特許異議申立
2018-700049
ゲームプログラム、ゲーム装置およびサーバ装置
- 審判番号
- 2018-700049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-078471
- 登録番号
- 特許第6165917号(P6165917)
- 請求日
- 2018年01月19日
- 審決日
- 2020年09月28日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社カプコン
- 【権利者代理人】奈良 泰宏
- 【異議申立人】日置 綾子
- 審判長/審判官
- 審判長 尾崎 淳史
- 審判官 森次 顕
- 審判官 藤本 義仁
- 分類
- P1651.112-YAA(A63F) / P1651.121-YAA(A63F) / P1651.537-YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6165917号発明「ゲームプログラム、ゲーム装置およびサーバ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6165917号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第6165917号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第6165917号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成28年4月8日に特許出願され、平成29年6月30日にその特許権の設定登録がされ、その特許について、平成30年1月19日に特許異議申立人日置綾子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、以下のとおりである。
平成30年 4月24日付け 申立人に対する審尋
同年 6月26日 申立人による回答書の提出
同年 8月29日付け 取消理由通知
同年11月 1日 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
平成31年 2月 4日付け 訂正拒絶理由通知
令和 1年 8月 2日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年10月10日 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年12月16日 申立人による意見書の提出
令和 2年 3月24日付け 取消理由通知
同年 5月20日 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正
請求による訂正を「本件訂正」という。)
平成30年11月1日及び令和1年10月10日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
なお、申立人は特許異議申立書において特許法第120条の5第5項に係る意見書の提出を希望しているが、同項ただし書によれば、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときは、この限りではないとされている。
そこで、本件についてみると、申立人は、令和1年10月10日に特許権者が提出した訂正請求(以下、この訂正請求による訂正を「前回訂正」という。)及び意見書に対してすでに意見書を提出しており、かつ、本件訂正における前回訂正からの変更点は、前回訂正で生じた軽微な記載の不備に関する点のみであって、当該変更点は本件特許異議申立てについての実質的な判断に影響を与えるものではない。
このため、合議体は、上記特別の事情があるときに該当すると判断し、本件訂正請求及び意見書に対して、申立人に改めて意見書提出の機会を与えないこととした。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの前記死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する管理手段」
とあるのを、
「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットした場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生し、前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしなかった場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する管理手段」
と訂正する。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0008】に
「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの前記死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する管理手段」
とあるのを、
「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットした場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生し、前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしなかった場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する管理手段」
と訂正する。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的について
(ア)訂正事項1に係る訂正は、「管理手段」が「前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する」のが、訂正前においては「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合」であったものを、(a)「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットした場合」、又は、(b)「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしなかった場合」と訂正するものである。
そして、訂正後の請求項1に係る発明においては、「第2攻撃」には、上記「(a)」か「(b)」かのいずれか、すなわち、第2オブジェクトにヒットするかしないかのいずれかしかないから、訂正後においては、「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合」には、「管理手段」は、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットするかしないかにかかわらず、常に「前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する」ことが明示的に特定されているといえる。
一方、訂正前の請求項1では第2攻撃が第2オブジェクトにヒットするかしないかと第2オブジェクトの死亡モーションの再生の態様との関係について明示的に特定されていなかったから、訂正事項1に係る訂正は、第2攻撃の第2オブジェクトへのヒットと第2オブジェクトの死亡モーションの再生との関係をより明確にするためのものといえる。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)また、訂正事項1に係る訂正は、「前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの前記死亡モーションを再生せず」を、「前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず」と訂正することを含むものであるが、請求項1の当該箇所より前には「死亡モーション」について記載されておらず、「前記死亡モーション」が「死亡モーション」の誤記であることは明らかである。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものでもある。
イ.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)には、「連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたと判定された場合」(段落【0075】)及び「連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしていないと判定した場合」(段落【0077】)のそれぞれについて、「攻撃判定部31Bは第1攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算し、管理部31Cは敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば死亡状態とする」(段落【0078】)ことが記載されているものと認められる。
そして、本件特許明細書の段落【0066】に「図5を例にとれば、攻撃判定部31Bによって第1攻撃(突進)が敵オブジェクト51にヒットしたと判定されたとき、連続技の攻撃モーションの再生中であれば、攻撃判定部31Bは敵オブジェクト51の体力値を減少させるが、所定条件を満たすまで体力値が所定値以下(0)となった場合であっても死亡状態としない(たとえば、死亡モーションを再生しない)。そして、管管理部31Cは所定条件を満たしたあとに、この敵オブジェクト51を死亡状態とする(死亡モーションを再生する)。」と記載されていることからみて、「死亡状態とする」は例えば「死亡モーションを再生する」ことであって、上記段落【0078】に記載された「死亡状態とする」ことにも同様に「死亡モーションを再生する」ことが含まれると解される。
また、本件特許明細書には、「これらの保留フラグにより、連続技の攻撃モーションが終了するまで、敵オブジェクト51を死亡状態としないようにできるとともに、第2攻撃が敵オブジェクト51にヒットしなかった場合または第2攻撃が敵オブジェクト51にヒットしたが第2攻撃のヒットにより死亡状態にならない場合は、第1攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクト51の体力値を減少させることができる。」(段落【0072】)と記載されているから、「死亡状態」とする(死亡モーションを再生する)のは「連続技の攻撃モーションが終了」した後であると認められる。
(イ)そうすると、本件特許明細書には、第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたと判定された場合にも、ヒットしていないと判定した場合にも、連続技の攻撃モーションの再生が終了した後に、第1攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算し、敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば、連続技の攻撃モーションが終了した後に死亡モーションを再生することが記載されているといえる。
(ウ)してみると、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
(エ)また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(オ)したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ.訂正に関する申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は令和1年12月16日に提出した意見書において、同年10月10日になされた訂正請求について概略以下の「a.ないしc.」の点を主張している。
a.「当該訂正後の請求項1は、「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合(以下「判定A」ともいう。)であって、かつ、前記2攻撃が前記2オブジェクトにヒットした場合(以下「判定B」ともいう。)」と記載されているところ、判断条件として『「判定A」かつ「判定B」の場合』が記載されています。
ここで、「判定A」かつ「判定B」の場合には、「判定A」の処理が実行され、次いで「判定B」の処理が実行される場合と、「判定B」の処理が実行され、次いで「判定A」の処理が実行される場合の双方が含まれると考えられます。」(第3ページ最下行~第4ページ第9行)
「訂正後の請求項1にかかる本件発明を出願当初明細書の段落0075~段落0078ならびに図6に記載された態様に当てはめると、「判定A」が「ステップS107」に相当し、「判定B」が「ステップS104」に相当します。そうすると、出願当初明細書の段落0075~段落0078ならびに図6のフローチャートには、「判定B」の処理が実行され、次いで「判定A」の処理が実行される場合については記載されていますが、「判定A」の処理が実行され、次いで「判定B」の処理が実行される場合については記載されておりません。
つまり訂正事項1の訂正は、明細書または図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではありません。
従って、当該訂正は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に違反した訂正であり、当該訂正は認められるものではありません。」(第4ページ最下行~第5ページ第12行)
b.「本願の出願当初明細書には、攻撃判定部31Bにより第1攻撃が敵オブジェクト51にヒットしたと判定された場合において、当該第1攻撃がヒットしていないと保留する態様が2つ記載されています。1つ目の態様は、攻撃判定部31Bにより第1攻撃が敵オブジェクト51にヒットしたと判定された場合、所定条件を満たすまで攻撃判定部31Bが敵オブジェクト51の体力値を減少させず、体力値の減少処理のタイミングを保留することを特徴とする「第1攻撃がヒットしていない状態(1)」(段落0061~段落0063)です。2つ目の態様は、攻撃判定部31Bにより第1攻撃が敵オブジェクト51にヒットしたと判定された場合、敵オブジェクト51の体力値を減少させ、体力値が所定値以下(0)となった場合であっても、所定条件を満たすまで敵オブジェクト51を死亡状態としないように死亡状態にする処理のタイミングを保留することを特徴とする「第1攻撃がヒットしていない状態(2)」(段落0064~段落0066)です。」(第5ページ下から2行~第6ページ第12行)
「このように出願当初明細書には2つの「第1攻撃がヒットしていない状態(1),(2)」が記載されており、「第1攻撃がヒットしていない状態(1)」についてのみ、図6によりフローチャートによる説明がなされています。」(第6ページ下から6行~下から3行)
「当該訂正前の請求項1の管理手段は、「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの前記死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する」ことを特徴とするところ、上記態様に当てはめると、第1攻撃が敵オプジェクトにヒットしたことに応じて敵オブジェクトの体力値を減算し、体力値が所定値以下となった場合は、所定条件を満たすまで敵オブジェクトを死亡状態としないように死亡状態にする処理のタイミングを保留することを特徴とする「第1攻撃がヒットしていない状態(2)」(段落0064~段落0066)に相当する発明であることが確認できます。
(ii)訂正後の請求項1にかかる本件発明の認定
一方、本件訂正請求書の摘記7(3)イ(ア)cにおいて特許権者により明確に説明されているように、当該訂正事項1は、出願当初明細書の段落0075、0077および0078並びに図6に基づいて訂正されたものです。上述の通り、出願当初明細書の段落0075、0077および0078並びに図6は、「第1攻撃がヒットしていない状態(1)」の態様に相当する発明が具体的に記載されています。
そうすると、当該訂正事項1により訂正された訂正後の請求項1にかかる発明は、「第1攻撃がヒットしていない状態(1)」に基づく発明から構成されていると認定されます。
(iii)当該訂正の適法性について
上述の通り、訂正前の請求項1にかかる発明は、「第1攻撃がヒットしていない状態(2)」に基づく発明から構成され、訂正後の請求項1にかかる発明は、「第1攻撃がヒットしていない状態(1)」に基づく発明から構成されているところ、訂正事項1の訂正は、実質上特許詰求の範囲を変更する訂正であると認定されます。
従って、当該訂正は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に違反した訂正であり、当該訂正は認められるものではありません。」(第6ページ下から2行~第7ページ最下行)
c.「上述の通り当該訂正後の請求項1は、「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合(判定A)であって、かつ、前記2攻撃が前記2オブジェクトにヒットした場合(判定B)」と記載されています。
図6を参照すると、当該判断条件は、第2攻撃ヒット処理(ステップS105)において、第2攻撃によって第2オブジェクトの体力値が所定値以下にならなかった場合に相当します。これは、第2攻撃によって第2オブジェクトの体力値が所定値以下になってしまうと、判定Aを満たさなくなってしまうため、当該判断条件は、第2攻撃によって第2オブジェクトの体力値が所定値以下にならなかった場合が該当することになります。
(ii)当該訂正の適法性について
上記認定に鑑みれば、死亡モーションを再生するか否かは、第1攻撃によって第2オブジェクトの体力値が所定値以下になったか否かのみによって判断されることになります。
従って、第2攻撃がヒットした場合であっても、ヒットしなかった場合であっても、「第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合」に「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記死亡モーションを再生する」ものであり、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしたか否かは死亡モーションの再生には関係がありません。
このように、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしたか否かが死亡モーションの再生に関係がないところ、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしたか否かの判定条件を追加する訂正は、特許請求の範囲を減縮(特許法第120条の5第2項第1号)する訂正には該当しません。」(第9ページ第8行~第10ページ第5行)
「従って、当該訂正は特許法第120条の5第2項第1号の規定に違反した訂正であり、当該訂正は認められるものではありません。」(第11ページ第6~7行)
(イ)申立人の主張について
申立人の上記主張について検討する。
a.「(ア)a.」の主張について
(a)本件特許明細書の段落【0061】ないし【0064】には、「第1攻撃がヒットしていない状態(1)」(以下「状態(1)」という。)及び「第1攻撃がヒットしていない状態(2)」(以下「状態(2)」という。)について、それぞれ以下の点が記載されている。
「【0061】
・第1攻撃がヒットしていない状態(1)
以下のことにより、所定条件を満たすまで第1攻撃がヒットしていない状態とすることができる。
【0062】
攻撃判定部31Bにより第1攻撃が敵オブジェクト51にヒットしたと判定されたときに、連続技の攻撃モーションが再生中であるか否かを判定する。連続技の攻撃モーションが再生中である場合は、所定条件を満たすまで攻撃判定部31Bが敵オブジェクト51の体力値を減少させない。この場合、攻撃判定部31Bは、この体力値の減少処理のタイミングを、所定条件を満たしたあとのタイミングにスライドする(保留する)。
【0063】
図5を例にとれば、攻撃判定部31Bにより第1攻撃(突進)が敵オブジェクト51にヒットしたと判定されたとき、連続技の攻撃モーションの再生中であれば、攻撃判定部31Bは敵オブジェクト51の体力値を減少させない。そして、攻撃判定部31Bは所定条件を満たしたあとに、体力値の減少処理を行う。さらに、管理部31Cは、敵オブジェクト51の体力値が所定値(0)以下となった場合、この敵オブジェクト51を死亡状態とする。
【0064】
・第1攻撃がヒットしていない状態(2)
また、これに限らず、以下のことにより、所定条件を満たすまで第1攻撃がヒットしていない状態とすることができる。
【0065】
攻撃判定部31Bにより第1攻撃が敵オブジェクト51にヒットしたと判定されたときに、攻撃判定部31Bは敵オブジェクト51の体力値を減少させ、連続技の攻撃モーションが再生中であるか否かを判定する。連続技の攻撃モーションが再生中である場合は、管理部31Cは、この体力値の減少により敵オブジェクト51の体力値が所定値以下(0)となった場合であっても、所定条件を満たすまで敵オブジェクト51を死亡状態としないようにする。この場合、管理部31Cは、死亡状態にする処理のタイミングを、所定条件を満たしたあとのタイミングにスライドする(保留する)。
【0066】
図5を例にとれば、攻撃判定部31Bによって第1攻撃(突進)が敵オブジェクト51にヒットしたと判定されたとき、連続技の攻撃モーションの再生中であれば、攻撃判定部31Bは敵オブジェクト51の体力値を減少させるが、所定条件を満たすまで体力値が所定値以下(0)となった場合であっても死亡状態としない(たとえば、死亡モーションを再生しない)。そして、管理部31Cは所定条件を満たしたあとに、この敵オブジェクト51を死亡状態とする(死亡モーションを再生する)。」
以上の記載からみて、本件特許明細書における「状態(1)」及び「状態(2)」はいずれも、「第1攻撃が敵オブジェクト51にヒットしたと判定されたとき」に、敵オブジェクト51に対して、
・「体力値の減少処理」
・「死亡状態にする処理」(死亡モーションを再生する処理)
の2つの処理を行うものであって、「状態(1)」の場合は、これら2つの処理をともに保留し、「状態(2)」の場合は、これら2つの処理のうちの「死亡状態にする処理」(死亡モーションを再生する処理)のみを保留するものであると理解できる。
(b)一方、本件特許明細書の段落【0069】ないし【0081】の「<処理の流れ>」の項には、以下の点が記載されている。
「【0070】
まず、攻撃実行部31Aが、連続技に関する攻撃入力信号を受信すると(ステップS100)、受信した信号に応じた連続技の攻撃モーションを再生する(ステップS101)。
【0071】
そして、攻撃判定部31Bが、連続技の第1攻撃が敵オブジェクトにヒットしたか否かを判定する(ステップS102)。……
【0072】
ステップS102の結果、連続技の第1攻撃が敵オブジェクトにヒットしたと判定された場合(ステップS102:YES)、攻撃判定部31Bまたは管理部31Cは、第1攻撃がヒットしたことに関する処理を保留する(ステップS103)……
……
【0075】
ステップS104の結果、連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたと判定された場合(ステップS104:YES)、攻撃判定部31Bまたは管理部31Cは、第2攻撃がヒットしたことに関する処理を実行する(ステップS104)。すなわち、攻撃判定部31Bは、第2攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算し、管理部31Cは敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば死亡状態とする。
【0076】
次に、管理部31Cは、第1攻撃処理が保留されているか否かを判定する(ステップS106)。
……
【0078】
ステップS106の結果、第1攻撃処理が保留されていると判定された場合(ステップS106:YES)、攻撃判定部31Bまたは管理部31Cは、第1攻撃がヒットしたことに関する処理を実行して(ステップS107)、処理を終了する。すなわち、攻撃判定部31Bは第1攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算し、管理部31Cは敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば死亡状態とする。」
また、本件特許明細書の段落【0069】に「図6は、ゲーム装置の攻撃実行処理の流れを示すフローチャートである。」と記載されていることから見て図6は上記「<処理の流れ>」に対応するものであると認められるところ、図6は以下のものである。
(c)上記「(b)」の「<処理の流れ>」は、「連続技の攻撃モーションを再生」(ステップS101)した状態で、「連続技の第1攻撃が敵オブジェクトにヒットしたか否かを判定」(ステップS102)し、「連続技の第1攻撃が敵オブジェクトにヒットしたと判定された場合」、「第1攻撃がヒットしたことに関する処理を保留」(ステップS103)して、「連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたか否かを判定」(ステップS104)して、「第2攻撃がヒットしたことに関する処理を実行」し、次に「第1攻撃処理が保留されているか否かを判定」(ステップS106)し、「第1攻撃処理が保留されていると判定された場合」、「第1攻撃がヒットしたことに関する処理を実行して(ステップS107)」、「第1攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算し」、「敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば死亡状態とする」ものである。
そうすると、上記「(b)」の「<処理の流れ>」においては、「第1攻撃処理が保留されていると判定された場合」に、「敵オブジェクトの体力値を減算」する処理と「敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば死亡状態とする」処理との2つの処理を行っているから、「第1攻撃がヒットしたことに関する処理を保留」(ステップS103)する際に、これら2つの処理をともに保留するものであって、上記「(a)」の「状態(1)」に対応する態様であると認められる。
そして、この場合には、「連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたか否かを判定」(ステップS104)した後に、「第1攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算し」ているから、申立人のいう「判定B」の処理が行われた後に「判定A」の処理が行われているものと認められる。
(d)一方、上記「(b)」の「<処理の流れ>」の段落【0069】には、「また、各処理は本実施形態に限らず、同時並行的に実行されるものであってもよく、順序は適宜変更されてもよい。」と記載されており、「<処理の流れ>」における各処理の順序が変更可能であることが示唆されている。
そして、上記「(a)」で検討したとおり、「状態(2)」は「死亡状態にする処理」のみを保留するものであるから、上記「(b)」の「<処理の流れ>」において、「連続技の第1攻撃が敵オブジェクトにヒットしたか否かを判定」(ステップS102)する際に、「体力値の減少処理」すなわち「第1攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算」(段落【0078】)する処理は保留せずに行う一方、「死亡状態にする処理」すなわち「敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば死亡状態とする」(段落【0078】)処理は保留して、「連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたか否かを判定」(ステップS104)して、「第2攻撃がヒットしたことに関する処理を実行」し、次に「第1攻撃処理が保留されているか否かを判定」(ステップS106)し、「第1攻撃処理が保留されていると判定された場合」、「敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば死亡状態とする」処理を行うように、処理の順序を変更したものであると理解できる。
そうすると、「状態(2)」の場合には、「第1攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算」する処理をした後に、「連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたか否かを判定」することになるから、申立人のいう「判定A」の処理が行われた後に「判定B」の処理が行われているものと認められる。
(e)以上を総合すると、本件特許明細書等には、申立人のいう「判定B」の処理が実行され、次いで「判定A」の処理が実行される場合が記載されるのみならず、「判定A」の処理が実行され、次いで「判定B」の処理が実行される場合についても記載ないしは示唆されているといえる。
してみると、申立人の上記「(ア)a.」の主張を採用することはできない。
b.「(ア)b.」の主張について
(a)本件特許明細書の「状態(1)」及び「状態(2)」の場合には、それぞれ上記「a.(c)」及び同「(d)」で検討したとおりの順序で処理が行われるから、第2オブジェクトの体力値をどのステップで減算するかは異なるものの、いずれの場合にも「第1攻撃が第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算」するとともに、「第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合は、連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する」ものであるといえる。
そうすると、本件訂正前の請求項1に係る発明は、「状態(1)」及び「状態(2)」の両者の場合を包含するものであると認められる。
(b)また、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットした場合及びヒットしなかった場合について、本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0075】
ステップS104の結果、連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたと判定された場合(ステップS104:YES)、攻撃判定部31Bまたは管理部31Cは、第2攻撃がヒットしたことに関する処理を実行する(ステップS104)。すなわち、攻撃判定部31Bは、第2攻撃の攻撃力に応じて敵オブジェクトの体力値を減算し、管理部31Cは敵オブジェクトの体力値が所定値以下となれば死亡状態とする。
【0076】
次に、管理部31Cは、第1攻撃処理が保留されているか否かを判定する(ステップS106)。
【0077】
なお、ステップS104の結果、連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしていないと判定した場合(ステップS104:NO)、ステップS105の処理を実行せずに、第1攻撃処理が保留されているか否かを判定する(ステップS106)。」
上記記載によれば、本件特許明細書には「連続技の第2攻撃が敵オブジェクトにヒットしたと判定された場合」であっても、「ヒットしていないと判定した場合」であっても、「第1攻撃処理が保留されているか否かを判定する」することが開示されている。そして、上記「(a)」のとおり、本件特許明細書の「状態(1)」及び「状態(2)」の場合には、それぞれ上記「a.(c)」及び同「(d)」で検討したとおりの順序で処理が行われるから、「状態(1)」及び「状態(2)」の場合は、いずれも、「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットした場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生し、前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしなかった場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する」ものであるといえる。
そうすると、本件訂正後の請求項1に係る発明も、「状態(1)」及び「状態(2)」の両者の場合を包含するものであると認められる。
(c)訂正事項1に係る訂正は、上記「a.(c)」での検討のとおり、「状態(1)」に対応する本件特許明細書の「<処理の流れ>」の段落【0075】、【0077】及び【0078】並びに図6に基づくものであると認められるものの、「状態(2)」の場合についても、上記「a.(d)」で示したとおり、「<処理の流れ>」についての段落【0070】ないし【0078】の記載及び「状態(2)」についての段落【0064】ないし【0066】の記載に基づいて、その処理の流れを理解することができる。
そうすると、訂正事項1に係る訂正が本件特許明細書及び段落【0075】、【0077】及び【0078】並びに図6に基づくからといって、本件訂正後の請求項1に係る発明が専ら「状態(1)」のみに対応するものであると解することはできない。
(d)以上のとおり、本件訂正前後の請求項1に係る発明はともに、本件特許明細書の「状態(1)」及び「状態(2)」の両方の態様を包含するものであると認められるから、申立人の上記「(ア)b.」の主張を採用することはできない。
c.「(ア)c.」の主張について
(a)申立人は、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当せず、当該訂正は認められない旨を主張するが、上記「ア.(ア)」で検討したように、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号の誤記の訂正及び同第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
(b)そうすると、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするか否かにかかわらず、特許法第120条の5第2項の規定に適合するものであるから、申立人の「(ア)c.」の主張を採用することはできない。
(2)訂正事項2について
上記訂正事項2係る訂正は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載を整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、当該訂正は、上記訂正事項1に係る訂正と同様に、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし3は、請求項2及び3がそれぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
訂正事項2は、願書に添付した明細書を訂正するものであって、一群の請求項である訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3に関係する訂正である。
したがって、本件訂正請求は一群の請求項〔1-3〕に対して請求されたものである。
3.結論
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正請求により訂正された請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正特許発明1」ないし「本件訂正特許発明3」といい、これらを合わせて「本件訂正特許発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
コンピュータを、
ゲーム空間に第1オブジェクトおよび第2オブジェクトを生成するゲーム進行手段、
少なくとも第1攻撃および当該第1攻撃のあとに実行される第2攻撃をひとつの攻撃モーションとして含む一連の攻撃(以下、連続技という)を前記第1オブジェクトに実行させる攻撃実行手段と、
前記第1攻撃および前記第2攻撃のそれぞれが前記第2オブジェクトにヒットしたことを判定し、前記第1攻撃および前記第2攻撃のそれぞれに基づいて前記第2オブジェクトの体力値を減算する攻撃判定手段と、
前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットした場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生し、前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしなかった場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する管理手段と、
して機能させるゲームプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のゲームプログラムを記憶した記憶部と、前記ゲームプログラムを実行するコンピュータと、を備えるゲーム装置。
【請求項3】
請求項1に記載のゲームプログラムを記憶した記憶部と、前記ゲームプログラムを実行するコンピュータと、を備えるサーバ装置。」
第4 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
令和1年8月2日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要は、つぎのとおりである。
1.特許法第29条第1項第2号(新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証並びに参考資料1ないし5から把握される公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない
2.特許法第29条第2項(進歩性)
(1)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証並びに参考資料1ないし5から把握される公然実施された発明から当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。
(2)本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証並びに参考資料1ないし5から把握される公然実施された発明、及び、甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
甲第1号証 「鉄拳6」のプレイ動画、特許異議申立人作成、作成日:平成29年10月5日(特許異議申立書における甲第1号証)
甲第2号証 “鉄拳6”、週刊ファミ通、株式会社エンターブレイン、平成21年11月12日発行、No.1091、第157ページ(同甲第2号証)
甲第3号証 石田賀津男、“【レビュー】NVIDIAのクラウドゲーミング「GRIDゲーム」が1080/60pに対応~「SHIELDタブレット」で使用感をテスト”、[online]、公知日:2015年5月30日、PC Watch、インターネット:<URL:https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/review/704478.htm>(Internet Archive Wayback Machineによる保存日:2016年7月3日、[平成30年1月17日検索]、インターネット:<URL:https://web.archive.org/web/20160703063103/https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/review/704478.htm>)(同甲第3号証)
参考資料1 甲第1号証に係る「鉄拳6」のプレイ動画のキャプチャ画像及び説明、特許異議申立人作成、作成日:平成29年10月5日(同参考資料1)
参考資料2 “Playstation3”、[online]、公知日:2016年3月10日、フリー百科事典『ウィキペディア』、インターネット:<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/Playstation_3>(Internet Archive Wayback Machineによる保存日:2016年3月25日、[平成29年12月13日検索]、インターネット:<URL:https://web.archive.org/web/20160325214108/https://ja.wikipedia.org/wiki/Playstation_3>)(同参考資料2)
参考資料3 「鉄拳6」(プレイステーション3版)のパッケージ及び内容物の写真並びに説明、特許異議申立人撮影、撮影日:平成29年12月20日(同参考資料3)
参考資料4 「鉄拳6」(プレイステーション3版)の取扱説明書及び説明(同参考資料4)
参考資料5 「鉄拳6」の媒体をプレイステーション3に装着し「鉄拳6」をプレイした動画、特許異議申立人作成、作成日:平成30年6月25日(平成30年6月26日付け回答書における参考資料5)
第5 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由についての当審の判断
1.甲各号証及び各参考資料について
(1)甲第1号証及び甲第2号証並びに参考資料1ないし5について
ア.甲第1号証及び参考資料1
甲第1号証の動画からは、以下の事項を看取することができる(以下では、動画の再生時間について、例えば1分23秒のことを「[01:23]」のように示す。また、下線は当審で付した。なお、甲第1号証の動画のキャプチャ画像である参考資料1に対応する画像がある場合には、各項の末尾の括弧内に当該画像の番号を付した。)。
(ア)[00:02]に、画面に「鉄拳○R」(当審注:「○R」は「R」を「○」で囲んだ囲み文字を示す。以下同様。)及び「TEKKEN6」と表示される点(参考資料1の1)。
(イ)[01:23]に、画面に「COMMAND LIST」が赤色で表示されるとともに、その下に「コマンド技表を表示します。」と表示される点。
(ウ)[01:37]に、画面左側に「裏旋空刃脚」が赤色で表示されるとともに、同じ欄の右側に左から順に「右斜め上向き矢印」、「青色のボタン」、「赤色のボタン」が表示される点。
(エ)[01:41]から[01:43]にかけて、画面左上部に「裏旋空刃脚」と表示された画面で、左側のキャラクタが左後ろ回し蹴りを実行して右側のキャラクタにヒットすると「DAMAGE 24(120%)」と表示され、連続して右後ろ回し蹴りを実行して右側のキャラクタにヒットすると「DAMAGE 12(60%) 2 HIT COMBO 36 DAMAGE」と表示される点(参考資料1の6~1の12)。
(オ)[03:01]に、画面左方に「VS BATTLE」、「プレイヤー同士が1対1の対戦を行うモードです。」と表示される点(参考資料1の19)。
(カ)[03:20]に、画面左方に男性キャラクタの画像とともに「HEIHACHI」と、画面右方に女性キャラクタの画像ととともに「LILI」と表示される点(参考資料1の20)。
(キ)[03:44]から、画面の左側に男性キャラクタ、右側に女性キャラクタが表示されるとともに、それぞれの上部にバーが緑色に表示され、画面に「READY」及び「FIGHT」と順に表示されると、2人のキャラクタが格闘する様子が表示される点。
(ク)[04:00]から[04:03]にかけて、左側の男性キャラクタが右側の女性キャラクタに左後ろ回し蹴りを実行すると、女性キャラクタの上部のバーの緑色の部分の一部が赤くなり、連続して右後ろ回し蹴りを実行すると、女性キャラクタの上部のバーの緑色の部分のさらに一部が赤くなった後、赤い部分が消えてバーの緑色の部分が短くなり、女性キャラクタが倒れる動きが表示される点(参考資料1の21~1の25)。
(ケ)[04:18]から[04:20」にかけて、左側の男性キャラクタが右側の女性キャラクタに左後ろ回し蹴りを実行すると、画面中央に「K.O.」と表示されるとともに、女性キャラクタの上部のバーの緑色の部分全体が赤くなり、連続して右後ろ回し蹴りを実行すると、女性キャラクタの上部のバーの赤い部分が消えて長さが0になり、女性キャラクタが倒れた後にのけぞる動きが表示される点(参考資料1の26~1の31)。
イ.甲第2号証
甲第2号証は、本件特許の出願日前の平成21年11月12日に頒布されたものであって、以下の事項が記載されている。
(ア)「いますぐ買える!ゲーム情報◆鉄拳6」(第157ページのページ右端部)
(イ)「鉄拳 TEKKEN6 開幕!!」(第157ページ上部)
(ウ)「プレイステーション PS3」、「10月29日発売」(第157ページ記事見出し)
(エ)「アーケードで大人気の3D対戦格闘(鉄拳)シリーズの最新作が、いよいよ家庭用になって登場だ!」(第157ページ記事本文)
ウ.参考資料2
参考資料2には、以下の記載がある。
(ア)「PlayStation 3(プレイステーションスリー)は、日本では2006年11月11日に発売された家庭用ゲーム機。」(第1ページ本文第1~2行)
(イ)「CPU
Cell Broadband Engine(最大駆動周波数3.2GHz)
1基のPowerPCベース 64ビットコア(PPE)
1基のVMX ベクトルユニット(PPEに内包)
512KB 共有L2キャッシュ
8基のSPE(うち1基は冗長性確保のため非使用(つまり不良コアが1基あっても品質に影響がない。詳しくは後述)。またOS用に常時1基が確保されているため、アプリケーションが使用可能なのは6基)。
7基の128bit 128 SIMD GPRs
7基の256KB SRAM(各SPE用)
浮動小数点演算性能:218 GFLOPS」(第15ページ第5~14行)
(ウ)「メモリ
主メモリ:256MB XDR DRAM @3.2GHz
VRAM:256MB GDDR3(128bit)@650MHz」(第15ページ第24~26行)
(エ)「HDDスロット
2.5インチSATA接続ハードディスクドライブ x1
※HDDの交換が可能」(第16ページ第15~17行)
エ.参考資料3
参考資料3からは、以下の点を看取することができる。
(ア)パッケージの内容物であるディスクに、ブルーレイディスクを示すロゴマークが付されるとともに、「鉄拳○R」、「TEKKEN6」及び「Playstation 3」と記載されている点(参考資料3の2右側の写真)。
オ.参考資料4
参考資料4からは、以下の点を看取することができる。
(ア)「鉄拳○R」、「TEKKEN6」「“TEKKEN6” SOFTWARE MANUAL」と記載されている点(参考資料4の1右側の写真)。
カ.参考資料5
参考資料5からは、以下の点を看取することができる。
(ア)「PLAYSTATION 3」のロゴが描かれた機器に、ブルーレイディスクを示すロゴマークが付されるとともに、「鉄拳○R」、「TEKKEN6」及び「Playstation 3」と記載されたディスクを挿入すると、[2:48]に画面に「鉄拳○R」及び「TEKKEN6」と表示される点。
キ.公然実施について
甲第2号証の記事が掲載された雑誌「WEEKLYファミ通 No.1091」の発行日が平成21年11月12日であることからして、上記「イ.(ウ)」の「10月29日」は同誌の発行日と同年の平成21年10月29日のことであって、「10月29日発売」との記載から「鉄拳6」は平成21年10月29日に発売されたものと認められる。
また、上記「イ.(ア)」の「いますぐ買える!ゲーム情報◆鉄拳6」との記載から見て、「鉄拳6」は同誌の発行日である平成21年11月12日には「WEEKLYファミ通」の読者であるゲームユーザーが「いますぐ買える」状態であり、既に購入可能であったと認められる。
そうすると、本件特許出願の出願日である平成28年4月8日が、「鉄拳6」の発売日である平成21年10月29日から6年以上後であることからして、「鉄拳6」は本件特許の出願日前に公然知られ得る状態で販売されていたものと判断し得る。
また、上記「ウ.(ア)」によれば「プレイステーション3」は2006年11月11日に発売されたものと認められる。
さらに、上記「イ.(ア)ないし(エ)」から「鉄拳6」は「プレイステーション3」用の「ゲーム」であって、「プレイステーション3」で動作するものであるから、「鉄拳6」の発売時には「プレイステーション3」は既に販売されていたものと解するのが自然である。
そうすると、「プレイステーション3」は本件特許の出願日前に販売されていたといえる。
ク.甲第1号証及び甲第2号証並びに参考資料1ないし5から把握できる発明
(ア)上記「ア.(ア)」及び「エ.ないしカ.」を総合すると、参考資料3のパッケージの内容物であるディスク(上記「エ.」参照。)と、参考資料5の動画において「PLAYSTATION 3」のロゴが付された機器に挿入されるディスク(上記「カ.」参照。)とに相違は認められないから、両者は同一のソフトウェアのディスクであると推認され、参考資料5の動画の[2:48]の画面(上記「カ.」参照。)と甲第1号証の動画の[00:02]の画面とに相違は認められないから、両者は同一のソフトウェアのディスクを挿入した際に表示される動画であると推認される。
そうすると、甲第1号証の動画は、参考資料3のパッケージの内容物であるディスクを「プレイステーション3」に挿入して実行されるものであって、「プレイステーション3」における「鉄拳6」のプレイ動画であると認められる。
(イ)上記「イ.(ア)ないし(エ)」の記載からみて、甲第2号証は「鉄拳6」についての記事であって、「鉄拳6」は「プレイステーション3用の3D対戦格闘ゲーム」であると認められる。
(ウ)上記「(ア)及び(イ)」を踏まえると、上記「ア.」は、「鉄拳6」のゲーム画面であって、「ア.(カ)ないし(ケ)」における男性キャラクタは「HEIHACHI」であり、女性キャラクタは「LILI」であると認められるから、「ゲーム画面に「HEIHACHI」及び「LILI」のキャラクタが表示される」といえる。
(エ)上記「ア.(イ)ないし(エ)」から、「裏旋空刃脚」は、「右斜め上向き矢印」、「青色のボタン」、「赤色のボタン」のコマンドが順に入力されると、左後ろ回し蹴りを実行した後、続いて右後ろ回し蹴りを実行する技であるといえるところ、これを踏まえると、上記「ア.(ク)及び(ケ)」並びに「(ケ)」から、「右斜め上向き矢印、青色のボタン、赤色のボタンのコマンドが順に入力されると、画面上で「HEIHACHI」が左後ろ回し蹴りを実行した後、続いて右後ろ回し蹴りを実行する「裏旋空刃脚」を実行する」といえる。
(オ)上記「(イ)」のとおり、「鉄拳6」は「プレイステーション3用の3D対戦格闘ゲーム」であると認められるところ、格闘ゲームにおける通常のゲームシステム及び画面構成を踏まえると、「ア.(キ)ないし(ケ)」の画面における「バー」が体力値を表示し、「バー」の緑色の部分が短くなることが体力値の表示が減少することであり、「バー」の長さが0になることが体力値の表示が0になることであることは明らかである。そうすると、上記「ア.(ク)」から、「「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれが「LILI」に対して実行されると、左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれに基づいて「LILI」の体力値の表示が減少する」といえ、上記「ア.(ケ)」から、「「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴りが「LILI」に対して実行されて、「K.O.」が表示され「LILI」の体力値の表示が0になり、右後ろ回し蹴りが「LILI」に対して実行されると、「LILI」が倒れた後にのけぞる動きが表示される」といえる。
(カ)上記「ウ.(ア)ないし(エ)」から、「プレイステーション3は「メモリ」、「HDD」及び「CPU」を備えるところ、「メモリ」及び「HDD」が「記憶装置」であることは明らかであるから、「プレイステーション3は記憶装置及びCPUを備える」といえる。そして、コンピュータ装置における各ハードウェアの通常の機能・作用を踏まえると、コンピュータ装置である「プレイステーション3」でゲームを実行するにあたって、「プレイステーション3」が備える「記憶装置がゲームを記憶する」こと、及び、「CPUがゲームを実行する」ことは当業者にとって明らかである。
上記「(ア)ないし(カ)」を総合すると、本件特許の出願前に次の発明が公然実施されていたものと認められる。
「ゲーム画面に「HEIHACHI」及び「LILI」のキャラクタが表示され、
右斜め上向き矢印、青色のボタン、赤色のボタンのコマンドが順に入力されると、画面上で「HEIHACHI」が左後ろ回し蹴りを実行した後、続いて右後ろ回し蹴りを実行する「裏旋空刃脚」を実行し、
「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれが「LILI」に対して実行されると、左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれに基づいて「LILI」の体力値の表示が減少し、
「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴りが「LILI」に対して実行されて、「K.O.」が表示され「LILI」の体力値の表示が0になり、右後ろ回し蹴りが「LILI」に対して実行されると、「LILI」が倒れた後にのけぞる動きが表示される
プレイステーション3用の3D対戦格闘ゲーム「鉄拳6」。」(以下「引用発明1-1」という。)
「ゲーム画面に「HEIHACHI」及び「LILI」のキャラクタが表示され、
右斜め上向き矢印、青色のボタン、赤色のボタンのコマンドが順に入力されると、画面上で「HEIHACHI」が左後ろ回し蹴りを実行した後、続いて右後ろ回し蹴りを実行する「裏旋空刃脚」を実行し、
「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれが「LILI」に対して実行されると、左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれに基づいて「LILI」の体力値の表示が減少し、
「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴りが「LILI」に対して実行されて、「K.O.」が表示され「LILI」の体力値の表示が0になり、右後ろ回し蹴りが「LILI」に対して実行されると、「LILI」が倒れた後にのけぞる動きが表示される
プレイステーション3用の3D対戦格闘ゲーム「鉄拳6」を記憶した記憶装置と、3D対戦格闘ゲーム「鉄拳6」を実行するCPUとを備えるプレイステーション3。」(以下「引用発明1-2」という。)
(2)甲第3号証について
本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア.「NVIDIAが提供するクラウドゲームサービス「GRIDゲームストリーミングサービス」が、β版として1080/60p(1,920×1,080ドット60fps)でのサービスに対応した。」(第1ページ本文第1ないし3行)
イ.「ゲームのあらゆる処理をNVIDIAのサーバー側で行い、その映像と音声をストリーミングでユーザーに提供する。」(第1ページ本文第5ないし7行)
ウ.「では早速、実際のゲームを見ていこう。SHIELD Hubアプリのメニューから「GRIDゲーム」を選ぶと、プレイできるゲームがリストアップされる。現在は約50タイトルが用意されており、このうち公式サイトのリストで「RESOLUTION UPTO 1080P」と書かれたタイトルが、1080/60pでのストリーミングに対応している。
まずは対戦格闘ゲーム「ウルトラストリートファイターIV」。(後略)」(第3ページ本文第1~6行)
エ.上記「ア.及びウ.」から見て、「GRIDゲームストリーミングサービス」において「対戦格闘ゲーム「ウルトラストリートファイターIV」をプレイすることができる」ことは明らかである。
上記の記載事項を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「対戦格闘ゲーム「ウルトラストリートファイターIV」をプレイすることができ、
ゲームのあらゆる処理をサーバー側で行い、その映像と音声をストリーミングでユーザーに提供する
クラウドゲームサービス「GRIDゲームストリーミングサービス」のサーバー。」
2.対比及び検討
(1)請求項1
ア.特許法第29条第1項第2号(新規性)について
本件訂正特許発明1と引用発明1-1とを対比する。
(ア)後者における「HEIHACHI」は前者における「第1オブジェクト」に相当し、以下同様に、「LILI」は「第2オブジェクト」に、「左後ろ回し蹴り」は「第1攻撃」に、「右後ろ回し蹴り」は「第2攻撃」に、それぞれ相当する。
(イ)後者における「裏旋空刃脚」は、「左後ろ回し蹴りを実行した後、続いて右後ろ回し蹴りを実行する」ものであるから、前者における「第1攻撃および当該第1攻撃のあとに実行される第2攻撃をひとつの攻撃モーションとして含む一連の攻撃」である「連続技」に相当する。
(ウ)後者の「プレイステーション3」は「CPU」を備えるところ、後者において「CPU」により処理が実行されることは明らかであって、当該「CPU」は前者の「コンピュータ」に相当する。
(エ)後者の「鉄拳6」は「3D対戦格闘ゲーム」であるから、そのゲーム画面は3次元を表すものであってゲーム空間であるといえる。そうすると、後者の「ゲーム画面に「HEIHACHI」及び「LILI」のキャラクタが表示され」は前者の「ゲーム空間に第1オブジェクトおよび第2オブジェクトを生成する」に相当する。そして、コンピュータ装置におけるソフトウェア及びハードウェアの通常の機能・作用を踏まえると、「鉄拳6」が「プレイステーション3」の「CPU」を当該生成する手段として機能させることは明らかである。
(オ)後者の「右斜め上向き矢印、青色のボタン、赤色のボタンのコマンドが順に入力されると「HEIHACHI」が左後ろ回し蹴りを実行した後、続いて右後ろ回し蹴りを実行する「裏旋空刃脚」を実行し」は、前者の「少なくとも第1攻撃および当該第1攻撃のあとに実行される第2攻撃をひとつの攻撃モーションとして含む一連の攻撃(以下、連続技という)を前記第1オブジェクトに実行させる」に相当する。そして、「鉄拳6」が「プレイステーション3」の「CPU」を当該実行させる手段として機能させることは明らかである。
(カ)後者の「「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれが「LILI」に対して実行されると、左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれに基づいて「LILI」の体力値の表示が減少し」は、体力値の表示を減少させるにあたって体力値を減算していることは明らかであるから、前者の「第1攻撃および第2攻撃のそれぞれが第2オブジェクトにヒットしたことを判定し、前記第1攻撃および前記第2攻撃のそれぞれに基づいて前記第2オブジェクトの体力値を減算する」に相当する。そして、「鉄拳6」が「プレイステーション3」の「CPU」を当該減算する手段として機能させることは明らかである。
(キ)本件特許の明細書に「死亡状態(体力値が0以下の状態)」(段落【0037】)と記載されていることを踏まえると、前者の「死亡モーション」は体力値が0以下の場合のモーションであると解されるところ、後者の「倒れた後にのけぞる動き」は「体力値の表示が0」になった場合に表示されるから、前者の「死亡モーション」に相当するといえる。そうすると、上記「(カ)」の検討も踏まえると、後者の「「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴りが「LILI」に対して実行されて、「K.O.」が表示され「LILI」の体力値の表示が0になり、右後ろ回し蹴りが「LILI」に対して実行されると、「LILI」が倒れた後にのけぞる動きが表示される」は、前者の「第1攻撃が第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合は、連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する」に相当する。そして、「鉄拳6」が「プレイステーション3」の「CPU」を当該再生する手段として機能させることは明らかである。
(ク)後者の「3D対戦格闘ゲーム「鉄拳6」」が「ゲームプログラム」であることは明らかである。また、「3D対戦格闘ゲーム「鉄拳6」」は「プレイステーション3用」であるところ、「プレイステーション3」が「CPU」により「ゲームプログラム」を処理することも明らかであるので、後者は「コンピュータを上記の各手段として機能させるゲームプログラム」であるといえる。
そうすると、両者は、
「コンピュータを、
ゲーム空間に第1オブジェクトおよび第2オブジェクトを生成するゲーム進行手段、
少なくとも第1攻撃および当該第1攻撃のあとに実行される第2攻撃をひとつの攻撃モーションとして含む一連の攻撃(以下、連続技という)を前記第1オブジェクトに実行させる攻撃実行手段と、
前記第1攻撃および前記第2攻撃のそれぞれが前記第2オブジェクトにヒットしたことを判定し、前記第1攻撃および前記第2攻撃のそれぞれに基づいて前記第2オブジェクトの体力値を減算する攻撃判定手段と、
前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットした場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの前記死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する管理手段と、
して機能させるゲームプログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
「管理手段」が、本件訂正特許発明1においては、「第1攻撃が第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記第2オブジェクトの体力値を減算し、前記第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしなかった場合は、連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの死亡モーションを再生せず、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、前記死亡モーションを再生する」のに対して、引用発明1-1においては、第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしなかった場合に、死亡モーションをどのように処理するか明らかでない点。
イ.特許法第29条第1項第2号(新規性)について
上記「ア.」のとおり、本件訂正特許発明1と引用発明1-1とは、上記相違点1において相違するから、本件訂正特許発明1は、本件特許の出願前に公然実施された発明であるとはいえない。
ウ.特許法第29条第2項(進歩性)について
上記相違点1について検討する。
(ア)上記相違点1について、申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証並びに参考資料1ないし5には、引用発明1-1として認定したとおり、「裏旋空刃脚」の左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれが「LILI」に対して実行されると、左後ろ回し蹴り及び右後ろ回し蹴りのそれぞれに基づいて「LILI」の体力値の表示が減少」するから、「左後ろ回し蹴り」(第1攻撃)及び「右後ろ回し蹴り」(第2攻撃)がともに「LILI」(第2オブジェクト)にヒットする場合が開示されているものと認められるものの、「LILI」(第2オブジェクト)に「左後ろ回し蹴り」(第1攻撃)がヒットし、「右後ろ回し蹴り」(第2攻撃)がヒットしなかった場合については何ら開示されていない。
そうすると、申立人が提出した甲各号証及び各参考資料には、本件訂正特許発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は開示されていない。
(イ)また、本件訂正特許発明1の上記相違点1に係る発明特定事項が、本件特許の出願前に周知であったとも、当業者が適宜選択することができる設計的事項であったとも認められない。
(ウ)続いて本件訂正特許発明1の効果について検討する。
a.本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献は連続技を構成するそれぞれの攻撃について、攻撃を受けたオブジェクトの体力値を減少させる。そのため、体力値が少ない状態で連続技を繰り出した場合、連続技のモーションが終了する前に、攻撃を受けたオブジェクトが死亡状態になる。その場合、連続技が死亡状態のオブジェクトに対してヒットしたり、空振りしたりし、爽快感にかけるという課題があった。
【0007】
従って、本発明は、複数の攻撃をひとつの攻撃モーションとして含む連続技をオブジェクトに実行させる場合に、所定条件を満たすまで攻撃を受けたオブジェクトを死亡状態にしないことを目的とする。」
b.本件特許明細書の上記記載からみて、本件訂正特許発明1は、体力値が少ない状態で連続技を繰り出した場合、連続技のモーションが終了する前に、攻撃を受けたオブジェクトが死亡状態になり、連続技が死亡状態のオブジェクトに対して空振りし、爽快感にかけることを課題のひとつとするものであると認められる。
c.そして、本件訂正特許発明1は、上記相違点1に係る発明特定事項を備えるから、第2オブジェクトの体力値が所定値以下となった場合であって、かつ、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしなかった場合には、連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、死亡モーションを再生するものであって、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしなかった場合に、第2攻撃が死亡状態のオブジェクトに対して実行されることがないものである。
d.そうすると、本件訂正特許発明1は、上記相違点1に係る発明特定事項を備えることにより、本件特許明細書に記載された上記「b.」の連続技が死亡状態のオブジェクトに対して空振りし、爽快感にかけるとの課題を解決するという、引用発明1-1から予測することができない効果を奏するものである。
(エ)以上のとおりであるから、引用発明1-1において上記相違点1に係る訂本件訂正特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。
そうすると、本件訂正特許発明1は、引用発明1-1から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)請求項2
ア.本件訂正特許発明2と引用発明1-2とを対比する。
上記「(1)ア.」における対比に加え、引用発明1-2の「記憶装置」は本件訂正特許発明2の「記憶部」に相当し、同様に、「CPU」は「コンピュータ」に、「プレイステーション3」は「ゲーム装置」に相当する。
そうすると、上記「(1)ア.」での検討を踏まえると、本件訂正特許発明2と引用発明1-2とは上記相違点1で相違する。
イ.相違点1については上記「(1)イ.及びウ.」で検討したとおりであるから、本件訂正特許発明2は、本件特許の出願前に公然実施された発明であるとも、引用発明1-2から当業者が容易に想到することができたともいえない。
(3)請求項3
ア.本件訂正特許発明3と引用発明1-2とを対比する。
上記「(1)ア.及び(2)」での検討を踏まえると、両者は相違点1に加えて以下の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点2]
前者が「サーバー装置」であるのに対して、後者の「プレイステーション3」はそのようなものでない点。
イ.相違点1については上記「(1)イ.及びウ.」で検討したとおりである。
また、甲第3号証には、上記「1.(3)ア.」のとおり引用発明2が記載されているものの、相違点1に係る本件訂正特許発明3の発明特定事項は記載されていない。
ウ.そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正特許発明3は、引用発明1-2、及び、甲第3号証に記載された発明である引用発明2から当業者が容易に想到することができたものではない。
(4)特許法第29条第1項第2号及び同条第2項に関する申立人の主張について
ア.申立人の主張の概要
申立人は令和1年12月16日に提出した意見書において、特許法第29条第1項第2号及び同条第2項に関して概略以下のように主張している。
(ア)「(i)訂正後の発明の構成について
本件意見書(当審注:特許権者が令和1年10月10日に提出した意見書)において特許権者は、「第2攻撃が第2オブジェクトに当たらなくても、連続技を最後まで再生させてから、第1オブジェクトの第1攻撃が第2オブジェクトにヒットしたことに応じて、第2オブジェクトの体力値を減らしたり、第2オプジェクトを死亡させたりする制御ができます。」(本件意見書第3頁下から2行~第4頁3行)と主張し、訂正後の発明の特徴を説明しています。しかしながら上述した通り、死亡モーションを再生するか否かは、第1攻撃によって第2オブジェクトの体力値が所定値以下になったか否かのみによって判断されることになるため、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしたか否かは死亡モーションの再生には関係がありません。このように、死亡モーションの再生には関係のない第2攻撃のヒットの有無を条件としたとしても、本件取消理由により指摘されている特許法第29条第1項第2号および同法第29条第2項に対する違反は解消しておりません。」(第11ページ第9~23行)
(イ)「(ii)訂正後の発明の効果について
本件意見書の第4頁5行~17行において特許権者は、(A)乃至(C)の相乗効果を奏することができることは明白であると主張しています。
しかし、(A)乃至(C)に記載されたいずれの相乗効果も出願当初明細書には一切記載されておらず何らの示唆もございません。また、いずれの効果も、既に第1攻撃により第2オブジェクトの体力値が0(死亡)となった状態が前提となっていますが、図6のフローチャートでは、第2攻撃がヒットしたか否か判定(S104)した後で、第1攻撃がヒットしたことによる処理を行なっています(S107)。したがって、「第1攻撃で第2オブジェクトの体力値が0(死亡)となった状態で、第2攻撃が第2オブジェクトに当たらなくても」という状況はそもそも発生せず、そのような効果を奏することはありえません。奏しえない効果に基づく本件意見書の主張は失当であり、当該効果は、訂正後の発明が引用発明1-1に対して進歩性を有することに寄与するものではございません。」(第11ページ第24行~第12ページ第10行)
(ウ)なお、上記「(イ)」で言及された「(A)乃至(C)の相乗効果」とは、特許権者が令和1年10月10日に提出した意見書に記載された以下の事項を指すものと認められる。
「(A)第1攻撃で第2オブジェクトの体力値が0(死亡)となった状態で、第2攻撃が第2オブジェクトに当たらなくても、連続技を最後まで再生することで、格闘ゲームなどの画面表示として格好よくすることができます(裏を返せば、たとえば、第2攻撃を途中で中止するような再生は連続技でなくなるので、連続技の魅力がなくなりますが、これを防止できます。)。
(B)第1攻撃で第2オブジェクトの体力値が0(死亡)となった状態で、第2攻撃が第2オブジェクトに当たらなくても、連続技を最後まで再生させることになるので、操作者(プレイヤ)に対して、プレイについて爽快感を与えることができます。
(C)第1攻撃で第2オブジェクトの体力値が0(死亡)となった状態で、第2攻撃が第2オブジェクトに当たらなくても、連続技を最後まで再生させることになるので、操作者(プレイヤ)が連続技の操作手順どおりに操作しているにもかかわらず、連続技が発動しない、ということがありません。」(意見書第4ページ第5~17行)
イ.申立人の主張について
申立人の上記主張について検討する
(ア)「ア.(ア)」の主張について
a.上記「(1)ア.」で対比したとおり、本件訂正特許発明1と引用発明1-1とは相違点1において相違しており、引用発明1-1は第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしなかった場合の死亡モーションの再生について何ら開示していない。
b.申立人の上記「ア.(ア)」の主張は、死亡モーションを再生するか否かは、第1攻撃によって第2オブジェクトの体力値が所定値以下になったか否かのみによって判断されるから、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしたか否かは死亡モーションの再生には関係がない旨を主張するにとどまるものであって、引用発明1-1において上記相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項とすること、具体的には、第2攻撃が第2オブジェクトにヒットしなかった場合にも、連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、死亡モーションを再生することを、当業者が容易になし得た旨を主張するものではないし、申立人の当該主張を参酌しても、引用発明1-1において上記相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項とすることを当業者が容易になし得たとする理由もない。
c.そうすると、申立人の上記「ア.(ア)」の主張を参酌しても、本件訂正特許発明1は、本件特許の出願前に公然実施された発明ではなく、また、引用発明1-1から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)「ア.(イ)」の主張について
a.上記「(1)ウ.(イ)」のとおり、本件訂正特許発明1は、相違点1に係る発明特定事項を備えることにより、本件特許明細書に記載された「(1)ウ.(イ)b.」の連続技が死亡状態のオブジェクトに対して空振りし、爽快感にかけるとの課題を解決するという、引用発明1-1から予測することができない効果を奏するものである。
b.申立人も指摘するように、特許権者は令和1年10月10日に提出した意見書において、「第1攻撃で第2オブジェクトの体力値が0(死亡)となった状態で、第2攻撃が第2オブジェクトに当たらなくても」と記載しているところ、このような状況が生じるのは、上記「第2 2.ウ.(イ)a.」に示した「状態(2)」の場合であるから、特許権者は「状態(1)」の場合には言及していないことになる。
c.しかしながら、上記「第2 2.ウ.(イ)a.」で示したとおり、「状態(1)」及び「状態(2)」のいずれの場合であっても、「死亡状態にする処理」(死亡モーションを再生する処理)は保留されるのであり、「第2 2.ウ.(イ)b.」で示したとおり、本件訂正特許発明1は「状態(1)」及び「状態(2)」の両者の場合を包含するのだから、本件訂正特許発明1が「状態(2)」の場合のみならず、「状態(1)」の場合にも上記「a.」の効果を奏することは明らかである。
d.そうすると、申立人の上記「ア.(イ)」の主張を採用することはできない。
3.小括
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)で通知した上記「第4 1.及び2.」の取消理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
第6 令和2年3月24日付けの取消理由通知で通知した取消理由について
1.令和2年3月24日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の概要は、つぎのとおりである。
本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(1)令和1年10月10日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載により特定される請求項1には「前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの前記死亡モーションを再生せず」と記載されているが、当該記載における「前記死亡モーション」より前に「死亡モーション」についての言及がないから、「前記」が何を指すのかが明らかでない。請求項1を引用する請求項2及び3についても、同様の点が明らかでない。
(2)請求項1の「前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットした場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで前記第2オブジェクトの前記死亡モーションを再生せず、」及び「前記第2攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしなかった場合は、前記連続技の攻撃モーションの再生がすべて終了するまで前記第2オブジェクトの前記死亡モーションを再生せず、」との記載は、連続技の攻撃モーションの再生の終了について、前者では「前記連続技の攻撃モーションの再生が終了するまで」とされているのに対して、後者では「前記連続技の攻撃モーションの再生がすべて終了するまで」と「すべて」が付加されている点で相違するが、この相違によって両者が異なる意味を持つのか否かが不明である。また、請求項1の「前記連続技の攻撃モーションの再生が終了したあと、」及び「前記連続技の攻撃モーションの再生がすべて終了したあと、」との記載についても、後者のみに「すべて」が付加されており、同様の点が不明である。請求項1を引用する請求項2及び3についても、同様の点が不明である。
(3)請求項1の「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて前記死亡モーションを再生する管理手段」という記載について、「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたこと」と「前記死亡モーションを再生する」こととの両者が「応じて」で結ばれているが、「応じて」という記載では両者がどのような関係であるのかが不明である。また、請求項1を引用する請求項2及び3についても、同様の点が不明である。
2.令和2年3月24日付けの取消理由通知で通知した取消理由についての当審の判断
本件訂正によって、本件特許の請求項1は、上記「1.(1)」に係る「前記」、「1.(2)」に係る「すべて」、及び、「1.(3)」に係る「前記第1攻撃が前記第2オブジェクトにヒットしたことに応じて」との記載を含まないものとされたため、本件特許の特許請求の範囲の記載は明確となった。
よって、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、本件特許は上記「1.」の理由で取り消されるべきものではない。
第7 取消理由通知(決定の予告)及び令和2年3月24日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由について
1.取消理由通知(決定の予告)及び令和2年3月24日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由の概要
申立人は、平成30年4月24日付け審尋に対し、平成30年6月26日に提出した回答書の「4.本件発明2について」の「(1)申立て理由の根拠条文について」の項において、請求項2について、「かかる申立て理由の根拠条文は、「特許法第29条第1項第2号(請求項2)(同法113条第2号)」の誤りであり後述のとおり釈明する。」(第13ページ第14~16行)と、また、「(4)指摘事項(1)について」の項において、「上記「4.(1)」にて述べたとおり、申立ての理由の根拠条文は、「特許法第29条第1項第3号」ではなく「特許法第29条第1項第2号」のため、刊行物公知にかかる釈明ではなく、「公然実施」について以下説明する。」(第13ページ第14~16行)と回答している。
上記回答書の内容も参酌すると、取消理由通知(決定の予告)及び令和2年3月24日付けの取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりであると認められる。
(1)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証から把握される公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証から把握される公然実施された発明、及び、甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。
2.取消理由通知(決定の予告)及び令和2年3月24日付けの取消理由通知で採用しなかった異議申立理由についての当審の判断
(1)上記「第5 2.(1)及び(2)」で判断したとおり、本件訂正特許発明1及び2は、甲第1号証に加えて甲第2号証及び参考資料1ないし5から把握される公然実施された発明である引用発明1-1ではないのだから、甲第1号証のみから把握される公然実施された発明でないことは明らかである。
(2)上記「第5 2.(3)」で判断したとおり、本件訂正特許発明3は、甲第1号証に加えて甲第2号証及び参考資料1ないし5から把握される公然実施された発明である引用発明1-2、及び、甲第3号証に記載された発明である引用発明2から当業者が容易に発明をすることができたものではないのだから、甲第1号証のみから把握される公然実施された発明、及び、甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。
3.小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する上記「1.(1)及び(2)」の理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)及び令和2年3月24日付けの取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2018-700049