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特許異議申立

2018-700007

胆管および膵管のうちの少なくともいずれか一方を通して使用される医療器具

審判番号
2018-700007
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-560329
登録番号
特許第6159829号(P6159829)
請求日
2018年01月05日
審決日
2018年08月07日
公報発行日
2018年10月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
  • 【権利者代理人】恩田 誠
  • 【権利者代理人】恩田 博宣
  • 【権利者代理人】本田 淳
  • 【異議申立人】内野 房子
審判長/審判官
  • 審判長 高木 彰
  • 審判官 熊倉 強
  • 審判官 関谷 一夫
分類
P1651.54 -YAA(A61M) / P1651.852-YAA(A61M) / P1651.853-YAA(A61M) / P1651.113-YAA(A61M) / P1651.121-YAA(A61M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項第2号、特許法第184条の4第1項、特許法第113条第5号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6159829号発明「胆管および膵管のうちの少なくともいずれか一方を通して使用される医療器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6159829号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第6159829号の請求項1-15に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第6159829号の請求項1-15に係る特許についての出願は、2014年2月27日(パリ条約による優先権主張2013年2月28日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月16日に特許権の設定登録がされ(特許公報の発行日は平成29年6月16日)、その後、その特許について、平成30年1月5日に特許異議申立人内野房子により特許異議の申立てがされ、平成30年2月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年5月30日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人内野房子から平成30年7月4日付けで意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。 ア 請求項1-12に係る「体腔」を「体管腔」に訂正する。 イ 発明の詳細な説明の段落【0014】、【0023】、【0024】の「体腔」という記載を「体管腔」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (2-1)段落【0014】、【0023】及び【0024】における「体腔」との記載について 最初に、段落【0023】の記載について検討する。 本件特許に係る出願は、外国語でされた国際特許出願(以下「外国語特許出願」という。)であって、当該外国語特許出願の国際出願日における明細書(以下、「原明細書」という。)には、「The channels 218 may be configured to drain fluid out of a constriction portion of a target site (which may be the pancreatic duct 16 or the bile duct 18 shown in FIG.1. More particularly, the channels 218 may allow side branches off of the pancreatic duct 16 or the bile duct 18 to be drained. For example, channels 218 may define a space between the outer surface of the stent body 210 and the body lumen where fluid may pass. Thus, fluid coming from side branches along the pancreatic and/or bile duct may flow into the channels 218, along the stent body 210, and ultimately into the duodenum. This may include the fluid passing though openings in the stent body 210 or along the channels 218 directly into the duodenum.」(注:下線を付与した。以下同様。)との記載がある。 そして、訂正前の段落【0023】の記載は、原明細書の上記記載部分の翻訳文であると認められる。 したがって、段落【0023】における「体腔」は、上記記載の「body lumen」の翻訳である。 ところで、原明細書の記載は、膵管あるいは胆管に関する記載と認められるところ、異議申立人の提出した甲第1号証(医学大事典)には、「体腔」は「body cavity」に対応すること、また、同じく甲第2号証(プログレッシブ英和中辞典)には、「lumen」は通常「(管状器管内の)管腔」と訳されることが記載されている。 そうすると、これらを総合してみて、原明細書の「body lumen」との記載は「体管腔」と翻訳されるべきものと認められ、しかも、「体管腔」との記載は、明細書のその余の記載との関係からみて、何ら矛盾を生じるものでもない。 よって、段落【0023】の「体腔」は「体管腔」の誤訳と認められる。 段落【0014】及び【0024】における「体腔」も原明細書の「body lumen」に対応する訳文であるから、上記した理由と同様の理由により、当該「体腔」との記載は「体管腔」の誤訳と認められる。 (2-2)請求項1-12における「体腔」との記載について 上記(1)アの訂正は、上記請求項1-12における「体腔」との記載を、上記(1)イの訂正により訂正された明細書の記載と整合させるためのものと認められる。 よって、この訂正は明瞭でない記載の釈明と認められる。 (2-3)したがって、上記ア、イの訂正は、誤訳の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、特許請求の範囲及び明細書の内容を実質的に変更するものではなく、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 また、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第2号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (A)本件特許発明 本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1-15に係る発明(以下、「本件特許発明1-15」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1-15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具であって、 患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え、 前記管状部材は、一体的に織り込まれた1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される本体を有し、 前記本体は外側表面を有し、および前記外側表面に形成される長手方向チャネルを備え、 前記長手方向チャネルは前記本体の外側表面と患者の体管腔との間に空間を画定することを特徴とする移植可能な医療器具。 【請求項2】 前記本体は、単一のワイヤ・フィラメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の移植可能な医療器具。 【請求項3】 前記本体は、複数のワイヤ・フィラメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の移植可能な医療器具。 【請求項4】 前記1本以上のワイヤ・フィラメントは編み込まれることを特徴とする請求項1乃至3 のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。 【請求項5】 前記1本以上のワイヤ・フィラメントのうちの少なくともいくつかは、形状記憶材料を含むことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。 【請求項6】 前記1本以上のワイヤ・フィラメントのうちの少なくともいくつかは、ニッケル・チタン合金を含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。 【請求項7】 前記本体の前記外側表面は、複数の長手方向チャネルを含むことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。 【請求項8】 前記本体の前記外側表面は、同本体の前記外側表面の周囲を延びる径方向チャネルを含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。 【請求項9】 カバーが前記管状部材の周囲に設けられ、前記カバーは、その内部に1つ以上の開口部が形成されることを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。 【請求項10】 前記カバーは、コーティング、フィルム、あるいはシースであることを特徴とする請求項9に記載の移植可能な医療器具。 【請求項11】 前記本体の前記外側表面は、同本体の前記外側表面の周囲を延びる周方向チャネルを含むことを特徴とする請求項9に記載の移植可能な医療器具。 【請求項12】 前記管状部材の前記第1の端は、フレア状であることを特徴とする請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。 【請求項13】 膵管を通して使用される移植可能な医療器具であって、 流体を排出するために、患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管に隣接して配置されるように構成される第2の端を有し、1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される編み込みステントを備え、 同編み込まれたステントは、外側表面に長手方向のチャネルが形成される外側表面を有し、該長手方向のチャネルは、前記膵管の枝から流体を排出するように構成されることを特徴とする移植可能な医療器具。 【請求項14】 前記編み込まれたステントの前記外側表面は、複数の長手方向チャネルを含むことを特徴とする請求項13に記載の移植可能な医療器具。 【請求項15】 前記編み込まれたステントの前記外側表面に形成されるとともに前記編み込まれたステントの前記外側表面の周囲を延びる周方向チャネルが設けられることを特徴とする請求項13または14に記載の移植可能な医療器具。」 (B)取消理由の概要 訂正前の請求項1-15に係る特許に対して平成30年2月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 特許法184条の4第1項の外国語特許出願に係る本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項が同条同項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲にない。 したがって、本特許は特許法第113条第5号の規定に該当する。 (C)判断 ア 取消理由通知に記載した取消理由について 上記のように、請求項1及び明細書の段落【0014】、【0023】、【0024】に記載の「体腔」は、特許異議申立人も主張しているとおり、「体管腔」に訂正されたから、かかる取消理由は解消された。 イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)甲第3~5号証の記載 (ア)甲第3号証(特開2011-156085号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「そこで、これを防止する従来技術として、ベアステントを樹脂フィルムで被覆したカバードステントが提案されている(例えば特許文献1等参照)。カバードステントでは、ベアステントを被覆する樹脂フィルムが、がん細胞の成長などによる体内管腔の狭窄を抑制することができる。また、ベアステントを、多数の空孔が形成された樹脂フィルムで被覆したカバードステントも提案されている(例えば特許文献2、3等参照)。」(段落【0003】) (b)「図1は、本発明の一実施形態に係るカバードステント10の概略図である。図1に示すように、本実施形態に係るカバードステント10は、フレーム17により形成される筒状のベアステント16と、ベアステント16の外周を覆う被覆フィルム部50とを含む。」(段落【0017】) (c)「ベアステント16は、金属製の線状部材であるフレーム17により形成されている。ここでベアステントは編込みで形成されたタイプでもパイプをレーザーカットで形成したレーザーカットタイプでも構わないが」(段落【0020】) (d)「図4は、図1に示すカバードステント10の断面図である。ただし、図4は、図1に示す状態から、2分の1に径を縮小した状態を表している。図4に示すように、ベアステント16の表面はコーティング膜26で覆われており、また、コーティング膜26は、隣接するフレーム17の間を埋めるように広がっており、ベアステント16の外周面を被覆している。コーティング膜26によって覆われたベアステント16の外周は、第1のポリマーフィルム30と第2のポリマーフィルム14とを含む被覆フィルム部50によって覆われている。」(段落【0036】) (e)「図1に示すように、カバードステント10の外周表面であるステント外周表面12は、被覆フィルム部50によって構成されている。図4に示すように、ベアステント16の外周を覆う被覆フィルム部50は、第1のポリマーフィルム30と第2のポリマーフィルム14を含む。第1のポリマーフィルム30は、ベアステント16と第2のポリマーフィルム14の間に配置されており、ベアステント16の外周を被覆する。」(段落【0040】) (f)「図5は、図4の一部を拡大した拡大断面図である。第2のポリマーフィルム14は、ベアステント16の内径方向を向く内側表面18aを含む内周層18と、ベアステント16の外径方向を向く外側表面20aを含む外周層20を含む。外周層20には、複数の空孔22が形成されている。第2のポリマーフィルム14は、第2のポリマーフィルム14の厚さ方向に沿って内周層18と外周層20とが積層された2層構造を有している。第2のポリマーフィルム14は、管状の外形状を有するカバードステント10の外周表面であるステント外周表面12を構成しており、第2のポリマーフィルム14の厚さ方向は、カバードステント10の径方向と略一致する。」(段落【0046】) (g)「カバードステント10は、例えば、胆管、食道、十二指腸、大腸など、消化器系体内管腔に留置するステントとして好適に用いることができるが、胆管に留置する胆管ステントとして特に好適に用いることができる。」(段落【0075】) (h)図8より、カバーステント10を胆管に留置した場合、一端が十二指腸内に配置され、他端が胆管に配置される点がみてとれる。 上記(a)の記載及び技術常識から「体内管腔の狭窄を抑制する」カバードステントが管状であり、(a)~(h)の記載から、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。 「一端が十二指腸内に配置され、他端が胆管に配置され、金属製の線状部材を編み込んで形成されたベアステント16と被覆フイルム部50とからなる管状のカバードステント10」が記載されている(以下「甲3発明」という。)。 (イ)甲第4号証(特表2010-503483号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「図1A~図1Cを参照すると、カテーテル14の先端付近に保持されたバルーン12上に治療薬溶出ステント10が配置されており、該ステントは、バルーンおよびステントを保持する部分が閉塞18の領域に到達するまで、管腔16(図1A)を通って導かれる。次に、バルーン12を膨張させることにより、ステントは半径方向に拡張され、血管壁に対して押し付けられ、その結果、閉塞18が圧縮されて、閉塞18を取り囲む血管壁は半径方向の拡張を受ける(図1B)。次に、バルーンから圧力が解放され、管腔16内に固定された拡張したステント10’を残して、カテーテルが血管から抜去される(図1C)。 図2および図2Aを参照すると、拡張されていない治療薬溶出ステント10は、例えば金属製またはポリマー材製の、ステント本体19を有している。ステント本体19は、該ステント本体19に形成された凹部21内に複数の治療薬放出アセンブリ34を保持している。ステント本体19は、凹部21に加えて、ステント本体の長手長全体に延びる複数の長手方向に延在する溝32を形成する・・・。 ・・・。 ここで再び図3A~図3Dを参照すると、拡張の間、ステント本体19は溝の底において最も薄いので、ステント10は溝32に沿って優先的に拡張し、ステントの外面に沿って対向する溝境界間の周方向の間隔Sが広がる。」段落【0022】~【0024】) (b)「本願に記載したステントは、血管腔用または非血管腔用に構成することができる。例えば、それらのステントは、食道または前立腺で使用するために構成することができる。他の管腔としては、胆管管腔、肝管腔、膵管腔、尿道管腔および尿管管腔が挙げられる。」(【0052】) (c)「他のステント本体の型も可能である。例えば、ステント本体は、コイルまたはワイヤーメッシュの形態にあってもよい。図7を参照すると、ワイヤーメッシュステント本体110は、ワイヤー112と、隣接するワイヤーを接続する連結部114とを備える。ワイヤーメッシュステント本体110は、放出アセンブリが挿入され得る大きさの複数の開口116を形成する。」(段落【0058】) 上記記載から、甲第4号証には次の発明が記載されていると認める。 「胆管管腔に留置され、金属製またはポリマー材製のステント本体19に長手長全体に延びる複数の溝32を形成した治療薬溶出ステント10」が記載されている(以下「甲4発明」という。)。 なお、異議申立人は甲4発明は「ステント本体19として、コイルまたはワイヤーメッシュで形成されたステント本体が開示されている。」(異議申立書46頁の構成C参照)、「ステント本体19は、その長手方向に延在する複数の溝32を有する」(同構成D参照)としているが、上記(c)(段落【0058】)の「他のステント本体の型も可能である。例えば、ステント本体は、コイルまたはワイヤーメッシュの形態にあってもよい。・・・ワイヤーメッシュステント本体110は、放出アセンブリが挿入され得る大きさの複数の開口116を形成する。」の記載は、ステント本体の別の実施例として、ワイヤーメッシュステント本体110の形態であってもよいとしたにすぎず、金属製またはポリマー材製のステント本体19とは、構造も、剛性も異なるワイヤーメッシュステント本体110に長手方向に延在する複数の溝32を設けることが記載されているとまではいうことはできない。 (ウ)甲第5号証(特表2009-538690号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (a)「抗肥満ステント12は、図1に示すように、十二指腸20内に配置される。図2に示すように、抗肥満ステント12は、外側表面35及び内側表面37を有する管状構造部32を有する。管状構造部32は、近位端40及び遠位端42を有し、十二指腸20内で、それと実質的に同軸関係を有する態様で嵌合されるサイズに設定される。」(段落【0017】) (b)「ステント構造を有する管状構造部32をコンポジット構造中に導入してもよい。当該ステント構造は、細長部材(例えばワイヤ又はカットアウトを有する管状構造)を有してもよい。…ステント構造内のかかる管状構造部32の好ましい実施形態は、ステント構造の直径と実質的に同じ直径を有する管状構造部である。かかる好ましい実施形態では、管状構造部32が更に端部を有し、そこを流動物が流入し、当該ステント構造の対応する端と連結している。」(段落【0019】~【0020】) (c)「管状構造部32のステント構造は、様々な実施形態をとることができる。例えば、当該ステント構造は自動的に拡張するものであってもよく、又はバルーンによって拡張できるものであってもよい。当該ステント構造は1つ以上のコイル状のステンレス鋼製のスプリング、感熱材料を含むらせんコイル状のスプリング、又はジグザグパターンのステンレス製ワイヤで形成された伸長ステンレス鋼ステントを有してもよい。」(段落【0026】) (d)「図2及び3において例示される輸送構造部45は、管状構造部32の外側表面35に形成される細長い軸方向溝55を有する。軸方向溝55は、管状構造部32に対して軸方向を向き、円周溝47と連結する。軸方向溝55は、円周溝47中の消化液31を遠位端42に輸送するための導管として機能する。」(段落【0030】) (e)「抗肥満ステント12は、外側表面35に連結される側管52を有する。側管52は1つの端部を有し、それと隣接する外側表面35及び1つ以上の穿孔53と隣接する。側管52は、ファーター乳頭30で嵌入されうる反対側の端部を有する。ファーター乳頭30は十二指腸20の一部であって、それに対して消化液31が分泌される。ファーター乳頭30から分泌される消化液31は、外側表面35の方向を向いている側管52を通じて伝達される。消化液31が外側表面35と接触すると、消化液は穿孔53を通じて側管52を出て、軸方向の溝55に流入する。更に、側管52のファーター乳頭30への挿入により、当該側管が安定に保持される。」(段落【0032】) (f)図2から、側管52が挿入されるファーター乳頭30は膵管および胆管のうちの少なくとも一方に隣接していることがみてとれる。 上記記載から、甲第5号証には次の発明が記載されていると認める。 「十二指腸内に配置される環状構造部32と、膵管および胆管のうちの少なくとも一方に隣接して配置され、前記環状構造部32の外側表面35に連結される側管52と、前記外側表面35の軸方向溝55を有する抗肥満ステント12」が記載されている(以下「甲5発明」という。)。 なお、異議申立人は甲5発明は「抗肥満ステント12を構成する環状構造部32のステント構造は、1つ以上のコイル状のステンレス鋼製のスプリングや、ジグザグパターンのステンレス製ワイヤーで形成されている。」(異議申立書47頁の構成C参照)、「図3に示すに抗肥満ステント12の環状構造部32は、ファーター乳頭部30からの消化液31を遠位端に輸送するための軸方向溝55を備えている。」(同構成D参照)としているが、上記(c)(段落【0026】)の「他のステント本体の型も可能である。」の記載は、管状構造部32のステント構造として、1つ以上のコイル状のステンレス鋼製のスプリング、感熱材料を含むらせんコイル状のスプリング、又はジグザグパターンのステンレス製ワイヤで形成された伸長ステンレス鋼ステントを有してもよいとしたにすぎず、1つ以上のコイル状のステンレス鋼製のスプリング、感熱材料を含むらせんコイル状のスプリング、又はジグザグパターンのステンレス製ワイヤで形成されたステントの外表面に図3及び図4の環状構造部32の外表面に設けられるような軸方向溝55を設けることが記載されているとまではいうことはできない。 (2)判断 (ア)特許法第29条第1項3号について (ア-1)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「管状のカバードステント10」は本件特許発明1の「胆管および膵管を通して使用される」「管状部材を備え」た「移植可能な医療器具」に、同じく「一端が十二指腸内に配置され、他端が胆管に配置され」は「患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する」に、「金属製の線状部材を編み込んで形成されたベアステント16」は「一体的に織り込まれた1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される本体」に相当する。 したがって、本件特許発明1は、甲3発明と、 「胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具であって、患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え、前記管状部材は、一体的に織り込まれた1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される本体を有する」点で一致するものの、次の点で相違する。 相違点:本件特許発明1の本体は外側表面を有し、および前記外側表面に形成される長手方向チャネルを備え、前記長手方向チャネルは前記本体の外側表面と患者の体管腔との間に空間を画定するのに対し、甲3発明の本体はそのような構成を有しない点。 上記相違点に関して、特許異議申立人は、甲3発明について、「カバードステント10の断面図(図4および5の横断面図)において、隣接するフレーム17とコーティング膜26とにより溝が形成される。図2のフレーム17の編み込み形状から、係る溝は、ベアステントの長手方向に形成されている。」(特許異議申立書42の構成D参照)、「カバードステント10を胆管内に留置した際に、被覆フイルム部50が胆管の壁面と接触する(図8)。この状態で、図4および図5に示されるフレーム17間の溝は、ベアステント16の外側表面と胆管との間に空間を画定している。」(特許異議申立書42頁の構成E参照)とし、「隣接するフレーム17とコーティング膜26とにより形成された溝は「長手方向チャネル」に」相当し、「また、カバードステント10を胆管内に留置した際に、被覆フイルム部50が胆管の壁面と接触する(図8)。この状態で、図4および図5に示されるフレーム17間の溝は、ベアステント16の外側表面と胆管との間に空間を画定する。」(特許異議申立書55頁末行~56頁5行)と主張している。 しかしながら、甲3発明のカバードステント10は、「カバードステントでは、ベアステントを被覆する樹脂フィルムが、がん細胞の成長などによる体内管腔の狭窄を抑制することができる。」(甲第3号証の段落【0003】)と記載されているように、通常、ベアステント16と被覆フイルム部50からカバードステント10が構成され、外側表面は図4および5における第2のポリマーフィルム14の外面となる。 そうすると、本件特許発明1の本体の「外側表面に形成される長手方向チャネル」は流体が流れるために形成成されると認められる(本件明細書段落【0023】参照)ところ、たとえ、「隣接するフレーム17とコーティング膜26とにより溝が形成される。」としても、それはカバードステント10の内部構造であるベアステント16に形成されているものであって、その溝は外側表面(フィルム50)の溝ではなく、流体が流れることはできず、本件特許発明1の本体の外側表面に形成される長手方向チャネルということはできない。 また、第2のポリマーフィルム14の外面に長手方向チャネルが形成されているとは認められない。 したがって、特許異議申立人の当該主張は理由がない。 そして、上記相違点は実質的な相違点であると認められる。 よって、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。 (ア-2)本件特許発明4-10及び12について 本件特許発明4-10及び12は、本件特許発明1を引用する発明であるので、本件特許発明1の構成を全て含み、同様な理由で甲3発明であるとはいえない。 (イ)特許法第29条第2項について (イ-1)本件特許発明1-12について i)甲3発明を主引用発明とする場合 i-1)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明は、上記(ア)に記載したように、本件特許発明1の本体の外側表面に形成される長手方向チャネルを備える構成を有していない。 また、甲第5号証にも、本件特許発明1のような「患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え」る「胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具」において、「外側表面に形成される長手方向チャネルを備える」ことは記載されていない。 特許異議申立人は「甲第3号証のカバードステントのベアステントの外表面に、胆管または膵管中の液体(消化液)を、狭窄部位を超えて十二指腸側に輸送するために、甲第5号証に記載された軸方向溝を設けた構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。」(特許異議申立書57頁19~22行)と主張している。 しかしながら、上記(ア)で検討したように、甲3発明のベアステント16はカバードステント10の被覆フィルム部50に被覆された内部構造であり、ベアステント16の外表面に軸方向溝を設けても、本願請求項1に記載された発明のように、胆管または膵管中の液体(消化液)を、十二指腸側に輸送する構成として用いることができるとはいえない。 また、甲5発明は抗肥満ステントに関するものであり、管状構造部32に設けられた軸方向溝55は担汁等が通過する構成ではあるが、「抗肥満ステントと小腸の吸収表面との間に位置する胆汁が、ステントの長手方向にわたり、吸収表面によって再吸収され、それにより更に、ステントの末端に存在する、キームス中の脂肪分を分解する胆汁の量が減少する。」(甲第5号証段落【0009】)ことを目的としたものであり、一般に、胆管および膵管を通して使用されるステントに設けられる構成とはいえない。 また、甲第3号証および甲第5号証には、胆管および膵管を通して使用されるステントに「長手方向チャネル」を形成する目的が記載されておらず、甲3発明に甲5発明の軸方向溝55を形成する動機付けがない。 よって、特許異議申立人の当該主張は理由がない。 そして、本件特許発明1は、「特に、チャネル218により、側面の枝は、膵管16や胆管18から排出されてもよい。例えば、チャネル218は、ステント本体210の外側表面と、流体が通過する体腔との間に空間を形成する。これにより、胆管および/または膵管に沿った側面の枝からの流体は、ステント本体210に沿って、チャネル218内に、かつ最終的に十二指腸内に流れる。」(本件明細書段落【0023】)という顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明1は、甲3発明および甲5発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 i-2)本件特許発明2-12について 本件特許発明2-12は、本件特許発明1を引用する発明であるので、本件特許発明1の構成を全て含み、同様な理由で甲3発明および甲5発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ii)甲5発明を主引用発明とする場合 ii-1)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明は、抗肥満ステントであって、本件特許発明1のような「患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え」る「胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具」ではない。 また、甲第3-4号証に、甲5発明のような抗肥満ステントを「胆管および膵管を通して使用」することについての記載はない。 特許異議申立人は「甲第3号証や甲第4号証には、ステント(カバードステント)を様々な消化器官の管腔に留置することが記載されており(甲第3号証の段落番号0015、甲第4号証の段落番号0052)、特定の器官用のステントを、その他の器官に適用しようとする動機付けがある。」(特許異議申立書59頁下から4行~末行)と主張している。 しかしながら、甲5発明に係る、十二指腸内に配置されるステントと、甲3発明及び甲4発明に係る胆管に配置されるステントとは、配置される場所、大きさ、目的のいずれにおいても大きく相違するから、甲5発明に甲3発明や甲4発明を適用する動機付けがあるといえない。 そして、本件特許発明1は、「患者の体内の胆樹の膵管および/または胆管から流体を排出する」(本件明細書段落【0014】)という顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明1は、甲5発明、甲3発明および甲4発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ii-2)本件特許発明2-12について 本件特許発明2-12は、本件特許発明1を引用する発明であるので、本件特許発明1の構成を全て含み、同様な理由で甲5発明、甲3発明および甲4発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ-2)本件特許発明13-15について 1)本件特許発明13について 本件特許発明13と甲5発明とを対比すると、甲5発明は、抗肥満ステントであって、本件特許発明13のような「患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管に隣接して配置されるように構成される第2の端を有」する「膵管を通して使用される移植可能な医療器具」ではない。 また、甲第3-4号証に、甲5発明のような抗肥満ステントを「胆管および膵管を通して使用」することについての記載はない。 そして、本件特許発明13は、「患者の体内の胆樹の膵管および/または胆管から流体を排出する」(本件明細書段落【0014】)という顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明13は、甲5発明および甲第3-4号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2)本件特許発明14-15について 本件特許発明14-15は、本件特許発明13を引用する発明であるので、本件特許発明13の構成を全て含み、同様な理由で甲5発明、甲3発明及び甲4発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1-15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700007

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