また、本件訂正により、本件発明1~5は、新たに「容器、および回転翼を備えた乾燥機が、粉砕式濃縮乾燥機又は薄膜式蒸発乾煥機であり、除去粉砕工程における減圧条件が30kpa以下であり、加熱条件が、100℃以上、250℃以下であること」を発明限定事項にするものとなり、さらに、本件特許の発明の詳細な説明には、除去粉砕工程(【0051】ないし【0067】)および実施例・比較例(【0068】ないし【0078】)等の記載があることからして、実施可能要件およびサポート要件の違反はないというべきである。 したがって、本件発明1~5は、理由3、4、9により取り消されるものではない。 第7-3 異議申立人の意見書における主張について 異議申立人は、意見書において、「粉砕式濃縮乾燥機」および「薄膜式蒸発乾燥機」は、一般的に使用されている用語ではなく、また、本件特許の発明の詳細な説明の【0055】【0073】【0075】には具体的装置の名称しか記載されていないことからして、どのような装置まで含むのか理解できないので、本件請求項1~5の記載は、「粉砕式濃縮乾燥機」および「薄膜式蒸発乾燥機」との用語を明確化するものではなく、明確性要件を満たすものではない旨を主張している。 ここで、本件特許の発明の詳細な説明の【0073】【0075】【0078】において、「粉砕式濃縮乾燥機(実施例1)」および「薄膜式蒸発乾燥機(実施例2)」は、比較例2の円錐形リボン混合乾燥機とは異なる装置として、会社名および製品名が示されると共にその構造および機能も記載されているので、当業者にとってどのようなものであるか明確であるといわざるをえない。 したがって、意見書における異議申立人の主張は、妥当性を欠くものであり、採用することはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、申立理由および取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700088

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